JP2016153399A - 糖組成物製造方法及びインベルターゼ阻害剤 - Google Patents

糖組成物製造方法及びインベルターゼ阻害剤 Download PDF

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Abstract

【課題】ショ糖を加水分解する酵素のインベルターゼを抑制する阻外剤を安全に且つショ糖から工業的に大量生産できる糖組成物の製造方法及びインベルターゼ阻害剤の提供。【解決手段】カエデ科カエデ属樹木の樹液から得られた高分子量画分成分にショ糖を反応させることにより得られる糖組成物。インベルターゼ阻害剤が、カエデ科カエデ属樹木の樹液から得られた高分子量画分成分によりショ糖が反応することにより得られ、少なくともオリゴ糖を含む糖組成物。カエデ科カエデ属樹木は、サトウカエデ、イタヤカエデ、クロカエデ、アメリカハナノキ、ギンカエデ、シロスジカエデ、アメリカヤマモミジ、およびノルウェーカエデから選択される少なくとも一種である糖組成物製造方法。カエデ科カエデ属樹木の樹液を限外ろ過して高分子量画分成分を得て、得られた高分子量画分成分とショ糖とが、pH4.0〜8.0の緩衝液中で反応される、糖組成物製造方法。【選択図】図2

Description

本発明は、カエデ科カエデ属樹木の樹液から得られた高分子量画分成分にショ糖を反応させることにより糖組成物を得る糖組成物、及びインベルターゼ阻害剤に関する。
インベルターゼは、小腸壁に存在する消化酵素であって、ショ糖を加水分解する酵素である。ヒトが摂取し小腸に取り込まれたショ糖は、インベルターゼによりグルコース(ブドウ糖)及びフルクトース(果糖)に加水分解される。グルコース及びフルクトースは、小腸上皮細胞から血管へと吸収され、血管を通じて体内の各器官へ運ばれる。
近年、ショ糖を含む糖の摂取に起因する糖尿病や肥満等の疾病が問題となっている。この問題の対策として、腸壁からの糖の吸収を抑制することが考えられている。多糖やオリゴ糖は、単糖まで分解されないと腸壁から吸収されないことから、マルチトール又はイソマルチトールが有効成分であり、オリゴ糖の分解を抑制するインベルターゼ抑制剤が開発されている(特許文献1参照)。他にも、フェノール化合物を有効成分とするインベルターゼ阻害剤が開発されている(特許文献2参照)。
特開2012−108号公報 特開平5−170645号公報
特許文献1に記載のインベルターゼ抑制剤は、マルチトールを含む。マルチトールは、麦芽糖を高圧条件下で水素を添加することにより、カルボニル基が還元されて得られる。このため、マルチトールを得るには、高圧条件において水素ガスを扱う危険な工程が必要となる。 また、この人工的なマルチトールの製造方法は、不純物を生ずるおそれがある。生じた不純物は、天然由来ではない化学物質であるため、人体に対して必ずしも安全であるものとは限らない。一方、特許文献2に記載のインベルターゼ阻害剤においては、有効成分であるフェノール化合物はカシューナッツの殻から単離される。カシューナッツの殻はウルシオールを含むため、その取扱いには注意を要する。このため、カシューナッツの殻からの上記フェノール化合物の単離作業には相当の注意が必要となる。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、安全に且つショ糖から工業的に大量生産できる糖組成物製造方法及びインベルターゼ阻害剤を提供することにある。
(1) 本発明は、カエデ科カエデ属樹木の樹液から得られた高分子量画分成分にショ糖を反応させることにより糖組成物を得る糖組成物製造方法である。
(2) 好ましくは、上記糖組成物から所定の分子量の物質を画分することによって、少なくともオリゴ糖を含むインベルターゼ阻害剤を得る。
(3) 好ましくは、上記カエデ科カエデ属樹木が、サトウカエデ、イタヤカエデ、クロカエデ、アメリカハナノキ、ギンカエデ、シロスジカエデ、アメリカヤマモミジ、およびノルウェーカエデからなる群より選択される少なくとも一種である。
(4) 好ましくは、カエデ科カエデ属樹木の樹液を限外ろ過することにより上記高分子量画分成分を得る。
(5) 好ましくは、上記限外ろ過は、分画分子量1000以上30000以下のフィルタによるものである。
(6) 好ましくは、上記高分子量画分成分とショ糖とが、pH4.0から8.0の緩衝液中で反応される。
(7) 好ましくは、上記糖組成物が低GIである。
(8) 好ましくは、上記オリゴ糖が、インベルターゼ消化後、1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン誘導体化して下記泳動条件でキャピラリー電気泳動に供したときに、1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン誘導体化グルコースに対して−3.7〜2.1cmmin−1kV−1の相対移動度を有するオリゴ糖を含む。
[泳動条件]
キャピラリー:内面未修飾のフューズドシリカキャピラリー(内径50μm、長さ58.5cm、有効長50cm)
印加電圧 :15kV
泳動溶液 :200mM ホウ酸緩衝液(pH10.5)
分析温度 :25℃
(9) 好ましくは、上記オリゴ糖が、インベルターゼ消化することなく、1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン誘導体化して下記泳動条件でキャピラリー電気泳動に供したときに、1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン誘導体化グルコースに対して−3.7〜2.1cmmin−1kV−1の相対移動度を有するオリゴ糖を含む。
[泳動条件]
キャピラリー:内面未修飾のフューズドシリカキャピラリー(内径50μm、長さ58.5cm、有効長50cm)
印加電圧 :15kV
泳動溶液 :200mM ホウ酸緩衝液(pH10.5)
分析温度 :25℃
(10) 好ましくは、上記オリゴ糖が、下記の構造式(I)又は(II)で表される化合物のうちの少なくとも一方である。
Figure 2016153399
Figure 2016153399
(11) 本発明に係るインベルターゼ阻害剤は、下記の構造式(I)又は(II)で表される化合物のうちの少なくとも一方を主成分として含有する。
Figure 2016153399
Figure 2016153399
本発明に係る糖組成物製造方法及びインベルターゼ阻害剤は、安全に且つショ糖から簡易な操作により工業的に大量生産できるという利点を有する。
図1は、実施例1のキャピラリー電気泳動で得られたエレクトロフェログラムである。 図2は、実施例1のキャピラリー電気泳動で得られたエレクトロフェログラムである。 図3は、比較例1のキャピラリー電気泳動で得られたエレクトロフェログラムである。 図4は、比較例1のキャピラリー電気泳動で得られたエレクトロフェログラムである。 図5は、糖負荷実験の結果を示すグラフである。
[糖組成物]
糖組成物は、カエデ科カエデ属樹木の樹液から得られた高分子量画分成分を用いてショ糖を反応させることにより得られるものである。糖組成物は、未反応のショ糖や、後述のインベルターゼ阻害剤、等を含む。このため、糖組成物は、甘味料としての使用も可能である。
[インベルターゼ阻害剤]
インベルターゼ阻害剤は、カエデ科カエデ属樹木の樹液から得られた高分子量画分成分を用いてショ糖を反応させることにより得られるものであり、少なくとも以下に詳細に述べるオリゴ糖を含むものである。
インベルターゼ阻害剤とは、酵素であるインベルターゼの活性を阻害するものである。インベルターゼは、小腸壁に存在する消化酵素であって、ショ糖をグルコース及びフルクトースに加水分解する酵素である。この加水分解は、インベルターゼがショ糖のフルクトース部位を認識する事によって誘導される。フルクトース部位に近接したインベルターゼは、グルコース部位及びフルクトース部位間のグリコシド結合に水分子を引き寄せると考えられる。続いてグルコース部位及びフルクトース部位間のグリコシド結合は、水分子と反応することにより切断される。これによりショ糖は、グルコース及びフルクトースに分解される。インベルターゼ阻害剤は、このショ糖の分解を阻害する働きを有する。詳細には、インベルターゼ阻害剤は、ショ糖と競合して、インベルターゼに認識されると考えられる。この競合の結果、ショ糖を認識して加水分解するインベルターゼ量(活性)が低下し、ショ糖の加水分解が阻害される。
上述のように、糖組成物は、インベルターゼ阻害剤を含む。糖組成物に含まれるショ糖の加水分解はインベルターゼ阻害剤により阻害される。糖組成物を甘味料として使用した場合、ショ糖の分解物であるグルコース及びフルクトースの体内への吸収が抑制される。これら糖分解物の体内への吸収が抑制されるため、血糖値の上昇も抑制される。このため、糖組成物は低GIであるといえる。GIは、食品の炭水化物50グラムを摂取した際の血糖値の上昇度をブドウ糖を基準(100)とした相対値である。すなわち、GIは、血糖値の上昇度を示す指標であり、低GIは、血糖値の上昇度が低い事を示す。
[糖組成物及びインベルターゼ阻害剤の製造方法]
糖組成物及びインベルターゼ阻害剤の製造方法は、カエデ科カエデ属樹木の樹液から高分子量画分成分を得る行程(以下、「高分子量画分成分の取得行程」と記載することもある。)と、得られた高分子量画分成分を用いてショ糖を反応させる行程(以下、「高分子量画分成分によるショ糖の反応行程」と記載することもある)とを含む。
(高分子量画分成分の取得行程)
高分子量画分成分の取得行程において採用されるカエデ科カエデ属樹木としては、サトウカエデ、イタヤカエデ、クロカエデ、アメリカハナノキ、ギンカエデ、シロスジカエデ、アメリカヤマモミジ、およびノルウェーカエデが好ましく、サトウカエデがさらに好ましい。サトウカエデの樹液は、カエデ科カエデ属樹木の樹脂の中では特に品質もよく且つ大量に入手しやすい。
樹液は、カエデ科カエデ属樹木の幹に穴を開け、溢出する樹液を採取することにより得られる未加工の樹液(以下、「メープルサップ」と称する場合がある。)である。未加工の樹液は、樹木からの採取時期に応じて、含有成分比、色、香り等が異なるが、いずれの時期に採取したものであっても用いることができる。メープルサップは、保存料を含んだものであっても用いることができる。保存料としては、1,3−ブタンジオール( 1,3−buthanediol)、4‐ヒドロキシ安息香酸メチル(methyl 4−hydroxybenzoate)等が挙げられる。
また、カエデ科カエデ属樹木の樹液は、ショ糖や種々の単糖及びオリゴ糖等の糖類以外にもミネラル成分や酵素などの機能を有するタンパク質を含む。タンパク質は、樹液中において主となる高分子量の物質である。一般に酵素は、特定の物質に特異的に働きかけるものであり、たとえば、特定の物質を分解させたり、特定の物質同士を結合させるような機能を有する。酵素の分子量は幅が広く、分子量が1万から数百万くらいのものが一般的である。この中でも、分子量が2万から10万くらいのものが多く見受けられる。
一般に、オリゴ糖の分子量は、300から3000程度であり、単糖類の分子量は、この範囲よりさらに小さい範囲である。例えば、グルコースの分子量は180である。
高分子量画分成分をカエデ科カエデ属樹木の樹液から得る行程では、分子量に応じて混合物をふるい分ける必要がある。分子量に応じて混合物をふるい分ける手法として、例えば、限外ろ過、ゲルろ過、各種クロマトグラフィー、塩析、透析、タンパク質変性沈殿法、電気泳動等の既知の手法が採用される。カエデ科カエデ属樹木の樹液から高分子量画分成分を得る手法としては、限外ろ過、塩析、多孔性ゲルによるゲルろ過、平衡透析、又は電気透析であることが好ましい。電気泳動をはじめとするその他のタンパク質の分離方法では、タンパク質を変性させる可能性があったり、一度に大量な樹液を分離することが不向きだからである。
一般に、限外ろ過は、溶媒に溶解している溶質のうち、フィルタのポアサイズ以下の低分子量の分子を透過させ、フィルタのポアサイズ以上の分子を分離するために使われる手法の一つである。言い換えると、限外ろ過は、限外ろ過膜を用いて分子の大きさによって物質をふるい分ける方法である。限外ろ過膜はそれぞれ、0.001μm〜0.01μm程度の孔径を有する。限外ろ過膜の孔径を選択することにより、分画分子量1000から100000程度の分子を選択的にふるい分けることができる。限外ろ過は、緩衝液成分から高分子量のタンパク質を分離するために多く採用される。このため、限外ろ過は、上記カエデ科カエデ属樹木の樹液から高分子量のタンパク質を変性を伴わず得るために好適である。また、限外ろ過により、樹液に含まれるオリゴ糖のうちの多くのものや単糖などは限外ろ過膜を通過する。
限外ろ過では、分画分子量1000以上30000以下のフィルタを採用することが好ましい。さらに好ましくは分画分子量3000以上20000以下のフィルタを、特に好ましくは分画分子量5000以上15000以下のフィルタを採用することである。限外ろ過のフィルタの分画分子量が1000より小さいと、オリゴ糖等の糖が十分に除去されずに残留するおそれがある。また、限外ろ過のフィルタの分画分子量が30000より大きいと、比較的低分子量側のタンパク質を十分に捉えきれない。
(高分子量画分成分によるショ糖の反応行程)
高分子量画分成分によるショ糖の反応行程において用いられるショ糖は、スクロースとも呼ばれる二糖類である。ショ糖は、一般に流通している砂糖の主成分である。このため、工業的にも入手しやすく、且つ安全で安価な物質である。ショ糖の原料は、サトウキビ、サトウダイコン、モロコシ及びサトウカエデ等から抽出される。ショ糖は、この抽出されたものを精製することにより得られる。なお、ショ糖は、上述された植物から抽出されたものを原料としてもよいし、その他のショ糖を含むものから抽出されたものや、例えばデンプン等を分解して得られるものなどに代表される合成品であっても採用され得る。
高分子量画分成分によるショ糖の反応行程において、濃度1mol/Lのショ糖水溶液20容量部を入れたリザーバに、メープルサップ300容量部を限外ろ過したフィルタ上の残留成分をフィルタごと加え、3〜100mMリン酸緩衝液5容量部をさらに加える。得られた溶液を0〜45℃で1時間以上インキュベートする。続いて、得られた溶液を沸騰水浴中で1分間加熱して高分子量画分成分を失活させること、又は得られた溶液を限外ろ過することにより高分子量画分成分を除去することにより反応を停止させる。これにより、高分子量画分成分によるショ糖の反応物である糖組成物が得られる。なお、限外ろ過によりろ取された高分子量画分成分は、再利用することが可能である。
高分子量画分成分によるショ糖の反応行程において用いられるリン酸緩衝液のpHは、3.0から8.0であることが好ましい。より好ましくは、4.5から7.5であり、特に好ましくは、5.0から5.8である。リン酸緩衝液のpHが3.0以下であると、リン酸緩衝液の酸性度が強くなるため高分子量画分成分が変性される可能性が高くなる。また、リン酸緩衝液のpHが8.0以上であると、リン酸緩衝液は(中性または)アルカリ性となる。この環境下では、ショ糖が反応しにくくなる。なお、緩衝液は、リン酸以外にもクエン酸や酢酸などの緩衝液を用いることが可能である。
また、高分子量画分成分によるショ糖の反応行程において、前述された反応後に、糖組成物から所定の分子量の物質を画分する工程を採用してもよい。この画分には、ゲルろ過、各種クロマトグラフィー、及び電気泳動等の既知の手法が採用され得る。この画分工程には、ゲルろ過が採用されることが好ましい。ゲルろ過とは、カラムにつめた固定相にサンプルを通して、分子の大きさによって分離する手法である。固定相は、一般に多孔性粒子である。このため、通常大きなモル質量を持つものから順にカラムから溶出される。これにより、カラムから溶出する溶液を順番に一定の容量ずつフラクションごとに分けることにより、所定の分子量を多く含むフラクションが得られる。言い換えると、反応物から、さらに所定の大きさの分子を多く含むものが得られる。なお、ゲルろ過後に必要に応じて溶媒を減圧乾燥等によって除去することにより、得られた反応物を濃縮することも可能である。これにより、インベルターゼ阻害剤が得られる。
[インベルターゼ阻害剤中のオリゴ糖の確認]
インベルターゼ阻害剤は、インベルターゼ阻害剤としてのオリゴ糖を含む。このインベルターゼ阻害剤としてのオリゴ糖は、上記メープルサップや、メープルシロップ、メープルシュガーに含有されるオリゴ糖の一種である。
また、インベルターゼ阻害剤に含まれるインベルターゼ阻害剤としてのオリゴ糖は、下記の構造式(I)又は(II)で表される化合物のうちの少なくとも一方であることが好ましい。
Figure 2016153399
Figure 2016153399
インベルターゼ阻害剤としてのオリゴ糖は、インベルターゼ消化後、1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン(以下、PMPと記載することもある。)誘導体化して下記泳動条件でキャピラリー電気泳動に供したときに、PMP誘導体化グルコースに対して−3.7〜2.1cmmin−1kV−1の相対移動度を有するオリゴ糖であることが好ましい。
[泳動条件]
キャピラリー:内面未修飾のフューズドシリカキャピラリー(内径50μm、長さ58.5cm、有効長50cm)
印加電圧 :15kV
泳動溶液 :200mM ホウ酸緩衝液(pH10.5)
分析温度 :25℃
PMP誘導体化グルコースに対する相対移動度は、下記式(I)に示すとおり、各試料の電気泳動移動度からPMP誘導体化グルコースの電気泳動移動度を減ずることによって求められる。すなわち、インベルターゼ阻害剤としてのオリゴ糖の相対移動度は、インベルターゼ消化およびPMP誘導体化したインベルターゼ阻害剤としてのオリゴ糖の電気泳動移動度からPMP誘導体化グルコースの電気泳動移動度を減ずることにより求められる。ここで、電気泳動移動度は、下記式(II)から求められる。なお、式(II)中、中性物質としては、メシチルオキシド、シンナミルアルコール等の任意の適切な中性物質が用いられ得る。
式(I):[相対移動度(μeprel)]=[試料の電気泳動移動度]−[PMP誘導体化Glcの電気泳動移動度]
=L・l(t −1−t−1)V−1−L・l(t −1−tIS −1)V−1
=L・l(tIS −1−t−1)V−1(単位:cmmin−1kV−1
(L:キャピラリー全長(cm)、l:有効長(cm)、t: 中性物質の移動時間(min)、t:試料の移動時間(min)、tIS: 標準物質(PMP誘導体化グルコース)の移動時間(min)、V:印加電圧(kV))
式(II):電気泳動移動度(μep)=L・l(t −1−t−1)V−1(単位:cmmin−1kV−1
(L:キャピラリー全長(cm)、l:有効長(cm)、t: 中性物質の移動時間(min)、t:試料の移動時間(min)、V:印加電圧(kV))
キャピラリー電気泳動においては、電気浸透流速(l/t)の影響によって再現性が低下する場合があるが、相対移動度を求める式(I)においては、数式の項から電気浸透流速(l/t)が相殺され、除かれている。そのため、相対移動度は、信頼性が高い値として、エレクトロフェログラム上のピークの同定に有用である。また、式(II)に示すとおり、通常、電気泳動移動度を算出する際には測定試料に中性物質を添加する必要がある。これに対し、相対移動度は、予め比較対象となる成分を含む測定試料を用いることにより、中性物質を別途添加することなく求められ得る。そのため、相対移動度は、中性物質の添加による分離の影響を受けず、通常の電気泳動移動度よりも信頼性が高いと考えられる。特に、PMP誘導体化グルコースはインベルターゼ消化及びPMP誘導体化したインベルターゼ阻害剤としてのオリゴ糖と近い移動時間を有し、且つ分離に関する挙動が類似する。このため、PMP誘導体化グルコースを標準物質として用いた場合に得られる相対移動度の信頼性は十分に高いものであると考えられる。
また、インベルターゼ阻害剤に含まれるインベルターゼ阻害剤としてのオリゴ糖は、インベルターゼ消化することなく、PMP誘導体化して下記泳動条件でキャピラリー電気泳動に供したときに、PMP誘導体化グルコースに対して−3.7〜2.1cmmin−1kV−1の相対移動度を有するオリゴ糖であることが好ましい。なお、インベルターゼ阻害剤としてのオリゴ糖の相対移動度の求め方は上述したとおりである。
[泳動条件]
キャピラリー:内面未修飾のフューズドシリカキャピラリー(内径50μm、長さ58.5cm、有効長50cm)
印加電圧 :15kV
泳動溶液 :200mM ホウ酸緩衝液(pH10.5)
分析温度 :25℃
キャピラリー電気泳動で得られるエレクトロフェログラムのインベルターゼ阻害剤としてのオリゴ糖の面積値から、インベルターゼ阻害剤に含まれるインベルターゼ阻害剤としてのオリゴ糖の増減が確認できる。
[インベルターゼ阻害率の確認]
インベルターゼ阻害剤に精製水を加えて濃度7.09mg/mLの阻害剤水溶液を調製する。濃度20mg/mLのショ糖水溶液5μLに、阻害剤水溶液5μLを加えた後に、100mM酢酸酸緩衝液(pH4.5)5μLをさらに加える。得られた溶液に、1Unit/mLインベルターゼ水溶液1μL(0.001U)を加え、37℃で15分間インキュベートした後、沸騰水浴中で1分間加熱して酵素反応を停止させる。これにより、ショ糖のインベルターゼ消化物であるグルコースを得る。
上記インベルターゼ消化物に0.3mol/L のNaOH 50μLを加え、上記インベルターゼ消化物を完全に溶解する。得られた溶液に、0.5mol/L の1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロンメタノール溶液50μLを加えて混和し、70℃で30分間反応させる。次いで、反応液に0.3mol/LのHCl水溶液50μLを加えて中和し、中和後の反応液に精製水 100μLを加える。得られた溶液に対し、200μLのクロロホルムと激しく混和させて抽出を行うことにより過剰試薬を除去する。この抽出操作を3回繰り返した後、遠心式減圧装置で溶媒を完全に蒸発させて固体反応物を得る。この固体反応物を精製水100μLに溶解し、分析用試料とする。
前述の分析用試料を以下の条件で、キャピラリー電気泳動に供する。
[分析条件]
装置:キャピラリー電気泳動装置(キャピラリー:内面未修飾のフューズドシリカキャピラリー(内径50μm、有効長50cm、)
泳動溶液:200mMホウ酸緩衝液(pH10.5)
印加電圧:15kV
検出波長:245nm
試料導入:加圧法(50mbar×4sec)
分析温度:25℃
インベルターゼの反応開始から一定時間におけるキャピラリー電気泳動のエレクトロフェログラムのグルコースに由来するピークの面積値を求める。また、阻害率を求めるために、前述されたインベルターゼ阻害率の確認のための分析用試料の調製において、ショ糖水溶液5μLに代えて精製水5μLを加えたもの(ブランク)及び阻害剤水溶液5μLに代えて精製水5μLを加えたもの(コントロール)についても同様に試験を行い、それぞれ同様に測定を行う。これらブランク及びコントロールについても反応開始から一定時間におけるキャピラリー電気泳動のエレクトロフェログラムのグルコースに由来するピークの面積値を求める。阻害率は、以下の式(III)によって求める。
式(III)=100−100(G1−G2)/G3
(G1:ショ糖水溶液に阻害剤水溶液及びインベルターゼ水溶液を加えて得られる反応物中におけるグルコースに由来するピークの面積値、G2:精製水に阻害剤水溶液及びインベルターゼ水溶液を加えて得られる反応物(ブランク)中におけるグルコースに由来するピークの面積値、G3:ショ糖水溶液に精製水及びインベルターゼ水溶液を加えて得られる反応物(コントロール)中のグルコースに由来するピークの面積値)
以下、本発明の実施例を説明する。なお、本発明が本実施例に限定されないことは言うまでもない。
[実施例1]
(高分子量画分成分の取得行程)
サトウカエデのメープルサップとし、メープルサップ9Lに保存料として、1,3−ブタンジオール( 1,3−buthanediol)1L及び4‐ヒドロキシ安息香酸メチル(methyl 4−hydroxybenzoate)25gを加えたものを用意した。メープルサップ 300mLを、分画分子量10000のフィルタ(MILLIPORE社製:Ultracel 10kDa:直径44.5mm)を、Stirred Ultrafiltration Cell Model 8050(MILLIPORE社製)に装着して、窒素ガスで加圧しながら約4℃の低温下で限外ろ過を行った。限外ろ過後、精製水でフィルタ上の残留成分を洗浄した後に、フィルタ上の残留成分を得た。これにより、メープルサップに含まれる高分子量画分成分を得た。
(高分子量画分成分によるショ糖の反応行程)
濃度1mol/Lのショ糖(ナカライテスク社製)水溶液20mlを入れた気密容器に、上記フィルタ上の残留成分をフィルタごと加え、25mMリン酸緩衝液(pH5.0)5mLをさらに加えた。得られた溶液をそれぞれ37℃で、0時間、48時間、96時間、144時間、168時間(1週間)192時間、264時間、336時間(2週間)及び648時間インキュベートした後、沸騰水浴中で1分間加熱して反応を停止させた。これにより、高分子量画分成分によるショ糖の反応物である糖組成物を得た。
(インベルターゼ阻害剤中のインベルターゼ阻害剤としてのオリゴ糖の確認)
上記糖組成物10μLに、0.3M NaOH 50μLを加え、上記反応物を完全に溶解した。得られた溶液に、0.5mol/L 1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン(キシダ化学社製)のメタノール溶液50μLを加えて混和し、70℃で30分間反応させた。次いで、反応液を0.3mol/L HClを用いて中和し、中和後の反応液に精製水100μLを加えた。得られた溶液に対し、200μLのクロロホルムで3回抽出を行うことにより過剰な試薬を除去し、遠心式減圧装置で溶媒を完全に蒸発させて固体反応物を得た。この固体反応物を精製水 100μLに溶解し、分析用試料とした。
上記PMP誘導体化した分析用試料を、以下の条件でキャピラリー電気泳動を行って、各反応時間(0時間、48時間、96時間、144時間、192時間、及び264時間)において得られた反応物に含まれるインベルターゼ阻害剤としてのオリゴ糖の面積値を得た。その結果を表1に示す。表1は、高分子量画分成分によるショ糖の反応行程におけるインベルターゼ阻害剤としてのオリゴ糖の生成量の経時変化を示した表である。
Figure 2016153399
図1は、高分子量画分成分によるショ糖の反応後168時間(1週間)経過した反応物をPMP誘導体化した後に、以下の条件でキャピラリー電気泳動に供して得られたエレクトロフェログラムである。図2は、高分子量画分成分によるショ糖の反応後336時間(2週間)経過した反応物をPMP誘導体化した後に、以下の条件でキャピラリー電気泳動に供して得られたエレクトロフェログラムである。
[分析条件]
装置:キャピラリー電気泳動装置(アジレントテクノロジー社製、製品名「CE」)
キャピラリー:内面未修飾のフューズドシリカキャピラリー(内径50μm、長さ58.5cm、有効長50cm、ジーエルサイエンス社製、製品名「Fused Silica Capillary Tubing」)
泳動溶液:200mMホウ酸緩衝液(pH10.5)
印加電圧:15kV
検出波長:245nm
試料導入:加圧法(50mbar×4sec)
分析温度:25℃
泳動溶液は、四ホウ酸ナトリウム(ナカライテスク社製)を精製水中に溶解し、pHメーターでpHを測定しながら水酸化ナトリウムを加えてpH10.5とした後にメスアップして正確にホウ酸濃度として200mMとすることにより調製した。使用時は、脱気し、次いで、メンブレンフィルタ(孔径0.45μm)でろ過した後に使用した。
また、インベルターゼ阻害剤としてのオリゴ糖のPMP誘導体化グルコースに対する相対移動度は、下記式(I)から求めた。また、電気泳動移動度は、下記式(II)から求めた。
式(I):[相対移動度(μeprel)]=[試料の電気泳動移動度]−[PMP誘導体化Glcの電気泳動移動度]
=L・l(t −1−t−1)V−1−L・l(t −1−tIS −1)V−1
=L・l(tIS −1−t−1)V−1(単位:cmmin−1kV−1
(L:キャピラリー全長(cm)、l:有効長(cm)、t: 中性物質の移動時間(min)、t:試料の移動時間(min)、tIS: 標準物質(PMP誘導体化グルコース)の移動時間(min)、V:印加電圧(kV))
式(II):電気泳動移動度(μep)=L・l(t −1−t−1)V−1(単位:cmmin−1kV−1
(L:キャピラリー全長(cm)、l:有効長(cm)、t: 中性物質の移動時間(min)、t:試料の移動時間(min)、V:印加電圧(kV))
インベルターゼ阻害剤に含まれるインベルターゼ阻害剤としてのオリゴ糖は、PMP誘導体化して上記泳動条件でキャピラリー電気泳動に供したときに、PMP誘導体化グルコースに対して−3.7〜2.1cmmin−1kV−1の相対移動度であった。
(インベルターゼ阻害率の確認)
高分子量画分成分によるショ糖の反応後648時間経過した反応物を、内径25mmのエコノカラム(Bio Rad社製)にSephadex G−15 Medium(SIGMA−ALDRICH社製)を60cmの高さまで充填したカラム及び溶離液として精製水(MILLIPORE社製 MilliQ製品名 使用)を用いてゲルろ過を行った。フラクションコレクターを200滴(約4.85mL)ごとに1フラクションとして画分した。得られた各フラクションについて、糖が含有されているか否かを確認し、高分子量画分(糖が最初に確認されたフラクションから順に7本(30から36番目))を集めて凍結乾燥した。これにより、高分子量画分成分によるショ糖の反応物から、インベルターゼ阻害剤としてのオリゴ糖が含まれる反応物(以下、「阻害剤」と言う。)を画分した。
(インベルターゼ阻害剤中のオリゴ糖の確認)
得られた上記阻害剤中のオリゴ糖について、核磁気共鳴スペクトルH−NMR及び13C−NMRの測定を行った結果を以下に示す。なお、以下のH−NMR及び13C−NMRによる構造解析に用いたナンバリングは、後述の構造式(I)に基づくものとする。
H−NMR(800MHz:測定溶媒:DO)化学シフト:3.28(C−2),351(C−3),3.70(C−1’),3.73(C−6’),3.74(C−5),3.78(C−1’),3.85(C−6’),3.88(C−4),3.90(C−5’),4.00(C−6),4.06(C−6),4.15(C−4’),4.20(C−3’), 4.67(C−1)
13C−NMR(200MHz:測定溶媒:DO) 化学シフト:62.9 (C−1’), 63.5 (C−6),65.1(C−6’), 75.1(C−4), 75.3(C−5), 76.8(C−2), 77.3 (C−4’), 78.3 (C−3), 79.3 (C−3’), 83.8(C−5’), 98.7(C−1), 106(C−2’)
上記阻害剤中のオリゴ糖について、高速液体クロマトグラフ質量分析装置(LC−MS)を用いて質量分析を行った。質量分析装置は、LTQ(Thermo社製)を用いた。
上記阻害剤中のオリゴ糖−PMP誘導体のポジティブモードでの質量分析の結果は、m/z=673となり、オリゴ糖の分子量は、342であることが解った。分析条件を以下に示す。
<LC条件>
・ カラム:TSKgel ODS−100S(5μm,150×4.6mmi.d.,東ソー株式会社製)
・ 移動相:A:5mM 酢酸アンモニウム/酢酸(pH4)B:アセトニトリル,B:5%(0min)→B:50%(55min)
・ 流量:200μL/min
・ カラム温度:室温
・ 注入量:10μL
<MS条件>
・ イオン化:ESI mode
・ スプレー電圧:4.5kV(Positive)
・ シースガス流量:50arb
・ 補助ガス流量:5arb
・ キャピラリー温度:270℃
・ キャピラリー電圧:20V
・ チューブレンズオフセット電圧:100V
核磁気共鳴スペクトル(H−NMR、13C−NMR)の測定結果、質量分析の結果、及びさらに各種2次元NMR(H−H COSY、 HMBC、 HSQC)の測定を行った結果から、インベルターゼ阻害剤中のオリゴ糖は、下記の構造式(I)又は(II)のうちの少なくともいずれか一方で表される化合物であることが明らかになった。インベルターゼ阻害剤中のオリゴ糖は、グルコース1分子とフルクトース1分子とが結合したものと考えられる。
Figure 2016153399
Figure 2016153399
阻害剤に精製水を加えて溶解させ、濃度7.09mg/mLの第1阻害剤水溶液を得た。濃度20mg/mLのショ糖(ナカライテスク社製)水溶液5μLに、5μLの第1阻害剤水溶液を加えた後に、100mM酢酸酸緩衝液(pH4.5)5μLをさらに加えた。得られた溶液に、1Unit/mLインベルターゼ水溶液(0.001U)(生化学工業社製、製品名「Inverterse(candida utilis)」)1μLを加え、37℃で15分間インキュベートした後、沸騰水浴中で1分間加熱して酵素反応を停止させた。これにより、ショ糖のインベルターゼ消化物であるグルコースを得た。
インベルターゼ消化物に、0.3M NaOH 50μLを加え、インベルターゼ消化物を完全に溶解した。得られた溶液に、0.5mol/L 1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン(キシダ化学社製)のメタノール溶液50μLを加えて混和し、70℃で30分間反応させた。次いで、反応液を0.3mol/L HClを用いて中和し、中和後の反応液に精製水 100μLを加えた。得られた溶液に対し、200μLのクロロホルムで3回抽出を行うことにより過剰な試薬を除去し、遠心式減圧装置で溶媒を完全に蒸発させて固体反応物を得た。この固体反応物を精製水 100μLに溶解し、分析用試料とした。
分析用試料を以下の条件で、キャピラリー電気泳動に供した。
[分析条件]
装置:キャピラリー電気泳動装置(アジレントテクノロジー社製、製品名「CE」)
キャピラリー:内面未修飾のフューズドシリカキャピラリー(内径50μm、長さ58.5cm、有効長50cm、ジーエルサイエンス社製、製品名「Fused Silica Capillary Tubing」)
泳動溶液:200mMホウ酸緩衝液(pH10.5)
印加電圧:15kV
検出波長:245nm
試料導入:加圧法(50mbar×4sec)
分析温度:25℃
泳動溶液は、四ホウ酸ナトリウム(ナカライテスク社製)を精製水中に溶解し、pHメーターでpHを測定しながら水酸化ナトリウムを加えてpH10.5とした後にメスアップして正確にホウ酸濃度として200mMとすることにより調製した。使用時は、脱気し、次いで、孔径0.45μmのメンブレンフィルタ(MILLIPORE社製)でろ過してから使用した。
得られた分析用試料をキャピラリー電気泳動に供して得られたエレクトロフェログラムのグルコースに由来するピークの面積値を表2に示す。また、阻害率を求めるため、以下に述べるブランク及びコントロールの試料についてもそれぞれ測定を行った。上述されたインベルターゼ阻害率の確認のための分析用試料の調製において、ブランクの試料はショ糖水溶液5μLに代えて精製水5μLとし、コントロールの試料は阻害剤水溶液5μLに代えて精製水5μLとしてそれぞれ調製した。これらブランク及びコントロールのグルコースに由来するピークの面積値を表2に示す。なお、表2に示される阻害率は、以下の式(III)によって求めた。
式(III)=100−100(G1−G2)/G3
(G1:ショ糖水溶液に阻害剤水溶液及びインベルターゼ水溶液を加えて得られた反応物中におけるグルコースに由来するピークの面積値、G2:精製水に阻害剤水溶液及びインベルターゼ水溶液を加えて得られた反応物(ブランク)中におけるグルコースに由来するピークの面積値、G3:ショ糖水溶液に精製水及びインベルターゼ水溶液を加えて得られた反応物(コントロール)中のグルコースに由来するピークの面積値)
Figure 2016153399
インベルターゼ阻害剤に含まれるインベルターゼ阻害剤としてのオリゴ糖は、インベルターゼ消化後PMP誘導体化して上記泳動条件でキャピラリー電気泳動に供したときに、PMP誘導体化グルコースに対して−3.7〜2.1cmmin−1kV−1の相対移動度であった。
[実施例2]
第1阻害剤水溶液に代えて第1阻害剤水溶液を精製水でさらに20倍に希釈した第2阻害剤水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にしてインベルターゼに対する阻害率の確認を行った。また、ブランクについても実施例1と同様に試験を行った。実施例2及び実施例2に係るブランクのグルコースに由来するピークの面積値を表2に示す。
[実施例3]
第1阻害剤水溶液に代えて第1阻害剤水溶液を精製水でさらに100倍に希釈した第3阻害剤水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にしてインベルターゼに対する阻害率の確認を行った。また、ブランク及びコントロールについても実施例1と同様に試験を行った。実施例3及び実施例3に係るブランク及びコントロールのグルコースに由来するピークの面積値を表2に示す。
[実施例4]
1Unit/mLインベルターゼ水溶液に代えて20Unit/mLインベルターゼ水溶液を用いたこと以外は実施例1と同様にしてインベルターゼに対する阻害率の確認を行った。また、ブランク及びコントロールについても実施例1と同様に試験を行った。実施例4及び実施例4に係るブランク及びコントロールのグルコースに由来するピークの面積値を表2に示す。
[比較例1]
メープルサップに代えてメープルサップを煮詰めて得られるメープルシロップ(DARK)を40倍に希釈したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして高分子量画分成分の取得行程と高分子量画分成分によるショ糖の反応行程を行った。得られた反応液中のインベルターゼ阻害剤としてのオリゴ糖を実施例と同じ方法により確認した。図3及び図4は比較例1において得られた反応液のキャピラリー電気泳動のエレクトロフェログラムである。図3は、インベルターゼの反応後0時間経過後において得られた反応物をキャピラリー電気泳動に供したものであり、図4は、インベルターゼの反応後120時間経過後において得られた反応物をキャピラリー電気泳動に供したものである。
[評価]
図1は、実施例1における高分子量画分成分及びショ糖のインキュベート168時間(1週間)経過後のキャピラリー電気泳動で得られたエレクトロフェログラムであり、図2は、336時間(2週間)経過後のキャピラリー電気泳動で得られたエレクトロフェログラムである。図1及び図2から、高分子量画分成分及びショ糖のインキュベート時間が経過するにつれインベルターゼ阻害剤としてのオリゴ糖が増加することが確認された。
表1は、実施例1における高分子量画分成分及びショ糖のインキュベートの各反応時間(0時間、48時間、96時間、144時間、192時間、及び264時間)において得られた反応物に含まれるインベルターゼ阻害剤としてのオリゴ糖の面積値の経時変化を示したものである。表1に示されるように、高分子量画分成分及びショ糖のインキュベート時間が経過するにつれ、インベルターゼ阻害剤としてのオリゴ糖が徐々に増加することが確認された。これより、インキュベート時間が経過するにつれてインベルターゼ阻害剤としてのオリゴ糖が生成されて増加することが確認された。
図3は、比較例1における高分子量画分成分及びショ糖のインキュベート0時間経過後のキャピラリー電気泳動で得られたエレクトロフェログラムであり、図4は、120時間経過後のキャピラリー電気泳動で得られたエレクトロフェログラムである。図3及び図4のいずれのエレクトロフェログラムでも、インベルターゼ阻害剤としてのオリゴ糖のピークは確認されなかった。これから、ショ糖と反応してインベルターゼ阻害剤としてのオリゴ糖を生成する高分子量画分成分が、メープルシロップ(DARK)には含まれていないものと推測される。また、メープルシロップ(DARK)はメープルサップを煮詰めて作成されるため、加熱によりメープルサップ中の高分子量画分成分が変性され高分子量画分成分の酵素としての機能が失活されたものと考えられる。
表2に示されるように、 実施例1から実施例3に係るインベルターゼの反応後における各エレクトロフェログラムのグルコースに由来するピークの面積値から、加えた阻害剤の量が多いほど、インベルターゼの阻害率が大きくなることが確認された。また、実施例1と実施例4の結果を比較すると、インベルターゼを加える量が少ないほど、より阻害剤の効果が大きくなることが確認された。
[インベルターゼ阻害剤を用いた糖負荷実験]
実施例1と同様にして得られたインベルターゼ阻害剤を用いて糖負荷実験を行った。なお、糖負荷実験において用いたインベルターゼ阻害剤は、高分子量画分成分によるショ糖の反応時間を27日間としたものである。また、高分子量画分を集めて凍結乾燥したものには、インベルターゼ阻害剤としてのオリゴ糖が0.34mg含まれ、また、ショ糖が476mg含まれていた。
ショ糖0.5g/mLのみを含む水溶液(以下、「A液」とも呼ぶ。)と、ショ糖0.5g/mLとインベルターゼ阻害剤としてのオリゴ糖0.085mg/mLを含む水溶液(以下、「B液」とも呼ぶ。)とを調製した。
7週齢のラット6頭を2群に分けて、一方の群にA液をショ糖が1.5g/kgとなる量を経口投与し、他方の群にB液をショ糖が1.5g/kgとなる量を経口投与した。投与前、投与後30分、60分、90分、120分、180分においてラットの尾静脈より採血を行い、遠心分離して血清を得た。得られた血清について、グルコース定量キット(バイオビジョン社製)を用いて血糖値を測定した。また、ラット6頭の群を入れ替えて同様の糖負荷実験を行った。得られた各測定値から投与前の血糖値を差し引いた値の平均及び標準誤差を図5に示す。
図5から明らかなように、A液を投与したラットの血糖値の経時変化に対して、B液を投与したラットの血糖値の経時変化が明らかに低いことが確認された。また、得られた血糖値上昇、減衰曲線における曲線下面積(AUC)は、A液を投与したラットのものに対して、B液を投与したラットのものが、明らかに低値を示すことが確認された。したがって、インベルターゼ阻害剤としてのオリゴ糖を含む糖組成物は、ショ糖と比較して低GIであることが確認された。

Claims (11)

  1. カエデ科カエデ属樹木の樹液から得られた高分子量画分成分にショ糖を反応させることにより糖組成物を得る糖組成物製造方法。
  2. 上記糖組成物から所定の分子量の物質を画分することによって、少なくともオリゴ糖を含むインベルターゼ阻害剤を得る請求項1に記載の糖組成物製造方法。
  3. 上記カエデ科カエデ属樹木が、サトウカエデ、イタヤカエデ、クロカエデ、アメリカハナノキ、ギンカエデ、シロスジカエデ、アメリカヤマモミジ、およびノルウェーカエデからなる群より選択される少なくとも一種である請求項1又は2に記載の糖組成物製造方法。
  4. カエデ科カエデ属樹木の樹液を限外ろ過することにより上記高分子量画分成分を得る請求項1から3のいずれかに記載の糖組成物製造方法。
  5. 上記限外ろ過は、分画分子量1000以上30000以下のフィルタによるものである請求項4に記載の糖組成物製造方法。
  6. 上記高分子量画分成分とショ糖とが、pH4.0から8.0の緩衝液中で反応される請求項1から5のいずれかに記載の糖組成物製造方法。
  7. 上記糖組成物が低GIである請求項1から6のいずれかに記載の糖組成物製造方法。
  8. 上記オリゴ糖が、インベルターゼ消化後、1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン誘導体化して下記泳動条件でキャピラリー電気泳動に供したときに、1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン誘導体化グルコースに対して−3.7〜2.1cmmin−1kV−1の相対移動度を有するオリゴ糖を含む請求項2に記載の糖組成物製造方法。
    [泳動条件]
    キャピラリー:内面未修飾のフューズドシリカキャピラリー(内径50μm、長さ58.5cm、有効長50cm)
    印加電圧 :15kV
    泳動溶液 :200mM ホウ酸緩衝液(pH10.5)
    分析温度 :25℃
  9. 上記オリゴ糖が、インベルターゼ消化することなく、1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン誘導体化して下記泳動条件でキャピラリー電気泳動に供したときに、1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン誘導体化グルコースに対して−3.7〜2.1cmmin−1kV−1の相対移動度を有するオリゴ糖を含む請求項2に記載の糖組成物製造方法。
    [泳動条件]
    キャピラリー:内面未修飾のフューズドシリカキャピラリー(内径50μm、長さ58.5cm、有効長50cm)
    印加電圧 :15kV
    泳動溶液 :200mM ホウ酸緩衝液(pH10.5)
    分析温度 :25℃
  10. 上記オリゴ糖が、下記の構造式(I)又は(II)で表される化合物のうちの少なくとも一方である請求項2に記載の糖組成物製造方法。
    Figure 2016153399
    Figure 2016153399
  11. 下記の構造式(I)又は(II)で表される化合物のうちの少なくとも一方を主成分として含有するインベルターゼ阻害剤。
    Figure 2016153399
    Figure 2016153399

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