JP3012917B2 - 糖鎖分子量マーカーおよびその製造方法 - Google Patents

糖鎖分子量マーカーおよびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、糖鎖分子量マーカ
ーおよびその作成方法に関する。より詳細には、従来作
成が非常に困難であった、分子量10,000以上の単一分子
量をもつ直鎖型糖鎖分子量マーカー、およびその作成方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年のバイオテクノロジーの発展は、核
酸や蛋白質の分離・分析手法の進展に支えられてきた
が、これらの手法において単位操作の確実性を検定する
ためには、化学的性質が完全に記述された標準核酸や、
標準蛋白質の存在が大きな役割を果してきた。一方、21
世紀の産業を担う技術として注目を集めている糖鎖生物
学や糖質工学においては、核酸や蛋白質に見られるよう
な、完全に化学的性質が記述された標準物質の整備が充
分ではない。特に、重合度が大きな糖鎖では、完全に単
分散である標準糖を確保することは、今日でも非常に困
難である。
【0003】本発明は、こうした糖鎖生物学や糖質工学
の現状に対して、分子量20,000までの範囲にわたって、
分子量分布がほとんどなく、かつ化学的性質が完全に記
述された標準糖鎖を提供することにより、この領域の基
盤技術の発展に寄与しようとするものである。
【0004】従来、分子量分布の小さい直鎖型糖鎖分子
量マーカーは、アミロース、デキストラン、ラミナラ
ン、プルランなどの直鎖型多糖を、酸あるいは酵素によ
り部分分解し、分解産物をゲル濾過あるいはアミン結合
型シリカカラムを用いた順相クロマトグラフィーを用い
て分画することにより、単離・精製されてきた。この手
法により実用的に調製される単一分子量マーカーは、最
も大きいもので、グルコースの重合度にして45、分子量
に換算して約7,000 程度であり(カーボハイドレート
アナリシス(Carbohydrate Analysis), pp45-51, M. F.
Chaplin 他編, IRL PRESS, 1986 年) 、多糖の領域であ
る分子量10,000以上においては、完全に単分散な標準糖
質を提供することは極めて困難であると考えられてき
た。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、高分
子多糖の領域である分子量10,000以上においても利用可
能な、分子量分布のない単一分子量マーカーとその簡便
な製造方法とを提供することにある。
【0006】上述したように、従来技術では分子量約7,
000を越える範囲においては、分子量分布がほとんどな
い均一な糖鎖分子量マーカーを製造することは極めて困
難であり、分子量7,000以上の領域で実用となる単一分
子量マーカーは存在しなかった。また、糖鎖の分離や調
製を短時間のうちに簡便に行う手法として、高速液体ク
ロマトグラフィーが最も優れているが、高重合度の中性
オリゴ糖あるいは中性多糖を試料としたとき、分子量1
0,000以上の領域において、微小な分子量の差を区別
し、十分な分離と試料の回収が可能な高速液体クロマト
グラフィーの手法は知られていなかった。
【0007】糖質の分離を行う高速液体クロマトグラフ
ィーにおいて実用的に利用されるカラムには、順相分配
モード、逆相分配モード、分子篩モード、およびイオン
交換モードの4種類の分離モードをもつカラムが存在す
る。このうち、イオン交換モードのカラムでは、高濃度
のアルカリ溶液を容離液として、重合度55程度までの糖
鎖を分離できることが知られている。しかし、このよう
にして分離された試料は検出器中で電気化学的に酸化さ
れ回収できない。また、実用的に利用できる分子篩モー
ドのカラムでは、単一分子量をもつ糖鎖として回収でき
る最大重合度は、グルコースにして20程度までにすぎな
い。
【0008】一方、アセトニトリル−水系の容離液を用
いた順相および逆相分配モードのカラムでは、重合度35
程度までの範囲にわたって糖質の分離・回収が可能であ
ることが知られている。しかし、グルコース単位1個の
差異を区別する通常のクロマトグラフィーを行うには、
容離液中のアセトニトリルの濃度が50容量%以上である
必要がある。このため、この容離液に溶解しない重合度
40以上の糖鎖断片の分離には利用できないものと考えら
れてきた。
【0009】
【課題を解決するための手段】糖質のクロマトグラフィ
ーにおいて、順相分配モードの担体を充填したカラムと
アセトニトリル濃度50%未満の組成をもつ溶離液とを用
いると、グルコース単位ではなくマルトトリオース単位
の差異をもつ糖質試料を分離、精製することが可能であ
ることが、本発明者らによって明らかになった。ここで
分離、精製した糖質には従来知られていなかった高分子
量のものも含まれるため、このような試料を順相クロマ
トグラフィーで分離精製できることが示された。
【0010】そこで、本発明者らは、近年利用可能にな
った新しいタイプの順相型糖質分離用クロマトグラフィ
ー担体である、アミド結合型シリカを用いて糖質の溶離
条件を詳細に検討した。その結果、溶離条件を工夫する
ことにより、従来分離できないと考えられていた分子量
10,000以上の水溶性の中性多糖の分離にこの担体を利用
できること、また混合物中の各糖類の分子量の差が、50
0 程度であれば相互に分離できることを見い出し、適度
に調整された分子量分布をもつ糖質試料を、このカラム
を用いたクロマトグラフィーにより分画することによ
り、分子量20,000までの範囲にわたって単一分子量をも
つ、糖鎖マーカーを単離することに成功した。
【0011】すなわち、本発明は、サブユニットがマル
トトリオース単位であり、分子量分布のない単一分子量
を有する分子量10,000以上の直鎖型糖鎖分子量マーカー
である。そして、上記直鎖型糖鎖分子量マーカーの分子
量は、10,000から22,000までの範囲にある。
【0012】また、本発明は、サブユニットがマルトト
リオース単位である直鎖型糖を上記糖の分解酵素で部分
分解する工程と、上記部分分解した分解産物から9糖以
下の成分含量を低減する工程と、上記9糖以下の成分含
量を低減した産物を順相分配モードのカラムと50%未満
のアセトニトリルを溶離液として用いる高速液体クロマ
トグラフィーにより分離し精製する工程と、を含むこと
を特徴とする上記直鎖型糖鎖分子量マーカーの製造方法
である。さらに、上記直鎖型糖は、そのサブユニットが
α−1→6結合でつながっているグルカンであり、上記
糖の分解酵素がグルカナーゼである。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明は、適度に制御された分子
量をもつ糖質試料の調製と、この試料から単一の分子量
をもつ糖鎖を分離するクロマトグラフィー手法とで構成
される。
【0014】以下に、これらの内容について具体的に説
明する。本発明において糖質試料の調製原料としては、
サブユニットがマルトトリオース単位である直鎖型糖が
用いられる。上記直鎖型糖は、サブユニットとしてマル
トトリオース単位を含み、そのサブユニット同士がα−
1→6結合でつながっているグルカンであることが好ま
しい。このようなグルカンとしては、具体的にはプルラ
ンを挙げることができる。プルランは、黒色酵母Aureob
asidium pullulansによってスクロースなどから生成さ
れる細胞外多糖であり、マルトトリオース単位が、α−
1,6−グルコシド結合で規則的に結合した水溶性の直鎖
中性多糖である。
【0015】上記の糖質試料を調製するためには、上記
の直鎖型多糖をグルカナーゼで加水分解する。グルカナ
ーゼはエンド型とエキソ型に大別されるが、分子量の大
きな糖鎖分子量マーカーとして使用できる加水分解物を
得るためには、非還元性末端から特定のグルコース単位
を切り離していくエキソ型のグルカナーゼではなく、糖
鎖分子内で切断をするエンド型グルカナーゼを使用する
ことが好ましい。α1→6結合のみを選択的に加水分解
する酵素を使用することがさらに好ましい。
【0016】このような酵素としては、具体的には、プ
ルラナーゼを挙げることができる。プルラナーゼは、Ae
robacterなどから得られるα−デキストリンエンド−1,
6−グルコシダーゼであり、α−1,6−グルコシド結合
を特異的に加水分解によって切断する。したがって、こ
の酵素によるプルランの部分分解で生成されるプルラン
断片は、相互にマルトトリオース単位の分子量差を有す
ることが期待される。マルトトリオース単位の分子量は
約487 であり、プルランをプルラナーゼで部分分解する
ことにより、分子量にして約 500づつの差をもち、かつ
化学構造が明確な直鎖型糖鎖断片の混合物を調製するこ
とができる。
【0017】このとき使用されるプルランは、できるだ
け純度の高いものが望ましいが、化学試薬として供給さ
れる純度であれば十分である。また、プルラナーゼも純
度の高いものが望ましいが、α−グルコシダーゼやα−
アミラーゼなど、マルトトリオース単位の内部結合に作
用する成分が含まれていない標品であれば、十分に利用
できる。プルランのプルラナーゼによる部分分解は、プ
ルラン濃度が0.5 〜20%、酵素濃度が0.1 〜10単位/mL
の範囲の水溶液中において行われる。
【0018】一般に、酵素反応においては、pHや温度等
の反応条件が重要となる。本発明においては、使用され
るプルラナーゼが活性を保っている範囲内でpHや温度を
設定すればよく、通常、温度35℃〜60℃、pH4.0 〜8.0
の範囲において、プルランの部分分解を行う。ここで、
プルラナーゼの1単位は、プルランの終濃度0.25%、温
度40℃において、使用される酵素の最適反応pH条件下
で、1分間に1μmoleのマルトトリオースを生成する酵
素量である。反応時間は、後述するクロマトグラフィー
により、各分子量をもつ成分の割合をモニターしながら
適宜決定する。通常、10分〜1時間の範囲の時間であ
る。反応時間が経過した後、直ちに反応液を煮沸して酵
素を失活させてプルランの分解反応を終了させ、酵素に
よるプルランの部分分解産物を得る。
【0019】このようにして調製されたプルランの酵素
による部分分解産物中には、酵素反応から予想されるよ
うに、マルトトリオースをはじめとする9糖までの各種
の低分子量のオリゴ糖が含まれている。このため、この
部分分解産物を透析チューブに入れて純水に対して十分
に透析し、これらの9糖までの低分子量成分をできるだ
け除去する。透析後、チューブ内に残った内容物を減圧
濃縮し、次の工程で使用するクロマトグラフィーに供す
る試料とする。
【0020】本発明の直鎖型糖鎖分子量マーカーは、サ
ブユニットがマルトトリオース単位である直鎖型糖を上
記糖の分解酵素で部分分解する工程と、上記部分分解し
た分解産物から9糖以下の成分含量を低減する工程と、
上記9糖以下の成分含量を低減した産物を順相分配モー
ドの充填カラムと50%未満のアセトニトリルを含む順相
系高速液体クロマトグラフィーにより分離し精製する工
程とを有することを特徴とする製造製方法により製造さ
れる。
【0021】この製造方法においては、糖鎖分子量マー
カーの分離と精製とは、以下に示す装置を用いて、以下
に示す高速液体クロマトグラフィー(HPLC)条件下で行
われる。使用する高速液体クロマトグラフ装置は、溶媒
脱気装置、高圧定量ポンプ、高圧試料注入器、カラムオ
ーブン、カラム、示差屈折率検出器、記録計およびフラ
クションコレクターから構成される。少量の試料から所
望の糖鎖分子量マーカーを分離し調製するためには、分
析用に市販されている装置で十分であるが、より大量に
製造するためには、製造用につくられた装置を利用する
ことで対応することが必要となる。
【0022】HPLCに供された試料中に含まれる糖鎖は、
上記のクロマトグラフ装置中に含まれるカラムとして順
相分配モードをもつシリカ充填カラムを用いて相互に分
離することができる。このようなカラムとしては、株式
会社東ソーより市販されているTSKgel Amide 80 、YMC
製Polyamin II などを利用することができる。これらの
カラムを脱気したアセトニトリル−水系の溶離液で平衡
化し、その後試料を高圧試料注入器より注入する。平衡
化に用いたと同一の組成をもつ溶離液を脱気装置で脱気
し、この容離液によってカラム内に保持された各成分を
順次溶出することにより、試料中に含まれる糖鎖を分離
する。
【0023】糖鎖の分離に使用する溶離液の組成は、水
とアセトニトリルであり、水に対するアセトニトリルの
容量パーセント濃度は50%未満であり、38〜43%の範囲
であることが好ましい。より高分子量のプルラン断片を
調製する上では、極性の高い容離液を用いることが好適
であるため、容離液中のアセトニトリル濃度を38%程度
と低くする。
【0024】カラム温度は室温から担体の許容温度まで
とし、カラムオーブンにより調節する。上記のアミド結
合型シリカカラムの許容温度は80℃であるため、この温
度までの範囲の一定の温度として、溶出される糖鎖成分
の保持時間を安定させる。また、カラム温度を高める
と、溶離液の流動性が高くなり、その結果としてカラム
の圧損が小さくなるため、流速を高めることができるこ
とから、カラム温度は高い方が好ましい。本発明におい
ては、好ましくは、25℃以上、より好ましくは80℃で使
用する。
【0025】溶離液の流速は、使用するカラムの耐圧以
下の圧力を発生する流速であればよく、特に限定されな
いが、一般的な流速は、0.5 〜2mL/分程度である。本
発明で用いる溶離液は水−アセトニトリルであり、この
容離液中に含まれるアセトニトリル濃度は、50%未満で
ある。
【0026】容離液の組成、カラム温度、流速などの糖
鎖成分を分離する各要素の具体的な組み合わせは、どの
程度の分子量をもつ糖鎖マーカーを調製するかに基づい
て決定される。例えば、カラム内径4.6mm 、カラム長25
0mm の、通常入手可能な市販のアミド結合型カラムを用
いて、保持時間30分以内に分子量20,000前後のプルラン
断片を得るためには、容離液として水−アセトニトリル
(アセトニトリル濃度38%)、カラム温度80℃、流速1.
5 mL/分の条件が選ばれる。
【0027】この条件においては、分子量10,000以下の
プルラン断片の分離は十分ではないが、分子量10,000か
ら22,000の範囲において、マルトトリオースを単位とす
る、異なる分子量をもつプルラン断片を相互に分離する
ことができる。一方、水−アセトニトリル系の容離液中
のアセトニトリル濃度を43%とし、その他の条件を同一
にすると、保持時間30分以内に分子量10,000までのプル
ラン断片として得られるオリゴ糖を相互に十分に分離す
ることができる。
【0028】本発明のクロマトグラフィーの方法に従っ
て分離された、各々の分子量をもつプルラン断片は、検
出器の応答とフラクションコレクターとを同調させ、単
一分子量をもつ成分として分画し回収される。一回のク
ロマトグラフィーでは分離が不十分な場合には、再度ク
ロマトグラフィーを行うことにより、容易に、単一な分
子量を有する均一な成分を含む画分として得ることがで
きる。各画分に含まれる溶離液を、減圧濃縮等の通常用
いられる濃縮方法によって除去すると、最終的に単一分
子量をもつ糖鎖成分を固形物として得ることができる。
【0029】
【実施例】次に実施例により本発明をさらに説明する
が、本発明は、これらのみに限定されるものではない。 (実施例1)基質溶液として、100mL の三角フラスコに
プルラン(半井化学より購入)1g をとり、45mlの10mM
酢酸緩衝液(pH 6.0) を加えて充分溶解し、予め40℃に
設定しておいた恒温槽に保持しておく。一方で、Aeroba
cter aerogenes由来のプルラナーゼ製剤(生化学工業
製)を、2単位/mLになるように純水に溶解した酵素溶
液を用意する。
【0030】この酵素溶液5mLをさきに用意した基質溶
液に加える。酵素溶液添加から測定して15分経過した後
に、反応容器を沸騰水中に移し、そのまま5分間保持し
て反応を終了させる。TSKgel Amide-80 カラム(4.6×
250mm)を予めアセトニトリル:水=40:60で平衡化す
る。上記の反応液をロータリーエバポレーターで5mLま
で濃縮し、その10μL を高圧注入器より注入して、以下
の装置構成のHPLCにて下記の条件で分析した。
【0031】ここで使用するHPLCの装置構成は、溶媒脱
気装置、高圧定量ポンプ、高圧試料注入器、カラムオー
ブン、カラム、示差屈折率検出器、記録計およびフラク
ションコレクターを含む。HPLC条件は、アセトニトリ
ル:水=40:60、流速0.6 mL/分、室温とした。その結
果、保持時間1時間以内にマルトトリオースのピークを
含めて21本のピークを検出した。すなわち、グルコース
単位にして3糖から63糖まで、分子量にして504 から1
0,233までの、マルトトリオース単位数の異なるプルラ
ン断片が分離されたと推定された。このとき、9糖(分
子量 1,477) までの割合は全体の約35%程度であった。
【0032】(実施例2)実施例1において調製された
濃縮反応液の全量を透析チューブに移し、200mLの純水
に対して一昼夜透析した。透析終了後、チューブ内容の
10μL を実施例1と同様な条件でHPLCで分析した。その
結果、保持時間1時間以内に溶出される成分のうち、9
糖(分子量 1,477) までの成分が効果的に除去され、9
糖までの低分子量成分の相対的な存在割合は3%程度に
まで減少していることが明らかになった。
【0033】(実施例3)実施例2で得られた透析後の
試料をさらに2mLまで減圧濃縮し、その10μL を、実施
例1と同様の装置構成のHPLC系で、分離条件を変えて分
析した。このときの分離条件は、容離液の組成は実施例
1と同様であるが、カラム温度80℃、流速0.8 mL/分で
ある。図1にクロマトグラムを示す。図1において、各
ピークの上に付された数字はマルトトリオース単位の結
合数と一致しており、3糖であるマルトトリオースから
マルトトリオースが40個結合した120 糖までが分離され
たことを示している。図1において横軸は溶出時間を示
し、単位は分である。
【0034】図1に示すように、保持時間2時間以内に
40本のピークが検出された。すなわち、3糖であるマル
トトリオースからマルトトリオース単位が40個結合した
120糖まで、分子量にして約500 から約20,000ま
での範囲にわたり、マルトトリオース単位数の異なるプ
ルラン断片が整然と分離された。
【0035】(実施例4)実施例1と同様な装置におい
て、溶離液組成をアセトニトリル:水=38:62、カラム
温度80℃、流速1.5 mL/分に設定し、実施例3と同じ試
料を分析した。その結果、120 糖は保持時間30分以内に
溶出され、保持時間1時間までにマルトトリオース単位
が47個結合した141 糖(分子量22,880) を検出すること
ができた。
【0036】(実施例5)実施例3と同様の装置につい
て、検出器の出口にフラクションコレクターを接続し
た。フラクションコレクターの動作を検出器の応答と同
調させて、実施例3と同様の分離条件で、各ピークを個
々に分取した。同一の操作を5回繰り返し、同一ピーク
の画分を合わせて濃縮し、40種類のプルラン断片を得
た。濃縮物の一部をHPLCにより分析して純度を検定し
た。分離係数が小さく、隣接するピーク同士の分離が十
分でない場合には、アセトニトリル濃度を高めた溶離液
をもちいて再クロマトグラフィーを行い精製標品を得
た。
【0037】収量は各成分毎に異なっていたが、40〜80
0 μg の範囲でプルラン断片が得られた。これらのプル
ラン断片は、プルラナーゼにより完全にマルトトリオー
スへと分解され、またマルトトリオースのみを最終生成
物として与えた。さらに、マルトトリオースのピークか
ら数えて10番目と20番目、すなわち30糖と60糖につい
て、レーザーイオン化TOF-MS分光器により、ナトリウム
付加イオンの分子量を測定した。この結果、質量数4,90
3 および9,758 の位置に、それぞれ単一の強いスペクト
ルが観測された。これらの値はこの測定手法の誤差範囲
内で、それぞれのプルラン断片から期待される理論値と
よく一致した。以上より、分子量10,000付近において単
一分子量をもつ糖鎖断片が調製されたことが確認され
た。
【0038】この事実はまた、本発明の方法で調製され
た試料を用い、ここに開示したHPLC条件下で得られ
るクロマトグラムにおいて、マルトトリオースから数え
たピークの順番が、マルトトリオース単位の連結数に一
致していることを示しており、分子量約22,000程
度までの範囲で、単一分子量をもつ糖鎖分子量マーカー
を容易に分離、調製できることを示している。
【0039】
【発明の効果】本発明によれば、従来技術では調製する
ことができなかった、分子量10,000以上の単一分子量を
もつ、サブユニットがマルトトリオース単位であり任意
のサブユニット数からなる糖鎖分子量マーカーを調製す
ることができる。また、上記の糖鎖分子量マーカーとし
て、プルランをプルラナーゼで部分分解した産物につい
て、アミド結合型シリカカラムを用い、50%未満のア
セトニトリルを含む容離液を用いた順相クロマトグラフ
ィーにより、簡便に調製することができる。
【0040】さらに、重合度の大きな糖鎖の単分散な標
準糖を確保することができるため、糖の質量分析や、多
糖の分析を行うための基準糖質が提供されるようにな
り、糖鎖生物学や糖質工学の領域の基盤となる技術の発
展に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法により、プルランから調製された
マルトトリオース単位の分子量差をもつ糖鎖断片を、HP
LCにより分離したときのクロマトグラムである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12P 19/04 C07H 1/06 C08B 37/00

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 サブユニットがマルトトリオース単位で
    あり、分子量分布のない単一分子量を有する分子量10,0
    00以上の直鎖型糖鎖分子量マーカー。
  2. 【請求項2】 分子量が22,000までの範囲にある請求項
    1に記載の直鎖型糖鎖分子量マーカー。
  3. 【請求項3】 サブユニットがマルトトリオース単位で
    ある直鎖型糖を前記糖の分解酵素で部分分解する工程
    と、 前記部分分解した分解産物から9糖以下の成分含量を低
    減する工程と、 前記9糖以下の成分含量を低減した産物をアミド結合型
    シリカ充填カラムと50%未満のアセトニトリルを含む容
    離液とを用いた順相分配モードの高速液体クロマトグラ
    フィーにより分離し精製する工程と、 を含むことを特徴とする、請求項1または2のいずれか
    1項記載の直鎖型糖鎖分子量マーカーの製造方法。
  4. 【請求項4】 前記直鎖型糖の各サブユニットがα−1
    →6結合でつながっているグルカンであり、前記糖の分
    解酵素がグルカナーゼである請求項記載の直鎖型糖鎖
    分子量マーカーの製造方法。
JP8214499A 1996-08-14 1996-08-14 糖鎖分子量マーカーおよびその製造方法 Expired - Lifetime JP3012917B2 (ja)

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