JP2016149943A - トマト含有飲料及びその製造方法、トマト含有飲料における苦味マスキング方法、並びにトマト含有飲料用の苦味マスキング剤 - Google Patents
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Abstract
Description
本実施の形態に係るトマト含有飲料(以下、「本飲料」という。)とは、トマト含有飲料であって、そこに香辛料又は香辛料抽出物が配合されたものである。トマト含有飲料とは、飲料であって、その主原料がトマトであるものをいい、例示すると、ストレートトマトジュース、濃縮還元トマトジュース、濃縮トマト飲料等である。本飲料の流通形態は、好ましくは、容器詰である。容器を例示すると、PET容器、紙容器、缶などである。
本飲料の糖度は、6度以上であり、好ましくは、9度以上且つ17度以下(9乃至17度)である。本飲料に含まれる成分の一つは、糖であり、例示すると、グルコース、フルクトース等である。糖度の測定手段は、糖度計である。糖度計を例示すると、屈折計である。この屈折計が利用するのは、糖含量と屈折率との関係である。この屈折計の測定値は、いわゆるBrix値(%)である。Brix値が示すのは、単位重量あたりの可溶性固形分の量である。可溶性固形分に含まれるのは、厳密には、糖及び糖以外の可溶性固形分であるが、本明細書において糖度の指標をBrix値(%)とする。
本飲料の酸度は、0.70%以下であり、より好ましくは、0.29%以上且つ0.60%以下(0.29乃至0.60%)である。本飲料に含まれる成分の一つは、酸であり、具体的には、有機酸であり、例示すると、クエン酸、リンゴ酸、乳酸や酢酸等である。酸度の測定方法は、0.1N水酸化ナトリウム標準液を用いた滴定法である。すなわち、酸度は、クエン酸当量に換算した値である。
本飲料の糖酸比は、14.0以上であり、より好ましくは、17.0以上且つ40.0以下(17.0乃至40.0)である。糖酸比とは、糖度を酸度で除した値である。糖酸比が高ければ、甘味が強い。他方、糖酸比が低ければ、酸味が強い。本飲料の糖酸比の調整方法は、後述する。
本飲料が含有するトマト加工原料を列挙すると、トマトの搾汁(ストレート果汁)、濃縮トマト(トマトピューレ及びトマトペースト)及び濃縮トマトの還元汁、並びにそれらの加工汁である。
本飲料の糖酸比は、14度以上であり、より好ましくは、17.0乃至40.0である。本飲料の糖酸比が17.0乃至40.0である場合、本飲料が呈するのは、強い甘味である。糖酸比を決める要素は、原料及び技術である。つまり、これらの要素が単独で又は組み合されることで、糖酸比が調整される。
甘味を強化する方法は、好ましくは、前述のとおり、糖酸比の調整である。もっとも、本実施の形態が排除しないのは、甘味料の使用である。甘味料を例示すると、糖アルコールや高感度甘味料等である。糖アルコールを例示すると、エリスリトール、トレハロース、ソルビトールなどである。高感度甘味料を例示すると、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、ステビアなどである。
トマト含有が呈するのは、苦味である。この苦味は、飲みにくさの要因の一つである。苦味が感じられるのは、飲んだ後半である。言い換えると、当該苦味は、トマト含有の後味である。当該苦味が感じられるのは、トマト含有飲料の糖酸比が概ね14.0度以上の場合である。当該苦味がより強く感じられるのは、糖酸比が17.0乃至40.0の場合である。推察ではあるが、苦味を感じる原因は、酸による刺激(酸味)の減少である。
本飲料がトマト加工原料に加えて含有するのは、香辛料及び香辛料抽出物の少なくとも一方であり、その目的は、苦味のマスキングである。当該苦味が感じされるのは、飲んだ後半であることから、マスキング効果が発揮される時期は、好ましくは、飲んだ後半(以下、「後味」という。)である。
香辛料とは、調味料であって、飲食物に対して辛味又は香気を付与するものをいい、好ましくは、当該辛味又は香気が後味となるものをいう。香辛料の原材料は、乾燥された植物片である。植物片を例示すると、葉、茎、花、果実(これらを総称して、「ハーブ」という。)、果皮、つぼみ、樹皮、種子、地下茎など(これらを総称して、「スパイス」という。)である。香辛料を例示すると、シナモン、バジル、バニラ、黒コショウ、白コショウ、クミン、メッチ、ナツメグ、メース、オールスパイス、コリアンダー、セロリシード、フェンネル、アニスシード、スターシード、カルダモン、キャラウェイ、ディル、サンショウ、マスタード、ニンニク、たまねぎ、ねぎ、リーク、赤唐辛子、パプリカ、レッドピーマン、ローレル、セージ、タイム、マジョラム、オレガノ、パセリ、ローズマリー、シソ、ジンジャー、ターメリック、ホースラディッシュ、ワサビ、クローブ等である。香辛料の配合量は、特に限定されないが、具体的には、本飲料100L当たり0.5g以上であり且つ4g以下(0.5乃至4g/100L又は0.0005乃至0.004w/v%)であり、好ましくは、本飲料100L当たり1g以上であり且つ2g以下(1乃至2g/100L又は0.001乃至0.002w/v%)である。香辛料抽出物の配合量は、特に限定されないが、本飲料100L当たり5g以上であり且つ20g以下(5乃至20g/100L、又は、0.005乃至0.02w/v%)であり、好ましくは、本飲料100L当たり5g以上であり且つ10g以下(5乃至10g/100L又は0.005乃至0.01w/v%)である。
香辛料抽出物とは、香辛料から抽出された辛味成分又は香気成分をいい、好ましくは、当該辛味又は香気が後味となるものをいう。抽出溶媒は、公知であり、水、水蒸気、二酸化炭素、エタノール、その他の有機溶剤等である。
本発明が排除しないのは、合成香料の添加である。すなわち、各香辛料の香気成分を製出するにあたり、その出発物質を他の化合物又は元素としてもよい。例えば、バニリンの製出にあたり、その出発物質は、リグニンである。
前述から明らかなとおり、本願発明者らが見出した香辛料及び香辛料抽出物の用途は、トマト含有飲料の苦味マスキングである。すなわち、そのような苦味マスキング剤の有効成分は、シナミックアルデヒド、リナロール又はバニリンである。当該苦味マスキング剤の配合先は、トマト含有飲料であって、その糖酸比が高いものであり、具体的には、当該糖酸比が14.0以上であり、より詳しくは、当該糖酸比が17.0乃至40.0のものであり、さらに詳しくは、その酸度が0.29乃至0.60%のものである。当該苦味マスキング剤の配合量は、本飲料100L当たり0.5g以上であり且つ20g以下(0.5乃至20g/100L又は0.0005乃至0.02w/v%)であり、好ましくは、本飲料100L当たり1g以上であり且つ10g以下(1乃至10g/100L又は0.001乃至0.01w/v%)である。
本飲料の製造方法(以下、「本製法」という。)を主に構成するのは、搾汁工程、脱酸工程、調合工程、殺菌工程、充填工程、密封工程及び冷却工程である。これらの工程の一般的な説明のために本願明細書が取り込むのは、最新果汁・果実飲料辞典(社団法人日本果汁協会監修)の内容である。各工程は、適宜省略可能である。
実施例1乃至14において配合したのは、トマトペースト(Brix=29、糖酸比=14.5)、及び、シナモンパウダー(ヤスマ社製)である。該トマトペーストは適宜希釈してBrixを6.6乃至15.8%とした。その上で、酸度を減じて、0.29乃至0.69%に調整した。また、各実施例において、本発明品におけるシナモンパウダーの配合量は、0.002kg/100Lとした。これらの原材料に加水して混合した。得られた調合液を加熱して95℃到達直後にPETボトルに充填した。充填後のPETボトルを5分程度放置してから水冷した。得られたトマト飲料は、同じ配合量で且つシナモンパウダーを配合していないもの(比較品)を対照として、苦味のマスキング効果を評価した。
実施例15乃至21において配合する原料は、香辛料がバジルパウダー(ヤスマ社製)であること以外は、実施例1乃至14のものと同様である。各実施例において、該トマトペーストは適宜希釈してBrixは9.9乃至10.1%とした。その上で、酸度を減じて0.29乃至0.69%に調整した。また、各実施例において、本発明品におけるバジルパウダー(ヤスマ社製)の配合量は、0.001kg/100Lとした。これらの原材料に加水して混合した。得られた調合液を加熱して95℃到達直後にPETボトルに充填した。充填後のPETボトルを5分程度放置してから水冷した。得られたトマト飲料は、同じ配合量で且つバジルパウダーを配合していないもの(比較品)を対照として、苦味のマスキング効果を評価した。
実施例22乃至28において配合する原料は香辛料がバニラ抽出物(小川香料社製)であること以外は、実施例1乃至21のものと同様である。各実施例において、該トマトペーストは適宜希釈してBrixは9.9乃至10.1%とした。その上で、酸度を減じて0.29乃至0.69%に調整した。また、各実施例において、本発明品のおけるバニラ抽出物(小川香料社製)の配合量は、0.02kg/100Lとした。これらの原材料に加水して混合した。得られた調合液を加熱して95℃到達直後にPETボトルに充填した。充填後のPETボトルを5分程度放置してから水冷した。得られたトマト飲料は、同じ配合量で且つバニラ抽出物を配合していないもの(比較品)を対照として、苦味のマスキング効果を評価した。
本測定で採用したBrixの測定器は、屈折計(NAR−3T ATAGO社製)である。測定時の品温は、20℃であった。
本測定で採用した酸度の算出方法は、0.1N水酸化ナトリウム標準液を用いた滴定法であり、滴定値よりクエン酸当量に換算して算出した。
実施例1乃至28を官能評価するにあたり、評価した項目は後味の苦味である。特に甘味の強いトマト飲料において苦味を感じるのは、飲み込んだ後であり、故に、後味を評価した。評価において採用したのは、評点法である。苦味を感じるものほど、低い評点であり、マスキング効果が高いものほど、高い評点である。香辛料あるいは香辛料抽出物による苦味のマスキング効果を比較する為、添加したものと、添加していない対照品とを比較し、1点以上の差があるものを苦味のマスキング効果があるものと判断した。評価基準は、以下のとおりである。
2点:苦味を強く感じる
3点:苦味をやや感じる
4点:苦味をわずかに感じる
5点:苦味がまったく感じられない
評価は、専門パネラー5名で行った。評価結果は、表1乃至3のとおりである。
Claims (16)
- トマト含有飲料であって、その糖酸比が14.0以上であるものにおいて、
含有するのは、香辛料である、
もの。 - 請求項2のトマト含有飲料において、
前記香辛料の配合量は、0.0005乃至0.02w/v%である、
もの。 - 請求項1のトマト含有飲料において、
前記香辛料は、シナモンである、
もの。 - 請求項3のトマト含有飲料において、
前記シナモンの配合量は、0.0005乃至0.004w/v%である、
もの。 - 請求項1のトマト含有飲料において、
前記香辛料は、バジルである、
もの。 - 請求項5のトマト含有飲料において、
前記バジルの配合量は、0.0005乃至0.004w/v%である、
もの。 - 請求項1のトマト含有飲料において、
前記香辛料は、バニラである、
もの。 - 請求項7のトマト含有飲料において、
前記バニラの配合量は、0.005乃至0.02w/v%である、
もの。 - 請求項1乃至8の何れかのトマト含有飲料において、
その糖酸比は、17.0乃至40.0である、
もの。 - 請求項1乃至9の何れかのトマト含有飲料において、
その酸度は、0.60%以下である、
もの。 - 請求項1乃至10の何れかのトマト含有飲料において、
その糖度は、9.0度以上である、
もの。 - 請求項1乃至11の何れかのトマト含有飲料において、
前記香辛料に加えて又はこれに代えて含有するのは、香辛料抽出物である、
もの。 - 請求項1乃至12の何れかのトマト含有飲料は、トマトジュース又は濃縮トマト飲料である、もの。
- トマト含有飲料の製造方法であって、その構成は、以下の工程であり、
調合されるのは、トマト加工物に加えて、香辛料及び香辛料抽出物の少なくとも一方である、
こと。 - トマト含有飲料における苦味マスキング方法であって、その構成は、以下の工程であり、
調合されるのは、トマト加工物に加えて、香辛料及び香辛料抽出物の少なくとも一方である、
こと。 - 苦味マスキング剤であって、
その有効成分は、シナミックアルデヒド、リナロール又はバニリンであり、
その配合先は、トマト含有飲料であって、その糖酸比が14.0以上のものであり、
その配合量は、0.0005乃至0.02w/v%である、
もの。
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