JP2016148231A - 地盤アンカー自由長区間の削孔内における周辺摩擦抵抗力の軽減工法 - Google Patents

地盤アンカー自由長区間の削孔内における周辺摩擦抵抗力の軽減工法 Download PDF

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Abstract

【課題】 地盤アンカー工の自由長の削孔内にはこれまでアンカーを挿入後にセメント質のグラウト材を充填していることから、硬化すると削孔内のコンクリート柱状に形成されたセメントモルタル表面と土砂が付着したことによる摩擦力が発生して、アンカーの引張力による反力で受圧板によりスベリ層の締付けをはかるが、締付け効果を阻害し抵抗することからアンカーの引張力による締付け効果が十分でない状態となっていた。
【課題手段】 これまでのセメント質のグラウト材の代替として周辺摩擦抵抗の少ない材質(砂質土や粘土質、または圧縮力の小さい発泡材等の弾性体)を充填しアンカー工法の締付け効果の改善を図る。
【選択図】図1

Description

本発明は斜面崩壊予防をはかる目的で、斜面に設置するアンカー工法の効果を高めるため削孔内の摩擦抵抗力の軽減をはかる工法に関するものである。
従来の斜面崩壊を予防するため斜面に設置するアンカー工法は図3(1)や引用文献の図5(1)や特許文献の図5(2)・(3)資料の様にアンカー挿入用の削孔長L区間全体に硬化すると固まるセメントグラウト材7を充填していたことから電柱の様な断面構造となり、アンカー1の引張力Tの反力によるT1により台座(受圧板)等を通して地盤面Gに圧着しスベリ層Aを締付けることが困難となり、アンカー理論では対応できない断面構造となっていた。
このようなことから特許文献1・図5(2)の様に削孔8内のアンカー自由長L2区間のまだ固まらないセメントグラウト材7をラッパ菅を挿入して抜取り空洞化し、アンカー1(テンドン)と一体化することを避けて、アンカー体周辺と地盤内の土砂と分離し摩擦抵抗力の軽減をはかる工法が発明されている。しかし削孔内の直径よりアンカーの太さが小さい事から削孔内の自由長区間に隙間が発生し、削孔内に水溜りや土砂の崩壊が発生することが課題となっている。
このような中で上記の特許文献1・図5(2)の改善を図るために、特許文献2・図5(3)の様に削孔内のアンカー自由長区間上部(文献図面ではH4区間)に弾性体(文献図面では6)を充填して、アンカー引張力Tの反力により台座(受圧板)等を通して地盤面に圧着しスベリ層を締付け可能な断面構造が発明された。しかしスベリ層の土質が粘土層の様な比較的軟らかい土質であればスベリ層区間の削孔内のセメントグラウト材の表面と付着しても摩擦抵抗力が小さく影響は少ないが、スベリ層の土質が硬い岩盤等では付着力が増大し摩擦抵抗力の反力が大きく、アンカーの引張力Tによるスベリ層の締付け効果の減少が確認された。
特許第3760335号 特許第4804561号
引用文献1
グランドアンカー設計・施工基準、同解説(JGS4101−2012)P25・解説図‐2.2
本発明は上記した従来の工法の問題を解決するために、さらなるアンカー工法の効果や安全性の向上を目的に自由長部L2区間における削孔内の土砂とアンカー(テンドン)表面との摩擦抵抗力の軽減工法について改善をはかった。
請求項1記載について図1により課題を解決するための手段を説明する。はじめに図2(1)のように地盤内に必要なアンカー長Lを削孔してアンカー1を挿入する。次にアンカー体L1区間にセメントグラウトを充填する。充填方法としてはパッカー工法等(管内止水等に使用している断面構造等)を利用しアンカー体区間のみにセメントグラウトを充填する方法等により対応する。なお他にも対応策があるが方法は問わない。その後に自由長部の削孔内の空洞になっている隙間に摩擦抵抗の少ない材質6(砂質土や粘土質、または圧縮力の小さい発泡材等の弾性体)を充填する。
次に請求項2記載について説明する。従来はアンカーのサビ対策をはかるために地盤アンカーの自由張部L2区間はセメントグラウト材で被覆しアンカーのサビ対策としていた。しかし今回の発明は図1においてアンカー体と削孔内の土砂との付着力を軽減する目的から、硬化すると固まりアンカーのサビ対策の1方法として使用されてきたセメントグラウト材の代替として、アンカーのサビ対策に弱いが周辺摩擦抵抗の少ない材質6(砂質土や粘土質)等を使用した場合には透水性が良い事からサビ対策にはならないことから、アンカー本体の鋼材を亜鉛メッキ施し更にシースにより被覆するなどして補強した二重防食以上のアンカーを使用する。なお圧縮力の小さい発泡材等の弾性体を充填する場合、または、サビや腐食に強い連続繊維補強材使用する場合には二重防食以上と成る事から現在におけるサビ対策として問題は生じることはない。以上の様なアンカーのサビ対策をはかったことを特長とした地盤アンカー自由長部区間の削孔内の周辺摩擦抵抗力の軽減工法の断面構造とする。
次に請求項3記載について説明する。図1においてスベリ面Sの上部に高さh1≒50cm程がアンカー体長の一部とし突出するような断面構造として、スベリ面Sの滑らかな面に凸型を形成してスベリ面の摩擦係数の増大を図り、また下部には従来の削孔余長h2≒70cm程度を加算し削孔余長H4≒100cm程に拡大してアンカー体長の安全性を高める断面構造とする。なおh1やh2の値は土質状況により調整するものとする。
本発明は上記のように自由長L2区間のアンカー体と土砂との付着力の軽減をはかることから周辺摩擦抵抗力による抵抗反力T3が減少し、アンカーの引張力Tによる反力T2はスベリ層の硬い土質でも締付け効果が向上する断面構造と成る。なおこの効果の程を確認してみると下記になる。
図3(1)の側断面図、及び図3(3)の様に、これまで削孔内のセメントグラウト7の表面と土砂が付着している周面摩擦影響範囲の円周長d1は(d1=π×φ1)であったが、削孔内に周辺摩擦抵抗の少ない砂等の材質6を充填したことにより周面摩擦影響範囲の円周長d2は(d2=π×φ3)となり極端に減少する。
例えば円周長さのみで現場の削孔内の標準的な直径φ1≒100mm、アンカーの直径φ3≒30mmをした場合で算出すると下記内容となる。
従来の周面摩擦影響範囲の円周長 d1≒π×φ1=3.14×100=314mm
本発明の周面摩擦影響範囲の円周長d2≒π×φ3=3.14×3 =9.44mm
従来方法と本発明を比較すると約33倍の周辺摩擦抵抗力T3を削減することに繋がる。
また土質によりアンカー体との付着力が変わることから、これまでの様に削孔内の直径φ1≒100mmにセメントグラウトを充填した場合と、削孔内の直径φ1≒100mmに砂等の材質6を充填した場合、軟岩と砂を比較してみた。
セメントグラウトを充填した場合の周辺摩擦抵抗力
τ1=d1×C1≒314mm×1.25N/mm≒392.5N/mm(アンカー体長L=1mmを仮定)
砂等の材質6を充填した場合の摩擦抵抗力
τ2=d2×C2=9.44mm×0.20MN/m=1.88N/mm(アンカー体長L=1mmを仮定)
軟岩の場合の極限周面摩擦抵抗値 平均C1=1.25(MN/m
砂(N値20)の場合の極限周面摩擦抵抗値 平均C2=0.20(MN/m
(グランドアンカー設計・施工基準、同解説(JGS4101−2012)P78・解説表‐6.6)
以上のように自由長区間の削孔内にセメントグラウト7を充填した場合と、砂等の材質6を充填した場合にはアンカー体に作用する抵抗力T3に大きな差が生じアンカー工法の効果や安全率の向上につながる。
請求項3記載図1(1)の削孔内のアンカー体長L1区間においてスベリ面よりh1を50cm程高くしたことについては、スベリ面の摩擦抵抗の増大を期待している。これまでは自由長部L2削孔のセメントグラウト7により構成された長いコンクリート柱が根本(スベリ面S)位置で折れ曲がっている事例が確認されている。主な理由としては長い片持梁のポストテンション工法の様な杭工の断面構造にスベリ層の土圧が作用し曲げモーメントが作用し根本付近で破断したものと推測される。このような状況から見てこれまでのコンクリート柱が形成されたことはアンカー工法としての断面構造としてはマイナスであったが、スベリ層を抑止する効果も確認される。このようなことからスベリ面よりh1を50cm程高くすることにより、多数のアンカー本数によりスベリ面の摩擦抵抗の増大に繋がりアンカー工法の効果や安全性の向上にも繋がる断面構造と成る。
またアンカー体長の底部のh2を100cm程長くしたことについては、これまでは削孔長L区間の全区間にセメントグラウトを充填していたことから、グラウト用専のポンプによる注入用ホースを削孔内の底面位置に設定し、底面に残留している堆積している一部の土砂を噴き上げる形で、外部に排出していたが、パッカー工法等により削孔内のアンカー体長区間のみにセメントグラウトを充填する場合には 底面に残留している一部の土砂を取り除く事は経済的に負担が大きい事から、アンカー体長の底部に通常以上の余長に成るようにh2を設定し安全性を確保した。なお土質に応じては省略可能な場合もある。
これらの図4のような実施例はアンカー工法によるスベリ層による土圧の軽減にもつながることから、アンカー工法の経済性や効果、さらに安全性の向上に役立つ画期的な断面構造となった。
本実施例のアンカー周辺摩擦抵抗力の軽減工法を示し、図1(1)は全体の側断面図、及び図1(2)は図1(1)のa‐a位置の断面図、図1(3)は図1(1)のb‐b位置の断面図を現している。 アンカー工事を始める前の削孔状況を示し、図2(1)は全体の側断面図、及び図2(2)は図2(1)のa‐a位置の断面図、図2(3)は図2(1)のb‐b位置の断面図を現している。 従来のアンカー工法の断面構造図を示し、図3(1)は全体の側断面図、及び図3(2)は図3(1)のa‐a位置の断面図、図3(3)は図3(1)のb‐b位置の断面図を現している。 本発明のアンカー工法を斜面に実施した場合の全体の断面図である。 これまでのアンカー断面構造図を示し、図4(1)は参考文献1、図4(2)は特許文献1、及び図4(3)は特許文献2の資料の断面構造図を現している。1・・・二重防食以上のアンカー(亜鉛メッキの鋼線をシースで被覆、またはサビや腐食に強い連続繊維補強材) 2・・・締付け装置 3・・・台座や座金等 4・・・受圧板や法枠工 5・・・アンカーのサビ対策図るためのアンカーを被覆するシース等 6・・・砂質土や粘土質(ベントナイト等)、または圧縮力の小さい発泡材等の弾性体からなる充填材 7・・・セメントグラウト材で硬化すると固まる材質 8・・・削孔 A・・・安定した基盤 B・・・斜面の不安定なスベリ層 G・・・スベリ層の地盤面 H1・・受圧板や法枠工底面下の削孔内のアンカー自由長部で充填材6を充填する区間 H2・・・スベリ面の摩擦抵抗に配慮した区間でセメントグラウト7を充填 H3・・・テンドン拘束長(土質の摩擦抵抗力で長さを算出) H4・・・テンドン余長 (残留物の溜り場) h1・・・スベリ面より突出するスベリ摩擦抵抗用の高さ h2・・・削孔作業時のズリ溜め用ポケットの割増深さ L・・・アンカー挿入用の削孔長 L1・・・削孔内のアンカー体長 L2・・・削孔内のアンカー自由長 S・・・スベリ面 T・・・アンカーの引張力 T1・・アンカーの引張力Tによりセメントグラウト柱状に載せた台座や受圧板を締付けている反力 T2・・受圧板底面で地盤面を締付けている反力 T3・・アンカー周辺の摩擦力により抵抗する反力 φ1・・・削孔の径 φ2・・・アンカーの直径 φ3・・・アンカーをシースで被覆した直径

Claims (3)

  1. 法枠や法止め部材をスベリ層の斜面に地盤アンカーで定着する法枠定着工法の削孔内にアンカーを挿入しセメントグラウト材を充填するアンカー工法において、アンカー体長を除いた自由長区間の削孔内に周辺摩擦抵抗力の少ない材質を充填し、地盤アンカー自由長区間の周辺摩擦抵抗力の軽減をはかる工法。
  2. 削孔内の自由長区間に二重防食以上のサビ防止を施したアンカー材を使用し、アンカーのサビ対策を考慮した事を特長とする請求項1記載の地盤アンカー自由長区間の周辺摩擦抵抗力の軽減をはかる工法。
  3. 地盤アンカーの削孔内のアンカー体長区間にスベリ面の摩擦抵抗用の余長と削孔作業時に発生するズリを溜める余長を設け、アンカー体長の機能を拡大した地盤アンカー自由長区間の周辺摩擦抵抗力の軽減をはかる工法。
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