JP2016146823A - 哺乳動物の胚処理方法及び胚 - Google Patents

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Abstract

【課題】品質が高い哺乳動物の胚を作出する哺乳動物の胚処理方法を提供する。
【解決手段】
哺乳動物(Mammalia)の胚に対して、近赤外光を照射する。胚は、8細胞期になった以降に照射する。この際、近赤外光を、胚を培養する培養ディッシュの底面から、出力0.1mW〜20mWで、培養ディッシュの表面から照射部を1mm程度話して、0.5分以上照射する。この近赤外光の波長は、700nm〜1400nmであることが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、哺乳動物の胚処理方法及び胚に係り、特に高品質な哺乳動物胚を作出するための哺乳動物の胚処理方法及び胚に関する。
従来から、哺乳動物(哺乳類、Mammalia)の胚に関する技術、つまり、体外受精、胚培養、胚移植等の技術は、医学分野では再生医療、生殖補助医療等に、畜産分野では優良家畜の増産や家畜改良等に欠かせない技術となっている。
ここで、哺乳動物の胚は、受精後、卵割により2細胞期胚、4細胞期胚、8細胞期胚と細胞増殖により割球が増加する。そして、桑実胚を経て、胚盤胞(初期胚盤胞〜脱出胚盤胞)へと発生する。
しかしながら、体外で培養された哺乳動物の胚、例えば、脱出胚盤胞を子宮に移植しても、その成功率(受胎率)は低くなっていた。たとえば、ウシ(Bos taurus)においては40%程度、ヒト(Homo sapiens)においては30%程度に留まっている。
一般的に、体外培養で作出された胚の品質は、体内受精胚と比較して低いため、胚移植に適した品質の高い胚を得るための技術が強く求められている。
ここで、胚移植に適した良質な胚を得るための技術として特許文献1を参照すると、乳酸類、ピルビン酸類、塩基性線維芽細胞成長因子、及び腫瘍成長因子−β1を含有する低グルコース濃度TCM199培地からなる無血清培養液を用いた受精卵の生産方法が記載されている。
特許文献1の無血清培養液では、従来の培養液と比較して、移植に用いられる胚盤胞期胚を、受精卵から高率で発生させることができる。
特開平8−289779号公報
しかしながら、特許文献1の技術のように、培養液の改良だけでは、高品質の胚を得ることが難しかった。
このため、培養液の改良に依らず、品質の高い哺乳動物の胚を作出するための技術が強く求められていた。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上述の問題を解消し、品質が高い哺乳動物の胚を作出する胚処理方法を提供することを目的とする。
本発明の哺乳動物の胚処理方法は、哺乳動物(Mammalia)の胚に対して、近赤外光を照射することを特徴とする。
本発明の哺乳動物の胚処理方法は、前記近赤外光は、前記胚が8細胞期になった以降に照射することを特徴とする。
本発明の哺乳動物の胚処理方法は、前記近赤外光は、胚を培養する培養ディッシュの底面から、出力0.1mW〜20mWで、0.5分以上照射することを特徴とする。
本発明の哺乳動物の胚処理方法は、前記近赤外光は、波長が700nm〜1400nmであることを特徴とする。
本発明の哺乳動物の胚は、前記胚処理方法により処理されたことを特徴とする。
本発明によれば、哺乳動物の胚に対して近赤外光を照射することで、品質が高い胚を作出する胚処理方法を提供することができる。
本発明の実施例に係るウシ胚のふ化胚盤胞に到達するまでの所要時間を示すグラフである。 本発明の実施例に係るウシ胚の胚盤胞の48時間後の細胞数のグラフである。 本発明の実施例に係るマウス胚の培養30時間後の8細胞期胚、培養48時間後の桑実胚、及び培養73時間後の胚盤胞が、ふ化胚盤胞に到達するまでの所要時間を示すグラフである。 本発明の実施例に係るマウス胚の胚盤胞を偽妊娠雌マウスの子宮へ移植して得られた産子の生後5週間の体重増加を示すグラフである。
<実施の形態>
本発明者は、哺乳動物の胚の発育速度や発生率等の品質を向上させるべく、鋭意実験を行った。本発明者は、体外培養で得られたマウス胚に近赤外領域の光(以下、「近赤外光」と称する。)を短時間照射したところ、胚の発育速度や胚の発生率が改善し、胚の品質が向上することを見出した。これは、体外培養胚に近赤外光を照射することで、胚のミトコンドリア活性が、体内受精胚と同等まで上昇するためであると考えられる。
本発明は係る知見に基づいてなされたもので、本発明により、品質が高い哺乳動物胚を簡便に作出する胚の処理方法及びその処理方法により作成された胚を提供することが可能となる。
以下、本発明の胚の処理方法及び胚について、実施の形態により、より具体的に説明する。
本実施形態の胚処理の対象となる哺乳動物は、例えば、ヒト(Homo sapiens)、家畜、伴侶動物、実験動物、ヒト以外の霊長類等が挙げられる。家畜としては、例えば、ウシ(Bos taurus)、ブタ(Sus scrofa domesticus)、ウマ(Equus caballus)、ヒツジ(Ovis aries)、ウサギ(Leporinae Trouessart)等が挙げられる。また、伴侶動物としては、イヌ(Canis lupus familiaris)、ネコ(Felis silvestris catus)、等が挙げられる。また、実験動物としては、マウス(Mus musculus)、ラット(Rattus norvegicus)、ハムスター(Mesocricetus auratus)等が挙げられる。また、ヒト以外の霊長類としては、ゴリラ(Gorilla)やチンパンジー(Pan troglodytes)、アカゲサル(Macaca mulatta)、その他の真猿類や原猿類等が挙げられる。その他、稀少な哺乳動物を含む、真獣下綱(Eutheria)の有胎盤哺乳類の胚について、本実施形態の胚処理の対象としてすべて適用可能である。
本実施形態に係る哺乳動物の胚を得るための方法は特に限定されない。たとえば、本実施形態の胚は、体内受精、体外受精、核移植によって得ることができる。
加えて、本実施形態の哺乳動物の胚は、各種ベクター等により、遺伝子組み換えの手法で遺伝子を導入されたトランスジェニック、遺伝子ノックアウト、コンディショナルノックアウト等の手法で遺伝情報を加工された哺乳動物の胚であってもよい。この遺伝情報の加工は、ゲノム中への遺伝子導入若しくは除去であっても、プラズミドや人工染色体のような染色体外への遺伝子導入であっても、染色体の特定部位のメチル化の制御やヒストンの修飾等のエピジェネティック制御であっても、PNAや人工的な塩基の付加であってもよく、その他の各種遺伝情報の加工手法が使用可能である。
また、本実施形態の胚処理の対象として、分割胚、例えば、2細胞期胚を二分割した胚のような胚にも適用可能である。
また、本実施形態の胚は、胚性幹細胞(Embryonic Stem Cells、ESCs)、人工多能性幹細胞(Induced Pluripotent Stem Cells、iPSCs)、外的刺激により人工的に生成され若しくは選択された幹細胞等(以下、多能性幹細胞と称する。)を含んでいてもよい。この際、本実施形態の胚は、多能性幹細胞から作成された始原生殖細胞等を用いて作成された、全能性をもつ細胞に由来した胚であってもよい。
また、本実施形態の対象となる哺乳動物の胚は、複数の種類の動物の細胞が混合されたキメラであってもよい。この際、キメラの胚に、哺乳動物以外の動物の細胞等が組み合わせられていてもよい。
また、本実施形態の胚処理の対象として、単なる胚ではなく、必ずしも個体や胎児に成長せず、各系統の臓器にのみ分化するような胚様体についても適用可能である。この際、胚の一部を解析用に取り除いた胚、すなわちバイオプシーした胚も適用可能である。
本発明における近赤外光の胚への照射時期は、特に限定されないが、8細胞期胚以降に照射することが望ましい。
本実施形態に係る胚への照射時期は、4細胞期胚以前及び受精卵では、最終的に胚以降に成長する有意な効果が少なくなる。また、8細胞期胚から初期胚盤胞の特定の時期で照射することで、特に胚盤胞の内細胞塊が多く、品質の高い脱出胚盤胞を作出する可能性を高めることができる。なお、脱出胚盤胞以降、着床され胎盤形成された胎児と同等の状態となった後で、胚(胚子、胎芽)が更に培養され若しくは移植される場合において、これらの胚に対して近赤外光を照射することも可能である。
また、本実施形態においては、凍結保存された胚に対しても近赤外光の照射が可能である。この凍結保存の方法は特に限定されない。
また、本実施形態において、凍結保存された胚への近赤外光の胚への照射は、凍結前であっても、凍結後であってもよいものの、凍結から解凍された後の方が好ましい。これは、凍結保存されて活動が休止された胚よりも、活動中の胚に対して近赤外光を照射された方が、後述するようにミトコンドリアの活性を高くした状態を保つと考えられるからである。
また、本実施形態の近赤外光を照射した胚については、すぐ子宮に移植してもよく、更に培養を続けてから移植してもよい。特に、胚盤胞まで成熟した胚について近赤外光を照射した場合、特定の期間培養してから移植すると、着床の効率を高めることができる。
本実施形態における近赤外光を照射する場合、胚を培養する容器、例えば、ポリスチレン製のシャーレ(培養ディッシュ)の上面若しくは底面から、培養液中の胚に向けて照射する。底面から照射する場合、照射装置を底面に接触させて照射してもよい。
近赤外光の照射装置を底面に接触させて照射することで、コンタミネーション(汚染)の心配が少なくなり、下記で説明するように近赤外光を照射する距離やエネルギーを制御しやすくなるため、好適である。また、胚を保存する容器、例えば、ストローやバイアルの中にある胚に向けて、近赤外線光を照射してもよい。なお、また、照射機と培養器が一体化した、胚に適した照射装置(図示せず)により、照射することも可能である。
また、本実施形態の近赤外線光は、例えば、700nm〜1400nm(0.75〜1.4μm)の波長を用いることが好適である。特に、800nm〜920nm)の波長の近赤外光を用いることで、後述するようにミトコンドリアの活性を高めて、高品質な胚の作出効果を高められる。
より具体的には、本実施形態の近赤外線光は、出力0.1mW〜20mWで、0.5分〜5分照射することが好適である。さらに具体的には、3.0mW〜8.0mWの出力の近赤外光を照射することで、脱出胚盤胞が形成される効率を高めることができる。
また、本実施形態の近赤外線光の照射時間としては、0.5分以上であることが好ましい。
0.5分より短い場合、未照射の胚と比べて有意な高品質な胚の作出効果が得られにくい。また、1分以上の照射で、確実に、有意に高品質の胚を作出できる。
このうち、特に、胚の培養中、桑実胚の出現時には短め、例えば、0.5分〜2分の近赤外光の照射を行い、胚盤胞の出現時には長め、例えば、2〜4分の照射を行うことが好適である。これにより、より脱出胚盤胞の出現率を高めて、胚の作出の品質を高めることができる。
なお、近赤外線光の照射条件は、上述の条件に限られない。近赤外線光は、後述するように、胚のミトコンドリア活性を人為的に高めることができる程度、照射することが好適である。
また、後述する実施例のように、近赤外光として出力5.0mW程度のレーザーを照射する場合、胚にダメージを与えるほどの温度上昇等は生じない。このため、4分より長い、例えば、10分以上の照射時間を設定することも可能である。また、例えば、インキュベータ内に近赤外線光の照射を行う装置を設けて、胚の培養時に、常に当該装置から近赤外光を照射するように構成することも可能である。
また、本実施形態の胚処理方法は、近赤外光のレーザーやLED(Light Emitting Diode)等を用いた、医療用の疼痛緩和や創傷修復用の治療用近赤外光照射機器により、胚に近赤外光を照射することが好適である。
これにより、均一に出力が揃った近赤外光を照射することができるため好適である。
また、本実施形態の近赤外光を照射する際の培養液としては、一般的な哺乳動物の胚を培養する際に用いる培養液を使用することが可能である。たとえば、特許文献1に記載されたような無血清の培養液を使用可能である。また、哺乳動物の種類に対応して、最適な培養液を使用することが可能である。また、培養液には、アミノ酸、ビタミン類、抗酸化剤、抗生物質、コラーゲン前駆体、微量金属イオンや錯体、各種塩等が加えられて使用されてもよい。また、培養液には、成長因子であるFGF(Fibroblast growth factors)やEGF(Epidermal Growth Factor)やHGF(hepatocyte growth factor)等の成分が、培養する哺乳類の種類や卵割ステージ等に対応した濃度で加えられていてもよい。
以上のように構成することで、以下のような効果を得ることができる。
近年、体外受精、体外培養、受精卵移植等の生殖技術は、医学分野では生殖補助医療、畜産分野では家畜生産等に欠かせない技術となっている。しかしながら、受精卵移植の成績は低く、胚移植に適した良質な胚を得るための技術が強く求められていた。特に、医療分野では、我が国では約600の不妊治療専門の施設があり,その市場規模は800億円以上である。ここで、不妊治療には様々な方法があるものの、35歳以上の場合、胚移植の割合は70%〜80%を占めているため、受精卵を高品質な胚に成長させる技術が強く臨まれている。また、畜産分野においても、畜産物の生産額は2兆5000億円であり,うち牛は約50%を占めている。しかしながら,高品質な子牛を生産するための胚移植は、成功率の低さや煩雑さ等から、普及率が2%程度にとどまっている。そのため,胚移植の受胎率を向上させるための技術開発が期待されている。
しかしながら、従来、特許文献1のような培養液を用いて哺乳動物胚を培養しても、移植後に十分な受胎率を得られる胚を作出するのが難しかった。つまり、従来の培養液の改良だけでは、体外培養で作出された胚の品質を高めることはできなかった。
これに対して、本実施形態の哺乳動物の胚処理方法は、哺乳動物の胚に近赤外領域の光を照射することで、高品質な哺乳動物胚を作出することができる。これにより、胚移植の成績を向上させることができる。よって、これらの分野に貢献することができる。
具体的には、本実施形態の哺乳動物胚の処理方法により処理された胚を、雌の子宮へ移植することで、受胎成績を向上させることができる。また、効率的に多くの産子を得る効果が期待できる。たとえば、ヒト胚に利用すれば、生殖補助医療における治療成績の向上に貢献できる。また、家畜胚に利用すれば、優良家畜の生産性向上に貢献できるようになり、また、実験動物や野生動物の胚に利用すれば、貴重な遺伝資源の保存、希少動物の保護に貢献できる。
また、本実施形態の哺乳動物の胚処理方法は、培養ディッシュの底面から近赤外線を照射することで、特別な操作やテクニック等が必要なく、効率的に、品質が高い哺乳動物胚を作出することができる。
これにより、特別な機器の製造が必要なく、操作の習熟のためのトレーニング期間等が必要なくなるため、コストを削減できる。また、品質の高い胚を取得できることで、各種生殖技術の成功率を高め、各関係者の負担を減らすことができる。また、生殖医療においては、母体の負担を減らすことができる。
また、本実施形態の哺乳動物の胚処理方法は、近赤外光を用いて胚のミトコンドリア活性を刺激することで、品質が高い哺乳動物胚を作出することができる。
本実施形態において、近赤外領域の光を照射することによって、細胞内活性が変化すると考えられるものの、そのメカニズムの詳細はほとんど明らかになっていない。
これに対して、胚の品質とミトコンドリア活性が関係するという知見がある。つまり、ミトコンドリア活性が高い胚ほど、受胎率が高くなると考えられる(たとえば、H.Abe他、「Evaluating the quality of individual embryos with a non-invasive and highly sensitive measurement of oxygen consumption by scanning electrochemical microscopy」.Journal of Reproduction and Development,2006,52,Suppl,S55〜S64.等を参照)。このため、本実施形態の近赤外線照射装置では、近赤外線により胚のミトコンドリア活性を刺激することで、胚移植に適した品質の高い胚を作出することができると考えられる。
また、本実施形態の哺乳動物の胚処理方法では、疼痛や皮膚治療等の医療用近赤外線レーザーの照射装置を用いることで、胚へのダメージを抑えつつ、均一な近赤外光の照射を行うことができる。また、胚の品質を高める確実な効果を得ることができる。
また、バイオプシーした胚等に、本実施形態の胚処理を適用することで、胚の活動する時間を延長し、より実験に適用しやすくなる効果が得られる。
なお、上記実施の形態の構成及び動作は例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実行することができることは言うまでもない。
次に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、以下の具体例は本発明を限定するものではない。
〔実験例1〕
(ウシ体外生産胚の作出)
食肉処理場で採取したウシ卵巣を研究室へ15℃で運搬し、卵巣表面の胞状卵胞(2-5mm)から卵丘細胞−卵子複合体(COCs)を吸引採取した。採取したCOCsは卵成熟培養液(IVMD101:機能性ペプチド研究所製)中で成熟培養した(22時間、38.5℃、5%CO2、95%空気)。培養後、媒精液(IVF100:機能性ペプチド研究所製)で精子濃度を0.5×107/mlに調製したウシ精液と培養し、体外受精した(6時間、38.5℃、5%CO2、95%空気)。体外受精後、余分な卵丘細胞をボルテックスもしくはピペッティングで除去し、5%FBS(Gibco社製)添加CR1aa培養液(Rosenkrans CF. Jr.他、Development of bovine embryos in vitro as affected by energy substrates. Biol Reprod 1993; 49; 459−462、参照)で体外受精9日目まで体外培養した(38.5℃、5%CO2、95%空気)。
(近赤外光の照射)
桑実胚が出現する体外受精5日目と、胚盤胚が出現する体外受精7日目に近赤外光を照射した。照射には近赤外光照射機(LTU904、Rian Corp.製、波長904nm、5.0mW)を用い、培養ディッシュ底面から垂直に1分間もしくは3分間照射した。照射機の照射口から胚までの距離は1mmである。照射後の胚は、5%FBS添加CR1aa培養液で培養した(38.5℃、5%CO2、95%空気)。
(ウシ体外生産胚の評価)
体外受精9日目に、胚盤胞になった胚盤胞数並びに発生率(胚盤胞数/培養受精卵数×100)(%)、及び脱出胚盤胞数並びに脱出胚盤胞発生率(脱出胚盤胞数/培養受精卵数×100)(%)を算出し、評価した。なお、近赤外光を照射しない実験を対照区とした。結果を下記の表1に示す。
Figure 2016146823
表1において、体外受精5日目若しくは体外受精7日目で1分間照射したもの(1分照射区)及び3分間照射したもの(3分照射区)は、いずれも対照区と比べてカイ二乗検定でP<0.05となり、有意な値を示した。すなわち、表1において、「ab」「bc」「ac」「b」「de」「e」で記載された箇所は、いずれも、P<0.05で有意である。脱出胚盤胞発生率は、良質な胚に成長する割合を示すものであり、対照区(無処理区)と比較して改善が見られた。
つまり、表1に示されるように、近赤外光を照射した試験区の胚盤胞発生率は、1分照射区及び3分照射区のいずれも、近赤外光を照射しなかった対照区と比較して、培養成績が向上することが明らかとなった。
特に、3分照射区では、体外受精5日目と体外受精7日目のいずれの照射タイミングでも対照区と比較して有意に発生率が向上した。
また、近赤外光を照射した試験区では、より発育が進んだ脱出胚盤胞が多く観察され、内細胞塊の量が多い品質の高いものが多かった。以上のことから、近赤外光を短時間照射するだけで、胚の品質を簡便に向上できることが示された。
〔実験例2〕
(ウシ体外生産胚の作出)
食肉処理場で採取したウシ卵巣を研究室へ15℃で運搬し、卵巣表面の胞状卵胞(2-5mm)から卵丘細胞−卵子複合体(COCs)を吸引採取した。採取したCOCsは卵成熟培養液(IVMD101:機能性ペプチド研究所製)中で成熟培養した(22時間、38.5℃、5%CO2、95%空気)。培養後、媒精液(IVF100:機能性ペプチド研究所製)で精子濃度を0.5×107/mlに調製したウシ精液と培養し、体外受精した(6時間、38.5℃、5%CO2、95%空気)。体外受精後、余分な卵丘細胞をボルテックスもしくはピペッティングで除去し、5%FBS(Gibco社製)添加CR1aa培養液(Rosenkrans CF. Jr.他、Development of bovine embryos in vitro as affected by energy substrates. Biol Reprod 1993; 49; 459−462、参照)で体外培養した(38.5℃、5%CO2、95%空気)。
(近赤外光の照射)
体外受精7日目の胚盤胞に近赤外光を照射した。照射には近赤外光照射機(LTU904、Rian Corp.製、波長904nm、5.0mW)を用い、培養ディッシュ底面から垂直に1分間若しくは3分間照射した。照射機の照射口から胚までの距離は1mmである。照射後の胚は、5%FBS添加CR1aa培養液で培養した(38.5℃、5%CO2、95%空気)。
(ウシ体外生産胚の評価)
ふ化胚盤胞に到達するまでの所要時間を観察した。また、照射してから48時間後に胚盤胞1個あたりの構成細胞数を測定した。なお、近赤外光を照射しない実験を対照区とした。この実験の結果を図1及び図2に示す。
図1によると、近赤外光を照射した胚盤胞はふ化胚盤胞に到達するまでの所要時間が1673±164分だった。一方、近赤外を照射しなかった胚盤胞は、ふ化胚盤胞に到達するまでの所要時間は2231±108分だった。照射区の所要時間は対照区と比較してt検定でP<0.05となり、有意に低い値を示した。
図2によると、近赤外光を照射した胚盤胞の48時間後の細胞数は、胚盤胞1個あたり145.1±13.0個であった。一方、近赤外を照射しなかった胚盤胞の48時間後の細胞数は、胚盤胞1個あたり110.7±11.0個だった。照射区の細胞数は、対照区と比較してt検定でP<0.05となり、有意に高い値を示した。
〔実験例3〕
(マウス胚の採取)
ICR系雌マウス(Jcl:日本クレア株式会社)に過剰排卵処理を施し、同系統の雄マウスと交配させた。2日後に卵管から2細胞期胚を回収し、M16培地(Sigma社)で培養した(37.0℃、5%CO2、95%空気)。
(近赤外光の照射)
培養30時間後の8細胞期胚、培養48時間後の桑実胚、培養73時間後の胚盤胞に近赤外光を照射した。照射には近赤外光照射機(LTU904、Rian Corp.製、波長904nm、5.0mW)を用い、培養ディッシュ底面から垂直に1分間照射した。照射機の照射口から胚までの距離は1mmである。照射後の胚は、M16培養液で培養した(37.0℃、5%CO2、95%空気)。
(マウス胚の評価)
近赤外光を照射後、ふ化胚盤胞に到達するまでの所要時間を観察した。なお、近赤外光を照射しない実験を対照区とした。また、近赤外光を照射した胚盤胞を偽妊娠雌マウスの子宮へ移植し、受胎率、産子率を調べた。得られた産子は、生後5週間の体重増加を調べ、性成熟後には繁殖能力を調べた。結果を、それぞれ、図3、図4、及び表2に示す。
図3によると、近赤外光を照射したマウス胚は近赤外を照射しなかった胚と比較して、ふ化胚盤胞に到達するまでの所要時間が短くなる傾向があった。特に、発生ステージが進んだ胚で効果が認められ、胚盤胞で照射した場合の所要時間は対照区と比較してt検定でP<0.05となり、有意に低い値を示した。
Figure 2016146823
表2において、近赤外光を照射したマウス胚盤胞を移植したところ、対照区と比較して、受胎率、産子率のいずも高い傾向が認められた。特に、産子率は対照区と比較してt検定でP<0.05となり、有意に高い値を示した。以上のことから、胚に近赤外光を短時間照射するだけで、受胎性を向上できることが示された。
また、図4によると、対照区及び照射区で得られた産子の体重増加に差異が認められなかった。また、照射区の産子の交配試験を実施し、繁殖能力に異常は認められなかった。以上のことから、近赤外光を照射した胚盤胞由来の産子は正常であり、近赤外光の胚への照射は安全であることが示された。
本発明は、医療分野では生殖補助医療、体外受精、体外培養、受精卵移植等、畜産分野では家畜生産等に利用することができ、産業上利用することが可能である。

Claims (5)

  1. 哺乳動物(Mammalia)の胚に対して、近赤外光を照射する
    ことを特徴とする哺乳動物の胚処理方法。
  2. 前記近赤外光は、前記胚が8細胞期になった以降に照射する
    ことを特徴とする請求項1に記載の哺乳動物の胚処理方法。
  3. 前記近赤外光は、胚を培養する培養ディッシュの底面から、出力0.1mW〜20mWで、0.5分以上照射する。
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の哺乳動物の胚処理方法。
  4. 前記近赤外光は、波長が700nm〜1400nmである
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の哺乳動物の胚処理方法。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の胚処理方法により処理された
    ことを特徴とする哺乳動物の胚。
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