JP2016145993A - マスクブランクの製造方法、転写用マスク用の製造方法、および半導体デバイスの製造方法 - Google Patents

マスクブランクの製造方法、転写用マスク用の製造方法、および半導体デバイスの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】平坦度が悪化することを抑制したマスクブランクの製造方法、および転写用マスクの製造方法を提供する。
【解決手段】主表面に対して鏡面研磨を行ったガラス基板を準備する工程と、準備された前記ガラス基板に対し、加熱処理を行う工程と、加熱処理後のガラス基板の主表面上にタンタルを含有し、かつ水素を実質的に含有しない材料からなる薄膜を形成する工程と、を備えることを特徴とするマスクブランクの製造方法である。
【選択図】図1

Description

本発明は、低応力の薄膜を備えたマスクブランクの製造方法、転写用マスクの製造方法に関する。特に、薄膜の応力の経時変化を低減させたマスクブランクの製造方法、転写用マスクの製造方法に関する。また、この転写用マスクを用いた半導体デバイスの製造方法に関する。
一般に、半導体装置の製造工程では、フォトリソグラフィー法を用いて微細パターンの形成が行われている。また、この微細パターンの形成には通常何枚もの転写用マスクと呼ばれている基板が使用される。この転写用マスクは、一般に透光性のガラス基板上に、金属薄膜等からなる微細パターンを設けたものであり、この転写用マスクの製造においてもフォトリソグラフィー法が用いられている。
フォトリソグラフィー法による転写用マスクの製造には、ガラス基板等の透光性基板上に転写パターン(マスクパターン)を形成するための薄膜(例えば遮光膜など)を有するマスクブランクが用いられる。このマスクブランクを用いた転写用マスクの製造は、マスクブランク上に形成されたレジスト膜に対し、所望のパターン描画を施す露光工程と、所望のパターン描画に従って前記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する現像工程と、レジストパターンに従って前記薄膜をエッチングするエッチング工程と、残存したレジストパターンを剥離除去する工程とを有して行われている。上記現像工程では、マスクブランク上に形成されたレジスト膜に対し所望のパターン描画(露光)を施した後に現像液を供給して、現像液に可溶なレジスト膜の部位を溶解し、レジストパターンを形成する。また、上記エッチング工程では、このレジストパターンをマスクとして、ドライエッチングまたはウェットエッチングによって、レジストパターンが形成されておらず薄膜が露出した部位を溶解し、これにより所望のマスクパターンを透光性基板上に形成する。こうして、転写用マスクが出来上がる。
半導体装置のパターンを微細化するに当たっては、転写用マスクに形成されるマスクパターンの微細化に加え、フォトリソグラフィーで使用される露光光源波長の短波長化が必要となる。半導体装置製造の際の露光光源としては、近年ではKrFエキシマレーザー(波長248nm)から、ArFエキシマレーザー(波長193nm)へと短波長化が進んでいる。
転写用マスクとしては、透光性基板上にクロム系材料からなる遮光膜パターンを有するバイナリマスクが以前より知られている。
近年では、モリブデンシリサイド化合物を含む材料(MoSi系材料)を遮光膜として用いたArFエキシマレーザー用のバイナリマスクなども出現している(特許文献1)。また、タンタル化合物を含む材料(タンタル系材料)を遮光膜として用いたArFエキシマレーザー用のバイナリマスクなども出現している(特許文献2)。特許文献3では、タンタル、ニオブ、バナジウム、またはタンタル、ニオブ、バナジウムの少なくとも2つを含む金属を用いた遮光膜からなるフォトマスクに対して、酸洗浄や水素プラズマによる洗浄を行った場合、遮光膜が水素脆性化し、遮光膜が変形することがあることについて開示されている。またその解決手段として、遮光膜にパターンを形成後、遮光膜の上面や側面を気密に覆う水素阻止膜を形成することが開示されている。
一方、特許文献4では、合成石英ガラスからなる真空紫外光用マスク基板の製造方法について記載されている。ここでは、合成石英ガラスの真空紫外線域の光の透過率を向上させるためには、合成石英ガラス中のOH基を低減させる必要性が示されている。その解決手段の1つとして、合成石英ガラス中のSi−H含有量やH含有量を所定値以下に低減させることが開示されている。
特開2006−78807号公報 特開2009−230112号公報 特開2010−192503号公報 特開2004−26586号公報
近年、転写用マスクに対するパターン位置精度の要求レベルが特に厳しくなってきている。高いパターン位置精度を実現するための1つの要素として、転写用マスクを作製するための原版となるマスクブランクの平坦度を向上させることがある。マスクブランクの平坦度を向上させるには、まず、ガラス基板の薄膜を形成する側の主表面の平坦度を向上させることが必要である。マスクブランクを製造するためのガラス基板は、特許文献4に記載のようなガラスインゴットを製造し、ガラス基板の形状に切り出すところから始まる。切り出した直後のガラス基板は、主表面の平坦度が悪く、表面状態も粗面である。このため、ガラス基板に対して、複数段階の研削工程および研磨工程を行い、高い平坦度で良好な表面粗さ(鏡面)に仕上げられる。また、研磨砥粒を用いた研磨工程後には、フッ酸溶液や珪フッ酸溶液を含む洗浄液による洗浄が行われる。また、薄膜を形成する工程の前にアルカリ溶液を含む洗浄液による洗浄が行われる場合もある。
しかし、高い平坦度のマスクブランクを製造するには、それだけでは不十分である。ガラス基板の主表面に形成するパターンを形成するための薄膜の膜応力が高いと、基板を変形させてしまい、平坦度が悪化してしまう。このため、パターンを形成するための薄膜の膜応力を低減するために、成膜時あるいは成膜後に様々な対策が行われてきている。これまで、このような対策が取られて高い平坦度になるように調整されたマスクブランクは、製造後に多少長い期間(例えば半年程度)保管してもケースに密閉収納していれば、平坦度が大きく変化するようなことはないと考えられていた。しかし、パターン形成用の薄膜にタンタルを含有する材料が用いられたマスクブランクの場合、ケースに密閉収納していても、製造から時間が経過するに従い、主表面の平坦度が悪化することが確認された。具体的には、時間の経過ともに、薄膜を形成している側の主表面の平坦度が、凸形状の傾向が強くなる方向に悪化していた。
これは、ガラス基板が原因でない場合、薄膜の膜応力が次第に圧縮応力の傾向が強くなっていることを意味する。クロム系材料やモリブデンシリサイド化合物を含む材料を用いた薄膜を有するマスクブランクの場合には、このような顕著な現象は発生していない。このことから、パターン形成用の薄膜にタンタルを含有する材料を用いたマスクブランクで生じているこの現象は、ガラス基板自体が変形しているのではなく、薄膜の圧縮応力が時間の経過とともに大きくなっていくものと推察される。一方、このような高い圧縮応力を有する薄膜のマスクブランクを用いて転写用マスクを作製した場合、パターンの形成によって膜応力から開放された薄膜の領域でパターンの大きな位置ずれが発生するという問題もある。さらに、マスクブランクを製造してから短期間で転写用マスクを作製した場合においても、作製後に時間の経過とともにパターンの位置ずれが生じるという問題もある。
本発明は、このような状況下になされたものであり、その目的とするところは、パターン形成用の薄膜にタンタルを含有する材料を用いたマスクブランクにおいて、薄膜の膜応力が時間の経過とともに圧縮応力の傾向が強くなるという課題を解消し、平坦度が悪化することを抑制したマスクブランクの製造方法、および転写用マスクの製造方法を提供することである。また、この転写用マスクを用いた半導体デバイスの製造方法を提供することを目的としている。
前記の課題を達成するため、本発明のマスクブランクの製造方法は、主表面に対して鏡面研磨を行ったガラス基板を準備する工程と、準備された前記ガラス基板に対し、加熱処理を行う工程と、加熱処理後のガラス基板の主表面上にタンタルを含有し、かつ水素を実質的に含有しない材料からなる薄膜を形成する工程と、を備えることを特徴している。本発明のマスクブランクの製造方法により、薄膜の膜応力が時間の経過とともに圧縮応力の傾向が強くなるという課題を解消し、平坦度が悪化することを抑制したマスクブランクの製造方法を提供することができる。
また、本発明のマスクブランクの製造方法は、主表面に対して鏡面研磨を行ったガラス基板を準備する工程と、準備された前記ガラス基板に対し、加熱処理を行う工程と、加熱処理後のガラス基板を成膜室内に設置し、タンタルを含有するターゲットを用い、水素を含有しないスパッタリングガスを成膜室内に導入し、ガラス基板の主表面上にスパッタリング法によって薄膜を形成する工程と、を備えることを特徴としている。本発明のマスクブランクの製造方法において、所定のスパッタリングガスを用いることによって、薄膜の膜応力が時間の経過とともに圧縮応力の傾向が強くなるという課題を解消し、平坦度が悪化することを抑制したマスクブランクの製造方法を提供することができる。
前記の各マスクブランクの製造方法において、ガラス基板に行う前記加熱処理は、ガラス基板を300℃以上に加熱する処理であることを特徴とすることが好ましい。ガラス基板を300℃以上に加熱することにより、十分に水素を基板外に排除することができる。
前記の各マスクブランクの製造方法において、前記薄膜は、ガラス基板の主表面に接して形成されることを特徴とすることが好ましい。タンタルを含有する材料からなる薄膜が、加熱処理後のガラス基板の主表面に接して形成されている構成の場合、ガラス基板中に存在する水素等が直接薄膜に入り込む形になってしまう。このような構成の場合、加熱処理によってガラス基板からOH基、水素、水等を排除したことによる効果をより顕著に得ることができる。
前記の各マスクブランクの製造方法において、前記薄膜は、タンタルと窒素とを含有し、かつ水素を実質的に含有しない材料からなることを特徴とすることが好ましい。タンタルに窒素を含有させることで、タンタルの酸化を抑制することができる。
特に、このマスクブランクの製造方法において、前記薄膜の表層に、酸素を60原子%以上含有する高酸化層が形成されていることを特徴とすることが望ましい。薄膜材料の高酸化物の被膜は結合エネルギーが高いため、マスクブランクを取り囲む気体中の水素が薄膜の表層から薄膜内へ侵入することを阻止することができる。
前記の各マスクブランクの製造方法において、前記薄膜は、ガラス基板側から下層と上層とが積層する構造を有し、前記下層は、タンタルと窒素とを含有し、かつ水素を実質的に含有しない材料からなり、前記上層は、タンタルと酸素とを含有する材料からなることを特徴とすることが好ましい。このような構成とすることにより、上層に薄膜の露光光に対する表面反射率を制御する機能を有する膜(反射防止膜)として機能させることができる。
特に、このマスクブランクの製造方法において、前記上層の表層に、酸素を60原子%以上含有する高酸化層が形成されていることが望ましい。薄膜材料の高酸化物の被膜は結合エネルギーが高いため、薄膜の表層からの水素の薄膜内への侵入を阻止することができる。
本発明の転写用マスクの製造方法は、前記の各マスクブランクの製造方法で製造されたマスクブランクを用い、前記マスクブランクの薄膜に転写パターンを形成することを特徴としている。本発明のマスクブランクの平坦度は、求められる高い水準で維持されているため、このような特性を有するマスクブランクを用いて製造された転写用マスクも、求められる高い平坦度を有することができる。
特に、この転写用マスクの製造方法において、前記薄膜で形成された転写パターンの表層には、酸素を60原子%以上含有する高酸化層が形成されていることが望ましい。薄膜材料の高酸化物の被膜は結合エネルギーが高いため、転写用マスクの薄膜の表層からの水素の薄膜内への侵入を阻止することができる。そのため、転写用マスクは、より高い平坦度を有することができる。
本発明の半導体デバイスの製造方法は、前記の転写用マスクの製造方法で製造された転写用マスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写することを特徴としている。本発明の転写用マスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写することで、高精度のパターンを有する半導体デバイスを製造することができる。
本発明のマスクブランクの製造方法によれば、パターン形成用の薄膜にタンタルを含有する材料が用いられたマスクブランクにおいても、薄膜の膜応力が時間の経過とともに圧縮応力の傾向が強くなることがない。これにより、マスクブランクを製造後、時間の経過とともに平坦度が悪化していくことを抑制することができる。また、本発明のマスクブランクの製造方法で製造されたマスクブランクは、パターン形成用の薄膜の膜応力が時間の経過とともに増大することを抑制できているため、薄膜の膜応力は製造時のレベルを維持できる。これにより、膜応力の高い薄膜を有するマスクブランクから転写用マスクを作製した場合に生じるようなパターンの大きな位置ずれを抑制できる。さらに、本発明のマスクブランクの製造方法で製造されたマスクブランクから転写用マスクを作製した場合には、作製後に時間の経過とともにパターンの位置ずれが生じることも抑制できる。さらに、薄膜の膜応力による主表面の平坦度の悪化が抑制され、かつ薄膜に形成されたパターンの位置ずれも抑制された転写用マスクを用いて半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを転写できる。これより、半導体基板上に微細でかつ高精度の回路パターンを有する半導体デバイスを製造することができる。
本願発明の実施の形態にかかるマスクブランクの構成を示す断面図である。 本願発明の実施の形態にかかる転写用マスクの構成を示す断面図である。 本願発明の実施の形態にかかるマスクブランクから転写用マスクを製造するまでの過程を示す断面図である。 実施例におけるマスクブランクのHFS/RBS分析による結果を示す図である。 比較例におけるマスクブランクのHFS/RBS分析による結果を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明者は、ガラス基板に成膜直後のタンタルを含有する薄膜が、時間の経過とともに、圧縮応力が増大する原因について鋭意研究を行った。まず、成膜後のマスクブランクの保管方法に原因がないかを確認するため、種々の保管ケースや保管方法で検証したが、いずれの場合も、マスクブランクの主表面の平坦度が悪化しており、明確な相関性は得られなかった。次に、主表面の平坦度が凸形状の方向に悪化したマスクブランクに対して、ホットプレートを用いて加熱処理を行ってみた。加熱処理の条件は、200℃で5分程度とした。この加熱処理を行うと、一時的には主表面の凸形状が多少良好な方向に変化した。しかし、加熱処理後、時間が経過するとマスクブランクの主表面の平坦度が再び悪化していき、根本的な解決には至らないことがわかった。
次に、本発明者は、タンタルを含有する材料は、水素を取り込みやすい特性を有することが関係している可能性を検討した。すなわち、タンタルを含有する薄膜中に、時間の経過とともに徐々に水素が取り込まれ、圧縮応力が増大するという仮説を立てた。ただ、この時間経過で圧縮応力が増大する現象が生じたこのマスクブランクは、従来の知見では水素が取り込まれる要因が見当たらないものであった。このマスクブランクに使用している基板は合成石英ガラスで形成されており、合成石英インゴットの製造時には、水素が含有されることを抑制したプロセスを用いていた。また、タンタルを含有する薄膜も、基板の主表面側に、タンタルと窒素とを含有する材料からなる下層と、下層の上に形成されたタンタルに酸素を含有する材料からなる上層とを積層した構造であった。タンタルに酸素を含有する材料からなる膜は、外気からの水素の侵入を抑制する効果があるため、外気中の水素がタンタルを含有する薄膜に侵入しにくいと思われていた。
タンタルを含有する薄膜中に成膜終了からの時間経過で水素が取り込まれているのかどうかを確認するため、以下の検証を行った。具体的には、タンタルを含有する材料からなる薄膜を備えるマスクブランクについて、成膜してからケースに収納して2週間程度と日数がさほど経過しておらず、薄膜の平坦度の悪化が見られないマスクブランクと、成膜してからケースに収納して4カ月が経過しており、薄膜の圧縮応力が増大して平坦度が悪化(基板主表面の中心を基準とした一辺が142mmの正方形の内側領域におけるCoordinate TIRでの平坦度において、平坦度の変化量が300nm程度)したマスクブランクのそれぞれに対して、膜組成の分析を行った。膜分析はHFS/RBS分析(水素前方散乱分析/ラザフォード後方散乱分析)を用いた。その結果、成膜してから2週間程度の薄膜中は、水素含有量が検出下限値以下であったのに対し、成膜してから4カ月経過した薄膜は、水素が6at%程度含有されていることが判明した。
これらの結果から、成膜後のタンタルを含有する薄膜に水素が取り込まれていくことで膜応力が変化していることが確認された。次に、本願発明者は水素の発生源として基板を疑った。主表面の平坦度や表面粗さをマスクブランク用の基板に求められる水準以上になるまで研磨が行われた後、さらに加熱処理を行った基板を準備し、タンタルを含有する材料からなる薄膜を成膜して前記と同様の検証を行った。その結果、加熱処理を行った基板を用いたマスクブランクの場合、成膜後4か月経過したものでも、平坦度の悪化度合いは小さく、また膜中の水素含有量も抑制されていた。
OH基や水素が混入しにくい製法で生成されたガラスインゴットを用いて製造されたマスクブランクのガラス基板に、水素の発生源となるOH基、水素および水等が存在する要因としては、以下の可能性が考えられる。
通常、マスクブランクに用いられる基板に求められる主表面の平坦度や表面粗さの条件は厳しく、ガラスインゴットからガラス基板の形状に切り出した状態のままでは、マスクブランク用のガラス基板としてはその条件を満たすことは困難である。切り出した状態のガラス基板に対して、研削工程および研磨工程を複数段階行い、主表面を高い平坦度および表面粗さに仕上げていく必要がある。また、研磨工程で使用される研磨液には、研磨材としてコロイダルシリカ砥粒が含まれている。コロイダルシリカ砥粒は基板表面に付着しやすいことから、複数の研磨工程の間や後に、基板表面をエッチングする作用を有するフッ酸や珪フッ酸を含有する洗浄液を用いて洗浄することも通常に行われている。
研削工程や研磨工程では、基板の表層に加工変質層が形成されやすく、その加工変質層にOH基や水素が取り込まれている可能性がある。また、このとき加工変質層からさらに基板の内部にOH基や水素が取り込まれている可能性がある。研磨工程間等の洗浄時において、基板表面を微小にエッチングするときにもOH基や水素が取り込まれている可能性もある。さらに、基板の表面に水和層が形成されている可能性もある。
本発明は以上のことを考慮してなされたものである。すなわち、本発明のマスクブランクの製造方法は、主表面に対して鏡面研磨を行ったガラス基板を準備する工程と、準備された前記ガラス基板に対し、加熱処理を行う工程と、加熱処理後のガラス基板の主表面上にタンタルを含有し、かつ水素を実質的に含有しない材料からなる薄膜を形成する工程とを備えることを特徴としている。
また、本発明のマスクブランクの製造方法は、主表面に対して鏡面研磨を行ったガラス基板を準備する工程と、準備された前記ガラス基板に対し、加熱処理を行う工程と、加熱処理後のガラス基板を成膜室内に設置し、タンタルを含有するターゲットを用い、水素を含有しないスパッタリングガスを成膜室内に導入し、ガラス基板の主表面上にスパッタリング法によって薄膜を形成する工程とを備えることを特徴としている。
研磨工程で鏡面研磨が行われた後で、マスクブランク用基板としての条件を満たした段階のガラス基板に対し、加熱処理を行うことにより、基板の表層あるいは内部に取り込まれているOH基、水素および水等を強制的に追い出すことができる。そして、加熱処理を行った後のガラス基板に対して、タンタルを含有する薄膜を成膜することで、タンタルを含有する薄膜中に水素が取り込まれることを抑制でき、薄膜の圧縮応力の増大を抑制することができる。
主表面に対して鏡面研磨を行ったガラス基板を準備する工程は、この工程後のガラス基板における主表面の中心を基準とした一辺が142mmの正方形の内部領域(以下、142mm角内領域という。)での平坦度が0.5μm以下であり、かつ一辺が1μmの正方形の内部領域における表面粗さがRq(以下、単に表面粗さRqという。)で0.2nm以下であることが望ましい。また、ガラス基板における主表面の132mm角内領域での平坦度は、0.3μm以下であることとさらに望ましい。ガラスインゴットから切り出した状態のガラス基板では、このような高い平坦度および表面粗さの条件を満たすことはできない。高い平坦度および表面粗さの条件を満たすために、少なくともガラス基板の主表面に対して鏡面研磨を行うことは必須となる。この鏡面研磨は、コロイダルシリカの研磨砥粒を含有する研磨液でガラス基板の両主表面を両面研磨で同時に研磨することが好ましい。また、切り出した状態ガラス基板に対し、研削工程および研磨工程を複数段階行うことによって、求められる平坦度および表面粗さの条件を満たす主表面に仕上げることが望ましい。この場合、少なくとも研磨工程の最終段階では、コロイダルシリカの研磨砥粒を含有する研磨液を用いる。
準備されたガラス基板に対して行う加熱処理は、ガラス基板を300℃以上に加熱する処理であることが好ましい。300℃未満の加熱処理では、温度が不十分なので、基板中の水素を基板外に排出させる効果が十分には得られない。前記加熱処理は、400℃以上であるとより効果が得られ、さらに500℃以上であると、加熱時間を短くしても水素を基板外に排除する十分な効果が得られる。一方、前記加熱処理は、1600℃未満であることが必要である。合成石英の軟化点は一般に1600℃であり、加熱温度が1600℃以上であると基板が軟化して変形してしまうためである。前記加熱処理は、1000℃以下であると好ましく、800℃以下であるとより望ましい。また、ガラス基板に対して行う加熱処理の処理時間は、加熱温度にもよるが、少なくとも10分以上であることが望まれる。また、ガラス基板に対して行う加熱処理の処理時間は、30分以上であることが好ましく、40分以上であることがより好ましい。
前記加熱処理は、ガラス基板の周囲に水素が極力排除された気体が存在する状態で行われることが好ましい。空気中には水素自体の存在量は少ないが、水蒸気は多く存在する。クリーンルーム内の空気でも湿度がコントロールされてはいるが、水蒸気は比較的多く存在する。ガラス基板に対する加熱処理をドライエア中で行うことで、水蒸気に起因する水素のガラス基板への侵入を抑制することができる。さらに、水素や水蒸気を含まない気体(窒素等の不活性ガスや希ガスなど)中でガラス基板を加熱処理することがより好ましい。
加熱処理を行うガラス基板は、所定の洗浄工程を行うことが望ましい。研磨工程時に使用した研磨砥粒が付着した状態で加熱処理を行うと、基板の表面に固着してしまい、加熱処理後に通常の洗浄工程を行っても除去できない場合がある。特にコロイダルシリカのようなガラス基板に類似した材料である場合、ガラス基板の表面に強固に付着してしまう恐れがあるため、基板表面をエッチングする作用を有するフッ酸や珪フッ酸を含有する洗浄液で洗浄することが望ましい。
前記のマスクブランクにおけるガラス基板の材料としては、合成石英ガラスのほか、石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、低熱膨張ガラス(SiO−TiOガラス等)などが挙げられる。特に、合成石英ガラスは、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)に対する透過率が高いため、合成石英ガラスをガラス基板の材料として用いることが好ましい。なお、本発明のマスクブランクおよび転写用マスクに適用される露光光については、ArFエキシマレーザー光、KrFエキシマレーザー光、i線光等、特に制約はない。ArFエキシマレーザーを露光光に適用するマスクブランクや転写用マスクは、主表面の平坦度や薄膜で形成される転写パターンの位置精度などの要求レベルが非常に高い。そのため、ArFエキシマレーザーを露光光に適用するためのマスクブランクおよび転写用マスクの製造のために、本発明の製造方法を用いることが特に効果的である。
鏡面研磨後のガラス基板に対する加熱処理は、タンタルを含有する材料からなる薄膜を形成する場合に特に有効である。タンタルを含有する材料は、水素を取り込みやすい性質を有するためである。タンタルは水素を取り込むと脆性化する特性を有するため、薄膜を成膜した直後の状態でも水素の含有量を抑制することが望まれる。このため、本発明では、加熱処理のガラス基板の主表面上に形成する薄膜には、タンタルを含有し、かつ水素を実質的に含有しない材料を選定している。「水素を実質的に含有しない」とは、薄膜中の水素含有量が少なくとも5at%以下であることをいう。薄膜中の水素含有量の好ましい範囲は、3at%以下であることが好ましく、検出下限値以下であることがより好ましい。また、同様の理由で、本発明では、薄膜を成膜する工程は、加熱処理のガラス基板を成膜室内に設置し、タンタルを含有するターゲットを用い、水素を含有しないスパッタリングガスを成膜室内に導入し、ガラス基板の主表面上にスパッタリング法によって薄膜を形成することにより行うこともできる。
前記ガラス基板上に設けられる薄膜を形成するタンタルを含有し、かつ水素を実質的に含有しない材料としては、例えば、タンタル金属、並びにタンタルに、窒素、酸素、ホウ素および炭素から選ばれる一以上の元素を含有し、水素を実質的に含有しない材料などが挙げられる。例えば、タンタルを含有し、かつ水素を実質的に含有しない材料としては、Ta、TaN、TaON、TaBN、TaBON、TaCN、TaCON、TaBCNおよびTaBOCNなどが挙げられる。前記材料については、本発明の効果が得られる範囲で、タンタル以外の金属を含有させてもよい。
なお、タンタル以外にも水素を取り込みやすい性質を有する金属があるが、前記薄膜の材料中のタンタルを他の水素を取り込みやすい性質を有する金属に置換した場合も、本発明と同様の効果が得られる。他の水素を取り込みやすい性質を有する金属としては、ニオブ、バナジウム、チタン、マグネシウム、ランタン、ジルコニウム、スカンジウム、イットリウム、リチウムおよびプラセオジムなどが挙げられる。また、タンタルと、前記の水素を取り込みやすい性質を有する金属群から選ばれる2以上の金属とからなる合金についても同様の効果が得られる。これらの金属または合金を含有する材料からなる薄膜をガラス基板に形成する場合にも、ガラス基板に対する加熱処理は有効である。
タンタルを含有する材料からなる薄膜は、酸素含有量が50at%以上であると、材料内に水素が取り込まれるのを阻止する効果がある程度得られるようになる。このため、基板主表面側における薄膜の材料が、50at%未満の酸素含有量であるタンタルを含有する材料であると、薄膜成膜前に基板を加熱処理ことによる効果がより得られることになるため、望ましい。
また、タンタルを含有する材料からなる薄膜が、加熱処理後のガラス基板の主表面に接して形成されている構成の場合、ガラス基板中に存在する水素等が直接薄膜に入り込む形になってしまう。このような構成の場合、加熱処理によってガラス基板からOH基、水素、水等を排除したことによる効果をより顕著に得ることができる。
前記マスクブランクの薄膜は、タンタルと窒素とを含有し、かつ水素を実質的に含有しない材料で形成されることが好ましい。タンタルは自然酸化し易い材料である。タンタルは、酸化が進むと露光光に対する遮光性能(光学濃度)が低下する。また、薄膜パターンを形成する観点において、タンタルの酸化が進んでいない状態の材料は、フッ素を含有するエッチングガス(フッ素系エッチングガス)および塩素を含有しかつ酸素を含有しないエッチングガス(酸素非含有の塩素系エッチングガス)のいずれによってもドライエッチングが可能であるといえる。しかし、酸化が進んだタンタルは、薄膜パターンを形成する観点において、酸素非含有の塩素系エッチングガスではドライエッチングが困難な材料であり、フッ素系エッチングガスのみドライエッチングが可能な材料といえる。タンタルに窒素を含有させることで、タンタルの酸化を抑制することができる。また、タンタルを含有する材料からなる薄膜がガラス基板の主表面に接して形成されている場合、窒素を含有させることで露光光に対する裏面反射率を低減させつつ、酸素を含有させる場合に比べて光学濃度の低下を抑制できるため、好ましい。薄膜中の窒素含有量は、光学濃度の観点から30at%以下であることが好ましく、25at%以下であることがより好ましく、20at%以下であることがさらに好ましい。また、薄膜中の窒素含有量は、裏面反射率を40%未満とする必要がある場合には、7at%以上であることが望まれる。
また、前記マスクブランクの薄膜は、その表層(基板主表面とは反対側の薄膜の表層)に、酸素を60原子%以上含有する高酸化層が形成されていることが好ましい。前記のとおり、水素は基板からだけでなく、マスクブランクを取り囲む気体中の水素も薄膜表面から内部に入り込む。薄膜材料の高酸化物の被膜は、結合エネルギーが高く、水素の薄膜内への侵入を阻止する特性を有する。また、タンタルを含有する材料の高酸化層(タンタル高酸化層)は、優れた耐薬品性、耐温水性およびArF露光光に対する耐光性も兼ね備える。
マスクブランクや転写用マスクにおける薄膜は、結晶構造が微結晶、好ましくは非晶質であることが望まれる。このため、薄膜内の結晶構造が単一構造にはなりにくく、複数の結晶構造が混在した状態になりやすい。すなわち、タンタル高酸化層の場合、TaO結合、Ta結合、TaO結合およびTa結合が混在する状態になりやすい。遮光膜中の所定の表層に、Ta結合の存在比率が高くなるにつれて、水素侵入を阻止する特性、耐薬品性、耐温水性およびArF耐光性がともに高くなり、TaO結合の存在比率が高くなるにつれてこれらの特性が低下する傾向がある。
タンタル高酸化層において、層中の酸素含有量が60at%以上66.7at%未満であると、層中のタンタルと酸素との結合状態はTa結合が主体になる傾向が高くなると考えられる。この層中の酸素含有量の場合、一番不安定な結合であるTaO結合は、層中の酸素含有量が60at%未満の場合に比べて非常に少なくなると考えられる。タンタル高酸化層において、層中の酸素含有量が66.7at%以上であると、層中のタンタルと酸素との結合状態はTaO結合が主体になる傾向が高くなると考えられる。この層中の酸素含有量の場合、一番不安定な結合であるTaO結合およびその次に不安定な結合であるTaの結合は、ともに非常に少なくなると考えられる。
タンタル高酸化層が、層中の酸素含有量が68at%以上であると、TaO結合が主体になるだけでなく、Taの結合状態の比率も高くなると考えられる。このような酸素含有量になると、「Ta」や「TaO」の結合状態は稀に存在する程度となり、「TaO」の結合状態は存在し得なくなってくる。タンタル高酸化層の層中の酸素含有量が71.4at%であると、実質的にTaの結合状態だけで形成されていると考えられる。タンタル高酸化層の層中の酸素含有量が60at%以上であると、最も安定した結合状態である「Ta」だけでなく、「Ta」や「TaO」の結合状態も含まれることになる。また、層中の酸素含有量が60at%以上であることによって、少なくとも一番不安定な結合であるTaO結合が、水素侵入を阻止する特性、耐薬性、ArF耐光性を低下させるような影響を与えない程度の非常に少ない量になる。したがって、層中の酸素含有量の下限値は、60at%であると考えられる。
タンタル高酸化層のTa結合の存在比率は、高酸化層を除く薄膜におけるTa結合の存在比率よりも高いことが望ましい。Ta結合は、非常に高い安定性を有する結合状態であり、高酸化層中のTa結合の存在比率を多くすることで、水素侵入を阻止する特性や、耐薬性、耐温水性などのマスク洗浄耐性やArF耐光性が大幅に高まる。特に、タンタル高酸化層は、Taの結合状態だけで形成されていることが最も好ましい。なお、タンタル高酸化層の窒素およびその他の元素の含有量は、水素侵入を阻止する特性等の作用効果に影響のない範囲であることが好ましく、実質的に含まれないことが好ましい。
前記タンタル高酸化層の厚さは、1.5nm以上4nm以下であることが好ましい。1.5nm未満では薄すぎて水素侵入を阻止する効果が期待できず、4nmを超えると表面反射率に与える影響が大きくなり、所定の表面反射率(露光光に対する反射率や各波長の光に対する反射率スペクトル)を得るための制御が難しくなる。また、タンタル高酸化層は、ArF露光光に対する光学濃度が非常に低いことから、表面反射防止層で確保できる光学濃度が低下し、薄膜の膜厚を薄膜化する観点からはマイナスに働いてしまう。なお、薄膜全体の光学濃度確保の観点と、水素侵入を阻止する特性、耐薬性およびArF耐光性の向上の観点との双方のバランスを考慮すると、高酸化層の厚さは1.5nm以上3nm以下とするのがより望ましい。
前記のタンタル高酸化層の形成方法は、薄膜が成膜された後のマスクブランクに対して、温水処理、オゾン含有水処理、酸素を含有する気体中での加熱処理、酸素を含有する気体中での紫外線照射処理および/またはOプラズマ処理等を行うことなどが挙げられる。なお、高酸化層は、薄膜を形成する金属の高酸化膜に限定されない。水素侵入を阻止する特性があればどの金属の高酸化膜であってもよく、薄膜の表面にその高酸化膜を積層した構成でもよい。また、薄膜への水素の侵入を阻止する特性を有する材料であれば、高酸化物でなくてもよく、薄膜の表面にその材料膜を積層した構成とすることもできる。
前記マスクブランクの薄膜は、ガラス基板側から下層と上層とが積層する構造を有し、前記下層は、タンタルと窒素とを含有し、かつ水素を実質的に含有しない材料からなり、前記上層は、タンタルと酸素とを含有する材料からなることが好ましい。このような構成とすることにより、上層に薄膜の露光光に対する表面反射率を制御する機能を有する膜(反射防止膜)として機能させることができる。
さらに、上層の表層(下層側とは反対側の表層)に、酸素を60at%以上含有する高酸化層を形成することが望ましい。高酸化層やタンタルを含有する材料の高酸化層などの態様や作用効果については、前記と同様である。上層は、表面反射率特性(ArF露光光に対する反射率や各波長の光に対する反射率スペクトル)の制御し易さを考慮すると、表層部分を除いた上層中の酸素含有量は、60at%未満であることが好ましい。
上層は、タンタルに酸素を含有する材料で形成される。薄膜パターンを形成する観点において、上層(タンタルに酸素を含有する材料)のドライエッチングは、酸素非含有の塩素系エッチングガスでは困難であり、フッ素系エッチングガスによってのみドライエッチングが可能である。これに対して下層は、タンタルと窒素とを含有する材料で形成される。薄膜パターンを形成する観点において、下層(タンタルと窒素とを含有する材料)のドライエッチングは、フッ素系エッチングガスおよび酸素非含有の塩素系エッチングガスのいずれでも可能である。このため、レジストパターン(転写パターンが形成されたレジスト膜)をマスクとし、薄膜をドライエッチングしてパターン形成するとき、上層に対してフッ素系エッチングガスによるドライエッチングを行ってパターンを形成し、上層のパターンをマスクとして、下層に酸素非含有の塩素系エッチングガスによるドライエッチングを行ってパターンを形成するプロセスを使用することができる。このようなエッチングプロセスが適用できることによって、レジスト膜の薄膜化を図ることができる。
酸素非含有の塩素系エッチングガスによる上層のドライエッチングをより困難にするためには、上層中の、結合エネルギーの比較的高いタンタルと酸素との結合の存在量を多くするとよい。上層のドライエッチングをより困難にするためには、上層のタンタル含有量に対する酸素含有量の比率が1以上であることが好ましい。上層がタンタルおよび酸素だけで形成されている場合、上層中の酸素含有量は、50at%以上であることが好ましい。
前記薄膜の下層を形成する材料については、前記のタンタルを含有し、かつ水素を実質的に含有しない材料に列挙したものと同様である。また、上層を形成する材料については、タンタルと酸素とを含有し、さらに窒素、ホウ素および炭素などを含有する材料が好ましい。上層を形成する材料として、例えば、TaO、TaON、TaBO、TaBON、TaCO、TaCON、TaBCOおよびTaBOCNなどが挙げられる。
前記マスクブランクの薄膜は、上記の積層構造だけに限定されるものではない。3層積層構造としてもよく、単層の組成傾斜膜としてもよく、上層と下層との間で組成傾斜した膜構成としてもよい。前記マスクブランクの薄膜は、転写用マスクを作製したときに遮光パターンとして機能する遮光膜として用いられることが望ましいが、これに限定されるわけではない。前記マスクブランクの薄膜は、エッチングストッパー膜やエッチングマスク膜(ハードマスク膜)としても適用可能であり、前記の薄膜に求められている制約の範囲内であれば、ハーフトーン位相シフト膜や光半透過膜にも適用可能である。また、前記のマスクブランクは、薄膜の圧縮応力の経時変化を抑制できているため、薄膜で形成されるパターンに高い位置精度が求められるダブルパターニング技術(狭義のダブルパターニング技術(DP技術)、ダブル露光技術(DE技術)等)が適用される転写用マスクセットを作製する場合、特に好適である。
前記マスクブランクの薄膜において、ガラス基板と前記薄膜との間に、ガラス基板および薄膜ともにエッチング選択性を有する材料(Crを含有する材料、例えば、Cr、CrN、CrC、CrO、CrONおよびCrC等)からなるエッチングストッパー膜やエッチングマスク膜を形成してよい。さらに、ガラス基板と薄膜との間に、露光光に対して所定の位相シフト効果および透過率を有するハーフトーン位相シフト膜や、所定の透過率のみを有する光半透過膜を形成してもよい(この場合、薄膜は遮光帯や遮光パッチ等を形成するための遮光膜として用いられる。)。ただし、前記薄膜に接するこれらの膜は、基本的に水素を含有しない材料(積極的に含有させず、前記薄膜が成膜されるまでに行われる処理は、水素が極力取り込まれないような手段とする。)で形成することが必要である。
本発明の製造方法により製造される転写用マスクは、前記の製造方法で製造されたマスクブランクを用い、前記マスクブランクの薄膜に転写パターンを形成することで作製されることが好ましい。製造されてから一定期間以上経過したマスクブランクは、時間経過による薄膜の圧縮応力の増大が抑制されているため、マスクブランクの平坦度は求められている高い水準で維持されている。このような特性を有するマスクブランクを用いれば、出来上がった転写用マスクは求められる高い平坦度とすることができる。また、薄膜の圧縮応力が抑制されているため、転写マスクを作製するエッチングプロセス後に、周りの圧縮応力から解放された薄膜の各パターンが起こす主表面上における位置ずれ量を抑制することもできる。
一方、製造されてから時間が経過していないマスクブランクを用いて、転写用マスクを作製した場合、従来の製造方法によって作製した直後の転写用マスク(従来の転写用マスク)は、求められる高い平坦度となっている。しかし、従来の転写用マスクは、その後、使用せずにマスクケースに収納して保管していた場合や露光装置にセットして継続使用した場合、薄膜の圧縮応力が増大することで、平坦度が悪化してしまうため、薄膜の各パターンが大きく位置ずれを起こしてしまう恐れがある。本発明の製造方法で製造されたマスクブランクを用いて作製した本発明の転写用マスクを用いるならば、時間経過による薄膜の圧縮応力の増大を抑制できるため、作製後に使用せずにマスクケースに収納して保管していた場合や露光装置にセットして継続使用した場合でも、求められる高い平坦度を維持し続けることができ、薄膜の各パターンの位置ずれも抑制できる。
さらに、この転写用マスクの薄膜で形成された転写パターンの表層には、酸素を60原子%以上含有する高酸化層が形成されていることが望ましい。高酸化層やタンタルを含有する材料の高酸化層などの態様や作用効果については、前記と同様である。
前記の転写用マスクは、バイナリ型マスクとして使用可能であり、特に露光光にArFエキシマレーザー光が適用される場合に特に好適である。また、掘り込みレベンソン型位相シフトマスク、ハーフトーン型位相シフトマスク、エンハンサ型位相シフトマスクおよびクロムレス位相シフトマスク(CPLマスク)などにも適用可能である。また、前記の転写用マスクは、パターン位置精度に優れるため、ダブルパターニング技術(DP技術、DE技術等)が適用される転写用マスクセットに特に好適である。
前記の転写用マスクを作製する際にマスクブランクに対して行われるエッチングとしては、微細パターンの形成に有効なドライエッチングが好適に用いられる。前記のフッ素を含有するエッチングガスによる薄膜に対するドライエッチングには、例えば、SF、CF、CおよびCHF等のフッ素系ガスを用いることができる。また、前記の塩素を含有しかつ酸素を含有しないエッチングガスによる薄膜に対するドライエッチングには、ClおよびCHCl等の塩素系のガス、または、これらの塩素系のガスの少なくとも一つと、He、H、N、Arおよび/またはC等との混合ガスを用いることができる。
前記の製造方法で製造された転写用マスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写することで、高精度のパターンを有する半導体デバイスを製造することができる。前記の転写用マスクは、作製時において求められる高い平坦度およびパターン位置精度を有しているためである。また、前記の転写用マスクは、作製後に使用せずにマスクケースに収納して一定期間保管した後に露光装置にセットして露光転写に使用し始めたときや、マスク作製後、時間を置かずに露光装置にセットして露光転写に使用していたときにおいても、求められる高い平坦度を維持し続けることができ、薄膜の各パターンの位置ずれも抑制できているためである。
図1に示されるように、本実施の形態にかかるマスクブランクは、合成石英からなるガラス基板1上に、厚さ42.5nmのタンタルと窒素とを主成分とする下層(遮光層)2が形成され、この下層2の上に、厚さ5.5nmのタンタルと酸素とを主成分とする上層(反射防止層)3が形成され、この上層3の表層にタンタル高酸化層4が形成されてなるものである。なお、下層2と、タンタル高酸化層4を含む上層3とで遮光膜30を構成する。
また、本実施の形態にかかる転写用マスクは、図2に示されるように、図1に示されるマスクブランクの遮光膜30をパターニングすることにより、ガラス基板1上に、遮光膜30を残存させた遮光部30aと、除去した透光部30bとから構成される微細パターンを形成したものである。遮光膜パターン(薄膜パターン)30aの表層には、タンタル高酸化層4aが形成されている。また、遮光膜パターン30aの側壁においては、上層3のパターン3aの側壁の表層にタンタル高酸化層4bが形成され、下層2のパターン2aの側壁の表層にタンタル高酸化層4cが形成されている。なお、下層2および上層3の各パターン2a、3aの側壁にタンタル高酸化層4b、4cを形成する方法は、前記のマスクブランクにおけるタンタル高酸化層の形成方法と同様である。
次に、図3を参照しながら本実施の形態にかかるマスクブランクおよび転写用マスクを製造した例を実施例として説明する。
(実施例1)
[マスクブランクの製造]
従来から使用されている製造方法(スート法)で製造された合成石英インゴットに対し、1000℃以上で2時間以上、加熱処理を行った。次に、加熱処理後の合成石英インゴットから、縦・横の寸法が、約152mm×152mmで、厚さが6.85mmの合成石英からなるガラス基板を切り出し、面取り面を適宜形成した。
切り出されたガラス基板に対し、主表面および端面に対して研削を行った。研削後のガラス基板の主表面に対し、粗研磨工程および精密研磨工程を順に行った。具体的には、キャリアに支持されたガラス基板を上下各定盤面に研磨パッド(硬質ポリッシャ)を備える両面研磨装置の上下定盤の間に挟み、酸化セリウムの研磨砥粒(粒径 粗研磨工程:2〜3μm、精密研磨工程:1μm)を含む研磨液を定盤面に流入させながら、ガラス基板を遊星歯車運動させた。各工程後のガラス基板は、洗浄槽に浸漬(超音波印加)し、付着する研磨砥粒を除去する洗浄を行った。
洗浄後のガラス基板のガラス基板の主表面に対し、超精密研磨工程および最終研磨工程を行った。具体的には、キャリアに支持されたガラス基板を上下各定盤面に研磨パッド(超軟質ポリッシャ)を備える両面研磨装置の上下定盤の間に挟み、コロイダルシリカの研磨砥粒(粒径 超精密研磨工程:30〜200nm、最終研磨工程:平均80nm)を含む研磨液を定盤面に流入させながら、ガラス基板を遊星歯車運動させた。超精密研磨工程後のガラス基板に対し、フッ酸とケイフッ酸とを含む洗浄槽に浸漬(超音波印加)し、研磨砥粒を除去する洗浄を行った。
最終研磨工程後のガラス基板は、厚さが6.35mm、主表面の中心を基準とした142mmの正方形の内部領域(以下、142mm角内領域という。)の平坦度が0.3μm以下、表面粗さRqが0.2nm以下であり、22nmノードのマスクブランクで使用するガラス基板として十分な水準であった。
次に、このガラス基板を加熱炉に設置し、炉内の気体を炉外と同じ気体(クリーンルーム内の空気)とし、加熱温度500℃で40分間の加熱処理を行った。さらに、加熱処理後のガラス基板に対し、洗剤による洗浄と純水とによるリンス洗浄を行い、さらに、大気中でXeエキシマランプを照射し、紫外線と、その紫外線によって発生するOとによって主表面の洗浄を行った。
次に、洗浄後のガラス基板をDCマグネトロンスパッタ装置に導入した。スパッタ装置内にXeとNとの混合ガスを導入し、タンタルターゲットを用いたスパッタリング法で、ガラス基板1の主表面に接して膜厚42.5nmのTaN層(下層)2を成膜した(図3(a)参照)。さらに、スパッタ装置内のガスをArとOとの混合ガスに入れ替え、同じくタンタルターゲットを用いたスパッタリング法で、膜厚5.5nmのTaO層(上層)3を成膜した(図3(a)参照)。この成膜直後の段階で、遮光膜30を備えるマスクブランクに対して、基板主表面上の遮光膜30の表面における平坦度を平坦度測定装置UltraFLAT 200M(Corning TOROPEL社製)で測定した。また、同条件で製造したマスクブランクに対して、HFS/RBS分析を行った結果、TaN膜中の水素含有量は検出下限値以下であった。
次に、TaN層(下層)2とTaO層(上層)3との積層構造の遮光膜30が形成されたガラス基板を加熱炉に設置し、炉内の気体を窒素に置換し、加熱温度300℃で1時間の加熱処理を行い、基板中の水素を強制的に遮光膜に取り込ませる加速試験を行った。加速試験後の遮光膜30を備えるマスクブランクに対して、基板主表面上の遮光膜30の表面における平坦度を平坦度測定装置UltraFLAT 200M(Corning TOROPEL社製)で測定した。加速試験後に測定した平坦度と、加速試験前に測定した平坦度との差は、142mm角内領域の平坦度差で30nm(加速試験後に表面形状が凸方向に変化)であった。この平坦度差の数値は測定誤差の範囲内であり、加熱処理の前後で平坦度には変化がほとんど見られなかった。また、加速試験後の遮光膜30を備えるマスクブランクに対して、HFS/RBS分析を行った結果を、図4に示す。図4の結果から、TaN層に水素が2at%程度含有しているといえる。この結果から、加熱炉内は窒素雰囲気であるため、TaN層に取り込まれた水素の供給源は、ガラス基板であるということがいえる。また、加速試験前後の平坦度差から、TaN層中に水素が2at%程度取り込まれる程度では、主表面の平坦度にはほとんど影響しないこともわかる。
次に、前記と同条件で、ガラス基板1の主表面に接してTaN層2とTaO層3との積層構造の遮光膜30を形成したマスクブランクを製造した。このマスクブランクをホットプレートに設置し、大気中で300℃の加熱処理を行い、TaO層3内の表層にタンタルの高酸化層4を形成した(図3(b)参照)。高酸化層4を形成した後のマスクブランクに対し、HFS/RBS分析を行ったところ、TaO層3の表面から2nmの深さまで酸素含有量の多い高酸化層4が形成されていることが確認された。また、XPS分析(X線光電子分光分析)を行ったところ、遮光膜30の最表層のナロースペクトルに、Taの束縛エネルギー(25.4eV)の位置で高いピークが見られた。また、遮光膜30の表面から深さ1nmの深さの層におけるナロースペクトルでは、Taの束縛エネルギー(25.4eV)の位置でのピークとTaの束縛エネルギー(21.0eV)との間であり、Taよりにピークが見られた。これらの結果から、TaO層3の表層にTa結合を有する高酸化層4が形成されているということがいえる。以上のようにして、ガラス基板1の主表面上に、TaN層2と、表層にタンタルの高酸化層4を含むTaO層3との積層構造の遮光膜30を備える実施例1のマスクブランクを得た。
以上のように製造した遮光膜30の膜面における反射率(表面反射率)は、ArF露光光(波長193nm)において30.5%であった。ガラス基板1の遮光膜を形成していない面の反射率(裏面反射率)は、ArF露光光において38.8%であった。また、ArF露光光における光学濃度は、3.02であった。
[転写用マスクの作製]
次に、得られたマスクブランクを用いて、以下の手順で実施例1の転写用マスクを作製した。
最初に、スピンコート法で膜厚100nmの電子線描画用化学増幅型レジスト5を塗布し(図3(c)参照)、電子線描画および現像を行い、レジストパターン5aを形成した(図3(d)参照)。なお、電子線描画を行ったパターンは、ダブルパターニング技術を用いて22nmノードの微細なパターンを2つの比較的疎な転写パターンに分割したものの一方を用いた。
次に、フッ素系(CF)ガスを用いたドライエッチングを行い、高酸化層4を含むTaO層(上層)3のパターン3aを作製した(図3(e)参照)。続いて、塩素系(Cl)ガスを用いたドライエッチングを行いTaN層(下層)2のパターン2aを作製し、基板1上に遮光膜パターン30aを作製した(図3(f)参照)。続いて、遮光膜パターン30a上のレジストを除去し、転写用マスクとしての機能を有する遮光膜パターン30aを得た(図3(g)参照)。以上により、転写用マスク(バイナリマスク)を得た。
次に、作製した転写用マスクについて、自然酸化が進行する前(例えば成膜後1時間以内)に、または成膜後自然酸化が進行しない環境下で保管した後に、90℃の脱イオン水(DI water)に120分間浸漬し、温水処理(表面処理)を実施した。これにより、実施例1の転写用マスクを得た。
この実施例1の転写用マスクでは、遮光膜パターン30aの表層に、図2に模式的に示すようなタンタルの高酸化層4a、4bおよび4cの形成が確認された。具体的には、走査透過電子顕微鏡(STEM:scanning transmission electron microscope)による断面観察によって、厚さ3nmの高酸化層4a、4bおよび4cが確認された。また、遮光膜パターン30aの遮光膜のある部分に対してHFS/RBS分析を行った。遮光膜の深さ方向プロファイルの分析結果によると、TaO層3の表層のタンタルの高酸化層4aは、酸素含有量が71.4〜67at%であることが確認された。一方、パターン側壁部分(4bおよび4c)についてはHFS/RBS分析による酸素含有量の確認が困難である。このため、STEMによる観察の際にEDX(エネルギー分散型X線分光)分析を用い、先に分析した遮光膜パターン30aの表層の高酸化層4aのHFS/RBS分析の結果と比較し、高酸化層4aと、高酸化層4bおよび4cとで酸素含有量が同じであることが確認された。
作製した実施例1の転写用マスクに対し、マスクブランクに対して行ったのと同条件(炉内の気体を窒素に置換し、加熱温度300℃、1時間の加熱処理)で加速試験を行った。なお、加速試験の前後で、転写用マスクの面内所定部分におけるパターン幅およびスペース幅をそれぞれ測定していた。加速試験の前後における、パターン幅やスペース幅の変動幅は、いずれも許容範囲内であった。同様の手順で、この実施例1のマスクブランクを用い、ダブルパターニング技術を用いて22nmノードの微細なパターンを2つの比較的疎な転写パターンに分割したもののうちのもう一方の転写パターンを有する転写用マスクを作製した。以上の手順により、2枚の転写用マスクを用いてダブルパターニング技術で露光転写することで22nmノードの微細なパターンを転写対象物に転写可能な転写用マスクセットを得た。
[半導体デバイスの製造]
作製した転写用マスクセットを用い、ArFエキシマレーザーを露光光とする露光装置を用い、ダブルパターニング技術を適用し、半導体デバイス上のレジスト膜に22nmノードの微細パターンを露光転写した。露光後の半導体デバイス上のレジスト膜に所定の現像処理を行い、レジストパターンを形成し、そのレジストパターンをマスクとして、下層膜をドライエッチングし、回路パターンを形成した。半導体デバイスに形成した回路パターンを確認したところ、重ね合わせ精度不足に起因する回路パターンの配線短絡や断線はなかった。
(比較例1)
[マスクブランクの製造]
実施例1と同様の手順により、最終研磨工程後のガラス基板を準備した。このガラス基板に対し、実施例1のような加熱処理は行わずに、洗剤による洗浄と、純水によるリンス洗浄とを行い、さらに、大気中でXeエキシマランプを照射し、紫外線と、その紫外線によって発生するOとによって主表面の洗浄を行った。洗浄後のガラス基板に、実施例1と同様の成膜条件で、遮光膜30を成膜した。成膜直後の段階で、遮光膜30を備えるマスクブランクに対して、基板主表面上の遮光膜30の表面における平坦度を平坦度測定装置UltraFLAT 200M(Corning TOROPEL社製)で測定した。また、同条件で製造したマスクブランクに対して、HFS/RBS分析を行った結果、TaN膜中の水素含有量は検出下限値以下であった。
次に、TaN層(下層)2とTaO層(上層)3との積層構造の遮光膜30を形成しガラス基板を加熱炉に設置し、炉内の気体を窒素に置換し、加熱温度300℃で1時間の加熱処理を行い、基板中の水素を強制的に遮光膜に取り込ませる加速試験を行った。加速試験後の遮光膜30を備えるマスクブランクに対して、基板主表面上の遮光膜30の表面における平坦度を平坦度測定装置UltraFLAT 200M(Corning TOROPEL社製)で測定した。加速試験後に測定した平坦度と、加速試験前に測定した平坦度との差は、142mm角内領域の平坦度差で219nm(加速試験後に表面形状が凸方向に変化)であり、平坦度が大きく変化した。この平坦度差は、少なくとも22nmノード用のマスクブランクでは許容できないものであった。また、加速試験後の遮光膜30を備えるマスクブランクに対して、HFS/RBS分析を行った結果を、図5に示す。図5の結果から見ると、TaN層に水素が6.5at%程度含有している。この結果から、加熱炉内は窒素雰囲気であるため、TaN層に取り込まれた水素の供給源は、ガラス基板であるということがいえる。また、加速試験前後の平坦度差から、TaN層中に水素が6.5at%程度取り込まれてしまうと、主表面の平坦度が大きく悪化することがわかった。
次に、前記と同条件で、ガラス基板1の主表面に接してTaN層2とTaO層3との積層構造の遮光膜30を形成したマスクブランクを製造した。このマスクブランクを、実施例1と同様に、ホットプレートに設置して大気中で300℃の加熱処理を行い、TaO層3内の表層にタンタルの高酸化層4を形成した(図3(b)参照)。以上のようにして、ガラス基板1の主表面上に、TaN層2と、表層にタンタルの高酸化層4を含むTaO層3との積層構造の遮光膜30を備える比較例1のマスクブランクを得た。
[転写用マスクの作製]
次に、得られたマスクブランクを用いて、実施例1と同様の手順で比較例1の転写用マスクを作製した。作製した比較例1の転写用マスクに対し、マスクブランクに対して行ったのと同条件(炉内の気体を窒素に置換し、加熱温度300℃、1時間の加熱処理)で加速試験を行った。なお、加速試験の前後で、転写用マスクの面内所定部分におけるパターン幅およびスペース幅をそれぞれ測定していた。加速試験の前後における、パターン幅やスペース幅の変動幅は、いずれも大きく、少なくとも22nmノード用のダブルパターニング技術が適用される転写用マスクでは明らかに許容範囲外であった。このため、同様の手順で、ダブルパターニング技術を用いて22nmノードの微細なパターンを2つの比較的疎な転写パターンに分割したもののうちのもう一方の転写パターンを有する転写用マスクを作製して転写用マスクセットを作製したとしても、重ね合わせ精度が低く、ダブルパターニング用の転写用マスクセットとしては使用できない。
また、前記の加速試験を行った後のマスクブランクを用いて、実施例1と同様の手順で比較例1の転写用マスクを作製してみた。その結果、マスクブランクの状態ですでに平坦度が大きく悪化していたため、露光装置のマスクステージにチャックしたときに、パターンの主表面上の移動が著しく、少なくとも22nmノード用のダブルパターニング技術が適用される転写用マスクでは明らかに許容範囲外であった。また、遮光膜の圧縮応力が著しく大きいため、ドライエッチング後の遮光膜のパターンは、電子製描画パターンからのずれが大きかった。
1 ガラス基板
2 下層(TaN層)
2a 下層パターン
3 上層(TaO層)
3a 上層パターン
4,4a,4b,4c タンタル高酸化層
5 レジスト膜
30 遮光膜
30a 遮光部
30b 透光部

Claims (11)

  1. 主表面に対して鏡面研磨を行ったガラス基板を準備する工程と、
    準備された前記ガラス基板に対し、加熱処理を行う工程と、
    加熱処理後のガラス基板の主表面上にタンタルを含有し、かつ水素を実質的に含有しない材料からなる薄膜を形成する工程と、
    を備えることを特徴とするマスクブランクの製造方法。
  2. 主表面に対して鏡面研磨を行ったガラス基板を準備する工程と、
    準備された前記ガラス基板に対し、加熱処理を行う工程と、
    加熱処理後のガラス基板を成膜室内に設置し、タンタルを含有するターゲットを用い、水素を含有しないスパッタリングガスを成膜室内に導入し、ガラス基板の主表面上にスパッタリング法によって薄膜を形成する工程と、
    を備えることを特徴とするマスクブランクの製造方法。
  3. ガラス基板に行う前記加熱処理は、ガラス基板を300℃以上に加熱する処理であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法。
  4. 前記薄膜は、ガラス基板の主表面に接して形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法。
  5. 前記薄膜は、タンタルと窒素とを含有し、かつ水素を実質的に含有しない材料からなることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法。
  6. 前記薄膜の表層に、酸素を60原子%以上含有する高酸化層が形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法。
  7. 前記薄膜は、ガラス基板側から下層と上層とが積層する構造を有し、前記下層は、タンタルと窒素とを含有し、かつ水素を実質的に含有しない材料からなり、前記上層は、タンタルと酸素とを含有する材料からなることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法。
  8. 前記上層の表層に、酸素を60原子%以上含有する高酸化層が形成されていることを特徴とする請求項7に記載のマスクブランクの製造方法。
  9. 請求項1から8のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法で製造されたマスクブランクを用い、前記マスクブランクの薄膜に転写パターンを形成することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
  10. 前記薄膜で形成された転写パターンの表層には、酸素を60原子%以上含有する高酸化層が形成されていることを特徴とする請求項9に記載の転写用マスクの製造方法。
  11. 請求項9または10に記載の転写用マスクの製造方法で製造された転写用マスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
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