JP2016145387A - セラミックス成形体の製造方法及びセラミックス焼結体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】密度分布を均一化できるセラミックス成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】セラミックス粉末を含有する原料粉末を圧縮成形するセラミックス成形体の製造方法であって、超硬合金又はサーメットの前記原料粉末に、成形助剤として、20℃での粘度が2.0mPa・s以上5000mPa・s以下で、超硬合金又はサーメットを構成する少なくとも1種の金属成分の単体又は化合物が分散した液体を添加し、前記原料粉末を金型に充填してプレス成形する成形工程を備えるセラミックス成形体の製造方法。
【選択図】なし
【解決手段】セラミックス粉末を含有する原料粉末を圧縮成形するセラミックス成形体の製造方法であって、超硬合金又はサーメットの前記原料粉末に、成形助剤として、20℃での粘度が2.0mPa・s以上5000mPa・s以下で、超硬合金又はサーメットを構成する少なくとも1種の金属成分の単体又は化合物が分散した液体を添加し、前記原料粉末を金型に充填してプレス成形する成形工程を備えるセラミックス成形体の製造方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、セラミックス粉末を原料にしたセラミックス成形体の製造方法及びセラミックス焼結体の製造方法に関する。特に、密度分布を均一化できるセラミックス成形体の製造方法に関する。
刃先交換型切削チップなどの切削工具や歯車などの機械部品に、セラミックス粉末を焼結した焼結体(焼結合金)が利用されている。セラミックス焼結体としては、例えば、炭化タングステン(WC)の粉末を主原料(主成分)とする原料粉末を焼結した超硬合金や、主としてチタン化合物(炭化チタン(TiC)や窒化チタン(TiN)など)の粉末を原料粉末に使用したサーメットなどがある。
一般に、超硬合金やサーメットといったセラミックス焼結体は、セラミックス粉末を含有する原料粉末を圧縮成形してセラミックス成形体(圧粉体)とし、これを焼結することで製造している。セラミックス成形体の製造時における粉末の圧縮成形方法としては、原料粉末を金型に充填し、上パンチと下パンチとで加圧し、圧縮して固めるプレス成形が挙げられる。プレス成形は、安価なプレス機を使用でき、また、生産性が高い利点がある。セラミックス成形体を製造する際、粉末の成形性及び金型への充填性を向上させるため、パラフィンなどのバインダを混合して造粒することが行われている(特許文献1、2を参照)。
焼結後のセラミックス焼結体において、寸法や形状にばらつきが小さく、寸法精度が高いことが望まれる。セラミックス焼結体の寸法精度が高いことで、後工程で所定の寸法や形状に仕上げる形状修正加工を省略したり簡素化したりできる。
セラミックス焼結体の寸法や形状にばらつきが生じる原因の1つに、焼結前のセラミックス成形体における密度分布のばらつきが挙げられる。セラミックス焼結体の製造時、セラミックス成形体を焼結すると体積収縮が生じる。セラミックス成形体中の密度分布が不均一であると、密度の高い部位では焼結による収縮量が小さく、密度の低い部位では焼結による収縮量が大きくなることから、焼結時に部位によって収縮量が異なるため、セラミックス焼結体の寸法や形状にばらつきが生じ易い。つまり、密度分布が不均一な成形体は、焼結時に部位による収縮量の差(ばらつき)が大きく、焼結体の寸法精度の低下を招く。したがって、セラミックス焼結体の寸法精度を高めるためには、セラミックス成形体の密度分布を均一化することが重要である。
セラミックス成形体の密度分布を均一化することで、焼結後のセラミックス焼結体(例、超硬合金)において、組織を均質化でき、抗折強度などの機械的特性の向上が期待できる。セラミックス焼結体の組織を均質化する方法の一つとして、焼結前のセラミックス成形体において、原料粉末に添加するバインダ量を増やし、原料粉末を射出成形又は押出成形することが挙げられる。これにより、成形時における原料粉末の流動を促進して、成形体の密度分布を均一化することが考えられる。しかしながら、成形体に含まれるバインダは、成形後の脱脂処理や焼結した際に分解して除去されるため、バインダ量を増やすと、全体的に収縮量が大きくなる。そのため、成形体を射出成形又は押出成形する方法では、焼結体の寸法精度を確保することが困難である。バインダ量を増やすと、バインダが分解・除去されることにより、焼結体中にポア(巣)などの組織欠陥が形成され易い。
また、セラミックス焼結体において、原料粉末粒子の凝集が発生すると、組織の不均一化を招くと共に、その凝集部分での強度が低下する原因となる。そこで、セラミックス焼結体の抗折強度を改善する方法の一つとして、焼結体中の原料粉末粒子の凝集を低減するため、原料粉末をアトライターで混合すると共に混合時間を長くして、原料粉末を微細化することが考えられる。しかしながら、混合時間が長くなるため、原料粉末の調整に時間がかかり、生産性の低下を招く。
そこで、本発明の目的の一つは、密度分布を均一化できるセラミックス成形体の製造方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、寸法精度の高いセラミックス焼結体を得ることができるセラミックス焼結体の製造方法を提供することにある。
本発明の一態様に係るセラミックス成形体の製造方法は、セラミックス粉末を含有する原料粉末を圧縮成形するセラミックス成形体の製造方法である。上記セラミックス成形体の製造方法は、超硬合金又はサーメットの前記原料粉末に、成形助剤として、20℃での粘度が2.0mPa・s以上5000mPa・s以下で、超硬合金又はサーメットを構成する少なくとも1種の金属成分の単体又は化合物が分散した液体を添加し、前記原料粉末を金型に充填してプレス成形する成形工程を備える。
本発明の一態様に係るセラミックス焼結体の製造方法は、セラミックス粉末を含有する原料粉末を圧縮成形した成形体を焼結するセラミックス焼結体の製造方法である。上記セラミックス焼結体の製造方法は、上記本発明の一態様に係るセラミックス成形体の製造方法により製造されたセラミックス成形体を焼結する焼結工程を備える。
上記セラミックス成形体の製造方法は、セラミックス成形体における密度分布を均一化できる。上記セラミックス焼結体の製造方法は、寸法精度の高いセラミックス焼結体を得ることができる
[本発明の実施形態の説明]
本発明者らは、セラミックス成形体のプレス成形について鋭意研究した結果、次の知見を得た。従来の製造方法では、添加剤としてパラフィンなどのバインダを原料粉末に混合しているが、添加剤が固体であるため、プレス成形時に原料粉末が流動することが少ない。一般には、原料粉末に固体バインダを混合して造粒した造粒粉を金型に充填して加圧することで、造粒粉が潰れて、成形体が得られる。造粒粉が一度潰れてしまうと原料粉末が動き難くなり、流動し難くなるため、プレス成形時に成形体中の密度分布が不均一になり易い。そこで、本発明者らは、セラミックス成形体の密度分布を均一化するため、プレス成形時における原料粉末の流動性を改善することを考えた。そして、本発明者らは、原料粉末に特定の粘度の液体を添加することにより、プレス成形時の原料粉末の流動性を改善でき、成形体の密度分布を均一化できることを見出した。
本発明者らは、セラミックス成形体のプレス成形について鋭意研究した結果、次の知見を得た。従来の製造方法では、添加剤としてパラフィンなどのバインダを原料粉末に混合しているが、添加剤が固体であるため、プレス成形時に原料粉末が流動することが少ない。一般には、原料粉末に固体バインダを混合して造粒した造粒粉を金型に充填して加圧することで、造粒粉が潰れて、成形体が得られる。造粒粉が一度潰れてしまうと原料粉末が動き難くなり、流動し難くなるため、プレス成形時に成形体中の密度分布が不均一になり易い。そこで、本発明者らは、セラミックス成形体の密度分布を均一化するため、プレス成形時における原料粉末の流動性を改善することを考えた。そして、本発明者らは、原料粉末に特定の粘度の液体を添加することにより、プレス成形時の原料粉末の流動性を改善でき、成形体の密度分布を均一化できることを見出した。
更に、本発明者らが鋭意研究を重ねたところ、超硬合金又はサーメットの原料粉末に添加する上記液体に超硬合金又はサーメットを構成する少なくとも1種の金属成分の単体又は化合物が分散した液体を用いると、セラミックス成形体を焼結したセラミックス焼結体において、組織を均質化できることを見出した。これは、次のような理由が考えられる。原料粉末に金属成分を含む液体を添加することで、プレス成形時に液体と共に金属成分が成形体中に行き渡る。金属成分は、脱脂処理や焼結した際に除去されずに残存することで、焼結体における緻密化と均質化に寄与する。そのため、組織・組成の不均一化を低減でき、抗折強度が向上する。また、金属成分が残存することにより、ポアの低減も期待でき、ポアに起因する強度低下を抑制できる。本発明は以上の知見に基づいてなされたものである。最初に、本発明の実施態様を列記して説明する。
(1)本発明の一態様に係るセラミックス成形体の製造方法は、セラミックス粉末を含有する原料粉末を圧縮成形するセラミックス成形体の製造方法である。上記セラミックス成形体の製造方法は、超硬合金又はサーメットの前記原料粉末に、成形助剤として、20℃での粘度が2.0mPa・s以上5000mPa・s以下で、超硬合金又はサーメットを構成する少なくとも1種の金属成分の単体又は化合物が分散した液体を添加し、前記原料粉末を金型に充填してプレス成形する成形工程を備える。
上記セラミックス成形体の製造方法によれば、超硬合金又はサーメットの原料粉末に上記特定の粘度を有する液体を添加することで、プレス成形時に原料粉末が流動することにより、セラミックス成形体の密度分布を均一化できる。したがって、セラミックス成形体を焼結したセラミックス焼結体において、寸法精度を高めることができる。液体の粘度が2.0mPa・s以上であることで、金型のクリアランスから液体が流出することを抑制でき、流動性の改善効果が発揮される。液体の粘度が5000mPa・s以下であることで、原料粉末が流動し易く、流動性の改善効果が得られ易い。更に、超硬合金又はサーメットを構成する少なくとも1種の金属成分の単体又は化合物が分散した液体を用いることで、プレス成形時に液体と共に金属成分が成形体中に行き渡る。そして、プレス成形後、セラミックス成形体を脱脂処理や焼結した際に金属成分が残存することにより、組織・組成の不均一化を低減できる。よって、セラミックス成形体を焼結したセラミックス焼結体において、緻密化と均質化が図れ、抗折強度が向上すると共に、組織欠陥であるポアの低減が期待できる。ここでいう「超硬合金又はサーメットを構成する金属成分」とは、超硬合金又はサーメットを構成する成分中の金属自体又は化合物を構成する金属元素のことである。超硬合金又はサーメットを構成する成分には、例えば、硬質相となるWCやTiC,TiNなどの化合物、結合相となるCoやNiなどの鉄族金属が挙げられる。「金属成分の単体又は化合物が分散した液体」としては、例えば、液体中に金属成分の単体又は化合物の固体粒子がコロイド状に分散した液体や、金属成分が液体中にイオンとして分散した液体、或いは液体中に溶解して分散した液体が挙げられる。「コロイド状に分散した液体」とは、液体中に微細な固体粒子が実質的に均一に分散した液体のことであり、長時間放置しても固体粒子が沈降・分離することがなく、長時間に亘り分散状態が安定して維持されるものをいう。
(2)上記セラミックス成形体の製造方法の一形態として、上記液体を、上記原料粉末に対して10体積%以上40体積%以下の割合で添加することが挙げられる。
原料粉末に上記特定の割合で液体を添加することで、流動性の改善効果が十分に得られ易く、生産性に優れる。液体の添加量が10体積%以上であることで、原料粉末が十分に流動でき、流動性の改善効果が十分に得られる。液体の添加量が40体積%以下であることで、プレス成形時、或いは、例えばプレス成形後に脱脂処理する際など、成形体に亀裂が発生することを抑制できる。
(3)上記セラミックス成形体の製造方法の一形態として、上記超硬合金の組成は、WC、周期表4,5,6族元素から選ばれる少なくとも1種の金属と、C,N,O及びBから選ばれる少なくとも1種の元素との化合物、及び鉄族金属を有することが挙げられる。
上記セラミックス粉末がWC粉末であり、主原料としてWC粉末を含有するセラミックス成形体を製造し、この成形体を焼結することで、WC粉末を主成分とするセラミックス焼結体、例えば超硬合金を製造できる。超硬合金の場合、基本的な組成は、WCと、CoやNiなどの鉄族金属とを有する。超硬合金において、WCの他、周期表4,5,6族元素から選ばれる少なくとも1種の金属と、C,N,O及びBから選ばれる少なくとも1種の元素との化合物を添加することで、耐摩耗性や耐熱性を改善できる。ここでいう「化合物」とは、主として、上記金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物、硼化物などであり、化合物には、これらの固溶体も含まれる。
(4)本発明の一態様に係るセラミックス焼結体の製造方法は、セラミックス粉末を含有する原料粉末を圧縮成形した成形体を焼結するセラミックス焼結体の製造方法である。上記セラミックス焼結体の製造方法は、上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の本発明の一態様に係るセラミックス成形体の製造方法により製造されたセラミックス成形体を焼結する焼結工程を備える。
上記セラミックス焼結体の製造方法によれば、上述のセラミックス成形体を焼結することで、寸法精度の高いセラミックス焼結体を得ることができる。また、内部にポアが少ない高品質なセラミックス焼結体を得ることができる。
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係るセラミックス成形体の製造方法及びセラミックス焼結体の製造方法の具体例を以下に説明する。なお、本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の実施形態に係るセラミックス成形体の製造方法及びセラミックス焼結体の製造方法の具体例を以下に説明する。なお、本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
(原料粉末)
まず、用意する原料粉末について説明する。原料粉末は、超硬合金又はサーメットの原料粉末であり、セラミックス粉末を含有する。
まず、用意する原料粉末について説明する。原料粉末は、超硬合金又はサーメットの原料粉末であり、セラミックス粉末を含有する。
(セラミックス粉末)
セラミックス粉末の種類は、超硬合金又はサーメットの原料粉末の種類により選択される。セラミックス粉末としては、超硬合金の場合はWC粉末、サーメットの場合はTi化合物粉末が挙げられ、超硬合金原料粉末は主原料としてWC粉末を含有し、サーメット原料粉末は主原料としてTi化合物粉末を含有する。また、超硬合金の場合、WC粉末の他、周期表4,5,6族元素から選ばれる少なくとも1種の金属と、C,N,O及びBから選ばれる少なくとも1種の元素との化合物(固溶体を含む)の粉末を添加してもよい。金属としては、Ti,Ta,Nb,Zr,V及びCrなどが挙げられ、具体的な化合物としては、TiC,TaC,TiN,TiCN,TaN,TaCN,ZrC,ZrN,ZrCN,NbC,VC及びCr3C2などが挙げられる。サーメットの場合、TiC粉末やTiN粉末の他、例えば、TiCN,WC,Mo2C,TaC,TaN,ZrC,ZrN,NbC,VC及びCr3C2から選択される少なくとも1種の化合物の粉末を添加してもよい。
セラミックス粉末の種類は、超硬合金又はサーメットの原料粉末の種類により選択される。セラミックス粉末としては、超硬合金の場合はWC粉末、サーメットの場合はTi化合物粉末が挙げられ、超硬合金原料粉末は主原料としてWC粉末を含有し、サーメット原料粉末は主原料としてTi化合物粉末を含有する。また、超硬合金の場合、WC粉末の他、周期表4,5,6族元素から選ばれる少なくとも1種の金属と、C,N,O及びBから選ばれる少なくとも1種の元素との化合物(固溶体を含む)の粉末を添加してもよい。金属としては、Ti,Ta,Nb,Zr,V及びCrなどが挙げられ、具体的な化合物としては、TiC,TaC,TiN,TiCN,TaN,TaCN,ZrC,ZrN,ZrCN,NbC,VC及びCr3C2などが挙げられる。サーメットの場合、TiC粉末やTiN粉末の他、例えば、TiCN,WC,Mo2C,TaC,TaN,ZrC,ZrN,NbC,VC及びCr3C2から選択される少なくとも1種の化合物の粉末を添加してもよい。
(その他の原料)
原料粉末には、セラミックス粉末の他、焼結後に結合相となる金属粉末を含有してもよい。金属粉末としては、例えば、鉄族金属(CoやNi)の粉末などが挙げられる。
原料粉末には、セラミックス粉末の他、焼結後に結合相となる金属粉末を含有してもよい。金属粉末としては、例えば、鉄族金属(CoやNi)の粉末などが挙げられる。
原料粉末の組成(各粉末の配合割合)は適宜選択できる。超硬合金やサーメットの場合、原料粉末中、主原料であるセラミックス粉末(例、超硬合金の場合のWC粉末や、サーメットの場合のTi化合物粉末)を50質量%以上、例えば70質量%以上含有することが挙げられる。セラミックス粉末の含有量は、好ましくは75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上である。セラミックス粉末の含有量の上限は、特に限定されないが、例えば97質量%以下、95質量%以下とすることが挙げられる。また、上記化合物の粉末を含有する場合、上記化合物粉末の含有量は、例えば1質量%以上15質量%以下とすることが挙げられる。
また、原料粉末の粒径(各粉末の平均粒径)は、特に限定されないが、例えば0.2μm以上20μm以下、好ましくは0.5μm以上10μm以下とすることが挙げられる。ここでいう「粒径」とは、フィッシャーサブシーブサイザー(FSSS)法による平均粒径(FSSS径)のことである。超硬合金やサーメットの場合、原料粉末には公知のものを利用できる。
(添加剤)
原料粉末には、バインダや潤滑剤などの添加剤を適宜加えてもよい。バインダとしては、例えばパラフィン、ポリエチレングリコールなど、潤滑剤としては、例えばステアリン酸、シリコーンオイルなどが挙げられる。バインダや潤滑剤などの添加剤の含有量は適宜選択できる。バインダや潤滑剤のそれぞれの含有量は、例えば1質量%以上10質量%以下とすることが挙げられる。バインダや潤滑剤の含有量は、5質量%以下とすることが可能である。
原料粉末には、バインダや潤滑剤などの添加剤を適宜加えてもよい。バインダとしては、例えばパラフィン、ポリエチレングリコールなど、潤滑剤としては、例えばステアリン酸、シリコーンオイルなどが挙げられる。バインダや潤滑剤などの添加剤の含有量は適宜選択できる。バインダや潤滑剤のそれぞれの含有量は、例えば1質量%以上10質量%以下とすることが挙げられる。バインダや潤滑剤の含有量は、5質量%以下とすることが可能である。
原料粉末に複数種の粉末を使用したり、原料粉末に上記添加剤を添加したりする場合は、適宜混合するとよい。混合は、例えばボールミルやアトライターなど、湿式、乾式を問わず、公知の混合装置を利用できる。混合後、原料粉末を造粒してもよい。通常、原料粉末を造粒すると、プレス成形の際に造粒粉が破壊されて流動性が低下する。後述するように、本発明の実施形態に係るセラミックス成形体の製造方法では、成形助剤となる液体を原料粉末に添加しており、プレス成形時において液体が存在することで原料粉末の流動性が助長される。そのため、造粒粉であっても、プレス成形時に十分な流動性が得られる。造粒は、例えばスプレードライ法など公知の造粒法を利用できる。
<セラミックス成形体の製造方法>
本発明の実施形態に係るセラミックス成形体の製造方法は、セラミックス粉末を含有する原料粉末を圧縮成形することで、セラミックス成形体を製造する。セラミックス成形体の製造方法は、超硬合金又はサーメットの原料粉末に、成形助剤として、20℃での粘度が2.0mPa・s以上5000mPa・s以下で、超硬合金又はサーメットを構成する少なくとも1種の金属成分の単体又は化合物が分散した液体を添加し、原料粉末を金型に充填してプレス成形する成形工程を備える。実施形態に係るセラミックス成形体の製造方法は、原料粉末に上記特定の液体を添加することを特徴の1つとする。以下、成形工程について、詳しく説明する。
本発明の実施形態に係るセラミックス成形体の製造方法は、セラミックス粉末を含有する原料粉末を圧縮成形することで、セラミックス成形体を製造する。セラミックス成形体の製造方法は、超硬合金又はサーメットの原料粉末に、成形助剤として、20℃での粘度が2.0mPa・s以上5000mPa・s以下で、超硬合金又はサーメットを構成する少なくとも1種の金属成分の単体又は化合物が分散した液体を添加し、原料粉末を金型に充填してプレス成形する成形工程を備える。実施形態に係るセラミックス成形体の製造方法は、原料粉末に上記特定の液体を添加することを特徴の1つとする。以下、成形工程について、詳しく説明する。
(液体)
成形助剤として原料粉末に添加する液体は、超硬合金又はサーメットを構成する少なくとも1種の金属成分の単体又は化合物を含む液体である。液体の形態は、例えば、金属成分の単体又は化合物の固体粒子が分散した液体や、金属成分がイオンとして分散した液体、或いは溶解して分散した液体が挙げられる。
成形助剤として原料粉末に添加する液体は、超硬合金又はサーメットを構成する少なくとも1種の金属成分の単体又は化合物を含む液体である。液体の形態は、例えば、金属成分の単体又は化合物の固体粒子が分散した液体や、金属成分がイオンとして分散した液体、或いは溶解して分散した液体が挙げられる。
(液体の粘度)
液体の粘度は、20℃において、2.0mPa・s以上5000mPa・s以下である。好ましい液体の粘度は、例えば、20℃において、10mPa・s以上4000mPa・s以下、更に20mPa・s以上、特に50mPa・s以上2000mPa・s以下である。
液体の粘度は、20℃において、2.0mPa・s以上5000mPa・s以下である。好ましい液体の粘度は、例えば、20℃において、10mPa・s以上4000mPa・s以下、更に20mPa・s以上、特に50mPa・s以上2000mPa・s以下である。
(液体の添加量)
液体の添加量は、原料粉末に対して10体積%以上40体積%以下が好ましい。より好ましい液体の添加量は、例えば、原料粉末に対して15体積%以上30体積%以下である。
液体の添加量は、原料粉末に対して10体積%以上40体積%以下が好ましい。より好ましい液体の添加量は、例えば、原料粉末に対して15体積%以上30体積%以下である。
(金属成分の種類)
金属成分は、超硬合金又はサーメットを構成する金属成分、具体的には、超硬合金又はサーメットを構成する成分中の金属自体又は化合物を構成する金属元素である。そして、液体に含まれる金属成分の単体又は化合物は、上記金属元素の単体、又はその金属元素の化合物である。金属成分の単体としては、例えば、CoやNiなどの鉄族金属、金属成分の化合物としては、WCやTiC,TiNの他、例えば、周期表4,5,6族元素から選ばれる少なくとも1種の金属とC,N,O及びBから選ばれる少なくとも1種の元素との化合物(固溶体を含む)が挙げられる。液体に含まれる金属成分は、脱脂処理や焼結した際に除去されずに残存し、焼結体中に金属元素の単体又は化合物として存在する。また、液体に含まれる金属成分は、焼結後の焼結体において、存在形態が異なることを許容する。例えば、液体に添加した金属成分の単体又は化合物は、焼結時に変化せず、焼結体中にそのまま金属元素の単体又は化合物として存在する他、焼結した際に、新たな化合物を形成して存在したり、結合相に固溶して存在したり、化合物が分解して単体元素になって存在したりすることがある。液体に含まれる金属成分がW単体である場合、液体に含まれるWは、焼結後の焼結体において、一部がWCとして存在する他、Wのまま一部残存することがある。また、液体に添加する化合物は酸化物でもよい。酸素は不純物であるが、焼結時に離脱して除去される。例えば、有機物を含む液体(有機液体)にZrO2を添加した場合、有機物が炭素源となり、焼結時にZrO2が炭化してZrCへ変化することがある。超硬合金又はサーメットを構成する金属成分以外のものを液体に添加すると、特性に影響を及ぼす虞があるので好ましくない。
金属成分は、超硬合金又はサーメットを構成する金属成分、具体的には、超硬合金又はサーメットを構成する成分中の金属自体又は化合物を構成する金属元素である。そして、液体に含まれる金属成分の単体又は化合物は、上記金属元素の単体、又はその金属元素の化合物である。金属成分の単体としては、例えば、CoやNiなどの鉄族金属、金属成分の化合物としては、WCやTiC,TiNの他、例えば、周期表4,5,6族元素から選ばれる少なくとも1種の金属とC,N,O及びBから選ばれる少なくとも1種の元素との化合物(固溶体を含む)が挙げられる。液体に含まれる金属成分は、脱脂処理や焼結した際に除去されずに残存し、焼結体中に金属元素の単体又は化合物として存在する。また、液体に含まれる金属成分は、焼結後の焼結体において、存在形態が異なることを許容する。例えば、液体に添加した金属成分の単体又は化合物は、焼結時に変化せず、焼結体中にそのまま金属元素の単体又は化合物として存在する他、焼結した際に、新たな化合物を形成して存在したり、結合相に固溶して存在したり、化合物が分解して単体元素になって存在したりすることがある。液体に含まれる金属成分がW単体である場合、液体に含まれるWは、焼結後の焼結体において、一部がWCとして存在する他、Wのまま一部残存することがある。また、液体に添加する化合物は酸化物でもよい。酸素は不純物であるが、焼結時に離脱して除去される。例えば、有機物を含む液体(有機液体)にZrO2を添加した場合、有機物が炭素源となり、焼結時にZrO2が炭化してZrCへ変化することがある。超硬合金又はサーメットを構成する金属成分以外のものを液体に添加すると、特性に影響を及ぼす虞があるので好ましくない。
(金属成分の添加量)
金属成分の単体又は化合物の添加量は、液体中に分散している状態で、液体が上記特定の粘度を満たす範囲とする。また、金属成分の添加量は、プレス成形時に液体と共に成形体中に行き渡り、焼結後の焼結体において、組織・組成の不均一化を低減できる範囲で適宜調整するとよい。金属成分の添加量は、例えば、液体中に質量割合で0.1%以上、更に1.0%以上が好ましい。金属成分の添加量は、液体中に実質的に均一に分散でき、かつ、液体が上記特定の粘度を満たす範囲であればよく、上限は特に設けない。なお、原料粉末の組成は、金属成分の単体又は化合物の添加量に応じて、所定の超硬合金又はサーメットの組成となるように調整する。液体に含まれる金属成分の添加量は通常、原料粉末に対して微量であり、製造する焼結体(超硬合金やサーメット)の特性に影響を与えない、又は与える影響が少ない程度である。
金属成分の単体又は化合物の添加量は、液体中に分散している状態で、液体が上記特定の粘度を満たす範囲とする。また、金属成分の添加量は、プレス成形時に液体と共に成形体中に行き渡り、焼結後の焼結体において、組織・組成の不均一化を低減できる範囲で適宜調整するとよい。金属成分の添加量は、例えば、液体中に質量割合で0.1%以上、更に1.0%以上が好ましい。金属成分の添加量は、液体中に実質的に均一に分散でき、かつ、液体が上記特定の粘度を満たす範囲であればよく、上限は特に設けない。なお、原料粉末の組成は、金属成分の単体又は化合物の添加量に応じて、所定の超硬合金又はサーメットの組成となるように調整する。液体に含まれる金属成分の添加量は通常、原料粉末に対して微量であり、製造する焼結体(超硬合金やサーメット)の特性に影響を与えない、又は与える影響が少ない程度である。
(金属成分のサイズ)
金属成分の単体又は化合物の固体粒子が分散した液体の場合、金属成分の固体粒子のサイズは、液体中にコロイド状に分散できる程度に微細であることが好ましく、例えば平均粒子径が1nm以上1μm以下程度であることが挙げられる。金属成分の固体粒子の平均粒子径が1μmを超え、サイズが大きくなり過ぎると、沈降して分散状態が維持され難いため、平均粒子径の上限は1μm以下、特に100nm以下が好ましい。ここでいう「固体粒子の平均粒子径」とは、レーザー回折粒径分布測定装置で測定したモード径のことである。
金属成分の単体又は化合物の固体粒子が分散した液体の場合、金属成分の固体粒子のサイズは、液体中にコロイド状に分散できる程度に微細であることが好ましく、例えば平均粒子径が1nm以上1μm以下程度であることが挙げられる。金属成分の固体粒子の平均粒子径が1μmを超え、サイズが大きくなり過ぎると、沈降して分散状態が維持され難いため、平均粒子径の上限は1μm以下、特に100nm以下が好ましい。ここでいう「固体粒子の平均粒子径」とは、レーザー回折粒径分布測定装置で測定したモード径のことである。
(液体の種類)
金属成分の単体又は化合物を分散又は溶解させる液体(分散媒、溶媒)は、有機液体であることが好ましく、液体の具体例としては、例えばグリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコール、プロパノール、ペンタエリトリトールなどが挙げられる。20℃でのグリセリン(100%)の粘度は約1500mPa・s、プロピレングリコールの粘度は56mPa・s、エチレングリコールの粘度は23.5mPa・sである。その他、エタノールやエタノール水溶液を用いることもできる。20℃でのエタノール(100%)の粘度は1.2mPa・sであるが、金属成分を添加することで粘度を上げることが可能である。使用する液体の種類は1種類でもよいし、2種類以上を併用してもよい。2種類以上の液体を併用することで、液体の粘度を調整することが可能である。液体は、金属成分が分散している状態で、上記特定の粘度を満たすものを選択するとよい。
金属成分の単体又は化合物を分散又は溶解させる液体(分散媒、溶媒)は、有機液体であることが好ましく、液体の具体例としては、例えばグリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコール、プロパノール、ペンタエリトリトールなどが挙げられる。20℃でのグリセリン(100%)の粘度は約1500mPa・s、プロピレングリコールの粘度は56mPa・s、エチレングリコールの粘度は23.5mPa・sである。その他、エタノールやエタノール水溶液を用いることもできる。20℃でのエタノール(100%)の粘度は1.2mPa・sであるが、金属成分を添加することで粘度を上げることが可能である。使用する液体の種類は1種類でもよいし、2種類以上を併用してもよい。2種類以上の液体を併用することで、液体の粘度を調整することが可能である。液体は、金属成分が分散している状態で、上記特定の粘度を満たすものを選択するとよい。
(液体の添加方法)
液体の添加方法は、特に問わない。例えば、原料粉末を金型に充填する前に、予め原料粉末に液体を加えて混合・混練しておいたり、原料粉末を金型に充填した後、液体を滴下などして金型へ注入したりすることなどが挙げられる。原料粉末に液体を滴下などして添加する方法であっても、原料粉末に液体が浸透し、またプレス成形時の圧力によって原料粉末全体に液体が行き渡ることから、原料粉末の流動性が改善される。
液体の添加方法は、特に問わない。例えば、原料粉末を金型に充填する前に、予め原料粉末に液体を加えて混合・混練しておいたり、原料粉末を金型に充填した後、液体を滴下などして金型へ注入したりすることなどが挙げられる。原料粉末に液体を滴下などして添加する方法であっても、原料粉末に液体が浸透し、またプレス成形時の圧力によって原料粉末全体に液体が行き渡ることから、原料粉末の流動性が改善される。
(プレス成形)
成形工程では、上述した原料粉末をプレス成形して、所定の形状の成形体(圧粉体)を得る。プレス成形は、金型を用いて行う。作製する成形体の形状は、特に問わない。プレス成形の条件は、適宜設定できる。プレス成形の成形圧力は、例えば9.8MPa(0.1ton/cm2)以上980MPa(10ton/cm2)以下、好ましくは29.4MPa(0.3ton/cm2)以上490MPa(5ton/cm2)以下とすることが挙げられる。プレス成形条件は、公知の条件を採用できる。
成形工程では、上述した原料粉末をプレス成形して、所定の形状の成形体(圧粉体)を得る。プレス成形は、金型を用いて行う。作製する成形体の形状は、特に問わない。プレス成形の条件は、適宜設定できる。プレス成形の成形圧力は、例えば9.8MPa(0.1ton/cm2)以上980MPa(10ton/cm2)以下、好ましくは29.4MPa(0.3ton/cm2)以上490MPa(5ton/cm2)以下とすることが挙げられる。プレス成形条件は、公知の条件を採用できる。
<セラミックス焼結体の製造方法>
本発明の実施形態に係るセラミックス焼結体の製造方法は、セラミックス粉末を含有する原料粉末を圧縮成形した成形体を焼結することで、セラミックス焼結体を製造する。セラミックス焼結体の製造方法は、上述した実施形態に係るセラミックス成形体の製造方法により製造されたセラミックス成形体を焼結する焼結工程を備える。以下、焼結工程について、詳しく説明する。
本発明の実施形態に係るセラミックス焼結体の製造方法は、セラミックス粉末を含有する原料粉末を圧縮成形した成形体を焼結することで、セラミックス焼結体を製造する。セラミックス焼結体の製造方法は、上述した実施形態に係るセラミックス成形体の製造方法により製造されたセラミックス成形体を焼結する焼結工程を備える。以下、焼結工程について、詳しく説明する。
(焼結)
焼結の条件は、適宜設定できる。焼結温度は、例えば1300℃以上1600℃以下、好ましくは1350℃以上1550℃以下とすることが挙げられる。また、焼結時の雰囲気は、例えば不活性ガス雰囲気又は真空雰囲気とすることが挙げられる。真空雰囲気の場合、真空度を例えば10kPa以下とすることが挙げられる。不活性ガス雰囲気の場合、加圧雰囲気とすることが挙げられる。上述したセラミックス成形体は、成形助剤となる液体を添加した原料粉末をプレス成形したものであり、液体を余分に含有しているため、成形体の密度の絶対値が低くなる可能性があることから、不活性ガス雰囲気中で加圧焼結を行うことが好ましい場合があると考えられる。加圧雰囲気としては、例えば3.0MPa以上20MPa以下、好ましくは5.0MPa以上12MPa以下とすることが挙げられる。不活性ガスとしては、例えばアルゴンや窒素などが挙げられる。
焼結の条件は、適宜設定できる。焼結温度は、例えば1300℃以上1600℃以下、好ましくは1350℃以上1550℃以下とすることが挙げられる。また、焼結時の雰囲気は、例えば不活性ガス雰囲気又は真空雰囲気とすることが挙げられる。真空雰囲気の場合、真空度を例えば10kPa以下とすることが挙げられる。不活性ガス雰囲気の場合、加圧雰囲気とすることが挙げられる。上述したセラミックス成形体は、成形助剤となる液体を添加した原料粉末をプレス成形したものであり、液体を余分に含有しているため、成形体の密度の絶対値が低くなる可能性があることから、不活性ガス雰囲気中で加圧焼結を行うことが好ましい場合があると考えられる。加圧雰囲気としては、例えば3.0MPa以上20MPa以下、好ましくは5.0MPa以上12MPa以下とすることが挙げられる。不活性ガスとしては、例えばアルゴンや窒素などが挙げられる。
<実施形態に係る発明の効果>
実施形態に係るセラミックス成形体の製造方法は、原料粉末に特定の粘度を有する液体を添加することにより、プレス成形時の原料粉末の流動性を改善でき、成形体の密度分布を均一化できる。したがって、セラミックス成形体の密度分布を均一化でき、これを焼結することで、寸法精度の高いセラミックス焼結体を得ることができる。
実施形態に係るセラミックス成形体の製造方法は、原料粉末に特定の粘度を有する液体を添加することにより、プレス成形時の原料粉末の流動性を改善でき、成形体の密度分布を均一化できる。したがって、セラミックス成形体の密度分布を均一化でき、これを焼結することで、寸法精度の高いセラミックス焼結体を得ることができる。
更に、超硬合金又はサーメットを構成する金属成分の単体又は化合物が分散した液体を用いることで、プレス成形時に液体と共に金属成分が成形体中に行き渡り、プレス成形後、セラミックス成形体を脱脂処理や焼結した際に金属成分が残存することで、組織・組成の不均一化を低減できる。したがって、セラミックス成形体を焼結したセラミックス焼結体において組織を均質化でき、抗折強度の高いセラミックス焼結体を得ることができる。また、ポアの形成が抑制され、ポアの低減も期待できる。
[実施例1]
超硬合金の原料粉末を用意して、種々の条件でセラミックス成形体の試料を作製し、これを焼結して評価を行った。
超硬合金の原料粉末を用意して、種々の条件でセラミックス成形体の試料を作製し、これを焼結して評価を行った。
原料粉末として、WC粉末(平均粒径16μm)、TiCN粉末(平均粒径6μm)、TaC粉末(平均粒径4μm)、ZrCN粉末(平均粒径3μm)、及びCo粉末(平均粒径3μm)を用意した。そして、組成が、82.0質量%WC−3.0質量%TiCN−3.5質量%TaC−1.5質量%ZrCN−10.0質量%Coとなるように配合して、これを主原料粉末とした。なお、この工程では、後述するように、後工程で原料粉末に対して金属成分を含む液体を添加する場合は、液体に含まれる金属成分の添加量を差し引いた量を配合する。つまり、主原料粉末と液体に含まれる金属成分とを合わせて、上記目標組成となるように主原料粉末の配合割合を調整する。具体的には、主原料粉末と液体に含まれる金属元素の合計量が、上記目標組成の金属元素の量と等しくなるように、主原料粉末の配合割合を調整しており、実際には、液体に含まれる金属成分の添加量は、上記組成の超硬合金の特性に実質的に影響を与えることがない程度に微量である。
この主原料粉末に、造粒用バインダとしてパラフィンワックス135Fを2.0質量%の割合でエタノール(溶剤)と共に添加し、混合して、原料粉末を調整した。パラフィンの添加量は、原料粉末中のパラフィンの質量割合であり、主原料粉末とパラフィンとの合計質量に対するパラフィンの質量比で表している。この原料粉末を、エタノール溶媒中、アトライターを用いて10時間混合して混合物を得た。混合後、混合物をスプレードライ乾燥して造粒した。
造粒した原料粉末に表1に示す成形助剤を添加し、98MPaの成形圧力でプレス成形して、表1に示す成形体の試料No.1−1〜1−8及びNo.1−11〜1−20を作製した。作製した成形体の形状、成形助剤の種類及び添加量は、次のとおりである。
(成形体の形状)
作製した成形体は、長さ(L)が240mm、幅(H)が8mm、厚さ(T)が4mmの平板状である。成形体は、厚さ方向に加圧してプレス成形することにより、圧縮成形した。
作製した成形体は、長さ(L)が240mm、幅(H)が8mm、厚さ(T)が4mmの平板状である。成形体は、厚さ方向に加圧してプレス成形することにより、圧縮成形した。
(成形助剤の種類・添加量)
表1に示す試料No.1−1〜1−4及び1−17,1−18では、成形助剤として、エチレングリコールにCo粉末を混合した液体を用いた。この液体は、エチレングリコール中にCo粒子(Co単体)が実質的に均一(コロイド状)に分散した液体である。そして、この金属成分含有液体を原料粉末に対して表1に示す体積割合で添加した。Co粉末は、Co粒子のサイズがナノサイズ(平均粒子径20nm)のナノ粉末あり、ここでは、洪インターナショナルグループ株式会社(Hongwu International Group Ltd)製のCoナノ粉末を使用した。
表1に示す試料No.1−1〜1−4及び1−17,1−18では、成形助剤として、エチレングリコールにCo粉末を混合した液体を用いた。この液体は、エチレングリコール中にCo粒子(Co単体)が実質的に均一(コロイド状)に分散した液体である。そして、この金属成分含有液体を原料粉末に対して表1に示す体積割合で添加した。Co粉末は、Co粒子のサイズがナノサイズ(平均粒子径20nm)のナノ粉末あり、ここでは、洪インターナショナルグループ株式会社(Hongwu International Group Ltd)製のCoナノ粉末を使用した。
試料No.1−5では、成形助剤として、グリセリンに試料No.1−1と同じ上記Co粉末を混合した液体を用いた。この液体は、グリセリン中にCo粒子(Co単体)が実質的に均一(コロイド状)に分散した液体である。そして、この金属成分含有液体を原料粉末に対して表1に示す体積割合で添加した。
試料No.1−6では、成形助剤として、2−プロパノールにZrO2粉末を混合した液体を用いた。この液体は、2−プロパノール中にZrO2粒子(Zr化合物)が実質的に均一に分散した液体(ZrO2分散スラリー)である。そして、この金属成分含有液体を原料粉末に対して表1に示す体積割合で添加した。ZrO2分散スラリーは、ZrO2粒子のサイズがナノサイズ(平均粒子径10〜15nm)のナノ粒子分散スラリーであり、ここでは、TECNAN社製のものを使用した。
試料No.1−7では、成形助剤として、エチレングリコールにTi含有有機金属溶液(オルトチタン酸テトライソプロピル(Ti(OPr)3))を混合した液体を用いた。この液体は、エチレングリコール中に有機Ti化合物が分散(溶解)した液体である。そして、この金属成分含有液体を原料粉末に対して表1に示す体積割合で添加した。ここでは、Ti(OPr)3には、東京化成工業株式会社社製のチタンアルコキシドを使用した。
試料No.1−8では、成形助剤として、エチレングリコールにWC粉末を混合した液体を用いた。この液体は、エチレングリコール中にWC粒子(W化合物)が実質的に均一(コロイド状)に分散した液体である。そして、この金属成分含有液体を原料粉末に対して表1に示す体積割合で添加した。WC粉末は、WC粒子のサイズがナノサイズ(平均粒子径60nm)のナノ粉末あり、ここでは、株式会社アクシスマテリア製のWCナノ粉末を使用した。
試料No.1−12では、成形助剤として、エタノール水溶液を原料粉末に対して表1に示す体積割合で添加した。エタノールと水との混合比は体積比で5:5とした。
試料No.1−13では、成形助剤として、エチレングリコールを原料粉末に対して表1に示す体積割合で添加した。
試料No.1−13では、成形助剤として、エチレングリコールを原料粉末に対して表1に示す体積割合で添加した。
試料No.1−19では、成形助剤として、エタノールに試料No.1−1と同じ上記Co粉末を混合した液体を用いた。この液体は、エタノール中にCo粒子がコロイド状に分散した液体である。そして、この金属成分含有液体を原料粉末に対して表1に示す体積割合で添加した。
試料No.1−20では、成形助剤として、液体のエポキシレジンに試料No.1−1と同じ上記Co粉末を混合した液体を用いた。この液体は、エポキシレジン中にCo粒子がコロイド状に分散した液体である。そして、この金属成分含有液体を原料粉末に対して表1に示す体積割合で添加した。
試料No.1−20では、成形助剤として、液体のエポキシレジンに試料No.1−1と同じ上記Co粉末を混合した液体を用いた。この液体は、エポキシレジン中にCo粒子がコロイド状に分散した液体である。そして、この金属成分含有液体を原料粉末に対して表1に示す体積割合で添加した。
以上の各試料において、成形助剤に用いた液体の粘度を回転粘度計で測定した。20℃における各液体の粘度を表1に示す。また、上述の各試料において、液体の添加は、原料粉末を金型に充填後、原料粉末の上からシリンジを用いて注入した。
試料No.1−11では、原料粉末に成形助剤を添加しなかった。
試料No.1−14では、成形助剤として試料No.1−1と同じ上記Co粉末のみを原料粉末に対して表1に示す体積割合で添加した。
試料No.1−15では、成形助剤として固体のパラフィンワックス135Fを原料粉末に対して表1に示す体積割合で添加した。この成形助剤には、金属成分を含んでいない。
試料No.1−16では、成形助剤としてステアリン酸とポリプロピレンとを原料粉末に対して表1に示す体積割合で添加した。ステアリン酸とポリプロピレンとの混合比は体積比で4:6とした。この成形助剤には、金属成分を含んでいない。
試料No.1−15では、成形助剤として固体のパラフィンワックス135Fを原料粉末に対して表1に示す体積割合で添加した。この成形助剤には、金属成分を含んでいない。
試料No.1−16では、成形助剤としてステアリン酸とポリプロピレンとを原料粉末に対して表1に示す体積割合で添加した。ステアリン酸とポリプロピレンとの混合比は体積比で4:6とした。この成形助剤には、金属成分を含んでいない。
成形助剤に固体を用いた試料No.1−14〜1−16では、原料粉末を金型に充填する前に、添加する固体を原料粉末に乾式で混合して添加した。
上述の各試料における成形助剤の添加量は、原料粉末の体積に対する成形助剤の体積割合であり、原料粉末の体積を100とした場合の成形助剤の体積比で表している。例えば、成形助剤の添加量が20体積%とは、原料粉末の体積を100としたとき、添加した成形助剤の体積が20であることを意味する。
作製した試料No.1−1〜1−8及びNo.1−11〜1−20の成形体を焼結して、焼結体(超硬合金)を製造した。焼結は、300℃まで昇温後、その温度で2時間保持した後、1450℃まで昇温し、水素雰囲気で60分間保持した後、冷却して行った。そして、各試料の成形体について、以下の評価を行った。但し、試料No.1−18及び1−20については、亀裂が発生したため、評価を行わなかった。
(収縮量のばらつきの評価)
各試料の成形体について、焼結による収縮量のばらつきを評価した。平板状の成形体(L×H×T=240×8×4(mm))において、長手方向の一端から5mmの位置をA、長手方向の中央の位置をB、長手方向の他端から5mmの位置をCとし、A〜Cの各位置における厚さをノギスで測定して求めておく。また、成形体を焼結した焼結体において、同様に、長手方向の一端から5mmの位置をA、長手方向の中央の位置をB、長手方向の他端から5mmの位置をCとし、A〜Cの各位置における厚さを測定した。そして、成形体を焼結して焼結体としたときのA〜Cの各位置における収縮比を求めた。収縮比は、成形体の各位置における焼結前後での厚さの変化量を求めたものであり、[焼結後の厚さ/焼結前の厚さ]により算出した値である。また、各位置における収縮比のうち、最大値と最小値との最大差を求めた。この差の値が小さいほど、焼結による収縮量のばらつきが小さいことを意味する。ここでは、各試料において、同様の評価を6回行い、その平均値を求めた。その結果を表2に示す。
各試料の成形体について、焼結による収縮量のばらつきを評価した。平板状の成形体(L×H×T=240×8×4(mm))において、長手方向の一端から5mmの位置をA、長手方向の中央の位置をB、長手方向の他端から5mmの位置をCとし、A〜Cの各位置における厚さをノギスで測定して求めておく。また、成形体を焼結した焼結体において、同様に、長手方向の一端から5mmの位置をA、長手方向の中央の位置をB、長手方向の他端から5mmの位置をCとし、A〜Cの各位置における厚さを測定した。そして、成形体を焼結して焼結体としたときのA〜Cの各位置における収縮比を求めた。収縮比は、成形体の各位置における焼結前後での厚さの変化量を求めたものであり、[焼結後の厚さ/焼結前の厚さ]により算出した値である。また、各位置における収縮比のうち、最大値と最小値との最大差を求めた。この差の値が小さいほど、焼結による収縮量のばらつきが小さいことを意味する。ここでは、各試料において、同様の評価を6回行い、その平均値を求めた。その結果を表2に示す。
(抗折強度の評価)
各試料の成形体を焼結した超硬合金について、抗折強度を評価した。抗折強度(GPa)は、次のようにして測定した。加工歪の影響を除去するため、作製した超硬合金の長手方向の端面を除く4面を研削してこれを試験片とした。この試験片について、超硬工具協会規格CIS026B−2007「超硬質合金の曲げ強さ(抗折力)試験方法」に基づいて、始点間距離20mmの条件で抗折強度を測定した。ここでは、各試料において、同一の試験片を6つ作製し、同様の試験を6回行い、その平均値を求めた。その結果を表2に示す。
各試料の成形体を焼結した超硬合金について、抗折強度を評価した。抗折強度(GPa)は、次のようにして測定した。加工歪の影響を除去するため、作製した超硬合金の長手方向の端面を除く4面を研削してこれを試験片とした。この試験片について、超硬工具協会規格CIS026B−2007「超硬質合金の曲げ強さ(抗折力)試験方法」に基づいて、始点間距離20mmの条件で抗折強度を測定した。ここでは、各試料において、同一の試験片を6つ作製し、同様の試験を6回行い、その平均値を求めた。その結果を表2に示す。
表2の結果から、成形助剤として、粘度が2.0〜5000mPa・sの液体を10〜40体積%の割合で原料粉末に添加した試料No.1−1〜1−8は、各位置における収縮比の最大差が0.010以下であり、焼結による収縮量のばらつきが小さく、焼結体の寸法精度が高いことが分かる。よって、焼結前の成形体において、プレス成形時における原料粉末の流動性が改善され、密度分布が均一化されていると考えられる。特に、液体の添加量を15〜30体積%とした試料No.1−2,1−3,1−5〜1−8は、収縮比の最大差が0.008以下であり、焼結体の寸法精度がより高いことから、焼結前の成形体において、プレス成形時の流動性の改善効果が高く、密度分布がより均一であると考えられる。
また、金属成分が分散した液体を用いた試料No.1−1〜1−8は、焼結後の超硬合金において、抗折強度が2.4GPa以上であり、抗折強度が高く、高強度である。したがって、焼結後の超硬合金において、組織が均質化されていると考えられる。特に、試料No.1−2,1−3,1−5〜1−8は、抗折強度が2.5GPa以上であり、抗折強度がより高い。
液体の添加量が少ない試料No.1−17は、焼結による収縮量のばらつきが大きく、焼結体の寸法精度が劣っていることから、成形体の密度分布が不均一であると考えられる。これは、液体の添加量が少ないため、流動性の改善効果が十分に得られず、成形体の密度分布を十分に均一化することができなかったことが原因と考えられる。また、焼結後の超硬合金において、十分な抗折強度を有しておらず、組織の均質化が不十分であると考えられる。これは、液体に含まれる金属成分が成形体中に十分行き渡らなかったことが原因と考えられる。一方、液体の添加量が多い試料No.1−18は、亀裂が発生しており、液体の増加は成形性の悪化を招くと考えられる。
液体の粘度が低い試料No.1−19は、焼結による収縮量のばらつきが大きく、焼結体の寸法精度が劣っていることから、成形体の密度分布が不均一であると考えられる。これは、液体の粘度が低いため、プレス成形時に金型のクリアランスから液体が流出したことから、流動性の改善効果が十分に得られなかったことが原因と考えられる。また、焼結後の超硬合金において、十分な抗折強度を有しておらず、組織の均質化が不十分であると考えられる。これは、液体に含まれる金属成分が成形体中に十分行き渡らなかったことが原因と考えられる。一方、液体の粘度が高い試料No.1−20は、亀裂が発生しており、液体の粘度が高すぎると、プレス成形時に成形体中に十分に行き渡らず、金属成分が凝集するなどして、成形性の悪化を招くと考えられる。
原料粉末に成形助剤を添加しなかった試料No.1−11は、焼結による収縮量のばらつきが大きく、焼結体の寸法精度が劣っており、成形体の密度分布が不均一であると考えられる。これは、プレス成形時に原料粉末が流動し難いことが原因と考えられる。また、焼結後の超硬合金において、抗折強度も低い。
成形助剤に固体のみを用いた試料No.1−14〜1−16は、焼結による収縮量のばらつきが大きく、焼結体の寸法精度が劣っており、成形体の密度分布が不均一であると考えられる。よって、成形助剤に固体のみを用いた場合は、プレス成形時の原料粉末の流動性を十分に改善できず、成形体の密度分布を均一化することが困難であると考えられる。また、焼結後の超硬合金において、抗折強度が低下している。
成形助剤に液体のみを用いた試料No.1−12〜1−13は、焼結による収縮量のばらつきが小さく、焼結体の寸法精度が高い。よって、焼結前の成形体において、流動性が改善され、密度分布が均一化されていると考えられる。しかしながら、試料No.1−12〜1−13は、焼結後の超硬合金において、抗折強度が向上していない。この結果から、金属成分が分散した液体を用いることで、組織を均質化して、抗折強度を大幅に向上できることが分かる。
本発明のセラミックス成形体の製造方法及びセラミックス焼結体の製造方法は、セラミックス粉末を焼結した焼結体(焼結合金)の製造に好適に利用できる。
Claims (4)
- セラミックス粉末を含有する原料粉末を圧縮成形するセラミックス成形体の製造方法であって、
超硬合金又はサーメットの前記原料粉末に、成形助剤として、20℃での粘度が2.0mPa・s以上5000mPa・s以下で、超硬合金又はサーメットを構成する少なくとも1種の金属成分の単体又は化合物が分散した液体を添加し、前記原料粉末を金型に充填してプレス成形する成形工程を備えるセラミックス成形体の製造方法。 - 前記液体を、前記原料粉末に対して10体積%以上40体積%以下の割合で添加する請求項1に記載のセラミックス成形体の製造方法。
- 前記超硬合金の組成は、WC、周期表4,5,6族元素から選ばれる少なくとも1種の金属と、C,N,O及びBから選ばれる少なくとも1種の元素との化合物、及び鉄族金属を有する請求項1又は請求項2に記載のセラミックス成形体の製造方法。
- セラミックス粉末を含有する原料粉末を圧縮成形した成形体を焼結するセラミックス焼結体の製造方法であって、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のセラミックス成形体の製造方法により製造されたセラミックス成形体を焼結する焼結工程を備えるセラミックス焼結体の製造方法。
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2015
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