JP2016145001A - 車両用シートのシートバックのケーブル固定構造及び車両用シート - Google Patents

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勤 藤掛
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直之 牧田
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【課題】工数を増やすことなく、部品点数を増やすことなく、従って低いコストでケーブルの固定を実現できるケーブルの固定構造を提供する。【解決手段】車両用シートのシートバック3に適用されるケーブル固定構造である。ケーブル固定構造はシートバックフレーム9の主体部14と、止め具36a,36b,36c)を有する。シートバック3は着座者の背中に対応する部分が板状部材となっているパネル型又はシェル型のシートバックフレーム9を有しており、シートバックフレーム9は炭素繊維強化プラスチックを用いた成形加工によってパネル型又はシェル型に形成されており、板状部分にはケーブル29を止めるための止め具36a,36b,36cがシートバックフレーム9の成形加工時に同時にインサート成形によって形成されている。【選択図】図4

Description

本発明は、車両用シートの構成要素であるシートバックに適用されるケーブル固定構造に関する。特に、本発明は、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)によって形成されたフレームを含んだシートバックに適用されるケーブル固定構造に関する。また、本発明は、そのケーブル固定構造を用いた車両用シートに関する。
従来、車両用シートのシートバックのフレームをCFRPによって形成することが、例えば、特許文献1及び特許文献2に開示されている。これらの文献には、CFRPを用いて枠状のフレームを形成し、このフレームを骨格構造としてシートバックを形成することが記載されている。以下、シートバックに用いられるフレームをシートバックフレームということにする。
車両用シートのシートバックの内部にはケーブルが配回されることがある。ケーブルは、例えば、電線や、信号線や、ワイヤハーネスや、ワイヤケーブル等である。ワイヤハーネスは複数の電線を束ねて成る線材である。ワイヤケーブルは、インナケーブルをアウタケーブルで包囲して成る線材である。
ケーブルはシートバックの内部で自由に動く状態であったり、枠状のフレームに巻き付けて固定されたり、枠状のフレームに接着によって固定されたりしていた。ケーブルが自由な状態にあると、そのケーブルが他の機器に触れてケーブル自身及び他の機器が損傷するおそれがある。ケーブルを枠状のフレームに巻き付けて固定すると、ケーブルに負荷が加わって本来のケーブルとしての機能を果たせないことがある。ケーブルを枠状のフレームに接着によって固定する場合には、接着のために工程数が増えたり、部品点数が増えたりする、という問題がある。
近年、CFRPによって、枠状のフレームではなく、パネル型のフレームを作製することが知られている。パネル型のフレームとは、着座者の背中に対応する部分が空間ではなく、板状部材となっているフレームである。CFRPによって形成されたパネル型のシートバックフレームは、強度が高く、薄く形成することができるので、バケット型のシートバックを作製する上で好適である。
このパネル型のシートバックフレームに対してケーブルを配回す場合、従来は、シートバックフレームの板状部材に止め具を接着によって取付け、この止め具によってケーブルをフレームに固定していた。しかしながら、この固定方法では、工数が増え、部品点数が増えるので、コストが高くなるという問題があった。
特開2005−334364号公報 特開2013−189139号公報
本発明は、従来装置における上記の問題点に鑑みて成されたものであって、工数を増やすことなく、部品点数を増やすことなく、従って低いコストでケーブルの固定を実現できるケーブルの固定構造を提供することを目的とする。
本発明に係る車両用シートのシートバックのケーブル固定構造は、車両用シートのシートバックに適用されるケーブル固定構造において、前記シートバックは着座者の背中に対応する部分が板状部材となっているパネル型のシートバックフレームを有しており、前記シートバックフレームは炭素繊維強化プラスチックを用いた成形加工によって形成されており、前記板状部分にはケーブルを止めるための止め具が前記シートバックフレームの成形加工時に同時にインサート成形によって形成されていることを特徴とする。
上記のパネル型のシートバックフレームは、例えば、いわゆるシェル型のシートバックフレームである。シェル型のシートバックフレームとは、1枚の板状部材によって形成されたフレームであって、人体等といった対象物の輪郭(例えば、人の背中の輪郭)に対応するように形成された立体的な形状のフレームである。
本発明に係るケーブル固定構造では、シートバックフレームを炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を用いて樹脂成形によって形成したので、シートバックフレームを、周壁部が高くて薄い板形状であるパネル形状であって、軽くてしかも高強度の形状に形成できる。このようなパネル型のシートバックフレームはバケット型のシート(すなわち、左右のへり部を高くして着座者の尻や肩を深く包むことで着座者の固定機能を高めたシート)に好適に使用できる。
一般に、CFRPの成形品には複雑で細かい形状を形成することが困難である。従って、複雑で細かい形状の止め具をCFRPの一体成形によって形成することは困難である。これに対し、シートバックフレームをCFRPで樹脂成形する場合に止め具を金型内の所定位置に予め置いた状態でインサート成形することは可能である。本発明では、このようなインサート成形の手法を利用して、シートバックフレームの所定位置に止め具を形成した。
このように、止め具はシートバックフレームにインサート成形(すなわち、一体成形)され、後工程でシートバックフレームに固定されるものではないので、シートバックフレームの製造工程の工数を低く抑えることができる。また、止め具をシートバックフレームに固着するための固着手段、例えば接着剤、止めネジ、等が不要であるので、部品点数を低く抑えることができる。これらのため、本発明ではシートバックのコストを大きく低減できる。
また、本発明では、ケーブルが止め具の中に収容され、さらに止め具の開口がパッドによって塞がれるので、ケーブルはシートバックフレームの表面上で位置ズレすることなく、しっかりと固定される。
本発明のケーブル固定構造の1つの発明態様において、前記炭素繊維強化プラスチックは、連続的につながって且つランダムな方向へ延びている繊維を含んでいる樹脂である。
CFRPには炭素繊維が1つの方向に揃って並んでいるものや、延在方向が異なっている炭素繊維を含む複数の層を積層することにより結果的に炭素繊維がランダムにばらついて延在しているものや、炭素繊維が連続的につながった状態でランダムな方向へ延びているもの、等がある。本発明態様では、連続的につながって且つランダムな方向へ延びている炭素繊維を含んでいるCFRPによってシートバックフレームを形成する。これにより、薄いながら強度の高いシートバックフレームを製造できる。
本発明のケーブル固定構造の他の発明態様において、前記ケーブルは、電線か、信号線か、インナケーブルをアウタケーブルで包囲して成るワイヤケーブルか、又は複数の電線を束ねて成るワイヤハーネスである。このように、本発明のケーブルは種々の形態をとることができる。
本発明のケーブル固定構造の他の発明態様において、
(1)前記車両用シートは、前記シートバックフレームと前記シートクッションフレームとの間に設けられた傾斜移動機構と、当該傾斜移動機構を操作するための操作レバーとを有しており、
(2)前記傾斜移動機構は、前記シートバックフレームを前記シートクッションフレームに対して傾斜移動可能にするロック解除状態をとることができ、
(3)前記ケーブルは、前記操作レバーと前記傾斜移動機構との間に設けられていて、インナケーブルをアウタケーブルで包囲して成るワイヤケーブルであり、
(4)前記操作レバーの操作によって前記ワイヤケーブルのインナケーブルを当該インナケーブル自身の軸方向に沿って移動させることにより、前記傾斜移動機構の状態をロック解除状態に切り替える。
この発明の態様において、ケーブルはインナケーブルをアウタケーブルで包囲して成るワイヤケーブルである。このワイヤケーブルは、止め具によって位置ズレしないように固定されるが、過剰な力で挟持されることはない。このため、本発明態様によれば、操作レバーを操作してインナケーブルをアウタケーブル内で移動させることを常に滑らかに行うことができる。
次に、本発明に係る車両用シートは、着座者の臀部が乗るシートクッションと、着座者の背中を受けるシートバックと、当該シートバック内に設けられたシートバックフレームと、前記シートバック内で配回されるケーブルと、当該ケーブルを前記シートバックフレームに固定するためのケーブル固定構造とを有する車両用シートにおいて、前記シートバックフレームは、着座者の背中に対応する部分が板状部材となっているパネル型のシートバックフレームであり、前記シートバックフレームは炭素繊維強化プラスチックを用いた成形加工によって形成されており、前記ケーブル固定構造はケーブルを止めるための止め具を有しており、当該止め具は前記シートバックフレームの板状部分に設けられており、当該止め具は前記シートバックフレームの成形加工時に同時にインサート成形によって形成されることを特徴とする。
本発明に係る車両用シートによれば、上述した本発明に係るケーブル固定構造と同じ効果を得ることができる。
本発明の車両用シートにおいては、構成要素であるケーブル固定構造に関して、上述した本発明のケーブル固定構造の種々の発明態様を適用できる。
本発明に係るケーブル固定構造及び車両用シートにおいては、シートバックフレームをCFRPを用いて樹脂成形によって形成したので、シートバックフレームを、周壁部が高くて薄い板形状であるパネル形状であって、軽くてしかも高強度の形状に形成できる。このようなパネル型のシートバックフレームはバケット型のシート(すなわち、左右のへり部を高くして着座者の尻や肩を深く包むことで着座者の固定機能を高めたシート)に好適に使用できる。
一般に、CFRPの成形品には複雑で細かい形状を形成することが困難である。従って、複雑で細かい形状の止め具をCFRPの一体成形によって形成することは困難である。これに対し、シートバックフレームをCFRPで樹脂成形する場合に止め具を金型内の所定位置に予め置いた状態でインサート成形することは可能である。本発明では、このようなインサート成形の手法を利用して、シートバックフレームの所定位置に止め具を形成した。
このように、止め具はシートバックフレームにインサート成形(すなわち、一体成形)され、後工程でシートバックフレームに固定されるものではないので、シートバックフレームの製造工程の工数を低く抑えることができる。また、止め具をシートバックフレームに固着するための固着手段、例えば接着剤、止めネジ、等が不要であるので、部品点数を低く抑えることができる。これらのため、本発明ではシートバックのコストを大きく低減できる。
また、本発明では、ケーブルが止め具の中に収容され、さらに止め具の開口がパッドによって塞がれるので、ケーブルはシートバックフレームの表面上で位置ズレすることなく、しっかりと固定される。
本発明に係る車両用シートの一実施形態を示す斜視図である。 図1の車両用シートの内部に設けられるフレーム構造を示す斜視図である。 図2のフレーム構造の主要部であるシートバックフレームを拡大して示す図である。 (a)は図1のA−A線に従ったシートバックの平面断面図であり、(b)は図3のD−D線及びE−E線に従った止め具の側面断面図である。 図3の主要部である操作レバー部を拡大して示す斜視図である。 図4(a)及び図4(b)の主要部である止め具を示す斜視図である。
以下、本発明に係る車両用シート及びケーブル固定構造を実施形態に基づいて説明する。なお、本発明がこの実施形態に限定されないことはもちろんである。また、本明細書に添付した図面では特徴的な部分を分かり易く示すために実際のものとは異なった比率で構成要素を示す場合がある。
(車両用シート)
図1は、本発明に係る車両用シートの一実施形態を示している。この車両用シート1は、着座者の臀部が乗るシートクッション2と、着座者の背中を受けるシートバック3とを有している。シートクッション2の表面は表皮4aで覆われている。シートバック3の表面は表皮4bで覆われている。
(フレーム構造)
図2は、図1の車両用シートの内部に設けられているフレーム構造を示している。このフレーム構造7は、シートクッションフレーム8とシートバックフレーム9とを有している。シートクッションフレーム8は図1のシートクッション2の骨格構造となるフレームである。図2のシートバックフレーム9は図1のシートバック3の骨格構造となるフレームである。
シートクッションフレーム8は、着座者にとって右側に位置するサイドフレーム10aと、着座者にとって左側に位置するサイドフレーム10bと、サイドフレーム10a、10bの間に設けられたセンターフレーム11とを有している。シートクッションフレーム8には、サイドフレーム10a,10b及びセンターフレーム11以外に必要に応じて種々の機能部品が含まれるが図2ではそれらの機能部品の図示を省略している。サイドフレーム10a,10b及びセンターフレーム11は、鋼材や、硬質の合成樹脂によって形成されている。
シートバックフレーム9は、着座者の背中及び着座者の頭部に対応する部分である主体部14と、その主体部14の周縁部に設けられた起立部である周壁部15とを有している。主体部14は、厚さが一様で湾曲していない平らな1枚の板状部材であったり、又は、厚さが一様で人の背部に沿うように緩やかに湾曲する1枚の板状部材である。周壁部15は後述する操作レバー部16が取付けられる部分を除いて主体部14の周縁の全域に設けられている。周壁部15は、シートクッションフレーム8に近い下部の高さが高く、シートクッションフレーム8から離れている上部の高さが低くなっている。以上の構成により、本実施形態のシートバックフレーム9は、枠状のフレームではなく、着座者の背中に対応する部分が板状部材となっているパネル型のシートバックフレームとなっている。
主体部14及び周壁部15を有しているシートバックフレーム9は繊維を含んだ合成樹脂であるCFRP(carbon fiber reinforced plastic/炭素繊維強化プラスチック)を用いて樹脂成形加工よって形成されている。CFRPには炭素繊維が1つの方向に揃って並んでいるものや、延在方向が異なっている炭素繊維を含む複数の層を積層することにより結果的に炭素繊維がランダムにばらついて延在しているものや、炭素繊維が連続的につながった状態でランダムな方向へ延びているもの、等があるが、本実施形態では任意の構成のCFRPを用いることができる。
図4(a)は、図1のA−A線に従ってシートバック3の平面断面部の断面構造を示している。図示のように、シートバック3は、シートバックフレーム9の前方側(すなわち、着座者に対面する側、図4(a)の下側)に弾性部材であるパッド17を装着し、さらにパッド17の表面を表皮4b(図1参照)で覆うことによって形成されている。パッド17は、例えば、弾性部材であるウレタンの発泡材によって形成されている。また、表皮4bは、例えば、織物、編物等といったファブリックや、革や、合成皮革、等によって形成されている。
シートバックフレーム9の周壁部15の先端には折返し部15aが設けられている。表皮4bの端末部にはフック部材18が、例えば縫付け、接着によって固着されている。フック部材18は、合成樹脂、金属等といった硬質材料によって形成されている。表皮4bは、フック部材18をシートバックフレーム9の周壁部15の端末部15aの先端に引っ掛けることによって、シートバックフレーム9に取付けられて、パッド17を覆っている。
図1のシートクッション2もシートバック3と同様に、図2のシートクッションフレーム8の周囲にパッドを装着し、そのパッドを図1の表皮4aで覆うことによって形成されている。
(シートバックの傾斜移動構造)
図2において、シートバックフレーム9の周壁部15の左右の下部の内面にブラケット21a,21bが、例えばネジ止め、接着等によって固定されている。ブラケット21a,21bは、例えば金属又は硬質の合成樹脂によって形成されている。そして、それらのブラケット21a,21bが傾斜移動機構22a,22bを介して、シートクッションフレーム8のサイドフレーム10a,10bの後ろ側の端部に接合されている。こうして、シートバックフレーム9がシートクッションフレーム8に連結されている。ブラケット21aとブラケット21bは同様の機能を果たす部材であるが、それらの形状は左右対称の形状となっている。
傾斜移動機構22a,22bは、弾性部材であるバネ(例えば、渦巻きバネ)によってシートバックフレーム9を矢印Bに示すように前方へ向けて回動(すなわち、傾斜移動)するように付勢する機能を有している。また、傾斜移動機構22a,22bは、シートバックフレーム9がシートクッションフレーム8に対して傾斜移動できるようにするロック解除状態をとることができる。この傾斜移動機構22a,22bの具体的な構造は、例えば従来からリクライニング機構として知られている構造によって構築できる。
図1において、着座者の右肩の上部であって着座者の頭部の右部に相当するシートバック3の部分に、操作レバー部16が設けられている。この操作レバー部16は、操作レバー25と、その操作レバー25の周囲に置かれた枠部材26とを有している。操作レバー25は、図5において、周壁部15に固着された機枠27に取付けられている。また、操作レバー25は機枠27に固定された軸部材28を中心として矢印C−C’方向へ回動できる。
図2において、操作レバー部16と傾斜移動機構22a,22bとの間にケーブルとしてのワイヤケーブル29が設けられている。ワイヤケーブル29は、図3に示すように、細長い中実の線材であるインナケーブル30を細長い中空のチューブ(すなわち、管状部材)であるアウタケーブル31で包囲することによって形成されている。図2において、ワイヤケーブル29はその上部において分配器32によって2つのワイヤケーブル29a及び29bへと分岐されている。
図3及び図5において、ワイヤケーブル29のインナケーブル30の上端30aは、操作レバー25の下端に連結されている。また、図3において、2つに分岐したワイヤケーブル29a,29bの下端から延び出ているインナケーブル30の下端30b1,30b2は、傾斜移動機構22a,22bから延び出ているピン35a,35bに連結されている。
図5において、操作レバー25の裏側には人の指を引っ掛けることができる指引掛け部分が設けられている。人がこの指引掛け部分に指を引掛けて、さらに操作レバー25を矢印C−C’で示すように前後方向へ適宜の角度だけ回動させると、ワイヤケーブル29のインナケーブル30がアウタケーブル31の中でインナケーブル30自身の軸方向に沿って矢印G−G’に示すように進退移動する。
操作レバー部16の内部には、予め、操作レバー25を矢印C’方向へ付勢している弾性部材、例えばバネが設けられている。従って、自然状態において操作レバー25は矢印C’側にセットされている。
操作レバー25を矢印C方向へ回動させると、ワイヤケーブル29のインナケーブル30がアウタケーブル31の中で上方へ引っ張られる。インナケーブル30が上方へ引っ張られると、図2においてインナケーブル30の下端30b1,30b2が上方へ移動し、これにより傾斜移動機構22a,22bがロック解除状態にセットされる。
傾斜移動機構22a,22bがロック解除状態にセットされると、シートバックフレーム9は傾斜移動機構22a,22bが持っている弾性付勢機能の働きによって矢印Bに示すように前方向へ傾斜移動する。これにより、図1においてシートバック3をシートクッション2へ向かう方向(すなわち前方向)へ傾斜移動させることができる。このシートバック3の傾斜移動により、着座者の姿勢を適正位置に移動できる。シートバック3をロック状態にするには、ロック解除後にシートバック3を後ろへ倒す。シートバック3が後ろ方向の規定位置に達するとシートバック3がロック状態に設定される。
(ワイヤケーブル29の固定構造)
図2において、シートバックフレーム9の主体部14の中央よりも少し上の部分に止め具36a,36b,36cが設けられている。止め具36aは分岐する前のワイヤケーブル29を固定するための止め具である。止め具36b及び36cは分岐した後のワイヤケーブル29a及び29bを個別に固定するための止め具である。シートバックフレーム9の主体部14の中央よりも少し上の部分は、着座者の背中に対応した部分である。
止め具36a,36b,36cは、図6に示すように、平板形状の基台37の上にワイヤ止め部38を設けた形状となっている。ワイヤ止め部38は、湾曲した内面39と、長さLと、幅Wの開口40とを有している。内面39の断面形状は、開口40の部分が切り欠かれている円形状、開口40の部分が切り欠かれている楕円形状、開口40の部分が切り欠かれている長円形状、又はその他の任意の湾曲形状を有している。場合によっては、内面39の断面形状は、湾曲形状ではなく、三角形状、四角形状、その他の多角形状に形成されることもある。ワイヤ止め部38の長さLは、例えばL=10〜15mmである。
止め具36a,36b,36cは金属、合成樹脂、等によって形成されている。開口40の幅Wは、固定しようとしているワイヤケーブル29を内部へ挿入できる大きさに設定されている。開口40の幅Wはワイヤケーブル29の外径よりも大きい場合もあるし、小さい場合もある。開口40の幅Wがワイヤケーブル29の外径よりも小さい場合は、弾性変形によって開口40の幅Wを開いた状態でワイヤケーブル29がワイヤ止め部38の内部へ挿入される。
図2の上部の止め具36aは、図4(a)に示すように、シートバックフレーム9をCFRPを用いて樹脂成形加工によって形成する際に、インサート成形の手法によって図2に示すシートバックフレーム9の所定位置に形成されている。止め具36aは、分岐する前の2本のワイヤケーブル29a,29bを固定している。
図2の下部の止め具36b,36cも、同様にして、図4(b)に示すように、シートバックフレーム9をCFRPによって樹脂成形する際に、インサート成形の手法によって図2に示すシートバックフレーム9の所定位置に形成されている。止め具36b,36cは、分岐した後の2本のワイヤケーブル29a,29bを個別に固定している。
本実施形態では、以上のように、シートバックフレーム9をCFRPを用いて樹脂成形によって形成したので、シートバックフレーム9を、周壁部が高くて薄い板形状であるパネル形状であって、軽くてしかも高強度の形状に形成できた。このようなパネル型のシートバックフレームはバケット型のシート(すなわち、左右のへり部を高くして着座者の尻や肩を深く包むことで着座者の固定機能を高めたシート)に好適に使用できる。
また、一般に、CFRPの成形品には複雑で細かい形状を形成することが困難である。従って、本実施形態で用いた止め具36a,36b,36cのような複雑で細かい形状をCFRPの一体成形によって形成することは困難である。これに対し、シートバックフレーム9をCFRPで樹脂成形する場合に止め具36a,36b,36cを金型内の所定位置に予め置いた状態でインサート成形することは可能である。本実施形態では、このようなインサート成形の手法を利用して、シートバックフレーム9の所定位置に止め具36a,36b,36cを形成した。
このように、止め具36a、36b、36cはシートバックフレーム9にインサート成形(すなわち、一体成形)され、後工程でシートバックフレーム9に固定されるものではないので、シートバックフレーム9の製造工程の工数を低く抑えることができる。また、止め具36a、36b、36cをシートバックフレーム9に固着するための固着手段、例えば接着剤、止めネジ、等が不要であるので、部品点数を低く抑えることができる。これらのため、本実施形態のシートバック9のコストを大きく低減できる。
また、本実施形態では、図4(a)及び図4(b)に示すようにワイヤケーブル29が止め具36a、36b、36cの中に収容され、さらに止め具36a、36b、36cの開口40がパッド17によって塞がれるので、ワイヤケーブル29はシートバックフレーム9の主体部14の表面上で位置ズレすることなく、しっかりと固定される。
また、本実施形態では、主に、シートバックフレーム9の主体部14と、その主体部14にインサート成形によって形成された止め具36a,36b,36cとによってワイヤケーブルの固定構造が形成されている。この固定構造は非常に簡単な構造である。
また、本実施形態では、ワイヤケーブル29,29a,29bは止め具36a,36b,36cによって位置ズレしないように固定されるが、過剰な力で挟持されることはない。このようにワイヤケーブル29,29a,29bは、シートバックフレーム9上で位置ズレすることなく、しかも過剰な力で挟持されることも無い状態となっているので、図3において操作レバー25を操作してインナケーブル30をアウタケーブル31内で移動させることを常に滑らかに行うことができる。
(その他の実施形態)
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はその実施形態に限定されるものでなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々に改変できる。
例えば、シートバックフレーム9内で止め具36a,36b,36cを設ける位置は図2に示した位置に限られることはない。上記の実施形態ではワイヤケーブル29が分岐する部分に、止め具36a,36b,36cを設けたが、ワイヤケーブルの分岐部以外の部分に止め具を設けることも可能である。
上記の実施形態では、ケーブルとしてワイヤケーブルを用いたが、ケーブルはワイヤケーブル以外のケーブル、例えば、電線や、信号線や、複数の電線を束ねて成るワイヤハーネスや、その他の配線とすることができる。
上記の実施形態では、シートバックの傾斜移動機構に適用されるケーブルに対して本発明を適用したが、本発明は、シートバックの傾斜移動機構以外の機構に適用されるケーブルに対しても適用できる。
1.車両用シート、 2.シートクッション、 3.シートバック、 4a、4b.表皮、 7.フレーム構造、 8.シートクッションフレーム、 9.シートバックフレーム、 10a,10b.サイドフレーム、 11.センターフレーム、 14.主体部、 15.周壁部、 15a.折返し部、 16.操作レバー部、 17.パッド、 18.フック部材、 21a,21b.ブラケット、 22a,22b.傾斜移動機構、 25.操作レバー、 26.枠部材、 27.機枠、 28.軸部材、 29.ワイヤケーブル、 29a,29b.分岐ワイヤケーブル、 30.インナケーブル、 30a.インナケーブルの上端、 30b1,30b2.インナケーブルの下端、 31.アウタケーブル、 32.分配器、 35a,35b.ピン、 36a,36b,36c.止め具、 37.基台、 38.ワイヤ止め部、 39.内面、 40.開口

Claims (6)

  1. 車両用シートのシートバックに適用されるケーブル固定構造において、
    前記シートバックは着座者の背中に対応する部分が板状部材となっているパネル型のシートバックフレームを有しており、
    前記シートバックフレームは炭素繊維強化プラスチックを用いた成形加工によって形成されており、
    前記板状部分にはケーブルを止めるための止め具が前記シートバックフレームの成形加工時に同時にインサート成形によって形成されている
    ことを特徴とする車両用シートのシートバックのケーブル固定構造。
  2. 前記炭素繊維強化プラスチックは、連続的につながって且つランダムな方向へ延びている繊維を含んでいる樹脂である
    ことを特徴とする請求項1記載の車両用シートのシートバックのケーブル固定構造。
  3. 前記ケーブルは、電線か、信号線か、インナケーブルをアウタケーブルで包囲して成るワイヤケーブルか、又は複数の電線を束ねて成るワイヤハーネスであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用シートのシートバックのケーブル固定構造。
  4. 前記車両用シートは、前記シートバックフレームと前記シートクッションフレームとの間に設けられた傾斜移動機構と、当該傾斜移動機構を操作するための操作レバーとを有しており、
    前記傾斜移動機構は、前記シートバックフレームを前記シートクッションフレームに対して傾斜移動可能にするロック解除状態をとることができ、
    前記ケーブルは、前記操作レバーと前記傾斜移動機構との間に設けられていて、インナケーブルをアウタケーブルで包囲して成るワイヤケーブルであり、
    前記操作レバーの操作によって前記ワイヤケーブルのインナケーブルを当該インナケーブル自身の軸方向に沿って移動させることにより、前記傾斜移動機構の状態をロック解除状態に切り替える
    ことを特徴とする請求項3記載の車両用シートのシートバックのケーブル固定構造。
  5. 着座者の臀部が乗るシートクッションと、着座者の背中を受けるシートバックと、当該シートバック内に設けられたシートバックフレームと、前記シートバック内で配回されるケーブルと、当該ケーブルを前記シートバックフレームに固定するためのケーブル固定構造とを有する車両用シートにおいて、
    前記シートバックフレームは、着座者の背中に対応する部分が板状部材となっているパネル型のシートバックフレームであり、
    前記シートバックフレームは炭素繊維強化プラスチックを用いた成形加工によって形成されており、
    前記ケーブル固定構造はケーブルを止めるための止め具を有しており、当該止め具は前記シートバックフレームの板状部分に設けられており、当該止め具は前記シートバックフレームの成形加工時に同時にインサート成形によって形成されることを特徴とする車両用シート。
  6. 前記ケーブル固定構造は、請求項2から請求項4のいずれか1つに記載のケーブル固定構造であることを特徴とする請求項5記載の車両用シート。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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