以下、添付図面に示す実施例を参照して本発明を実施するための形態につき説明する。なお、以下に示す実施例はあくまでも一例であり、例えば細部の構成については本発明の趣旨を逸脱しない範囲において当業者が適宜変更することができる。また、本実施形態で取り上げる数値は、参考数値であって、本発明を限定するものではない。
<実施例1>
図1、図2に本発明を実施することができるロボットシステムの構成例を示す。図1において、ロボットシステム10は、ロボット装置20、交換装置500、およびロボット装置20と交換装置500とを制御する制御装置600とコントローラ610を備えている。制御装置600およびコントローラ610は、図1の下部にブロック図として示してある。図2は、制御装置600およびコントローラ610を含む制御系の構造を示している。
図1のロボット装置20は、アーム100の先端に装着されたハンド200によって、操作対象物であるワークWに対する操作を行うことができる。
ハンド200はワークWを把持するフィンガ(図1の300)を備えており、本明細書では、ハンド200および(または)フィンガ300をワークWを操作可能な「操作部」と考える。本明細書では、この操作部を交換するための構成および制御について説明するが、本実施例1では、操作部としてのフィンガ300をハンド200に対して着脱(交換)する例を示す。なお、後述の実施例2では、ハンド200と同等のエンドエフェクタ(ツール)全体を操作部としてアーム100に着脱(交換)する例を示す。
ロボット装置20は、複数の関節を有する6軸の垂直多関節アーム(以下、アームと呼ぶ)100と、エンドエフェクタとして例えばハンド200とを備えており、ワーク置台900に載置されたワーク(作業対象物)Wに対する作業を行うことができる。なお、本実施例では、アーム100として6軸の垂直多関節アームを例示しているが、軸数はアーム構成はこれに限定されるものではなく、用途や目的に応じて適宜変更することができる。
アーム100は、7つのリンク101〜107と、これらリンク101〜107を揺動または回動可能に連結する6つの関節111〜116とを備えている。本実施例のリンク101〜107には、長さが固定されたものを採用しているが、例えば、直動アクチュエータにより伸縮可能なリンクを用いてもよい。
図2の左上、および右上は、ロボットシステム10の制御系におけるアーム100およびハンド200の構造を示している。
図1、図2において、アーム100の各関節111〜116を駆動するための関節機構は、関節111〜116を駆動するモータ121〜126(第1〜第6モータ)を含む。モータ121〜126には、それぞれの駆動対象の関節の回転角度(姿勢)を検出するためのエンコーダ(不図示)が設けられる。アーム制御回路120は、制御装置600からの指令に応じて、上記エンコーダの出力を監視しつつ各関節のモータ121〜126を駆動する。これにより、アーム制御回路120はアーム100の特定部位(たとえばハンド200が装着されるリンク107の端面中心などに設定される)の位置や姿勢(各関節の姿勢)を制御する。なお、アーム100の関節機構は、タイミングベルトやプーリなどによって構成される不図示の動力伝達機構、歯車などにより構成される不図示の減速機構と、モータ121〜126の非通電時に位置姿勢を支える不図示のブレーキ機構などを有している。
図1において、ハンド200は、アーム100の最先端のリンク107に装着される。ハンド200は、本実施例では例えば作業者の手動操作により交換可能であるものとするが、後述の実施例2に示すように本実施例で説明するフィンガの交換のための機構と同様の構成によって、作業者の操作を介さずに交換することもできる。
リンク107に支持されたハンド200は、アーム100の動作により位置および姿勢の少なくとも一自由度を変更することができる。ハンド200は、ハンド本体201、および交換可能なフィンガ(300)を備えている。このフィンガ(300)は、ハンド本体201に対して交換可能であり、アーム100の位置姿勢およびハンド本体201の姿勢の制御とフィンガ(300)の開閉操作を組合せることにより、ワークWに対する作業(操作)を行うことができる。
図1の状態では、第1フィンガ(操作部)300がハンド200に装着されている。本実施例のハンド200には、フィンガ(300)は例えば2本装着することができ、この2本のフィンガ(300)を開閉することによりワークWを把持することができる。
2本の第1フィンガ(作業手段)300は、例えば、図6に示すように互いに左右対称な形状に構成される。ハンド本体201の第1フィンガ300を駆動するための駆動機構は、第1フィンガ300を駆動するモータ221(図2)により構成される。モータ221は、第1フィンガ300の姿勢に相当する回転角度を検出するエンコーダ(不図示)を含み、ハンド制御回路220(図2)はこのエンコーダの出力を監視しながら制御装置600の指令に応じて第1フィンガ300の開閉を制御する。
図1のロボット装置20では、エンドエフェクタとしてはハンド200以外のツールを装着することができる。即ち、ハンド200は、他のドライバ、ドリル、溶接機などの種々の作業ツールに交換することができる。従って、ロボット装置20は、アーム100に装着したハンド200によりワークWを把持して他のワークに組み付ける、といった作業を行える。また、ネジ止め、孔あけ、溶接などの目的の作業に適したツールを装着(に交換)することにより、ワークWに対して当該の作業を行うことができる。
本実施例では、ハンド200に対して交換可能な操作部としてフィンガ(300)を考える。例えば、図1に示す状態では、ハンド本体201には第1フィンガ300を装着しているが、第1フィンガ300を第2フィンガ310に交換することができる。第2フィンガ310は、図1の状態では、図中左側のツール交換モジュール510によって保持されている。
組み立てを行う製品を変更(段取替え)する場合、ハンド200で把持、および組み立てするワークWが異なるので、ワークWや作業内容に応じて各フィンガの使い分けを行うことができる。例えば、フィンガの長さや形状の異なるものを第1、第2(第3…)のフィンガとして用意しておき、ワークWや作業内容に応じて交換することにより、ワークWや作業内容に最適なフィンガを用いることができる。
なお、ハンド本体201に対して、交換可能な「操作部」は把持用の「フィンガ」に限定されない。例えば、ハンド本体201に対して交換可能な操作部としては、フィンガ以外のドライバ、ドリル、溶接機などの作業ツール類が考えられる。これらのツール類が後述する操作部の交換のための機構を有していれば、フィンガのみならず、上記のような任意のツールを装着することもできる。操作部の交換のための機構、特にハンド200廻りの構成の詳細については後述する。
図1において、交換装置500(フィンガないしツール交換装置)は、2つのツール交換モジュール510を備えている。図1の2つのツール交換モジュール510は、交換用フィンガとして第2フィンガ310を保持した状態である。ツール交換モジュール510は、モータその他のアクチュエータ(不図示)による搬送動作により、ハンド200が備える二本の第1フィンガ300を並行して装着または離脱させることができる。交換装置500の詳細な構成例については後述する。
ロボットシステム10の制御部としての制御装置600は、マイクロプロセッサ素子などを用いたコンピュータにより構成することができる。この制御装置600により、ロボット装置20、および交換装置500を制御することができる。
制御装置600を構成するコンピュータは、図1に示すように例えば、CPU601、各部を制御するためのプログラムを記憶するROM602、RAM603、通信インターフェース(図中ではI/F)604などから構成される。このうち、RAM603はコントローラ610の操作による教示点や制御指令などのデータの一時記憶に用いられる。
コントローラ610は、例えばティーチングペンダント(TP)のような操作装置が考えられるが、ロボットプログラムを編集可能な他のコンピュータ装置(PCやサーバ)であってもよい。コントローラ610は、制御装置600に対して有線ないし無線の通信接続手段を介して接続することができ、ロボット操作および状態表示などのユーザインターフェース機能を有する。
CPU601は、例えばコントローラ610で入力された教示点データを通信インターフェース604から受信する。また、コントローラ610から入力された教示点データに基づきロボット装置20の各軸の軌道を生成し、通信インターフェース604を介して制御目標値としてロボット装置20に送信することができる。
次に、本実施例において、操作部としてのフィンガを着脱するためのハンド200廻りの構成例につき説明する。本実施例では、フィンガは2本1組であり、以下ではこの2本のフィンガを着脱(さらに交換)するための装着部30の構成を示す。
図3、図4に示すように、ハンド200のハンド本体201には、2個のスライドガイド202を介して、コの字形状の2個のフィンガ基台203、203が各々設けられている。フィンガ基台203、203の下部は、図3に示すように後述の交換動作においてフィンガの上部が通過できる開口部203e、203eが設けられている。
また、ハンド本体201の内部にはフィンガ開閉(把持制御)用のモータ221が配置されている。モータ221の駆動軸に相当するピニオンシャフト222の先端にはピニオンギア223が設けてある。
このピニオンギア223により、スライドガイド202、202のガイドブロック202a、202aの側面の歯型202c、202c(ラック)を駆動し、ガイドブロック202a、202aを移動させることができる。2個のスライドガイド202は、モータ221の回転軸に対して点対称に配置され、モータ221によりピニオンギア223を回転駆動することで、ガイドレール202bに沿って二個のガイドブロック202aが各々逆方向に直動するよう動作する。
これにより、ガイドブロック202a、202aを介してフィンガ基台203、203を図4、図6の紙面に垂直な方向(図3の左右)に沿ってそれぞれ逆の方向に移動させ、フィンガ300、300(図6)を開閉させることができる。この駆動機構によりフィンガ300、300(図6)を開閉させ、例えばワーク(W)を把持し、またその把持を解除してワーク(W)を開放することができる。
以下、フィンガ基台203、203に2本1組のフィンガ300、300を装着するための装着部30、30の詳細な構成につき説明する。
スライドガイド202は、ガイドレール202bと、ガイドレール202bに沿って直動するガイドブロック202aから成る。各々のフィンガ基台203、203には、両端を開口する2つのメスアリ溝203a、203aが互いに対称な形状で形成されており、メスアリ溝203aの中央の対向する2面(図3、図4では上下の2面)には、凸部203b、203bが各々形成されている。
図4は、図3のA−Aに沿った断面矢視であって、図4(あるいは図6)の図示の方向は図3と丁度90°だけ異なっている。図4に示すように、メスアリ溝203a、203aは、フィンガ基台203、203を貫通しておりその両端は開口となっている。
図4のように、メスアリ溝203aの両端の開口には傾斜部203cを形成してある。従ってこのメスアリ溝203aの両端の開口面積は、フィンガを拘束(位置決め)する凸部203b、203bの形成されたメスアリ溝203aの部位の断面積よりも大きくなっている。これにより、多少の位置制御の誤差があっても、後述するフィンガ300側のオスアリ溝300aを挿入しやすい形状となっている。
図3、図4、図6のように、フィンガ基台203の中央部には、2本のガイドシャフト206、206を介して上下方向に摺動可能に支持されたラッチ204、204を設けてある。ラッチ204に設けられた空間204bの中をガイドシャフト206が案内されることで、ラッチ204が図中上下方向に直動する。ラッチ204、204(図3)はコイルばね205、205によって図中の下方に向かって付勢されている。図4、図6のように、ラッチ204には傾斜部204aと、固定部204cから成るカム形状が設けられている。図4、図6のように、ラッチ204の傾斜部204a、204aは、中央の固定部204cを挟んで固定部204cよりも高いカム面となっており、この固定部204cによって、図6のようにフィンガ300の上端部300c(被支持部)を拘束する。
本実施例において、メスアリ溝203aは、フィンガ300の被装着部であるオスアリ溝300aの案内部31を構成する(図3)。また、上記のラッチ204、コイルばね205、ガイドシャフト206はフィンガ300の被装着部であるオスアリ溝300aを拘束状態または非拘束状態に制御するロック機構32を構成する。操作対象物を操作するフィンガ300(操作部)の被支持部(オスアリ溝300a)を着脱可能に支持する装着部30、30は、概ね上記の案内部31、およびロック機構32によって構成される。
ここで、図5、図6を参照して第1フィンガ300の側の構造につき説明する。図5、図6は、図3、図4の機構に第1フィンガ300を装着された状態を示している。図5、図6の図示の方向はそれぞれ図3、図4に対応している。
図5〜6に示すように、本実施例の第1フィンガ300は、ほぼS字に近似形状に構成されている。第1フィンガ300の先端部には、ワークWを把持するための把持部301が設けられている。モータ221の駆動によって、2本の第1フィンガ300を相互に近づけるよう閉じることで、2つの把持部301が接近してワークWを把持することができる。2つの把持部301は、例えばラバー、金属、樹脂など、把持対象のワーク(W)に適した材質から構成しておく。
一方、第1フィンガ300の根元部(把持部301と反対側の端部)には、2個のオスアリ溝300a、300aが左右対称(図5中の左右方向)に形成されている。また、このオスアリ溝300aの両側(図5中での上下側)には凹部300b、300bが各々形成されている。
図5、図6の第1フィンガ300が拘束された状態においては、装着部30、30のコイルばね205の弾性力により、ラッチ204が第1フィンガ300を図6中の下方向に押し付けることになる。これにより、固定部204cが第1フィンガ300の根元部を押さえ、片側の凸部203bおよび凹部300bが嵌合した状態となり、第1フィンガ300が拘束(位置決め)される。一方、メスアリ溝203aとオスアリ溝300aの間は、嵌め合いにより接触している箇所を除くと、全体に0.1mm程度の隙間が開いた状態の寸法仕様としてある。これにより、ラッチ204による拘束が解かれれば、大きな摺動抵抗を生じることなく、第1フィンガ300を移動させることができる。なお、第1フィンガ300を第2フィンガ310と交換する際の各フィンガおよび装着部30の挙動については後述の図12から図15に詳細に図示してある。
次に、図7〜図9、図2を参照して、本実施例の交換装置500の構成例につき詳細に説明する。
図7〜図9に示すように、交換装置500は装置基台511を有する。この装置基台511には、2つのスライドガイド512を介して、それぞれ一本の第2フィンガ310(または第1フィンガ300)の保持および搬送が可能な、2つのツール交換モジュール510、510が配設される。
2つのツール交換モジュール510、510は、ハンド200に装着された2本のフィンガ(第1フィンガ300)をほぼ同時に別のフィンガ(第2フィンガ310)に交換するためのもので、装置基台511の中心点に対して点対称に配置されている。各々のスライドガイド512は、ガイドブロック512aと、ガイドレール512bとから成る。
ガイドブロック512aには、保持板513aと、保持台513bとから成る、保持部513が固定されている。上記の保持部513の全体は、モータ521(図2)の駆動力により、歯車などによって構成される不図示の動力伝達機構を介して、一体となり図8の左右方向に直動するよう駆動される。保持板513aおよび保持台513bには、スライドガイド512の直動方向に対して傾斜を持つ傾斜部513cが連続的に形成されており、この役割については後述する。
交換装置500の制御系は、図2に示す通りであり、ツール交換モジュール510、510の保持部513、513を駆動するモータ521、521の他、各ツール交換モジュールの位置を検出する第1距離センサ522、および第2距離センサ523を含む。また、交換装置500の制御系は、2つのツール交換モジュール510、510の各部を制御する交換装置制御回路520を含む。
なお、第1距離センサ522、および第2距離センサ523の検出方式は任意であるが、これらのセンサは、直接の検出対象部位はいずれもフィンガであって、例えば光学式センサや小型デジタルカメラなどを用いることができる。また、フィンガの検出対象部位に磁性体などを埋め込むことができる場合には、第1距離センサ522、および第2距離センサ523として各種の磁気センサなどを利用してもよい。
図8に示すように、ガイドレール512b、512bには第1距離センサ522が埋め込んである。この第1距離センサ522は、アーム100の動作により、交換される第1フィンガ300が接近してきた際に、第1フィンガ300の先端との距離X1を検知する。このように、第1距離センサ522で検知した位置情報によって、第1フィンガ300が正しい交換位置に来たことを確認できる。第1距離センサ522の検出情報は、交換動作を行うタイミングを制御するために用いることができる。
保持部513に固定された2つの保持壁514と、台座515と、第1支持板516とにより、2面が開口された箱状の空間が形成されている。この2面が開口された箱状の空間は、第1フィンガ300および第2フィンガ310は通過できるだけの幅を持つ形状を有する保持部40、40となっている。即ち、これら保持部40、40は、ハンド200の装着部30に装着されている第1フィンガ300(第1の操作部)と異なる第2フィンガ310(第2の操作部)を保持する保持部である。
装置基台511には、2つの第2支持板517、517が立設されている。本実施例では、これら第2支持板517、517は、交換後、ハンド200の装着部30から離脱させた操作部としてのフィンガ(例えば第1フィンガ300)を回収し、保持部40、40の保持位置に再保持させる再保持手段を構成する。
この第2支持板517、517には、図8に示すように第2距離センサ523がそれぞれ埋め込まれている。この第2距離センサ523は、ツール交換モジュール510に保持された第2フィンガ310との距離X2を測定し、第2距離センサ523で検出した位置(距離)情報は、第2フィンガ310の交換動作を行うタイミングを制御するために用いることができる。第2支持板517の動作については、例えば後述の図15〜図18を参照して後述する。なお、保持部513の保持板513aは、コの字型に一部が開口された形状となっているため、スライドガイド512の動作範囲に対して、第2支持板517との接触により動作範囲が制限されることはない。
次に、図10〜図19を参照して上記の構成において、装着部30に装着されている第1フィンガ300(第1の操作部)をこれと異なる第2フィンガ310(第2の操作部)と交換する動作(自動段取り)につき説明する。
図10、図11は、交換装置500のツール交換モジュール510、510に2本の第2フィンガ310、310がそれぞれ保持された状態を示している。特に図11は、アーム100を動作させて、交換装置500に対する相対位置を第1フィンガ300を交換できる位置まで移動させた後の状態を示している。
なお、第2フィンガ310の先端には、ワークWとは異なる形状のワーク(不図示)を把持するための把持部311が設けられているものとする。図11のように第2フィンガ310は、第1フィンガ300と同様のS字形状を有している。フィンガ基台203へ装着された状態においては、2本の第2フィンガ310が相互に近づくように閉じることで、2つの把持部311が接近してワークを把持することができる。もちろん、この構成は、第1フィンガ300と同様である。
第2フィンガ310の根元部(把持部311と反対側の端部)には、二個のオスアリ溝310aが左右対称(図10中の左右方向)に形成されており、このオスアリ溝310aは、第1フィンガ300に設けられたオスアリ溝300aと同形状である。また、オスアリ溝310aの両側(図10中の上下側)には、オスアリ溝300aと同様に、凹部310bが各々形成されている。即ち、このオスアリ溝310aによって構成されるフィンガの被支持部の構造は、第1フィンガ300に設けられたオスアリ溝300aと同一の形状、寸法を有する。
第2フィンガ310は、台座515に載置され、保持壁514と、第1支持板516により、移動できる方向が制限された状態となっており、ツール交換モジュール510を介して移動させることができる。第2フィンガ310が、第2フィンガ310から第1支持板516に向かう方向に力を受ける場合は、支持板516が力を受けるため、第2フィンガ310は台座515に乗った状態を保つ。すなわち、ツール交換モジュール510を移動させ、支持板516と反対側の方向から第2フィンガ310に力を掛けても、第2フィンガ310は保持された状態を保つことができる。
図11は、第1フィンガ300を第2フィンガ310と交換する直前の状態において、アーム100の先端の少なくともハンド200、従ってフィンガ基台203が交換装置500のツール交換モジュール510、510に対して取るべき位置姿勢を示している。すなわち、フィンガ交換動作の際、ハンド200、従ってフィンガ基台203はツール交換モジュール510、510の中間に位置に移動する。また、ハンド200、従ってフィンガ基台203、203の高さは、フィンガの装着部(30)であるメスアリ溝203a(案内部31)の高さと、第2フィンガ310のオスアリ溝310a(被支持部)の高さが一致するように制御する。また、当然ながら、装置基台511の平面に対して、フィンガ基台203、203の中心軸(あるいはハンド200の中心軸)が垂直となるようにハンド200、従ってフィンガ基台203の姿勢を制御する。
次に、図12〜18を参照して、交換装置500によってハンド200の操作部を第1フィンガ300から第2フィンガ310に交換する動作につき説明する。また、図19は、この交換動作手順を示したフローチャート図であり、経時的な制御過程についてはこの図19を参照する。なお、図19に示した手順は、制御装置600のCPU601によって実行可能な制御プログラムとして記述することができ、例えばROM602に格納しておくことができる。
また、以下では、説明を容易にするため、ハンド200の一部の構成部材については参照符号の図示や記述を省略し、説明は概ね1本のフィンガについて集中して行う。しかしながら、上記のような機構の対称性によって、他方のフィンガについても同様の動作により交換が行われるのはいうまでもない。
まず、ロボット装置20のアーム100の各関節を動作させることで、ハンド200を交換装置500に近づける(ステップS01)。このとき、第1距離センサ522により、ハンド200およびハンド200に取付けられた第1フィンガ300の位置を検知し、正しい交換位置に来たことを確認する(ステップS02)。図11はこの時のハンド200と交換装置500の位置関係を示している。
次に、図12に示すように、交換装置500のモータ521を駆動し、第2フィンガ310を保持したツール交換モジュール510を移動させ、第2フィンガ310を第1フィンガ300に近づける(ステップS10)。このとき、第2距離センサ523により検知される第2フィンガ310との位置情報を用いて、交換装置500のモータ521を制御することができる。
なお、図12〜図18では上記のように交換装置500の片側に相当するツール交換モジュール510に関する動作を示している。反対側のツール交換モジュール510の動作は図12〜図18の図示と左右対象であり、図12〜図18の図示の左右を反転させれば、反対側のツール交換モジュール510廻りの動作を読み取ることができる。
ツール交換モジュール510によって図12の左方から第2フィンガ310を移動し、第1フィンガ300に近づける。この時、まず第2フィンガ310の根元部(把持部311と反対側の先端)がメスアリ溝203a(案内部31)の下部の開口部203e(図3)に進入し、先端部がラッチ204の傾斜部204aに接触する(ステップS11)。このとき、第1フィンガ300のオスアリ溝300aと、第2フィンガ310のオスアリ溝310aとは、まだ互いに非接触の状態である。なお、第1支持板516は、フィンガ基台203の中央部の空間より小さい寸法から形成されるため(図9)、開口部203eの空間を通過することができる。
さらに、ツール交換モジュール510を移動させ、第2フィンガ310を第1フィンガ300に近づくと、第2フィンガ310の先端がラッチ204の左端のカム面に乗り上げ、図中上方向へ押圧する。これにより、図12〜図13に示すようにコイルばね205が圧縮され、ラッチ204がガイドシャフト206に沿って押し上げられる。これにより第1フィンガ300は非拘束状態に移行し、フィンガ基台203のメスアリ溝203aに沿って移動可能となる(ステップS12)。そして、第1フィンガ300のオスアリ溝300aと、第2フィンガ310のオスアリ溝310aとが接触することで、第2フィンガ310により押圧された第1フィンガ300が図中右方向に移動する。
さらに、第2フィンガ310が第1フィンガ300の方向に近づくと、フィンガ交換過程は図14、図15のように遷移する(ステップS13)。即ち、図14〜図15に示すように、第1フィンガ300はフィンガ基台203のラッチ204から押し出され、非拘束状態となる。このとき、ラッチ204の固定部204cの内側に傾斜が設けられているため、第1フィンガ300が引っかかることなく押し出され、離脱する。以上のようにして、第1フィンガ300が案内部(31)から押し出され、排出されると、ラッチ204の固定部204cには他のフィンガを固定できる状態となる。
そして、図15のように第2フィンガ310の端部が固定部204cと噛み合う位置に来ると、押し上げられていたコイルばね205の伸長し、ラッチ204が押し下げられ、第2フィンガ310が装着位置において拘束状態に移行する(ステップS14)。このとき、第1フィンガ300の場合と同様に、コイルばね206の弾性力によってラッチ204が第2フィンガ310を図15中の下方向に押圧される。これにより、凸部203bおよび凹部310bが嵌合した状態となり、第2フィンガ310が拘束(位置決め)状態に制御される。
このようにして、たかだか1自由度直動の交換装置500とハンド200(アーム100)の相対移動によって、第1フィンガ300を非拘束状態に、あるいは第1フィンガ300を拘束状態に制御できる。即ち、この動作によって、第1フィンガ300を第2フィンガ310に交換することができる。
CPU601は、第2フィンガ310が装着位置で拘束状態となっているか否かを、例えば第2距離センサ523の検出信号の変化によって検出することができる。第2フィンガ310が装着位置で拘束状態、即ち、第2フィンガ310が正しく装着されていることを確認(ステップS20)できた場合、CPU601はツール交換モジュール510を停止させる(ステップS21)。
その後、アーム100の各関節を動作させ、例えば図16のように上方に退避させることにより、ハンド200をツール交換モジュール510から遠ざける(ステップS30)。この動作により、第1フィンガ300は保持されていない状態のため、図16に示すように第2フィンガ310の屈曲部位によって蹴り出される形で第2支持板517に向かって倒れていき、第2支持板517に支えられた状態となる。このとき、第1フィンガ300が倒れる方向は、第1フィンガ300を両側からガイドする保持壁514、514により制限される(図10参照)。
さらにツール交換モジュール510を右方に移動させると、図17に示すように第1フィンガ300が第2支持板517に支持された状態から、保持壁514、514の空間内で第1フィンガ300の傾きが戻される(ステップS31)。この動作を続けると、ツール交換モジュール510の第1支持板516に近づいていく。そして、図18のように第1フィンガ300と保持部513に設けられた傾斜部513cと当接すると、傾斜部513cによって第1フィンガ300の傾きが保持位置の姿勢に復帰する。
ツール交換モジュール510が図18の位置まで移動し、ツール交換モジュール510に第1フィンガ300が収納された状態は第2距離センサ523により検出される(ステップS40)。この状態を検出すると、CPU601はツール交換モジュール510を停止させ(ステップS41)、フィンガ交換手順が完了となる(ステップS99)。
なお、ツール交換モジュール510を初期位置(第2支持板517と反対側の端部)に移動させておくことで、第1フィンガ300に再度交換することが可能となる。上記と同様の制御および動作によって、再度、第1フィンガ300をハンド200に取付けることが可能である。以上のようにして、異なる操作部(フィンガ)を繰り返し交換して用いることができる。
図1に示したようにツール交換モジュール510を2つ、あるいはそれ用意しておくことにより、対応する数の(異なる)フィンガを交換用に用意しておくことができる。なお、この場合、上述の交換制御によって操作部としてのフィンガを次々に交換していくことにより、特定のフィンガが保持されるツール交換モジュール510が次々に変化していく可能性がある。これに対応するには、ツール交換モジュール510、510…と初期状態でそれらに保持されているフィンガの種類を、例えばRAM603などに用意したテーブルメモリなどに記録しておけばよい。そして、フィンガ交換の進行に応じて、CPU601が交換された特定のフィンガの保持位置に応じてテーブルメモリのデータを更新する、といった管理によってワークや工程の進行に応じて適切なフィンガを操作部として装着することができる。
従来の交換装置であれば、操作部としてのツール(もしくはフィンガ)を交換するための動作として、アーム(もしくはハンド)に取付けられている操作部を取外すための動作と、異なる操作部を取付けるための複数の動作が必要であった。このため、従来構成では交換に時間がかかる問題があった。特に、垂直多関節アームを動作させる場合には、外部環境との接触や、交換装置との衝突防止などを考慮し、動作速度を制限せざるを得ないため、交換時間が増大する傾向があった。
これに対し、本実施例によれば、フィンガ基台203には、フィンガの被支持部(オスアリ溝300a、310a)が通過できるように案内するメスアリ溝203aによる案内部31を設けている。さらに、案内部31を被支持部が通過することによって、そのカム面で動作するラッチによって案内部31の内部の装着位置でフィンガの被支持部(オスアリ溝300a、310a)を拘束または非拘束状態に制御するロック機構32を設けている。
そして、上記の構造により、たかだか1自由度直動の交換装置500とハンド200(アーム100)の相対移動によって、操作部としてのフィンガの取外しおよび取付け、すなわち、フィンガ交換を一連の動作で行うことができる。これにより、フィンガ交換を伴う自動段取りの所要時間を大幅に短縮することができる。しかも、本実施例によれば、フィンガ基台203のメスアリ溝203aの凸部203bと、第1、第2のフィンガ(300、310)に設けたオスアリ溝(300a、310a)の凹部(300b、310b)を噛合させてフィンガの位置決めを行う。このため、繰り返し、位置決め精度の高いフィンガ交換を行うことができ、フィンガ(操作部)によって精度よくワークを取り扱うことができる。
なお、本実施例では、2本のフィンガを交換する作業について説明したが、アームもしくはハンドに取付けられるツールもしくはフィンガの数や、装置の設置スペースなどの制約条件が許す限り、配置する数に制限はない。また、ツールおよびフィンガの種類など、本発明の範囲から逸脱しない範囲で、種々の変更または修正を加えることが可能であり、本発明は上記実施例に示した特定の構成に限定されるものではない。
<実施例2>
上記実施例では、交換する操作部としてフィンガを例示した。しかしながら、上述の操作部(フィンガ)の被支持部(オスアリ溝310a)を案内する案内部31、操作部(フィンガ)を拘束ないし非拘束状態に制御するロック機構32を備えた装着部30の構造は、エンドエフェクタの交換にも用いることができる。この点は、交換装置についても同様である。
本実施例では、上述のハンド200に相当するエンドエフェクタ(ツール)を交換するための構成を例示する。また、本実施例では、ツール交換動作を行う際に、アーム100を特定の姿勢にすることで交換動作を容易に行うための構成についても述べる。なお、以下の本実施例では、上記実施例1と同一ないし相当する部材には同一参照符号を用い、その詳細な説明は省略するものとする。また、本実施例のロボットシステムにおいては、制御系などを含め、本実施例で図示しない構成についても、上記実施例1と同様の構成が設けられているものとする。
図20は、ロボットシステム10のロボット装置20、およびツール交換モジュール510を備えた交換装置500の部分を示している。図20では、ロボット装置20は図1の左方に相当する方向から図示されている。ロボット装置20のアーム100が、7つのリンク101〜107と、リンク101〜107を揺動または回動可能に連結する6つの関節111〜116から構成されている点は、本実施例においても同様である。
本実施例では、実施例1のエンドエフェクタ(ツール)、即ちハンド200に相当する第1作業ツール400がアーム100に取付けられている。この第1作業ツール400は、交換装置500を用いて、交換装置500のツール交換モジュール510に保持されている第2作業ツール410と交換することができる。即ち、本実施例では、エンドエフェクタ(ツール)としての第1作業ツール400を交換することができる。
第1作業ツール400および第2作業ツール410は、図20では概略図示となっているが、例えば塗装用のスプレーガン、溶接用ノズル、電動ドライバなどであり、用途に応じて任意の構成のものを用いることができる。
なお、図21に示すように、ツール交換モジュール510にハンド200を保持させておき、第2作業ツール410の場合と同様の動作によって、ハンド200を第1作業ツール400と交換することもできる。
図20では、第2作業ツール410は交換装置500のツール交換モジュール510に保持されている。図20では、ツール交換モジュール510の図示は概略図示となっているが、上記実施例1と同様に構成されているものとする。
一方、アーム100の最先端のリンク107には、図3で示したフィンガ基台203と同様にコの字形状を成すツール基台401を介して、第1作業ツール400が取付けられている。
ツール基台401は、上記実施例1におけるフィンガ基台203に相当するものである。このツール基台401は、図3で示したフィンガ基台203と同様の構成を有する。即ち、ツール基台401は、それぞれ上述のメスアリ溝(203a)、その凸部(203b)、コイルばね(205)、ガイドシャフト(206)、ラッチ(204)が同様に設けられているものとする(いずれも図示省略)。即ち、ツール基台401には、案内部(31)、操作部(ツール)を拘束ないし非拘束状態に制御するロック機構(32)から成る装着部(30)の構造が設けられているものとする。
一方、第1作業ツール400、第2作業ツール410の被支持部の構造も上記実施例1と同様である。即ち、これらのツールの上部には、図6で示した第1フィンガ300と同様に、それぞれ不図示のオスアリ溝(300a)とその凹部(300b)が同様に設けられる。なお、第1作業ツール400または第2作業ツール410は、上記ツール基台401の装着部(30)を介して、これらツールの中心軸がリンク107を回動支持する関節116の回転軸と一致するよう装着される。
交換装置500のツール交換モジュール510は、第2作業ツール410(または第1作業ツール400)を保持するための保持部(513)の形状などは変更されるが、構成要素および動作は第1の実施例と同様であるものとする。
以上のような構成により、本実施例においても、ツール交換モジュール510をアーム100に対して相対移動(矢印)させることにより、第1作業ツール400を離脱させ、第2作業ツール410をツール基台401の装着部(30)に装着することができる。すなわち、本実施例においても、1自由度直動の交換装置500とハンド200(アーム100)の相対移動によって、操作部としてのツールの取外しおよび取付け、すなわち、ツール交換を一連の動作で行うことができる。
また、図20は、ツール交換を行う時のツール交換モジュール510の移動方向と、その時のアーム100が取る姿勢を図示している。即ち、図示のように、アーム100は、関節115は、その回転軸がツール交換モジュール510の駆動方向に対して平行、また、関節116は、その回転軸がツール交換モジュール510の駆動方向と直交する角度を成すような姿勢を取っている。
一方、ツール基台401の案内部(31)の案内方向は、(上記実施例1と同様に)図20の左右方向であって、この方向(矢印)にツール交換モジュール510を移動させることにより、アーム100に対するツール交換のための相対移動を行う。
そして、図20のようなアーム100の位置姿勢で、実施例1で説明したようなツール交換動作が行えば、アーム100は作業ツール400およびツール基台401を介して、ツール交換モジュール510から反力を受けることになる。しかしながら、このツール交換モジュール510から反力の方向に対して、関節115の回転軸は平行であり、関節116の回転軸は直交しているため、上記反力の影響でアーム100の各部の姿勢が変化してしまうことがない。
即ち、アーム100の(各)関節を、ツール基台401の案内部(31)の案内方向と平行または直交するように制御する、つまり、ツール交換モジュール510の交換動作時の反力を(各)関節を回動させるような方向と異なる方向に取る。即ち、本実施例によれば、ツール(操作部)を装着部(30)に装着、または装着部(30)から離脱させる場合、案内部(31)の案内方向がアーム100の関節を回動させる方向と異なる方向となるようアーム100の位置姿勢を制御する。
これにより、ツール交換モジュール510の交換動作時の反力によって、アーム100の各部の姿勢が変化してしまうことがなく、ツール基台401の装着部30を作動誤差なく動作させ、スムーズにツール交換を行うことができる。
一般に、垂直多関節アームにおいては、手先の関節ほどモーメント剛性が低い。このため、各関節が静止している状態においても、回転方向に力を受けると、ねじれによる弾性変形や、駆動機構のバックラッシュなどにより、手先位置が変化してしまう可能性があり、その場合、ツール交換を高精度で行うことが困難になる。
しかしながら、ツール交換時にツール交換モジュール510の相対移動方向に対してアーム100の(各)関節に図20のような姿勢を取らせれば、ツール交換時の反力によってアームの手先位置がずれることがない。このようなアーム100の位置姿勢の制御により、精度よくツール交換作業を行うことができる。なお、本実施例では、ツールの取付け方向とアームの手先関節の回転軸とが平行もしくは直交する構成としたが、アームの手先関節が回転しづらい姿勢を取るよう制御すればよく、本発明は上記実施例に示した特定の構成に限定されるものではない。
<実施例3>
本実施例では、主に装着部30の案内部31の一部を変更した異なる構成例を示す。以下では、上述の説明済みの各部材については、以下、参照する図中においては、同一の参照符号を用い、その詳細な説明は省略する。これらの部材については、特に言及しない限り、上述の実施例の説明がそのまま通用する。
例えば、上述の実施例1において、案内部31は、フィンガ基台203のメスアリ溝203aを含み、一方、操作部(300、310、400、410)の被支持部はオスアリ溝310aを含む。案内部31のメスアリ溝203aは、その一方の端部から他方の端部まで、被支持部(オスアリ溝310a)が通過するよう案内する。
メスアリ溝203a、オスアリ溝310aの嵌合構造は、それ自体、案内部31であるメスアリ溝203aの端部から他方の端部まで、被支持部(オスアリ溝310a)が所定の軌道(案内軌道)を通って移動できるよう案内する機能を有する。
そして、さらに、上述の実施例では、特に所定の装着位置(ラッチ204の固定部204c)の前後において、メスアリ溝203a、オスアリ溝310aの間には、凸部203b、凹部310bの凹凸構造を設けている。このような構造により、特に所定の装着位置(ラッチ204の固定部204c)の前後において、オスアリ溝310aがメスアリ溝203aに対して相対的に移動する軌道、即ち案内軌道をより高精度に制御することができる。
上述の実施例1では、図3に示すように、フィンガ基台203の両側のメスアリ溝203a、203aのそれぞれ上下両側に、計4箇所の凸部203bを形成していた。同様に、第1フィンガ300、および第2フィンガ310のオスアリ溝300a、およびオスアリ溝310aのそれぞれについても、上記4つの凸部203bと噛み合う計4箇所の凹部300bを設けている。
しかしながら、上記実施例において、案内部(31:メスアリ溝203a)と、被支持部(オスアリ溝310a)の間に設けた被支持部(オスアリ溝310a)のための案内軌道を画成する凹凸構造(上記の300b、203b)は必ずしも設けなくてもよい。例えば、メスアリ溝203a、オスアリ溝310aの嵌合構造の工作精度などのコントロールによって、この両者の嵌合構造それ自体のみで、充分精度の高い案内軌道の制御が可能である場合も考えられる。
また、案内部31によって案内される被支持部(オスアリ溝310a)のための案内軌道を画成する凹凸構造(上記の300b、203b)は必ずしも上述の実施例ほど厳重な構成とする必要はない可能性がある。そこで、以下では、被支持部(オスアリ溝310a)のための案内軌道を画成する凹凸構造(上記の300b、203b)を簡略化した構成を例示する。
例えば、案内部31の構成として、少なくとも1組の凹凸構造、即ち、凹部300bと、凸部203bと、が噛み合う箇所があれば、一定方向のガタツキを抑制することができ、これにより、案内部31の案内軌道を制御する精度は充分確保できる可能性がある。このように、そして、凸部203bと凹部300bを必要最低限の個数(例えば1組)にすれば、部品加工の精度を緩和し、低コストで案内機構を構成することができるという利点が生じる。
ここで、図22に、案内部31として、凸部203bと凹部300bが噛み合う箇所を1組だけとした構成を示す。また、図23に、図22のロボットシステムのハンドにフィンガが取付けられた状態の正面図を示す。すなわち、メスアリ溝203aの凸部203bは一箇所だけにし、他の箇所は平面部203dとして構成する。また、フィンガ基台203についても、オスアリ溝300aの凹部300bは一箇所だけとし、他の箇所は平面部300dとする。このような構成により、案内部31としての機能を保持した上で、例えば部品加工に係るコストダウンが可能となる。上記構成は、フィンガにかかる荷重が一定方向に限定される場合などにおいて好適に実施することができる。
なお、フィンガの固定時は、ロック機構32によりオスアリ溝300aがメスアリ溝203aに押付けられる。そのため、図22および図23に示す位置(図下側)に凹部300bおよび凸部203bの組を形成するのは、ガタツキを抑制しつつ案内軌道を制御できる効果があり、好ましい構成と言える。ただし、凹凸構造、即ち、凹部300bおよび凸部203bの組合せの個数や配置については、案内部31としてフィンガを案内する役割を果たすことができる範囲内で任意に当業者において変更して構わない。
また、実施例1では、図4および図6に示すように、ラッチ204の固定部204cと、第1フィンガ300の上端部300cとが嵌合することで、第1フィンガ300を固定するようにしている。実施例1では、このような構成によりラッチ204によるフィンガの交換時の移動方向(図6の左右方向)における位置決めを行っている。
ラッチ204の固定部204cと第1フィンガ300の上端部300cとの嵌合部が直線形状の場合、嵌合部のすき間が小さすぎると、嵌合の途中で引っ掛かりが生じてしまい、端部まで嵌合ができなくなる可能性がある。このため、上述の実施例では、嵌合部に0.1mm程度の隙間(クリアランス)を設ける構成を例示したが、このように確保された隙間によって、フィンガの位置ずれが生じる可能性もある。
この点に鑑み、例えば、図24、図25に示すように、ラッチ204(装着部)にすり鉢状のテーパ部204dを設け、また、第1フィンガ300の上端部300c(被支持部)にはテーパ部304dを設ける構成が考えられる。テーパ部204d、304dは、互いに凹、凸で嵌合できる相補形状であり、例えば図示のようにテーパ部304dは、テーパ部204dのすり鉢凹形状に沿った先細りの凸形状とする。ここで、図24は図22のロボットシステムのハンドのA−Aに沿った断面を示した断面図、図25は、ロボットシステムのハンドにフィンガが取付けられた状態の図23のB−Bに沿った断面を示した断面図である。
図24、図25のようにテーパ部204d、304dを用いたロック機構によれば、ラッチ204の固定部204cと第1フィンガ300の上端部300cを、引っ掛かりを生じることなく端部まで嵌合させることが可能である。また、嵌合の完了後にはすき間が存在せず、位置ずれが生じることもなくなる。また、ラッチ204を取外す時も、滑らかに嵌合を解除することができる。また、ラッチ204によるロック、アンロックの作動がスムーズになることによって、凹部として構成された固定部204cの深さを、例えば図4、図6に示した構造よりも図24、図25のように大きくできる。これにより、装着時の操作部(例えばフィンガ300)の安定性を向上することができる。
なお、図25では詳細を図示していないが、第1フィンガ300の上端部300cの角部(テーパ部の端部)に小さなR形状や面取り部を設けるようにしてもよい。このような構成によっても、ラッチ204とフィンガ(300)のより滑らかに嵌合が可能となる。
もちろん、本実施例3の構成を採用した場合でも、実施例1および実施例2で述べたようなフィンガ交換、ツール交換、またはハンド交換の動作、あるいはそのための制御は、上述の通り、同様に実施が可能である。
以上、実施例1〜3で示したように、操作部(例えばフィンガ300)を着脱するための案内部31(メスアリ溝203a)と、被支持部(オスアリ溝310a)の嵌合構造を設けることができる。そして、この嵌合構造には、実施例1〜3で示したように、さらに案内軌道を規制する凹凸構造(凹部300b、凸部203b)を設けることができる。
このように、操作部(例えばフィンガ300)の着脱のため、例えば比較的規模の大きな嵌合構造(案内部31〜被支持部(オスアリ溝310a))に、比較的規模の小さな嵌合構造(凹凸構造:凹部300b、凸部203b)を組合せることができる。これにより、特に所定の装着位置(ラッチ204の固定部204c)の前後において、案内部31(メスアリ溝203a)によって規定される案内軌道を、高精度に制御することができる。このため、上述の交換装置の構成において、操作部(例えばフィンガ300)をスムーズかつ確実に着脱することができる。
また、例えば嵌合構造(案内部31〜被支持部(オスアリ溝310a))に、凹凸構造(凹部300b、凸部203b)を組合せる場合、その配置場所や数については、本実施例3の例示から明らかなように、当業者が任意に変更可能である。また、嵌合構造(案内部31〜被支持部(オスアリ溝310a))の工作精度などの条件によっては、凹凸構造(凹部300b、凸部203b)は必ずしも配置しなくてもよい。また、これら凹凸構造の凹、凸の関係は、必ずしも添付図面の例示である必要はなく、例えば図示の凹凸構造は凹、凸の形状の関係を逆転させた構造に置換することができる。この点は、例えば、ラッチ(204など)、フィンガの上端部(300cなど)の凹凸関係についても同様である。