JP2016138304A - メッキ部品の製造方法及びメッキ部品 - Google Patents

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Abstract

【課題】透明樹脂を用いた成形体上に高い密着強度を有するメッキ膜が形成されたメッキ部品の製造方法を提供する。
【解決手段】
メッキ部品の製造方法であって、透明なガラスフィラー含有樹脂を含む樹脂材料を成形し、成形体を得ることと、前記成形体の表面の一部にレーザー光を照射することと、前記レーザー光を照射した成形体の表面に無電解メッキ触媒を付与することと、前記無電解メッキ触媒を付与した成形体の表面に無電解メッキ液を接触させ、前記レーザー光を照射した部分に無電解メッキ膜を形成することを含む。
【選択図】 図1

Description

本発明は、選択的にメッキ膜が形成されたメッキ部品の製造方法及びメッキ部品に関する。
近年、射出成形体等の表面に電気回路を形成する立体回路成形部品は、MID(Molded Interconnect Device)と呼称され、その応用範囲が急速に広まっている。MIDは、小型で複雑形状の成形体の表面に回路を形成できるため、電子部品の軽薄短小のトレンドに合致している。例えば、スマートフォンの筐体の表面にアンテナ等を形成した小型部品は中国で大量生産されている。また、自動車分野でもセンサーや照明部品へのMIDの適用が欧州を中心に活発に検討されている。現在の応用先は不透明な樹脂を用いた場合のみであるが、透明樹脂への適用が可能になればウエラブル機器、光学機器への展開が期待される。
成形体に立体的な回路を形成する方法は2色成形を利用した2ショット法など多種多様であるが、最も普及している手法はLPKF社がライセンスするLDS法(Laser Direct Structuring)である(例えば、特許文献1及び非特許文献1)。LDS法では、まず銅錯体を熱可塑性樹脂に練り込んで射出成形し、次に該銅錯体を含有した成形体表面にレーザー描画を行う。レーザー光照射により銅錯体が金属化して無電解銅メッキの触媒活性が発現し、更に、レーザー光照射部分が粗化される。これにより、レーザー描画部分へのメッキが可能となる。
LDS法のように触媒を成形体中に練り込む方法とは異なる方法も提案されている(例えば、特許文献2)。特許文献2には、短波長のフェムト秒レーザー光を用いて成形体表面に官能基を付与する方法が開示されている。成形体表面が極性基を有するので、メッキ膜との化学的な接着強度が発現する。特許文献2の方法によれば、透明樹脂であるシクロオレフィンポリマーにもメッキ膜を形成することができる。
欧州特許第1274288号公報 特開2012−136769号公報 ウォルフガング・ジョン、「生産コストを削減する3次元コンポーネント」、Industrial Laser Solutions Japan、株式会社イーエクスプレス、2011年9月号、p.18‐22
しかし、LDS法は銅錯体を大量に樹脂に練り込むため樹脂が着色し、透明樹脂を用いて透明なメッキ部品を製造することは困難であった。
一方で、特許文献2では、上述のように透明樹脂にもメッキ膜を形成することができる。しかし、特許文献2の方法は高価な短波長レーザー加工機を必要とし、このことが、該方法の普及の妨げとなっている。また、自動車の電子部品は高い信頼性が要求されるため、メッキ膜は高い密着強度が求められる。自動車部品に要求されるメッキ膜の密着強度を得るためには、化学的接着強度でのみでは足りず、物理的接着強度も必要となる。物理的接着強度を得るために、例えば、メッキ膜が形成される成形体表面の粗化が行われる。レーザー光を用いて成形体表面を粗化する場合、成形体が単独材料から形成されていると十分に粗化できないため、成形体は無機フィラー等を含有することが望ましい。しかし、無機フィラー等を含有すると、成形体の透明性を維持することが困難であった。したがって、特許文献2に開示される方法を用いて、物理的なアンカー効果を利用した、高い信頼性を有する透明な電子部品を製造することは難しかった。
本発明は、これらの課題を解決するものであり、透明樹脂を用いた成形体上に高い密着強度を有するメッキ膜が形成されたメッキ部品の製造方法を提供する。また、簡易な製造プロセスにより所定パターン以外での無電解メッキ膜の生成を抑制し、所定パターンのみに無電解メッキ膜を形成できる、メッキ選択性の高いメッキ部品の製造方法を提供する。
本発明の第1の態様に従えば、メッキ部品の製造方法であって、透明なガラスフィラー含有樹脂を含む樹脂材料を成形し、成形体を得ることと、前記成形体の表面の一部にレーザー光を照射することと、前記レーザー光を照射した成形体の表面に無電解メッキ触媒を付与することと、前記無電解メッキ触媒を付与した成形体の表面に無電解メッキ液を接触させ、前記レーザー光を照射した部分に無電解メッキ膜を形成することを含むことを特徴とするメッキ部品の製造方法が提供される。
本態様において、更に、前記レーザー光を照射する前に、前記成形体の表面にヨウ素を付与してもよく、前記成形体の表面の一部にレーザー光を照射することにより、レーザー光を照射した部分からヨウ素を除去してもよい。また、前記成形体の表面にヨウ素を付与することが、ヨウ素と溶媒とを含むヨウ素溶液を調製することと、前記ヨウ素溶液に前記成形体を浸漬することを含んでもよい。
本態様において、前記樹脂材料が、更に、親水性付与材料を含み、前記親水性付与材料は、ガラスフィラー含有樹脂の吸水率より高い吸水率を有する樹脂であってもよい。前記親水性付与材料は、前記樹脂材料中に1重量%〜20重量%含まれてもよい。前記親水性付与材料は、非晶質ナイロンであってもよい。
前記成形体の表面の一部にレーザー光を照射することが、前記成形体の表面にレーザー描画することであってもよい。前記レーザー光の照射には、炭酸ガスレーザーを用いてもよい。また、前記レーザー光を照射することにより、前記レーザー光を照射した成形体の表面が粗化されてもよい。
本態様において、前記無電解メッキ膜が導電性を有していてもよく、更に、前記無電解メッキ膜が前記成形体上で電気回路を形成し、前記メッキ部品が電子部品であってもよい。更に、前記電子部品が、立体回路成形部品であってもよい。
本発明の第2の態様に従えば、メッキ部品であって、透明なガラスフィラー含有樹脂を含む成形体と、前記成形体の表面の一部に形成された無電解メッキ膜とを有し、前記無電解メッキ膜が前記成形体上で電気回路を形成することを特徴とするメッキ部品が提供される。本態様において、前記メッキ部品が、立体回路成形部品であってもよい。
本発明では、透明なガラスフィラー含有樹脂を含む成形体を成形し、成形体表面の一部にレーザー光を照射して、レーザー光を照射した部分に密着強度の高い無電解メッキ膜を形成することができる。これにより、本発明は、部分的にメッキ膜が形成された透明なメッキ部品を製造することができる。
図1は第1の実施形態で製造するメッキ部品の製造方法を示すフローチャートである。 図2(a)は実施例1において成形した成形体のレーザー描画部分のレーザー顕微鏡写真であり、図2(b)はレーザーを照射していない部分(レーザー非描画部分)のレーザー顕微鏡写真である。
図1に示すフローチャートに従って、透明樹脂を用いた成形体に所定パターンのメッキ膜が形成されたメッキ部品の製造方法について説明する。まず、透明なガラスフィラー含有樹脂を含む樹脂材料を成形し、成形体を得る(図1のステップS1)。
「透明なガラスフィラー含有樹脂」とは、ガラスフィラーを含有する樹脂であって、ガラスフィラーを含有した状態で透明な樹脂を意味する。本願明細書において、厚み1mmの成形体の波長400〜800nm(可視光域)における透過率が60%以上であるとき、該成形体を構成する材料を「透明」であると定義する。メッキ部品の透明性をより向上させる観点から、透明なガラスフィラー含有樹脂の上述の透過率は、65%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。
透明なガラスフィラー含有樹脂に含まれる樹脂(以下、適宜「ベース樹脂」と記載する)は、それ自身が透明な樹脂であり、ガラスフィラーを含有した状態で上述の透過率を有していれば特に限定されない。ベース樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂等を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルイミド、ポリエチレン、メチルペンテンポリマー、ABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合樹脂)、非晶質ポリアミド等を用いることができ、熱硬化樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等を用いることができ、光硬化性樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、透明ポリイミド、エポキシ樹脂等を用いることができる。これらの熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂は、それぞれ、単独で用いても、二種類以上を混合して用いてもよい。
ベース樹脂は、メッキ部品の用途に応じて選択することができる。例えば、ハンダリフロー耐性が要求される部品には、耐熱性の高い芳香族ナイロン(芳香族ポリアミド)、透明な熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂が適している。また、透明なMIDには、芳香族ナイロン(芳香族ポリアミド)、ABS樹脂及びポリカーボネート(PC)等を用いることができる。
ガラスフィラーは、ベース樹脂の透明性を大きく低下させず、ガラスフィラー含有樹脂が上述の透過率を有していれば特に限定されない。ガラスフィラー含有樹脂の透過率を高める方法としては、例えば特開2007‐153729号公報に開示されるように、ガラスフィラー中の無機成分の含有量を調整することにより、ガラスフィラーの屈折率をベース樹脂の屈折率に近づけるよう調整したり、可視光域でのガラスフィラーの吸収を抑制したりする方法が挙げられる。また、ガラスフィラーとベース樹脂との親和性を高めるために、カップリング剤を含む処理剤でガラスフィラーを表面処理してもよい。
ガラスフィラーは、ガラス繊維、ガラスパウダー、ガラスフレーク、ミルドファイバー又はガラスビーズ等の形態で用いることができる。特に、後述するレーザー光照射工程により成形体表面を粗化する効果が高いこと、ベース樹脂の機械的強度向上の効果が高いことから、ガラスフィラーは繊維状(ガラス繊維)であることが好ましい。
ガラスフィラー含有樹脂中に、ガラスフィラーは5〜50重量%含まれるこが好ましく、10〜40重量%含まれることがより好ましい。ガラスフィラーが5重量%以上含有されることにより、密着強度の高いメッキ膜を形成することができ、また、ガラスフィラーが50重量%以下で含有されることにより、ベース樹脂の透明性を維持できる。更に、ガラスフィラー含有樹脂は、透明性を損なわない範囲で、酸化防止剤等の周知の添加剤を含んでもよい。
透明なガラスフィラー含有樹脂としては市販品を用いてもよく、例えば、旭ファイバーグラス製、AFG TRGFPAMG10及びAFG GFPC MG20等を用いることができる。これらのガラスフィラー含有樹脂は、単独で用いてもよいし、その透明性を維持できる範囲で二種類以上を混合して用いてもよい。
透明なガラスフィラー含有樹脂を含む樹脂材料は、更に、ガラスフィラー含有樹脂よりも高い吸水率を有する樹脂である、親水性付与材料を含有することが好ましい。特に、ベース樹脂としてポリカーボネートやアモルファスポレオレフィン等の低吸水性の樹脂を用いる場合には、成形体が親水性付与材料を含有することでメッキ反応性及びメッキ選択性が向上する。一方、ベース樹脂として吸水率が1%以上のアクリル系樹脂や非晶質ナイロンを用いる場合には、必ずしも、親水性付与材料を用いる必要はない。また、親水性付与材料は樹脂であるので、ベース樹脂の機械的物性を損ねることがない。
本実施形態における吸水率は、例えば、ISO62に準拠して、材料を常温(23℃)の水中に24時間浸漬させた後の重量変化(%)として測定することができる。親水性付与材料の吸水率がガラスフィラー含有樹脂の吸水率よりも高いことから、親水性付与材料はベース樹脂よりも親水性が高い。親水性付与材料を含むことにより成形体の親水性(吸水率)が高まり、無電解メッキ液が浸透し易くなるのでメッキ反応性が向上する。また、後述するヨウ素付与工程を設ける場合には、ヨウ素溶液も成形体に浸透し易くなり、メッキ選択性が向上する。
ガラスフィラー含有樹脂の吸水率(WA1)に対する親水性付与材料の吸水率(WA2)の比率(WA2/WA1)は、1.2〜50であることが好ましく、2〜10であることがより好ましい。この範囲の比率を有していれば、成形体に十分な親水性を付与できる。
また、樹脂材料が親水性付与材料を含むことにより、樹脂材料から成形される成形体は、ベース樹脂と、親水性付与材料という融点の異なる2種類の樹脂成分を含むことになる。これにより、後述するレーザー描画部分の粗化が促進され、その上に形成されるメッキ膜の密着強度高めることもできる。
親水性付与材料は、その吸水率がガラスフィラー含有樹脂の吸水率よりも高い樹脂であれば特に限定されないが、メッキ部品の透明性を損なわないために、親水性付与材料自身が透明であることが好ましく、また、ベース樹脂と相溶することが好ましい。親水性付与材料としては、例えば、非晶質ナイロンやポリアミド系エラストマー等を用いることができる。特に、透明な非晶質ナイロンは、高い耐油性、耐薬品性を有しており、ベース樹脂の耐熱性や耐薬品性を向上させることができるため好ましい。これらの親水性付与材料は、単独で用いても、二種類以上を混合して用いてもよい。
樹脂材料は、主成分であるガラスフィラー含有樹脂のみから構成されていてもよいし、上述のように親水性付与材料を含んでもよい。更に、本実施形態の樹脂材料は、必要に応じて汎用の添加剤を含んでもよい。メッキ部品の透明性の観点から、樹脂材料中(成形体中)にガラスフィラーは、1〜30重量%含まれることが好ましく、3〜10重量%含まれることがより好ましい。親水性付与材料は1〜20重量%含まれることが好ましく、2〜5重量%含まれることがより好ましい。成形体中の親水性付与材料の含有量が1重量%以上であると成形体を十分に親水化でき、20重量%以下であるとベース樹脂の透明性を大きく損なうことがない。
透明なガラスフィラー含有樹脂を含む樹脂材料は、ベース樹脂の種類に応じて、汎用の射出成形方法や押出成形方法等により成形することができる。
次に、本実施形態では、成形体表面にヨウ素を付与する(同、ステップS2)。ヨウ素付与工程を設けることで、メッキ選択性を更に向上させることができる。
成形体の表面にヨウ素を付与する方法は、特に限定されない。例えば、ヨウ素溶液を成形体に塗布してもよく、又はヨウ素溶液に成形体を浸漬してもよい。ヨウ素付与の均一性と作業の簡便性の観点から、ヨウ素溶液に成形体を浸漬する方法が好ましい。成形体表面に付与されたヨウ素は、成形体に浸透すると推測される。成形体が親水性付与材料を含む場合は、更にヨウ素溶液と共にヨウ素が成形体に浸透し易くなる。
ヨウ素溶液中のヨウ素分子(I)の配合量(ヨウ素濃度)は、特に限定されないが、ヨウ素濃度が低過ぎると成形体にヨウ素を浸透させることが困難になり、ヨウ素濃度が高過ぎると成形体に残存するヨウ素が多くなり、メッキ膜形成後に該メッキ膜を腐食する虞がある。したがって、ヨウ素溶液中のヨウ素濃度は、用いる成形体へのヨウ素の浸透し易さに応じて決定することができるが、例えば、0.01〜12重量%とすることが好ましい。
ヨウ素溶液に用いる溶媒は、ヨウ素が溶解する溶媒であり、且つ成形体を変質させない溶媒であれば特に限定されない。例えば、水、アルコール、及びそれらの混合物が好ましい。特に成形体が親水性付与材料を含む場合、水やアルコールを溶媒に用いることで、ヨウ素溶液を成形体に浸透し易くすることができる。アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール等を用いることができる。また、ヨウ素溶液に用いる溶媒としては、ヨウ素溶液の成形体への浸透性を向上させるために、セルロルブ系やエーテル系の低表面張力の溶媒を用いてもよい。
ヨウ素溶液は、ヨウ素分子(I)と共にヨウ化物イオン(I-)を含むことが好ましい。例えば、ヨウ素溶液が、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化アンモニウム等のヨウ化物塩を含有することにより、ヨウ素溶液は、これら塩由来のヨウ化物イオン(I-)を含むことができる。ヨウ素溶液中において、ヨウ化物イオン(I-)はヨウ素(I)と結合して三ヨウ化物イオン(I -)を形成すると推測される。これにより、ヨウ素が溶媒に溶解し易くなり、また、ヨウ素の成形体への浸透性も向上する。ヨウ素溶液中のヨウ化物塩の配合量は、ヨウ素分子(I)濃度や成形体の種類に応じて適宜決定することができるが、例えば、0.03〜40重量%とすることができる。
更に、本実施形態のヨウ素溶液は、成形体への親和性を向上させるために界面活性剤を含んでもよい。また、ヨウ素溶液は、色素やカーボン材料であるレーザー光吸収材料を含有してもよい。これにより、ヨウ素溶液が浸透した成形体は、後述するレーザー光照射工程において、レーザー光等の光を吸収して熱を発生し易くなる。本実施形態のヨウ素溶液は、上述したヨウ素、溶媒、更に、必要に応じて、ヨウ化物塩、界面活性剤等を従来公知の方法により混合して調製することができる。
成形体を浸漬するときのヨウ素溶液の温度は特に限定されないが、例えば、ヨウ素の成形体への浸透を促進する観点からは室温以上、80℃以下が好ましい。成形体のヨウ素溶液への浸漬時間は、ヨウ素濃度や成形体の種類に応じて適宜決定できるが、例えば、10秒〜1時間が好ましい。
尚、成形体へ浸透したヨウ素は、成形体中において、ヨウ素分子(I)、酸化数-Iの状態(I-)、更に、これらの結合した状態(I -)が混在した状態で存在していると推測される。
次に、ヨウ素が付与された成形体の表面の一部にレーザー光を照射する(図1のステップS3)。レーザー光を照射する方法としては、レーザー光を成形体表面に所定パターンに従って照射する方法(レーザー描画)が挙げられる。レーザー光の照射された部分は加熱され、ベース樹脂や親水性付与材料等の樹脂成分のみが選択的に溶融し、繊維状のガラスフィラーが表面に露出する。これにより、レーザー光照射部分は、レーザーを照射していない部分(レーザー光非照射部分)と比較して粗化される。更に、成形体が親水性付与材料を含む場合には、ベース樹脂と、親水性付与材料の融点が異なるために、レーザー描画部分粗化が促進される。
更に、レーザー光の照射された加熱部分に存在するヨウ素は、昇華して成形体表面から除去される。したがって、ヨウ素が付与された成形体の表面に所定パターンのレーザー描画を行うことにより、ヨウ素が浸透して残存しているヨウ素浸透部分と、所定パターンのヨウ素除去部分とが形成される。
レーザー光は、ベース樹脂の種類に応じて、例えば、COレーザー、短波長レーザー(193〜400nm)等のレーザー装置を用いて照射することができる。中でも、COレーザー(炭酸ガスレーザー)は、透明な樹脂が吸収し易いレーザー光を照射することができ、且つ汎用のレーザー装置であるため好ましい。
次に、レーザー光を照射した成形体の表面に無電解メッキ触媒を付与する(図1のステップS4)。無電解メッキ触媒としては、無電解メッキ触媒能を有するものであれば任意のものを用いることができるが、例えば、Pd、Ni、Pt、Cu等の金属微粒子、金属錯体、金属アルコキシド等を用いることができ、中でも、触媒活性能が高いPdを含む無電解メッキ触媒が好ましい。
無電解メッキ触媒を成形体表面に付与する方法は特に限定されない。例えば、無電解メッキ触媒を溶媒に溶解又は分散させた触媒液を調製し、その触媒液を成形体に塗布する、又は触媒液に成形体を浸漬することにより、成形体の表面に無電解メッキ触媒を付与してもよい。触媒付与の均一性の観点からは、触媒液に成形体を浸漬する方法が好ましい。
触媒液に用いる溶媒は、触媒を溶解又は分散できる溶媒であれば特に限定されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素等を用いることができる。炭化水素としては、市販の高沸点溶剤(アイソパー、エクソンモービル社製)等を用いてもよい。触媒液に用いる無電解メッキ触媒は、メッキ触媒活性の高さから、パラジウム錯体が好ましく、具体的には、テトラクロロパラジウム酸ナトリウム、テトラクロロパラジウム酸カリウム、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、アセチルアセトナトパラジウム(II)、ヘキサフルオロアセチルアセトナトパラジウム(II)金属錯体等を用いることができる。触媒液中の無電解メッキ触媒の配合量(触媒濃度)は、例えば、0.01〜5重量%とすることができる。
無電解メッキ触媒を成形体表面に付与する他の方法としては、市販の無電解メッキ用触媒液を用いた汎用の方法、例えば、センシタイザー・アクチベータ法やキャタライザー・アクセラレータ法が挙げられる。センシタイザー・アクチベータ法では、まず、無電解メッキ触媒が吸着し易くなるように、例えばSn2+を含む液で成形体の表面を処理し(センシタイザー処理)、次に、無電解メッキ触媒(例えば、Pd2+)を含む液に成形体を浸漬する(アクチベータ処理)。キャタライザー・アクセラレータ法では、まず、無電解メッキ触媒を含む液(例えば、Sn2+とPd2+の混合によって得られるパラジウムコロイド液)に成形体を浸漬し(キャタライザー処理)、次に成形体を塩酸溶液等に浸せきしてメッキ触媒の金属を成形体の表面に析出させる(アクセラレータ処理)。
次に、無電解メッキ触媒を付与した成形体の表面に、無電解メッキ液を接触させる(図1のステップS5)。これにより、成形体表面のレーザー光を照射した部分に無電解メッキ膜を形成する。無電解メッキ液としては、目的に応じて任意の汎用の無電解メッキ液を使用しできるが、触媒活性が高く液が安定であるという点から、無電解ニッケルリンメッキ液が好ましい。
上述のように、所定パターンのレーザー光照射部分では、樹脂成分のみが選択的に溶融して繊維状のガラスフィラーが表面に露出し、成形体表面が粗化されている。そして、メッキ触媒付与工程(図1のステップS4)により、レーザー光照射部分はメッキ触媒が多く担持して無電解メッキ反応性が向上している。このため、成形体の表面に無電解メッキ液を接触させると、所定パターンのレーザー光照射部分のみに選択的にメッキ膜を形成することができる。そして、レーザー光照射部分は粗化されているため、この上に形成される無電解メッキ膜は物理的なアンカー効果により高い密着強度を有する。
更に、本実施形態では、所定パターンのレーザー光照射部分は加熱によりヨウ素が除去され(ヨウ素除去部分)、レーザー光非照射部分にはヨウ素が浸透して残存している(ヨウ素浸透部分)。そして、レーザー光非照射部分では、ヨウ素の働きのよりメッキ膜の成長が抑制され、成形体表面におけるメッキ選択性が更に向上する。この理由は定かではないが、ヨウ素浸透部分においては、無電解メッキ触媒がヨウ素と直接反応して被毒するか、又は、ヨウ素が無電解メッキ触媒と直接反応せずとも、触媒付与工程のいずれかの段階において、ヨウ素が、無電解メッキ触媒が触媒能を発揮することを妨げると推測される。一方、ヨウ素除去部分にはヨウ素が存在しないため、無電解メッキ膜が生成する。これにより、本実施形態では、簡易な製造プロセスにより、高いメッキ選択性が得られる。
更に、成形体が親水性付与材料を含む場合、成形体の親水性(吸水率)が高まり、ヨウ素が成形体に浸透し易い。これにより、成形体表面のヨウ素浸透部分において、無電解メッキ膜の形成を抑制する効果を高めることができる。一方、ヨウ素が存在しないヨウ素除去部分では、親水性付与材料により成形体表面の親水性(吸水率)が高まり、メッキ反応性を高めることができる。このように、本実施形態では、成形体が親水性付与材料を含むことにより、無電解メッキの選択性が更に向上する。
本実施形態では、更に、上述した無電解メッキ膜上に異なる種類の無電解メッキ膜を形成してもよいし、電解メッキにより電解メッキ膜を形成してもよい。成形体上のメッキ膜の総厚みを厚くすることにより、所定パターンのメッキ膜を電気回路として用いた場合に電気抵抗を小さくすることができる。メッキ膜の電気抵抗を下げる観点から、無電解メッキ膜上に積層するメッキ膜は、無電解銅メッキ膜、電解銅メッキ膜、電解ニッケルメッキ等が好ましい。また、電気的に孤立した回路には電解メッキを行うことができないため、このような場合は、無電解メッキにより、成形体上のメッキ膜の総厚みを厚くすることが好ましい。また、ハンダリフローに対応できるようメッキ膜パターンのハンダ濡れ性を向上させるために、錫、金、銀等のメッキ膜をメッキ膜パターンの最表面に形成してもよい。
本実施形態では、更に、成形体からヨウ素を除去する工程を設けてもよい。成形体中にヨウ素が残存していると、メッキ部品が赤紫色に着色されて透明性が損なわれる。また、ヨウ素は金属と反応し易いため、成形体内に残存するとメッキ膜を腐食させる虞がある。
成形体からヨウ素を除去する方法としては、成形体を洗浄液で洗浄することによってヨウ素を溶出させて除去する方法や、成形体の周囲の雰囲気を加熱又は減圧することによってヨウ素を昇華させて除去する方法が挙げられる。ヨウ素の洗浄に用いる洗浄液は、ヨウ素を溶解させ、かつ成形体を変質させない液であれば特に限定されず、例えば、水、アルコール、及びそれらの混合物が好ましい。アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどが挙げられる。洗浄液には、ヨウ素の溶解性を高めるためにヨウ化物イオンを含有していてもよく、成形体への親和性をあげるために界面活性剤を含有してもよい。
また、ヨウ素を除去する方法としては、成形体中のヨウ素の少なくとも一部を還元する還元処理を行い、ヨウ化物イオンとカチオンからなるヨウ素化合物を生成し、生成したヨウ素化合物を成形体から除去することがより好ましい。ヨウ素をヨウ化物イオンとすることで、水等の洗浄液への溶解性が高まり、成形体からヨウ素を除去し易くなる。さらに、ヨウ化物イオンはヨウ素と比べて金属との反応性が低いため、成形体に残存しても金属を腐食する虞が低い。
成形体中のヨウ素の還元には、通常の還元剤を用いることができ、例えば、チオ硫酸ナトリウムや次亜リン酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒド等のアルデヒド類、グルコースなどの糖類、等が挙げられる。例えば、チオ硫酸ナトリウムによる還元の場合は、成形体をチオ硫酸ナトリウム溶液に浸漬させることにより、下記の化学反応式(1)に示すように、ヨウ素分子(I)は還元され、酸化数-Iの状態(NaI)となる。
Figure 2016138304
還元処理の後、成形体を上述した洗浄液で洗浄することにより成形体からヨウ素を除去してもよい。この場合、ヨウ素はヨウ素化合物となって水等の洗浄液に溶解し、容易に成形体から除去することができる。
成形体中のヨウ素の除去は、無電解メッキ工程(図1のステップS5)の後に行ってもよいし、メッキ触媒付与工程(同、ステップS4)の後に行ってもよい。また、無電解メッキ液は還元剤を含んでいるため、無電解メッキ工程において成形体中のヨウ素が還元及び除去される場合もある。このような場合は、特に、ヨウ素除去工程を設ける必要はない。
以上説明した本実施形態の製造方法において、所定パターンのメッキ膜は導電性を有していてもよい。この場合、所定パターンのメッキ膜は、配線パターン、電気回路等として機能し、所定パターンのメッキ膜を有するメッキ部品は、電子部品として機能する。また、所定パターンのメッキ膜は、成形体の一面のみに平面的に形成させてもよいし、成形体の複数の面に亘って、又は球面等を含む立体形状の表面に沿って立体的に形成されてもよい。所定パターンのメッキ膜が成形体の複数の面に亘って、又は球面等を含む立体形状の表面に沿って立体的に形成され、且つ導電性を有する場合、所定パターンのメッキ膜は立体電気回路として機能し、このような所定パターンのメッキ膜を有するメッキ部品は、立体回路成形部品(MID:Molded Interconnect Device)として機能する。
尚、以上説明した本実施形態では、ヨウ素付与工程(図1のステップS2)を設けているが、ヨウ素付与工程は設けなくてもよい。樹脂材料の選択や製造条件の調整によって、ヨウ素付与工程は設けなくともレーザー光照射部分のみに選択的なメッキ膜を形成できる。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例及び比較例により制限されない。
[実施例1]
1.樹脂材料
本実施例では、ガラスフィラー含有樹脂としてガラス繊維を10重量%含有する透明な非晶質ナイロン(旭ファイバーグラス製、AFG TRGFPAMG10)を用いて、選択的にメッキ膜が形成された成形体(試料)を製造した。
(1)透過率
ガラスフィラー含有樹脂を用いて厚み1mmの成形体を成形し、波長800nmにおける透過率を測定した。波長800nmにおける透過率は85%であった。また、波長400〜800nm(可視光域)の透過率も測定した。波長400〜800nm(可視光域)の透過率は60%以上であった。
(2)吸水率
ガラスフィラー含有樹脂の吸水率は、ISO62に準拠し、ガラスフィラー含有樹脂から成形した成形体(5cm×10cm×3mm)を常温(23℃)の水中に24時間浸漬させた後の重量変化(%)とした。ガラスフィラー含有樹脂の吸水率は0.8%であった。
2.試料の製造
(1)成形体の成形
樹脂材料を汎用の射出成形機(日本製鋼所製、J180AD−300H)を用いて、4cm×10cm×0.2cmの板状体に射出成形した。成形温度は240℃、金型温度は100℃とした。得られた成形体は透明性が高かった。
(2)ヨウ素の付与
ヨウ素濃度0.5重量%、ヨウ化カリウム濃度10重量%、水とエタノール混合溶液を溶媒とするヨウ素溶液を調製した。水とエタノールの体積比率は1:2とした。調製したヨウ素溶液に成形体を浸漬し、室温で1分間放置した。成形体は、ヨウ素により薄い赤紫色に変色した。
(3)レーザー描画
ヨウ素を付与した成形体に、レーザー描画装置(パナソニック製、LP−310、光源CO、レーザー発振部の出力:平均12W、発光ピーク波長:10.6μm)を用いて、所定のパターンに沿ってレーザー光を照射した。レーザー描画は、パワー70%、線幅0.01mm、描画速度500mm/secの描画条件で行った。本実施例では2種類のパターンA及びBをレーザー描画した。パターンAは、メッキ選択性を評価するためのパターンであり、間隔1mmの直線パターンの細線を10本描画した。パターンBは、メッキ膜の密着強度を評価するための1cm×10cmのパターンである。パターンBは、1cm×10cmの領域に0.2mm間隔の格子状パターンを描画した。レーザー描画部分は、薄い赤紫色から透明に変化した。これから、レーザー描画部分のヨウ素が昇華して、除去されたと推測される。
レーザー描画部分と他の部分(レーザー非描画部分)をレーザー顕微鏡で観察した。図2(b)に示すように、レーザー非描画部分は、成形体表面のガラスフィラーの浮きはわずかであり、ガラスフィラーは樹脂中に埋もれていた。レーザー非描画部分の表面粗さRaは5μmであった。一方、図2(a)に示すように、レーザー描画部分は、樹脂成分が溶融してガラス繊維が露出し、深い窪みが形成されていた。即ち、レーザー描画部分には、その上に形成されるメッキ膜に対して物理アンカー効果を発現可能な凹凸が形成されていた。レーザー描画部分の表面粗さRaは30μmであった。
(4)無電解メッキ触媒の付与
レーザー描画を行った成形体表面に、市販の無電解メッキ用触媒液を用いた汎用の方法により無電解メッキ触媒を付与した。まず、レーザー描画を行った成形体を常温の感応性付与剤(奥野製薬製、センシタイザー)に浸漬し、5分間超音波を照射してセンシタイザー処理を行い、成形体表面にスズコロイドを吸着させた。その後、成形体を感応性付与剤から取り出し、十分に水洗した。次に、成形体を触媒化処理剤(アクチベータ、奥野製薬製)に浸漬し、2分間放置してアクチベータ処理を行い、成形体表面にパラジウムを吸着させた。その後、成形体を触媒化処理剤から取り出し、十分に水洗した。
(5)無電解メッキ
無電解メッキ触媒を付与した成形体を40℃の無電解ニッケルリンメッキ液(奥野製薬工業製、トップニコロンRCH)に15分浸漬して、成形体表面に無電解ニッケルリンメッキ膜を1μm成長させた。更に、無電解ニッケルリンメッキを行った成形体を硫酸銅液に浸漬し、電流密度3A/dmにて銅の電解メッキを行い、無電解ニッケルリンメッキ膜上に40μmの銅電解メッキを積層した。
(6)ヨウ素の還元および除去
電解メッキ後の成形体は、無電解メッキ前よりも赤紫色が薄くなり、透明性が向上していた。これは、無電解メッキ液中に含まれる、還元剤である次亜リン酸ナトリウムが成形体中のヨウ素を還元し、更に還元されたヨウ素が成形体の外へ溶出したものと推測される。
本実施例では、更に成形体からヨウ素を除去するために、別途、電解メッキ後にヨウ素の還元及び除去を行った。まず、次亜リン酸ナトリウム濃度10重量%の次亜リン酸ナトリウム水溶液を調製した。そして、電解メッキを行った成形体を40℃の次亜リン酸ナトリウム水溶液に浸漬して1時間放置した。その後、成形体を次亜リン酸ナトリウム水溶液から取り出し、十分に水洗した。以上の処理により、成形体中のヨウ素の除去は更に進み、成形体の透明性はヨウ素を付与する前の状態と同等まで向上した。
3.評価項目及び評価結果
(1)メッキ選択性
成形体全体及びパターンAのメッキ膜を観察し、メッキ選択性を評価した。本実施例では、メッキ膜はレーザー描画部分のみに成長しており、メッキ選択性は良好であった。パターンAにおいて、ラインの幅は400μmであり、ライン間にもメッキ膜は成長していなかった。
(2)密着強度
引っ張り試験機(島津製作所社製,AGS−100N)を用いて、JIS H8630に準拠し、角度90°、速度25mm/分の条件で、試料表面において長さ40mmに亘り、メッキ膜を試料からから引き剥がすときの力を測定した。本実施例のメッキ膜の密着強度は5.4N/cmであり、実用レベルに達する十分な密着強度を有していた。
(3)電気抵抗
メッキ膜形成部分(パターンB)の電気抵抗を測定した。測定方法は、メッキ膜の一端と他端にテスターの端子を押し当てて、端子間の電気抵抗を測定する方法を用いた。この結果、電気抵抗は、0.5Ωと低い値であり、所定パターン部分が導電性を有することが確認できた。
[実施例2]
1.樹脂材料
本実施例では、ガラスフィラー含有樹脂としてガラス繊維を20重量%含有する透明ポリカーボネート樹脂(旭ファイバーグラス製、AFG GFPC MG20)を用いて、選択的にメッキ膜が形成された成形体(試料)を製造した。
(1)透過率
実施例1と同様に、ガラスフィラー含有樹脂を用いて厚み1mmの成形体を成形し、波長800nmにおける透過率を測定した。波長800nmにおける透過率は80%であった。また、実施例1と同様に、波長400〜800nm(可視光域)の透過率も測定した。波長400〜800nm(可視光域)の透過率は60%以上であった。
(2)吸水率
実施例1と同様の方法により、吸水率を測定した。ガラスフィラー含有樹脂の吸水率は、0.2%であった。
2.試料の製造
成形体の成形において、成形温度320℃、金型温度140℃としたこと、ヨウ素の付与工程において、ヨウ素濃度6重量%、ヨウ化カリウム濃度10重量%、水、エタノール及びメチルセルソルブの混合溶液(体積比率、(水):(エタノール):(メチルセルソルブ)=30:60:10)を溶媒とするヨウ素溶液を用いた以外は、実施例1と同様の方法により試料を製造した。本実施例で得られた成形体は、透明性が高かった。本実施例のベース樹脂であるポリカーボネートは、実施例1のベース樹脂である非晶質ナイロンより吸水率が低くヨウ素が浸透し難いため、ヨウ素溶液中のヨウ素濃度を高め、溶媒に表面張力の低いメチルセルソルブを加えた。
3.評価項目及び評価結果
(1)メッキ選択性
実施例1と同様の方法により、メッキ選択性を評価した。メッキ膜はレーザー描画部分に成長しており、パターンAにおいて、ラインの幅は400μmであった。しかし、ライン間に不要なめっき膜が一部成長していた。
(2)密着強度
実施例1と同様の方法により、メッキ膜の密着強度を評価した。本実施例のメッキ膜の密着強度は4.0N/cmとやや低かった。但し、メッキ膜に対してクロスカットのテープ剥離試験を行ったところ、メッキ膜は剥離しなかった。
[実施例3]
1.樹脂材料
本実施例では、ガラスフィラー含有樹脂として、実施例2と同様のガラス繊維を20%含有する透明ポリカーボネート(旭ファイバーグラス製、AFG GFPC MG20)を用い、親水性付与材料として非晶質ナイロン(ユニチカ製CM-2500)を用いて、選択的にメッキ膜が形成された成形体(試料)を製造した。
(1)吸水率
実施例2で測定したように、ガラスフィラー含有樹脂の吸水率(WA1)は、0.2%であった。実施例1と同様の方法により、親水性付与材料の吸水率を測定した。親水性付与材料の吸水率(WA2)は、2%であった。したがって、(WA2/WA1)=(2/0.2)=10であった。また、同様の測定方法により、得られた成形体の吸水率を測定したところ、成形体の吸水率は1%であり、ガラスフィラー含有樹脂の吸水率(0.2%)の5倍であった。
2.試料の製造
成形体の成形において、樹脂材料の組成を、ガラスフィラー含有樹脂95重量%、親水性付与材料5重量%とした以外は、実施例2と同様の方法により試料を製造した。尚、本実施例は成形体中に親水性付与材料を含んでいるが、得られた成形体は親水性付与材料を含まない実施例2の成形体と同等の透明性を有していた。
3.評価項目及び評価結果
(1)メッキ選択性
実施例1と同様の方法により、メッキ選択性を評価した。本実施例では、メッキ膜はレーザー描画部分のみに成長しており、メッキ選択性は良好であった。パターンAにおいて、ラインの幅は400μmであり、ライン間にもメッキ膜は成長していなかった。
(2)密着強度
実施例1と同様の方法により、メッキ膜の密着強度を評価した。本実施例のメッキ膜の密着強度は5.0N/cmであった。
本実施例の成形体は、成形体中に親水性付与材料を含有するため、実施例2の成形体と比較して吸水率(親水性)が向上した。このため、ヨウ素が成形体中に浸透し易くなり、メッキ選択性が向上したと推測される。また、本実施例の成形体は、ベース樹脂(ポリカーボネート)と親水性付与材料(非晶質ナイロン)という融点の異なる二種類の樹脂を含有する。このため、実施例2と比較してレーザー描画部分の粗化が促進され、その上に形成されるメッキ膜の密着強度が向上したと推測される。
[実施例4]
本実施例では、ヨウ素付与工程を行わずに、選択的にメッキ膜が形成された成形体(試料)を製造した。まず、実施例1と同様の方法により、成形体の成形、レーザー描画、無電解メッキ触媒の付与及び無電解メッキを行った。そして、無電解メッキ後の成形体を超音波洗浄し、その後、エアブローを行った。超音波洗浄及びエアブローにより、レーザー描画部分以外の部分のメッキ膜が除去され、レーザー描画部分のみにメッキ膜が形成された成形体(試料)が得られた。
1.評価項目及び評価結果
(1)メッキ選択性
実施例1と同様の方法により、メッキ選択性を評価した。メッキ膜はレーザー描画部分に成長しており、パターンAにおいて、ラインの幅は400μmであった。しかし、ライン間に不要なめっき膜が一部成長していた。
(2)密着強度
実施例1と同様の方法により、メッキ膜の密着強度を評価した。本実施例のメッキ膜の密着強度は5.4N/cmであった。
[比較例1]
本比較例では、ガラスフィラー含有樹脂の代わりに、ガラスフィラーを含まない非晶質ナイロンを用いた以外は、実施例1と同様の方法により試料を製造した。
本比較例における、メッキ触媒付与工程前のレーザー描画部分をレーザー顕微鏡で観察した。レーザー光照射光部分には、樹脂成分が溶融して浅い窪みが形成されていたが、成形体がガラスフィラーを含まないため、実施例1のレーザー光照射部分で観察されたような急峻な凹凸(図2(a)参照)は認められなかった。この結果、レーザー光照射部分の表面粗さRaは20μmであり、実施例1に比べて平滑であった。
1.評価項目及び評価結果
(1)メッキ選択性
実施例1と同様の方法により、メッキ選択性を評価した。本実施例では、メッキ膜はレーザー描画部分のみに成長しており、メッキ選択性は良好であった。パターンAにおいて、ラインの幅は400μmであり、ライン間にもメッキ膜は成長していなかった。
(2)密着強度
実施例1と同様の方法により、メッキ膜の密着強度を評価した。しかし、本比較例のメッキ膜は簡単に剥離してしまい、密着強度を測定できるレベルの強度を有しておらず、測定不可能であった。この原因は、次のように推測される。本比較例の成形体はガラス成分を含まないためレーザー描画部分に深い窪みが形成されず、アンダーカットのような物理アンカー効果が発現する凹凸が形成されなかった。このため、その上に形成されるメッキ膜はアンカー効果を得られなかったと推測される。
本発明のメッキ部品の製造方法によれば、簡易な製造プロセスにより、所定パターン以外でのメッキ膜の生成を抑制し、所定パターンのみにメッキ膜を形成できる。したがって、本発明は、電気回路を有する電子部品や、立体回路成形部品(MID:Molded Interconnect Device)の製造に利用できる。

Claims (15)

  1. メッキ部品の製造方法であって、
    透明なガラスフィラー含有樹脂を含む樹脂材料を成形し、成形体を得ることと、
    前記成形体の表面の一部にレーザー光を照射することと、
    前記レーザー光を照射した成形体の表面に無電解メッキ触媒を付与することと、
    前記無電解メッキ触媒を付与した成形体の表面に無電解メッキ液を接触させ、前記レーザー光を照射した部分に無電解メッキ膜を形成することとを含むことを特徴とするメッキ部品の製造方法。
  2. 更に、前記レーザー光を照射する前に、前記成形体の表面にヨウ素を付与することを含むことを特徴とする請求項1に記載のメッキ部品の製造方法。
  3. 前記成形体の表面の一部にレーザー光を照射することにより、レーザー光を照射した部分からヨウ素を除去することを特徴とする請求項2に記載のメッキ部品の製造方法。
  4. 前記成形体の表面にヨウ素を付与することが、
    ヨウ素と溶媒とを含むヨウ素溶液を調製することと、
    前記ヨウ素溶液に前記成形体を浸漬することを含むことを特徴とする請求項2又は3に記載のメッキ部品の製造方法。
  5. 前記樹脂材料が、更に、親水性付与材料を含み、
    前記親水性付与材料は、ガラスフィラー含有樹脂の吸水率より高い吸水率を有する樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のメッキ部品の製造方法。
  6. 前記親水性付与材料は、前記樹脂材料中に1重量%〜20重量%含まれることを特徴とする請求項5に記載のメッキ部品の製造方法。
  7. 前記親水性付与材料は、非晶質ナイロンであることを特徴とする請求項5又は6に記載のメッキ部品の製造方法。
  8. 前記成形体の表面の一部にレーザー光を照射することが、前記成形体の表面にレーザー描画することである請求項1〜7のいずれか一項に記載のメッキ部品の製造方法。
  9. 前記レーザー光の照射には、炭酸ガスレーザーを用いることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のメッキ部品の製造方法。
  10. 前記レーザー光を照射することにより、前記レーザー光を照射した成形体の表面が粗化されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のメッキ部品の製造方法。
  11. 前記無電解メッキ膜が導電性を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のメッキ部品の製造方法。
  12. 前記無電解メッキ膜が前記成形体上で電気回路を形成し、前記メッキ部品が電子部品であることを特徴とする請求項11に記載のメッキ部品の製造方法。
  13. 前記電子部品が、立体回路成形部品であることを特徴とする請求項12に記載のメッキ部品の製造方法。
  14. メッキ部品であって、
    透明なガラスフィラー含有樹脂を含む成形体と、
    前記成形体の表面の一部に形成された無電解メッキ膜とを有し、
    前記無電解メッキ膜が前記成形体上で電気回路を形成することを特徴とするメッキ部品。
  15. 前記メッキ部品が、立体回路成形部品であることを特徴とする請求項14に記載のメッキ部品。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN106467965A (zh) * 2016-09-27 2017-03-01 北京科技大学 一种陶瓷电路基板表面精细化金属图案的制备方法
CN109689931A (zh) * 2017-01-17 2019-04-26 麦克赛尔控股株式会社 镀覆部件的制造方法和镀覆部件

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