本明細書中で「(メタ)アクリル」との表現がある場合は、「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」との表現がある場合は、「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を意味し、「(メタ)アリル」との表現がある場合は、「アリルおよび/またはメタリル」を意味し、「(メタ)アクロレイン」との表現がある場合は、「アクロレインおよび/またはメタクロレイン」を意味する。また、本明細書中で「酸(塩)」との表現がある場合は、「酸および/またはその塩」を意味する。
≪セメント分散剤≫
本発明のセメント分散剤は、一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)由来の構造単位(I)と一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)と一般式(3)で表されるアルカノールアミン基含有単量体(c)由来の構造単位(III)を有する共重合体を含む。
一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)由来の構造単位(I)とは、具体的には、下記式で表される。
一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)とは、具体的には、下記式で表される。
一般式(3)で表されるアルカノールアミン基含有単量体(c)由来の構造単位(III)とは、具体的には、下記式で表される。
一般式(1)および一般式(I)中、R1、R2、およびR3は、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表す。
一般式(1)および一般式(I)中、R4は、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。炭素原子数1〜30の炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜30のアルキル基(脂肪族アルキル基や脂環式アルキル基)、炭素原子数1〜30のアルケニル基、炭素原子数1〜30のアルキニル基、炭素原子数6〜30の芳香族基などが挙げられる。本発明の効果を一層発現させ得る点で、R4は、好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、より好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜12の炭化水素基であり、さらに好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜6の炭化水素基であり、特に好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜3のアルキル基であり、最も好ましくは、水素原子、メチル基である。
一般式(1)および一般式(I)中、RaOは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表す。本発明の効果を一層発現させ得る点で、RaOは、好ましくは、炭素原子数2〜8のオキシアルキレン基であり、より好ましくは、炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基である。また、RaOが、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基等の中から選ばれる任意の2種類以上の場合は、RaOの付加形態は、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態であっても良い。なお、親水性と疎水性とのバランス確保のため、オキシアルキレン基中にオキシエチレン基が必須成分として含まれることが好ましく、オキシアルキレン基全体の50モル%以上がオキシエチレン基であることがより好ましく、オキシアルキレン基全体の90モル%以上がオキシエチレン基であることがさらに好ましく、オキシアルキレン基全体の95モル%以上がオキシエチレン基であることが特に好ましく、オキシアルキレン基全体の100モル%がオキシエチレン基であることが最も好ましい。
一般式(1)および一般式(I)中、nは、RaOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜500の整数である。本発明の効果を一層発現させ得る点で、nは、好ましくは2〜500の整数であり、より好ましくは2〜400の整数であり、さらに好ましくは3〜300の整数であり、特に好ましくは5〜200の整数であり、最も好ましくは10〜100の整数である。
一般式(1)および一般式(I)中、xは0〜2の整数である。本発明の効果を一層発現させ得る点で、好ましくは、xが0である。
一般式(1)および一般式(I)中、yは0または1である。本発明の効果を一層発現させ得る点で、好ましくは、yが1である。
一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)としては、例えば、炭素数1〜20のアルケニルアルコールに炭素数2〜8のアルキレンオキシドを付加して得られる付加体;炭素数1〜20の飽和脂肪族アルコール類に、炭素数2〜8のアルキレンオキシドを付加することによって得られるアルコキシポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;炭素数1〜20の飽和脂肪族アルコール類に、炭素数2〜18のアルキレンオキシドを重合して得られるポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、オレイルアルコールなどの炭素数3〜20の不飽和脂肪族アルコール類に、炭素数2〜8のアルキレンオキシドを付加することによって得られるアルコキシポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、オレイルアルコールなどの炭素数3〜20の不飽和脂肪族アルコール類に、炭素数2〜18のアルキレンオキシドを重合して得られるポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;シクロヘキサノールなどの炭素数3〜20の脂環式アルコール類に、炭素数2〜8のアルキレンオキシドを付加することによって得られるアルコキシポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;シクロヘキサノールなどの炭素数3〜20の脂環式アルコール類に、炭素数2〜18のアルキレンオキシドを重合して得られるポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;炭素数6〜20の芳香族アルコール類に、炭素数2〜8のアルキレンオキシドを付加することによって得られるアルコキシポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;炭素数6〜20の芳香族アルコール類に、炭素数2〜18のアルキレンオキシドを重合して得られるポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸またはクロトン酸とのエステル化物;などが挙げられる。
一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)としては、本発明の効果を一層発現させ得る点で、好ましくは、(メタ)アクリル酸のアルコキシポリアルキレングリコール類のエステル;ビニルアルコール、(メタ)アリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、3−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−2−オール、2−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−1−オールのいずれかにアルキレンオキシドを1〜500モル付加した化合物;であり、より好ましくは、(メタ)アリルアルコールにアルキレンオキシドを1〜500モル付加した化合物、3−メチル−3−ブテン−1−オールにアルキレンオキシドを1〜500モル付加した化合物であり、さらに好ましくは、3−メチル−3−ブテン−1−オールにアルキレンオキシドを1〜500モル付加した化合物である。
一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
一般式(2)および一般式(II)中、R5、R6およびR7は、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表す。本発明の効果を一層発現させ得る点で、好ましくは、R5、R6のいずれもが水素原子である。
一般式(2)および一般式(II)中、Xは、水素原子、メチル基、エチル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、または有機アミン基を表す。
一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸系単量体またはこれらの塩などが挙げられる。ここでいう塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩、有機アミン塩などが挙げられる。アルカリ金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。アルカリ土類金属塩としては、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩などが挙げられる。有機アンモニウム塩としては、例えば、メチルアンモニウム塩、エチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、ジエチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩などが挙げられる。有機アミン塩としては、例えば、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩などが挙げられる。
一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)としては、本発明の効果を一層発現させ得る点で、好ましくは、メタクリル酸またはこの塩である。
一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
一般式(3)および一般式(III)中、R8は、水素原子またはメチル基である。本発明の効果を一層発現させ得る点で、好ましくは、メチル基である。
一般式(3)および一般式(III)中、R9は、水素原子またはメチル基である。本発明の効果を一層発現させ得る点で、好ましくは、メチル基である。
一般式(3)および一般式(III)中、Yは、−(CH2)m−または−Z−CHOH−を表し、mは1〜10の整数を表す。Zは、−COO−CH2−または−(AO)p−CH2−を表し、AOは炭素数2〜3のオキシアルキレン基を表し、pは1〜500の整数を表す。本発明の効果を一層発現させ得る点で、Yは、好ましくは、−COO−CH2−CHOH−である。
一般式(3)で表されるアルカノールアミン基含有系単量体(c)としては、例えば、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテルなどのグリシジル基含有単量体にジエタノールアミン、モノエタノールモノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミンなどを付加した化合物が挙げられる。本発明の効果を一層発現させ得る点で、好ましくは、メタクリル酸グリシジルにジイソプロパノールを付加した化合物である。
本発明のセメント分散剤に含まれる共重合体中の、構造単位(I)と構造単位(II)と構造単位(III)の合計の含有割合は、好ましくは50質量%〜100質量%であり、より好ましくは70質量%〜100質量%であり、さらに好ましくは80質量%〜100質量%であり、さらに好ましくは90質量%〜100質量%であり、特に好ましくは95質量%〜100質量%であり、最も好ましくは98質量%〜100質量%である。本発明のセメント分散剤に含まれる共重合体中の構造単位(I)と構造単位(II)と構造単位(III)の合計の含有割合が上記範囲内に収まれば、本発明のセメント分散剤は、高い流動性と高い保持性を発現できる。
本発明のセメント分散剤に含まれる共重合体中の、構造単位(I)と構造単位(II)と構造単位(III)の合計の含有割合は、例えば、該共重合体の各種構造解析(例えば、NMRなど)によって知ることができる。また、上記のような各種構造解析を行わなくても、本発明のセメント分散剤に含まれる共重合体を製造する際に用いる各種単量体の使用量に基づいて算出される該各種単量体由来の構造単位の含有割合を用いて、本発明のセメント分散剤に含まれる共重合体中の、構造単位(I)と構造単位(II)と構造単位(III)の合計の含有割合を算出しても良い。すなわち、本発明のセメント分散剤に含まれる共重合体を製造する際に用いる全単量体成分中の、不飽和ポリアルキレングリコールアルケニルエーテル系単量体(a)と一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)と一般式(3)で表されるアルカノールアミン基含有単量体(c)の合計の質量の含有割合を、本発明のセメント分散剤に含まれる共重合体中の、構造単位(I)と構造単位(II)と構造単位(III)の合計の含有割合として扱って良い。
本発明のセメント分散剤に含まれる共重合体中には、構造単位(I)と構造単位(II)と構造単位(III)以外に、他の単量体(d)由来の構造単位(IV)を含んでいても良い。他の単量体(d)由来の構造単位(IV)は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
他の単量体(d)は、不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)、不飽和カルボン酸系単量体(b)、アルカノールアミン基含有単量体単量体(c)と共重合可能な単量体である。
他の単量体(d)としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;メチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのエステル類;(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのハーフエステル類;(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのハーフアミド類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのジアミド類;上記アルコールやアミンに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと上記不飽和ジカルボン酸類とのハーフエステル類;上記アルコールやアミンに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと上記不飽和ジカルボン酸類とのジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数2〜18のグリコールまたはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数2〜18のグリコールまたはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのジエステル類;マレアミド酸と炭素原子数2〜18のグリコールまたはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフアミド類;(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸(塩)類;メチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのアミド類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族類;1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;ブタジエン、イソプレン等のジエン類;(メタ)アクリル(アルキル)アミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和シアン類;酢酸ビニル等の不飽和エステル類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;(メトキシ)ポリエチレングリコールモノビニルエーテル等のビニルエーテル類;などが挙げられる。
本発明のセメント分散剤に含まれる共重合体中の、構造単位(IV)の含有割合は、例えば、該共重合体の各種構造解析(例えば、NMRなど)によって知ることができる。また、上記のような各種構造解析を行わなくても、本発明のセメント分散剤に含まれる共重合体を製造する際に用いる各種単量体の使用量に基づいて算出される該各種単量体由来の構造単位の含有割合を用いて、本発明のセメント分散剤に含まれる共重合体中の、構造単位(IV)の含有割合を算出しても良い。すなわち、本発明のセメント分散剤に含まれる共重合体を製造する際に用いる全単量体成分中の、他の単量体(d)の質量の含有割合を、本発明のセメント分散剤に含まれる共重合体中の、構造単位(IV)の含有割合として扱って良い。
本発明においては、本発明のセメント分散剤に含まれる共重合体において、構造単位(I)と構造単位(II)と構造単位(III)の合計を100質量部としたときの該構造単位(III)の含有割合が1質量部を超えて50質量部未満である。上記構造単位(III)の含有割合が上記範囲内に収まることにより、高い強度発現性を発現できるセメント分散剤を提供することができる。上記構造単位(III)の含有割合が1質量部以下であったり、50質量部以上であったりすると、得られるセメント分散剤が高い流動性と高い保持性と高い強度発現性を発現できないおそれがある。上記構造単位(III)の含有割合は、本発明の効果を一層発現させ得る点で、好ましくは2質量部〜40質量部であり、より好ましくは3質量部〜35質量部であり、さらに好ましくは5質量部〜30質量部であり、特に好ましくは8質量部〜25質量部であり、最も好ましくは10質量部〜20質量部である。
本発明においては、本発明のセメント分散剤に含まれる共重合体において、構造単位(I)と構造単位(II)と構造単位(III)の合計を100質量部としたときの該構造単位(I)の含有割合は、好ましくは30質量部〜99質量部であり、より好ましくは50質量部〜99質量部であり、さらに好ましくは50質量部〜97質量部であり、特に好ましくは60質量部〜97質量部であり、最も好ましくは60質量部〜95質量部である。上記構造単位(I)の含有割合が上記範囲内に収まることにより、一層高い流動性と一層高い保持性を発現できるセメント分散剤を提供することができる。上記構造単位(I)の含有割合が30質量部未満であったり、99質量部を超えたりすると、得られるセメント分散剤が高い流動性と高い保持性を発現できないおそれがある。
本発明においては、本発明のセメント分散剤に含まれる共重合体において、構造単位(I)と構造単位(II)と構造単位(III)の合計を100質量部としたときの該構造単位(II)の含有割合は、好ましくは1質量部〜40質量部であり、より好ましくは2質量部〜35質量部であり、さらに好ましくは3質量部〜30質量部であり、特に好ましくは4質量部〜25質量部であり、最も好ましくは5質量部〜25質量部である。上記構造単位(II)の含有割合が上記範囲内に収まることにより、一層高い流動性と一層高い保持性を発現できるセメント分散剤を提供することができる。上記構造単位(II)の含有割合が1質量部未満であったり、40質量部を超えたりすると、得られるセメント分散剤が高い流動性と高い保持性を発現できないおそれがある。
本発明のセメント分散剤に含まれる共重合体の質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリエチレングリコール換算による質量平均分子量(Mw)として、好ましくは3000〜100000であり、より好ましくは5000〜100000であり、さらに好ましくは5000〜70000であり、特に好ましくは10000〜70000であり、最も好ましくは10000〜50000である。本発明のセメント分散剤に含まれる共重合体の質量平均分子量(Mw)が上記範囲内に収まることより、本発明のセメント分散剤は、一層高い流動性と一層高い保持性を発現できる。
本発明のセメント分散剤に含まれる共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.0〜6.0であり、より好ましくは1.0〜5.0であり、さらに好ましくは1.0〜4.0であり、特に好ましくは1.0〜3.5であり、最も好ましくは1.0〜3.0である。本発明のセメント分散剤に含まれる共重合体の分子量分布(Mw/Mn)が上記範囲内に収まることより、本発明のセメント分散剤は、一層高い流動性と一層高い保持性を発現できる。
本発明のセメント分散剤に含まれる共重合体は、任意の適切な方法によって製造し得る。本発明のセメント分散剤に含まれる共重合体は、好ましくは、不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)と不飽和カルボン酸系単量体(b)とアルカノールアミン基含有単量体(c)とを含む単量体成分の重合を重合開始剤の存在下で行って製造し得る。
本発明のセメント分散剤に含まれる共重合体の製造に用い得る不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)、不飽和カルボン酸系単量体(b)、アルカノールアミン基含有単量体(c)、および、必要に応じて、他の単量体(d)の使用量は、本発明のセメント分散剤に含まれる共重合体を構成する全構造単位中の各単量体由来の構造単位の割合が前述したものとなるように、適宜調整すればよい。好ましくは、重合反応が定量的に進行するとして、前述した本発明のセメント分散剤に含まれる共重合体を構成する全構造単位中の各単量体由来の構造単位の割合と同じ割合で、各単量体を用いれば良い。
不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)は、任意の適切な方法によって合成し得る。例えば、メタノール、エタノール等のアルコールにアルキレンオキサイドを付加し、(メタ)アクリル酸とエステル化をすることによって合成し得る。また、アリルアルコール、メタリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール(イソプレノール)、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル等の不飽和アルコールにアルキレンオキサイドを付加することによって合成し得る。
単量体成分の重合は、任意の適切な方法で行い得る。例えば、溶液重合、塊状重合が挙げられる。溶液重合の方式としては、例えば、回分式、連続式が挙げられる。溶液重合で使用し得る溶媒としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族または脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物;等が挙げられる。
単量体成分の重合を行う場合は、重合開始剤として、水溶性の重合開始剤、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;2,2′−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物、2,2′−アゾビス−2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン塩酸塩等の環状アゾアミジン化合物、2−カルバモイルアゾイソブチロニトリル等のアゾニトリル化合物等の水溶性アゾ系開始剤;等を使用し得る。これらの重合開始剤は、亜硫酸水素ナトリウム等のアルカリ金属亜硫酸塩、メタ二亜硫酸塩、次亜燐酸ナトリウム、モール塩等のFe(II)塩、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物、ヒドロキシルアミン塩酸塩、チオ尿素、L−アスコルビン酸(塩)、エリソルビン酸(塩)等の促進剤を併用することもできる。これらの重合開始剤や促進剤は、それぞれ1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
低級アルコール、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、エステル化合物、またはケトン化合物を溶媒とする溶液重合を行う場合、または、塊状重合を行う場合には、重合開始剤として、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ナトリウムパーオキシド等のパーオキシド;t−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;などを用い得る。このような重合開始剤を用いる場合、アミン化合物等の促進剤を併用することもできる。さらに、水−低級アルコール混合溶媒を用いる場合には、上記の種々の重合開始剤または重合開始剤と促進剤の組み合わせの中から適宜選択して用いることができる。
単量体成分の重合の際の反応温度としては、用いられる重合方法、溶媒、重合開始剤、連鎖移動剤により適宜定められる。このような反応温度としては、好ましくは0℃以上であり、より好ましくは30℃以上であり、さらに好ましくは50℃以上であり、また、好ましくは150℃以下であり、より好ましくは120℃以下であり、さらに好ましくは100℃以下である。
単量体成分の反応容器への投入方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。このような投入方法としては、例えば、全量を反応容器に初期に一括投入する方法、全量を反応容器に分割若しくは連続投入する方法、一部を反応容器に初期に投入し、残りを反応容器に分割若しくは連続投入する方法等が挙げられる。また、反応途中で各単量体の反応容器への投入速度を連続的又は段階的に変えて、各単量体の単位時間あたりの投入質量比を連続的又は段階的に変化させてもよい。なお、重合開始剤は反応容器に初めから仕込んでも良く、反応容器へ滴下しても良く、また目的に応じてこれらを組み合わせても良い。
単量体成分の重合の際には、好ましくは、連鎖移動剤を用い得る。連鎖移動剤を用いると、得られる共重合体の分子量調整が容易となる。連鎖移動剤は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
連鎖移動剤としては、任意の適切な連鎖移動剤を採用し得る。このような連鎖移動剤としては、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、2−メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系連鎖移動剤;イソプロパノール等の第2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸、およびその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)や、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、およびその塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)の低級酸化物およびその塩;などが挙げられる。
製造された共重合体は、そのままでも本発明のセメント分散剤に含まれる共重合体として用いることもできるが、取り扱い性の観点から、共重合体の製造後の反応溶液のpHを5以上に調整しておくことが好ましい。この場合、重合率向上のため、pH5未満で重合を行い、重合後にpHを5以上に調整することが好ましい。pHの調整は、例えば、1価金属または2価金属の水酸化物や炭酸塩等の無機塩;アンモニア;有機アミン;などのアルカリ性物質を用いて行うことができる。
製造された共重合体は、製造によって得られた溶液に対して、必要に応じて、濃度調整を行うこともできる。
製造された共重合体は、溶液の形態でそのまま使用しても良いし、あるいは、カルシウム、マグネシウム等の2価金属の水酸化物で中和して多価金属塩とした後に乾燥させたり、シリカ系微粉末等の無機粉体に担持して乾燥させたりすることにより粉体化して使用しても良い。
本発明のセメント分散剤は、上記のような共重合体以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分を含んでいても良い。
他の成分としては、例えば、他のセメント分散剤が挙げられる。他のセメント分散剤を用いる場合、本発明のセメント分散剤に含まれる共重合体と他のセメント分散剤との配合比(共重合体/他のセメント分散剤)としては、使用するセメント分散剤の種類、配合条件、試験条件等の違いによって、任意の適切な配合比を設定し得る。このような配合比は、固形分換算での質量割合(質量%)として、好ましくは50〜100/50〜0であり、より好ましくは60〜100/40〜0であり、さらに好ましくは70〜100/30〜0である。他のセメント分散剤は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
他のセメント分散剤としては、例えば、分子中にスルホン酸基を有するスルホン酸系分散剤、本発明のセメント分散剤組成物に含まれるポリカルボン酸系共重合体以外のポリカルボン酸系分散剤などが挙げられる。
スルホン酸系分散剤としては、例えば、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等の、ポリアルキルアリールスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等の、メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等の、芳香族アミノスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;リグニンスルホン酸塩、変性リグニンスルホン酸塩等のリグニンスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;ポリスチレンスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;などが挙げられる。
本発明のセメント分散剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他のセメント添加剤(材)を含有することができる。このような他のセメント添加剤(材)としては、例えば、以下の(1)〜(12)に例示するような他のセメント添加剤(材)が挙げられる。本発明のセメント分散剤に含まれる共重合体とこのような他のセメント添加剤(材)との配合比は、用いる他のセメント添加剤(材)の種類や目的に応じて、任意の適切な配合比を採用し得る。
(1)水溶性高分子物質:メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の非イオン性セルロースエーテル類;酵母グルカンやキサンタンガム、β−1.3グルカン類等の微生物醗酵によって製造される多糖類;ポリエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール類;ポリアクリルアミド等。
(2)高分子エマルジョン:(メタ)アクリル酸アルキル等の各種ビニル単量体の共重合物等。
(3)硬化遅延剤:グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸、クエン酸等のオキシカルボン酸もしくはその塩;糖及び糖アルコール;グリセリン等の多価アルコール;アミノトリ(メチレンホスホン酸)等のホスホン酸及びその誘導体等。
(4)早強剤・促進剤:塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等の可溶性カルシウム塩;塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物;硫酸塩;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;炭酸塩;チオ硫酸塩;ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩;アルカノールアミン;アルミナセメント;カルシウムアルミネートシリケート等。
(5)オキシアルキレン系消泡剤:(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル類;ポリオキシアルキレンアセチレンエーテル類;(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンラウリルアミン(プロピレンオキシド1〜20モル付加、エチレンオキシド1〜20モル付加物等)、アルキレンオキシドを付加させた硬化牛脂から得られる脂肪酸由来のアミン(プロピレンオキシド1〜20モル付加、エチレンオキシド1〜20モル付加物等)等のポリオキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド等。
(6)オキシアルキレン系以外の消泡剤:鉱油系、油脂系、脂肪酸系、脂肪酸エステル系、アルコール系、アミド系、リン酸エステル系、金属石鹸系、シリコーン系等の消泡剤。
(7)AE剤:樹脂石鹸、飽和又は不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル又はその塩、タンパク質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネート等。
(8)その他界面活性剤:各種アニオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の各種カチオン性界面活性剤;各種ノニオン性界面活性剤;各種両性界面活性剤等。
(9)防水剤:脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコン、パラフィン、アスファルト、ワックス等。
(10)防錆剤:亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛等。
(11)ひび割れ低減剤:ポリオキシアルキルエーテル等。
(12)膨張材;エトリンガイト系、石灰系等。
その他の公知のセメント添加剤(材)としては、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤等を挙げることができる。これら公知のセメント添加剤(材)は1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
≪セメント組成物≫
本発明のセメント組成物は、本発明のセメント分散剤を含む。本発明のセメント組成物は、好ましくは、本発明のセメント分散剤とセメントと水を含む。
本発明のセメント組成物に含まれるセメントとしては、任意の適切なセメントを採用し得る。このようなセメントとしては、例えば、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形)、各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造されたセメント)などが挙げられる。さらに、本発明のセメント組成物には、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏が添加されていても良い。本発明のセメント組成物に含まれるセメントは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
本発明のセメント組成物には、細骨材(砂等)や粗骨材(砕石等)などの任意の適切な骨材が含まれていても良い。
このような骨材としては、例えば、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材が挙げられる。また、このような骨材として、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材も挙げられる。
本発明のセメント組成物においては、その1m3あたりの単位水量、セメント使用量、および水/セメント比としては任意の適切な値を設定し得る。このような値としては、好ましくは、単位水量が100kg/m3〜185kg/m3であり、使用セメント量が250kg/m3〜800kg/m3であり、水/セメント比(質量比)=0.1〜0.7であり、より好ましくは、単位水量が120kg/m3〜175kg/m3であり、使用セメント量が270kg/m3〜800kg/m3であり、水/セメント比(質量比)=0.12〜0.65である。このように、本発明のセメント組成物は、貧配合〜富配合まで幅広く使用可能であり、単位セメント量の多い高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m3以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。
本発明のセメント組成物中の、本発明のセメント分散剤に含まれる共重合体の含有割合としては、目的に応じて、任意の適切な含有割合を採用し得る。このような含有割合としては、水硬セメントを用いるモルタルやコンクリート等に使用する場合には、セメント100質量部に対する、本発明のセメント分散剤に含まれる共重合体の含有割合として、好ましくは0.01質量部〜10質量部であり、より好ましくは0.02質量部〜5質量部であり、さらに好ましくは0.05質量部〜3質量部である。このような含有割合とすることにより、単位水量の低減、強度の増大、耐久性の向上等の各種の好ましい諸効果がもたらされる。上記含有割合が0.01質量部未満の場合、十分な性能を発現できないおそれがあり、上記含有割合が10質量部を超える場合、発現できる効果が実質上頭打ちとなって経済性の面からも不利となるおそれがある。
本発明のセメント組成物中の本発明のセメント分散剤の含有割合としては、目的に応じて、任意の適切な含有割合を採用し得る。このような含有割合としては、セメント100質量部に対する本発明のセメント分散剤組成物の含有割合として、好ましくは0.01質量部〜10質量部であり、より好ましくは0.05質量部〜8質量部であり、さらに好ましくは0.1質量部〜5質量部である。上記含有割合が0.01質量部未満の場合、十分な性能を発現できないおそれがあり、上記含有割合が10質量部を超える場合、発現できる効果が実質上頭打ちとなって経済性の面からも不利となるおそれがある。
本発明のセメント組成物は、レディーミクストコンクリート、コンクリート2次製品用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等に有効であり得る。本発明のセメント組成物は、中流動コンクリート(スランプ値が22〜25cmのコンクリート)、高流動コンクリート(スランプ値が25cm以上で、スランプフロー値が50〜70cmのコンクリート)、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートにも有効であり得る。
本発明のセメント組成物は、構成成分を任意の適切な方法で配合して調整すれば良い。例えば、構成成分をミキサー中で混練する方法などが挙げられる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、部とある場合は質量部を意味し、%とある場合は質量%を意味する。
<GPC測定条件>
使用カラム:東ソー社製、TSK guard column SWXL+TSKgel G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
溶離液:水10999gとアセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶解し、さらに酢酸でpH6.0に調整した溶液を使用した。
サンプル打ち込み量:100μL
流速:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出器:日本ウォーターズ社製、2414 示差屈折検出器
解析ソフト:日本ウォーターズ社製、Empower Software+GPCオプション
較正曲線作成用標準物質:ポリエチレングリコール[ピークトップ分子量(Mp)272500、219300、107000、50000、24000、12600、7100、4250、1470]
較正曲線:上記ポリエチレングリコールのMp値と溶出時間とを基礎にして3次式で作成した。
サンプル調製:測定対象の重合体の水溶液を上記溶離液で重合体濃度が0.5質量%となるように溶解させたものをサンプルとした。
<LC測定条件>
測定条件
装置:Waters社製、Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製、Empowerプロフェッショナル
使用カラム:資生堂社製、CAPCELL PAK AQ C18 3μm(4.6mm
×100mm)
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters社製、Waters 2414)、
溶離液:水18480g、アセトニトリル380gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物
51g、さらに酢酸90gを溶解させたpH4.0−4.5に調整した溶液
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
測定時間:60分
試料液注入量:100μL(試料濃度0.1wt%の溶離液調製溶液)。
<質量平均分子量の解析>
得られたRIクロマトグラムにおいて、ポリマー溶出直前・溶出直後のベースラインにおいて平らに安定している部分を直線で結び、ポリマーを検出・解析した。ただし、モノマー、モノマー由来の不純物等がポリマーピークに一部重なって測定された場合、それらとポリマーとの重なり部分の最凹部において垂直分割してポリマー部とモノマー部とを分離し、ポリマー部のみの分子量・分子量分布を測定した。ポリマー部とそれ以外とが完全に重なり分離できない場合はまとめて計算した。
〔製造例〕
温度計、攪拌機、滴下ロートを備えたガラス製反応容器にジイソプロパノールアミンを55.9g投入し、50℃に昇温した。滴下ロートからメタクリル酸グリシジル56.9gを3時間かけて滴下し、滴下終了後、さらに4時間撹拌を行った。
反応終了後、室温に放冷し、粘性液体としてメタクリル酸グリシジルにジイソプロパノールを付加した化合物であるGMA‐DIPA112gを得た。LCによる分析を行ったところ、LCのピーク面積から算出されるGMA‐DIPAの純度は82%であった。
〔実施例1〕
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管、及び還流冷却器を備えたガラス容器に、イオン交換水145.6部を仕込み、窒素フローを行いながら80℃に昇温した。その後、
M−230G(新中村化学工業株式会社製)117.9部、メタクリル酸31.5部、GMA‐DIPA23.98g、メルカプトプロピオン酸1.25部、水56.9部、30wt%の水酸化ナトリウム水溶液2.83gの混合溶液を4時間かけて滴下し、それと同時に過硫酸アンモニウム1.34部と水18.7部の混合溶液を5時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間引き続いて80℃に温度を維持した後、室温に冷却し、重合反応を終了した。その後、水酸化ナトリウムを用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量が20000のセメント混和剤用共重合体の水溶液を得た。
得られた共重合体の組成と分子量を表1に示す。
〔比較例1〕
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管、及び還流冷却器を備えたガラス容器に、イオン交換水145.6部を仕込み、窒素フローを行いながら80℃に昇温した。その後、
M−230G(新中村化学工業株式会社製)117.9部、メタクリル酸31.5部、GMA−DIPA19.7g、メルカプトプロピオン酸1.39部、水55.2部、30wt%の水酸化ナトリウム水溶液2.83gの混合溶液を4時間かけて滴下し、それと同時に過硫酸アンモニウム1.49部と水24.4部の混合溶液を5時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間引き続いて80℃に温度を維持した後、室温に冷却し、重合反応を終了した。その後、水酸化ナトリウムを用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量が20000のセメント混和剤用共重合体の水溶液を得た。
得られた共重合体の組成と分子量を表1に示す。
表1において、M−230Gはメトキシポリエチレングリコール(エチレンオキサイドの平均付加モル数23モル)メタクリレート、SMAAはメタクリル酸ナトリウム、HEMAは2−ヒドロキシエチルメタクリレートを意味する。
表1に示す共重合体を用いて、モルタル試験を行い、流動性および28日強度を測定した。試験結果を表2に示す。
<モルタル試験条件>
JIS−R5201−1997に準拠した機械練り用練混ぜ機、さじ、フローテーブル、フローコーンおよび突き棒を使用した。この際、特記しない限りは、JIS−R5201−1997に準拠してモルタル試験を行なった。
試験に使用した材料およびモルタルの配合は、太平洋セメント社製普通ポルトランドセメント587g、JIS−R5201−1997に準拠したセメント強さ試験用標準砂1350g、セメント混和剤用ポリマーの水溶液と消泡剤とを含むイオン交換水264gである。消泡剤は、気泡がモルタル組成物の強度に及ぼす影響を避けることを目的に添加し、空気量が3.0%以下になるようにした。具体的にはオキシアルキレン系消泡剤を、セメント混和剤用共重合体に対して0.1%になるような量で使用した。なお、モルタルの空気量が3.0%より大きい場合には、空気量が3.0%以下になるように消泡剤の添加量を調節した。
モルタルは、室温(20±2℃)にてホバート型モルタルミキサー(型番N−50、ホバート社製)を用いて、4分30秒間で調製した。具体的には、練り鉢に規定量のセメントを入れ、練混ぜ機に取り付け低速で始動させる。パドルを始動させて15秒後に規定量のセメント混和剤用ポリマーおよび消泡剤を含んだ水を15秒間で入れる。その後、砂を入れ、低速で30秒間練混ぜた後、高速にして、引き続き30秒間練混ぜを続ける。練り鉢を練混ぜ機から取り外し、120秒間練混ぜを休止した後、再度練り鉢を練混ぜ機へ取り付け、高速で60秒間練混ぜた後(1番始めに低速で始動させてから4分30秒後)、さじで左右各10回かき混ぜる。練混ぜたモルタルをフローテーブル上に置いたフローコーンに2層に分けて詰める。各層は、突き棒の先端がその層の約1/2の深さまで入るように、全面にわたって各々15回突き、最後に不足分を補い、表面をならし、1番始めに低速で始動させてから6分後に、フローコーンを垂直に持ち上げて取り去り、15秒間に15回の落下運動を与え、テーブルに広がったモルタルの直径を2方向について測定し、この平均値をフロー値とした。
混練後フロー値と空気量を測定し、圧縮強度試験用試料を作成し、以下の条件にて、28日後の圧縮強度を測定した。
供試体作成:50mm×100mm
供試体養生(28日):温度20℃、湿度60%、恒温恒湿空気養生を24時間行った後、27日間水中で養生
供試体研磨:供試体面 研磨(供試体研磨仕上げ機使用)
圧縮強度測定:自動圧縮強度測定器(前川製作所)
表2から、実施例1と比較例1を比較すると、28日圧縮強度は、実施例1の方が高いことが分かる。すなわち、アルカノールアミン基を共重合体に含有することで、高い流動性と長期強度を発現することができる。