JP2016135725A - カーボンナノチューブの溶出・回収方法 - Google Patents

カーボンナノチューブの溶出・回収方法 Download PDF

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Atsushi Hirano
篤 平野
丈士 田中
Takeshi Tanaka
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Abstract

【課題】 ゲルに吸着させたカーボンナノチューブを溶出・回収する方法において、溶出時に使用する界面活性剤の種類や濃度を変化させることなく、溶出・回収作業の簡便化と低コスト化が可能な方法を提供する。
【解決手段】 界面活性剤を含有する水溶液に分散させたカーボンナノチューブをゲルに吸着させた後、該ゲルに吸着したカーボンナノチューブを、溶出液を用いて溶出・回収する方法において、該溶出液として、前記界面活性剤を含有する水溶液にカーボンナノチューブの酸化剤を添加した溶液を用いる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、カーボンナノチューブ(以下、単に「CNT」とする)をゲルから効率的に溶出・回収する方法に関する。
CNTはその電気的特性や機械的強度など優れた性質を持ち、究極の新素材として研究開発が精力的に行われている。このCNTは、レーザー蒸発法、アーク放電法、及び化学気相成長法(CVD法)などの種々の方法で合成されている。
しかしながら、現状ではいずれの合成方法を用いても、金属型CNTと半導体型CNTの混合物の形態でしか得られておらず、実使用においては、金属型又は半導体型のいずれか一方の性質のみを用いることが多いため、CNT混合物から金属型、又は半導体型のCNTのみを分離精製することが求められている。
金属型CNTと半導体型CNTを分離する方法についての報告は既にあるが、いずれも産業的に金属型CNTと半導体型CNTを生産する上で問題点を含んでいる。問題点は以下のようにまとめることができる。(1)複雑な工程を経るため自動化ができないこと、(2)長時間を要すること、(3)大量処理ができないこと、(4)高価な設備や薬品を必要とすること、(5)金属型CNTと半導体型CNTのどちらか一方しか得られないこと、(6)回収率が低いこと、などである。
例えば、界面活性剤で分散させたCNTを微小電極上で誘電泳動する方法(非特許文献1)や、溶媒中でアミン類を分散剤に用いる手法(非特許文献2、3)、過酸化水素によって半導体型CNTを選択的に燃やす方法(非特許文献4)などがあるが、これらは、前記問題点の中でも、特に、得られる最終物質が金属型CNTのみに限定されており、低回収率という問題点が解決されていない。
また、半導体型CNTと金属型CNTとの混合物を液体中に分散させ、金属型CNTを粒子と選択的に結合させ、粒子と結合した金属型CNTを除去して半導体型CNTを分離する方法(特許文献1)、CNTをニトロニウムイオン含有溶液で処理した後、濾過および熱処理してCNTに含有する金属型CNTを除去し、半導体型CNTを得る方法(特許文献2)、硫酸及び硝酸を用いる方法(特許文献3)、電界を印加してCNTを選択的に移動分離し、電気伝導率範囲を絞った半導体型CNTを得る方法(特許文献4)などがあるが、これらは、前記問題点の中でも、特に、得られる最終物質が半導体型CNTのみに限定され、低回収率という問題点が解決されていない。
また、界面活性剤で分散させたCNTを、密度勾配超遠心分離法により、金属型CNTと半導体型CNTに分離する方法がある(非特許文献5)が、この方法では超遠心分離機という非常に高価な機器を用いること、超遠心分離操作が長時間を要すること、超遠心分離機自体の大型化は限界があり、スケールアップするには並列して超遠心分離機を複数設置することとなり、自動化などの処理が難しいことといった問題点があった。
また、核酸分子に結合されたCNTからなるCNT−核酸複合体を製造し、イオン交換クロマトグラフィーにより分離する方法がある(特許文献5)が、高価な合成DNAが必要であることや、分離精度があまり高くないため、低回収率や低純度といった問題点がある。
また、界面活性剤で分散させたCNT溶液のpHやイオン強度を調節することで、CNTの種類によって異なる程度のプロトン化を生じさせ、電場をかけることで金属型と半導体型とを分離しようとする報告があるが(特許文献6)、この方法では、分離に先立って、懸濁したCNT混合物のpHやイオン強度を、強酸を用いて前処理する工程を必要とし、またそのための厳密な工程管理を余儀なくされる上、最終的には金属型と半導体型のCNTの分離は達成されていない(特許文献6 実施例4)。
前記したとおり、従来の方法は、いずれも前記した問題点を克服できるものになっておらず、新しい考え方に基づくCNTから金属型CNTと半導体型CNTを分離する方法の開発が望まれていた。
本発明者らは、従来の方法とは異なる新規の金属型CNT及び半導体型CNT分離方法に着手し、以下の発明を完成させた(特許文献7、8、9、10)。その発明は、特定の種類の分散剤とゲルを組み合わせ、半導体型CNTを選択的にゲルに吸着させることで、金属型CNTを単離するというものである。分離においては、電気泳動(特許文献7、8)や、遠心分離や凍結圧搾、拡散、浸透など(特許文献9)によって、ゲルに吸着した半導体CNTと未吸着の金属型CNTを分離する。これらの方法は、金属型CNTと半導体型CNTの両方が得られる上に、高い回収率で、短時間で分離が可能で、なおかつ、安価な設備で、簡便に、大量処理も可能な非常に優れたものである。
さらに、適当な溶出液を用いてゲルに吸着した半導体型CNTを回収する方法を完成させた(特許文献10)。特に、ゲルにCNT分散液を通過させて半導体型CNTをゲルに吸着させ、未吸着の金属型CNTを単離した後、ゲルに吸着した半導体型CNTを溶出液で回収する方法は、ゲルの繰り返し使用が可能で、分離の自動化も可能であり、工業的に金属型・半導体型CNTを大量生産する上で非常に優れた手法となる。
また、同様の手法で、溶出液の濃度を調節することにより、金属型・半導体型CNTの分離を行うと同時に、CNTを直径により分離できる手法も発明した(特許文献10)。この手法は、金属型CNTと半導体型CNTの分離と同時に直径の異なるCNTを得ることが可能な上、高収率、短時間で、なおかつ、安価な設備で、簡便に、大量処理、自動処理も可能な非常に優れたものである。
その後、ゲルの吸着許容量を超える高濃度のCNTをゲルと混合することで、半導体型CNTを構造の違いによって分離することが可能となった(特許文献11)。
しかし、上記のゲルを用いる分離法において、CNTの溶出に用いる界面活性剤は、ゲルに吸着させる際とは種類や濃度の異なるものに変える必要がある。たとえば、高濃度の界面活性剤や高価な界面活性剤を用いる必要がある。
そこで、本発明者らは、その他の溶出方法として、溶出時に用いる界面活性剤の種類や濃度を変化させることなく、溶出液の酸性度を高めてCNTを溶出させる方法を発見した(非特許文献6)。しかしながら、溶出後に得られたCNTを中性で利用する場合には、中和の作業が必要となる。また、溶出液は緩衝液を含有しないため酸性度が変化しやすく、煩雑なpH調整の工程を経る必要があった。試薬の添加によるこのようなCNT溶出は、塩の添加によっても達成できることも本発明者らは示したが、高濃度の塩の添加が必要であるという問題点があった。
特開2007−31238号公報 特開2005−325020号公報 特開2005−194180号公報 特開2005−104750号公報 特開2006−512276号公報 特開2005−527455号公報 特開2008−285386号公報 特開2008−285387号公報 国際公開WO2009/075293号パンフレット 特開2011−195431号公報 特開2011−184225号公報
Advanced Materials 18, (2006) 1468-1470 J. Am. Chem. Soc. 127, (2005) 10287-10290 J. Am. Chem. Soc. 128, (2006) 12239-12242 J. Phys. Chem. B 110, (2006) 25-29 Nature Nanotechnology 1, (2006) 60-65 ACS Nano 7, (2013) 10285-10295 齋藤理一郎、篠原久典 共編「カーボンナノチューブの基礎と応用」培風館、p13〜22 J. Am. Chem. Soc. 126, (2004) 15490-15494 Langmuir 25, (2009) 10417-10421 J. Phys. Chem. B 118, (2014) 6288-6296 ACS Nano 6, (2012) 10195-10205
前述のとおり、ゲルを用いて金属型CNTと半導体型CNTを分離する方法において、溶出時に使用する界面活性剤の種類や濃度を変化させることなく、かつ溶液のpHを変えたり大量の塩を入れたりすることなく、CNTをゲルから溶出させて回収する方法が求められている。
また、このような溶出・回収方法は、上記のCNTの分離工程だけでなく、ゲルを用いたCNTの精製や濃縮のほか、CNTをゲルに吸着させる過程を経るあらゆる作業工程においても求められている。
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、ゲルに吸着させたCNTを溶出・回収する方法において、溶出時に使用する界面活性剤の種類や濃度を変化させることなく、溶出・回収作業の簡便化と低コスト化が可能な方法を提供することを目的する。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、ゲルへの吸着時に使用する界面活性剤水溶液にCNTを酸化させる効果を持つ添加剤(以下、「CNT酸化剤」という。)を少量共存させた溶液をCNTの溶出液として用いることで、ゲルに吸着したCNTを溶出できるという知見を得た。
すなわち、上記非特許文献6では、酸を添加して溶液の酸性度が高まると、CNTは電子が奪われて酸化すると考えられており、その結果、共存する界面活性剤との相互作用に変化が生じ、ゲルへの吸着力が低下することを報告しているが、本発明は、このような吸着力の変化を、酸の添加ではなく、CNT酸化剤の添加によって達成するものである。
本発明は、かかる新規な知見に基づいてなされたものであって、この出願によれば、以下の発明が提供される。
<1>界面活性剤を含有する水溶液に分散させたカーボンナノチューブをゲルに吸着させた後、該ゲルに吸着したカーボンナノチューブを、溶出液を用いて溶出・回収する方法において、該溶出液として、前記界面活性剤を含有する水溶液にカーボンナノチューブ酸化剤を添加した溶液を用いることを特徴とするカーボンナノチューブの溶出・回収方法。
<2>カーボンナノチューブ酸化剤が、塩化インジウム酸カリウム(IV)又は次亜塩素酸ナトリウムである<1>に記載のカーボンナノチューブの溶出・回収方法。
<3><1>又は<2>に記載の溶出・回収方法に用いる溶出液であって、界面活性剤を含有する水溶液にカーボンナノチューブ酸化剤を添加した溶液からなることを特徴とするカーボンナノチューブ溶出液。
本発明によれば、溶出時に使用する界面活性剤の種類や濃度を変化させることなく、ゲルに吸着させたCNTを溶出・回収することができるために、溶出・回収作業の簡便化と低コスト化が可能となる。また、本発明は、CNTの分離工程だけでなく、ゲルを用いたCNTの精製や濃縮のほか、CNTをゲルに吸着させる過程を経るあらゆる作業工程に適用することができる。
HiPco法で合成したCNTの吸収スペクトルを示す図。 実施例1(1%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液に塩化イリジウム酸カリウム(IV)水溶液及び塩化イリジウム酸カリウム(III)水溶液を添加した溶出液)のCNTの溶出量を示す図。 実施例1における、塩化イリジウム酸カリウム(IV)及び塩化イリジウム酸カリウム(III)存在下でのCNTの吸収スペクトルの変化を示す図。 実施例2(1%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を添加した溶出液)のCNT溶出量を示す図。 実施例2における、次亜塩素酸ナトリウムの存在下でのCNTの吸収スペクトルの変化を示す図。 実施例3(1%ウンデカンスルホン酸ナトリウム水溶液に塩化イリジウム酸カリウム(IV)水溶液及び塩化イリジウム酸カリウム(III)水溶液を添加した溶出液)のCNTの溶出量を示す図。 実施例3における、塩化イリジウム酸カリウム(IV)及び塩化イリジウム酸カリウム(III)の存在下でのCNTの吸収スペクトルの変化を示す図。 実施例4(1%ウンデカンスルホン酸ナトリウム水溶液に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を添加した溶出液)のCNTの溶出量を示す図。 実施例4における、次亜塩素酸ナトリウムの存在下でのCNTの吸収スペクトルの変化を示す図。 実施例5(1%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液に塩化カリウム水溶液を添加した溶出液)のCNTの溶出量を示す図。 実施例5(1%ウンデカンスルホン酸ナトリウム水溶液に塩化カリウム水溶液を添加した溶出液)のCNTの溶出量を示す図。
本発明は、溶出液にCNT酸化剤を添加することにより、ゲルへ吸着したCNTをゲルから溶出させることを特徴とするものである。
以下、順に説明する。
[CNTについて]
本発明において、ゲルに吸着させるCNTは、金属型CNTと半導体型CNTのどちらか、もしくはそれらの混合物であっても良く、いずれも本発明における溶出の対象とすることができる。すなわち、条件によっては金属型のCNTもゲルに吸着させることができるため、そのような場合には、金属型のCNTにも適用可能である。
また、本発明におけるCNTは、製造方法や形状(直径や長さ)あるいは構造(単層、二層など)などについて問題とされることなく、いずれも本発明における溶出の対象とすることができる。
なお、一般的に、CNTの構造は、(n,m)という2つの整数の組からなるカイラル指数により一義的に定義される。本発明でいう、金属型CNTと半導体型CNTとは、CNTをその電気的性質から分けたものであり、金属型CNTは、カイラル指数がn−m=(3の倍数)となるものであり、半導体型CNTは、それ以外の(n−m=3の倍数でない)ものと定義される(非特許文献7)。
[CNT分散液の調製について]
合成されたCNTは通常、金属型CNTと半導体型CNTの両方を含む数十から数百本の束(バンドル)になっている。ゲルへのCNTの吸着に先立って、CNTを一本ずつに孤立した状態に分散・可溶化させることで、溶出効果の再現性が高まる。ただし、束になった状態であっても、CNT酸化剤による溶出効果が完全に失われるわけではない。
上記のCNTの分散可溶化のためには、CNTの懸濁溶液へ界面活性剤を添加し、十分に超音波処理を行う必要がある。
上記で分散処理を施したCNT溶液には、分散・孤立化したCNTと、分散・孤立化できずにバンドルを形成したままのCNT、合成副産物であるアモルファスカーボンや金属触媒などが含まれるため、遠心分離機より遠心分離することにより、バンドルのままのCNTやアモルファスカーボン、金属触媒を沈殿させ、一方、分散・孤立化したCNTを上清から回収することが可能である。
上記で得られた上清がゲルへのCNTの吸着に使用する試料となる。
CNT分散液の調製に用いる溶媒としては、水が最も好ましい。この点からCNT分散液の調製には水が使用される。
また、CNT分散液の調製に用いる界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤のいずれもが使用できる。
陰イオン界面活性剤としては、アルキル硫酸系で炭素数が10〜14のものや、ウンデカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸、ドデカノイルサルコシン、ドデカン酸、コール酸などが好ましい。両性界面活性剤としては、n-ドデシルホスホコリンなどが好ましい。これらの界面活性剤は混合して使用することができ、また、他の界面活性剤と併用することもできる。
併用される界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤の他、高分子ポリマー、DNA、タンパク質などの分散剤でも良い。界面活性剤などの分散剤の濃度については、使用するCNTの種類や濃度、使用する分散剤の種類などによって異なるが、例えば、終濃度で0.01%〜25%とすることができる。
この方法により、分散液中のCNTの濃度を1μg/ml〜10mg/ml、好ましくは、0.1mg/ml〜1mg/mlとすることができる。
[ゲル及びゲルへの吸着について]
本発明において使用するゲルは、従来公知の糖質系のゲルである、デキストラン系ゲル(セファクリル:アリルデキストランとN,N’-メチレンビスアクリルアミドのホモポリマー、GEヘルスケア社)、アガロースゲル、デンプンゲルなどや、アクリルアミドゲルなどである。
また、これらゲルの混合物、あるいは、これらゲルの構成成分や他の物質の混合物や化合物からなるゲルであってもよい。
ゲル濃度については、例えば、終濃度で0.01%〜25%とするのがよい。
結合力が弱く、ゲルに吸着しにくいCNTの場合には、前述のCNTの分散剤の濃度を変化させたり、昇温させたり(非特許文献11)、酸性度を適当に下げたり(非特許文献6)することで、吸着力を高めることが可能となる。
[CNTの溶出・回収について]
本発明においては、ゲルに吸着したCNTを溶出・回収するために、前述のCNT分散液に用いたのと同じ種類及び濃度の界面活性剤を含有する水溶液にCNT酸化剤を添加した溶出液を用いる。
本発明において用いるCNT酸化剤は、CNTを酸化させるものであれば特に限定されないが、例えば、塩化インジウム酸カリウム(IV)、次亜塩素酸ナトリウムなどが好ましく用いられる。
CNT酸化剤は、CNTを酸化させる条件で使用すればよく、CNTの酸化状態はCNTの吸収スペクトルの吸光度または蛍光スペクトルの発光強度の低下、もしくはラマンスペクトルの強度低下から判断できる。塩化インジウム酸カリウム(IV)であれば0.1mM以上、次亜塩素酸ナトリウムであれば1mM以上の濃度が好ましい。
なお、本発明の溶出法は、溶液のpHが中性であってもCNTをゲルから溶出させることを可能にするものであるが、溶液のpHが酸性や塩基性であっても効果が失われるわけではない。
本発明において、CNTの吸着及びCNTの溶出は、カラムに充填させたゲルに限定されるものではなく、バッチ法にも適用できる。
カラムを用いた場合、カラムへの送液は、オープンカラムを用いて溶媒の重力落下で送液する方法の他、密閉したカラムにポンプで溶液を送液する方法などが適用できる。ポンプを用いた溶出では、流速をあげて大量処理を行うことも可能である。クロマトグラフィー装置を用いた自動溶出も可能である。
[スペクトル測定]
CNTの溶出量や溶出したCNTの種類を決定するためには紫外−可視−近赤外光吸収スペクトル、蛍光スペクトル、ラマンスペクトルの測定を利用できる。
また、CNTの酸化状態は、紫外−可視−近赤外光吸収スペクトル、蛍光スペクトル、ラマンスペクトルの測定を用いて、酸化されていない状態のものと比較することにより判断できる。
HiPco法で合成したCNT(HiPco-CNT、直径1.0±0.3nm)を用いた時の結果(図1)を例として説明する。
M11と呼ばれる吸収波長帯(およそ450−650nm)は金属型CNTによるものである。S11(およそ900nm以上)、S22(およそ650-900nm)とS33(およそ450nm以下)という3つ吸収波長帯は、半導体型CNTによるものである。測定するCNTの平均直径によって吸収波長帯(M11、S11、S22、S33)は変化する。平均直径が細くなるにつれて短波長側に、平均直径が太くなるにつれて長波長側にシフトしていく。CNTが酸化するとS11の吸光度が明瞭に低下する(非特許文献8)。また、吸収スペクトルと同様に蛍光スペクトルの強度もCNTの酸化によって低下する(非特許文献9)。さらに、CNTが酸化するとラマンスペクトルの強度の低下が起きる(非特許文献10)。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明がこれに制限されるものではない。
<実施例1>
本実施例は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)で分散させたCNTをゲルへ吸着させた後、CNT酸化剤を含有するSDS水溶液で溶出した例である。
[CNT分散液の調製]
30mgのHiPco−CNTに、1%SDS水溶液(30ml)を加え、密閉式超音波分散装置(Nanoruptor、東湘電機社製)を用いて出力Hで1分間超音波処理した後、チップ型超音波破砕機(ソニファイアー、ブランソン社製、チップ先端径:0.5インチ)を用いて、冷水中で冷却しながら、出力30%で1時間超音波処理した。超音波処理よって得られた分散液を、超遠心分離(210,000×g、1時間)にかけた後、上清を70%回収した。この溶液をCNT分散液とした。
[ゲルへのCNTの吸着と溶出]
ゲルビーズ(Sephacryl S200、GEヘルスケア)をプラスチック製の容器に充填し(充填後の容量は約1ml)、純水、次いで1%SDS水溶液で平衡化した。0.2mlのCNT分散液をゲルに注入した後、1%SDS水溶液を添加し、未吸着画分を回収した。次に、CNT酸化剤である塩化イリジウム酸カリウム(IV)(K2IrCl6)水溶液を添加した1%SDS水溶液によって吸着画分のCNTを溶出して回収した。
なお、CNTの効果的な溶出に利用されている1%のデオキシコール酸ナトリウム水溶液を用いてCNTを溶出する実験を対照実験として行い、その際に溶出した溶液の630nmでの吸光度を100%とすることで、各実施例におけるCNT溶出量の定量化を行った。
1mM及び0.1mM塩化イリジウム酸カリウム(IV)の添加によって溶出したCNTの量を図2に示す。この結果は、塩化イリジウム酸カリウム(IV)の添加量の増加にともなってCNTの溶出量が増加することを明確に示している。同様の実験を、塩化イリジウム酸カリウム(III)(K3IrCl6)を用いて行ったところ、塩化イリジウム酸カリウム(III)の溶出効果は低いことが明らかになった。
塩化イリジウム酸カリウム(IV)及び塩化イリジウム酸カリウム(III)によるCNTの酸化効果を調べるために、5×10-7〜5×10-4Mの塩化イリジウム酸カリウム(IV)及び塩化イリジウム酸カリウム(III)存在下でのCNTの吸収スペクトルを測定した。結果を図3に示す。
塩化イリジウム酸カリウム(IV)の添加量の増加にともなって、CNTの吸収(S11)の吸光度が顕著に減少しており、塩化イリジウム酸カリウム(IV)によってCNTが酸化することを確認できた。一方で、塩化イリジウム酸カリウム(III)の酸化力は塩化イリジウム酸カリウム(IV)に比べて弱かった。
本実施例は、塩化イリジウム酸カリウム(IV)がゲルに吸着したCNTを酸性条件にすることなく溶出できることを明確に示している。
<実施例2>
本実施例では、上記実施例1と同様の実験を異なるCNT酸化剤である次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を用いて行った。
10mM、1mM及び0.1mMの次亜塩素酸ナトリウムの添加によって溶出したCNTの量を図4に示す。
図4に示すように、次亜塩素酸ナトリウムの添加量の増加にともなって、溶出量が増加することが明らかとなった。
次亜塩素酸ナトリウムの溶出効果は塩化イリジウム酸カリウム(IV)よりも弱いことが図2と図4の比較から明らかである。
次亜塩素酸ナトリウムの酸化効果を示すために、5×10-6〜5×10-3Mの次亜塩素酸ナトリウム存在下でのCNTの吸収スペクトルを測定した。結果を図5に示す。次亜塩素酸ナトリウムの添加量の増加にともなって、ゲルに吸着した半導体型CNTの吸収(S11)の吸光度が顕著に減少しており、次亜塩素酸ナトリウムによってCNTが酸化することを確認できた。
以上の実施例は、CNTの酸化力が塩化イリジウム酸カリウム(IV)>次亜塩素酸ナトリウム>塩化イリジウム酸カリウム(III)であり、この傾向がCNTに対する溶出効果と相関することを示している。したがって、CNT酸化剤によるCNTの酸化がゲルからのCNTの溶出に寄与していることは明らかである。
<実施例3>
本実施例では、上記実施例1と同様の実験を異なる界面活性剤である1%ウンデカンスルホン酸ナトリウム(SUS)を用いて行った。
1mM塩化イリジウム酸カリウム(IV)、0.1mMの塩化イリジウム酸カリウム(IV)及び1mMの塩化イリジウム酸カリウム(III)による溶出効果と、5×10-7〜5×10-4Mの塩化イリジウム酸カリウム(IV)及び塩化イリジウム酸カリウム(IV)によるCNTの酸化効果を、図6と図7にそれぞれ示す。
実施例1と同様の結果が得られたことから、塩化イリジウム酸カリウム(IV)がもつ溶出効果は界面活性剤の種類が変化しても利用できることが示された。実施例1と同様に塩化イリジウム酸カリウム(III)の酸化力は塩化イリジウム酸カリウム(IV)に比べて弱かった(図7)。
<実施例4>
本実施例では、上記実施例3と同様の実験を、次亜塩素酸ナトリウムを用いて行ったところ、図8及び図9に示すとおり、実施例2と同様の結果が得られた。
以上から、CNTの溶出に用いる添加剤はCNTに対する酸化効果さえ有していればよく、その他の寄与、たとえばCNT酸化剤の種類や界面活性剤の種類に制限されることはない。
<実施例5>
本実施例では、上記実施例1と実施例3と同様の実験を、CNTを酸化させる効果を有しない塩化カリウムを用いて行った。結果をそれぞれ図10(1%ドデシル硫酸ナトリウム)及び図11(1%ウンデカンスルホン酸ナトリウム)に示す。
図10、11に示すように、1mMの塩化カリウムには溶出効果が殆どなかったため、1mMで効果があった塩化イリジウム酸カリウム(IV)、次亜塩素酸ナトリウム、塩化イリジウム酸カリウム(III)の溶出効果は、塩としての効果よりもCNTの酸化に起因することを本実施例は示している。

Claims (3)

  1. 界面活性剤を含有する水溶液に分散させたカーボンナノチューブをゲルに吸着させた後、該ゲルに吸着したカーボンナノチューブを、溶出液を用いて溶出・回収する方法において、該溶出液として、前記界面活性剤を含有する水溶液にカーボンナノチューブの酸化剤を添加した溶液を用いることを特徴とするカーボンナノチューブの溶出・回収方法。
  2. カーボンナノチューブの酸化剤が、塩化インジウム酸カリウム(IV)又は次亜塩素酸ナトリウムである請求項1に記載のカーボンナノチューブの溶出・回収方法。
  3. 請求項1又は2に記載の溶出・回収方法に用いる溶出液であって、界面活性剤を含有する水溶液にカーボンナノチューブの酸化剤を添加した溶液からなることを特徴とするカーボンナノチューブ溶出液。
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