JP7079482B2 - カーボンナノチューブおよびカーボンナノチューブを含む廃液の処理方法 - Google Patents

カーボンナノチューブおよびカーボンナノチューブを含む廃液の処理方法 Download PDF

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本発明の実施形態の一つは、炭素材料の処理方法に関する。例えば本発明の実施形態の一つは、カーボンナノチューブやグラフェン、カーボンナノホーン、フラーレンなどのsp2炭素を基本骨格とするカーボンナノ材料を処理する方法に関する。
カーボンナノチューブ(以下、CNTとも記す)やグラフェン、カーボンナノホーン、フラーレンなどのカーボンナノ材料は、実質的にsp2炭素原子からだけで構成される化合物である。これらのカーボンナノ材料は、円筒状、シート状、球状、楕円球状などの種々の特異的三次元構造とその表面に広がったp軌道電子に起因し、優れた化学的安定性、機械的特性、耐熱性、電気特性を示す。このため、カーボンナノ材料の工業材料としての応用が積極的に検討されており、年間約数百トンのカーボンナノ材料が工業的規模で生産されるに至っている。
これらの材料は元来天然には存在せず、アーク放電法やレーザーアブレーション法、化学気相合成法などを利用して人工的に合成される。しかしながら近年、このような人工的に合成されたカーボンナノ材料も一部の生体由来の酵素である西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP:Horse Radish Peroxidase)やヒト好中球酵素(MPO:Myeloperoxidase)によって生分解されることが報告されている(非特許文献1から3参照)。また、酸化することで親水性が向上した酸化グラフェンなどのカーボンナノ材料が次亜塩素酸塩によって分解されることが非特許文献4で報告されている。
アレン,B.L.(Allen,B.L.)、外7名、「酵素触媒を介する単層カーボンナノチューブの生分解(Biodegradation of Single-Walled Carbon Nanotubes through Enzymatic Catalysis)」、ナノレター(Nano Letter)、(米国)、2008年、第8巻、p3899-3903 カガン,V.E.(Kagan,V.E.)、外20名、「好中球ミエロペルオキシダーゼによって分解されたカーボンナノチューブは肺炎症をより誘発しにくい(Carbon nanotubues degraded by neutrophil myeloperoxidase induce less pulmonary inflammation)」、ネイチャー ナノテクノロジー(Nature Nanotechnology)、(英国)、2010年、p1-6 ジャン,M.(Zhang,M.)、外5名、「マクロファージセル内でのカーボンナノホーンの生分解(Biodegradation of carbon nanohorns in macrophage cell)」、ナノスケール(Nanoscale)、(英国)、2015年、第7巻、p2834-2840 レオン,M.(Leon,N.)、外6名、「次亜塩素酸塩は酸化された一次元のカーボンナノチューブやナノホーンよりも速く二次元の酸化グラフェンシートを分解する(Hypochlorite degrades 2D graphene oxide sheets faster than 1D oxidised carbon nanotubes and nanohorns)」、ネイチャーパートナージャーナル 2D マテリアル アンド アプリケーション(Nature Partner Journal 2D Materials and Applications)、(英国)、2017年、第39巻、p1-9
本発明の実施形態の一つは、カーボンナノチューブなどのカーボンナノ材料を分解するための方法を提供することを課題の一つとする。例えば本発明の実施形態の一つは、カーボンナノ材料を安価で環境負荷の小さい酸化剤を用いて処理し、環境に対して無害な化合物へ変換するための方法、およびこれを用いる廃液処理方法を提供することを課題の一つとする。
本発明の実施形態の一つは、カーボンナノ材料の処理方法である。この処理方法は、カーボンナノ材料と水を含む混合物を次亜塩素酸の水溶液、あるいは次亜塩素酸塩の水溶液で処理することを含む。
カーボンナノ材料は、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノホーン、フラーレンから選択することができる。カーボンナノ材料は少なくとも単層カーボンナノチューブと多層カーボンナノチューブのいずれか一方を含んでもよい。
混合物は界面活性剤をさらに含んでもよい。上記処理は、0℃以上60℃以下の温度範囲内で行うことができる。次亜塩素酸塩は、第1族金属、第2族元素から選択される元素の次亜塩素酸塩から選択することができ、例えば次亜塩素酸ナトリウムを使用することができる。
本発明の実施形態の一つにより、簡便・安価な方法で、かつ、穏和な条件下、カーボンナノ材料を環境負荷の小さい化合物へ酸化分解することができる。このため、カーボンナノ材料を含む廃液を安価に、かつ速やかに処理し、カーボンナノ材料に起因する環境汚染を効果的に防止することができる。
実施例1と比較例1におけるCNT分散液の外観の経時変化。 実施例1と比較例1のCNT分散液の吸収強度の経時変化。 実施例2と比較例2のCNT分散液の外観の経時変化。 実施例2と比較例2のCNT分散液の吸収強度の経時変化。 実施例3、4と比較例3、4のCNT分散液の外観の経時変化。 実施例3、4と比較例3、4のCNT分散液の吸収強度の経時変化。 酸化剤存在下、非存在下における処理後のCNT残渣の透過型電子顕微鏡(SEM)像。 酸化剤存在下、非存在下における処理後のCNT残渣のラマンスペクトル。 実施例6と比較例6のCNT分散液の吸収強度の経時変化。 実施例7と比較例7のCNT分散液の吸収強度の経時変化。 酸化処理後のCNT残渣、およびコントロール実験のSEM-EDS分析結果と炭素マッピング像。
以下、本出願で開示される発明の実施形態について説明する。以下の実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと理解される。
本発明の実施形態の一つは、CNTやグラフェン、カーボンナノホーン、フラーレンなどのカーボンナノ材料を処理する方法である。この処理方法は、カーボンナノ材料を酸化剤の溶液で処理(酸化処理)することで、カーボンナノ材料を酸化分解することを含む。
カーボンナノ材料としては種々の材料を使用することができる。例えばカーボンナノ材料としてCNTを処理する場合、その構造に制限はなく、単層CNT、多層CNTのいずれを用いてもよい。CNTは、その端部がキャップされていてもよく、一方、あるいは両方の端部が開いた構造を有していてもよい。また、CNT内部にフラーレンが内包したピーポットを用いてもよい。CNTの長さにも制約はない。
カーボンナノ材料としてグラフェンを処理する場合、独立した単層のグラフェンでもよく、複数のグラフェンが積層したオリゴグラフェン、もしくはグラファイトを用いてもよい。また、基本骨格の一部が酸化された酸化グラフェンを用いてもよい。
カーボンナノ材料としてフラーレンを処理する場合、C60やC70のみならず、C74、C76、C78などを用いてもよい。また、スカンジウムやランタン、セリウムなどの金属イオンを内包したフラーレンを用いてもよく、あるいは一部の炭素が修飾され、エステル基などの官能基を有するフラーレンを用いてもよい。
酸化剤の種類に限定はないものの、安価に入手でき、環境への負荷が小さく、毒性が小さい酸化剤が好ましい。例えば次亜塩素酸、次亜塩素酸塩、オゾン、過酸化水素などが挙げられる。中でも次亜塩素酸や次亜塩素酸塩は生体内で作り出される酸化剤であり、環境への負荷が特に小さいので好ましい。
次亜塩素酸塩としては、第1族金属、もしくは第2族元素から選択される元素の塩が挙げられ、具体的には次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸リチウム、次亜塩素酸マグネシウム、次亜塩素酸カルシウムが例示される。なかでも次亜塩素酸ナトリウムは工業的に量産されており、安価に入手できるため好ましい。
酸化剤溶液における酸化剤の濃度は適宜選択することができ、例えば0.1重量%以上10重量%以下の範囲から選択される。酸化剤溶液に含まれる酸化剤の濃度、および酸化剤溶液の量は、処理するカーボンナノ材料の基本骨格中の炭素に対して化学量論量以上の酸化剤が含まれるよう、適宜調整される。後述するように、酸化剤として次亜塩素酸、あるいは次亜塩素酸塩を用いる場合、カーボンナノ材料の基本骨格を形成する炭素に対して2等量の酸化剤が反応する。したがってこの場合、炭素に対して二倍のモル数以上の酸化剤が含まれるよう、酸化剤の濃度と量が調整される。
カーボンナノ材料の酸化処理において用いられる溶媒としては、水やカルボン酸などが挙げられるが、水は安価、無臭であり、環境への負荷がないため好ましい。カルボン酸としてはギ酸や酢酸が挙げられる。また、複数の溶媒を用いてもよい。例えば水が主溶媒である場合、メタノールやエタノール、プロパノールなどのアルコール系溶媒、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミドやN,N-ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒、トルエンやキシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサンやシクロヘキサンなどの非芳香族炭化水素系溶媒、ピリジンやチオフェンなどのヘテロ芳香族系溶媒、塩化メチレンやクロロホルムなどのハロゲン系溶媒、酢酸エチルや酢酸メチルなどのエステル系溶媒、ジメチルスルホキシドなどの含硫黄溶媒が含まれていてもよい。
酸化処理の温度に制限はなく、0℃以上50℃以下の範囲から適宜選択される。例えば37℃で酸化処理することができ、これにより、大きな処理速度が得られ、かつ、酸化剤の分解を抑制することができる。加熱や冷却を行わず、室温(15℃以上25℃以下)で酸化処理を行ってもよい。
酸化処理は、界面活性剤の存在下で行ってもよい。カーボンナノ材料は、構造や導入される置換基によっては溶媒中では分散しにくいものの、界面活性剤の存在下では水などの溶媒中、比較的容易に分散する。このため、界面活性剤の存在下で処理を行うことで、カーボンナノ材料の分解速度を増大させることができる。界面活性剤としては、モノアルキル硫酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸塩、テトラアルキルアンモニウム塩などから選択することができる。あるいは、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩などの常温で液体として存在するイオン性液体を界面活性剤として用いてもよい。
カーボンナノ材料の基本骨格はsp2炭素のみで構成されるので、この酸化処理は以下のスキームで表される反応を含む。より具体的には、次亜塩素酸、第1族金属の次亜塩素酸塩、および第2族元素の次亜塩素酸塩を酸化剤として用いる場合には、それぞれ以下のスキーム(1)から(3)に表される反応が含まれる。
Figure 0007079482000001
ここで、nはカーボンナノ材料の基本骨格を構成する炭素のモル数であり、Mは第1族金属、あるいは第2族元素である。
上記スキームから理解されるように、本実施形態の酸化処理では、カーボンナノ材料の酸化的分解によって二酸化炭素、および塩化金属あるいは塩酸が生成する。これらの化合物は一般的な排気装置や中和装置、廃液処理装置で容易に処理することができるため、本実施形態の酸化処理は環境への負荷が小さいことが分かる。特に次亜塩素酸や次亜塩素酸塩は安価に入手可能であるため、本実施形態を適用することで、容易に、安価に、かつ、環境へ負荷をかけることなくカーボンナノ材料を処理するための方法が提供される。
カーボンナノ材料を合成・製造する際、あるいは加工したり反応に供したりする場合、副生する廃液中にカーボンナノ材料が含まれることがある。カーボンナノ材料の毒性に関する情報は比較的少ないものの、一部のカーボンナノ材料は発がん性が疑われていることから、廃液中のカーボンナノ材料を確実に処理することが重要である。従来、廃液中のカーボンナノ材料の処理は、廃液を濾過した後、濾物を焼却処理することで行われてきた。このため、濾過のためのコストや時間に起因し、カーボンナノ材料の製造コストや利用コストが増大する。このことは、不完全に処理された廃液の投棄や漏出を誘発する原因となる。
注目すべき点は、カーボンナノ材料の一つであるグラフェンを過マンガン酸や過マンガン酸塩、硫酸、硝酸、混酸なの強酸化剤を用いて一部酸化(前処理)して得られる酸化グラフェンが次亜塩素酸水溶液中で分解されることが報告されているものの(非特許文献4参照)、実施例で実験的に示すように、本実施形態の処理方法では、このような酸化的前処理を行わなくても、安価な酸化剤を用いて温和な条件下でカーボンナノ材料を完全分解することができる点である。したがって本実施形態の処理方法は、重金属を含む酸化剤の使用を必要とせず、混酸などの高濃度酸廃液の中和処理を伴わない。また、この処理方法では濾過工程は必須ではなく、かつ、環境に対する有害物質を副生しない。さらに、界面活性剤の存在下でも速やかにカーボンナノ材料を分解することが可能である。カーボンナノ材料を水などの溶媒に分散する場合には界面活性剤が頻繁に使用されることから、カーボンナノ材料を含む廃液には界面活性剤が混在する可能性が高い。これらのことを考慮すると、本実施形態に係る処理方法は、カーボンナノ材料を含む廃液の簡便かつ有効な処理方法であり、これを適用することにより、カーボンナノ材料の環境への漏出を防ぎ、安全性を確保しつつカーボンナノ材料の製造や開発、利用を促進することが可能となる。
以下、上記実施形態に即した実施例を説明する。
1.実施例1
本実施例では、水中における単層CNTの次亜塩素酸ナトリウムによる酸化処理について記述する。
単層CNTと水の混合物(0.1mg/mL)1mLと次亜塩素酸ナトリウム5水和物(和光株式会社製)の水溶液(50mg/mL)4mLをガラス瓶に加えてCNT分散液を調製し、37℃で静置した。比較例1として、単層CNTと水の混合物(0.1mg/mL)1mLと純水4mLをガラス瓶に加えてCNT分散液を調製し、これを同条件で静置した。用いた単層CNTは、長さが1mm程度のスーパーグロースCNTであり、鉄触媒の存在下、加熱しながら微量の水を含むエチレンガスを供給することで合成した。
図1にCNT分散液の外観の経時変化を示す。図1では左から順に処理開始後0時間、24時間、48時間、96時間後の外観写真が示されており、それぞれの外観写真において、右側が実施例1であり、左側が比較例1である。図1に示すように、酸化処理開始時のCNT分散液はCNTに由来して黒く着色し、不透明であるが、酸化処理開始後、実施例1ではこの着色が速やかに消失することが確認された。これに対し、比較例1ではCNT分散液の着色は消失せず、96時間後でも初期の着色が維持されていた。
図2にCNT分散液の700nmにおける吸収の経時変化を示す。図2に示すように、実施例1のCNT分散液の吸収は、酸化処理開始後1時間程度で急激に減少し、約30時間後には吸収はほとんど観測されなかった。これに対し、比較例1のCNT分散液の吸収は、96時間経過後もその強度はほとんど変化していないことが分かる。
以上の結果から、本実施形態の処理方法によって単層CNTが速やかに分解されることが示唆される。
2.実施例2
本実施例では、水中における多層CNTの次亜塩素酸ナトリウムによる酸化処理について記述する。
多層CNT(Nanocyl社製、NC7000)と水を含む混合物(0.1mg/mL)1mLと次亜塩素酸ナトリウム5水和物(和光株式会社製)の水溶液(50mg/mL)4mLをガラス瓶に加えてCNT分散液を調製し、これを37℃で静置した。比較例2として、多層CNTと水を含む混合物(0.1mg/mL)1mLと純水4mLをガラス瓶に加えてCNT分散液を調製し、同条件で静置した。
CNT分散液の外観の経時変化を図3に示す。図1と同様、図3において左から順に処理開始後0時間、24時間、48時間、96時間後の外観写真であり、それぞれの外観写真において、右側が実施例2であり、左側が比較例2である。実施例1と同様、酸化処理開始時のCNT分散液は多層CNTに由来して黒く着色しているが、酸化処理開始後、実施例2ではこの着色が速やかに消失することが確認された。これに対し、比較例2ではCNT分散液の着色は消失せず、96時間後でも初期の着色が維持されていた。
図4にCNT分散液の700nmにおける吸収の経時変化を示す。図4に示すように、実施例2のCNT分散液の吸収は、酸化処理開始後徐々に低下し、約80時間後には吸収はほとんど観測されなかった。これに対し、比較例2のCNT分散液の吸収はほとんど変化していないことが確認された。
3.実施例3、4
本実施例では、市販の次亜塩素酸水溶液を用いてCNTの酸化処理を行った例について説明する。
単層CNT(スーパーグロースCNT)と水の混合物(0.1mg/mL)1mL、および500ppm次亜塩素酸水溶液(株式会社流行人製)4mLをガラス瓶に加えてCNT分散液を調製した(実施例3)。同様に、多層CNT(Nanocyl社製、NC7000)と水の混合物(0.1mg/mL)1mL、および500ppm次亜塩素酸水溶液(株式会社流行人製)4mLとをガラス瓶に加えてCNT分散液を調製した(実施例4)。これらのCNT分散液を37℃で静置した。比較例3、4として、それぞれ上記単層CNT、あるいは多層CNTと水の混合物(0.1mg/mL)1mL、および純水4mLをガラス瓶に加えてCNT分散液を調製し、同条件で静置した。
図5(A)、図5(B)に分散液の外観の経時変化を示す。図5(A)は単層CNTを用いた例(実施例3、比較例3)の結果であり、図5(B)は多層CNTを用いた例(実施例3、比較例4)の結果である。図5(A)、図5(B)には、左から順に処理開始後0時間、24時間、48時間、96時間後の外観写真が示されている。各外観写真において、右側が実施例3、あるいは4であり、左側が比較例3、あるいは4である。図5(A)、図5(B)から明らかなように、単層CNT、多層CNTのいずれの場合においても、酸化処理開始時のCNT分散液はCNTに由来して黒く着色しているが、酸化処理開始後、実施例3と4ではCNT分散液の着色が徐々に消失していくことが確認された。これに対し、比較例3、4では分散液の着色は消失せず、96時間後でも初期の着色が維持されていた。
図6(A)に実施例3と比較例3のCNT分散液の700nmにおける吸収の経時変化を、図6(B)に実施例4と比較例4のCNT分散液の700nmにおける吸収の経時変化を示す。図6(A)から、単層CNTの場合には、CNT分散液の吸収は酸化処理開始後10時間から15時間程度で半減することが分かった。一方、多層CNTの場合には吸収の減少はやや遅いものの、70時間から80時間程度で吸収強度が半減することが分かった。実施例1、2と比較して吸収の減少が遅いが、これは酸化剤の濃度が低いためと考えられる。これに対し、比較例3、4では、吸収強度は全く変化していないことが確認された(図6(A)、図6(B))。
4.実施例5
酸化処理を開始してから24時間後のCNT残渣のSEMによるモルフォロジー観察、およびラマンスペクトルの測定を行った。SEM観察用のサンプルは、以下の方法によって作製した。まず、処理後のCNT分散液を限外濾過フィルタ(分画分子量1万)を用いて濾過し、得られたCNT残渣を水(0.2mL)に分散した。この分散液を銅のグリッド上に滴下し、室温で終夜乾燥し、サンプルを得た。SEMとしてトプコン製透過型電子顕微鏡002B HRTEMを用い、加速電圧120keV、加速電流36μAでSEM像を得た。
図7(A)、図7(B)にそれぞれ、単層CNTを酸化剤(次亜塩素酸ナトリウム)の非存在下、存在下で24時間処理した後に得られたCNT残渣のSEM像を示す。一方、図7(C)、図7(D)はそれぞれ、多層CNTを酸化剤の非存在下、存在下で24時間処理した後に得られたCNT残渣のSEM像である。
図7(A)から、酸化剤非存在下で得られるCNT残渣ではフィブリル状のモルフォロジーが観察され、単層CNTの構造が残存していることが明確に確認された。一方、酸化剤存在下で得られるCNT残渣では、単層CNTの構造が破壊され、アモルファス状のモルフォロジーへ変化していることが分かる(図7(B))。多層CNTを用いた場合でも同様の傾向が確認されており、酸化剤非存在下で得られるCNT残渣では明確なフィブリル構造が確認されるものの(図7(C))、酸化剤存在下で得られるCNT残渣は、その構造が大きく変化していることが分かる(図7(D))。
図8(A)に単層CNTを用いた場合のCNT残渣のラマンスペクトルを、図8(B)に多層CNTを用いた場合のCNT残渣のラマンスペクトル(励起波長532nm)を示す。ラマンスペクトル測定用のサンプルは、処理後のCNT分散液を限外濾過フィルタ(分画分子量1万)を用いて濾過し、濾物を水(0.2mL)に分散し、この分散液をガラス板上に滴下し、室温で終夜乾燥することで作製した。測定には、堀場製作所製顕微レーザーラマン分光測定装置LabRam HR Evolutionを用いた。図8(A)、図8(B)において、実線は酸化剤存在下で処理して得られるCNT残渣のスペクトルであり、点線は酸化剤非存在下で処理して得られるCNT残渣のスペクトルである。これらの図に示すように、CNTを酸化剤存在下で処理した後にはラマンDバンドピーク強度が増大することが確認された。CNTのラマンスペクトルのDバンドピークは、CNTがアモルファス状態で存在する、もしくはCNTに欠陥が存在していることを示唆するピークである。したがってこれらの結果は、酸化剤によってCNTの構造が破壊され、多くの欠陥が生成することを示唆している。
5.実施例6、7
本実施例では、界面活性剤の存在下でCNTを処理した例を示す。実施例1、比較例1と同様の方法でCNT分散液(0.1mg/mL)を調製し、そこにCNT分散液10mLに対して10mgの界面活性剤を加えた。界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(BSA)、およびポリエチレングリコール(PEG)を用いた。前者の界面活性剤を用いた処理が実施例6と比較例6、後者の界面活性剤を用いた処理が実施例7と比較例7である。比較例1と同様、比較例6、比較例7は酸化剤非存在下での処理である。
図9に実施例6と比較例6のCNT分散液の700nmにおける吸収の経時変化を、図10に実施例7と比較例7のCNT分散液の700nmにおける吸収の経時変化を示す。これらの図から、CNT分散液の吸収は酸化処理開始後速やかに減少し、約20時間後には吸収がほぼ消失することが分かった。一方、酸化剤が存在しない比較例6と比較例7では、CNT分散液の吸収は変化していないことが確認された。このことから、界面活性剤の存在はCNTの酸化処理に影響を与えないことが結論付けられる。
6.実施例8
本実施例では、本発明の実施形態の一つである酸化処理後の最終生成物に関する考察を行った結果を述べる。
単層CNT、あるいは多層CNTを酸化剤(次亜塩素酸ナトリウム)で120時間酸化処理した後、透明となったCNT分散液を75℃で1時間加熱し、次亜塩素酸ナトリウムを分解した。その後、この分散液0.5mLに0.05M塩化カルシウム水溶液(0.5mL)を加えたところ、即座に白濁が観察された。このことから、酸化処理後の分散液には炭酸イオン(CO3 2-)が存在していることが示唆される。
次亜塩素酸ナトリウムを分解した後に得られる上記分散液を塩化メチレンを用いて抽出し、抽出物に対して液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)を行った。質量分析は、JEOL製高性能二重収束質量分析計MStation JMS-700を用いて行った。その結果、芳香族炭化水素に帰属されるピークはほとんど検出されず、24時間の酸化処理後のCNT分散液からの抽出物中にm/z131のピークがわずかに検出されるにとどまった。また、さらに長時間酸化処理した後に得られるCNT分散液からの抽出物の質量スペクトルには、このピークは全く検出されなかった。
SEMに搭載されるエネルギー分散型X線分光器(EDS)を用い、酸化剤で処理した後に生成するCNT残渣の元素分析を行った。分析に使用したサンプルは、以下のように作製した。単層CNT、あるいは多層CNTを酸化剤(次亜塩素酸ナトリウム)存在下120時間処理した後、透明となったCNT分散液に6.5M塩酸(100μL)を加え、この分散液をさらに70℃で数分間加熱した。次亜塩素酸試験紙(共立理化学研究所製次亜塩素酸試験紙WAP-ClO)を用いて次亜塩素酸が検出されないことを確認した後、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを調整し、得られた溶液をSiNウエハ上に滴下し、乾燥してサンプルを得た。SEM観察とEDS分析には、それぞれ日立ハイテクノロジーズ製電界放出型走査電子顕微鏡SU8200、ブルカー製エネルギー分散型X線分光器5060FlatQUADを用いた。
図11(A)、図11(B)にそれぞれ、単層CNTと多層CNTの酸化処理後のCNT残渣のEDS分析結果を示す。図11(C)はコントロール実験に対応し、CNTを含まない水と次亜塩素酸ナトリウムの溶液から作製したサンプルを分析して得られた結果である。これらの図において、左側はEDS分析結果であり、右側は炭素マッピング像である。注目すべき点は、EDS分析結果の比較から分かるように、コントロール実験ではCNTを使用していないにもかかわらず、コントロール実験を含む全てのサンプルで炭素、酸素、塩素、およびナトリウムに由来するピークの強度比は同様であり、また、炭素マッピング像もこれらの全てのサンプル間でほとんど差が無い点である。このことは、これらのサンプル間で炭素の存在量がほとんど同じであることを示唆している。また、EDS分析結果から、ナトリウムと塩素のモル比はほぼ1:1であることが確認された。
以上の結果から、本実施形態の酸化処理では、カーボンナノ材料が酸化剤によって化学的に酸化されて二酸化炭素へ分解されることが示唆される。すなわち、本酸化処理は上述したスキームで表される反応を主な反応ルートとして進行すると言える。また、LC-MSにおいて芳香族炭化水素に相当するピークがほとんど検出されなかったこと、およびCNT残渣の炭素マッピング像はコントロール実験のそれと同様であったことから、酸化反応ほぼ定量的に進行し、CNTが事実上完全に分解されることが示唆される。
以上の実施例から、本発明の実施形態の一つである酸化処理を適用することで、CNTに例示されるカーボンナノ材料を温和な条件下、速やかに、かつ定量的に酸化分解可能であることが確認された。また、この酸化処理は界面活性剤による影響を受けず、環境に負荷のかかる副生成物を与えない。したがって本発明の実施形態を適用することで、例えばカーボンナノ材料を含む廃液を効率よく処理し、無害化できることが可能となる。

Claims (7)

  1. カーボンナノチューブと水を含む混合物を次亜塩素酸の水溶液、あるいは次亜塩素酸塩の水溶液で処理することを含み、
    前記次亜塩素酸の水溶液中の次亜塩素酸濃度と前記次亜塩素酸塩の水溶液中の次亜塩素酸塩濃度は、0.1重量%以上10重量%以下である、
    カーボンナノチューブの処理方法。
  2. 前記カーボンナノチューブは少なくとも単層カーボンナノチューブと多層カーボンナノチューブのいずれか一方を含む、請求項1に記載の処理方法。
  3. 前記混合物は界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載の処理方法。
  4. 前記処理は、0℃以上60℃以下の温度範囲内で行われる、請求項1に記載の処理方法。
  5. 前記次亜塩素酸塩は、第1族金属、第2族元素から選択される元素の次亜塩素酸塩である、請求項1に記載の処理方法。
  6. 前記次亜塩素酸塩は、次亜塩素酸ナトリウムである、請求項に記載の処理方法。
  7. 請求項1に記載の処理方法を含む、前記カーボンナノチューブを含有する廃液の処理方法。
JP2018114177A 2018-06-15 2018-06-15 カーボンナノチューブおよびカーボンナノチューブを含む廃液の処理方法 Active JP7079482B2 (ja)

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