JP2016131161A - 自動車用フレキシブルフラットケーブル - Google Patents
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Abstract
【課題】狭配索スペース用途に求められる、従来品よりも可撓性が高く、かつ、押出し成形により安定的に製造できる薄肉の自動車用フレキシブルフラットケーブルを提供する。【解決手段】絶縁層が、溶融張力が0.02N以上0.2N以下でありかつ前記絶縁層の成形温度でのダイスウェル比が1.1以上2.0以下である塩化ビニル系樹脂組成物により構成され、導体の自動車用フレキシブルフラットケーブルの厚さ方向の導体厚さが0.02mm以上0.5mm以下であり、かつ、導体が存在する部分の絶縁層の厚さが0.05mm以上0.2mm以下であり、かつ、塩化ビニル系樹脂組成物が、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、可塑剤が30重量部以上50重量部以下、かつ、加工助剤が0.5重量部以上5重量部以下配合されてなる自動車用フレキシブルフラットケーブル。【選択図】図1
Description
本発明は、自動車用フレキシブルフラットケーブルに関し、特に押出し成形により製造される自動車用フレキシブルフラットケーブルに関する。
フレキシブルフラットケーブルの可撓性を利用して、例えば可動部と固定部との間を電気的接続するために用いられ、その形状からフレキシビリティに富み、また、必要スペースも少なくて済み、必要に応じて巻き取りも容易であるという利点から、スキャナヘッドやプリンタヘッドなどと固定部である本体部との接続、あるいは、自動車のクロックスプリング等、極めて広い範囲で用いられている。
このようなフレキシブルフラットケーブルはラミネート工法によって製造されることが多かった。このようなものとして特開平10−278206号提案の技術が挙げられる。すなわち、難燃性が付与された飽和ポリエステル樹脂からなる基材シートにヒートシール性樹脂からなるヒートシール層を積層した複合シートを用いて導体をラミネートする技術である。
ここでヒートシール層により、フレキシブルフラットケーブルとして求められる高い摺動屈曲特性が得られ、導体への十分な接着性が確保されていた。
しかしながら、このような方法によると、基材シート製造工程、ヒートシール層形成工程、ラミネート工程など、工程が多く、例えば一般的な押出し成形で製造される被覆電線と比べると、製造コストが極めて高くなり、自動車分野においては、クロックスプリングなどの極めて高い耐屈曲性(例えば、1000万回以上)が求められる部品としては用いられていたものの、フレキシブルフラットケーブルの採用により薄型小型化が可能となるスライドドア等のドアへの応用においてはほとんど適用されてこなかった。
ここで、曲げ弾性率が200MPa以上800MPa未満の熱可塑樹脂を用い、押出し成形法により、フレキシブルフラットケーブルを製造する技術が国際公開WO2008/056772号公報(特許文献1)で提案されている。この技術によれば耐摺銅屈曲性に優れたフレキシブルフラットケーブルが得られるとされている。
しかしながら、上記のような熱可塑樹脂を用いた場合に、薄いフレキシブルフラットケーブルを製造する際に樹脂により導体が被覆できない、あるいは、均一な構造を得ることができないと云った問題が生じており、問題となっていた。
特に、例えば機器内配索などの自動車用の狭配索スペース用途に求められる、導体上の絶縁層の厚さが0.2mm以下の薄肉のフレキシブルフラットケーブルを製造することは従来できなかった。
本発明は、上記した従来の問題点を改善する、すなわち、自動車の狭配索スペース用途に求められる、導体が存在する部分の絶縁層の厚さが0.2mm以下の薄肉のフレキシブルフラットケーブルを安定的に得られるフレキシブルフラットケーブル製造方法と、このような薄肉化により従来品よりも可撓性(柔軟性)が高い自動車用フレキシブルフラットケーブルを提供することを目的とする。
本発明のフレキシブルフラットケーブルは上記課題を解決するため、請求項1に記載の通り、互いに平行配列された複数の導体周囲に絶縁層が配された自動車用フレキシブルフラットケーブルにおいて、前記絶縁層が、溶融張力が0.02N以上0.2N以下でありかつ前記絶縁層の成形温度でのダイスウェル比が1.1以上2.0以下である塩化ビニル系樹脂組成物により構成され、前記導体の自動車用フレキシブルフラットケーブルの厚さ方向の導体厚さが0.02mm以上0.5mm以下であり、前記導体が存在する部分の前記絶縁層の厚さが0.05mm以上0.2mm以下であり、かつ、前記塩化ビニル系樹脂組成物が、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、可塑剤が30重量部以上50重量部以下、かつ、加工助剤が0.5重量部以上5重量部以下配合されてなることを特徴とする自動車用フレキシブルフラットケーブルである。
また、本発明のフレキシブルフラットケーブルは請求項2に記載の通り、請求項1に記載のフレキシブルフラットケーブルにおいて、前記加工助剤が、アクリル系高分子化合物、アクリル系ゴム、ポリテトラフルオロエチレン系加工助剤、及び、シリコーンアクリル複合ゴムから選ばれたものである。
本発明の自動車用フレキシブルフラットケーブルによれば、前記絶縁層が、溶融張力が0.02N以上0.2N以下でありかつ前記絶縁層の成形温度でのダイスウェル比が1.1以上2.0以下である塩化ビニル系樹脂組成物により構成され、前記導体の自動車用フレキシブルフラットケーブルの厚さ方向の導体厚さが0.02mm以上0.5mm以下であり、かつ、前記導体が存在する部分の前記絶縁層の厚さが0.05mm以上0.2mm以下であり、かつ、前記塩化ビニル系樹脂組成物が、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、可塑剤が30重量部以上50重量部以下、かつ、加工助剤が0.5重量部以上5重量部以下配合されてなるために、押出し成形により安定的に、かつ、安価に製造することができ、また、狭配索スペース用途に応用可能で、薄肉で柔軟性に優れた自動車用フレキシブルフラットケーブルとなる。
図1に本発明に係る自動車用フレキシブルフラットケーブルAの断面を示したモデル図を示す。
この例では互いに平行配列された6本の平角導体1の周囲に絶縁層2が配されて構成されている(この例では平角導体を用いる例を挙げたが、必ずしも平角導体を用いる必要はなく、断面が丸の導体(この場合、自動車用フレキシブルフラットケーブル(以下、単に「フレキシブルフラットケーブル」とも云う。)の厚さ方向の導体厚さは導体の直径となる)、あるいは、撚線導体を用いても良い)。
平角導体1としては、一般的なフレキシブルフラットケーブルに用いられているのと同じ平角導体、すなわち、銅や銅合金、アルミニウムやアルミニウム合金などからなる導体や錫メッキ銅導体を用いることができる。
平角導体の厚さとしてはフレキシブルフラットケーブルとしての十分な容量と、強度、さらに、十分な可撓性を満足するために0.02mm以上0.5mm以下であることが好ましい。平角導体の幅としては用途に応じて十分な容量が確保されるように決定するが、このとき、平角導体の幅はすべて同じである必要はなく、必要に応じて決定する。また、フレキシブルフラットケーブルに配置される平角導体の数も用途に応じて決定する。
フレキシブルフラットケーブルの樹脂層の厚さ、すなわち、導体の存在する部分の樹脂層の厚さとしては、十分な強度、及び、十分な絶縁性を得るために0.02mm以上であることが好ましく、十分な可撓性が得られるように0.5mm以下であることが好ましい。フレキシブルフラットケーブル幅は導体の数、用途などに応じて適宜決定する。
上記樹脂層は、前記押出し成形における成形温度でのダイスウェル比が1.1以上である塩化ビニル系樹脂組成物により構成されていることが必要である。この構成により、安定した薄肉部分を有するフレキシブルなフラットケーブルの製造が可能となる。また、ダイスウェル比が2.0以下であることが好ましい。2.0超であると脈動が生じやすくなり、このとき外観不良となる。
本発明において、ダイスウェル比は、JIS K7199の4.7.2に準拠して測定・算出した値を用いる。具体的には図3のように、ダイスを用いて押出したときの、樹脂組成物を直径がD(mm)(室温で測定)のダイスを通過させたときに得られる押出し成形物の太さDa(mm)(室温で測定)において、ダイスウェル比Saは次の式(1)で算出される。なお、図3中Lはダイス長さ(mm)である。
[数1] Sa=Da/D ……(1)
本発明において押出し成形時の成形温度とは、具体的には押出し成形機のノズル部での温度である。
本発明で用いる塩化ビニル系樹脂組成物において、上記のダイスウェル比が1.1未満であると成形性が低く、そのために薄く、可撓性に優れたフレキシブルフラットケーブルを安定的に生産することができない。
本発明での絶縁層は塩化ビニル系樹脂組成物により構成されていることが必要である。すなわち、塩化ビニル系樹脂組成物は、耐酸性、耐アルカリ性が強く、耐水性も良好であり、さらに酸素指数(OI)も40〜45と高く、難燃性である。自動車用途で求められるこれらの諸性能を満足しながらも、難燃剤や難燃助剤の添加が不要であるので、低コストでありながら軽量なフラットケーブルの製造が可能となる。さらに、塩化ビニル系樹脂組成物はエンジニアリングプラスチックに比して低い温度(150〜200℃)で加工できるために、フラットケーブルの製造が容易である。
本発明で用いる塩化ビニル系樹脂組成物において、上記のようなダイスウェル比は樹脂へ加工助剤を適量配合することで達成できる。塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート等に添加することによって溶融弾性の向上とポリ塩化ビニル(PVC)のゲル化の促進とを図れる加工助剤としては、アクリル系高分子化合物、アクリル系ゴム、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)系、シリコーンアクリル複合ゴムなどが挙げられ、これらのうち、ポリ塩化ビニル(PVC)のゲル化促進、すなわち、分子の長鎖がマトリックス樹脂の分子と絡まることにより疑似架橋状態をつくり、溶融弾性を付与できるためにアクリル系高分子化合物を用いることが好ましい。加工助剤の配合量としては、ベース樹脂100重量部に対して、0.5重量部以上、5重量部以下であることが好ましい。すなわち0.5重量部未満であると、ダイスウェル比を十分に向上させることが難しく、また、5重量部超であると成形時の溶融樹脂の流れに脈動が生じやすくなり、このとき成形不良となる。
本発明で用いる塩化ビニル系樹脂組成物は次のように測定される溶融張力が0.02N以上0.5N以下であると、より可撓性の高いフラットケーブルの製造が可能となる。
すなわち、180℃に設定されたキャピログラフ1D PMD−C(東洋精機製作所製)を用い、そのシリンダーに樹脂組成物からなるペレットを投入し、3分間保持し、その後ピストンスピード20mm/分でキャピラリーから押出し、キャピラリーから排出された材料を巻き取り速度3.0mm/分で巻き取り機により巻き取る。この際の溶融張力(N)を測定した。なお、L/Dにおけるキャピラリー長さLは10mm、キャピラリー直径Dは1.0mmとした。
塩化ビニル系樹脂組成物において可塑剤、加工助剤の添加量を変えて溶融張力を調整する。溶融張力が0.02N未満であるとフラットケーブル端部にちぎれが発生しやすく、0.2N超であると膨張し、成形時に脈動が発生し、製品の厚さ、幅にばらつきが生じやすくなる。
本発明で用いる塩化ビニル系樹脂組成物は、ベースとなるポリ塩化ビニル、可塑剤、安定剤、及び、上記加工助剤に加え、各種ロールミル等で混練して得ることができる。
本発明のフレキシブルフラットケーブルは上記のような塩化ビニル系樹脂組成物により、押出し成形法により平行配列された複数の導体の周囲に押出されて成形される。成形時の線速は50m/分〜200m/分であることが好ましい。すなわち、この範囲未満であると生産性が低く、この範囲超であると断面形状が均一なフレキシブルフラットケーブルの製造が困難となる。
以下に本発明の自動車用フレキシブルフラットケーブルの実施例について具体的に説明する。
樹脂組成物の原料は表1に示すものを用い、二軸混練押出機若しくはニーダーを用いて表2〜表4に示す配合量(重量部)になるように混錬し、12種類の樹脂組成物を得た。
次にこれら12種類の樹脂組成物により押出し成形法によりそれぞれフレキシブルフラットケーブル(断面をモデル的に図1に示した)を作製した。具体的には図2に示す導体間距離Pが0.5mmとなるように、電気銅からなる幅Woが2.0mm、厚さToが0.15mmの平角導体6本、あるいは、幅Woが2.0mm、厚さToが0.10mmの平角導体6本、もしくは、幅Woが2.0mm、厚さToが0.05mmの平角導体6本をそれら幅方向に平行配列しながら、これら周囲に、上記の各樹脂を成形可能な温度条件(180℃)で、幅Wが15.5mm、導体が存在する部分の絶縁層の厚さSが0.20mm、0.10mm、あるいは、0.08mmとなるように押出し成形機を用い、各押出し温度で良好な押し出し成形が可能な温度に設定して線速50m/分〜200m/分で押出し成形を行い、表2〜表4に示す計36種類のフレキシブルフラットケーブルをそれぞれ得た。
なお、これら表には前記押出し成形における成形温度、すなわち、200℃でのダイスウェル比、および、それぞれのポリ塩化ビニル樹脂組成物の190℃での溶融張力を併せて記載した。
上記で得られたフレキシブルフラットケーブルについてそれぞれ、外観評価、及び、構造評価を行った。
<外観評価>
得られたフレキシブルフラットケーブルについて、目視観察により、外観形状に歪みや撚れがなく、導体表面からの樹脂の浮きや剥がれが生じていない場合には良好であるとして「○」、これらのいずれかが生じていた場合には不十分として「×」としてそれぞれ評価した。
得られたフレキシブルフラットケーブルについて、目視観察により、外観形状に歪みや撚れがなく、導体表面からの樹脂の浮きや剥がれが生じていない場合には良好であるとして「○」、これらのいずれかが生じていた場合には不十分として「×」としてそれぞれ評価した。
<構造評価>
絶縁層の厚さについて、得られたフレキシブルフラットケーブルをそれぞれ50m毎に樹脂埋め、すなわち、ケーブルのつぶれを防止するために、切断部付近をあらかじめエポキシ樹脂内に埋め込んでエポキシ樹脂ごと切断したのち、切断面を研磨して、切断による変形を受けてない面を顕微鏡で観察しながら導体部分の絶縁層の厚さを測定し、それらの厚さ測定値のすべてが設計値(上記例では0.20mm、あるいは0.08mm)の±0.05mm以内である場合を安定したフレキシブルフラットケーブル構造が得られたとして「○」、±0.05mmよりも大きい場合を安定したフレキシブルフラットケーブル構造が得られなかったとして「×」としてそれぞれ評価した。
絶縁層の厚さについて、得られたフレキシブルフラットケーブルをそれぞれ50m毎に樹脂埋め、すなわち、ケーブルのつぶれを防止するために、切断部付近をあらかじめエポキシ樹脂内に埋め込んでエポキシ樹脂ごと切断したのち、切断面を研磨して、切断による変形を受けてない面を顕微鏡で観察しながら導体部分の絶縁層の厚さを測定し、それらの厚さ測定値のすべてが設計値(上記例では0.20mm、あるいは0.08mm)の±0.05mm以内である場合を安定したフレキシブルフラットケーブル構造が得られたとして「○」、±0.05mmよりも大きい場合を安定したフレキシブルフラットケーブル構造が得られなかったとして「×」としてそれぞれ評価した。
これらの評価結果を表2〜表4に併せて示した。
これら表によれば、本願発明に係る自動車用フレキシブルフラットケーブルは外観、構造において優れた自動車用フレキシブルフラットケーブルであり、安定的に製造可能であることが理解できる。
これら表によれば、本願発明に係る自動車用フレキシブルフラットケーブルは外観、構造において優れた自動車用フレキシブルフラットケーブルであり、安定的に製造可能であることが理解できる。
1 平角導体
2 絶縁層
2 絶縁層
Claims (2)
- 互いに平行配列された複数の導体周囲に絶縁層が配された自動車用フレキシブルフラットケーブルにおいて、
前記絶縁層が、溶融張力が0.02N以上0.2N以下でありかつ前記絶縁層の成形温度でのダイスウェル比が1.1以上2.0以下である塩化ビニル系樹脂組成物により構成され、
前記導体の自動車用フレキシブルフラットケーブルの厚さ方向の導体厚さが0.02mm以上0.5mm以下であり、かつ、
前記導体が存在する部分の前記絶縁層の厚さが0.05mm以上0.2mm以下であり、かつ、
前記塩化ビニル系樹脂組成物が、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、可塑剤が30重量部以上50重量部以下、かつ、加工助剤が0.5重量部以上5重量部以下配合されてなることを特徴とする自動車用フレキシブルフラットケーブル。 - 前記加工助剤が、アクリル系高分子化合物、アクリル系ゴム、ポリテトラフルオロエチレン系加工助剤、及び、シリコーンアクリル複合ゴムから選ばれたものであることを特徴とする請求項1に記載の自動車用フレキシブルフラットケーブル。
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2016
- 2016-04-22 JP JP2016086509A patent/JP2016131161A/ja not_active Abandoned
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