JP2016129926A - 溝加工装置、溝加工方法および溝加工システム - Google Patents

溝加工装置、溝加工方法および溝加工システム Download PDF

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Masahiko Hasegawa
正彦 長谷川
本田 武信
Takenobu Honda
武信 本田
正雄 明石
Masao Akashi
正雄 明石
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Abstract

【課題】装置の小型化が可能であり、偏芯回転に対応して切り込み量を一定に保ち、加工効率の良いロープ溝の再生加工装置を得る。
【解決手段】この発明の溝加工装置は、ロープ溝を切削する刃具と、刃具を位置調整して取り付ける取付具と、切削方向において刃具の前後に位置し、溝の底と接して摺動する取付具に固定された一対の摺動体と、取付具を切削方向に対しある角度で溝車(被加工物)側に引張支持する前後一対のリンクと、によって構成される。
【選択図】 図2

Description

この発明は、エレベータやクレーンなどのロープを駆動する装置に関し、特にロープとの摩擦によって摩耗したロープ溝車のロープ溝の再生に関するものである。
エレベータ、クレーン、リフト、ロープウエイ、ケーブルカー等は、ロープを駆動する装置(以後、巻き上げ機)を備えている。巻き上げ機の駆動機(モータなど)によってロープ溝車(以後、溝車)が回転すると、ロープとロープ溝との間に摩擦力が発生する。この溝車には動力を摩擦力によりロープに伝達する綱車と、カウンターバランスの位置にロープを垂下する、そらせ車の2つの種類がある。溝車の回転に連動して、ロープはこの摩擦力によって移動し、かごなどが昇降する。ロープ溝は、長期間使用されるうちに、ロープの微小すべり等によって徐々に摩耗する。ロープ溝の摩耗が進行すると、ロープ溝の断面形状が崩れ、所望の摩擦力が得られなくなる。その結果、ロープのスリップが発生して、昇降時に振動が生じ、場合によっては乗り心地が悪くなる。従って、このような振動が発生する前に、ロープ溝形状を設計形状に修正加工したり、または巻き上げ機を交換する必要がある。
溝車の溝加工装置として、天井クレーン巻上げドラム(溝車に相当)のワイヤ溝(ロープ溝に相当)を研削して溝形状を修正するものがある。この装置では、ワイヤ溝にリンク状のガイド部材を巻き掛けて溝研削装置を位置決めし、ワイヤ溝に研削部材を当接させ、この研削部材を回転させることで、ワイヤ溝を加工する。ワイヤ溝内をガイド部材が移動することで、ワイヤ溝の他の部分を研削加工する(例えば、特許文献1参照)。
また、エレベータ用のロープ駆動装置の基準面に、加工装置を固定し、加工用旋削バイトをロープ溝に当接させ、溝車を回転させることで、ロープ溝を切削加工するものがある(例えば、特許文献2参照)。
また、小型のボール砥石研削装置を、綱車とそらせ車の間のロープが巻き掛けられていない部分に設置し、ボール砥石を回転させることでロープ溝を研削加工するものがある。この装置では、ロープ溝車を回転させることで、ロープ溝の他の部分を研削加工する(例えば、特許文献3参照)。
さらに、小型の旋削装置を、綱車とそらせ車の間のロープが巻き掛けられていない部分に設置し、ロープ溝車を回転させることで、ロープ溝を旋削加工するものがある(例えば、特許文献4参照)。
特開昭64-5766号公報 再公表W02005/120750号公報 特開2009-208218号公報 特開2013-112471号公報
特許文献1の溝研削装置にあっては、研削砥石を回転させる機構が必要なため装置が大きくなる。とくに、周囲に空間が少ない、そらせ車には設置できない。
特許文献2の溝加工装置にあっては、ロープ溝車の軸方向位置決めのため、また、切り込み量の操作のため、2軸の駆動機構が必要である。よって、装置が大きくなる。特に、周囲に空間が少ない、そらせ車には設置できない。また、溝車の回転中、偏芯がある場合、切り込みの位置や切り込み量が限界以上に変化して、加工異常となる。それを回避するためには、偏芯回転に対応して、旋削バイトの位置を追従させる位置制御装置が必要である。
特許文献3の溝加工装置にあっては、研削砥石を回転させる機構を小型にしたため、加工効率が悪い。また、特許文献2と同様に偏芯回転に対応した位置制御装置が必要である。
特許文献4の溝加工装置にあっては、旋削工具の2軸の駆動機構を小型にしたため、装置剛性が低下し、旋削抵抗の大きな加工では異常加工振動が発生する。よって、加工幅を小さく、切り込み量も小さくして加工する。つまり、加工効率が低い(ただし、特許文献3の研削法よりも加工効率は良い)。また、特許文献2と同様に偏芯回転に対応した位置制御装置が必要である。
この発明は、上記のような溝加工装置における課題を解決するためになされたものであり、装置の小型化が可能であり、偏芯回転に対応して切り込み量を一定に保ち、加工効率の良いロープ溝の再生加工を目的とする。
この発明にかかる溝加工装置は、
溝車の溝を切削する刃具と、
この刃具を取り付けるとともに前記刃具の取付位置を調整できる取付具と、
この取付具に支持された摺動体であって、前記溝車の外周部に沿って前記刃具を挟む位置にそれぞれ配置され、前記溝の底と接して摺動する一対の摺動体と、
前記取付具に一端が取り付けられ、この一端を基準位置としてそれぞれ一定の方向に張力を調整可能に与えられるとともに、前記外周部に沿って前記一対の摺動体を挟む位置にそれぞれ配置されて前記取付具を引張支持する一対のリンクと、
を備え、
前記溝の底に当接する位置に前記刃具が調整して取り付けられ、前記一対のリンクに与える張力が調整されていることにより、前記溝の加工の際、前記刃具が前記溝の底に当接する位置に前記取付具を保持した状態で前記溝を加工するよう構成されているものである。
また、この発明に係る溝加工方法は、
溝車の溝を切削する刃具と、
この刃具を取り付けるとともに前記刃具の取付位置を調整できる取付具と、
この取付具に支持された摺動体であって、前記溝の底と接して摺動する一対の摺動体と、前記取付具に一端が取り付けられて前記取付具を引張支持する一対のリンクと、
を備えた溝加工装置を用いて、
前記一対の摺動体を前記溝車の外周部に沿って前記刃具を挟む位置にそれぞれ配置し、
前記一対のリンクを前記外周部に沿って前記一対の摺動体を挟む位置にそれぞれ配置するとともに、前記一端を基準位置としてそれぞれ一定の方向に張力を調整可能に与えて取付けて、
前記溝の底に当接する位置に前記刃具を調整して取り付けるとともに、前記一対のリンクに与える張力を調整することにより、前記溝の加工中、前記刃具が前記溝の底に当接する位置に前記取付具を保持して、前記溝を加工するものである。
本発明の溝加工装置によれば、溝加工装置自体に動力源を持たないこと、また、刃具の位置決めを刃具の近傍の両端の摺動体でロープ溝に対して成すことで、溝加工装置を小型化できる。
また、ロープ溝側に引っ張ることで摺動体をロープ溝の底に当接させて、刃具をロープ溝に対し位置決めする。よって、溝車が加工中に、加工方向以外の方向に移動しても、刃具をロープ溝に対し安定に位置決めできる。
また、刃具による切削加工(旋削)を実現できるので研削法に比較して加工効率が良い。
さらに、張力を測定して、異常加工振動の発生を抑制しつつ、加工負荷を最大にできるので、加工効率が良い。
本発明の実施の形態1に係る溝加工装置の斜視図である。 本発明の実施の形態1に係る溝加工装置の側面図である。 本発明の実施の形態1に係る溝加工装置の正面断面図である。 本発明の実施の形態1に係る溝加工装置の背面図である。 本発明の実施の形態1に係る溝加工装置の溝加工中に作用する力を示す側面図である。 本発明の実施の形態2に係る溝加工方法のフロー図である。 本発明の実施の形態3に係る溝加工装置による溝車の加工を示す側面図である。 本発明の実施の形態4に係る溝加工装置の側面図である。 本発明の実施の形態4に係る溝加工を説明する正面図である。 本発明の実施の形態4に係る溝加工を説明する正面図である。 本発明の実施の形態5に係る溝加工装置の側面図である。 本発明の実施の形態5に係る溝加工を説明する側面図である。 本発明の実施の形態6に係る溝加工システムの構成図である。 本発明の実施の形態7に係る溝加工方法のフロー図である。 本発明の実施の形態8に係る溝加工方法のフロー図である。 本発明の実施の形態9に係る溝加工方法の正面図である。 本発明の実施の形態9に係る溝加工方法の正面図である。
実施の形態1.
図1は本実施の形態1の発明に係る溝加工装置1を示す斜視図である。図2は本実施の形態1の発明に係る溝加工装置を示す側面図であり、ロープ溝に設置して、加工中の状態を示す。なお、構造の基本を明確に示すため、E止め輪、角部の面取りなどを省略している(以下の図2、図3も同様)。
<構成>
まず、溝加工装置1の構成を説明する。刃具11は刃取付具12にねじ(他にろう付け、接着などでも良い)で固定される。刃取付具12は、取付具A21によって矢印Z方向に調整可能である。固定ねじ13は、この刃取付具12と取付具A21を固定する。取付具A21には、一対の摺動体の摺動体A31と摺動体B32が、刃具11を挟むように取り付けてある。この一対の摺動体は、移動時の抵抗を少なくするために、車を使用している。
また、取付具A21にはスライドA23、スライドB24が取り付けられる。この2本のスライドは取付具B22を矢印Z方向に摺動するように取り付けられる。取付具A21の位置は、固定ねじA25と固定ねじB26で取付具B22に固定される。取付具B22には、一対の加工制限具の加工制限具A51と加工制限具B52が刃具11を挟むように取り付けられる。この一対の加工制限具5は、移動時の抵抗を少なくするために車を使用
している。
さらに、取付具B22には、リンク軸A(または基準位置A)27、リンク軸B(または基準位置B)28が取り付けられる。この2つの軸には回転自在にリンクA41、リンクB42が取り付けられる。この一対のリンク4は、摺動体A31、摺動体B32により形成される直線より下方に引っ張られ、刃具11が溝の底61に当接する。
図3は、本実施の形態1の発明に係る溝加工装置を示す正面断面図である。刃具11と加工する溝6との位置を明確にするために刃具11より前の部分を省略した断面図である。刃取付具12にねじ14で固定された刃具11は、加工する溝6の断面形状と同じ断面形状を持つ。なお、以上の一連の取付具および刃取付具を総称して取付具2(符号の図示省略)と呼ぶ。
図4は、この実施の形態1における溝加工装置を示す背面図である。リンクB42とリンク軸B28を省略し溝6の断面形状を同時に示す。刃具11は溝の底61に当接する。摺動体B32は、溝の断面形状と同じ断面形状を持つ。また、加工制限具B52は、加工が進み溝の深さが深くなり、所望の深さ(通常、複数ある溝のうち一番深い溝のサイズ(相当)が、ここでいう所望の深さである。なお、1つの溝の中では、最も深い箇所の溝の深さが該当する溝の溝深さとなる。)になると、溝の肩(「溝の肩」とは「溝の最上部」の意味)62に当接する位置になるよう設定されている。
以下、これらの図を用いて、本実施の形態1の発明に係る溝加工装置の動作を説明する。
<加工>
一対の摺動体31、32が溝の底61に当接すると、刃具11が溝の底61に食い込むように刃取付具の位置を調整し、固定ねじ13で固定する。この位置調整によって、一対の摺動体31、32が、溝の底61に当接しながらロープ溝に沿って、図2の左方向(矢印X方向)へ移動すれば、刃具11は一定の切り込み量で溝の底61を加工(切削)していく。なお、一対の摺動体は総称して摺動体3(符号の図示省略)と呼ぶ。
<リンク張力>
図5に、加工中の溝加工装置に作用する力を矢印で示す。
移動の際、刃具11の加工によって移動方向の移動に反する力(主分力71)と、刃具11をロープ溝(被加工物)から引き離す力(背分力72)が作用する。
背分力72が作用すると、刃具11が図5の上方に移動し、つまり切り込み量が減少し、結果として、摺動体B32が溝の底61から離れたり、溝加工装置1に振動が発生し、加工できなくなる。この背分力72による刃具11の移動を抑えるために、一対のリンク41、42の張力の背分力方向の力(74と75)の大きさの和をこの背分力72と等しく、かつ、方向をこの背分力と反対にする。
背分力方向の力75をリンクB42の張力で作用させるためには、力78を作用させてリンクB42の方向に、力の合力77を作用させることになる。つまり、合力77をリンクB42に張力として作用させると、背分力72の作用を打ち消すのに必要な力(の一部)75が発生する。しかし、力78も同時に作用してしまう。この力78を打ち消す力79をリンクA41に作用させる必要がある。
一方、主分力の作用に対抗する力73もリンクA41に作用させる必要がある。よって、リンクA41には、背分力に対抗する力74と、主分力方向に対抗する力73と、リンクB42で発生した力に対抗する力79の合力を張力として作用させる。このように、切削方向に対して平行では無く、溝の底方向に張力を一対のリンク41、42に作用させることで、加工に必要な主分力と背分力に対抗する力が得られる。
<加工負荷変動>
ここで、張力をさらに大きくした場合は、一対の摺動体31、32が溝の底61を押す力が増えることになるが加工への影響はない。
実際の加工では、主分力71と背分力72は一定ではなく、加工する溝の底61の材料強度分布、加工前の面の面粗さ、などにより変動する。この力の変動のため、刃具11は振動する。振動が発生すると、刃具の刃先が異常摩耗したり欠けたりする。こうなると正常な加工はできず、全く加工できないこともある。この振動を抑えるためには、背分力72の反対方向に溝加工装置1を強く押さえ込めば良い。つまり、溝の底61に一対の摺動体31、32による図5の下方向の力を作用させる。この作用は、リンクの張力を高めれば実現できる。
<剛性>
本実施の形態1の発明に係る溝加工装置が加工負荷による変形が小さい、つまり、剛性の高いことを説明する。一般に部材の変形は、距離が長いほど、または薄いほど、ヤング率が低いほど大きい。また、両端固定の中央部分の変形量より、片持ちの端部の変形量の方が大きい。
一方、刃具11は両脇の摺動体31、32によって溝に固定されている。つまり両端固定の変形モデルであり、変形量が小さい。また、固定端である摺動体と変形によって変位する刃具11の距離は約0.02mに設置可能である。
一方、たとえば先行文献4では、溝の加工位置と刃具の関係は、距離で約1mであり、片持ちの端部変形となる。つまり、本実施の形態1では、刃具11と溝への固定部である摺動体との距離が上記のように短く、かつ、両端固定の構造であるため、刃具の変位は先行文献4での例に比べて著しく小さい。
よって、加工中の負荷変動による変形が極めて小さいので、小型であるにもかかわらず、安定に振動することなく溝加工が実現できる。
<加工制限具>
加工が進行して、必要な深さの溝が形成された場合、加工を終了する。しかし、溝の一部が目標の深さに達していても、他の部分がまだ浅い場合もある。このまま、加工を継続し、目標に達していない部分がなくなるまで加工すると、深く加工しすぎる部分ができてしまう。一対の加工制限具51、52はこのようにことが無いように、溝の全長が均一に目標深さになる作用をする。
具体的には、目標深さになると、溝の肩62に加工制限具51、52が当たる様に、スライダ23、24で、取付具B22に対して位置調整する。そして、固定ねじ25、26で固定する。このように溝加工装置1を調整すれば、溝の深さが浅い部分は、刃具11によって加工され、目標深さに達すると加工制限具51、52が溝の肩62に接触して、刃具11が切り込めず、加工は進まない。しかし、浅い部分は加工制限具よりも刃具が先に当たるから、その部分は加工がなされ、目標深さに達する。このようにして、溝全周に渡り目標深さになる。
<変形例>
摺動体と加工制限具は、実施の形態1では移動抵抗(摺動する場合は摩擦力)の極めて小さい車を用いたが低摩擦の摺動部材であっても良い。たとえば、オイル含浸の鋳鉄や黄銅、フッ素樹脂、ポリエチレンなどの摩擦係数が小さい部材である。この際、考慮すべき点は、摺動体および加工制限具の移動抵抗は作用する張力の損失となるため、“移動抵抗は小さいほどよい”ことである。 また、摺動体と刃具の位置を調整可能に構成したが、加工条件が決まっていれば、刃取付具と取付具Aとを一体に構成してもよい。一体に構成することで、材料費の削減、調整ミスの抑制となる。また、目標の溝深さを調整できるように、摺動体の取り付く取付具Aと、加工制限具の取り付く取付具Bとに分割して構成したが、調整が不要であれば、取付具Aと取付具Bを一体に構成しても良い。一体に構成することで材料費の削減、調整ミスの抑制となる。
さらに、リンク部品はワイヤーによる引っ張り(張力)にて作用させたが、リンク棒による押し(押力)で構成しても良い。また、主分力と背分力に対する力を別々に作用させても良い。以上を含め、溝加工装置の構成上、都合の良い構成とすれば良い。
実施の形態2.
図6はこの実施の形態2の発明に係る溝加工方法の手順を示すフロー図である。この図6、および図2に示す側面図を用いて、溝加工方法を説明する。
<ステップ1>
まず、一対の摺動体31、32が溝の底61に当接した状態で、摺動体の間にある刃具11を、溝の底61に食い込む位置(切削開始位置である切込み位置)に設置する。
<ステップ2>
次に、目標深さの溝を加工している状態の場合、一対の加工制限具51、52を、溝の肩62に当接する位置に設置する。
<ステップ3>
次に、溝の底61に溝加工装置1の一対の摺動体31、32を当接させる。
<ステップ4>
一対のリンク41、42に加工方向からある角度をなして溝の底61方向に引っ張り力(張力)を与える。
<ステップ5>
溝6を溝加工装置1に対し相対的に移動する。
<ステップ6>
溝6の全長に渡って加工制限具51、52が溝の肩62に当接した状態になったら加工を終了する。
このような手順で本実施の形態2の溝加工装置を作用させれば、溝全長に渡り、目標溝深さの加工を完了できる。以下具体的に効果を説明する。
摺動体と刃具の位置関係を設定した溝加工装置の摺動体を、溝の底に当接させたので、刃具は被加工物に対し常に一定の位置関係(切り込み量)に設定できる。
また、溝の底に摺動体を当接させることで、溝が蛇行しても、摺動体は溝に倣って移動する。つまり、倣って移動する加工装置自体に刃具の切り込み量を固定設定するので、溝の加工方向以外への移動に対しても安定した切り込み量を確保できる。
さらに、加工方向下向きに引っ張ることで、加工背分力の変動による刃具の振動を抑える。よって、刃具刃先の摩耗や欠損が発生しない。言い換えると、ロープ溝に位置決めした溝加工装置単体で刃具の食い込み量を設定したので、溝車の加工方向以外への移動に対しても安定した切り込み量を確保できる。つまり、加工効率が安定するので、刃具の破損の対策をする必要が無く、高い加工効率を維持できる。
実施の形態3.
図7はこの実施の形態3の発明に係る溝加工装置を、円柱表面に形成された溝に適用した構成の一例を示す図であって、エレベータの巻き上げ機の溝車を想定している。この図は、溝車8の溝に溝加工装置を3個取り付けた例を示す。各溝加工装置はリンクによって結合されている。溝加工装置1aのリンク42aは、溝加工装置1bに接続する。他方のリンク41aは、張力測定装置91を介して固定具9に接続されている。溝加工装置1cのリンク41cは、溝加工装置1bに接続する。溝加工装置1cのリンク42cは張力発生装置92を介して固定具9に接続されている。
この構成で、張力発生装置92によってリンクに張力を発生させると、3個全ての溝加工装置に張力が作用する。次に溝車を図の回転矢印(白抜き)の方向に回転させて、溝を溝加工装置に対して相対的に移動させると、本実施の形態の溝加工装置によって、本実施の形態の溝加工方法が発動し、溝が加工される。
溝が加工されているときは、加工の主分力が張力に足されるため、おおよそ、(リンクの方向と加工方向の傾きを無視して)張力測定装置91の測定値は、張力発生装置92の張力の値に加工主分力の3倍の値を加えたものに等しい。しかし、加工が終了し、加工装置の加工制限具が溝の肩に当接していれば加工はなされないので、張力測定装置91の測定値が張力発生装置92の張力の値と加工制限具の移動抵抗(摩擦力)の3倍の値を加えた値に等しくなる。ここで、移動抵抗を主分力の1/10程度になるように加工条件および加工制限具を選定しておけば、張力測定装置の測定値の低下により加工終了を判断可能である。この場合には、溝深さを測定する必要が無い。
実施の形態4.
図8は本実施の形態4の発明に係る溝加工装置を示す側面図であり、溝車に設置して、加工中の状態を示す。なお、本実施の形態の構造を明確に示すため、説明に不要な構成要素は省略している。
まず、本実施の形態4の発明に係る溝加工装置の構成を説明する。前実施の形態と同様に、刃具11を取付具A21に取り付ける。取付具A21は一対のアーム(アームA291とアームB292で構成させる)を有する。この一対アームには基準位置Aに取り付けたリンク軸A27と基準位置Bに取り付けたリンク軸B28を介して、各々、リンクA41とリンクB42が取り付く。この際、リンク軸A27とリンク軸B28(の基準位置)は、溝の底に当接する刃具の刃先の位置よりもZ方向(切り込み方向、図の白抜き矢印)に配置されている。
次に、本実施の形態4の発明に係る溝加工装置の効果について説明する。図9は実施の形態1(図2)の構成での概略の正面図に、張力76のZ成分である張力701を示した図である。図9(a)は刃具11によって正常に加工されている状態である。張力701は基準位置Aのリンク軸A27に作用する。図9(a)の場合は、刃具11の刃先111に張力701が真っ直ぐに作用し、正常に加工される。一方、図9(b)のように、取付具A21が傾くと、張力701は同様に基準位置Aのリンク軸A27に、Z方向に作用するため、刃先111方向への成分703とその直交成分702に分解され。直交成分702の作用で、刃先111が支点となり、取付具A21はさらに傾く。つまり、安定加工状態から一度、取付具A21が傾くと、元に戻らない。
一方、本実施の形態では、図10(a)に示すように基準位置のリンク軸A27は、アームA291のよって、刃先111よりもZ軸下方向に位置する。ここで、図10(b)の様に取付具A21が傾くと、張力701は、同様に基準位置Aのリンク軸A27にZ方向に作用するため、刃先111方向への成分703とその直交成分702に分解される。直交成分702の作用で、刃先111が支点となり、取付具A21は図10(a)のように垂直に戻る。つまり、安定加工状態から一度、取付具A21が傾いても、元の正常加工状態(溝底に対して垂直に自立する位置)に戻る。
よって、本実施の形態のように、リンクの基準位置を刃先よりZ軸下方(切り込み)方向に配置したことにより、リンクの張力の作用で、溝加工装置が溝の底に垂直に自立する。従って、刃具の位置が溝の底に安定し、また、切り込み方向も、溝車の径方向に安定するので、所望の溝加工が実現できる。
なお、説明はアームA291を用いて行ったが、アームB292を用いた場合も同様に作用する。
実施の形態5.
図11は本実施の形態5の発明に係る溝加工装置を示す側面図であり、ロープ溝に設置して、加工中の状態を示す。なお、本実施の形態の構造を明確に示すため、説明に不要な構成要素は省略している。
まず、本実施の形態5の発明に係る溝加工装置の構成を説明する。前実施の形態と同様に、刃具11を取付具A21に取り付ける。この際、刃具11のすくい角613は負角(刃具が加工方向前方へ傾斜している場合の傾斜角度で表す。加工方向に直交する方向を基準0(零)度とし、マイナス符号を付けた角度)である。
次に、本実施の形態5の発明に係る溝加工装置の効果について説明する。図12はすくい角613とその効果を示す刃具11の側面図である。すくい角とは加工面である溝の底61に対して直交する軸612から、加工方向後方を正角(刃具が加工方向後方へ傾斜している場合の傾斜角度で表す。加工方向に直交する方向を基準0(零)度とする)として測った、すくい面112の角度である。よって、図12(a)では、すくい角613は正角、図12(b)と図11は、すくい角613は負角、である。
図12(a)において、刃具11をX方向に移動することで、切り屑601が生成され、切り屑601はすくい面112に沿って移動していく。すくい角613が正角であるから、この加工によって刃先111には切り込み量を増やすような力711が作用する。刃具11の切り込み量が増えると、さらに、力711が増加する。
通常の加工では、刃具11は取付具A21に強固に固定されているため、力711の作用では切り込み量は増えない。よって、力711は常に一定量が作用しつつ、安定加工が成される。しかし、材料に硬度分布や強度分布があると、力711はその分布に対応して変動し、溝加工装置の共振を誘発する。すくい角613は正角であるため、力711は常に増加傾向である。その結果、共振が成立することがある。つまり、ビビリ振動が発生する。ビビリ振動によって、加工面は荒れる(ビビリ振動痕)。摺動体A31と摺動体B32はこのビビリ振動痕の上を倣うため、両摺動具は振動する。この振動数はビビリ振動の周波数であるため、さらにビビリ振動が大きくなる。
そこで、図12(b)のようにすくい角613を負角とする。加工中は刃先に切り込み量を減らす力712が作用する。
通常の加工では、刃具11は取付具A21に強固に固定されて、張力によって十分に溝底に当接しているため、力712の作用では切り込み量は減らない。よって、力712は常に一定量が作用した状態で、安定加工される。ここで、材料に硬度分布や強度分布があって、力712がその分布に対応して変動しも、すくい角613が負角であるため、力712は常に減少傾向である。その結果、加振力が減少するため共振が成立しない。つまり、ビビリ振動が発生しない。
よって、本実施の形態のように、すくい角を負角に設定したことにより、材料に硬度分布や強度分布があっても、刃具が、溝底にさらに切り込む作用を無くして、ビビリ振動が発生しない。よって、ビビリ振動による加工面の面粗度の荒れを防ぎ、所望の溝形状に溝
再生加工が実現できる。
実施の形態6.
図13は本実施の形態6の発明に係る溝加工システムを示す側面図であり、図7の実施の形態3に、溝加工システムの構成ブロックおよびブロック間の信号の流れを示す図を追記したものである。ただし、本発明が制御システムであることを考慮し、システムの応答速度を上げるために、張力測定装置91と張力発生装置92を直列に隣接させて、構成している。
まず、本実施の形態6の発明に係る溝加工システムの構成および信号の流れを説明する。図13において、溝車8の溝に、溝加工装置(1a、1b、1c)3台をリンク(42a、41c)で連結する(ここまでは実施の形態3と同じ)。 溝加工装置1aは、リンク41a、張力測定装置91、張力発生装置92を介して、固定具9に固定されている。張力測定装置91で測定された張力は加工制御装置94に送られる。加工制御装置94は測定された張力値を解析して、張力発生装置92、回転制御装置93、各溝加工装置(1a、1b、1c)に制御信号を送る。
次に、本実施の形態6の発明に係る溝加工システムの動作と効果について説明する。
張力測定装置91の測定値が、加工制御装置94に入力される。加工制御装置94は張力値を解析して、加工状態を把握する。加工制御装置94は、加工状況に応じて、適宜に張力、回転速度、切り込み量、すくい角度を制御する。
たとえば、「平均張力の増加」は、刃具の刃先摩耗などのよる刃具の負荷の増加を示し、ビビリ振動の発生予兆でもある。この場合は、張力、回転速度、取付位置(切り込み量)、すくい角の調整をすることで、ビビリ振動の発生を未然に防止する。
「張力の変動幅の拡大」は、溝車の溝に周期的に刃先が食い込んで、ビビリ振動が発生していることを示す。この場合は、張力、回転速度、取付位置(切り込み量)、すくい角の調整をすることで、ビビリ振動を低減する、または、ビビリ振動を無くす。
張力の増加がなく、振動も発生しないのであれば、加工負荷に余裕がある。この場合は、切り込み量を増やすか、回転速度を上げて、加工効率を上げることができる。
つまり、この溝加工システムによれば、ビビリ振動を抑制すると同時に、加工効率を十分に向上することが可能である。
そこで、次に、加工制御装置94による溝加工方法の制御手順の具体例を以下の実施の形態7、8で説明する。
実施の形態7.
<<溝加工の開始と終了の判断の手順>>
図13の状態に構成された溝加工システムにおいて、図14のフローチャートを用いて、 本実施の形態7の発明に係る溝加工方法を実現する加工制御装置94の制御手順を説明する。この手順は、制御の基本となる溝加工の開始と終了の判断の手順である。ビビリの防止および加工効率向上の手順は実施の形態8で説明する。
<STEP1>:[T=0]
取り付けた初期の状態は張力値Tはゼロである。
<STEP2>:[T=T0]
加工制御装置94は、張力発生装置92によって、加工は成されない張力値T0にリンクの張力を調整する。つまりガタツキはないが、加工されない程度に張力を作用させる。<STEP3>:[ω=ω1]
加工制御装置94は、回転制御装置93によって、溝車8を回転させ、回転速度ωを、
加工する基準となる回転速度である加工回転速度ω1にする。なお、切削理論やこれまでの加工経験および加工テストなどの加工データに基づき、加工回転速度ω1は加工負荷、加工効率、回転制御装置93の性能によって、安定な加工状態が維持可能な値に設定する。
<STEP4>:[T=T1]
加工制御装置94は、張力発生装置92によって、加工設定張力値T1にリンクの張力値Tを調整する。加工設定張力値T1は加工する基準となる張力値である。切削理論やこれまでの加工経験および加工テストなどの加工データに基づき、加工設定張力値T1は加工負荷、加工効率、回転制御装置93の性能によって、安定な加工状態が維持可能な値に設定する。このSTEP4で加工が開始される。
以上の立ち上げ制御手順によって、刃具の先端に突然高負荷が印加されることによる、刃先の欠けを防止できる。これは通常の刃具が脆性材料であるため、高負荷に耐えられるが、衝撃力には弱い性質を持つための本発明の方策である。
以後、加工中に加工完了を判断する制御手順を説明する。
<STEP5>:[K]
加工制御装置94は、正常でない加工状況の継続時間を計るタイマーを起動する。
<STEP6>:[T:T09]
加工制御装置94は、張力測定装置91で測定した張力の測定値を、加工張力下限値T09と比較し、[T<T09]の場合(TがT09より小さい場合)はSTEP11に移行する。その他の場合(T≧T09の場合)はSTEP7に移行する。
<STEP7>:[T:T11]
加工制御装置94は、張力測定装置91で測定した張力の測定値を、加工張力上限値T11と比較し、[T≧T11]の場合(TがT11以上の場合)にSTEP21に移行する。その他の場合(T<T11の場合)はSTEP8に移行する。
<STEP8>:[K=0]
張力値Tに基づき加工状態が正常加工範囲と判断された状態である。よって、正常でない加工状態の継続時間を計るタイマーのタイマー値Kをリセットし、STEP6に戻る。<STEP9>
この手順の位置はビビリ振動の防止および加工効率向上の手順を挿入するに適した位置である。詳細は実施の形態8で説明する。
STEP11、STEP12への分岐は、加工はされるが、加工負荷が下がって、効率的な正常加工状態でない場合である。加工が、設定した溝深さに到達して加工制限具が溝の肩に当接している状態と考えられる。
<STEP11>:[K:K1]
加工制御装置94は、タイマー値Kと加工終了判定時間K1と比較し、[K>K1](KがK1より大きい場合)に、STEP31以降の加工終了手順に移行する。加工終了判定時間K1は、加工が成されない状態が、これ以上継続すれば、加工が終了したと判断できる継続時間である。
その他の場合(K≦K1の場合)はSTEP12に移行する。
<STEP12>:[ΔT増加]
加工終了の判定時間中であり、加工制限具が溝の肩に当接している状態か否かを確認するために、加工制御装置94は、張力発生装置92によってわずかに張力をΔT上げる。このΔTで、加工負荷がα(ただしα>0)増加すれば、張力測定装置91の測定した張力値Tは、ΔT+αだけ増加し、[T≧T09](TがT09以上)となり、正常加工状態に戻る。ΔTの値は、加工制限具が溝の肩に当接している状態かを確認するために必要最小限度の量でよく、ゼロでもよい。
その後、STEP6に戻る。
STEP21、STEP22への分岐は、張力を下げる制御を行っても、十分に張力が下がらない場合で有り、刃先の摩耗や欠け、摺動体の食い込みなどの加工異常の場合と考えられる。
<STEP21>:[K:K2]
加工制御装置94は、タイマー値Kと加工異常判定時間K2と比較し、[K≧K2](KがK2以上の場合)の場合は、張力値を下げる制御をしても、張力が下がらない状態、つまり「加工異常」と判断し、アラームを出すと共にSTEP32の加工終了手順に移行する。加工異常判定時間K2は、これ以上この加工異常状態が継続すれば、溝形状や溝加工装置などに、修復不可能な不具合や故障が発生すると判断できる継続時間である。K2はゼロでも良い。この場合は、瞬時に非常停止されることになる。
その他の場合(K<K2の場合)はSTEP22に移行する。
<STEP22>:[ΔT低減]
加工負荷が上がっても、まだ、加工異常と判断されない場合である。刃先の欠けやビビリ振動を抑制するために、加工制御装置94は、張力値TをΔT下げる。このΔTの減少で、張力測定装置91の測定した張力値Tが、[T<T11](TがT11より小)となり、正常加工状態になればよい。張力の増加の原因は、おそらく、加工異常には至らない、刃先の正常摩耗であったと推定できる。なお、ΔTの値は、加工異常を回避するための量であり、たとえば(T−T11)の絶対値、または、それ以上の量がよい。
その後、STEP6に戻る。
以降は加工終了のための手順である。
<STEP31>:[T=0]
刃具が切り込んだままでの停止を避けるため、加工制御装置94は張力発生装置92によって、張力値Tをゼロとする。たとえば、切り込んだままで、回転を停止すると、加工部の温度が下がり、線膨張係数の差で、刃具が、溝に食い込み、分離できなくなるなどの不具合が発生する。
<STEP32>:[ω=0]
加工制御装置94は、回転制御装置93によって、溝車8の回転を停止させる。
以上で、溝加工の開始と終了の判断の制御が終了する。
このように、実施の形態6の構成による溝加工システムを使用して、実施の形態7の制御によれば、以下の数値を設定することで、溝加工の開始の際に、刃先欠けなどの加工異常が発生しない。また、刃先の摩耗や欠け、摺動体の食い込みなど加工異常に際して、アラームを発し、非常停止して、溝形状の悪化を防ぐ。さらに、溝深さが均一に再生加工できた状態を検知して、加工を終了できる。
以上において各符号の意味は以下の通りである。
T0:加工はされない張力値、
ω1:加工回転速度(加工するための回転速度)、
T1:加工設定張力値(加工するための張力値)、
T09:加工張力下限値(この値未満の場合、加工が成されていないと判断する張力値)、
T11:加工張力上限値(この値以上の場合、異常加工と判断する張力値)
K1:加工終了判定時間(これより長い時間、T09が継続すると、加工されていないと判断する時間)、
K2:加工異常判定時間(これ以上長い時間、T11が継続すると、異常加工と判断する時間)。
実施の形態8.
<<ビビリ振動防止および加工効率向上の手順>>
図15のフローチャートを用いて、本実施の形態8の発明に係る溝加工方法の制御手順を説明する。この手順はビビリ振動の防止および加工効率の向上の手順である。この手順を、基本となる加工手順の何処に入れるかは、溝車の形状や材質、刃具の形状などによって判断すれば良い。この説明では、実施の形態7のSTEP9に挿入すると仮定して説明する。
<STEP41>:[mT、B]
加工制御装置94は、張力値から振動成分が除去された解析値mTと、張力値の振動成分の解析値Bを計算する。
解析値mTは切削加工の負荷の平均的な変化を示す。たとえば、切削の切り屑の量が増えたら上がり、減れば下がる。解析値mTは、張力値から振動成分が除去された解析値であればよく、加工制御装置94の内部回路によって、設定した単位時間t0当たりの平均張力値、実効値、移動平均値、などでよい。
解析値Bは切削加工のビビリ振動の強度を示す。解析値Bは、張力値の振動成分の解析値であればよく、設定した単位時間t0当たりの振動振幅の最大値、直流成分を取り除くハイパスフィルタを通過後の平滑値や実効値、特定の周波数のみが通過するバンドパスフィルタ通過後の平滑値や実効値、などでよい。
<STEP42>:[mT:Tmin]
加工制御装置94は、解析値mTを、解析張力下限値Tminと比較し、[mT≦Tmin](mTがTmin以下の場合)にSTEP51に移行する。
その他の場合(mT>Tminの場合)はSTEP43に移行する。
<STEP43>:[mT:Tmax]
加工制御装置94は、解析値mTを、解析張力上限値Tmaxと比較し、[mT≧Tmax](mTがTmax以上の場合)にSTEP61に移行する。
その他の場合(mT<Tmaxの場合)はSTEP44に移行する。
<STEP44>:[B:Bmax]
加工制御装置94は、解析値Bを、ビビリ振動上限値Bmaxと比較し、[B>Bmax](BがBmaxより大きい場合)にSTEP71に移行する。
その他の場合(B≦Bmax)は、加工が正常に、かつ効率的に成されていると判断し、本実施の形態8の手順を抜け、基本となる加工手順に戻る。
<STEP51>:[mT増加]
正常加工状態であるが加工負荷に余裕がある場合である。よって、加工制御装置94は、この負荷の余裕分を使用して加工効率を向上させるために、張力発生装置92によって、張力を上げる。または、回転制御装置93によって、回転数を上げる。または、溝加工装置によって、切り込み量を増やす。その後、本実施の形態8の手順を抜ける。
<STEP61>:[mT低減]
加工負荷が大きくこのままでは、加工異常(刃先の摩耗の異常な進行、刃先の欠け、ビビリ振動の発生、溝加工装置の破損など)となる可能性がある場合である。よって、加工制御装置94は、加工負荷を低減するために、張力発生装置92によって、張力を下げる。または、回転制御装置93によって、回転速度を下げる。または、溝加工装置によって、切り込み量を減らす。その後、実施の形態8の手順を抜け、基本となる加工手順に戻る。
<STEP71>:[B低減]
ビビリ振動が発生していて、このままでは、加工異常(ビビリ振動痕の形成、刃先の摩耗の異常な進行、刃先の欠け、溝加工装置の破損など)となる場合である。よって、加工制御装置94は、ビビリ振動を抑制するために、張力発生装置92によって、張力を調整する。または、回転制御装置93によって、回転速度を下げる。または、溝加工装置によって、切り込み量を減らし、または、すくい角度を負側に増やす。その後、実施の形態8の手順を抜け、基本となる加工手順に戻る。
以上で、ビビリ防止および加工効率向上の制御手順が終了する。その後、基本となる制御手順の次の手順、または、制御結果を確認の手順など適宜な手順に移行すればよい。
このように、実施の形態6の構成による溝加工システムを使用して、実施の形態8の制御によれば、以下の数値を解析し、または、設定することで、正常加工範囲で加工負荷を最大にすることで加工効率を向上できる。また、ビビリ振動などの発生を抑制できる。さらに、ビビリ振動が発生してしまった場合は、その振動を低減できる。
以上において各符号の意味は以下の通りである。
mT:張力値から振動成分が除去された解析値、
B:張力値の振動成分の解析値、
Tmin:解析張力下限値(この値以下の場合、加工負荷を上げることができる解析張力値)、
Tmax:解析張力上限値(この値以上の場合、加工異常に移行すると判断する解析張力値)、
Bmax:ビビリ振動上限値(この値より大きい場合、ビビリ振動として許容できないビビリ振動値)。
実施の形態9.
図16は本実施の形態9の発明に係る溝加工方法を示す溝車の断面図であり、図16(a)は、これまでの発明の刃具11の加工状態である。図16(b)は、小径の刃具116での加工状態である。図16(c)は、図16(b)の加工後の溝径と同径の刃具11の加工状態を示す。
刃具11の刃先は幾何学的に鋭角ではなく、ある大きさ(例えば半径R(R>0))を持つ。このRの値は一般的には5〜10μmである。従って、おおよそ、この値以上の切り込み量がないと、刃先が食い込まず切削が成されない。つまり、加工が成される加工負荷の最小値は、ゼロではなく、おおよそ上記Rの値の切り込み量を与えた場合の加工負荷の値となる。
加工負荷を低減したい場合、切り込み量ではこのように限界があるので、加工幅を狭くする。図16(a)の刃具11による溝6の加工では、加工幅を狭くすることはできない。そこで、図7(または図13)のように溝加工装置を複数使用して、加工幅を分割する。図16(b)と図16(c)は2分割した加工状態を示す。
先ず、図16(b)に示すように、小径の刃具116によって加工する。もちろん、加工幅が狭いので図16(a)より加工負荷は小さい。次に、図16(c)に示すように、溝径と同径の刃具11によって、切削しなかった溝6の両斜面の部分を加工する。もちろん、加工幅が狭いので図16(a)より加工負荷は小さい。
このように、加工を分割して、各刃具が加工する幅を狭くすることで、各溝加工装置の加工負荷が減少する。よって、ある溝加工装置では加工負荷に耐えられないほど大きな半径Rを持つロープ溝でも、溝加工装置を複数使用することで、加工が可能になる。
さらに、加工負荷を減らしたい場合は、図17のように、より小径の刃具117で5箇所を加工するように分割して、最後端に位置する溝加工装置に溝径と同径の刃具11で切削しなかった溝6の部分を加工する。このように加工を分割すれば、より小さい加工負荷で所望の溝形状を得る加工が可能となる。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
1、1a、1b、1c 溝加工装置、2 取付具、3 摺動体、4 リンク、5 加工制限具、6 溝、8 溝車(被加工物)、9 固定具、11 刃具、12 刃取付具、13 固定ねじ、21 取付具A、22 取付具B、23 スライダA、24 スライダB、25 固定ねじA、26 固定ねじB、27 (基準位置A または)基準位置Aに取り付けたリンク軸A、28 (基準位置B または)基準位置Bに取り付けたリンク軸B、31 摺動体A、32 摺動体B、41 リンクA、42 リンクB、51 加工制限具A、52 加工制限具B、61 溝の底、62 溝の肩、71 主分力、72 背分力、91 張力測定装置、92 張力発生装置、93 回転制御装置、94 加工制御装置、613 すくい角

Claims (13)

  1. 溝車の溝を切削する刃具と、
    この刃具を取り付けるとともに前記刃具の取付位置を調整できる取付具と、
    この取付具に支持された摺動体であって、前記溝車の外周部に沿って前記刃具を挟む位置にそれぞれ配置され、前記溝の底と接して摺動する一対の摺動体と、
    前記取付具に一端が取り付けられ、この一端を基準位置としてそれぞれ一定の方向に張力を調整可能に与えられるとともに、前記外周部に沿って前記一対の摺動体を挟む位置にそれぞれ配置されて前記取付具を引張支持する一対のリンクと、
    を備え、
    前記溝の底に当接する位置に前記刃具が調整して取り付けられ、前記一対のリンクに与える張力が調整されていることにより、前記溝の加工の際、前記刃具が前記溝の底に当接する位置に前記取付具を保持した状態で前記溝を加工するよう構成されていることを特徴とする溝加工装置。
  2. 前記外周部の周上に、必要加工量を加工した時点で前記溝の最上部である溝の肩に当接する一対の加工制限具を設けたことを特徴とする請求項1に記載の溝加工装置。
  3. 前記加工制限具は、前記溝に対し摩擦係数が0.2以下の部材からなることを特徴とする請求項2に記載の溝加工装置。
  4. 前記摺動体は回転体であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の溝加工装置。
  5. 前記溝の断面形状はU字形状であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の溝加工装置。
  6. 前記加工制限具は回転体であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の溝加工装置。
  7. 前記取付具にリンクを取り付ける一対の基準位置を、
    前記溝の底に当接する刃具の刃先の位置よりも切り込み方向に配置したことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の溝加工装置。
  8. 前記刃具のすくい角が負角であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の溝加工装置。
  9. 請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の溝加工装置と、
    リンクに張力を作用させる張力発生装置と、
    リンクの張力を測定する張力測定装置と、
    張力測定器の測定した張力値によって、リンクの張力を制御する加工制御装置と、
    によって構成される溝加工システム。
  10. 請求項9に記載の溝加工システムと、
    前記溝車の回転を制御する回転制御装置と、
    前記張力測定装置の測定した張力値によって、リンクの張力、溝車の回転、刃具の取付位置、刃具のすくい角度を制御する加工制御装置と、
    によって構成される溝加工システム。
  11. 溝車の溝を切削する刃具と、
    この刃具を取り付けるとともに前記刃具の取付位置を調整できる取付具と、
    この取付具に支持された摺動体であって、前記溝の底と接して摺動する一対の摺動体と、前記取付具に一端が取り付けられて前記取付具を引張支持する一対のリンクと、
    を備えた溝加工装置を用いて、
    前記一対の摺動体を前記溝車の外周部に沿って前記刃具を挟む位置にそれぞれ配置し、
    前記一対のリンクを前記外周部に沿って前記一対の摺動体を挟む位置にそれぞれ配置するとともに、前記一端を基準位置としてそれぞれ一定の方向に張力を調整可能に与えて取付けて、
    前記溝の底に当接する位置に前記刃具を調整して取り付けるとともに、前記一対のリンクに与える張力を調整することにより、前記溝の加工中、前記刃具が前記溝の底に当接する位置に前記取付具を保持して、前記溝を加工することを特徴とする溝加工方法。
  12. 前記溝を切削開始する位置である切込み位置に前記刃具を設置する工程と、
    前記外周部の周上に、必要加工量を加工した時点で前記溝の最上部である溝の肩に当接する一対の加工制限具を、前記溝の肩に当接する位置に設置する工程と、
    前記溝の底に前記溝加工装置の一対の摺動体を当接させる工程と、
    前記一対のリンクに前記取付具と一定の角度をなして前記溝の底方向に張力を与える工程と、
    前記溝を前記溝加工装置に対し相対的に移動する工程と、
    前記溝の全長に渡って前記加工制限具が前記溝の肩に当接した時点で加工を終了する工程と、を含む請求項11に記載の溝加工方法。
  13. 請求項10の溝加工システムを用いて、
    張力の単位時間当たりの振動振幅値を測定する工程と、
    振動振幅値が設定した上限を超えた場合、
    刃具の切り込み量、
    刃具のすくい角度
    溝車の回転速度
    リンクの張力
    を調整する工程と、
    張力の単位時間当たりの平均張力値を測定する工程と、
    平均張力値が設定した下限を下回った場合、
    刃具の切り込み量、
    刃具のすくい角度
    溝車の回転速度
    リンクの張力
    を調整させる工程と、
    を含むことで溝を加工することを特徴とする溝加工方法。
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