JP2016128397A - iPS細胞培養上清を含む神経変性疾患治療用組成物およびその製造方法、神経変性疾患発症抑制方法ならびに神経変性疾患治療方法 - Google Patents

iPS細胞培養上清を含む神経変性疾患治療用組成物およびその製造方法、神経変性疾患発症抑制方法ならびに神経変性疾患治療方法 Download PDF

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Abstract

【課題】iPS細胞の培養上清を利用して神経変性疾患の治療あるいは発症抑制を実現する。
【解決手段】本開示に係る神経変性疾患治療用組成物は、iPS細胞を培養することによって得られたiPS細胞培養上清を含む。本開示においては前記神経変性疾患治療用組成物の製造方法、神経変性疾患発症抑制方法および神経変性疾患治療方法も提供される。
【選択図】なし

Description

本発明は、iPS細胞培養上清を含む神経変性疾患治療用組成物およびその製造方法、神経変性疾患発症抑制方法ならびに神経変性疾患治療方法、に関する。
従来の医療によっては治療困難な疾病に対する代替技術として、幹細胞を利用した再生医療が注目されている。
幹細胞を用いた再生医療は、全ての難病にとっての新しい臨床プラットフォームにおける有望なツールである。胚性幹細胞(ES細胞)および体性幹細胞を初めとする種々の幹細胞が報告されている。体性幹細胞のうち、骨髄、脂肪組織、皮膚、臍帯、胎盤等の種々の組織から単離される間葉系幹細胞(MSC)が皮膚再生における臨床的応用に特に用いられてきた。
また、人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells;iPS細胞)は、体細胞に数種類の初期化因子を導入することによって作成された細胞であり、三胚葉系列すべてに分化できる「分化多能性」および未分化状態を保持したまま増殖できる「自己複製性」を有している(例えば、特許第5098028号明細書参照)。この分化多能性を利用して、iPS細胞を分化させて移植材料を得ようとする試みも行われている(例えば、国際公開公報WO2011/136378号参照)。
一方、幹細胞を培養して得られる幹細胞培養上清を標的組織の損傷部を修復するために用いる試みもなされている(例えば、国際公開公報WO2011/118795号参照)。
神経変性疾患とは、中枢神経系(例えば脳や脊髄)にある神経細胞のなかで,ある特定の神経細胞群(例えば認知機能に関係する神経細胞や運動機能に関係する細胞)が徐々に障害を受け脱落する病気である。その発症原因については未解明であり、また脱落する細胞は疾患の種類により異なる。神経変性疾患には、運動能力が低下する疾患、バランス感覚が低下する疾患,筋力が低下する疾患,認知能力が低下する疾患などがある。運動能力が低下する疾患には、パーキンソン病,パーキンソン症候群(多系統萎縮症,進行性核上性麻痺など)などがある。バランス感覚が低下する疾患には、脊髄小脳変性症,一部の痙性対麻痺などがある。筋力が低下する疾患には、筋萎縮性側索硬化症などがある。認知能力が低下する疾患には、アルツハイマー病,レビー小体型認知症,皮質基底核変性症などがある。神経変性疾患は高齢者において発症頻度が高い。また、一般的には孤発性であるが、家族性の事例も見られている。
神経変性疾患のうち、運動神経だけが選択的に障害される進行性の神経変性疾患は、運動ニューロン疾患(Motor Neuron Disease(MND))と呼ばれる。その一例は、筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis(ALS))である。ALSは50代での発症が多く、ALSに罹患すると四肢に力が入らなく、筋肉量が減少してゆく。典型的には片側の手の先に力が入らなくなり、この症状は徐々に全身に広がる。やがて全身の筋肉が動かなくなって寝たきりになり、最後は呼吸筋麻痺で死亡する。根本的な治療法は、まだ存在せず、基本的には対症療法を行うことができるのみである。発症から死亡までの期間は約2〜4年であるが、進行の速さには個人差がある。
幹細胞を用いて、神経変性疾患を治療しようとする試みも始まっており、例えば、Takayuki Kondo et al. "Focal Transplantation of Human iPSC-Derived Glial-Rich Neural Progenitors Improves Lifespan of ALS Mice" Stem Cell Reports Volume 3, Issue 2, p242−249 (12 August 2014)には、ヒトiPS細胞由来のグリア系神経前駆細胞を移植することでALSモデルマウスの生存期間を延長できたことが報告されている。
特許第5098028号明細書 国際公開公報WO2011/136378号 国際公開公報WO2011/118795号
Takayuki Kondo et al. "Focal Transplantation of Human iPSC-Derived Glial-Rich Neural Progenitors Improves Lifespan of ALS Mice" Stem Cell Reports Volume 3, Issue 2, p242−249 (12 August 2014)
iPS細胞を神経変性疾患の治療に用いようとする試みは、Takayuki Kondo et al. "Focal Transplantation of Human iPSC-Derived Glial-Rich Neural Progenitors Improves Lifespan of ALS Mice" Stem Cell Reports Volume 3, Issue 2, p242−249 (12 August 2014)に見られるようにiPS細胞自体の分化多能性や自己複製性を利用するものであった。この場合、例えば、iPS細胞を分化させて得られた移植材料の移植が必要であり、患者に対する負担がかかる。さらに、拒絶を避けようとすれば患者自身の体細胞からiPS細胞をいちいち作製することが必要であり、治療の準備に要する時間や労力は比較的大きいものとなる。
一方、歯髄幹細胞などの、体内に存在する体性幹細胞を培養して得られた培養上清は、損傷修復において一定の効果を示すものの、適用対象となる組織の種類によってその有効性は変動し、体内の組織一般に対する普遍的な有効性を有するものとは言い難かった。
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、iPS細胞の培養上清を利用した新たな神経変性疾患治療用組成物およびその製造方法、神経変性疾患発症抑制方法ならびに神経変性疾患治療方法を提供することを課題とする。
本発明の第1の態様に係る神経変性疾患治療用組成物は、iPS細胞を培養することによって得られたiPS細胞培養上清を含む、神経変性疾患治療用組成物である。
本発明の第2の態様に係る神経変性疾患治療用組成物の製造方法は、
(1)iPS細胞を培養するステップ;および
(2)前記iPS細胞の培養により得られた培養上清を回収するステップ、
を含む、神経変性疾患治療用組成物の製造方法である。
本発明の第3の態様に係る使用は、iPS細胞を培養することによって得られたiPS細胞培養上清の、神経変性疾患治療用組成物の製造における使用である。
本発明の第4の態様に係る方法は、前記第1の態様に係る神経変性疾患治療用組成物を、神経変性疾患発症前の対象に、前記神経変性疾患の発症を抑えるために有効な量投与することを含む、対象において神経変性疾患の発症前に前記神経変性疾患の発症を抑える方法である。
本発明の第5の態様に係る方法は、前記第1の態様に係る神経変性疾患治療用組成物を、神経変性疾患を有する対象に、前記神経変性疾患を治療するために有効な量で投与することを含む、神経変性疾患の治療方法である。
本発明によれば、iPS細胞の培養上清を利用した新たな神経変性疾患治療用組成物およびその製造方法、神経変性疾患発症抑制方法ならびに神経変性疾患治療方法、が提供される。
変異SOD1(G93A)導入マウスを用いた実験の概念図である。 変異SOD1(G93A)導入マウスの日齢と生存率の関係を示したグラフである。 変異SOD1(G93A)導入マウスの脊髄における、iPS細胞培養上清の変性抑制効果を示した図である。 変異SOD1(G93A)導入マウスの脊髄における、iPS細胞培養上清の炎症抑制効果を示した図である。 変異SOD1(G93A)導入マウスの腓腹筋における、iPS細胞培養上清の筋肉量減少抑制効果を示した図である。 変異SOD1(G93A)導入マウスの腓腹筋における、iPS細胞培養上清の筋線維破壊抑制効果を示した図である。
<神経変性疾患治療用組成物>
本開示に係る神経変性疾患治療用組成物は、iPS細胞を培養することによって得られたiPS細胞培養上清を含む。
iPS細胞は分化多能性および自己複製性を有する。先に述べたとおり、iPS細胞を分化させ、得られた分化組織を移植片として用いる試みはあった。しかしながら、iPS細胞から分泌される物質に着目して、iPS細胞の培養上清を用いて、神経変性疾患に対する治療的効果を得ようとする試みは無かった。それどころか、iPS細胞の培養上清がどのような生物学的な効果を有するのかについて、何ら知られてはいなかった。
本発明の発明者は、iPS細胞培養上清を、神経変性疾患の治療的効果を得るために用いるという、前例の無い試みを初めて行った。その結果、驚くべきことに、iPS細胞培養上清は、中枢神経組織一般に対して広く修復能力を有し、またその修復能力は間葉系幹細胞や造血幹細胞などの体性幹細胞の培養上清が示す修復能力と比べて傑出したものであることを、本発明者は発見した。これは、体性幹細胞から分泌される分泌物(サイトカイン等を含む)と比較した場合、分化多能性を有するiPS細胞から分泌される分泌物はその物質組成が大きく異なっており、その結果として、どの中枢神経組織であるかを問わずに、広く一般の中枢神経組織に対して修復能力を示し、またその修復能力の程度も高いものとなっているものと推定される。具体的には、多くの成長因子、サイトカインについて、iPS細胞の培養上清における含有量は、体性幹細胞の培養上清における含有量に比べて高く、あるいは、特定の成長因子、サイトカインは、iPS細胞の培養上清には含まれるが、体性幹細胞の培養上清には実質的に含まれないと考えられる。また、iPS細胞の培養上清は、体性幹細胞の培養上清には含まれないような抗加齢物質(例えば特定の種類のタンパク質)を含んでおり、この結果として、iPS細胞の培養上清は、体性幹細胞の培養上清では見られないような優れた抗加齢効果を有すると考えられる。
ただし、本発明は、前記推定に何ら拘束されるものではない。
なお、本開示において「修復」とは、疾患によって失われた組織の機能の一部又は全部が、当該疾患の生じる前における当該組織の機能と比較して維持又は回復していることを意味し、組織の機能が回復することのみならず、機能的な組織として再生することも広く包含する。機能が維持又は回復していることの評価については、疾患が生じている組織において異なるが、外観、対象となる機能の程度を評価するために通常用いられるアッセイ等に基づいて行えばよい。
本開示に係る神経変性疾患治療用組成物においては、iPS細胞を培養して得られたiPS細胞培養上清を神経変性疾患治療用組成物の有効成分として用いる。当該iPS細胞培養上清には、サイトカイン混合物等が含まれているため、種々の中枢神経組織において修復能力を示す。本発明の一形態では、iPS細胞培養上清中のサイトカインの混合物が中枢神経組織の内在性幹細胞に対する誘導シグナルとして作用することにより、前記内在性幹細胞が、分化し、増殖し得、これが修復能力の発現をもたらし得ると推定できる。ただし、本発明は、前記推定に何ら拘束されるものではない。
本開示におけるiPS細胞培養上清は、iPS細胞を培養して得られるものであるため、以下の説明ではその製法も併せて説明する。
人工多能性幹細胞(iPS細胞)は、初期化因子を、体細胞に導入することによって作製された、ES細胞とほぼ同等の特性、例えば分化多能性と自己複製による増殖能、を有する体細胞由来の人工の幹細胞である(K. Takahashi and S. Yamanaka (2006) Cell, 126:663−676; K. Takahashi et al. (2007), Cell, 131:861−872; J. Yu et al. (2007), Science, 318:1917−1920; Nakagawa, M.ら,Nat. Biotechnol. 26:101−106 (2008);国際公開WO 2007/069666)。初期化因子は、例えば、DNA又はタンパク質の形態で体細胞に導入することが出来る。初期化因子は、ES細胞に特異的に発現している遺伝子、その遺伝子産物もしくはノンコーディングRNAまたはES細胞の未分化維持に重要な役割を果たす遺伝子、その遺伝子産物もしくはノンコーディングRNA、あるいは低分子化合物によって構成されてもよい。初期化因子に含まれる遺伝子としては、例えば、特開2013−247943に挙げられているように、Oct3/4、Sox2、Sox1、Sox3、Sox15、Sox17、Klf4、Klf2、c−Myc、N−Myc、L−Myc、Nanog、Lin28、Fbx15、ERas、ECAT15−2、Tcl1、beta−catenin、Lin28b、Sall1、Sall4、Esrrb、Nr5a2、Tbx3またはGlis1等が挙げられる。
iPS細胞は、上記の方法の他にも、これまでに報告された各種iPS細胞作製法によって作製することができる。また、今後開発されるiPS細胞作製法を適用することも当然に想定される。
iPS細胞作製法の最も基本的な手法は、転写因子であるOct3/4、Sox2、Klf4及びc-Mycの4因子を、ウイルスを利用して細胞へ導入する方法である(Takahashi K, Yamanaka S: Cell 126 (4), 663-676, 2006; Takahashi, K, et al: Cell 131 (5), 861-72, 2007)。ヒトiPS細胞についてはOct4、Sox2、Lin28及びNonogの4因子の導入による樹立の報告がある(Yu J, et al: Science 318(5858), 1917-1920, 2007)。c-Mycを除く3因子(Nakagawa M, et al: Nat. Biotechnol. 26 (1), 101-106, 2008)、Oct3/4及びKlf4の2因子(Kim J B, et al: Nature 454 (7204), 646-650, 2008)、或いはOct3/4のみ(Kim J B, et al: Cell 136 (3), 411-419, 2009)の導入によるiPS細胞の樹立も報告されている。また、遺伝子の発現産物であるタンパク質を細胞に導入する手法(Zhou H, Wu S, Joo JY, et al: Cell Stem Cell 4, 381-384, 2009; Kim D, Kim CH, Moon JI, et al: Cell Stem Cell 4, 472-476, 2009)も報告されている。一方、ヒストンメチル基転移酵素G9aに対する阻害剤BIX-01294やヒストン脱アセチル化酵素阻害剤バルプロ酸(VPA)或いはBayK8644等を使用することによって作製効率の向上や導入する因子の低減などが可能であるとの報告もある(Huangfu D, et al: Nat. Biotechnol. 26 (7), 795-797, 2008; Huangfu D, et al: Nat. Biotechnol. 26 (11), 1269-1275, 2008; Silva J, et al: PLoS. Biol. 6 (10), e 253, 2008)。遺伝子導入法についても検討が進められ、レトロウイルスの他、レンチウイルス(Yu J, et al: Science 318(5858), 1917-1920, 2007)、アデノウイルス(Stadtfeld M, et al: Science 322 (5903), 945-949, 2008)、プラスミド(Okita K, et al: Science 322 (5903), 949-953, 2008; Okita K. et al.: Nat Methods 8, 409-412)、トランスポゾンベクター(Woltjen K, Michael IP, Mohseni P, et al: Nature 458, 766-770, 2009; Kaji K, Norrby K, Pac a A, et al: Nature 458, 771-775, 2009; Yusa K, Rad R, Takeda J, et al: Nat Methods 6, 363-369, 2009)、或いはエピソーマルベクター(Yu J, Hu K, Smuga-Otto K, Tian S, et al: Science 324, 797-801, 2009)を遺伝子導入に利用した技術が開発されている。
iPS細胞作製に際して、初期化因子を導入する対象となる体細胞は、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、サル、ブタ、ラット等)由来の生殖細胞以外のいかなる細胞であってもよく、例えば、特開2013−247943に挙げられているように、角質化する上皮細胞(例、角質化表皮細胞)、粘膜上皮細胞(例、舌表層の上皮細胞)、外分泌腺上皮細胞(例、乳腺細胞)、ホルモン分泌細胞(例、副腎髄質細胞)、代謝・貯蔵用の細胞(例、肝細胞)、境界面を構成する内腔上皮細胞(例、I型肺胞細胞)、内鎖管の内腔上皮細胞(例、血管内皮細胞)、運搬能をもつ繊毛のある細胞(例、気道上皮細胞)、細胞外マトリックス分泌用細胞(例、線維芽細胞)、収縮性細胞(例、平滑筋細胞)、血液系細胞、免疫系細胞(例、Tリンパ球)、感覚器官の細胞(例、桿細胞)、自律神経系ニューロン(例、コリン作動性ニューロン)、感覚器と末梢ニューロンの支持細胞(例、随伴細胞)、中枢神経系の神経細胞とグリア細胞(例、星状グリア細胞)、色素細胞(例、網膜色素上皮細胞)、およびそれらの前駆細胞(組織前駆細胞)等が挙げられる。細胞の分化の程度や細胞を採取する動物の齢などに特に制限はなく、未分化な前駆細胞(体性幹細胞も含む)であっても、最終分化した成熟細胞であっても、同様に、本開示において体細胞の起源として使用することができる。ここで未分化な前駆細胞としては、たとえば神経幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、歯髄幹細胞等の組織幹細胞(体性幹細胞)が挙げられる。中でも、安定性の点からは骨髄由来間葉系幹細胞が好ましい。また、修復能力の点からは、体細胞はヒト由来のものであることが好ましい。また、前記体細胞として、前記神経変性疾患治療用組成物の投与対象となる対象自身から得た体細胞を用いることが、拒絶の回避の上で有利な場合がある。
iPS細胞誘導のための培養液としては、特開2013−247943に挙げられているように、例えば、10〜15% FBSを含有するDMEM、DMEM/F12又はDME培養液(これらの培養液にはさらに、LIF、penicillin/streptomycin、puromycin、L-グルタミン、非必須アミノ酸類、β-メルカプトエタノールなどを適宜含むことができる。)または市販の培養液[例えば、マウスES細胞培養用培養液(TX-WES培養液、トロンボX社)、霊長類ES細胞培養用培養液(霊長類ES/iPS細胞用培養液、リプロセル社)、無血清培地(mTeSR、Stemcell Technology社)]などが含まれる。
培養法の例としては、たとえば、特開2013−247943に挙げられているように、37℃、5% CO2存在下にて、10% FBS含有DMEM又はDMEM/F12培養液上で体細胞と初期化因子とを接触させ約4〜7日間培養し、その後、細胞をフィーダー細胞(たとえば、マイトマイシンC処理STO細胞、SNL細胞等)上に播種し直し、体細胞と初期化因子の接触から約10日後からbFGF含有霊長類ES細胞培養用培養液で培養し、該接触から約30〜約45日又はそれ以上後にiPS様コロニーを生じさせることができる。
あるいは、37℃、5%CO2存在下にて、フィーダー細胞(たとえば、マイトマイシンC処理STO細胞、SNL細胞等)上で10% FBS含有DMEM培養液(これにはさらに、LIF、ペニシリン/ストレプトマイシン、ピューロマイシン、L-グルタミン、非必須アミノ酸類、β-メルカプトエタノールなどを適宜含むことができる。)で培養し、約25〜約30日又はそれ以上の後にES様コロニーを生じさせることができる。望ましくは、フィーダー細胞の代わりに、初期化される体細胞そのものを用いる(Takahashi K, et al. (2009), PLoS One. 4:e8067またはWO2010/137746)、もしくは細胞外基質(例えば、Laminin(WO2009/123349)およびマトリゲル(BD社))を用いる方法が例示される。
この他にも、血清を含有しない培地を用いて培養する方法も例示される(Sun N, et al. (2009), Proc Natl Acad Sci U S A. 106:15720-15725)。さらに、樹立効率を上げるため、低酸素条件(0.1%以上、15%以下の酸素濃度)によりiPS細胞を樹立しても良い(Yoshida Y, et al. (2009), Cell Stem Cell. 5:237-241またはWO2010/013845)。
上記培養の間には、培養開始2日目以降から毎日1回新鮮な培養液と培養液交換を行う。また、核初期化に使用する体細胞の細胞数は、限定されないが、培養ディッシュ100cm2当たり約5×103〜約5×106細胞の範囲である。
iPS細胞は、特開2013−247943に記載されているように、形成したコロニーの形状により選択することが可能である。また、Fbxo15、Nanog、Oct/4、Fgf-4、Esg-1及びCript等の多能性幹細胞マーカー(未分化マーカー)の発現などを指標として選択することができる。一方、体細胞が初期化された場合に発現する遺伝子(例えば、Oct3/4、Nanog)と連動して発現する薬剤耐性遺伝子をマーカー遺伝子として導入した場合は、対応する薬剤を含む培養液(選択培養液)で培養を行うことにより樹立したiPS細胞を選択することができる。また、マーカー遺伝子が蛍光タンパク質遺伝子の場合は蛍光顕微鏡で観察することによって、発光酵素遺伝子の場合は発光基質を加えることによって、また発色酵素遺伝子の場合は発色基質を加えることによって、iPS細胞を選択することができる。選択された細胞をiPS細胞として回収する。
得られたiPS細胞から培養上清を得るには、iPS細胞の培養条件として通常用いられる条件をそのまま適用することができる。例えば、iPS細胞を作製する際の培地および培養条件としては、上記説明で記載された培地および培養条件が挙げられる。なお、iPS細胞を維持する上でフィーダー細胞の使用は必須ではなく、例えばラミニン511を用いることでフィーダー細胞を省略することも可能である(A novel efficient feeder-free culture system for the derivation of human induced pluripotent stem cells
Masato Nakagawa, et al. Scientific Reports 4,Article number:3594doi:10.1038/srep03594 Received 09 October 2013 Accepted 06 December 2013 Published 08 January 2014 (Nature))。また、培養の際には細胞死を抑制するためにROCK阻害剤を添加してもよい。
本開示に係る神経変性疾患治療用組成物は、血清を含まないものであってもよい。血清を含まないことで安全性が高められる場合がある。例えば、血清を含まない培地(無血清培地)でiPS細胞を培養することによって、血清を含まない培養上清を調製することができる。1回又は複数回の継代培養を行うことにし、最後又は最後から数回の継代培養を無血清培地で培養することによっても、血清を含まない培養上清を得ることができる。一方、回収した培養上清から、透析やカラムによる溶媒置換などを利用して血清を除去することによっても、血清を含まない培養上清を得ることができる。
血清を含まない「iPS細胞の培養上清」を調製するためには、全過程を通して或いは最後又は最後から数回の継代培養についは無血清培地を使用するとよい。尚、基本培地としてはDMEMの他、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)(GIBCO社等)、ハムF12培地(HamF12)(SIGMA社、GIBCO社等)、RPMI1640培地等を用いることができる。二種以上の基本培地を併用することにしてもよい。混合培地の一例として、IMDMとHamF12を等量混合した培地(例えば商品名:IMDM/HamF12(GIBCO社)として市販される)を挙げることができる。また、培地に添加可能な成分の例として、血清(ウシ胎仔血清、ヒト血清、羊血清等)、血清代替物(Knockout serum replacement(KSR)など)、ウシ血清アルブミン(BSA)、抗生物質、各種ビタミン、各種ミネラルを挙げることができる。
培養上清を得るための培養時間としては、例えば5時間〜7日間であり、また、1日〜6日間であってもよい。培養温度は例えば36℃〜38℃、例えば37℃、であり、CO濃度は4〜6%、例えば5%、である。また、培養は、例えば非接着性条件下での三次元培養、例えば浮遊培養(例えば、分散培養、凝集浮遊培養など)により行ってもよい。
培養後に、細胞成分を分離除去することによって、iPS細胞の培養上清を得ることができる。本開示において、培養上清とは、培養液から細胞成分を分離除去した上清そのものだけでなく、各種処理(例えば、遠心処理、濃縮、溶媒の置換、透析、凍結、乾燥、凍結乾燥、希釈、脱塩、保存等)を適宜施した培養上清もその範囲に含む。培養上清の処理方法の詳細は後述する。本開示において培養上清とは、細胞成分を含まない。このため、本開示における培養上清は、培養に用いられたiPS細胞は含んでいない。
本開示に係る神経変性疾患治療用組成物は、上記により得られたiPS細胞の培養上清を有効成分として含むものであり、ある実施形態においては、前記神経変性疾患治療用組成物は組成物全体としても前記iPS細胞を含まない。また、別の実施形態では、前記神経変性疾患治療用組成物は組成物全体としても細胞(細胞の種類は問わない)を含まない。つまり、無細胞である。当該実施形態の神経変性疾患治療用組成物はこの特徴によって、iPS細胞自体は当然のこと、iPS細胞を含む各種組成物と明確に区別される。この実施形態の典型例は、iPS細胞を含まず、iPS細胞の培養上清のみで構成された神経変性疾患治療用組成物である。
適用される被検体の状態に応じて、期待される治療効果が維持されることを条件として、本開示に係る神経変性疾患治療用組成物は他の成分を追加的に含んでもよい。追加的に含まれ得る成分の一例は以下の通りである。
(i)生体吸収性材料
有機系生体吸収性材料としてヒアルロン酸、コラーゲン、フィブリノーゲン(例えばボルヒール(登録商標))等を使用することができる。
(ii)ゲル化材料
ゲル化材料は、生体親和性が高いものを用いることが好ましく、ヒアルロン酸、コラーゲン又はフィブリン糊等を用いることができる。ヒアルロン酸、コラーゲンとしては種々のものを選択して用いることができるが、本開示に係る神経変性疾患治療用組成物の適用目的(適用組織)に適したものを採用することが好ましい。用いるコラーゲンは可溶性(酸可溶性コラーゲン、アルカリ可溶性コラーゲン、酵素可溶性コラーゲン等)であることが好ましい。
(iii)その他
製剤上許容される他の成分(例えば、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水など)を含有させることもできる。賦形剤としては乳糖、デンプン、ソルビトール、D-マンニトール、白糖等を用いることができる。崩壊剤としてはデンプン、カルボキシメチルセルロース、炭酸カルシウム等を用いることができる。緩衝剤としてはリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等を用いることができる。乳化剤としてはアラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント等を用いることができる。懸濁剤としてはモノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸アルミニウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム等を用いることができる。無痛化剤としてはベンジルアルコール、クロロブタノール、ソルビトール等を用いることができる。安定剤としてはプロピレングリコール、アスコルビン酸等を用いることができる。保存剤としてはフェノール、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン等を用いることができる。防腐剤としては塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等を用いることができる。抗生物質、pH調整剤、成長因子(例えば、上皮細胞成長因子(EGF)、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF))等を含有させることにしてもよい。
本開示に係る神経変性疾患治療用組成物の最終的な形態は特に限定されない。形態の例は液体状(液状、ゲル状など)及び固体状(粉状、細粒、顆粒状など)である。本開示に係る神経変性疾患治療用組成物は、吸入に適した形態を有していてもよく、例えば、ネブライザーやディフューザーによって霧状に散布可能な液体の形態を有していてもよい。神経変性疾患の関係部位が脳である場合、血液脳関門(Blood Brain Barrier(BBB))の存在を考慮すると、本開示に係る神経変性疾患治療用組成物は経鼻投与が可能な形態であることが望ましい。例えばスプレー状あるいは粉末状の形態で経鼻投与を行ってもよい。iPS細胞の培養上清は、事前の準備や保存の点において、iPS細胞自体を用いる場合よりも有利であり、神経変性疾患の急性期や亜急性期の治療に特に適するといえる。また、細胞成分を含まず、免疫拒絶の問題を克服し得るという点においても、iPS細胞の培養上清の有用性は極めて高い。
近年、細胞を用いた再生医療の実現に向けた研究が数多くの研究グループによって進められている。細胞を利用する場合、生体から採取した細胞を培養、選択、処理などに施し、その後回収して移植物の成分とする。そのような従来の研究においては、通常、一連の操作の過程で培養上清は廃棄或いは生理的緩衝液などに置換される。従って、最終的な移植物は培養上清を積極的に含むものではない。このことに鑑みれば、iPS細胞の培養上清を含む点において、本開示に係る神経変性疾患治療用組成物は、iPS細胞自体の有用性に注目してiPS細胞を有効成分として使用した組成物などとは、文言上は勿論のこと実質的にも峻別される。
とはいえ、実施形態によっては、本開示に係る神経変性疾患治療用組成物はiPS細胞の培養上清に加えてiPS細胞を含むものであってもよい。このような場合には、作製後に分化誘導をしていない(換言すれば未分化状態を維持させている)iPS細胞を用いることが好ましい。iPS細胞を追加的に用いることにより、治療効果が向上する場合がある。
本開示に係る神経変性疾患治療用組成物は、iPS細胞の培養上清を含有することにより、神経変性疾患に対して組織を修復する効果を奏する。この効果の程度は、従来の体性幹細胞の培養上清の使用により得られていた効果を遙かに凌駕する。また、本開示に係る神経変性疾患治療用組成物は、驚くべきことに、中枢神経の神経組織一般に対し広く一般的な修復効果を奏する。このため、本開示に係る神経変性疾患治療用組成物は、特定の神経変性疾患に限定されず、広範囲の神経変性疾患に対して神経変性疾患治療用組成物として用いることが可能である。本発明の神経変性疾患治療用組成物は、神経変性疾患の発症前であるために、当該神経変性疾患への罹患が未知の段階であっても、対象への投与により対象内における神経変性疾患の進行を有効に抑制できる。このため、本開示に係る神経変性疾患治療用組成物を習慣的に用いることにより、多岐に渡る神経変性疾患を発症前に治療することが可能である。
本開示においては、
(1)iPS細胞を培養するステップ;
(2)前記iPS細胞の培養により得られた培養上清を回収するステップ。
を含む、神経変性疾患治療用組成物の製造方法も提供される。この製造方法は、前記回収された培養上清に遠心処理、濃縮、溶媒の置換、透析、凍結、乾燥、凍結乾燥、希釈、および脱塩の中から選択される一つ以上の処理を施すステップをさらに含んでもよい。このようなステップを含むことにより、神経変性疾患治療用組成物の取り扱いや保存、運搬がより容易になる。また、前記製造方法は、前記回収された培養上清に、追加の成分を添加するステップをさらに含んでいてもよい。そのような追加の成分の添加により、神経変性疾患治療用組成物全体の物性を変化させ、その特性を向上することが可能である。また、前記製造方法は、体細胞に初期化因子を導入して前記iPS細胞を作成するステップをさらに含んでいてもよい。各々のステップならびに追加の成分等については、本開示に係る神経変性疾患治療用組成物の説明において記載した事項がそのまま当てはまる。前記回収された培養上清に遠心処理、濃縮、溶媒の置換、透析、凍結、乾燥、凍結乾燥、希釈、および脱塩の中から選択される一つ以上の処理を施すステップと、前記回収された培養上清に、追加の成分を添加するステップの両方を含む場合には、両ステップはどちらを先に行ってもよく、また可能な場合には同時並行して行ってもよい。
上記ステップ(2)においては、iPS細胞の培養上清を回収する。例えば、スポイトやピペットなどで培養液を吸引して回収することができる。回収した培養上清はそのまま或いは一以上の処理を経た後に本開示に係る神経変性疾患治療用組成物の有効成分として使用される。ここでの処理として、遠心処理、濃縮、溶媒の置換、透析、凍結、乾燥、凍結乾燥、希釈、脱塩、保存(例えば、4℃、-80℃)を例示することができる。尚、iPS細胞の培養上清は、複雑高度な精製をしなくとも、所期の作用を示す。このため、本開示に係る神経変性疾患治療用組成物は簡便な工程で製造できる。複雑な精製工程を要しないことは、精製に伴う活性の低下を回避できる点においても有利である。
<iPS細胞培養上清の濃縮方法>
本開示に係る神経変性疾患治療用組成物は、製剤化されたものであってもよい。製剤化のためのiPS細胞培養上清の濃縮方法としては、培養上清の濃縮に通常用いられている方法を適用することができる。濃縮方法の例としては、例えば、以下の二つの方法を挙げることができる。
1. スピンカラム濃縮法
培養上清をAmicon Ultra Centrifugal Filter Units-10K(ミリポア社製)を用いて濃縮する(最大75倍濃縮)。具体的な操作手順は次の通りである。
(i) 培養上清(最大15ml)をAmicon Ultra Centrifugal Filter Units-10Kへ投入し、×4000gで約60分間遠心し、200μlまで濃縮する。
(ii) 上記チューブへ培養上清と同量の滅菌PBSを投入し、再度×4000gで約60分間遠心し、ベース溶液をPBSへ置換する。
(iii) 得られた溶液200μlをマイクロテストチューブへ回収し、濃縮iPS細胞培養上清とする。
2. エタノール沈殿濃縮法
培養上清をエタノール沈殿法を用いて濃縮する(最大10倍濃縮)。具体的な操作手順は次の通りである。
(i) 培養上清5mlに対し100%エタノール45mlを加え、混和し、-20℃で60分間放置する。
(ii) 4℃、×15000gで15分間遠心する。
(iii) 上澄みを除去し、90%エタノール10mlを加え、よく攪拌する。
(iv) 4℃、×15000gで5分間遠心する。
(v) 上澄みを除去し、得られたペレットを滅菌水500μlに溶解し、マイクロテストチューブへ回収し、濃縮iPS細胞培養上清とする。
<iPS細胞培養上清の凍結乾燥方法>
また本開示に係る神経変性疾患治療用組成物におけるiPS細胞培養上清は、凍結乾燥されたものであってもよい。これにより、良好な保存安定性が得られる。iPS細胞培養上清の凍結乾燥方法としては、培養上清の凍結乾燥に通常用いられている方法を適用することができる。凍結乾燥方法の例としては、例えば、以下の方法を挙げることができる。
(i) 上記方法で得られたiPS細胞培養上清又は濃縮iPS細胞培養上清を-80℃で2時間から半日凍結する。
(ii) 凍結後、サンプルチューブの蓋を開放し、凍結乾燥機へセットする。
(iii) 1〜2日間凍結乾燥を行う。
(iv) 得られたサンプルを凍結乾燥iPS細胞培養上清とする(-80℃で保存可能)。
本開示においては、本開示に係る神経変性疾患治療用組成物を、神経変性疾患の発症前の対象に、前記神経変性疾患の発症を抑えるために有効な量投与することを含む、前記対象において神経変性疾患の発症前に前記神経変性疾患の発症を抑える方法、も提供される。前記対象は、ヒト、またはヒト以外の哺乳動物(ペット動物、家畜、実験動物を含む。具体的には例えばマウス、ラット、モルモット、ハムスター、サル、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ等)であってもよい。前記対象は、神経変性疾患を発病するリスクを有すると判定された対象であってもよい。そのようなリスクは、遺伝子診断、家系分析等により判定することが出来る。例えば、特定の遺伝子における特定のアレルの存在が、特定の疾患への罹患確率に相関することが統計的に明らかにされている例がある。
一般に神経変性疾患は、進行すればするほど治療はより困難になる。このため、そうした神経変性疾患の早期発見が重要となる訳であるが、毎年の検診によって早期発見が確実にできるわけではない。この点を考慮すると、神経変性疾患の発症前に予め治療を開始できることが望ましいが、そのような治療に用いられる薬剤は継続的に用いられるものである以上、投与対象者に与える負担が少ないものであることが望ましく、またその段階ではまだ明らかではない神経変性疾患の進行を抑えなければならないという点からは、神経変性疾患一般に広く有効性を有するものであることが望ましい。これらの要求を同時に満たすことは、従来の知見では困難であった。しかし、本開示に係る神経変性疾患治療用組成物を用いれば、移植や注射といった侵襲的処置を行わなくても投与可能であり、腫瘍生成リスクが無く、また前記神経変性疾患治療用組成物は神経変性疾患一般に広く有効性を有する。このことから、前記神経変性疾患治療用組成物は、上記のような、発症前における神経変性疾患の早期処置(進行抑制)に高い有効性を有する。このような発症前における早期処置のことを、本開示においては先制医療と称する。
前記神経変性疾患治療用組成物の投与量は、未処理の培養上清の量に換算して、例えば0.1mg/kg/日〜1000mg/kg/日であり、また、1mg/kg/日〜100mg/kg/日であってもよい。また、投与の方法は特に制限されない。例えば、前記神経変性疾患治療用組成物の投与は、非経口投与であることが好ましく、非経口投与としては、全身性投与であっても局所投与であってもよい。局所投与の例としては、目的組織への注入、塗布又は噴霧などを挙げることができる。前記神経変性疾患治療用組成物の投与方法の例としては、静脈内投与、動脈内投与、門脈内投与、皮内投与、皮下投与、筋肉内投与、腹腔内投与、経肺投与(経肺吸収)及び経鼻投与等を挙げることができる。中でも、経鼻投与、経肺投与等は、低侵襲性であり、好ましい。また、経鼻投与によれば、血液脳関門(BBB)の通過可能性について懸念する必要が無いため、脳に関係する神経変性疾患の発症抑制においては特に有効である。投与スケジュールとしては例えば一日一回〜数回、二日に一回、或いは三日に一回などを採用できる。投与スケジュールの作成においては、対象(レシピエント)の性別、年齢、体重、病態などを考慮することができる。
投与方法の選択は、発症抑制の目標となる組織の種類、神経変性疾患の種類等に基づいて当業者により行うことができる。例えば、当該組織が頭部にある場合には、血液脳関門の通過を考慮する必要がなく、低侵襲性であることから、経鼻投与等を適用することが特に好ましい。例えば、前記組織が脳である場合には、経鼻投与が好ましく適用され得る。
なお、実施形態によっては、本開示に係る神経変性疾患治療用組成物に加えてiPS細胞も投与することが出来る。例えば、前記神経変性疾患治療用組成物とiPS細胞とを同時に、または別々のタイミングで、対象に投与することができる。このような場合には、採取後に分化誘導をしていない(換言すれば未分化状態を維持させている)iPS細胞を用いることが好ましい。前記神経変性疾患治療用組成物とiPSを併用する場合には、前記神経変性疾患治療用組成物を含有する第1構成要素と、iPS細胞を含有する第2構成要素とからなるキットを用いて投与を行ってもよい。各構成要素は、例えば各々別々のカプセルであったり、あるいは別々のアンプルあるいはバイアルであってもよい。この場合、第1構成要素を投与した治療対象に対して、第1構成要素の投与と同時又は投与後に第2構成要素を投与してもよい。尚、ここでの「同時」は厳密な同時性を要求するものではない。従って、両要素を混合した後に対象へ投与する等、両要素の投与が時間差のない条件下で実施される場合は勿論のこと、片方の投与後、速やかに他方を投与する等、両要素の投与が実質的な時間差のない条件下で実施される場合もここでの「同時」の概念に含まれる。
前記神経変性疾患は、特に限定はされない。例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン症候群(パーキンソン病など)、アルツハイマー型痴呆、進行性核上性麻痺(PSP)、ハンチントン病、多系統萎縮症(MSA)(黒質線状体変性症(SND)、シャイ・ドレーガー症候群(Shy−Drager症候群)、オリーブ橋小脳萎縮症(OPCA)など)、脊髄小脳変性症(SCD)(脊髄小脳失調症(SCA3、通称マシャド・ジョセフ病など)、フリードライヒ失調症(フリードライヒ運動失調症など)等が挙げられる。前記神経変性疾患は、運動ニューロン疾患(MND)であってもよい。
前記疾患の発生する部位は、特に限定はされない。前記疾患の発生する部位は、例えば、脳および脊髄が挙げられ、脳には前脳および脳幹があり、前脳には大脳及び間脳、脳幹には中脳および菱脳がある。大脳には、嗅脳、へんとう、線条体、海馬および大脳新皮質などがあり、間脳には視床上部、視床、視床下部、視床腹部、下垂体、松果体および第三脳室などがある。中脳には、中脳蓋、大脳脚、視蓋前域および中脳水道などがあり、菱脳には、橋、小脳および延髄などがある。前記疾患の発生する部位は、これらの部位のいずれであってもよい。
上記の方法において、神経変性疾患の発症の抑制は、内在性の幹細胞の能力に基づいて達成されるものであってもよい。本開示に係る神経変性疾患治療用組成物は、サイトカインを始めとする種々の成分を含んでおり、これらの成分は内在性の幹細胞の能力を刺激して、神経変性疾患の発症を抑制することが可能だからである。
もちろん、本開示に係る神経変性疾患治療用組成物の用途は先制医療に制限されるものではない。このため、本開示によれば、本開示に係る神経変性疾患治療用組成物を、神経変性疾患を有する対象に、前記神経変性疾患を治療するために有効な量で投与することを含む、神経変性疾患の治療方法も提供される。
前記対象は、ヒト、またはヒト以外の哺乳動物(ペット動物、家畜、実験動物を含む。具体的には例えばマウス、ラット、モルモット、ハムスター、サル、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ等)であってもよい。
前記神経変性疾患の治療方法における、前記神経変性疾患治療用組成物の投与量は、未処理の培養上清の量に換算して、例えば0.1mg/kg/日〜1000mg/kg/日であり、また、1mg/kg/日〜100mg/kg/日であってもよい。また、投与の方法は特に制限されない。例えば、前記神経変性疾患治療用組成物の投与は、非経口投与であることが好ましく、非経口投与としては、全身性投与であっても局所投与であってもよい。局所投与の例としては、目的組織への注入、塗布又は噴霧などを挙げることができる。前記神経変性疾患治療用組成物の投与方法の例としては、静脈内投与、動脈内投与、門脈内投与、皮内投与、皮下投与、筋肉内投与、腹腔内投与、経肺投与(経肺吸収)及び経鼻投与等を挙げることができる。中でも、経鼻投与、経肺投与等は、低侵襲性であり、好ましい。また、経鼻投与によれば、血液脳関門(BBB)の通過可能性について懸念する必要が無いため、脳に関係する神経変性疾患の発症抑制においては特に有効である。投与スケジュールとしては例えば一日一回〜数回、二日に一回、或いは三日に一回などを採用できる。投与スケジュールの作成においては、対象(レシピエント)の性別、年齢、体重、病態などを考慮することができる。なお、本開示において「治療」の範囲には、疾患や組織異常を根治する処置だけでなく、根治に至らないまでも疾患や組織異常の進行を停止させる、あるいは処置をしない場合に比べて遅らせる、処置も含まれる。また、本開示において治療の開始時期は、発症が見られてからでもよく、また、前述のとおり発症前に未然に行うものであってもよい。
前記神経変性疾患の治療方法における、投与方法の選択は、神経変性疾患組織の種類、神経変性疾患の種類等に基づいて当業者により行うことができる。例えば、当該組織が頭部にある場合には、血液脳関門の通過を考慮する必要がなく、低侵襲性であることから、経鼻投与等を適用することが特に好ましい。例えば、前記組織が脳である場合には、経鼻投与が好ましく適用され得る。
なお、実施形態によっては、本開示に係る神経変性疾患治療用組成物に加えてiPS細胞も投与することが出来る。例えば、前記神経変性疾患治療用組成物とiPS細胞とを同時に、または別々のタイミングで、対象に投与することができる。このような場合には、採取後に分化誘導をしていない(換言すれば未分化状態を維持させている)iPS細胞を用いることが好ましい。前記神経変性疾患治療用組成物とiPSを併用する場合には、前記神経変性疾患治療用組成物を含有する第1構成要素と、iPS細胞を含有する第2構成要素とからなるキットを用いて投与を行ってもよい。各構成要素は、例えば各々別々のカプセルであったり、あるいは別々のアンプルあるいはバイアルであってもよい。
この場合、第1構成要素を投与した治療対象に対して、第1構成要素の投与と同時又は投与後に第2構成要素を投与してもよい。第1構成要素と第2構成要素を同時に投与するという使用法は急性期や亜急性期の神経変性疾患への適用に特に適する。尚、ここでの「同時」は厳密な同時性を要求するものではない。従って、両要素を混合した後に対象へ投与する等、両要素の投与が時間差のない条件下で実施される場合は勿論のこと、片方の投与後、速やかに他方を投与する等、両要素の投与が実質的な時間差のない条件下で実施される場合もここでの「同時」の概念に含まれる。
前記神経変性疾患の治療方法によって治療される神経変性疾患は、特に限定はされない。例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン症候群(パーキンソン病など)、アルツハイマー型痴呆、進行性核上性麻痺(PSP)、ハンチントン病、多系統萎縮症(MSA)(黒質線状体変性症(SND)、シャイ・ドレーガー症候群(Shy−Drager症候群)、オリーブ橋小脳萎縮症(OPCA)など)、脊髄小脳変性症(SCD)(脊髄小脳失調症(SCA3、通称マシャド・ジョセフ病など)、フリードライヒ失調症(フリードライヒ運動失調症など)等が挙げられる。
前記疾患の部位は、特に限定はされない。前記疾患の部位は、例えば、脳および脊髄が挙げられ、脳には前脳および脳幹があり、前脳には大脳及び間脳、脳幹には中脳および菱脳がある。大脳には、嗅脳、へんとう、線条体、海馬および大脳新皮質などがあり、間脳には視床上部、視床、視床下部、視床腹部、下垂体、松果体および第三脳室などがある。中脳には、中脳蓋、大脳脚、視蓋前域および中脳水道などがあり、菱脳には、橋、小脳および延髄などがある。前記疾患の部位は、これらの部位のいずれであってもよい。
上記の方法において、神経変性疾患の治療は、内在性の幹細胞の能力に基づいて達成されるものであってもよい。本開示に係る神経変性疾患治療用組成物は、サイトカインを始めとする種々の成分を含んでおり、これらの成分は内在性の幹細胞の能力を刺激して、神経変性疾患の治療を達成することが可能だからである。
本開示によれば、また、iPS細胞を培養することによって得られたiPS細胞培養上清の、神経変性疾患治療用組成物の製造における使用も提供される。前記iPS細胞培養上清、前記神経変性疾患治療用組成物および使用方法の詳細については、前述の説明(本開示に係る神経変性疾患治療用組成物およびその製造方法、ならびに本開示に係る各種治療方法の説明等を参照)のとおりである。
本発明の実施形態には以下のものが含まれる。
<1> iPS細胞を培養することによって得られたiPS細胞培養上清を含む、神経変性疾患治療用組成物。
<2> 前記iPS細胞を含まない、<1>に記載の神経変性疾患治療用組成物。
<3> 無細胞である、<1>または<2>に記載の神経変性疾患治療用組成物。
<4> 前記iPS細胞培養上清が、遠心処理、濃縮、溶媒の置換、透析、凍結、乾燥、凍結乾燥、希釈、脱塩及び保存からなる群から選択される1以上によって処理されたものである、<1>〜<3>のいずれか一項に記載の神経変性疾患治療用組成物。
<5> 前記iPS細胞が、骨髄由来間葉系幹細胞に由来するものである、<1>〜<4>のいずれか一項に記載の神経変性疾患治療用組成物。
<6> 血清を含まない、<1>〜<5>のいずれか一項に記載の神経変性疾患治療用組成物。
<7> 対象において神経変性疾患の発症前に前記神経変性疾患の発症を抑えるために用いられる、<1>〜<6>のいずれか一項に記載の神経変性疾患治療用組成物。
<8> 前記対象が、前記神経変性疾患を発病するリスクを有すると判定された対象である、<7>に記載の神経変性疾患治療用組成物。
<9> 前記神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン症候群、アルツハイマー型痴呆、進行性核上性麻痺(PSP)、ハンチントン病、多系統萎縮症(MSA)、脊髄小脳変性症(SCD)およびフリードライヒ失調症からなる群から選択される、<1>〜<8>のいずれか一項に記載の神経変性疾患治療用組成物。
<10> 経鼻投与により投与される、<1>〜<9>のいずれか一項に記載の神経変性疾患治療用組成物。
<11> (1)iPS細胞を培養するステップ;および
(2)前記iPS細胞の培養により得られた培養上清を回収するステップ、
を含む、神経変性疾患治療用組成物の製造方法。
<12> 体細胞に初期化因子を導入して前記iPS細胞を作成するステップをさらに含む、<11>に記載の方法。
<13> 前記回収した培養上清に対して、遠心処理、濃縮、溶媒の置換、透析、凍結、乾燥、凍結乾燥、希釈、脱塩及び保存からなる群より選択される少なくとも1の処理を行うステップをさらに含む、<11>または<12>に記載の方法。
<14> 前記回収した培養上清に追加的成分を添加するステップをさらに含む、<11>〜<13>のいずれか一項に記載の方法。
<15> iPS細胞を培養することによって得られたiPS細胞培養上清の、神経変性疾患治療用組成物の製造における使用。
<16> 前記神経変性疾患治療用組成物が前記iPS細胞を含まない、<15>に記載の使用。
<17> 前記神経変性疾患治療用組成物が無細胞である、<15>または<16>に記載の使用。
<18> 前記iPS細胞培養上清が、遠心処理、濃縮、溶媒の置換、透析、凍結、乾燥、凍結乾燥、希釈、脱塩及び保存からなる群から選択される1以上によって処理されたものである、<15>〜<17>のいずれか一項に記載の使用。
<19> 前記iPS細胞が、骨髄由来間葉系幹細胞に由来するものである、<15>〜<18>のいずれか一項に記載の使用。
<20> 前記神経変性疾患治療用組成物が血清を含まない、<15>〜<19>のいずれか一項に記載の使用。
<21> 前記神経変性疾患治療用組成物が、対象において神経変性疾患の発症前に前記神経変性疾患の発症を抑えるために用いられる、<15>〜<20>のいずれか一項に記載の使用。
<22> 前記対象が、前記神経変性疾患を発病するリスクを有すると判定された対象である、<21>に記載の使用。
<23> 前記神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン症候群、アルツハイマー型痴呆、進行性核上性麻痺(PSP)、ハンチントン病、多系統萎縮症(MSA)、脊髄小脳変性症(SCD)およびフリードライヒ失調症からなる群から選択される、<15>〜<22>のいずれか一項に記載の使用。
<24> 前記神経変性疾患治療用組成物が経鼻投与により投与される、<15>〜<23>のいずれか一項に記載の使用。
<25> <1>〜<6>のいずれか一項に記載の神経変性疾患治療用組成物を、神経変性疾患発症前の対象に、前記神経変性疾患の発症を抑えるために有効な量で投与することを含む、対象において神経変性疾患の発症前に前記神経変性疾患の発症を抑える方法。
<26> 前記対象が、前記神経変性疾患を発病するリスクを有すると判定された対象である、<25>に記載の方法。
<27> 前記神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン症候群、アルツハイマー型痴呆、進行性核上性麻痺(PSP)、ハンチントン病、多系統萎縮症(MSA)、脊髄小脳変性症(SCD)およびフリードライヒ失調症からなる群から選択される、<25>または<26>に記載の方法。
<28> 前記神経変性疾患の発症抑制が、内在性の幹細胞の能力に基づいて達成される、<25>〜<27>のいずれか一項に記載の方法。
<29> <1>〜<6>のいずれか一項に記載の神経変性疾患治療用組成物を、神経変性疾患を有する対象に、前記神経変性疾患を治療するために有効な量で投与することを含む、神経変性疾患の治療方法。
<30> 前記神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン症候群、アルツハイマー型痴呆、進行性核上性麻痺(PSP)、ハンチントン病、多系統萎縮症(MSA)、脊髄小脳変性症(SCD)およびフリードライヒ失調症からなる群から選択される、<29>に記載の方法。
<31> 前記神経変性疾患の治療が、内在性の幹細胞の能力に基づいて達成される、<29>または<30>に記載の方法。
<32>
前記神経変性疾患治療用組成物が経鼻投与により投与される、<25>〜<31>のいずれか一項に記載の方法。
以下に本発明の実施例について説明するが、これに限定されるものではない。また実施例中の%は、特に断らない限り、重量(質量)基準である。
実施例1:ALSモデルマウスを用いた、iPS細胞培養上清のALS進行抑制効果の検証
ALSモデルマウスである変異SOD1(G93A)導入マウスを用いて、本開示に係るiPS細胞培養上清を投与した場合と投与しない場合におけるALSの進行における差異を調べた。
具体的には、下記のようにして、ヒトiPS細胞の培養上清を得た。なお、下記において培養はいずれも37℃で行った。
(iPS細胞)
iPS細胞の作製元となる細胞としてヒト骨髄由来間葉系細胞を用いた以外は、Takahashi K, et al. "Induction of Pluripotent Stem Cells from Adult Human Fibroblasts by Defined Factors" Cell. 131(5): 861-72 (2007)に記載された方法に従い作成されたiPS細胞を、国立大学法人京都大学から入手した。具体的には、ヒトOct3/4、Sox2、Klf4およびc−Mycを含む、レトロウィルス(pMXベクター)をヒト骨髄由来間葉系細胞に導入し、導入6日後に細胞をトリプシン処理し、マイトマイシンCで処理されたSNLフィーダー細胞上にプレーティングした(McMahon and Bradley, 1990)。翌日、培地を10%FBS含有DMEMから、4ng/mlのbFGFを添加した霊長類ES細胞用培地(primate ES cell culture、株式会社リプロセル製)に変えた。
約2週間後に、ヒトES細胞様の形態を有する球状コロニーが現れた。約25日目に平坦で、ヒトES細胞に類似したコロニーが観察された。各細胞の形態はヒトES細胞のものに類似し、コロニーの中央においては時折自発的な分化も見られた。また、フィーダー細胞依存性を有していたり、マトリゲル被覆プレート上マウス胚性線維芽細胞(MEF)馴化霊長類ES細胞用培地では未分化な状態を保つものの、無調整培地においては未分化状態を保たないといった点においても、得られた細胞はヒトES細胞に類似した性質を示した。
こうして得られたヒトiPS細胞を用いて、iPS細胞培養上清の作製を行った。
(培養上清の調製)
前記ヒトiPS細胞は接着培養用シャーレで接着培養することにより維持した。培養に際しては、4ng/mlのヒト塩基性FGF(bFGF)を添加した霊長類ES細胞用培地(無血清;株式会社リプロセル製;以後このbFGF添加霊長類ES細胞用培地を、iPS細胞用培地と称する)を用いた。培養中は1週間毎に継代が必要であるが、これはヒトiPS細胞を0.25%トリプシン、0.1mg/mLのコラゲナーゼIV、1mMのCaClおよび20%のKSRを含む溶液で処理することにより行った。
上記の通り維持されたヒトiPS細胞を、ES細胞解離液(株式会社リプロセル製)を用いて接着培養用シャーレから剥がし、非接着培養用シャーレに入れたiPS細胞用培地中で1週間浮遊培養した。この結果、胚様体(Embryo Body:EB)が形成された。
形成された胚様体(EB)を接着培養用シャーレ上に播種し、10%FBSおよび1%アンチアンチ(登録商標、抗真菌剤)を含有するDMEM中で1週間成長(outgrowth)させた(細胞のoutgrowthについては、Stem Cells Dev. 22, 102-113, 2013を参照)。
次に、上記ヒトiPS細胞を0.05%トリプシン−EDTA溶液を用いて接着培養用シャーレから剥がし、新たな接着培養用シャーレに播種した。これにより、ヒトiPS細胞はsingle cell化した。培地として10%FBSおよび1%アンチアンチ(登録商標、抗真菌剤)を含有するDMEMを用い、一週間培養した。
ヒトiPS細胞が70〜80%以上コンフルエントになったことを確認した後に、培地を無血清培地(FBSを含まない、1%アンチアンチ(登録商標、抗真菌剤)含有DMEM)に置換し、2日間(48時間)培養後、上清を回収した。回収した上清を1500回転で5分遠心し、上清を再度回収した後に3000回転で3分遠心し、上清を再度回収したものを以後の実験においてヒトiPS細胞培養上清として用いた。前記遠心はトミー精工製卓上多本架遠心機LC-120を用いて行った。
次に、生後90日の変異SOD1(G93A)導入マウスに上記で作製したヒトiPS細胞の培養上清500μlを一日一回40日間経鼻投与した(実験群)。対照群には等量のPBSを投与した。実験群および対照群のいずれも、それぞれ変異SOD1(G93A)導入マウスのオス5匹からなっていた。生後180日目に脊髄と末梢神経の免疫染色を行った。同時に、神経栄養因子などの発現を観察した。また、生後180日目に坐骨神経の免疫染色および腓腹筋湿重量を測定し、さらに神経線維の観察を行った。さらに、観察期間(200日)を通しての、生存期間を計測した(図1)。
図2に実験群および対照群の各々における生存期間を示す。対照群の平均生存期間が150.5日だったのに対し、iPS細胞培養上清を経鼻投与した実験群では平均生存期間は170.4日と大幅に伸びていた。これは、iPS細胞培養上清の投与により、ALSの進行が顕著に抑制されたことを示している。
生後180日目に、実験群および対照群の各々について、脊髄に対しKB(Kluver-Barrera's stain)染色、HE(Hematoxylin-Eosin stain)染色およびスダンブラック染色(Sudan Black stain)を行った。結果を図3に示す。図3から分かるように、対照群では脊髄神経の変性および脱髄が観察されるのに対して、iPS細胞培養上清を経鼻投与した実験群では、脊髄神経の変性が顕著に抑制され、脱髄は見られなかった。これは、iPS細胞培養上清の投与により、脊髄神経の変性が顕著に抑制されたことを示している。
生後180日目にはさらに、炎症マーカーであるIFN−γ、IL−17およびTNF−α、M1マクロファージのマーカーであるiNOSおよびM2マクロファージのマーカーであるアルギナーゼ1、ならびにT細胞中にける炎症性サイトカインであるBrdU、IL−2、IFN−γおよびIL−17の発現について測定した。結果を図4に示す。図4から分かるように、対照群では炎症マーカーの発現が高く、M1マクロファージが多く、一方M2マクロファージは少なかったのに対し、iPS細胞培養上清を経鼻投与した実験群では炎症マーカーの発現が抑えられ、M1マクロファージは少なく、逆にM2マクロファージは多かった。このことから、iPS細胞培養上清の投与により、脊髄における炎症が顕著に抑えられていることが分かる。
生後180日目に、実験群および対照群のそれぞれについて、腓腹筋湿重量を測定し、また腓腹筋の状態を写真観察した。結果を図5に示す。図5から分かるように、対照群では腓腹筋が明らかに衰え、筋肉重量も大きく減少していたのに対し、iPS細胞培養上清を経鼻投与した実験群では筋肉の減少は顕著に抑えられていた。この結果も、iPS細胞培養上清の投与により、ALSの進行が顕著に抑制されたことを示している。
上記の腓腹筋(生後180日)については、さらにHE染色による組織学的観察も行った。結果を図6に示す。図6から分かるように、対照群では筋線維の広範な破壊が認められたのに対し、iPS細胞培養上清を経鼻投与した実験群では野生型の筋線維と同様の構造が保たれていた。
なお、図4および図5中、iPS−CMはiPS細胞培養上清を投与した実験群を示す。
上記の実験結果が得られた理由は次のように推定することが出来る。経鼻投与されたiPS細胞培養上清中の複数のサイトカインが臭神経を通じて脳髄液に吸収され、同時に鼻粘膜を介して血中に入り、脊髄に到達したものと考えられる。到達したサイトカインは強い抗炎症効果および神経再生効果を示し、その結果、運動神経の萎縮が防がれたと考えられる。今回の実験では、神経変性疾患の一例としてALSモデルマウスを用いたが、このような効果は、他の神経変性疾患、例えばパーキンソン病やアルツハイマー病に対しても同様に作用すると考えられる。上記の効果は、広く中枢神経系一般に作用するものであるからである。
(プラスミドを用いて作製したヒトiPS細胞)
また、iPS細胞の作製元となる細胞としてヒト骨髄由来間葉系細胞を用いた以外は、Okita K. et al.: Nat Methods 8, 409-412に記載された方法に従って作製されたヒトiPS細胞でも実験を行った。具体的には、プラスミドpCXLE-hOCT3/4-shp53(OCT3/4を有するpCXLE-hOCT3/4 (Addgene accession code 27076)のBamHIサイトにマウスU6プロモータに駆動された、p53用shRNA発現カセットを挿入したもの)、pCXLE-hSK(Addgene accession code 27078、SOX2およびKLF4を有する)およびpCXLE-hUL(Addgene accession code 27080、L-MYCおよびLIN28を有する)を用意し、100μlキットと共にマイクロポレーター(インビトロゲン社)を用いて6×105個のヒト骨髄由来間葉系細胞にエレクトロポレーションで導入した。導入条件は、1800V、20ms、一回のパルスであった。導入の7日後に細胞をトリプシン処理し、1×10細胞をSNLまたはMEFフィーダー層で覆われた100mmディッシュに再プレーティングした。次の日に培地を上記iPS細胞用培地に交換した。プレーティングの26〜32日後にコロニーをカウントした。ヒトES細胞に類似したコロニーを選抜した。こうして得られたヒトiPS細胞を用いて、培養上清の作製を、上記と同様にして行った。そして、この培養上清を用いて上記と同様に変異SOD1(G93A)導入マウスに投与した場合の効果を調べた。
その結果、レトロウィルスを用いて作製されたヒトiPS細胞の場合と同様の結果が得られた。このように、iPS細胞の作製方法によらず、iPS細胞培養上清は神経変性疾患の抑制について優れた性質を有していた。
以上説明したとおり、本開示に係るiPS細胞培養上清が有する神経変性疾患の抑制効果により、本開示に係る神経変性疾患治療用組成物を用いれば、神経変性疾患の先制医療や治療(進行抑制も含む)を達成することが可能となる。
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に援用されて取り込まれる。

Claims (14)

  1. iPS細胞を培養することによって得られたiPS細胞培養上清を含む、神経変性疾患治療用組成物。
  2. 前記iPS細胞を含まない、請求項1に記載の神経変性疾患治療用組成物。
  3. 無細胞である、請求項1または請求項2に記載の神経変性疾患治療用組成物。
  4. 前記iPS細胞培養上清が、遠心処理、濃縮、溶媒の置換、透析、凍結、乾燥、凍結乾燥、希釈、脱塩及び保存からなる群から選択される1以上によって処理されたものである、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の神経変性疾患治療用組成物。
  5. 前記iPS細胞が、骨髄由来間葉系幹細胞に由来するものである、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の神経変性疾患治療用組成物。
  6. 血清を含まない、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の神経変性疾患治療用組成物。
  7. 対象において神経変性疾患の発症前に前記神経変性疾患の発症を抑えるために用いられる、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の神経変性疾患治療用組成物。
  8. 前記対象が、前記神経変性疾患を発病するリスクを有すると判定された対象である、請求項7に記載の神経変性疾患治療用組成物。
  9. 前記神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン症候群、アルツハイマー型痴呆、進行性核上性麻痺(PSP)、ハンチントン病、多系統萎縮症(MSA)、脊髄小脳変性症(SCD)およびフリードライヒ失調症からなる群から選択される、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の神経変性疾患治療用組成物。
  10. 経鼻投与により投与される、請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の神経変性疾患治療用組成物。
  11. (1)iPS細胞を培養するステップ;および
    (2)前記iPS細胞の培養により得られた培養上清を回収するステップ、
    を含む、神経変性疾患治療用組成物の製造方法。
  12. 体細胞に初期化因子を導入して前記iPS細胞を作成するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
  13. 前記回収した培養上清に対して、遠心処理、濃縮、溶媒の置換、透析、凍結、乾燥、凍結乾燥、希釈、脱塩及び保存からなる群より選択される少なくとも1の処理を行うステップをさらに含む、請求項11または請求項12に記載の方法。
  14. 前記回収した培養上清に追加的成分を添加するステップをさらに含む、請求項11〜請求項13のいずれか一項に記載の方法。
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