JP2016128310A - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】専用の電源を用いることなく、エンジン再始動時におけるアシストトルクの低下を抑制することが可能な電動パワーステアリング装置を提供する。【解決手段】本発明の予め定めた条件に基づいて自動的にエンジンを停止または再始動させるアイドリングストップ機能を備えた電動パワーステアリング装置は、ステアリングの操舵をアシストするトルクを発生させるモータと、ステアリングの操舵に応じた駆動電流をモータへ供給する駆動部と、アイドリングストップ機能によって出力されるエンジンの再始動を指示する再始動信号を検出する検出部とを備えている。駆動部は、検出部によって再始動信号が検出されると、この検出時にモータへ供給していた駆動電流よりも大きな駆動電流をモータへ供給する。【選択図】図1

Description

本発明は、アイドリングストップ機能を備えた車両に搭載される電動パワーステアリング装置に関する。
近年、燃費の向上およびCO排出量の削減のため、アイドリングストップ機能を搭載した車両が増えてきている。アイドリングストップ機能とは、車速やブレーキペダル踏み込み操作などに基づいて、車両の停止を検出した場合にエンジンを自動的に停止させ、車両の発進操作を検出した場合にエンジンを自動的に再始動させる機能である。
電動パワーステアリング装置は、ドライバーが行うステアリングの操舵を電動モータの駆動力によってアシスト(操舵力を軽減)する装置である。この電動パワーステアリング装置は、アイドリングストップ機能によってエンジンが停止している間も、車載バッテリーからの電源供給によって作動している。
電動パワーステアリング装置へ電源を供給している車載バッテリーは、エンジンスタータにも電源を供給している。従って、アイドリングストップ機能によってエンジンを再始動させる際には、車載バッテリーからエンジンスタータへ大電流が流れて、車載バッテリーの電源電圧が一時的に大きく低下する。
従来の電動パワーステアリング装置では、車載バッテリーの電源電圧が大きく低下した場合に適切な操舵アシストを継続して行うことができず、ドライバーが負担する操舵力を増加させるおそれがある。このため、車載バッテリーの電源電圧が大きく低下した場合には、例えば、電動パワーステアリング装置を駆動制御状態から回生制動制御状態に切り替えることが行われる。駆動制御とは、電動モータに通電してアシストトルクを発生させる制御である。回生制動制御は、電動モータへは通電をせず回路短絡によって回生制動力を発生させる制御である。
しかしながら、電動パワーステアリング装置を回生制動制御にした場合であっても、ドライバーの負担が軽減しないおそれがある。例えば、ステアリングが大きく切られている(右または左に操舵操作されている)状態では、回生制動力だけではステアリングを中立位置に戻そうとする路面からの逆入力に対抗できず、ステアリングの戻りを制止するために要求されるドライバーの負担が軽減しないおそれがある。
そこで、上述した課題を解決するために、例えば、特許文献1に記載された電動パワーステアリング装置が提案されている。この特許文献1に記載された装置では、車両の主電源である車載バッテリーとは別に、電動パワーステアリング装置のために副電源を設けている。これにより、車載バッテリーの電源電圧が低下しても、電動パワーステアリング装置へ供給される電源電圧が低下しないようにしている。
特開2010−115954号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の装置では、電動パワーステアリング装置のために専用の電源が別途必要となる。このため、車両のコストが高くなり、車両重量も増加するという問題が生じる。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、専用の電源を用いることなく、エンジン再始動時におけるアシストトルクの低下を抑制することが可能な電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の電動パワーステアリング装置は、予め定めた条件に基づいて自動的にエンジンを停止または再始動させるアイドリングストップ機能を備えた車両に搭載されており、ステアリングの操舵をアシストするトルクを発生させるモータと、ステアリングの操舵に応じた駆動電流をモータへ供給する駆動部と、アイドリングストップ機能によって出力されるエンジンの再始動を指示する再始動信号を検出する検出部とを備え、駆動部は、検出部によって再始動信号が検出されると、この検出時にモータへ供給していた駆動電流よりも大きな駆動電流をモータへ供給することを特徴とする。
この本発明の電動パワーステアリング装置によれば、アイドリングストップ機能によって停止していたエンジンが再始動される際、エンジンの再始動を指示する再始動信号を検出する。そして、この検出に応じて、モータへ供給する駆動電流を再始動信号の検出時よりも大きくする(増加させる)。通常、再始動信号が出力されてからエンジンスタータが動作してエンジンが始動するまでにタイムラグが生じる。よって、このタイムラグ期間に、つまりエンジンが再始動する前にモータへ供給する駆動電流を大きくしておけば、エンジン始動に伴うバッテリーの電源電圧低下があっても、モータに供給される駆動電流の低下を抑制できる。これにより、すなわち、専用の電源を用いることなく、エンジン再始動時におけるモータが発生するアシストトルクの低下を抑制することができる。
以上述べたように、本発明の電動パワーステアリング装置によれば、専用の電源を用いることなく、エンジン再始動時におけるアシストトルクの低下を抑制することができる。
本発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置を含む車両操舵システムの概略構成例を示す図 本発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置によって行われる駆動電流制御のタイミングチャートの一例を示す図 従来の電動パワーステアリング装置によって行われる駆動電流制御のタイミングチャートの一例を示す図 操舵トルクと駆動電流との関係を示す図 電動パワーステアリング装置によって行われる駆動電流制御の処理手順を説明するフローチャート
以下、本発明に係る電動パワーステアリング装置の一実施形態について、図面を参照しながら順に説明する。
[概要]
本発明に係る電動パワーステアリング装置は、アイドリングストップ機能によって停止していたエンジンの再始動を指示する信号を検出する。この検出に応じて、エンジンが始動する前に、操舵をアシストするトルクを発生させるモータへ供給する駆動電流を、再始動信号の検出時よりも大きくする(増加させる)。これにより、エンジンの再始動に伴うバッテリー電源電圧の一時的な低下があっても、操舵のアシストに必要な駆動電流の低下、すなわちアシストトルクの低下を抑制することができる。よって、ドライバーが負担する操舵力が大きくなってしまうことを防止できる。
[車両操舵システムの全体構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置10を含む車両操舵システム1の概略構成例を示す図である。図1において、車両操舵システム1は、ステアリングホイール2と、左右一対の前輪3と、伝達機構4と、電動パワーステアリング装置10とを備えている。電動パワーステアリング装置10には、アイドリングストップECU20が接続されている。アイドリングストップECU20は、エンジンECU30に接続されている。エンジンECU30は、エンジンスタータ(E/S)31に接続されている。この電動パワーステアリング装置10、アイドリングストップECU20、エンジンECU30、およびエンジンスタータ31は、車両に搭載されたバッテリー40から電源供給を受けている。
伝達機構4は、ステアリングシャフト5と、左右一対のタイロッド6と、ギア部7と、トルクセンサ8とを有している。ステアリングシャフト5は、ステアリングホイール2に接続されている。左右一対のタイロッド6は、左右の前輪3をそれぞれ回転可能に連結している。ギア部7は、ステアリングシャフト5と左右一対のタイロッド6とを連結し、ステアリングシャフト5の回転(操舵)をタイロッド6に伝達する。ギア部7は、例えばラックアンドピニオン機構で構成されている。ステアリングホイール2の操舵角に伴うステアリングシャフト5の回転運動は、ギア部7によってタイロッド6の直線運動(車幅方向)に変換される。タイロッド6の直線運動は、左右一対の前輪3に伝達される。トルクセンサ8は、ステアリングシャフト5に設けられており、ステアリングホイール2の操舵によって発生する操舵トルクを検出する。
電動パワーステアリング装置10は、パワーステアリングECU11と、アシストモータ16と、減速機17とを有している。アシストモータ16は、例えば三相ブラシレスモータで構成され、ステアリングホイール2の操舵を補助するためのアシストトルクを発生させる。このアシストモータ16は、減速機17を介してステアリングシャフト5に連結されている。よって、アシストモータ16が発生したアシストトルクは、減速機17を介してステアリングシャフト5に伝達される。アシストモータ16は、パワーステアリングECU11による制御に従って出力軸が回転し、アシストトルクを発生させる。
パワーステアリングECU11は、トルクセンサ8で検出された操舵トルクおよびアイドリングストップECU20が出力するエンジン再始動信号(後述する)などに基づいて、アシストモータ16の出力軸の回転を制御する。典型的には、パワーステアリングECU11は、中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)、メモリ、および入出力インタフェースなどを含む電子制御ユニット(Electronic Control Unit)である。このパワーステアリングECU11は、アシストモータ16に駆動電流を供給する駆動部11aおよびエンジン再始動信号を検出する検出部11bなどを構成に含む。
例えば、パワーステアリングECU11の駆動部11aは、インバータ回路11cと制御回路11dとを含む。インバータ回路11cは、例えば6個のスイッチング素子からなる3相ブリッジ回路を構成に含む。スイッチング素子は、例えばトランジスタなどである。スイッチング素子は、制御回路11dにより制御される。具体的には、トルクセンサ8で検出されたステアリングの操舵トルクに基づいて定まる所望のアシストトルクをアシストモータ16で発生させるためのスイッチングパターン(タイミングやデューティ比など)が、制御回路11dによってスイッチング素子に印加される。印加されたスイッチングパターンに対応したスイッチング素子がそれぞれオン/オフ動作を行うことで、各相の通電状態が順次切り替わる。この制御により、アシストモータ16において所望のアシストトルクを発生させるための駆動電流が、インバータ回路11cからアシストモータ16へ供給される。
本実施形態の説明では、上述したインバータ回路11cからアシストモータ16へ駆動電流が供給される状態を「駆動制御」状態という。この駆動制御では、制御回路11dの制御に従って、ステアリングの操舵トルクに基づくアシストトルクをアシストモータ16で発生させることができる。一方、インバータ回路11cからアシストモータ16へ駆動電流が供給されない状態を「回生制動制御」状態という。この回生制動制御の状態とは、インバータ回路11cのスイッチング素子が電源(バッテリー40)から切り離され、アシストモータ16の3相の入力端子がスイッチング素子を介して短絡された状態である。回生制動制御では、路面からの逆入力に対抗させる制動力をアシストモータ16で発生させる。
アイドリングストップECU20は、アイドリングストップ機能を実行する電子制御ユニットである。アイドリングストップECU20は、予め定めた条件に基づいて、自動的にエンジンを停止させる信号(以下、「エンジン停止信号」と記す)または自動的にエンジンを再始動させる信号(以下、「エンジン再始動信号」と記す)を、エンジンECU30およびパワーステアリングECU11に出力する。予め定めた条件は、例えば「車速がゼロ」、「ブレーキペダルの踏み込み/開放」、「シフトポジションがパーキング」などである。これらの予め定めた条件は、アイドリングストップECU20内のメモリ(図示せず)に記憶されている。予め定めた条件を判定するため、アイドリングストップECU20は、図示しない車速センサ、ブレーキペダルセンサ、およびシフトポジションセンサなどから信号を受信する。そして、アイドリングストップECU20は、受信した各種信号と予め定めた条件とに基づいて、車両の停止または車両の発進動作を検出し、エンジンECU30およびパワーステアリングECU11に必要な信号を出力する。
エンジンECU30は、内燃機関であるエンジン(図示せず)の運転を制御する電子制御ユニットである。エンジンECU30は、エンジンのバルブ開閉タイミング、スロットル開度、空燃比、燃料噴射量、および点火装置の点火や点火時期などを制御する。エンジンECU30は、ドライバーによるイグニッションON操作やアイドリングストップECU20からのエンジン再始動信号に従って、エンジンを始動させる。エンジンの始動は、エンジンスタータ31を作動させてクランクシャフトを回転させる、つまりクランキング動作が行われる。また、エンジンECU30は、ドライバーによるイグニッションOFF操作やアイドリングストップECU20からのエンジン停止信号に従って、エンジンを停止させる。
バッテリー40は、例えば車両に搭載される一般的なバッテリーである。このバッテリー40には、電動パワーステアリング装置10、アイドリングストップECU20、およびエンジンECU30の他に、エンジンの始動時に使用されるエンジンスタータ31にも接続されている。このバッテリー40の電圧は、パワーステアリングECU11によって監視されており、電動パワーステアリング装置10における駆動制御と回生制動制御との切り替えを判断するために用いられる。
[電動パワーステアリング装置が行う駆動電流制御]
図2Aは、本発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置10によって行われる駆動電流制御のタイミングチャートの一例を示す図である。図2Bは、従来の電動パワーステアリング装置によって行われる駆動電流制御のタイミングチャートの一例を示す図である。なお、図2Aおよび図2Bでは、車両の停止状態においてドライバーによってステアリングが左右のいずれかに切られており、操舵トルクが発生している状況を説明している。
1.従来の制御
まず、図2Bを参照して、従来の電動パワーステアリング装置によって行われる駆動電流制御を説明する。
バッテリーの電源電圧が低下していない(所定の閾値以上ある)場合、アイドリングストップ機能によってエンジンが停止している状態では(図2Bの[B1])、従来の電動パワーステアリング装置による駆動制御が行われる。よって、ステアリングの操舵トルクに応じた駆動電流が、アシストモータに流れている。その後、アイドリングストップECUからエンジン再始動信号を受けると、エンジンECUがエンジンスタータを作動させ、エンジンのクランキングが開始される(図2Bの[B2])。これにより、エンジンスタータに大電流が流れ、バッテリーの電源電圧が大きく低下する。
従来の電動パワーステアリング装置では、アイドリングストップECUから出力されるエンジン再始動信号を監視していない。よって、従来の電動パワーステアリング装置による次の動作は、バッテリーの電源電圧が所定の閾値よりも低下したことを検出して、アシストモータの制御を駆動制御から回生制動制御に切り替える動作となる。
アシストモータの制御が回生制動制御になると、パワーステアリングECUからの駆動電流がなくなり、アシストモータに流れる駆動電流が徐々に低下していく(図2Bの[B3])。これに伴って、操舵アシスト力も徐々に低下していき、左または右に切られているステアリングには中立位置に戻ろうとする力が働く。この際、ドライバーは中立位置へ戻ろうとするステアリングに対抗するために操舵トルクを掛け続けることを試みると考えられるが、ステアリングは中立位置の近傍まで戻ってしまう(図2Bの[B4])。
このように、従来の電動パワーステアリング装置では、操舵トルクに応じた通常の駆動電流をアシストモータに供給した状態でエンジンのクランキング動作に移る。このため、エンジンのクランキングが行われてバッテリーの電源電圧が低下している期間に、アシストモータに供給される駆動電流が低下してしまう。よって、アシストモータが発生するアシストトルクも低下してしまう。これにより、ステアリングの位置が中立位置近傍まで戻ってしまうおそれが生じる。
2.本発明の制御
次に、図2Aを参照して、本発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置10によって行われる駆動電流制御を説明する。
バッテリー40の電源電圧が低下していない(所定の閾値以上ある)場合、アイドリングストップ機能によってエンジンが停止している状態では(図2Aの[A1])、電動パワーステアリング装置10による駆動制御が行われる。よって、ステアリングの操舵トルクに応じた駆動電流が、アシストモータ16に流れている。その後、アイドリングストップECU20からエンジンECU30へエンジン再始動信号が出力されると、パワーステアリングECU11は、検出部11bによってこのエンジン再始動信号を検出する(図2Aの[A2])。
エンジン再始動信号を検出すると、パワーステアリングECU11は、駆動部11aによってアシストモータ16に供給する駆動電流を大きくする(増加させる)制御を行う(図2Aの[A3])。この制御では、エンジン再始動信号を検出した時点(検出する直前)にアシストモータ16へ供給していた駆動電流よりも、大きな駆動電流(増加させた駆動電流)をアシストモータ16へ供給することが行われる。駆動電流の変更は、例えば、駆動部11aのインバータ回路11cのスイッチング素子に印加されるスイッチングパターン(デューティ比)を制御することで実現可能である。この制御は、アイドリングストップECU20からエンジン再始動信号が出力されてから、エンジンスタータ31が動作してバッテリー40の電源電圧が低下するまでに生じる、タイムラグ期間TLに実行される。このアシストモータ16に供給する駆動電流を大きくする(増加させる)ことによって、ドライバーがステアリング操作する際の操舵トルクを下げることができる(図2Aの[A4])。
その後、エンジンECU30が、エンジン再始動信号に従ってエンジンスタータ31を作動させ、エンジンのクランキングが開始される(図2Aの[A5])。これにより、エンジンスタータ31に大電流が流れ、バッテリー40の電源電圧が大きく低下する。電動パワーステアリング装置10は、バッテリー40の電源電圧が所定の閾値よりも低下したことを検出して、アシストモータ16の制御を駆動制御から回生制動制御に切り替える。
アシストモータ16の制御が回生制動制御になると、パワーステアリングECU11からの駆動電流がなくなり、アシストモータ16に流れる駆動電流が徐々に低下していく(図2Aの[A6])。これに伴って、操舵アシスト力も徐々に低下していくが、タイムラグ期間TLにアシストモータ16に供給する駆動電流を大きくし、ドライバーがステアリング操作する際の操舵トルクを軽減させている。このため、ドライバーは、右または左に切られているステアリングに働く中立位置に戻ろうとする力に、軽い操舵力(操舵トルク)で対抗できる。この結果、ステアリングが中立位置近傍まで戻ってしまうことを防ぐことができる(図2Aの[A7])。
このように、本発明の電動パワーステアリング装置10では、エンジンのクランキングによってバッテリー40の電源電圧が低下する前に、予めアシストモータ16に供給する駆動電流を大きくしておく(増加させておく)。これにより、エンジンのクランキングが開始されてバッテリー40の電源電圧が大きく低下しても、アシストモータ16に供給される駆動電流の低下を抑制できる。よって、アシストモータ16が発生するアシストトルクの低下を抑制することができる。従って、ステアリングの位置が中立位置近傍まで戻ってしまうことを防ぐことができる。
[駆動電流制御の具体例]
図3および図4を参照して、本実施形態に係る電動パワーステアリング装置10のパワーステアリングECU11によって行われる駆動電流制御の具体例を説明する。図3は、操舵トルクと駆動電流との関係を示す図である。図3において、点線は操舵トルクに対応付けられた通常の駆動電流を示し、実線は操舵トルクに対応付けられた本発明の増大駆動電流を示す。図4は、電動パワーステアリング装置10によって行われる駆動電流制御の処理手順を説明するフローチャートである。
図4に示す処理は、アイドリングストップ機能によってエンジンが停止すると開始される。処理が開始されると、検出部11bによって、アイドリングストップECU20からエンジンECU30に向けてエンジン再始動信号が出力されたか否かが判断される(ステップS41)。エンジン再始動信号が出力されたと判断した場合(ステップS41、Yes)、駆動部11aによって、トルクセンサ8から操舵トルクが取得される(ステップS42)。操舵トルクが取得されると、駆動部11aによって、操舵トルクが所定の範囲にあるか否かが判定される。
所定の範囲とは、図3に示すようにステアリングの中立位置である操舵トルク「ゼロ」から±Tの範囲をいう。この±Tの範囲は、電動パワーステアリング装置10による操舵アシストの制御を行わない操舵トルクの範囲である。すなわち、この±Tの範囲にある操舵トルクは、アシストモータ16でアシストトルクを発生させずともドライバーによって操舵操作可能である操舵トルク、つまりステアリングが中立位置に戻る可能性が低い操舵トルクといえる。
操舵トルクが所定の範囲にないと判定されると(ステップS43、No)、駆動部11aによって、例えば図3に例示したマップが参照され、取得された操舵トルクに対応した増大駆動電流(実線)が求められる(ステップS44)。増大駆動電流が求められると、駆動部11aによって、インバータ回路11cが制御され、アシストモータ16へ増大駆動電流が供給される(ステップS45)。一方、操舵トルクが所定の範囲にあると判定されると(ステップS43、Yes)、アシストモータ16へ駆動電流は供給されずに、処理が終了する。
[実施の形態の効果]
上述した本実施形態に係る電動パワーステアリング装置10では、アイドリングストップECU20が出力するエンジン再始動信号を検出し、エンジンが始動する前にアシストモータ16へ供給する駆動電流を当該信号の検出時よりも大きくする(増加させる)。これにより、エンジンの再始動に伴うバッテリー40の電源電圧の一時的な低下があっても、アシストモータ16に供給される駆動電流の低下を抑制できる。すなわち、専用の電源を用いることなく、エンジン再始動時におけるアシストモータ16が発生するアシストトルクの低下を抑制することができる。よって、ドライバーが負担する操舵力が大きくなってしまうことを防止できる。従って、例えばステアリングが右または左に大きく切られている状態では、ステアリングの中立位置への戻りを抑えることができる。
本発明は、アイドリングストップ機能を備えた車両に搭載される電動パワーステアリング装置に利用可能であり、特に、専用の電源を用いることなくエンジン再始動時におけるアシストトルクの低下を抑制したい場合に有用である。
1 車両操舵システム
2 ステアリングホイール
3 前輪
4 伝達機構
5 ステアリングシャフト
6 タイロッド
7 ギア部
8 トルクセンサ
10 電動パワーステアリング装置
11 パワーステアリングECU
11a 駆動部
11b 検出部
11c インバータ回路
11d 制御回路
16 アシストモータ
17 減速機
20 アイドリングストップECU
30 エンジンECU
31 エンジンスタータ(E/S)
40 バッテリー

Claims (1)

  1. 予め定めた条件に基づいて自動的にエンジンを停止または再始動させるアイドリングストップ機能を備えた車両に搭載される、電動パワーステアリング装置であって、
    ステアリングの操舵をアシストするトルクを発生させるモータと、
    ステアリングの操舵に応じた駆動電流を前記モータへ供給する駆動部と、
    前記アイドリングストップ機能によって出力されるエンジンの再始動を指示する再始動信号を検出する検出部とを備え、
    前記駆動部は、前記検出部によって前記再始動信号が検出されると、当該検出時に前記モータへ供給していた駆動電流よりも大きな駆動電流を前記モータへ供給することを特徴とする、電動パワーステアリング装置。
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