(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る軸継手を図面に基づき説明する。図1ないし図6に示すように、この軸継手1は回転伝達系の駆動側部材の一例として回転駆動源(図示せず)の駆動軸2と被動側部材の一例の伝達軸(図示せず)とを連結するもので、前記駆動軸2が嵌合する係合穴3aを備えた入力軸3と、前記伝達軸が連結される出力軸4とを有している。前記入力軸3は、一端に略長方形状の連結用つば部3bを有し、この連結用つば部3bには概略円柱様の膨径軸部5が一体に回転するように固定されている。この膨径軸部5は、点対称の位置に欠損部5a,5aを有し、その欠損部5a,5aに後記カムフォロア部材6の一部が露出するように取付けられている。また、この膨径軸部5の下面にはその中心に位置して支持軸用穴5bが設けられており、この支持軸用穴5bには出力軸4に植設された後記支持軸18cが位置し、この支持軸18cにより膨径軸部5が回動可能に案内されている。
前記膨径軸部5には、2個のガイド穴5c,5cがそれぞれ欠損部5a,5aに面してかつ入力軸3の軸線を挟みこれと交差する方向に延びるように設けられている。このガイド穴5c,5cには、2個のカムフォロア部材6,6がそれぞれ直進往復移動自在に、かつ入力軸3の軸線を挟む位置で点対称の位置に配置されている。この配置により、入力軸3の回転バランスが保たれる。前記カムフォロア部材6は、ローラ7と、これを回転自在に保持するローラ取付部9aが設けられたシリンダ部8のシリンダ本体9とを備え、このシリンダ部8がローラ7を後記カム部18bのカム面18dに当接するように押圧する弾力付勢手段をなしながらダンパ機能を果たすダンパ部をなしている。また、このシリンダ部8の押圧力により、ローラ7にはカム部18bに対する制動力が付与され、この制動力によりローラ7とカム部18b、すなわち入力軸3と出力軸4とが一体に回転するように構成されている。
前記シリンダ本体9は、その内部にシリンダ室9bを有し、このシリンダ室9bにはこれを第1室9b1と第2室9b2とに仕切るピストン10と、このピストン10が係止されるつば部11aを一端に持つピストンロッド11とが配置されている。前記シリンダ本体9には、シリンダ室9bを閉止するシリンダ蓋12が取付けられており、このシリンダ蓋12を前記ピストンロッド11が貫通して、その一端が前記膨径軸部5のガイド穴5cを横切る固定ピン13に固定されている。これにより、前記シリンダ本体9の移動にともなってシリンダ蓋12がピストンロッド11に沿ってシール効果を保持しながら摺動できる構成となっている。
前記ピストン10には、図6ないし図9に示すように前記シリンダ室9bの第1室9b1側が円形穴部で、第2室9b2側が非円形穴部でなる段付穴10aが設けられており、この段付穴10aによりピストン10に形成される段部10bが前記ピストンロッド11のつば部11aに当接可能となっている。また、前記ピストンロッド11のつば部11aは円板状の対向する2個所を小さく、この2個所と直交する方向で対向する2個所を大きく切り落とした略4角形状をなしている。このつば部11aは、ピストン10の段部10bに当接する時には、その小さく切り落とした部分の2個所のみが第1ポート10cとなって段付穴10aの非円形穴部と連通するように構成されている。さらに、前記ピストンロッド11のつば部11aは対向する2個所の角部にピン係止穴11bを有しており、この係止ピン穴11bにはピストン10に圧入された係止ピン14の一部がつば部11aと間で少しの間隙を持って位置している。これにより、ピストン10がピストンロッド11のつば部11aからわずかに離れることが可能になっている。
前記ピストンロッド11は、その軸線に沿って穿設された有底穴11cを有し、この有底穴11cにはパイロットロッド15の一端が挿入されている。このパイロットロッド15は、有底穴11cに配置されたばね16により弾力付勢されており、その他端がシリンダ本体9の底部に当接している。これにより、シリンダ本体9はシリンダ室9bの後記粘性流体の圧力とともに常時ローラ7側に付勢されるので、ピストン10がピストンロッド11に対してわずかに移動し、ピストンロッド11のつば部11aはピストン10の段部10bからわずかに離れて位置している(図7(a)参照)。この時、つば部11aの大きく切り落とされた部分が段部10bとつば部11aとの間に生じる隙間を通じて段付穴10aの非円形穴部と連通する第2ポート10dになる。前記シリンダ本体9のシリンダ室9bの第1室9b1および第2室9b2には、粘性流体が充填されており、シリンダ本体9の移動に伴って粘性流体が第1ポート10cまたは第1ポート10cおよび第2ポート10dを通過して移動するので、シリンダ本体9は後退時よりも前進時に素早く移動できる構成となっている。また、前記粘性流体はその粘度により前述の第1ポート10cの通過速度を変化させることから、この粘度を調整することによりシリンダ本体9の後退時に生じる制動力を任意の大きさに設定することができる。
前記軸継手1の出力軸4は、図3ないし図5に示すように伝達軸が連結される位置まで延びる連結部17と、入力軸3側に位置する円板様の膨径端部18aと、これと一体に形成されたカム部18bを備えたカム部材18とからなっている。前記膨径端部18aには、その中心位置に支持軸18cが植設されており、この支持軸18cが前記入力軸3の膨径軸部5の下面に設けられた支持軸用穴5bに位置して、入力軸3と一体の膨径軸部5を回動可能に案内している。また、前記カム部18bは前記膨径軸部5の一部を囲み、かつ対向する位置に2個配置されている。このカム部18b,18bは、それぞれ出力軸4の軸線を挟んで点対称の形状をなす円弧でなるカム面18dを有しており、この円弧は図6中に示す正転方向に向かって出力軸4の軸線に徐々に接近する形状をなしている。前記カム部18bのカム面18dには、入力軸3に保持されたカムフォロア部材6のローラ7が当接しており、シリンダ部8の押圧力によってローラ7からカム部18bに付与される制動力によりカム部18bおよびローラ7、すなわち出力軸4および入力軸3が一体に回転可能に構成されている。
前記カム部材18の膨径端部18aには、その外周に沿って弧状に延びるガイド溝18eが対向して設けられており、このガイド溝18eにはそれぞれ前記入力軸3の膨径軸部5の外周付近にその軸線と平行に延びるように植設されたガイドピン5dが係合している。このガイド溝18eとガイドピン5dとの係合により、入力軸3に対する相対的な出力軸4の回動角度すなわち両軸の位相差が規制されている。
前記カム部材18の2個のカム部18b,18bには、図3、図4、図10および図11に示すように軸受プレート19が前記入力軸3の連結用つば部3bおよび膨径軸部5を上方から覆うように固定されており、この軸受プレート19により入力軸3が回転自在に案内されて入力軸3と出力軸4との相対的な回動が案内されている。また、前記軸受プレート19の内面には2個のばね係止ブロック20,20がその中心位置を挟んで点対称の位置に取付けられており、前記膨径軸部5にばね取付けピン5eを介して取付けられたコイルばね5fの一端を係止している。前記ばね取付けピン5eは、連結用つば部3bに設けられた貫通溝3c内に位置し、この貫通溝3c内にコイルばね5fの他端を位置させて連結用つば部3bに係止させている。これにより、コイルばね5fは軸受プレ−ト19および膨径軸部5間の相対的な回動を復帰させる方向に作用するので、入力軸3と出力軸4との間で相対的な回動が生じて両軸間に位相差が生じても、両軸の位相差が迅速に解消できる構成となっている。
上記軸継手において、図4および図13(a)に示すように入力軸3が回転駆動源の駆動軸2の回転を受けて正転方向に回転すると、この入力軸3と一体に膨径軸部5およびこれに保持されたカムフォロア部材6が入力軸3の軸線を中心にして回転する。前記カムフォロア部材6の回転にともない、カムフォロア部材6のローラ7に付与される制動力によりカム部18bを持つカム部材18が一体に回転し、このカム部材18とともに出力軸4が一体に正転方向に回転することができる。
前記入力軸3と出力軸4とが一体に回転する間に、被動側の負荷が大きくなって、伝達軸および出力軸4の回転が低下すると、入力軸3の回転に制動を加える方向の回転トルクが発生する。この回転トルクによる回転力がカム部材18のカム部18bおよびカムフォロア部材6のローラ7間の制動力より大きくなると、入力軸3および出力軸4間に相対的な回動を招き、すなわち出力軸4が入力軸3に対して回動し、両軸間に位相差が生じる。この時、当該回動によりカム部材18のカム部18bが回動するので、カムフォロア部材6のローラ7が相対的にカム部18bのカム面18dを倣いながら移動することになる。これにより、このローラ7およびこれを保持するシリンダ部8のシリンダ本体9がピストンロッド11内で弾力付勢されたパイロットロッド15を相対的に後退させながら、膨径軸部5のガイド穴5c内を入力軸3の軸線と交差する方向に後退する。
このシリンダ本体9の後退開始直後には、シリンダ室9bの第2室9b2に充填された粘性流体は第1ポート10cおよび第2ポート10dからシリンダ室9bの第1室9b1に押し出され、シリンダ本体9は円滑に後退し始める。その後のシリンダ本体9の後退時には、第2室9b2の粘性流体の圧力増加にともなってピストン10がピストンロッド11のつば部11aに当接するまで移動して第2ポート10dが閉止される(図7(b)参照)。これにより、前記第2室9b2に残された粘性流体の一部がピストン10に設けられた第1ポート10cのみからシリンダ室9bの第1室9b1に押し出され、シリンダ部8はダンパ機能を果たす。同時に、前記第2室9b2内の残りの粘性流体はシリンダ本体9が後退する間一旦圧縮されて上昇するので(図12および図13(b)参照)、シリンダ本体9に加わる押圧力が増大し、ローラ7からカム部18bおよびカム部材18に加えられる制動力が増大する。この増大した制動力は、入力軸3および出力軸4間の相対的な回動に対して付与されるので、当該回動が制動されることになり、当該回動をもたらす回転トルクが低減されて入力軸3に伝達される。これにより、出力軸4の回転速度が急激に低下して入力軸3の回転に制動を加える回転トルクが発生しても、この回転トルクがそのまま入力軸3に伝達されずに低減されて入力軸3に伝達されるので、回転駆動源に悪影響を及ぼすようなことはなくなる。また、前記入力軸3および出力軸4間に緩やかで相対的な回動が生じる時は、この相対的な回動に重量感を持たせることができるので、各種機器の開閉扉のダンパ装置としても利用可能となり、軸継手およびダンパ装置の部品の共通化を図って、それぞれのコストの低減を図ることができる。
また、前記入力軸3および出力軸4間に相対的な回動が生じ、両軸間に位相差が生じるにともなって、それぞれと一体に回動する軸受プレート19および膨径軸部5間にも図14(a)に示すように位相差が生じ、膨径軸部5に保持されたコイルばね5fが撓んで、その弾性力が増大する。そのため、入力軸3および出力軸4間に相対的な回動を招く回転トルクが解消または低下すると、前記コイルばね5fの弾性力の作用により、膨径軸部5と軸受プレート19との位相差が解消する。これにより、図14(b)に示すように軸受プレート19と一体のカム部材18はカムフォロア部材6のローラ7に対して当該回動前の位置関係を持つように復帰する。この時、図13(b)に示す位置にあるシリンダ部8のシリンダ本体9が図13(a)に示す位置まで復動するに際して遅れが生じるため、ローラ7はカム面18dから一旦離れることができる。その後、ローラ7およびこれを保持するシリンダ本体9も前述の回動前の位置に戻り、当該回動前にローラ7の持つ制動力により、カム部材18とローラ7、すなわち入力軸3と出力軸4とが一体に回転し、入力軸3の回転を出力軸4に伝達することができる。
なお、図示はしないが、前記弾力付勢手段はローラ7に制動力を付与するばねのみであってもよく、また前記入力軸3と出力軸4とを駆動側、被動側が逆になるように使用してもよい。また、図示はしないが、前記入力軸3と出力軸4とが一体に回転する時に、前記カム部材18のカム部18bのカム面18dとカムフォロア部材6のローラ7との当接位置を出力軸4の軸線に近い位置にあるカム面18dとしてもよい。この場合、入力軸3および出力軸4間に相対的な回動が生じると、ローラ7の前記カム面18dへの制動力が減少し、入力軸3の回転を出力軸4に伝達しないようにすることができる。
(第2の実施形態)
本発明の第2に実施形態に係る軸継手を図面に基づき説明する。この軸継手1Aは、図15ないし図17に示すように正転、逆転両方向の相対的な回動に対応できるもので、第1の実施形態に係る軸継手1とはその膨径軸部5およびカム部材18の構造の点で相違するのみであるので、同一部分の詳細な説明を省略し、軸継手1Aの膨径軸部5Aおよびカム部材18Aの構造を中心に説明する(なお、説明中、第1の実施形態に係る軸継手1の部品と同一の部品については、同一番号を使用する)。前記軸継手1Aは、回転伝達系の駆動側に配置される部材が連結される係合穴3aを備えた入力軸3と、その一端に取付けられた膨径軸部5Aと、この膨径軸部5Aに対して相対的に回動可能な後記カム部材18Aを持つ出力軸4Aとを有している。前記膨径軸部5Aは、略円柱形状をなしており、この膨径軸部5Aにはその軸線を通る位置でこれと交差する方向に延びるガイド穴5cAが設けられている。このガイド穴5cAには、第1実施形態に係るカムフォロア部材6とはローラ取付部9aを除いて同構造のカムフォロア部材6Aが直進往復移動自在に配置されている。
前記カムフォロア部材6Aは、ローラ7と、これを回転自在に保持するローラ取付部9aAが設けられたシリンダ部8のシリンダ本体9とを備えている。前記シリンダ部8は、ローラ7を後記カム部18bAのカム面18dAに当接するように押圧する弾力付勢手段をなしながらダンパ機能を果たすダンパ部をなしている。このシリンダ部8の押圧力により、ローラ7にカム部18bAに対する制動力が付与され、この制動力によりローラ7とカム部18bA、すなわち入力軸3と出力軸4Aとが一体に回転するように構成されている。
前記軸継手1Aの出力軸4Aの上端には、カム部材18Aが設けられており、このカム部材18Aは円板様の膨径端部18aAとこれに一体に設けられたカム部18bAとを備えている。前記カム部18bAはその一部に前記カムフォロア部材6Aのローラ7に当接するカム面18dAを有し、このカム面18dAは出力軸4Aの軸線を挟んで対向する円弧で形成されている。この円弧は、それぞれその中央部で出力軸4Aの軸線から離れた位置にあって、正逆いずれの回動方向に向かっても徐々に出力軸4Aの軸線に接近する形状をなしている。前記カム面18dAにはその中央部付近で前記カムフォロア部材6Aのローラ7が当接しており、カム部18bAとローラ7とはローラ7に付与される制動力により一体となり、入力軸3と出力軸4Aとが一体に回転する構成となっている。前記カム面18dAは対向する位置に2個設けられているが、入力軸3の回転バランスを考慮して上下2段に配置される2個のカムフォロア部材(図示せず)に対応できるようにしたもので、1個のカムフォロア部材6Aに対して1個のカム面18dAとしてもよい。
前記カム部材18Aのカム部18bAは、その外面に前述の2個のカム面18dA,18dAと交差する方向に位置して対向する2個の切欠窓18fA,18fAを有している。この切欠窓18fAは、入力軸3の膨径軸部5Aに保持されたカムフォロア部材6Aが露出する大きさを有し、カムフォロア部材6Aの交換が容易となるように構成されている。
上記軸継手において、入力軸3および出力軸4A間に正転方向または逆転方向の相対的な回動を招く回転トルクが加わり、この回転トルクによる回転力がカム部材18Aのカム部18bAとカムフォロア部材6Aのローラ7との間の制動力より大きくなると、出力軸4Aが正転、逆転方向のいずれかの方向に回動する。この出力軸4Aの回動(図18に示す逆転方向の回動を参照)にともなって、カム部材18Aのカム部18bAが回動し、この回動にともなってローラ7がカム部18bAのカム面18dAを倣って相対的に移動する(出力軸4Aの正転方向の回動の場合を、図18中の一点鎖線で示す)。この移動にともなって、ローラ7は膨径軸部5Aの軸線と交差する方向に後退するので、このローラ7の後退によりシリンダ部8はダンパ機能を果たしながらその押圧力を一旦増大させる。このシリンダ部8の押圧力の増大にともなって、ローラ7に加わる制動力が増大し、この増大した制動力によりカム部18bAの回動が制動されるので、当該回動を招く回転トルクを正転方向、逆転方向のいずれであっても低減されて入力軸3に伝達される。これにより、出力軸4Aの回転速度が急激に低下して入力軸3の回転に制動を加える回転トルクが発生しても、この回転トルクがそのまま入力軸3に伝達されずに低減されて入力軸3に伝達されるので、回転駆動源に悪影響を及ぼすようなことはなくなる。
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係るダンパ装置を各種機器の開閉扉の取付けに際して使用されるダンパ装置について、図面に基づき説明する。このダンパ装置51は、図19および図20に示すように第1の実施形態に係る軸継手1とはその入力軸3および出力軸4の取付構造の点を除いて、同一の構造であるので、同一部分の詳細な説明を省略し、入力軸3および出力軸4の取付構造を中心に説明する(なお、説明中、第1の実施形態に係る軸継手1の部品と同一の部品については、同一番号を使用する)。前記ダンパ装置51は、機器本体52に開閉扉53を取付ける際に使用されるもので、この開閉扉53は、機器本体52の下側固定具(図示せず)に回転自在に保持される構成と、上側角部に形成された取付スペース53aと、この取付スペース53a内に延びる四角柱部(図示せず)を上部に持つ固定軸54とを備えている。前記ダンパ装置51は、前記固定軸54が連結された入力軸3と、この入力軸3の一端に取付けられた膨径軸部5と、この膨径軸部5に対して相対的に回動可能な後記カム部材18を持つ出力軸4とを有している。
前記膨径軸部5には、2個のカムフォロア部材6,6が入力軸3の軸線と交差する方向に後退可能に付勢されて点対称の位置に配置されている。このカムフォロア部材6,6は、それぞれローラ7と、これを回転自在に保持するローラ取付部9aが設けられたシリンダ部8のシリンダ本体9とを備えている。
前記シリンダ部8は、ローラ7を後記カム部18bのカム面18dに当接するように押圧する弾力付勢手段をなしながらダンパ機能を果たすダンパ部をなしている。このシリンダ部8の押圧力により、ローラ7にカム部18bに対する制動力が付与され、この制動力によりローラ7とカム部18b、すなわち入力軸3と出力軸4とが一体に保持されている。
前記ダンパ装置51の出力軸4の上部は、上側固定具55を介して機器本体52に固定されており、その下部にはカム部材18が設けられている。このカム部材18bには、前記カムフォロア部材6,6のローラ7,7それぞれに当接するカム部18b,18bが設けられている。これにより、カム部材18は機器本体52側に固定されることになり、その固定位置でローラ7の回動を案内している。前記カム部材18のカム部18bには、前記ローラ7が当接する位置に開閉扉53の閉止方向に進むにしたがって徐々に出力軸4の軸線に近づくカム面18dが形成されている。このカム面18dは、入力軸3が出力軸4に対して、すなわちローラ7がカム部18bに対して開閉扉53の閉止方向に回動するにともなって、ローラ7を当該回動の中心線、すなわち入力軸3の軸線と交差する方向に後退させるように作用する形状をなしている。また、前記カム面18dはローラ7を後退させるように作用することから、シリンダ部8の押圧力を一旦増大させて、ローラ7に加わる制動力を増大させ、前記ローラ7とカム部18bと間の相対的な回動に重量感を持たせるように作用している。
前記カムフォロア部材6のローラ7は、開閉扉53が閉止状態にある時、前カム面18dが出力軸4の軸線に最も接近する位置付近でこのカム面18に当接している。これにより、ローラ7は膨径軸部5のガイド穴5c内に後退して位置するので、シリンダ部8の押圧力が増大してカム部材18との間の制動力が開閉扉閉止間際に増大する構成となっている。また、前記ローラ7とカム部18bのカム面18dとの当接位置は開閉扉53が最大開放状態にある時、カム面18dが出力軸4の軸線から最も遠くなる位置付近となるように構成されている。前記ローラ7は前述の当接位置に位置する時には膨径軸部5のガイド穴5c内の前進位置にあって、シリンダ部8の押圧力が減少しているので、ローラ7からカム部材18に付与される制動力も減少するが、この制動力は開閉扉53を最大開放状態で停止させるのに十分な大きさとなっている。
上記ダンパ装置では、閉止状態にある開閉扉53を開放する際には、これと一体の固定軸54が回動し、これにともない入力軸3およびカムフォロア部材6が一体に回動する。前記カムフォロア部材6の回動にともなって、そのローラ7がカム部18bのカム面18dに当接する位置はカム面18dが出力軸4の軸線に最も接近する位置付近から最も遠い位置付近となるように移動する。これにより、ローラ7は当該回動の中心線、すなわち入力軸3の軸線と交差する方向に前進する。このローラ7の前進により、シリンダ部8はダンパ機能を果たしながらその押圧力を減少させる。このシリンダ部8の押圧力の減少にともなって、ローラ7に付与される制動力が減少し、この減少した制動力がカム部18bに付与される。この時、この制動力は減少しながらも、開閉扉53を最大開放状態で停止させるのに十分な大きさを保持している。そのため、この制動力により、前記開閉扉53は最大開放状態に保持される(図20中の二点鎖線参照)。
前記開閉扉53を閉止状態となるように回動させる時には、固定軸54とともに入力軸3が一体に回動するので、入力軸3の回動にともなってローラ7がカム部18bのカム面18dを倣いながら駆け上がる。そのため、ローラ7が膨径軸部5のガイド穴5c内で入力軸3の軸線と交差する方向に後退するので、ローラ7と連動するシリンダ部8はダンパ機能を果たしながらその押圧力を増大させる。このシリンダ部8の押圧力の増大にともなって、ローラ7に付与される制動力が徐々に増大し、前記開閉扉53が閉止状態となる時には、最大となる。この最大の制動力により、開閉扉53を閉止する際の開閉扉53の回動に重量感がもたせられるので、開閉扉53の閉止時に開閉扉53が機器本体52に衝撃を与えるようなことは解消される。
なお、開閉扉53の最大開放角度を大きくする場合には、開閉扉53の固定軸54と上側固定具55との間に複数段にダンパ装置51を配置することもできる。この場合、上側固定具55に固定されるダンパ装置51を除く他のダンパ装置(図示せず)の出力軸4を各ダンパ装置の入力軸3に連結できるだけの長さとするのが望ましい。また、前述の第3の実施形態は第1の実施形態に係る軸継手1の構造を変更することなく使用するものではあるが、これを変更してもよい。例えば、図示はしないが、ダンパ装置51の出力軸4を膨径端部18aが設けられたカム部材18のみの構造として、使用してもよい。この場合、カム部材18を上側固定具55で固定することにより、カム部材18が上側固定具55に覆われるように支持されるので、入力軸3の回動がしっかりと保護される。さらに、図示はしないが、入力軸3に保持されるカムフォロア部材6を1個として、カム部材18のカム部18bを延長し、カムフォロア部材6の回動角を大きくしてもよい。この場合、開閉扉53の最大開放角度を十分に大きくすることができる。しかも、前述したダンパ装置51の入力軸3、出力軸4のいずれでも固定側に取付けることができる。
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る衝撃吸収装置を図面に基づき説明する。この衝撃吸収装置61は、図21に示すように回転駆動源の回転を受けて回転する部材の一例をなす電動丸鋸62のモータ63の駆動軸63aと、作業工具の一例の丸鋸歯64との間に配置される第1の実施形態に係る軸継手1でなっている。この衝撃吸収装置61は、第1の実施形態の軸継手1と同一の構造をなしているので、同一部分の詳細な説明を省略し、駆動軸63aおよび軸継手1の入力軸3間、軸継手1の出力軸4および丸鋸歯64間の連結構造を中心に説明する(なお、説明中、第1の実施形態に係る軸継手1の部品と同一の部品については、同一番号を使用する)。前記衝撃吸収装置61は、モータ63の駆動軸63aが連結された入力軸3と、その一端に取付けられた膨径軸部5とを有している。この膨径軸部5には、2個のカムフォロア部材6,6が入力軸3の軸線と交差する方向に後退可能に付勢されて点対称の位置に配置されている。このカムフォロア部材6は、ローラ7と、これを回転自在に保持するローラ取付部9aが設けられたシリンダ部8のシリンダ本体9とを備えている(図6参照)。前記シリンダ部8は、ローラ7を後記カム部18bのカム面18dに当接するように押圧する弾力付勢手段をなしながらダンパ機能を果たすダンパ部をなしている。このシリンダ部8の押圧力により、ローラ7にカム部18bに対する制動力が付与され、この制動力によりローラ7とカム部18b、すなわち入力軸3と出力軸4とが一体に回転するように構成されている。
また、前記衝撃吸収装置61は一端に丸鋸歯64が連結された出力軸4を有し、この出力軸4はモータ63の側面に取付けられたホルダ66により回転自在に保持されている。前記出力軸4の他端には、カム部材18が設けられており、このカム部材18は前記カムフォロア部材6,6のローラ7,7がそれぞれ当接する2個のカム部18b、18bを有している。このカム部18bには、前記ローラ7が当接する位置に切断方向(正転方向)に進むにしたがって徐々に出力軸4の軸線に近づくカム面18dが形成されている(図6参照)。前記カム面18dは、出力軸4が入力軸3に対して、すなわちカム部材18がローラ7に対して切断方向(正転方向)と逆方向に相対的に回動するにともなって、ローラ7を当該回動の中心線、すなわち入力軸3の軸線と交差する方向に後退させるように作用する形状をなしている。また、このカム面18dはローラ7を後退させるように作用することから、シリンダ部8の押圧力を一旦増大させて、ローラ7に加わる制動力を増大させることにより前記カム部18bの相対的な回動に制動を加えるように作用している。
前述の2個のカム部18b,18bには軸受プレート19が固定されており、この軸受プレート19が前記入力軸3の膨径軸部5を覆うとともに入力軸3を回動可能に案内して、入力軸3および出力軸4間の相対的な回動が案内されている。
前記入力軸3および出力軸4は、第1の実施形態に記載された軸継手1と同一の連結構造により連結されているので、その他の詳細な構造の説明を省略する。
上記衝撃吸収装置では、モータ63が所定回転速度で回転すると、その駆動軸63aの回転が入力軸3に伝達される。この入力軸3が回転して、その下端の膨径軸部5に保持されたカムフォロア部材6が回転すると、その先端のローラ7がカム部材18のカム部18bに付与する制動力により出力軸4および丸鋸歯64が一体に回転することができる。
この状態で、図22に示すようにモータ63の回転を受けて回転する丸鋸歯64を相手材65上の切断位置に位置させて、丸鋸歯64を加圧すると、相手材65が切断される。この間に、丸鋸歯64に急激に過負荷が加わることがあると、丸鋸歯64を一端に持つ出力軸4の回転速度が急激に減速される。この時、モータ63の回転速度が大きいほどモータ63に制動を加える方向の大きな衝撃トルクが発生する。この衝撃トルクによる回転力がカム部材18のカム部18bとカムフォロア部材6のローラ7との間の制動力より大きくなると、出力軸4が入力軸3に対して、すなわちカム部18bがローラ7に対してモータ63に制動を加える方向に相対的に回動する(図12参照)。そのため、ローラ7はカム部18bのカム面18dを倣いながら回動し、当該回動の中心線、すなわち入力軸3の軸線と交差する方向に後退する。このローラ7の後退により、シリンダ部8はダンパ機能を果たしながらその押圧力を一旦増大させる。このシリンダ部8の押圧力の増大にともなって、ローラ7からカム部18bに付与される制動力が増大し、この増大した制動力によりカム部18bの回動が制動されるので、出力軸4からカム部材18のカム部18bに加わった衝撃トルクは低減されて、入力軸3に伝達される。そのため、モータ63の駆動軸63aには制動を加える方向の大きな衝撃トルクが加わらず、モータ63への衝撃を低減することができる。
なお、図示はしないが、前述した衝撃吸収装置61のモータ63の駆動軸63aに出力軸4が、丸鋸歯64に入力軸3が取付けられても、同様の効果が得られる。
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態に係る部品締結機を図面に基づき説明する。この部品締結機71は、図23に示すように回転駆動源の回転を受けて回転する部材の一例の連結軸75と締付工具の一例のドライバビット76とを第1の実施形態に係る軸継手1により連結してなるものである。この部品締結機71では、軸継手1の詳細な説明を省略し、連結軸75および軸継手1の入力軸3間、軸継手1の出力軸4およびドライバビット76間の連結構造を中心に説明する(なお、説明中、第1の実施形態に係る軸継手1の部品と同一の部品については、同一番号を使用する)。前記部品締結機71は、機台(図示せず)に昇降自在に保持されたドライバ台72を有し、このドライバ台72にはドライバ取付具73を介して回転駆動源のモータ74が固定されている。前記モータ74の駆動軸(図示せず)は減速歯車機構(図示せず)を介して連結軸75に連結されており、この連結軸75の先端は四角柱形状をなし、後記係合穴3aに嵌合している。また、前記ドライバ取付具73は、その内部に軸継手1を回転自在に案内しており、この軸継手1の入力軸3は前記連結軸75の先端が嵌合する係合穴3aを有している(図4参照)。前記入力軸3の一端には膨径軸部5が連結されており、この膨径軸部5には2個のカムフォロア部材6,6が入力軸3の軸線と交差する方向に後退可能に付勢されて点対称の位置に配置されている。このカムフォロア部材6,6の配置により、入力軸3の回転バランスが保たれている。
前記カムフォロア部材6は、ローラ7と、これを回転自在に保持するローラ取付部9aが設けられたシリンダ部8のシリンダ本体9とを備えている。このシリンダ部8は、ローラ7を後記カム部18bのカム面18dに当接するように押圧する弾力付勢手段をなしながらダンパ機能を果たすダンパ部をなしている(図6参照)。また、このシリンダ部8の押圧力により、ローラ7にはカム部18bに対する制動力が付与され、この制動力によりローラ7とカム部18b、すなわち入力軸3と出力軸4とが一体に回転するように構成されている。
前記軸継手1の出力軸4の上端には、前記カムフォロア部材6,6のローラ7,7それぞれに当接するカム部18b,18bを備えたカム部材18が設けられている。このカム部材18のカム部18b,18bは、それぞれ前記ローラ7が当接する位置に出力軸4の軸線を挟んで点対称の円弧でなるカム面18dを有している。この円弧は、図6中に示す正転方向、すなわち締付方向に向かって出力軸4の軸線に徐々に接近する形状をなしており、この円弧により前記カム面18dはローラ7を当該回動の中心線、すなわち入力軸3の軸線と交差する方向に後退させるように作用する(図6参照)。また、前記カム面18dはローラ7を後退させるように作用することから、シリンダ部8の押圧力を増大させて、ローラ7に加わる制動力を増大させることにより前記カム部18bの相対的な回動を制動できるように作用している。
前述の2個のカム部18b、18bには、軸受プレート19が固定されており、この軸受プレート19により入力軸3が回動可能に保持され、入力軸3および出力軸4間の相対的な回動が案内されている(図4参照)。また、前記軸受プレート19の内側にはばね係止ブロック20が取付けられており、このばね係止ブロック20には一端が連結用つば部3bに係止されたコイルばね5fの他端が係止されている(図10参照)。このコイルばね5fは、出力軸4に加わる衝撃トルクが解消、また小さくなると、軸受プレ−ト19および膨径軸部5間の相対的な回動を復帰させる方向に作用するので、入力軸3と出力軸4との間で相対的な回動が生じて両軸間に位相差が生じても、両軸の位相差が迅速に解消できる構成となっている。これにより、軸受プレート19と一体のカム部材18およびローラ7間の相対的な回動が復帰するので、締付完了時にドライバ台の上昇復帰にともなって、後記ドライバビット76が上昇しても、後記ねじ77ごと被締結部材78を持ち上げることがない構成が得られている。
前記軸継手1の出力軸4は、ドライバ取付具73に回転自在に保持されており、ドライバ取付台73の内部での軸継手1の回転が確保されている。また、この出力軸4はドライバ台72の空隙72aを通ってその下方に突き出ており、その下端にはドライバビット76が連結されている。このドライバビット76は、ドライバ台72とともに下降し、一対のチャック爪(図示せず)により保持された締結具の一例のねじ77をチャック爪から押し出して、その先端を相手部材79のねじ穴79aに位置させるように構成されている。なお。前記モータ74の回転を受けて回転する連結軸75とドライバビット76との間に連結される軸継手1は、その入力軸34および出力軸を逆にして連結されてもよい。
上記部品締結機では、モータ74が所定回転速度で回転すると、その駆動軸の回転が連結軸75を介して軸継手1の入力軸3に伝達される。この入力軸3が回転して、その下端の膨径軸部5に保持されたカムフォロア部材6が回転すると、その先端のローラ7がカム部材18のカム部18bに付与する制動力によりカム部材18および出力軸4が一体に回転する。この間、図24に示すようにドライバ台72が下降し、これと一体にドライバビット76が下降する。これにともなって、ドライバビット76は一対のチャック爪に保持されたねじ77の駆動穴77aに係合し、ねじ77を回転させる。この状態で、ドライバビット76はさらに下降して、ねじ77をチャック爪から押し出す。これと同時に、ねじ77の先端が被締結部材78の下穴78aを通り、相手部材79のねじ穴79aに位置するので、ねじ77は相手部材79に締付けられる。
前記ねじ77が相手部材79に締付けられて、図25に示すようにその頭部が被締結部材78に着座すると、ドライバビット76の回転速度が急減速され、ドライバビット76に連結された軸継手1の出力軸4も急減速される。この時、モータ74の回転速度が大きいほどモータ74に制動を加える方向、すなわち締付方向と逆方向の大きな衝撃トルクが発生する。この衝撃トルクによる回転力がカム部材18のカム部18bとカムフォロア部材6のローラ7との間の制動力より大きくなると、出力軸4が入力軸3に対して、すなわちカム部18bがローラ7に対して締付方向と逆方向に相対的に回動する(図12参照)。そのため、ローラ7はカム部18bのカム面18dを倣いながら相対的に回動し、当該回動の中心線、すなわち入力軸3の軸線と交差する方向に後退する。このローラ7の後退により、シリンダ部8はダンパ機能を果たしながらその押圧力を一旦増大させる。このシリンダ部8の押圧力の増大にともなって、ローラ7に加わる制動力が増大し、この増大した制動力によりカム部18bの回動が制動される。このカム部18bの制動により、出力軸4からカム部材18のカム部18bに加わった衝撃トルクは低減されて、入力軸3に伝達されるので、モータ74には制動を加える方向に大きな衝撃トルクが加わらない。これにより、前記モータ74に加わる負荷電流を検出して締付けトルクを制御する際に、モータ74の回転速度を大きくしても、モータ74の負荷電流は衝撃トルクの影響を受けることがなく、締付けトルク制御に適したモータ7の負荷電流を得ることができる。また、ねじ77の頭部が被締結部材78に着座する際に大きな衝撃トルク(図27に示す従来の部品締結機の場合の衝撃トルクT1参照)が発生しても、この衝撃トルクT1がトルク値Trまで低減されてモータ74側に伝達されるので(図26参照)、締付けトルク制御ができなかった衝撃トルクT1以下のトルク値T2をも締付けトルク制御することができ、高速でかつ幅広い設定範囲を持った締付けトルク制御を行うことができる。
なお、本発明の第1の実施形態ないし第5の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。