JP2016112743A - 積層フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】 無機層及び有機層を備え、かつ高湿度下においても酸素ガスバリアおよび水蒸気バリア性に優れた積層フィルムの提供を課題として掲げた。【解決手段】 プラスチックフィルムの少なくとも一方の表面に、無機層及び有機層が積層されている積層フィルムであって、各層がプラスチックフィルム、無機層、有機層の順に設けられたものであり、有機層がメレムを50%以上含有する蒸着材料を気化することによって形成されたことを特徴とする積層フィルム。【選択図】 なし

Description

本発明は、無機層及び有機層を備え、かつガスバリア性に優れた積層フィルムであって、食品、医薬品、工業製品等の包装用途のみならず、太陽電池、電子ペーパー、有機EL素子、半導体素子等の工業用途にも広く用いることができる積層フィルムに関する。
従来、食品包装用途等に用いられるガスバリア性を有する積層フィルムとして、酸化ケイ素や酸化アルミニウム等の無機酸化物の薄膜(以下、無機層という)や、プラスチックフィルムの表面に、アルミニウム等の金属薄膜を積層させたフィルムが知られていた。しかし、太陽電池、電子ペーパー、有機EL素子、半導体素子等の工業用途では、上記の積層フィルムではガスバリア性が不十分であり、さらにガスバリア性を向上させる必要がある。
ガスバリア性を向上させる手段の一つとして、無機層と、有機物を含有する薄膜(以下、有機層という)とをプラスチックフィルムに積層する方法が考えられる。
有機層は、通常のコーティング法により形成する方法もあるが、蒸着法を採用することもできる。蒸着法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法と、PECVD(プラズマCVD)等の化学蒸着法とに大別されるが、通常、物理蒸着法が用いられている。
物理蒸着法を用いると、ある程度のガスバリア性を発現させることができ、さらに広い面積に物質を蒸着させた場合でも膜厚を均一にすることができる。加えて、物理蒸着法を用いると、有機物と無機物とを連続的に真空製膜することで、コスト削減及び製膜時間の短縮といった作製効率の向上を図ることができる。
無機層と有機層とを備えた積層フィルムとしては、無機層とメラミンを含む有機層とを積層した積層フィルムが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。ここでは、プラスチックフィルムの上に無機層を積層し、無機層の上に真空蒸着法によって有機層を蒸着する方法が提案されている。有機層には、トリアジン誘導体(例えば、メラミン、メレム、メラム、アンメリン、アンメリド、シアヌル酸、2−ウレイドメラミンや、シアヌル酸メラミンなどのメラミン塩や、アクリレート、エポキシ、ビニルエーテルなどの重合性基で官能化させたメラミンなど)または上記トリアジン誘導体の混合物が含まれている。
ところで、積層フィルムを包装用途で用いる場合には、酸素ガスバリア性が優れているのみならず、水蒸気ガスバリア性も優れている必要がある。しかし、特許文献1及び2に記載の方法で作製された積層フィルムは、酸素ガスバリア性は有するものの、水蒸気バリア性が悪いことが問題があった。
一方、特許文献3には、メラムを蒸着する際にメラミンが生成し、メラムの性質を著しく損なわせるとしている(段落0027)。これはメラミンがメレムの結晶構造を乱すためであり、メレムも同様であることが示唆されている(段落0015)
特表2007−503529号公報 特表2007−508161号公報 特表2011−527248号公報
本発明は、無機層及び有機層を備え、かつ高湿度下においても酸素ガスバリアおよび水蒸気バリア性に優れた積層フィルムの提供を課題として掲げた。
本発明者等は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
本発明は、プラスチックフィルム、無機層、有機層の順に積層された積層構造を有する積層フィルムの製造方法であって、有機層がメレムを50%以上含有する蒸着材料を加熱して気化させることにより形成されることを特徴とする積層フィルムの製造方法である。
この場合において、前記無機層及び前記有機層が真空加熱蒸着法によって蒸着されていることが好適である。
また、この場合において、前記の製造方法で得られた積層フィルムが好適である。
さらにまた、この場合において、前記積層フィルムの酸素透過率が5ml/mdMPa以下、水蒸気透過率が2g/md以下である。
本発明に係る積層フィルムは、高湿度下においても、酸素ガスバリア性と水蒸気ガスバリア性とを共に発現させることができるものである。
それ故、本発明に係る積層フィルムは、食品、医薬品、工業製品等の包装用途のみならず、太陽電池、電子ペーパー、有機EL素子、半導体素子等の工業用途にも広く用いることができる。
本発明に係る積層フィルムを作製するための蒸着装置の概略図である。
本発明の積層フィルムは、プラスチックフィルム、無機層、有機層が順に積層されている。以下、本発明に係る積層フィルムの物性や製造方法について説明する。
[プラスチックフィルム]
本発明におけるプラスチックフィルムとは、有機高分子樹脂からなり、溶融押出し後、長手方向および/または幅方向に延伸され、さらに熱固定、冷却を施されたフィルムであり、有機高分子樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどのポリエステル;ナイロン6、ナイロン4、ナイロン66、ナイロン12、全芳香族ポリアミドなどのポリアミド類;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキサイドなどが挙げられる。これらの有機高分子樹脂は、他の有機単量体を少量共重合したり、他の有機重合体をブレンドしたりしてもよい。
好ましいポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどが挙げられるが、これらを主成分とする共重合体であってもよい。
ポリエステル共重合体を用いる場合、そのジカルボン酸成分の主成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸が好ましく、他のカルボン酸成分としては、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多官能カルボン酸;アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸などが用いられる。また、グリコール成分の主成分としては、エチレングリコールまたは1,4−ブタンジオールが好ましく、他のグリコール成分としては、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコール;p−キシリレングリコールなどの芳香族グリコール;1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール;重量平均分子量が150〜20000のポリエチレングリコールなどが用いられる。
ポリエステル共重合体中の共重合成分の好ましい比率は20質量%以下である。共重合成分が20質量%を超えるときは、フィルム強度、透明性、耐熱性などが劣る場合がある。これらのポリエステル共重合体には、他の有機単量体を少量共重合したり、他の有機重合体をブレンドしたりしてもよい。
また、好ましいポリアミドとしては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリ−ε−アミノへプタン酸(ナイロン7)、ポリ−ε−アミノノナン酸(ナイロン9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウリンラクタム(ナイロン12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン2・6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン4・6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン6・6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン6・10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン6・12)、ポリオクタメチレンドデカミド(ナイロン8・12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン8・6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン10・6)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン10・10)、ポリドデカメチレンドデカミド(ナイロン12・12)、メタキシリレンジアミン−6ナイロン(MXD6)などが挙げられ、これらを主成分とする共重合体であってもよい。
ポリアミド共重合体としては、カプロラクタム/ラウリンラクタム共重合体、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体、ラウリンラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体、ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体、エチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体などが挙げられる。
これらのポリアミドには、フィルムの柔軟性改質成分として、芳香族スルホンアミド類、p−ヒドロキシ安息香酸、エステル類などの可塑剤や低弾性率のエラストマー成分やラクタム類を配合することも有効である。
さらに、上記有機高分子樹脂には、公知の添加物、例えば、紫外線吸収剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤などが添加されてもよく、フィルムとしての透明度は特に限定するものではないが、透明性を要求される場合には、50%以上の光線透過率をもつものが好ましい。
本発明では、本発明の目的を損なわないかぎりにおいて、有機層や無機層を積層する前のプラスチックフィルムに、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、火炎処理、表面粗面化処理などの表面処理、公知のアンカーコート処理、印刷、装飾などを施してもよい。
本発明におけるプラスチックフィルムの厚みは、3〜500μmの範囲が好ましく、6〜300μmの範囲がより好ましい。
[無機層]
本発明でいう無機層は、特に制限はなく、物質としては、Al、Si、Ti、Zn、Zr、Mg、Sn、Cu、Fe等の金属や、これら金属の酸化物、窒化物、フッ素物、硫化物等が挙げられ、具体的には、SiO(x=1.0〜2.0)、アルミナ、マグネシア、硫化亜鉛、チタニア、ジルコニア、酸化セリウム、あるいはこれらの混合物が例示される。
無機層は1層でも2層以上の積層体でもよい。無機層はプラスチックフィルムの片面のみに積層されていても、両面に積層されていてもよい。
また、蒸着されたナイロンフィルムを用いることもできる。
本発明における無機層は、ガスバリア性に優れる点から、少なくとも酸化ケイ素と酸化アルミニウムとを含む多元系無機層が好ましく、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとからなるものか、酸化マグネシウムと酸化アルミニウムからなる二元系無機層がより好ましい。
上記酸化ケイ素とは、Si、SiOやSiOなどの各種ケイ素酸化物の混合物からなり、上記酸化アルミニウムとは、Al、AlOや、Alなどの各種アルミニウム酸化物の混合物からなり、上記酸化マグネシウムとは、MgやMgOなど各酸化物内における酸素の結合量はそれぞれの製造条件によって異なってくる。
酸化ケイ素と酸化アルミニウムとを併用する場合、無機層中の酸化アルミニウムの含有率は、20〜99質量%であることが好ましく、20〜75質量%であることがより好ましい。
酸化マグネシウムと酸化アルミニウムとを併用する場合、無機層中の酸化アルミニウムの含有率は、20〜99質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがより好ましい。
酸化アルミニウムの含有量が20質量%未満になると、ガスバリア性が必ずしも十分でない場合がある。一方、酸化アルミニウムの含有量が99質量%を超えると、蒸着膜の柔軟性が低下し、積層フィルムが曲げや寸法変化に比較的弱くなり、二者併用の効果が低下する場合がある。
プラスチックフィルムに酸化ケイ素および酸化アルミニウムを含む無機層の蒸着が施された東洋紡社製「エコシアール(登録商標)VE100」といった市販の蒸着ポリエステルフィルムも使用できる。なお、酸化ケイ素および酸化アルミニウムを含む無機層の蒸着が施されたポリエステルフィルムは、例えば特開2013−014126号公報に記載の方法により製造できる。
無機層の厚みは、通常1〜800nmが好ましく、5〜500nmがより好ましい。厚みが1nm未満になると、満足のいくガスバリア性が得られ難くなるおそれがある。一方、800nmを超えて過度に厚くしても、それに相当するガスバリア性の向上効果は得られず、耐屈曲性や製造コストの点でかえって不利となる。
無機層を形成する典型的な製法としては、公知の方法、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法や、PECVD(プラズマCVD)等の化学蒸着法等が採用される。無機層は、真空蒸着法によって形成されているのが好ましい。
例えば、真空蒸着法を採用する場合、蒸着原料としては、アルミニウム、珪素、チタン、マグネシウム、ジルコニウム、セリウム、亜鉛等の金属、また、SiO(x=1.0
〜2.0)、アルミナ、マグネシア、硫化亜鉛、チタニア、ジルコニア等の化合物およびそれらの混合物が用いられる。真空蒸着法は、真空中で無機物を加熱し、るつぼに入った材料を加熱、蒸発させてプラスチックフィルム又は有機層の上に付着させる方法である。真空にするためには、蒸着装置の内部を真空引きし、3.0×10−2Paまで低下させるのが好ましく、1.0×10−2Paまで低下させるのがより好ましい。
無機物の加熱には、抵抗加熱、高周波誘導加熱、電子ビーム加熱などを採用することができる。反応ガスとして、酸素、窒素、水素、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気などを導入したり、オゾン添加、イオンアシストなどの手段を用いた反応性蒸着を採用したりすることも可能である。
さらに、プラスチックフィルムにバイアスを印加したり、プラスチックフィルムをロールで加熱したり冷却するなど変更することができ、ロール温度は、−20〜40℃で行うのが好ましい。
本発明における無機層が、少なくとも酸化ケイ素と酸化アルミニウムとを含む多元系無機層である場合、この多元系無機層を40〜60℃の温度、かつ1〜3kPaの水蒸気ガス中で50時間以上処理することが好ましい。
蒸着材料、反応ガス、基板バイアス、加熱・冷却などの薄膜形成条件は、スパッタリング法やイオンプレーティング法やCVD法を採用する場合にも同様に変更可能である。
[有機層]
有機層はメレムを50%以上含有する蒸着材料を気化することによって形成されることが重要である。
化合物メレムの正式名称は、1,3,4,6,7,9,9b−heptaazaphenalene−2,5,8−triamineである。
有機層の元となる蒸着材料におけるメレムの含有量純度測定にはTGAが用いられる。不純物として含有することが想定されるメラミンの昇華温度が250〜300℃である。また不純物として含有することが想定されるメラムの昇華温度が300〜400℃である。今回主成分として使用するメレムの昇華温度が450〜500℃付近であるので、蒸着材料の加熱昇温の過程での蒸着材料の重量原料の減少量によってメレムの含有量を測定する。
蒸着材料中のメレムの含有量の具体的な測定方法は以下のとおりである。
有機膜の形成に使用される蒸着材料を熱重量分析機器(TGA測定TAinstruments社製TGA−Q50)を用いて、窒素雰囲気下で、昇温速度20℃/minで、室温から550℃に昇温させながら重量測定を行なった。尚、使用パンはアルミニウムパンを用いた。
有機層を形成する材料として、メレムを含有する蒸着材料使用すると高湿度下でのガスバリア性が向上する。そのメカニズムとして、メレムは有機層中ではメレムはメラミンに比べて相対的に水素結合の量が減少し、実結合が増加しているため、水分の影響を受けにくく、水蒸気バリア性が良好であるものと考えている。
また、有機層中では結晶化された部分だけではなく、非晶性の部分も多く存在するため、屈曲性などが良好である。
蒸着材料に含まれるメレムは蒸着材料全体に対して60%質量以上含まれることが好ましく、70%質量以上含まれることがより好ましく、80%以上含まれることが特に好ましい。
蒸着材料に含まれる不純物はメラミンやメラム、メロンが考えられる。蒸着形成後の薄膜内には不純物がより低い少ない方が好ましい。
本蒸着では蒸着材料を300℃〜700℃の範囲で加熱して行うことが好ましい。300℃未満であれば、蒸着速度が小さく製造にコストが増大する。一方、蒸着時の加熱温度が700℃を超えるとメラミンやメラムなどの分解物や、重合体であるメロンが生成しやすくなる。温度管理は十分に気をつけて行う必要がある。350〜500℃で行うのがより好ましい。
上記の条件で有機層を形成することで、無機蒸着フィルムのガスバリア性を著しく向上させることができる。例えば酸素透過率においては、無機蒸着フィルムの場合に対してその1/7程度までに低下する。水蒸気透過度においては、無機蒸着フィルムの場合に対してその2/3程度までに低下する。
積層フィルムとして、酸素透過率は5ml/mdMPa以下、水蒸気透過率が2g/md以下とすることができる。
有機層全体の膜厚は1nm以上であるのが好ましい。有機層の膜厚の上限は500nmであるのが好ましく、より好ましくは400nmである。
有機層の無機層の上への積層方法としては、有機高分子樹脂をバインダー樹脂とするのではなく、蒸着方法を用いることが好ましい。蒸着方法を用いると、有機層において、ガスバリア性を阻害するおそれのある有機高分子化合物を低減できるため、本有機層の優れたガスバリア性を十分に発現させることができる。
蒸着方法としては、公知の方法、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法や、PECVD(プラズマCVD)等の化学蒸着法等が採用される。有機層は、真空蒸着法によって形成されているのが好ましい。
真空蒸着法は、真空中で有機物を加熱し、るつぼに入った材料を加熱、蒸発させてプラスチックフィルム又は無機層の上に付着させる方法である。真空にするためには、蒸着装置の内部を真空引きし、3.0×10−2Paまで低下させるのが好ましく、1.0×10−2Paまで低下させるのがより好ましく、1.0×10−4Pa以下の高真空で行うのが最も好ましい。
有機物の加熱には、抵抗加熱、高周波誘導加熱、電子ビーム加熱などを採用することができる。メレムを蒸着する際には、300〜700℃で行うのが好ましく、350〜500℃で行うのがより好ましい。
また、反応ガスとして、酸素、窒素、水素、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気などを導入したり、オゾン添加、イオンアシストなどの段を用いた反応性蒸着を採用したりすることも可能である。さらに、プラスチックフィルムにバイアスを印加したり、プラスチックフィルムを加熱したり冷却するなど、薄膜形成条件も任意に変更することができる。
基板温度は好ましくは0〜80℃、より好ましくは20〜70℃であり、中空ドラムの中を熱媒循環することによって温度制御している。
〔積層フィルムの物性〕
酸素透過度は、25ml/mdMPa以下であることが好ましく、より好ましくは17ml/mdMPa以下であり、さらに好ましくは15ml/mdMPa以下であり、さらに一層好ましくは10ml/mdMPa以下である。
水蒸気透過度は、1g/md以下であることが好ましく、より好ましくは0.7g/md以下であり、さらに好ましくは0.6g/md以下であり、さらに一層好ましくは0.5g/md以下である。
酸素透過度、水蒸気透過度の測定方法については以下のとおりである。
(1)酸素透過度の評価方法
供試材について、JIS−K7126−2の電解センサー法(B法:等圧法)に準じて、酸素透過度測定装置(MOCON社製「OX−TRAN 2/21」)を用い、温度23℃、湿度65%RHの雰囲気下で、常態での酸素透過度を測定した。なお、酸素透過度の測定は、有機層側からプラスチックフィルム側に酸素が透過する方向で行った。
(2)水蒸気透過度の評価方法
供試材について、JIS−K7129−2008(要確認)の赤外センサー法に準じて、水蒸気透過度測定装置(MOCON社製「PERMA−TRAN 2/21」)を用い、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気下で、常態での水蒸気透過度を測定した。なお、水蒸気透過度の測定は、有機層側からプラスチックフィルム側に水蒸気が透過する方向で行った。
〔その他の層〕
本発明の積層フィルムには、プラスチックフィルム、無機層、及び有機層のほかに、必要に応じて、公知の積層フィルムが備えている種々の層を設けることができる。
例えば、無機層及び有機層を備えた積層フィルムを包装材料として用いる場合には、シーラントと呼ばれるヒートシール性樹脂層を形成することが好ましい。ヒートシール性樹脂層の形成は、通常押出しラミネート法あるいはドライラミネート法によりなされる。ヒートシール性樹脂層を形成する熱可塑性重合体としては、シーラント接着性が十分に発現できるものであればよく、HDPE、LDPE、LLDPEなどのポリエチレン樹脂類、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、アイオノマー樹脂等を使用できる。
さらに、本発明の積層フィルムには、プラスチックフィルム、有機層、無機層の隣接するいずれか2つの層の間または最外層のさらに外側に、印刷層や他のプラスチック基材および/または紙基材を少なくとも1層以上積層していてもよい。
印刷層を形成する印刷インキとしては、水性の樹脂含有印刷インキであっても溶剤系の樹脂含有印刷インキであってもよい。ここで印刷インキに使用される樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル共重合樹脂およびこれらの混合物が例示される。印刷インキには、帯電防止剤、光線遮断剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、フィラー、着色剤、安定剤、潤滑剤、消泡剤、架橋剤、耐ブロッキング剤、酸化防止剤などの公知の添加剤を含有させてもよい。印刷層を設けるための印刷方法としては、特に限定されず、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの公知の印刷方法が使用できる。印刷後の溶媒の乾燥には、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線乾燥など公知の乾燥方法が使用できる。
他方、他のプラスチック基材や紙基材としては、充分な積層体の剛性および強度を得る観点から、紙、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂および生分解性樹脂等が好ましく用いられる。また、機械的強度の優れたフィルムとする上では、二軸延伸ポリエステルフィルム、二軸延伸ナイロンフィルムなどの延伸フィルムが好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
各実施例、比較例で得られた供試材についての評価方法および物性測定方法は以下の通りである。
(1)酸素透過度の評価方法
供試材について、JIS−K7126−2の電解センサー法(B法:等圧法)に準じて、酸素透過度測定装置(MOCON社製「OX−TRAN 2/21」)を用い、温度23℃、湿度65%RHの雰囲気下で、常態での酸素透過度を測定した。なお、酸素透過度の測定は、有機層側からプラスチックフィルム側に酸素が透過する方向で行った。
(2)水蒸気透過度の評価方法
供試材について、JIS−K7129−2008(要確認)の赤外センサー法に準じて、水蒸気透過度測定装置(MOCON社製「PERMA−TRAN 2/21」)を用い、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気下で、常態での水蒸気透過度を測定した。なお、水蒸気透過度の測定は、有機層側からプラスチックフィルム側に水蒸気が透過する方向で行った。
(3)原材料の中のメレムの含有量測定方法
有機薄膜形成物として使用される原材料のメレムの含有量は、熱重量分析(TGA測定
TAinstruments社製TGA−Q50)を用いて、窒素雰囲気下で、昇温速度20℃/min、測定温度は室温から550℃で測定を行うことによって測定した。尚、使用パンはアルミニウムパンを用いた。
図1は本発明の積層フィルムを作製するための蒸着装置の概略図であるが、この装置に限定されるものではない。
図1において、1は基板(フィルム)、具体的には巻き取りロールから繰り出される無機層を有するフィルムである。2はフィルム1を支持するロールであり、フィルム1はロール3および3’に沿って走行する。あるいは、特定の大きさのシートフィルムを金具に固定してもよい。るつぼ4は、トリアジン誘導体5を保持するためのもので、加熱することにより気化されたトリアジン誘導体はフィルムに備えられている無機層の上に蒸着される。
図1の装置は、1.0×10−5Paの真空にまですることのできる真空チャンバ(図示せず)の中に収納した。このとき、フィルムに無機層を蒸着する設備を備え、無機層を有しないフィルムを用いて本発明に係る積層フィルムを作製することも可能であり、そうすることで1つの真空装置内で連続的に作製できる。
(実施例1)
最初に、セラミック(シリカ/アルミナ)の蒸着を施したポリエステルフィルム(東洋紡社製「エコシアール(登録商標)VE100」、膜厚12μm)を蒸着装置内のるつぼ4と対向する位置に設け、るつぼ4の内部にメレム(Delamine社製)を15g充填した。
次に、蒸着装置の内部を真空引きし、5.0×10−5Paまで低下させた後、180℃で60分間加熱し、水分や不純物などを取り除く処理を行った。この時、基板温度は20℃とした。その後、メレムのるつぼを450℃まで加熱し、セラミックが蒸着されている面の上に膜厚60nmの有機層を備えた積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの物性、評価結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1において、メレムの膜厚を300nmと変更した以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの物性、評価結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1において、蒸着原料をメラミン(和光純薬社製)と変更し、250℃まで加熱し、メラミンをポリエステルフィルムのセラミックが蒸着されている面の上に蒸着し、有機層の膜厚を118nmと変更した以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの物性、評価結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例1において、蒸着原料をメラミン(和光純薬社製)とし、250℃まで加熱し、メラミンをポリエステルフィルムのセラミックが蒸着されている面の上に蒸着し、有機層の膜厚を59nmと変更した以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの物性、評価結果を表1に示す。
(比較例3)
実施例1において、無機層を備えていないポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製「E5100」、膜厚12μm)を用い、メレムの量を調整し、有機層の膜厚を100nmと変更してポリエチレンテレフタレートフィルムの上に積層した以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの物性、評価結果を表1に示す。
(比較例4)
実施例1で用いたポリエステルフィルムに有機層を設けない状態で評価を行った。物性、評価結果を表1に示す。
(比較例5)
無機層を備えていないポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製「コスモシャイン(登録商標)A4100」、膜厚50μm)の評価を行った評価結果を表1に示す。
(比較例6)
無機層を備えていないポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製「E5100」、膜厚12μm)の評価を行った。評価結果を表1に示す。
本発明に係る積層フィルムは、プラスチックフィルムの上に無機層及び有機層を積層して、酸素ガスバリア性と水蒸気バリア性を共に発現させることができた。よって、本発明に係る積層フィルムは、食品、医薬品、工業製品等の包装用途のみならず、太陽電池、電子ペーパー、有機EL素子、半導体素子等の工業用途にも広く用いることができる。
1 フィルム
2 ロール
3、3’ ロール
4 るつぼ
5 蒸着材料

Claims (4)

  1. プラスチックフィルム、無機層、有機層の順に積層された積層構造を有する積層フィルムの製造方法であって、有機層がメレムを50%以上含有する蒸着材料を300℃以上、700℃以下に加熱して気化させることにより形成されることを特徴とする積層フィルムの製造方法。
  2. 無機層及び有機層が真空加熱蒸着法によって蒸着されている請求項1に記載の積層フィルムの製造方法。
  3. 請求項1あるいは2に記載の方法で得られた積層フィルム。
  4. 酸素透過率が5ml/mdMPa以下、水蒸気透過率が2g/md以下である請求項3に記載の積層フィルム。
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