JP2016111317A - 光電変換素子及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡便かつ効果的に接合リーク電流を減少させることのできる光電変換素子及びその製造方法を提供する。【解決手段】本発明の一観点に係る光電変換素子は、第1伝導型からなる第1半導体層と、第1半導体層上に形成される活性層と、活性層上に形成され、第2伝導型からなる第2半導体層と、を備える光電変換素子であって、第1半導体層および活性層および第2半導体層の少なくともいずれかが、転位不活性部を有する。また他の一観点に係る光電変換素子の製造方法は、上記第1半導体層を形成する第1工程と、上記第2半導体層を形成する第2工程と、上記活性層を形成する第3工程と、上記転位不活性部を形成する第4工程と、を有する。【選択図】図9

Description

本発明は、紫外線から赤外線までの広い波長領域をカバーする光電変換装置およびその製造方法に関するものであり、特に、結晶欠陥による特性劣化を抑制する光電変換装置およびその製造方法に関する。
本願は、2014年12月1日に出願された特願2014-242709号に対して優先権を主張し、その内容をここに援用する。
近年、温室ガスによる地球温暖化に対する懸念から、エネルギー問題への取り組みの重要性は高まっている。特に、化石燃料への依存体質からの脱却は急務である。このような状況下において、太陽光エネルギーの光電変換により発電する光電変換素子、いわゆる太陽電池は、上記問題解決を解決する重要な一技術である。
現在、ほとんどの太陽電池はシリコン(Si)を原料としている。一方で、人工衛星搭載などの高い光電変換効率が要求される用途では、太陽光スペクトルとの整合性から化合物半導体である砒化ガリウム(GaAs)を用いた太陽電池が実用化されている。
太陽電池の公知の技術として、量子構造によって構成される太陽電池が提案されている。例えば、特許文献1に記載の太陽電池は、量子井戸もしくは量子ドット構造を有する太陽電池であり、その構成について図18を参照して説明する。図18は一例として、太陽電池500の構成を示すブロック図であり、基板501と、前記基板501上に形成されるn型半導体層502と、前記n型半導体層502上に形成される量子構造層503と、前記量子構造層503上に形成されるp型半導体層504と、の周知の構成からなり、これらが周知の半導体製造技術などによって単一セルとして形成されている。
特開2002−141531号公報
上記特許文献1等に記載される太陽電池の構成では、変換効率の向上のために太陽光スペクトルの利用波長域を広げることが望まれることから、量子構造層の混晶組成、および量子井戸層厚や量子ドットサイズの適切な制御が必要となる。
ところが、上記特許文献1に明確に記載されているように、太陽光スペクトルの適合波長域を広げようとすると、量子構造層の混晶組成変化、さらにヘテロ構造の導入などによって実際には格子欠陥、結晶欠陥、もしくは転位が多数導入されることになり、かえって太陽電池特性が劣化することが知られている。すなわち、これらの不活性化または終端化(パッシベーション)技術の開拓こそが、高効率太陽電池を実現するための必須条件である。
ところで、広い太陽光スペクトルのほぼ全域を唯一カバーできることから、窒化物半導体を高効率太陽電池に応用することが期待されている。しかし、適当な商用基板が入手困難であることに加えて、窒化物半導体は格子不整合系であるために、現時点での最高水準の技術を持ってしても10cm−2以上の高密度な貫通転位が存在することになる。
さらに、格子欠陥、結晶欠陥、および転位の問題は窒化インジウムガリウム(InGaN)ではより深刻となり、In組成を増大させることに伴い、混晶の非混和性などによって更に欠陥・転位密度が大幅に増大される。この欠陥・転位は、太陽電池の接合漏れ電流(リーク電流)を劇的に増大させるために、これらの不活性化または終端化(パッシベーション)技術が真に求められている。
そこで本発明は、上記課題を考慮し、簡便かつ効果的に、接合リーク電流を減少させることのできる光電変換素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の第1態様である光電変換素子は、第一の伝導層と、光吸収層と、第二の伝導層と、を順次積層した光電変換素子であって、前記光吸収層は、窒化インジウム層が複数積層された構造を備え、前記窒化インジウム層上のいずれかに、転位又は欠陥を覆うパッチが形成されていることを特徴とする。
本発明の第1態様では、前記パッチは、酸化物、窒化物、及び酸窒化物の少なくともいずれかであってもよい。
本発明の第1態様では、前記パッチは、前記窒化インジウム層の転位又は粒界の周囲を選択的に覆う一方、前記窒化インジウム層の転位又は粒界のない領域を覆わないよう形成されてもよい。
本発明の第2態様である光電変換素子の製造方法では、第一の伝導層を形成する工程と、光吸収層を形成する工程と、第二の伝導層を形成する工程とを有し、前記光吸収層を形成する工程は、窒化インジウム層を形成する工程と、前記窒化インジウム層上にパッチを形成する工程とを含むことを特徴とする。
本発明の第2態様では、前記パッチを形成する工程は、窒化インジウム層上に金属膜を形成する工程と、前記金属膜を酸化又は窒化処理する工程を含んでもよい。
本発明の第2態様では、前記金属膜を酸化又は窒化処理する工程は、前記金属膜を酸化又は窒化処理することで、生成された金属酸化膜又は金属窒化膜を、前記窒化インジウム層に生じた転位又は粒界を自己組織的に覆うパッチとして形成してもよい。
本発明の第2態様では、前記パッチを形成する工程は、複数の窒化インジウム層上において行われてもよい。
本発明の第3態様である光電変換素子は、第1伝導型からなる第1半導体層と、前記第1半導体層上に形成される活性層と、前記活性層上に形成され、第2伝導型からなる第2半導体層と、を備える光電変換素子であって、前記第1半導体層および前記活性層および前記第2半導体層の少なくともいずれかが、転位不活性部を有することを特徴とする。
本発明の第3態様では、前記転位不活性部は、結晶欠陥を含むように形成されてもよい。
本発明の第3態様では、前記転位不活性部は、結晶欠陥上に形成されてもよい。
本発明の第3態様では、前記転位不活性部の膜厚は、2分子層以下であってもよい。
本発明の第3態様では、前記転位不活性部の膜厚は、1分子層以下であってもよい。
本発明の第3態様では、前記転位不活性部の表面被覆率は、1未満であってもよい。
本発明の第3態様では、前記第1半導体層は第1バンドギャップエネルギーを有し、前記第2半導体層は第2バンドギャップエネルギーを有し、前記活性層は第3バンドギャップエネルギーを有し、前記転位不活性部は第4バンドギャップエネルギーを有し、前記第4バンドギャップエネルギーは、前記第1バンドギャップエネルギーおよび前記第2バンドギャップエネルギーおよび前記第3バンドギャップエネルギーの少なくともいずれかよりも大きくてもよい。
本発明の第3態様では、前記第3バンドギャップエネルギーは、前記第1バンドギャップエネルギーおよび前記第2バンドギャップエネルギーの少なくともいずれかよりも小さくてもよい。
本発明の第3態様では、前記第1半導体層は第1抵抗率を有し、前記第2半導体層は第2抵抗率を有し、前記活性層は第3抵抗率を有し、前記転位不活性部は第4抵抗率を有し、前記第4抵抗率は、前記第1抵抗率および前記第2抵抗率および前記第3抵抗率の少なくともいずれかよりも大きくてもよい。
本発明の第3態様では、前記活性層は第3伝導型を有し、前記転位不活性部は第4伝導型を有し、前記第4伝導型は、前記第1伝導型および前記第1伝導型および前記第3伝導型の少なくともいずれかと異なってもよい。
本発明の第3態様では、前記第1半導体層および前記第2半導体層および前記活性層の少なくともいずれかは、窒化物半導体InGaAl1−x−yNであってもよく、前記xおよびyの範囲は、0≦x≦1かつ0≦y≦1かつ0≦x+y≦1である。
本発明の第3態様では、前記転位不活性部は、前記第1半導体層および前記第2半導体層および前記活性層の少なくともいずれかの構成元素と異価数元素を含んでもよい。
本発明の第3態様では、前記転位不活性部は、前記第1半導体層および前記第2半導体層および前記活性層の少なくともいずれかの構成元素よりも電気陰性度が大きい元素を含んでもよい。
本発明の第3態様では、前記転位不活性部は、酸素および窒素の少なくともいずれかを含んでもよい。
本発明の第3態様では、前記転位不活性部は、アルミニウムおよびホウ素およびシリコンおよびマグネシウムの少なくともいずれかを含んでもよい。
本発明の第3態様では、前記転位不活性部は、前記第1半導体層および前記第2半導体層および前記活性層の少なくともいずれかの結晶構造と異なる結晶構造を有してもよい。
本発明の第3態様では、前記第1半導体層および前記第2半導体層および前記活性層および前記転位不活性部の少なくともいずれかの結晶構造は、多結晶もしくはアモルファスであってもよい。
本発明の第4態様である光電変換素子の製造方法は、第1伝導型からなる第1半導体層と、前記第1半導体層上に形成される活性層と、前記活性層上に形成され、第2伝導型からなる第2半導体層と、前記第1半導体層および前記活性層および前記第2半導体層の少なくともいずれかが、転位不活性部を備える光電変換素子の製造方法であって、前記第1半導体層を形成する第1工程と、前記第2半導体層を形成する第2工程と、前記活性層を形成する第3工程と、前記転位不活性部を形成する第4工程と、を有することを特徴とする。
本発明の第4態様では、前記第4工程が、第1原料を供給する工程と、第2原料を供給する工程とを有してもよい。
本発明の第4態様では、前記第4工程が、前記第1原料を除去する工程と、前記第2原料を凝縮させる工程とを有してもよい。
本発明の第4態様では、前記第4工程が、第3原料を供給する工程を有してもよい。
本発明の第4態様では、前記第1原料と前記第2原料とが非混和系であってもよい。
本発明の第4態様では、前記第1原料を供給する前記工程で、前記第1原料の供給量が、2分子層以上となるよう制御されてもよい。
本発明の第4態様では、前記第4工程が、前記第1原料もしくは前記第2原料の少なくともいずれかの融点よりも高温で行われてもよい。
本発明の第4態様では、前記第1原料が、ガリウムもしくはインジウムの少なくともいずれかであってもよく、前記第2原料がアルミニウムであってもよい。
本発明の第4態様では、前記第3原料が、窒素もしくは酸素の少なくともいずれかであってもよい。
本発明の第4態様では、前記第3原料が、水もしくは亜酸化窒素の少なくともいずれかであってもよい。
以上、本発明によると簡便かつ効果的に、接合リーク電流を減少させることのできる光電変換素子または非発光中心の抑制された発光素子、さらにその製造方法を提供することができる。
第1実施形態に係る太陽電池の構成を示す概略図である。 第1実施形態に係る太陽電池の各セルの構成を示す概略図である。 第1実施形態に係るGaN層上にInN層を堆積した場合の、分光エリプソメトリその場観察から得られた擬誘電関数虚部の時間推移であり、横軸がプロセス経過時間であり、縦軸がGaN表面上に堆積したInN膜厚に対応する。 第1実施形態に係る太陽電池の構成を示す断面図である。 第1実施形態に係る太陽電池のエネルギーバンド図であり、素子動作電流とキャリア輸送について示している。 第1実施形態に係る太陽電池の構成を示す平面図である。 第1実施形態に係る製造一工程のイメージ図である。 第1実施形態に係る製造一工程のイメージ図である。 第2実施形態に係る太陽電池の構成を示す概略図である。 第2実施形態に係る太陽電池のエネルギーバンド図である。 第2実施形態に係る転位終端部の構成を示す概略図である。 第2実施形態に係る転位終端部の構成を示す概略図である。 第2実施形態に係る転位終端部の構成を示すエネルギーバンド図である。 第2実施形態に係る太陽電池の製造工程を示すフローチャートである。 第2実施形態に係る結晶成長様式を示すであり、分光エリプソメトリから得られた擬誘電関数虚部の時間推移と対応する表面状態を図示している。 第3実施形態に係る太陽電池の構成を示す概略図である。 第4実施形態に係る紫外発光素子の構成を示す概略図である。 従来例による太陽電池の構成を示すブロック図である。
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。但し、この実施例の記載は、本発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
[第1実施形態]
第1実施形態では、本発明の光電変換素子の一例である太陽電池について、図1〜図8を参照しながら述べる。
図1は、本実施形態に係る太陽電池1(以下「本電池」という。)の構造の概略図である。本図で示すように、太陽電池1は、複数のセル11を備えて構成されている。図2は、セル内の層構造の概略を示す図である。
本電池において複数のセル11は、それぞれが光電変換性能を有し、単独でも光電変換素子としての機能を有するものではある。具体的にセル11は、第一の伝導層111と、光吸収層112と、第二の伝導層113と、を順次積層した光電変換素子となっている。
本実施形態に係るセル(以下「本セル」という。)における第一の伝導層111、第二の伝導層113は一対で構成され、光吸収層112を挟み、光吸収層112によって励起された電子又は正孔(キャリア)を輸送するために用いられるものである。本実施形態において第一の伝導層111、第二の伝導層113それぞれは、キャリア輸送を効率よく行うためにそれぞれ好適に調整することができる。第一の伝導層111及び第二の伝導層113のそれぞれの材料は、上記の機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、n型半導体層及びp型半導体層を用いることができ、一方の伝導層がn型半導体層であれば他方の伝導層はp型半導体層である。なおn型半導体のより具体的な例としては限定されるわけではないがn型窒化ガリウム(以下「n−GaN」という。)、p型半導体としては具体的にはp型窒化ガリウム(以下「p−GaN」という。)を例示することができる。
本セルにおいて光吸収層112は、光を吸収する遷移過程による光電変換のために用いられる層である。本セルにおける光吸収層112は、超薄膜の窒化インジウム(以下「InN」)層と、超薄膜の窒化ガリウム(以下「GaN」)層が交互に積層される量子井戸構造、もしくは擬似混晶構造となっている。なおここでInN層の厚さとしては量子井戸構造を形成することが可能で、光吸収層としての機能を奏することができる限りにおいて特に限定されるわけではないが、例えば1分子層以上10分子層以下であることが好ましく、より好ましくは5分子層以下、さらに好ましくは2分子層以下であるが、上記範囲において分数分子層であってもよい。なお発明者らは、GaN層上にInN層を堆積させた場合において、分光エリプソメトリでその場観察を行ったときにおいて、図3で示すように、2分子層で飽和していることを見出しており、2分子層以下、分子分数層以下であることが好ましい。また本実施形態において、GaN層においても特に制限はなく、1分子層以上10分子層以下である。なお、InN層とGaN層は層の厚さを調整することで、ガリウムとインジウムの組成比を調整することができる。
また、本実施形態において、光吸収層112は、窒化インジウム層のいずれかに、転位又は欠陥を覆うパッチが形成されている。本セルは、InGaN三次元混晶系の太陽電池のインジウム組成について、20%程度までにとどまっている現状を打破しより高い割合のインジウム組成を達成しようとしているところ、インジウムを高い割合で含ませると上記したように格子不整合から、pn接合の空乏層の電界を打ち消すほどの大きなピエゾ電界、pn接合の特性を悪化させ太陽電池としての動作を不可能とするほどの大きな漏れ電流が発生してしまうおそれが生ずる。より具体的には、貫通転位、ナノパイプ・マイクロパイプ、空乏層内の巨大捕獲断面積を有する高密度点欠陥(群・集合・凝集体)が生じてしまう。そこで、本実施形態では、光吸収層において、この格子不整合により生ずる転位又は欠陥にパッチを形成することで上記の問題を飛躍的に改善することが可能となる。この構造イメージを図4に、図5にバンド図を、図6に、本実施形態によって設けられるパッチのイメージ(平面図)について示しておく。
本実施形態においてパッチの材料としては特に限定されるわけではないが、金属の酸化物若しくは窒化物又は酸窒化物であることが好ましい。このようにすることで漏れ電流を遮断、終端化することが可能となるといった本来の効果を発揮するともに、製造工程において、転位又は欠陥(粒界)のあるInN層上に金属膜が形成された後酸化、窒化又は酸窒素化することで転位又は欠陥のある位置に選択的にパッチを形成することができるといった製造上の効果も発揮することができる。この場合において、金属としては、上記機能を奏することができる限りにおいて限定されるわけではないが、アルミニウムを含むことが好ましく、更にガリウムを含ませることでセル中にもともと存在する材料を用いることで格子不整合を緩和させることが可能となるとともに融点を下げることが可能となり好ましい。
本実施形態においてパッチの厚さとしては、上記機能を有する限りにおいて限定されないが、例えば1分子層以上5分子層以下であることが好ましい。
ここで、本実施形態に係る太陽電池の製造方法について説明する。本実施形態に係る他いうよう電池の製造方法は、複数のセルを積層する工程を複数回行うことで構成されている。
また本実施形態において、セルの製造方法は、上記のとおり第一の伝導層を形成する工程、光吸収層を形成する工程、第二の伝導層を形成する工程を備えた光電変換素子の製造方法であって、光吸収層を形成する工程は、窒化インジウム層を形成する工程と、窒化インジウム層上にパッチを形成する工程と、を含む。
本実施形態において、第一の伝導層を形成する工程は特に限定されず公知の方法を採用することができ、MBE、MOVPE、スパッタリング法等を用いることができるがこれに限定されない。
本実施形態では、第一の伝導層を形成した後、光吸収層を形成する。光吸収層の形成は特に限定されるわけではないが、上記のとおりInN層とGaN層を交互に形成する工程を複数回繰り返すことが好ましい。このInN層とGaN層の形成についても上記のとおり、MBE、MOVPE等公知の方法を採用することができる。
ところで、InN層の形成とGaN層の形成を複数回行うと、上記で示したように格子不整合に由来する転位や欠陥が生ずることとなる。そこで、本実施形態では転位や欠陥が生じた場合、適宜、パッチを形成する工程を挟ませる。具体的には、InN層又はGaN層上に金属膜を形成する工程と、この金属膜を酸化及び窒化の少なくともいずれかを行う工程を含ませる。
金属膜を形成する工程は、上記のように公知の方法によってInN層又はGaN層上に均一に金属膜を形成する工程で十分である。この場合のイメージ図を図7に示しておく。
そして、次に、この金属膜に対し、酸素又は窒素を供給することで、金属を酸化又は窒化し、金属窒化物、金属酸化物又は金属酸窒化物からなるパッチとすることができる。本実施形態によると、金属膜を酸化又は窒化処理することで、生成された金属酸化膜又は金属窒化膜を、窒化インジウム層に生じた転位又は粒界を自己組織的に覆うパッチとして形成することができる。すなわち、転位や欠陥がない位置の金属は除去され、転位や欠陥の位置に選択的にパッチとして残る。この場合のイメージ図を図8に示しておく。これにより光電変換性能を阻害することなく、上記の問題を飛躍的に改善することが可能となる。
そして本実施形態では、上記十分に光吸収層を形成した後、上記第一の伝導層と同様に第二の伝導層を形成する。これにより、セルを構成することができ、この工程を複数繰り返すことで上記の太陽電池を形成することができる。
[第2実施形態]
第2実施形態では、光電変換素子中に含まれる格子欠陥、結晶欠陥、転位などが引き起こす漏れ(リーク)電流の問題を、これら欠陥および転位を不活性化もしくは終端化(パッシベーション)することで解決する本発明の特徴について、窒化物半導体太陽電池を例に挙げ、図9〜図15を参照しながら述べる。
但し、本実施形態の記載は、本発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図9は、本実施形態に係る太陽電池200の構成例を示すブロック図である。図9において、太陽電池200は、n型窒化インジウムガリウムアルミニウム(以下、n−InGaAl1−x−yN)層201と、n−InGaAl1−x−yN層201上に形成される活性層203と、活性層203上に形成されるp型窒化インジウムガリウムアルミニウム(以下、p−InGaAl1−x−yN)層202と、活性層203に含まれる転位終端部204と、n−InGaAl1−x−yN層201に電気的に接続される図示しないn型電極と、p−InGaAl1−x−yN層202に電気的に接続される図示しないp型電極と、によって構成され、周知の半導体製造技術などで形成される。転位終端部204は複数挿入されても良いし、n−InGaAl1−x−yN層201と、p−InGaAl1−x−yN層202のいずれかに挿入されても良い。
また、窒化物系半導体では、適当な成長基板が無いこと、3元混晶が全て格子不整合系であること、さらに非混和・相分離の組成領域が存在することなどによって、太陽電池200を構成する場合、線欠陥、面欠陥、および点欠陥の集合体などからなる結晶欠陥(格子欠陥、転位)209を高密度に含む。
n−InGaAl1−x−yN層201は、光電変換によって生成された電子・正孔対を分離し、電子をn型電極に輸送するために用いられる。p−InGaAl1−x−yN層202は、光電変換によって生成された電子・正孔対を分離し、正孔をp型電極に輸送するために用いられる。従って、n−InGaAl1−x−yN層201およびp−InGaAl1−x−yN層202の抵抗率および層厚は、キャリア輸送を効率よく行うために、それぞれが好適に調整され、それらの混晶組成比(x,y)についても、0≦x≦1かつ0≦y≦1かつ0≦x+y≦1の範囲で適宜調整される。n型電極およびp型電極は、発生した光起電力を外部に取り出すために用いられる。
活性層203は、太陽光スペクトルを有効に光電変換するために、pn接合を形成する窒化インジウムガリウムアルミニウム(InGaAl1−x−yN)の禁制帯幅(バンドギャップエネルギー)に対応した波長域のみならず、より長波長の波長域の太陽光を光電変換できるよう設計される。このため、活性層203の実効バンドギャップエネルギーは、n−InGaAl1−x−yN層201およびp−InGaAl1−x−yN層202のバンドギャップエネルギーのいずれかよりも小さくなるよう調整される。この条件を満たす活性層203の構成として、窒化インジウムガリウム(InGaN)、窒化インジウムガリウムアルミニウム(InGaAlN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)/窒化ガリウム(GaN)量子構造、InGaN/窒化ボロンガリウム(BGaN)量子構造、窒化インジウム(InN)/GaN量子構造、InN/GaN擬似混晶、などが挙げられる。
次に、本願発明の最も重要な構成要件である転位終端部204の物性および作用効果について説明する。光電変換素子などの光デバイスにおいて、「転位終端部」という用語は一般的ではない。これは、本発明の特徴が極めて斬新であり、その実体を表す適当な用語が認知されていないためである。そのため、その効果である「転位(結晶欠陥、格子欠陥)の影響を終端化させる」ことを表現するために名付けられたものである。
光デバイスに内在する結晶欠陥(格子欠陥、転位)は、素子の動作性能を劣化させることが広く知られている。例えば、光学特性については、発光素子や受光素子の光電変換効率(量子効率)を著しく低減させ、一方、電気特性については、電荷単体(キャリア)の捕獲(トラップ)・発生、散乱、さらに漏れ(リーク)電流の主要因になる。そのため、光デバイスの高性能化とは、性能劣化の主要因となる結晶欠陥の密度低減化に集約されてきた。
そのために、光デバイスの基本設計指針として、高品質バルク結晶から供給される成長基板を利用すること、これに格子整合する同一材料系とすること、さらに格子定数差だけでなく成長基板と成長層との熱膨張係数差が小さいこと、などが求められ、これらの制約の範疇で、結晶欠陥(格子欠陥、転位)が極力発生しないように素子作製条件が最適化されてきた。
太陽電池の高性能化には、紫外域〜赤外域に渡る太陽光スペクトルのできるだけ広い範囲に対して、素子の吸収端エネルギー(バンドギャップエネルギー)を適切に整合させ電力に変換することが肝要であり、窒化物半導体はそれを可能とする唯一の単一材料系である。しかし、その実際の素子設計・作製には、上記の素子作製上の制約を敢えて逸脱することが必然的に伴うことになる。
その理由は、広い太陽光スペクトルに窒化物半導体の物性を適合させるために、特にインジウム(In)を多く含む混晶組成域を利用する必要がある。例えば、太陽電池200の活性層203がInGaNで構成される場合を例に挙げれば、3元混晶InGaNを構成する2元InNおよびGaNが11%にも及ぶ格子不整合度を有し、最適成長温度も100℃以上異なり、さらに両者の非混和が強く現れ、適当な成長基板が入手できないことも相まって、太陽電池200には結晶欠陥(格子欠陥、転位)209が高密度に含まれる。この問題は、4元混晶である窒化インジウムガリウムアルミニウム(InGaAl1−x−yN)でも本質的に同じことであり、窒化物半導体で高効率太陽電池を構成する場合には避けて通ることができない。
続いて、窒化物半導体による太陽電池200に含まれる結晶欠陥209による素子特性劣化について、より詳細に説明する。
太陽電池の素子特性を劣化させる主要因が接合漏れ電流であるが、窒化物半導体ではこの問題は極めて深刻であり、接合漏れ電流密度が予想を数桁超えたレベルで存在する。このために、窒化物半導体での太陽電池では、設計通りの動作特性の実証および性能向上が大きく阻まれている。この傾向は、太陽電池200を構成するn−InGaAl1−x−yN層201、p−InGaAl1−x−yN層202、および活性層203の実効In組成が増加するにつれて顕在化し、実効In組成が20%を超えると特に顕著となる。
この接合漏れ電流の起源について、発明者は実験および理論検討の双方から、通常の点欠陥での再結合電流では全く説明できず、巨大漏れ電流を誘起する欠陥群が素子作製中に導入されていることを初めて見出した。
一例として、4タンデム構造で最適設計された実効In組成50%に相当するサブセルにおいて接合漏れ抵抗=1kΩcmを仮定すると、開放端電圧=約1Vが予想される。しかし、実際に発生する開放端電圧は100mV以下にまで容易に低下し、さらに接合漏れ抵抗は2桁程度低くなる。この素子特性は、仮にキャリア再結合寿命を数100fsecと極限的に短寿命化させても、点欠陥を経由した再結合電流値からは説明できない。
すなわち、窒化物半導体での太陽電池200における接合漏れ電流は、既存概念で説明・理解されるものではなく、上述した理由にて素子中に導入された結晶欠陥(格子欠陥、転位)209によるものであるが、残念ながら、その欠陥密度の低減化は材料特性に阻まれ、本質的に不可能であることを発明者は明らかにした。
このように、結晶欠陥209による接合漏れ電流を抑制することができなければ、窒化物半導体による太陽電池200が設計通りの素子性能を示すことは極めて困難であると言わざるを得ない。この問題を解決するために、例えば、太陽電池200に半絶縁性の高抵抗層をただ単に導入するだけでは、仮に接合漏れ電流を抑制できたとしても、その対価の代償として光電流の輸送経路までもが遮断されることになり、結果として太陽電池の素子特性が向上することはない。すなわち、必要とされる要素技術とは、太陽電池200の実効In組成が20%を超えるような構成であっても、光電流の輸送を阻害することなく、接合漏れ電流のみを選択的に抑制することであることを発明者は見出した。
続いて、窒化物半導体による太陽電池200を構成する転位終端部204の物性について説明する。また、転位終端部204の製造方法についてはそれ以降に述べる。
上述した通り、実効In組成を増やした窒化物半導体において、欠陥密度を低減させることは極めて困難性が高い。しかし、結晶欠陥(格子欠陥、転位)209の物性を制御・変更することは実は可能である。しかも、結晶の健全部分の物性はそのまま維持させつつ、結晶欠陥(格子欠陥、転位)209の領域のみ選択的に物性を制御・変更させることで、結晶欠陥(格子欠陥、転位)209を経由する電流成分、すなわち、接合漏れ電流、のみを選択的に遮断する手段を発明者は見出した。
結晶欠陥(格子欠陥、転位)209を経由する電流成分を選択的に遮断するためには、その物性の制御・変更に主に2つの方針がある。前者は実効バンドギャップエネルギーの増大であり、一方、後者は欠陥領域が有するエネルギー構造(深い準位の状態密度、またはその捕獲断面積)の変更である。両者は独立した作用ではなく、互いに相関があり共存することもある。これら2点について、以下に詳しく説明する。
転位終端部204の構成について、図10〜図12を参照しながら述べる。図10は、本実施形態に係る太陽電池200のエネルギーバンド図であり、図9の構成と比較するために、転位終端部204が活性層203に含まれる構成としている。図11は、本実施形態に係る太陽電池200の転位終端部204の構成を示している。転位終端部204は、面内を一様に覆うことなく不連続なアイランド形状を有しており、その被覆率は1未満となっている。さらに、そのアイランド(ディスク)は、結晶欠陥209を含むように選択的に形成され、もしくは結晶欠陥209にパッチを張るように形成される。これにより、結晶欠陥209の一部は、転位終端部204によって終端化されることがある。
図12は、本実施形態に係る太陽電池200の転位終端部204の構成を示しているが、図11で示される構成とは若干異なり、結晶欠陥209の転位芯を含むように形成される例を示している。図11および図12の構成で共通しているのは、転位終端部204がアイランド(ディスク)状の不連続被覆の形状を有していることで、結晶欠陥209の存在する局所エリアに選択的に形成され、結晶の健全部分には形成されていない領域が存在することである。これにより、光電変換によって生成された電荷担体(キャリア)の輸送経路が阻害されずに、効率よく光電流が取り出すことができる。
欠陥終端部204の実効バンドギャップエネルギーは、それを含むマトリクス材料の実効バンドギャップエネルギーよりも大きくなるように構成される。図10に示される例では、欠陥終端部204の実効バンドギャップエネルギーは、活性層203の実効バンドギャップエネルギーより大きくなり、そのエネルギー差は300meV以上あることが好ましく、さらには500meV以上あることが好ましい。
一方、欠陥終端部204がn−InGaAl1−x−yN層201もしくはp−InGaAl1−x−yN層202の少なくともいずれかに含まれるような構成である場合は、同様に、欠陥終端部204の実効バンドギャップエネルギーは、それを含むn−InGaAl1−x−yN層201もしくはp−InGaAl1−x−yN層202の少なくともいずれかの実効バンドギャップエネルギーより大きくなるように構成される。そのエネルギー差は300meV以上あることが好ましく、さらには500meV以上あることが好ましい。
欠陥終端部204の構成にも示されているが、欠陥終端部204とは、結晶欠陥209それ自体の物性が制御・変更され、その実効バンドギャップが増大されたものでもよいし、結晶欠陥209に選択的に付加されるものであってもよい。
欠陥領域の実効バンドギャップエネルギーを増大させる効果について説明する。欠陥終端部204の実効バンドギャップエネルギーは、活性層203の実効バンドギャップエネルギーより大きくなることで、欠陥領域のキャリアを空乏化させることができ、実質的な抵抗率を増加させることができる。すなわち、欠陥終端部204の抵抗率は、n−InGaAl1−x−yN層201もしくはp−InGaAl1−x−yN層202もしくは活性層203の各抵抗率の少なくともいずれかより大きくなるように構成される。
活性層203での光電変換によって生成された電荷担体(キャリア)は、相対的に抵抗率の低い、もしくは実効バンドギャップの小さい結晶の健全部分のみを選択的に流れることになり、キャリアは結晶欠陥209を常に迂回し近寄ることは無い。すなわち、結晶欠陥209が高密度に存在していたとしても、キャリアはその実質的にその存在を感じること無く、結晶欠陥(格子欠陥、転位)209が終端化された状態と見なすことができる。その結果、結晶欠陥(格子欠陥、転位)209を経由する電流成分、すなわち、接合漏れ電流、のみが選択的に遮断されることになる。
また、電流注入などで、結晶欠陥209を既に流れる漏れ電流成分が存在する場合でも、その結晶欠陥に沿って移動するキャリアは、欠陥終端部204に必ず巡り会い、直ちにキャリアは結晶欠陥209を迂回し始める。そのため、太陽電池200のn型電極からp型電極間に流れる電流全体の中から、漏れ電流成分のみが遮断された特性を示すことが可能となる。
以上、転位終端部204の作用効果について述べたが、接合漏れ電流を適切に遮断するために、転位終端部204は複数挿入されても良いし、n−InGaAl1−x−yN層201と、p−InGaAl1−x−yN層202のいずれかに挿入されても良い。
このように、接合漏れ電流が遮断され大幅に低減されることによって、実効In組成が20%を超える窒化物半導体による太陽電池200においても、設計通りの素子性能を示すことができるようになる。
次に、転位終端部204の実効バンドギャップエネルギーをどのようにして増大させるのか、その手法について述べる。
本実施形態に係る太陽電池200は、前述した通り窒化物半導体InGaAl1−x−yNによって構成されている。この物性を制御・変更し、実効バンドギャップエネルギーを増大させるためには、転位終端部204のみの混晶組成(x、y)を選択的に変化させる、もしくは構成元素と異なる元素を選択的に取り込ませる必要がある。
転位終端部204の選択的な混晶組成変化について述べる。窒化物半導体の結晶成長では、有機金属気相成長(MOVPE)法もしくは分子線エピタキシ−(MBE)法が一般的である。しかし、これらの結晶成長技術は成長表面に一様に原料供給することはできるが、結晶欠陥209のみに選択的な原料供給することは簡単ではない。
ところが、発明者は分光エリプソメトリなどによる成長表面その場観察を通じて、この選択的な原料供給を可能とする手段を見出した。この原料供給プロセスの詳細は後に述べるが、原料の過剰供給、余剰原料の蒸発・脱離、蒸発中の表面吸着原料の泳動(マイグレーション)の各素過程を制御することで、結晶欠陥209が健全部分に比べて強い原料吸着効果を発現することを巧み利用する。その結果として、意図した原料を凝集させ、結晶欠陥209のみに選択的に取り込ませることができる。
この原料吸着効果によって、例えば、アルミニウム(Al)もしくはホウ素(B)を結晶欠陥209に選択的に凝集・吸着させることによって、それに続く結晶成長の結果、AlもしくはBが凝集している領域のみの実効バンドギャップエネルギーが増大され抵抗率が上がるために、欠陥終端部204として機能することを、発明者は見出した。
また、この原料吸着効果によって、例えば、マグネシウム(Mg)を結晶欠陥209に選択的に凝集・吸着させることによって、それに続く結晶成長の結果、Mgが凝集している領域のみn型伝導性が補償され高抵抗化し欠陥終端部204として機能する、または、Mgが凝集している領域のみp型伝導性を示し空乏層が形成され、欠陥終端部204として機能することを、発明者は見出した。
また、この原料吸着効果によって、例えば、酸素を結晶欠陥209に選択的に凝集・吸着させることによって、それに続く結晶成長の結果、酸素が凝集している領域のみ実効バンドギャップエネルギーが増大されたIII族酸化物もしくはIII族酸窒化物が形成され、欠陥終端部204として機能することを、発明者は見出した。
また、この原料吸着効果によって、例えば、Alと酸素、Mgと酸素、またはシリコン(Si)と酸素を結晶欠陥209に選択的に凝集・吸着させることによって、それに続く結晶成長の結果、これらのいずれかが凝集している領域のみ実効バンドギャップエネルギーが増大された酸化物もしくは酸窒化物が形成され、欠陥終端部204として機能することを、発明者は見出した。
また、この原料吸着効果によって、例えば、Alと酸素、Mgと酸素、またはシリコン(Si)と酸素を結晶欠陥209に選択的に凝集・吸着させることによって、それに続く結晶成長の結果、これらが凝集している領域のみ窒化物半導体とは異なる結晶構造となり高抵抗化し、欠陥終端部204として機能することを、発明者は見出した。
また、この原料吸着効果によって、例えば、Alと酸素、Mgと酸素、またはシリコン(Si)と酸素を結晶欠陥209に選択的に凝集・吸着させることによって、それに続く結晶成長の結果、これらが凝集している領域のみアモルファス構造もしくは多結晶・微結晶となり高抵抗化し、欠陥終端部204として機能することを、発明者は見出した。
続いて、転位終端部204が、結晶欠陥209が有するエネルギー構造(深い準位の状態密度、またはその捕獲断面積)を変更させる作用効果について、図13を参照しながら述べる。図13は、本実施形態に係る太陽電池200のエネルギーバンド図であり、結晶欠陥209が活性層203の禁制帯(バンドギャップ)中に深い準位(ディープレベル)を形成している構成を示している。
この深い準位の物性について述べる。活性層203に含まれる結晶欠陥209は、その密度が高いだけでなく、図13に示される深い準位の状態密度が大きく、もしくはそのキャリア捕獲断面積が極めて大きい。そのため、深い準位に多数のキャリアが流れ込みやすいために、実効的な抵抗率が低いと見なせる電流経路が形成され、そこを流れる漏れ電流の問題が顕在化する。
上述した欠陥終端部204の実効バンドギャップの増大とは、この深い準位へのキャリアの流れ込みを阻止する狙いがあったが、結晶欠陥209のエネルギー構造を制御・変更するもう一つ方針によっても、漏れ電流経路を遮断することができることを、発明者は明らかにした。
結晶欠陥(格子欠陥、転位)とは、母体材料の構成元素が結晶としての周期性が乱された構造(転位構造)である。それは、配位関係および未結合手などの組み合わせ構造からなる複数候補の中から、安定構造のものから優先的に形成され、それら転位構造を反映した物性を示すことになる。この転位構造の決定に大きく影響を与えるのが、構成元素が有する電気陰性度である。
結晶欠陥209が有するエネルギー構造を制御・変更させるためには、結晶欠陥209自体の転位構造を変更(修飾)する必要がある。そのためには、構成元素よりも大きな電気陰性度を有する異価数元素を添加・導入することで、異なる転位構造が新たに安定化され、結晶欠陥209が有するエネルギー構造が変調されることを、発明者は見出した。
窒化物半導体を構成する窒素は、電気陰性度が大きくポーリングの電気陰性度では約3.04である。すなわち、これより大きな電気陰性度を有する元素が、転位構造を修飾する添加剤の候補となりうる。上述した欠陥終端部204の実効バンドギャップの増大の効果を併せ持つことも考慮すると、ポーリングの電気陰性度が約3.44である酸素が最も適した添加剤であることを、発明者は見出した。
この転位構造の修飾によって、結晶欠陥209の深い準位のエネルギー構造(深い準位の状態密度、またはその捕獲断面積)が制御・変更され、その状態密度やキャリア捕獲断面積が空間的に不連続化されることになる。これによって、深い準位にキャリアが流れ込みやすい状況であったとしても、漏れ電流経路は遮断されているために深い準位はキャリアに占有された状態となり、キャリアはその実質的にその存在を感じること無く、結晶欠陥(格子欠陥、転位)209が終端化された状態と見なすことができる。その結果、結晶欠陥(格子欠陥、転位)209を経由する電流成分、すなわち、接合漏れ電流、のみが選択的に遮断されることになる。
以上、転位終端部204の作用効果について述べたが、接合漏れ電流を適切に遮断するために、転位終端部204は複数挿入されても良いし、n−InGaAl1−x−yN層201と、p−InGaAl1−x−yN層202のいずれかに挿入されても良い。
このように接合漏れ電流が遮断され大幅に低減されることによって、実効In組成が20%を超える窒化物半導体による太陽電池200においても、設計通りの素子性能を示すことができるようになる。
[第2実施形態の太陽電池の製造方法]
第2実施形態の太陽電池200の製造方法について、図14および図15を参照して説明する。なお、ここでは分子線エピタキシ−(MBE)法を例にとって説明するが、結晶成長技術はこれだけに限定されず、その他の周知の半導体製造技術でも同様である。図14は、本実施形態に係る太陽電池200の製造方法を示すフロ−チャートである。特に、欠陥終端部204の形成方法と、その前後のプロセスとについて示してある。その他、基板処理や下地層形成などの図示しない前工程、および表面層形成、電極形成、微細加工などの図示しない後工程は、周知の半導体製造技術によって行われる。図15は、本実施形態に係る太陽電池を製造する際の結晶成長様式を示している。
まず、図14に示される各ステップについて順を追って説明する。上述した前工程が済んだ試料の表面状態観察を開始する(ステップS11)。この表面状態観察は、例えば、反射高エネルギー電子線回折(RHEED)や分光エリプソメトリ(SE)によって行われる。これによって、各層成長中ならびに成長前後における試料成長表面の物理的または化学的状態を、実時間で観察する。
次に、n−InGaAl1−x−yN層201の成長を行う(ステップS12)。それに続き、活性層203および欠陥終端部204の形成プロセスを行う(ステップS20)。その後に、p−InGaAl1−x−yN層202の成長を行う(ステップS19)。
ステップS20は、成長温度の設定(ステップS13)と、活性層203の成長(ステップS14)と、欠陥終端部204の形成プロセス(ステップS15〜ステップS18)と、を具備してなる。ここでは、欠陥終端部204の形成プロセスの一例として、第1の原料であるインジウム(In)の供給(ステップS15)と、第2の原料であるアルミニウム(Al)の供給(ステップS16)と、成長中断(ステップS17)と、第3の原料である酸素原料(O)または窒素原料(N)の供給(ステップS18)を示している。
成長温度の設定(ステップS13)では、活性層203の成長に適した基板温度に設定する必要がある。例えば、活性層203がInGaNである場合、MBE法での基板温度は500℃〜700℃の間となり、その温度に対応した実効的In組成が決定される。ところが、欠陥終端部204の形成には、原料の選択的な凝集(泳動)効果を発現させる必要がある。原料の成長表面での泳動を促進するためには、対象となる原料が成長表面上で液相として振る舞えると好ましい。そのために、第1の原料は凝集効果を促進させるサーファクタントとしての役割があり、基板温度は第1の原料と第2の原料の少なくともどちらかの融点より高く設定することが好ましい。
図14には、第1の原料としてインジウム(In)が一例に挙げられており、その融点は約156.5℃である。別の例として、第1の原料としてガリウム(Ga)を用いるならば、その融点は29.8℃となる。上述の通り、活性層203がInGaNであるならば、第1の原料の候補であるInおよびGaのいずれかの融点よりも高温に自動的に設定される。
また、図14には、第2の原料としてアルミニウム(Al)が一例に挙げられており、その融点は約660.2℃である。これより低温ではAlが固相化する懸念があるが、第1の原料(InまたはGa)との共晶(化合物)が一部液相化しているのでAlの凝集(泳動)は実際には可能となる。さらに、第1の原料がInであれば、AlとInは非混和状態が現れる組成・温度領域が存在するために、よりAlの凝集(泳動)は容易に起こりえる。
さらに、欠陥終端部204を構成する第2の原料の凝集(泳動)を促進するために、成長表面状態を原子層厚レベルで制御することが好ましい。成長表面状態は、ステップS11から分光エリプソメトリなどによって常時把握されている。図15に示すように、下地層の影響を除去できる観測波長を選ぶことで、分光エリプソメトリから導出される擬誘電関数の虚部は、成長表面上の吸着層もしくは吸着原料を0〜2分子層の間を極めて精度良く反映できることを、発明者は見出した。
窒化物半導体の表面での成長様式について、図15を参照しながら述べる。通常の窒化物半導体成長では、(0001)面(+c面)成長されるが、その表面には2分子層(2ML)相当の原料吸着を許容する安定状態が存在する。図15の例では、GaN表面上に、InNの成長可能上限温度500℃を越えた610℃においても、2分子層(2ML)のInN超薄膜が形成されていることを示しており、別の例では、GaN表面上に、Ga原子が2分子層(2ML)まで安定に吸着する。この吸着2分子層は、下地からの強い吸着効果によって固相的に振る舞い、それより多く供給された余剰原料は、下地からの吸着効果を感じること無く、表面上で泳動可能な液相的に振る舞う。
すなわち、第1の原料(InまたはGa)を2分子層(2ML)以上供給することで、その後に供給される第2の原料(Al)はより容易に凝集(泳動)することができるようになる。そのため、ステップS15では、第1の原料を2分子層(2ML)以上供給する。
ステップS16では、欠陥終端部204を構成する第2の原料を供給するが、欠陥終端部204は太陽電池の光電流輸送を阻害させないために、面内被覆率を1未満にする必要がある。そのために、第2の原料の供給量は1分子層(1ML)未満とする。
ステップS16が済んだ状態では、ステップS14で形成された活性層203表面上に、第1の原料(ステップS15)と第2の原料(ステップS16)が堆積したままになっており、この時点では欠陥終端部204の選択的形成は実行されていない。原料の凝集・泳動は成長中断時に行われる(ステップS17)。
ステップS17は成長中断であるが、その間に成長表面上に堆積した第1の原料(In)と第2の原料(Al)の蒸発・脱離・泳動・凝集の各素過程を分光エリプソメトリ(SE)によって把握し制御するためのインターバルとなる。InとAlでは、平衡蒸気圧はInの方が大きく、表面吸着係数はAlの方が大きい。そのため、ステップS17では、Inの蒸発・脱離が優先的に起こり、表面上のIn堆積量は、2分子層以上→2分子層→1分子層→分数分子層と減少していく。この過程は図15に示すように、極めて精度良く把握することができ、秒〜分オーダーの時間スケールで推移するので、意図した通りの制御が可能である。分数分子層とは表面被覆率が1以下であることを意味し、例えば0.5分子層とは、1分層厚かつ表面被覆率が50%であるアイランド構造を指す。
分数分子層のアイランドとは、上述したように結晶欠陥209が健全部分に比べて強い原料吸着効果を発現するために、結晶欠陥209を取り囲むように、もしくは結晶欠陥209にパッチを張るように、Inの蒸発・脱離に伴いアイランド径は減少していく。一方、Alは蒸発・脱離すること無く、Inアイランド径の減少に伴い、自己組織的に結晶欠陥209に向かって凝集する。アイランド径のサイズは、分光エリプソメトリ(SE)の複数波長に対する各擬誘電関数を解析することで把握することができるために、Al供給量に応じた適当なアイランドサイズになった際に、InおよびAlを結晶化させる第3の原料(NまたはO)を供給し、欠陥終端部204が形成される(ステップS18)。
この場合の欠陥終端部204とは、分数分子層Inと分数分子層Alを元にした1〜2分子層厚InAlONアイランドが結晶欠陥209を取り囲むように、もしくはパッチを張るように構成されている。一方、ステップS17にてInを完全に蒸発・除去させることで、欠陥終端部204は、分数分子層Alを元にした1分子層厚AlONアイランドが結晶欠陥209を取り囲むように、もしくはパッチを張るように構成することもできる。
ステップS18で酸素を供給する場合、装置汚染や過剰な酸素源供給によって意図しない物性変化や素子特性劣化に対する細心の注意が必要である。そのために、第3の原料には、微量供給が可能であり汚染源になりにくいとの観点で、蒸気圧水分のバブリング供給もしくは亜酸化窒素(NO)が適している。
ステップS16で供給される第2の原料として、図16ではアルミニウム(Al)を例に挙げたが、それ以外にホウ素(B)、シリコン(Si)、およびマグネシウム(Mg)のいずれかであっても良い。これらは、容易に酸化物を形成するので、転位終端部204には選択的に酸素を凝集させることができる。また、結晶欠陥209自体も酸素吸着しやすい性質があるので、同様に、転位終端部204には選択的に酸素を凝集させることができる。
もし、欠陥終端部204を多層構造とする場合には、ステップS20を所望の回数だけ繰り返せば良い。また、欠陥終端部204をn−InGaAl1−x−yN層201内に形成する場合には、ステップS12とステップS20を所望の回数だけ繰り返せば良く、欠陥終端部204をp−InGaAl1−x−yN層202内に形成する場合には、ステップS20とステップS19を所望の回数だけ繰り返せば良い。ステップS19が終了した後に、上述の後工程を経ると、本実施形態の太陽電池200が得られる。
[第3実施形態]
第3実施形態では、光電変換素子中に含まれる格子欠陥、結晶欠陥、転位などが引き起こす漏れ電流の問題を、それらを不活性化もしくは終端化(パッシベーション)することで解決する本発明の特徴について、格子緩和させた窒化物半導体太陽電池を例に挙げ、図16を参照しながら述べる。
但し、本実施形態の記載は、本発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図16は、本実施形態に係る太陽電池300の構成例を示すブロック図である。図16において、太陽電池300は、格子緩和したn型窒化インジウムガリウムアルミニウム(以下、n−InGaAl1−x−yN)層301と、n−InGaAl1−x−yN層301上に形成される格子緩和した活性層303と、活性層303上に形成される格子緩和したp型窒化インジウムガリウムアルミニウム(以下、p−InGaAl1−x−yN)層302と、活性層303に含まれる転位終端部304と、n−InGaAl1−x−yN層301に電気的に接続される図示しないn型電極と、p−InGaAl1−x−yN層302に電気的に接続される図示しないp型電極と、によって構成され、周知の半導体製造技術などで形成される。転位終端部304は複数挿入されても良いし、n−InGaAl1−x−yN層301と、p−InGaAl1−x−yN層302のいずれかに挿入されても良い。
窒化物系半導体は(0001)面(+c面)成長されることが多く、コヒーレント成長させるとヘテロ界面に圧電分極や自発分極が発生する。この分極はpn接合の内在電位を打ち消すほどの規模であり、太陽電池のキャリア輸送を大幅に阻害する。そのため、意図的に各層を格子緩和させ分極効果を抑制する必要が生じる。
しかし、格子緩和させることは、その対価の代償として、太陽電池300を構成する場合、線欠陥、面欠陥、および点欠陥の集合体などからなる結晶欠陥(格子欠陥、転位)309を高密度に含む。または、太陽電池300を構成する各層のいずれかが、アモルファス構造、微結晶・多結晶構造となりうる。
n−InGaAl1−x−yN層301は、光電変換によって生成された電子・正孔対を分離し、電子をn型電極に輸送するために用いられる。p−InGaAl1−x−yN層302は、光電変換によって生成された電子・正孔対を分離し、正孔をp型電極に輸送するために用いられる。従って、n−InGaAl1−x−yN層301およびp−InGaAl1−x−yN層302の抵抗率および層厚は、キャリア輸送を効率よく行うために、それぞれが好適に調整され、それらの混晶組成比(x,y)についても、0≦x≦1かつ0≦y≦1かつ0≦x+y≦1の範囲で適宜調整される。n型電極およびp型電極は、発生した光起電力を外部に取り出すために用いられる。
活性層303は、太陽光スペクトルを有効に光電変換するために、pn接合を形成する窒化インジウムガリウムアルミニウム(InGaAl1−x−yN)の禁制帯幅(バンドギャップエネルギー)に対応した波長域のみならず、より長波長の波長域の太陽光を光電変換できるよう設計される。このため、活性層303の実効バンドギャップエネルギーは、n−InGaAl1−x−yN層301およびp−InGaAl1−x−yN層302のバンドギャップエネルギーのいずれかよりも小さくなるよう調整される。この条件を満たす活性層303の構成として、格子緩和した窒化インジウムガリウム(InGaN)、格子緩和した窒化インジウムガリウムアルミニウム(InGaAlN)、格子緩和した窒化インジウムガリウム(InGaN)/窒化ガリウム(GaN)量子構造、格子緩和したInGaN/窒化ボロンガリウム(BGaN)量子構造、格子緩和した窒化インジウム(InN)/GaN量子構造、格子緩和したInN/GaN擬似混晶、などが挙げられる。
次に、本願発明の最も重要な構成要件である転位終端部304の物性および作用効果について説明する。光電変換素子などの光デバイスにおいて、「転位終端部」という用語は一般的ではない。これは、本発明の特徴が極めて斬新であり、その実体を表す適当な用語が認知されていないためである。そのため、その効果である「転位(結晶欠陥、格子欠陥)の影響を終端化させる」ことを表現するために名付けられたものである。
光デバイスに内在する結晶欠陥(格子欠陥、転位)は、素子の動作性能を劣化させることが広く知られている。例えば、光学特性については、発光素子や受光素子の光電変換効率(量子効率)を著しく低減させ、一方、電気特性については、電荷単体(キャリア)の捕獲(トラップ)・発生、散乱、さらに漏れ(リーク)電流の主要因になる。そのため、光デバイスの高性能化とは、性能劣化の主要因となる結晶欠陥の密度低減化に集約されてきた。
そのために、光デバイスの基本設計指針として、高品質バルク結晶から供給される成長基板を利用すること、これに格子整合する同一材料系とすること、さらに格子定数差だけでなく成長基板と成長層との熱膨張係数差が小さいこと、などが求められ、これらの制約の範疇で、結晶欠陥(格子欠陥、転位)が極力発生しないように素子作製条件が最適化されてきた。
太陽電池の高性能化には、紫外域〜赤外域に渡る太陽光スペクトルのできるだけ広い範囲に対して、素子の吸収端エネルギー(バンドギャップエネルギー)を適切に整合させ電力に変換することが肝要であり、窒化物半導体はそれを可能とする唯一の単一材料系である。しかし、その実際の素子設計・作製には、上記の素子作製上の制約を敢えて逸脱する格子緩和系であることが必然的に伴うことになる。
その理由は、広い太陽光スペクトルに窒化物半導体の物性を適合させるために、特にインジウム(In)を多く含む混晶組成域を利用する必要がある。それに伴い、圧電分極効果を抑制させるために、各層は無歪で積層される方が好ましい。そのため、意図的に格子緩和構造を採用するために、太陽電池300には結晶欠陥(格子欠陥、転位)309が高密度に含まれる。
続いて、窒化物半導体による太陽電池300に含まれる結晶欠陥309による素子特性劣化について説明する。
太陽電池の素子特性を劣化させる主要因が接合漏れ電流であるが、格子緩和系の窒化物半導体ではこの問題は極めて深刻であり、結晶欠陥309に起因する接合漏れ電流密度が予想を数桁超えたレベルで存在する。このために、窒化物半導体での太陽電池では、設計通りの動作特性の実証および性能向上が大きく阻まれている。
続いて、窒化物半導体による太陽電池300を構成する転位終端部304の物性について説明する。
上述した通り、格子緩和させた窒化物半導体において、欠陥密度を低減させることは極めて困難性が高い。しかし、結晶欠陥(格子欠陥、転位)309の物性を制御・変更することは実は可能である。しかも、結晶の健全部分の物性はそのまま維持させつつ、結晶欠陥(格子欠陥、転位)309の領域のみ選択的に物性を制御・変更させることで、結晶欠陥(格子欠陥、転位)309を経由する電流成分、すなわち、接合漏れ電流、のみを選択的に遮断する手段を発明者は見出した。
結晶欠陥(格子欠陥、転位)309を経由する電流成分を選択的に遮断するためには、その物性の制御・変更に主に次の方針がある。それは実効バンドギャップエネルギーの増大である。
転位終端部304は、面内を一様に覆うことなく不連続なアイランド形状を有しており、その被覆率は1未満となっている。さらに、そのアイランド(ディスク)は、結晶欠陥309を含むように選択的に形成され、もしくは結晶欠陥309にパッチを張るように形成される。これにより、結晶欠陥309の一部は、転位終端部304によって終端化されることがある。
また、転位終端部304がアイランド(ディスク)状の不連続被覆の形状を有していることで、結晶欠陥309の存在する局所エリアに選択的に形成され、結晶の健全部分には形成されていない領域が存在することである。これにより、光電変換によって生成された電荷担体(キャリア)の輸送経路が阻害されずに、効率よく光電流が取り出すことができる。
欠陥終端部304の実効バンドギャップエネルギーは、それを含むマトリクス材料の実効バンドギャップエネルギーよりも大きくなるように構成される。例えば、欠陥終端部304の実効バンドギャップエネルギーは、活性層303の実効バンドギャップエネルギーより大きくなり、そのエネルギー差は300meV以上あることが好ましく、さらには500meV以上あることが好ましい。
一方、欠陥終端部304がn−InGaAl1−x−yN層301もしくはp−InGaAl1−x−yN層302の少なくともいずれかに含まれるような構成である場合は、同様に、欠陥終端部304の実効バンドギャップエネルギーは、それを含むn−InGaAl1−x−yN層301もしくはp−InGaAl1−x−yN層302の少なくともいずれかの実効バンドギャップエネルギーより大きくなるように構成される。そのエネルギー差は300meV以上あることが好ましく、さらには500meV以上あることが好ましい。
欠陥終端部304の構成にも示されているが、欠陥終端部304とは、結晶欠陥309それ自体の物性が制御・変更され、その実効バンドギャップが増大されたものでもよいし、結晶欠陥309に選択的に付加されるものであってもよい。
欠陥領域の実効バンドギャップエネルギーを増大させる効果について説明する。欠陥終端部304の実効バンドギャップエネルギーは、活性層303の実効バンドギャップエネルギーより大きくなることで、欠陥領域のキャリアを空乏化させることができ、実質的な抵抗率を増加させることができる。すなわち、欠陥終端部304の抵抗率は、n−InGaAl1−x−yN層301もしくはp−InGaAl1−x−yN層302もしくは活性層303の各抵抗率の少なくともいずれかより大きくなるように構成される。
活性層303での光電変換によって生成された電荷担体(キャリア)は、相対的に抵抗率の低い、もしくは実効バンドギャップの小さい結晶の健全部分のみを選択的に流れることになり、キャリアは結晶欠陥309を常に迂回し近寄ることは無い。すなわち、結晶欠陥309が高密度に存在していたとしても、キャリアはその実質的にその存在を感じること無く、結晶欠陥(格子欠陥、転位)309が終端化された状態と見なすことができる。その結果、結晶欠陥(格子欠陥、転位)309を経由する電流成分、すなわち、接合漏れ電流、のみが選択的に遮断されることになる。
また、電流注入などで、結晶欠陥309を既に流れる漏れ電流成分が存在する場合でも、その結晶欠陥に沿って移動するキャリアは、欠陥終端部304に必ず巡り会い、直ちにキャリアは結晶欠陥309を迂回し始める。そのため、太陽電池300のn型電極からp型電極間に流れる電流全体の中から、漏れ電流成分のみが遮断された特性を示すことが可能となる。
以上、転位終端部304の作用効果について述べたが、接合漏れ電流を適切に遮断するために、転位終端部304は複数挿入されても良いし、n−InGaAl1−x−yN層301と、p−InGaAl1−x−yN層302のいずれかに挿入されても良い。
このように、接合漏れ電流が遮断され大幅に低減されることによって、実効In組成が20%を超える窒化物半導体による太陽電池300においても、設計通りの素子性能を示すことができるようになる。
次に、転位終端部304の実効バンドギャップエネルギーをどのようにして増大させるのか、その手法について述べる。
本実施形態に係る太陽電池300は、前述した通り窒化物半導体InGaAl1−x−yNによって構成されている。この物性を制御・変更し、実効バンドギャップエネルギーを増大させるためには、転位終端部304のみの混晶組成(x、y)を選択的に変化させる、もしくは構成元素と異なる元素を選択的に取り込ませる必要がある。
転位終端部304の選択的な混晶組成変化について述べる。窒化物半導体の結晶成長では、有機金属気相成長(MOVPE)法もしくは分子線エピタキシ−(MBE)法が一般的である。しかし、これらの結晶成長技術は成長表面に一様に原料供給することはできるが、結晶欠陥309のみに選択的な原料供給することは簡単ではない。
ところが、発明者は分光エリプソメトリなどによる成長表面その場観察を通じて、この選択的な原料供給を可能とする手段を見出した。この原料供給プロセスの詳細は後に述べるが、原料の過剰供給、余剰原料の蒸発・脱離、蒸発中の表面吸着原料の泳動(マイグレーション)の各素過程を制御することで、結晶欠陥309が健全部分に比べて強い原料吸着効果を発現することを巧み利用する。その結果として、意図した原料を凝集させ、結晶欠陥309のみに選択的に取り込ませることができる。
この原料吸着効果によって、例えば、アルミニウム(Al)もしくはホウ素(B)を結晶欠陥309に選択的に凝集・吸着させることによって、それに続く結晶成長の結果、AlもしくはBが凝集している領域のみの実効バンドギャップエネルギーが増大され抵抗率が上がるために、欠陥終端部304として機能することを、発明者は見出した。
また、この原料吸着効果によって、例えば、マグネシウム(Mg)を結晶欠陥309に選択的に凝集・吸着させることによって、それに続く結晶成長の結果、Mgが凝集している領域のみn型伝導性が補償され高抵抗化し欠陥終端部304として機能する、または、Mgが凝集している領域のみp型伝導性を示し空乏層が形成され、欠陥終端部304として機能することを、発明者は見出した。
また、この原料吸着効果によって、例えば、酸素を結晶欠陥309に選択的に凝集・吸着させることによって、それに続く結晶成長の結果、酸素が凝集している領域のみ実効バンドギャップエネルギーが増大されたIII族酸化物もしくはIII族酸窒化物が形成され、欠陥終端部304として機能することを、発明者は見出した。
また、この原料吸着効果によって、例えば、Alと酸素、Mgと酸素、またはシリコン(Si)と酸素を結晶欠陥309に選択的に凝集・吸着させることによって、それに続く結晶成長の結果、これらのいずれかが凝集している領域のみ実効バンドギャップエネルギーが増大された酸化物もしくは酸窒化物が形成され、欠陥終端部304として機能することを、発明者は見出した。
また、この原料吸着効果によって、例えば、Alと酸素、Mgと酸素、またはシリコン(Si)と酸素を結晶欠陥309に選択的に凝集・吸着させることによって、それに続く結晶成長の結果、これらが凝集している領域のみ窒化物半導体とは異なる結晶構造となり高抵抗化し、欠陥終端部304として機能することを、発明者は見出した。
また、この原料吸着効果によって、例えば、Alと酸素、Mgと酸素、またはシリコン(Si)と酸素を結晶欠陥309に選択的に凝集・吸着させることによって、それに続く結晶成長の結果、これらが凝集している領域のみアモルファス構造もしくは多結晶・微結晶となり高抵抗化し、欠陥終端部304として機能することを、発明者は見出した。
以上、転位終端部304の作用効果について述べたが、接合漏れ電流を適切に遮断するために、転位終端部304は複数挿入されても良いし、n−InGaAl1−x−yN層301と、p−InGaAl1−x−yN層302のいずれかに挿入されても良い。
このように接合漏れ電流が遮断され大幅に低減されることによって、格子緩和している窒化物半導体による太陽電池300においても、設計通りの素子性能を示すことができるようになる。
[第4実施形態]
第4実施形態では、光電変換素子中に含まれる格子欠陥、結晶欠陥、転位などが引き起こす素子特性劣化の問題を、それらを不活性化もしくは終端化(パッシベーション)することで解決する本発明の特徴について、窒化物半導体紫外発光素子を例に挙げ、図17を参照しながら述べる。
但し、本実施形態の記載は、本発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図17は、本実施形態に係る紫外発光素子400の構成例を示すブロック図である。図17において、紫外発光素子400は、n型窒化インジウムガリウムアルミニウム(以下、n−InGaAl1−x−yN)層401と、n−InGaAl1−x−yN層401上に形成される活性層403と、活性層403上に形成されるp型窒化インジウムガリウムアルミニウム(以下、p−InGaAl1−x−yN)層402と、活性層403に含まれる転位終端部404と、n−InGaAl1−x−yN層401に電気的に接続される図示しないn型電極と、p−InGaAl1−x−yN層402に電気的に接続される図示しないp型電極と、によって構成され、周知の半導体製造技術などで形成される。転位終端部404は複数挿入されても良いし、n−InGaAl1−x−yN層401と、p−InGaAl1−x−yN層402のいずれかに挿入されても良い。
また、窒化物系半導体では、適当な成長基板が無いこと、3元混晶が全て格子不整合系であること、さらに非混和・相分離の組成領域が存在することなどによって、紫外発光素子400を構成する場合、線欠陥、面欠陥、および点欠陥の集合体などからなる結晶欠陥(格子欠陥、転位)409を高密度に含む。
n−InGaAl1−x−yN層401は、光電変換に要される電子を活性層403に輸送するために用いられる。p−InGaAl1−x−yN層402は、光電変換に要される正孔を活性層403に輸送するために用いられる。従って、n−InGaAl1−x−yN層401およびp−InGaAl1−x−yN層402の抵抗率および層厚は、キャリア輸送を効率よく行うために、それぞれが好適に調整され、それらの混晶組成比(x,y)についても、0≦x≦1かつ0≦y≦1かつ0≦x+y≦1の範囲で適宜調整される。n型電極およびp型電極は、外部から電力を注入するために用いられる。
活性層403は、キャリア閉じ込め紫外線に光電変換するために、活性層403の実効バンドギャップエネルギーは、n−InGaAl1−x−yN層401およびp−InGaAl1−x−yN層402のバンドギャップエネルギーのいずれかよりも小さくなるよう調整される。この条件を満たす活性層403の構成として、窒化インジウムガリウムアルミニウム(InGaAlN)、窒化インジウムガリウムアルミニウム(InGaAlN)/窒化ガリウムアルミニウム(AlGaN)量子構造、窒化ガリウム(GaN)/窒化ボロンガリウム(BGaN)量子構造、GaN/窒化アルムニウム(AlN)量子構造、GaN/AlN擬似混晶、などが挙げられる。
次に、本願発明の最も重要な構成要件である転位終端部404の物性および作用効果について説明する。光電変換素子などの光デバイスにおいて、「転位終端部」という用語は一般的ではない。これは、本発明の特徴が極めて斬新であり、その実体を表す適当な用語が認知されていないためである。そのため、その効果である「転位(結晶欠陥、格子欠陥)の影響を終端化させる」ことを表現するために名付けられたものである。
光デバイスに内在する結晶欠陥(格子欠陥、転位)は、素子の動作性能を劣化させることが広く知られている。例えば、光学特性については、発光素子や受光素子の光電変換効率(量子効率)を著しく低減させ、一方、電気特性については、電荷単体(キャリア)の捕獲(トラップ)・発生、散乱、さらに漏れ(リーク)電流の主要因になる。そのため、光デバイスの高性能化とは、性能劣化の主要因となる結晶欠陥の密度低減化に集約されてきた。
そのために、光デバイスの基本設計指針として、高品質バルク結晶から供給される成長基板を利用すること、これに格子整合する同一材料系とすること、さらに格子定数差だけでなく成長基板と成長層との熱膨張係数差が小さいこと、などが求められ、これらの制約の範疇で、結晶欠陥(格子欠陥、転位)が極力発生しないように素子作製条件が最適化されてきた。
紫外発光素子の高性能化には、素子の発光エネルギー(バンドギャップエネルギー)を適切に整合させることが肝要であり、窒化物半導体は紫外発光を可能とする唯一の材料系である。しかし、その実際の素子設計・作製には、上記の素子作製上の制約を敢えて逸脱することが必然的に伴うことになる。
続いて、窒化物半導体による紫外発光素子400に含まれる結晶欠陥409による素子特性劣化について、より詳細に説明する。
紫外発光素子の素子特性を劣化させる主要因が非発光中心であるが、紫外域対応の窒化物半導体ではこの問題は極めて深刻であり、非発光中心が予想を数桁超えたレベルで存在する。このために、窒化物半導体での紫外発光素子では、設計通りの動作特性の実証および性能向上が大きく阻まれている。この傾向は、紫外発光素子400を構成するn−InGaAl1−x−yN層401、p−InGaAl1−x−yN層402、および活性層403の実効Al組成が増加するにつれて顕在化する。
この非発光中心の起源について、発明者は実験および理論検討の双方から、欠陥群が素子作製中に導入され非発光中心として働くことを見出した。
このように、結晶欠陥409による非発光中心を抑制することができなければ、窒化物半導体による紫外発光素子400が設計通りの素子性能を示すことは極めて困難であると言わざるを得ない。
続いて、窒化物半導体による紫外発光素子400を構成する転位終端部404の物性について説明する。
上述した通り、実効Al組成を増やした窒化物半導体において、欠陥密度を低減させることは極めて困難性が高い。しかし、結晶欠陥(格子欠陥、転位)409の物性を制御・変更することは実は可能である。しかも、結晶の健全部分の物性はそのまま維持させつつ、結晶欠陥(格子欠陥、転位)409の領域のみ選択的に物性を制御・変更させることで、結晶欠陥(格子欠陥、転位)409を経由する光電変換過程のみを選択的に遮断する手段を発明者は見出した。
結晶欠陥(格子欠陥、転位)409を経由する光電変換過程を選択的に遮断するためには、その物性の制御・変更には次の方針がある。それは実効バンドギャップエネルギーの増大である。
転位終端部404は、面内を一様に覆うことなく不連続なアイランド形状を有しており、その被覆率は1未満となっている。さらに、そのアイランド(ディスク)は、結晶欠陥409を含むように選択的に形成され、もしくは結晶欠陥409にパッチを張るように形成される。これにより、結晶欠陥409の一部は、転位終端部404によって終端化されることがある。
転位終端部404がアイランド(ディスク)状の不連続被覆の形状を有していることで、結晶欠陥409の存在する局所エリアに選択的に形成され、結晶の健全部分には形成されていない領域が存在することである。これにより、電荷担体(キャリア)の輸送経路が阻害されずに、効率よく電流注入することができる。
欠陥終端部404の実効バンドギャップエネルギーは、それを含むマトリクス材料の実効バンドギャップエネルギーよりも大きくなるように構成される。例えば、欠陥終端部404の実効バンドギャップエネルギーは、活性層403の実効バンドギャップエネルギーより大きくなり、そのエネルギー差は300meV以上あることが好ましく、さらには500meV以上あることが好ましい。
一方、欠陥終端部404がn−InGaAl1−x−yN層401もしくはp−InGaAl1−x−yN層402の少なくともいずれかに含まれるような構成である場合は、同様に、欠陥終端部404の実効バンドギャップエネルギーは、それを含むn−InGaAl1−x−yN層401もしくはp−InGaAl1−x−yN層402の少なくともいずれかの実効バンドギャップエネルギーより大きくなるように構成される。そのエネルギー差は300meV以上あることが好ましく、さらには500meV以上あることが好ましい。
欠陥終端部404の構成にも示されているが、欠陥終端部404とは、結晶欠陥409それ自体の物性が制御・変更され、その実効バンドギャップが増大されたものでもよいし、結晶欠陥409に選択的に付加されるものであってもよい。
欠陥領域の実効バンドギャップエネルギーを増大させる効果について説明する。欠陥終端部404の実効バンドギャップエネルギーは、活性層403の実効バンドギャップエネルギーより大きくなることで、欠陥領域のキャリアを空乏化させることができ、実質的な抵抗率を増加させることができる。すなわち、欠陥終端部404の抵抗率は、n−InGaAl1−x−yN層401もしくはp−InGaAl1−x−yN層402もしくは活性層403の各抵抗率の少なくともいずれかより大きくなるように構成される。
活性層403に注入された電荷担体(キャリア)は、相対的に抵抗率の低い、もしくは実効バンドギャップの小さい結晶の健全部分のみに選択的に流れ混むことになり、キャリアは結晶欠陥409を常に迂回し近寄ることは無い。すなわち、結晶欠陥409が高密度に存在していたとしても、キャリアはその実質的にその存在を感じること無く、結晶欠陥(格子欠陥、転位)409が終端化された状態と見なすことができる。その結果、結晶欠陥(格子欠陥、転位)409を経由する光電変換過程のみが選択的に遮断されることになる。
また、電流注入などで、結晶欠陥409を既に流れる漏れ電流成分が存在する場合でも、その結晶欠陥に沿って移動するキャリアは、欠陥終端部404に必ず巡り会い、直ちにキャリアは結晶欠陥409を迂回し始める。そのため、紫外発光素子400のn型電極からp型電極間に流れる電流全体の中から、結晶欠陥409を流れる電流成分のみが遮断された特性を示すことが可能となる。
以上、転位終端部404の作用効果について述べたが、結晶欠陥409を介した光電変換過程を適切に遮断するために、転位終端部404は複数挿入されても良いし、n−InGaAl1−x−yN層401と、p−InGaAl1−x−yN層402のいずれかに挿入されても良い。
このように、結晶欠陥409を介した光電変換過程が遮断され大幅に低減されることによって、実効Al組成が20%を超える窒化物半導体による紫外発光素子400においても、設計通りの素子性能を示すことができるようになる。
次に、転位終端部404の実効バンドギャップエネルギーをどのようにして増大させるのか、その手法について述べる。
本実施形態に係る紫外発光素子400は、前述した通り窒化物半導体InGaAl1−x−yNによって構成されている。この物性を制御・変更し、実効バンドギャップエネルギーを増大させるためには、転位終端部404のみの混晶組成(x、y)を選択的に変化させる、もしくは構成元素と異なる元素を選択的に取り込ませる必要がある。
転位終端部404の選択的な混晶組成変化について述べる。窒化物半導体の結晶成長では、有機金属気相成長(MOVPE)法もしくは分子線エピタキシ−(MBE)法が一般的である。しかし、これらの結晶成長技術は成長表面に一様に原料供給することはできるが、結晶欠陥409のみに選択的な原料供給することは簡単ではない。
ところが、発明者は分光エリプソメトリなどによる成長表面その場観察を通じて、この選択的な原料供給を可能とする手段を見出した。この原料供給プロセスの詳細は後に述べるが、原料の過剰供給、余剰原料の蒸発・脱離、蒸発中の表面吸着原料の泳動(マイグレーション)の各素過程を制御することで、結晶欠陥409が健全部分に比べて強い原料吸着効果を発現することを巧み利用する。その結果として、意図した原料を凝集させ、結晶欠陥409のみに選択的に取り込ませることができる。
この原料吸着効果によって、例えば、アルミニウム(Al)もしくはホウ素(B)を結晶欠陥409に選択的に凝集・吸着させることによって、それに続く結晶成長の結果、AlもしくはBが凝集している領域のみの実効バンドギャップエネルギーが増大され抵抗率が上がるために、欠陥終端部404として機能することを、発明者は見出した。
また、この原料吸着効果によって、例えば、マグネシウム(Mg)を結晶欠陥409に選択的に凝集・吸着させることによって、それに続く結晶成長の結果、Mgが凝集している領域のみn型伝導性が補償され高抵抗化し欠陥終端部404として機能する、または、Mgが凝集している領域のみp型伝導性を示し空乏層が形成され、欠陥終端部404として機能することを、発明者は見出した。
また、この原料吸着効果によって、例えば、酸素を結晶欠陥409に選択的に凝集・吸着させることによって、それに続く結晶成長の結果、酸素が凝集している領域のみ実効バンドギャップエネルギーが増大されたIII族酸化物もしくはIII族酸窒化物が形成され、欠陥終端部404として機能することを、発明者は見出した。
また、この原料吸着効果によって、例えば、Alと酸素、Mgと酸素、またはシリコン(Si)と酸素を結晶欠陥4409に選択的に凝集・吸着させることによって、それに続く結晶成長の結果、これらのいずれかが凝集している領域のみ実効バンドギャップエネルギーが増大された酸化物もしくは酸窒化物が形成され、欠陥終端部404として機能することを、発明者は見出した。
また、この原料吸着効果によって、例えば、Alと酸素、Mgと酸素、またはシリコン(Si)と酸素を結晶欠陥409に選択的に凝集・吸着させることによって、それに続く結晶成長の結果、これらが凝集している領域のみ窒化物半導体とは異なる結晶構造となり高抵抗化し、欠陥終端部404として機能することを、発明者は見出した。
また、この原料吸着効果によって、例えば、Alと酸素、Mgと酸素、またはシリコン(Si)と酸素を結晶欠陥409に選択的に凝集・吸着させることによって、それに続く結晶成長の結果、これらが凝集している領域のみアモルファス構造もしくは多結晶・微結晶となり高抵抗化し、欠陥終端部404として機能することを、発明者は見出した。
以上、転位終端部404の作用効果について述べたが、結晶欠陥409を介した光電変換過程を適切に遮断するために、転位終端部404は複数挿入されても良いし、n−InGaAl1−x−yN層401と、p−InGaAl1−x−yN層402のいずれかに挿入されても良い。
このように、結晶欠陥409を介した光電変換過程が遮断され大幅に低減されることによって、実効Al組成が20%を超える窒化物半導体による紫外発光素子400においても、設計通りの素子性能を示すことができるようになる。
[変形例]
以上述べた本発明の特徴である欠陥終端部によって、素子中に含まれる格子欠陥、結晶欠陥、転位などが引き起こす素子性能劣化の問題を、それらを不活性化もしくは終端化(パッシベーション)することで解決することができる。この作用効果は、光電変換素子のみならず、例えば、高耐圧ダイオード、パワートランジスター、アモルファス透明TFTにも適用することができる。
以上、本実施形態により、簡便かつ効果的に、接合リーク電流を減少させることのできる光電変換素子及び非発光中心を抑制した発光素子、さらにそれらの製造方法を提供することができる。
また、本願発明は、上記実施形態によって限定されるものではなく、発明の意図から逸脱しない範囲での、変形、置換、省略がなされてもよいものとする。
本発明は、太陽電池、紫外発光素子の光電変換素子、高耐圧ダイオード、パワートランジスター、さらにアモルファス透明TFTとして産業上の利用可能性がある。

Claims (34)

  1. 第一の伝導層と、光吸収層と、第二の伝導層と、
    を順次積層した光電変換素子であって、
    前記光吸収層は、窒化インジウム層が複数積層された構造を備え、
    前記窒化インジウム層上のいずれかに、転位又は欠陥を覆うパッチが形成されてなる
    光電変換素子。
  2. 前記パッチは、酸化物、窒化物、及び酸窒化物の少なくともいずれかである
    請求項1記載の光電変換素子。
  3. 前記パッチは、前記窒化インジウム層の転位又は粒界の周囲を選択的に覆う一方、前記窒化インジウム層の転位又は粒界のない領域を覆わないよう形成されている
    請求項1記載の光電変換素子。
  4. 第一の伝導層を形成する工程と、光吸収層を形成する工程と、第二の伝導層を形成する工程と、
    を備えた光電変換素子の製造方法であって、
    前記光吸収層を形成する工程は、
    窒化インジウム層を形成する工程と、
    前記窒化インジウム層上にパッチを形成する工程と、
    を含む光電変換素子の製造方法。
  5. 前記パッチを形成する工程は、さらに、窒化インジウム層上に金属膜を形成する工程と、前記金属膜を酸化又は窒化処理する工程を含む、
    請求項4記載の光電変換素子の製造方法。
  6. 前記金属膜を酸化又は窒化処理する工程は、前記金属膜を酸化又は窒化処理することで、生成された金属酸化膜又は金属窒化膜を、前記窒化インジウム層に生じた転位又は粒界を自己組織的に覆うパッチとして形成する
    請求項5記載の光電変換素子の製造方法。
  7. 前記パッチを形成する工程は、複数の窒化インジウム層上において行われる
    請求項4記載の光電変換素子の製造方法。
  8. 第1伝導型からなる第1半導体層と、
    前記第1半導体層上に形成される活性層と、
    前記活性層上に形成され、第2伝導型からなる第2半導体層と、
    を備える光電変換素子であって、
    前記第1半導体層および前記活性層および前記第2半導体層の少なくともいずれかが、転位不活性部を有する
    光電変換素子。
  9. 前記転位不活性部は、結晶欠陥を含むように形成される
    請求項8に記載の光電変換素子。
  10. 前記転位不活性部は、結晶欠陥上に形成される
    請求項8に記載の光電変換素子。
  11. 前記転位不活性部の膜厚は、2分子層以下である
    請求項8に記載の光電変換素子。
  12. 前記転位不活性部の前記膜厚は、1分子層以下である
    請求項11に記載の光電変換素子。
  13. 前記転位不活性部の表面被覆率は、1未満である
    請求項8に記載の光電変換素子。
  14. 前記第1半導体層は第1バンドギャップエネルギーを有し、
    前記第2半導体層は第2バンドギャップエネルギーを有し、
    前記活性層は第3バンドギャップエネルギーを有し、
    前記転位不活性部は第4バンドギャップエネルギーを有し、
    前記第4バンドギャップエネルギーは、前記第1バンドギャップエネルギーおよび前記第2バンドギャップエネルギーおよび前記第3バンドギャップエネルギーの少なくともいずれかよりも大きい
    請求項8に記載の光電変換素子。
  15. 前記第3バンドギャップエネルギーは、前記第1バンドギャップエネルギーおよび前記第2バンドギャップエネルギーの少なくともいずれかよりも小さい
    請求項14に記載の光電変換素子。
  16. 前記第1半導体層は第1抵抗率を有し、
    前記第2半導体層は第2抵抗率を有し、
    前記活性層は第3抵抗率を有し、
    前記転位不活性部は第4抵抗率を有し、
    前記第4抵抗率は、前記第1抵抗率および前記第2抵抗率および前記第3抵抗率の少なくともいずれかよりも大きい
    請求項8に記載の光電変換素子。
  17. 前記活性層は第3伝導型を有し、
    前記転位不活性部は第4伝導型を有し、
    前記第4伝導型は、前記第1伝導型および前記第1伝導型および前記第3伝導型の少なくともいずれかと異なる
    請求項8に記載の光電変換素子。
  18. 前記第1半導体層および前記第2半導体層および前記活性層の少なくともいずれかは、窒化物半導体InGaAl1−x−yNであり、
    前記xおよびyの範囲は、0≦x≦1かつ0≦y≦1かつ0≦x+y≦1である
    請求項8に記載の光電変換素子。
  19. 前記転位不活性部は、前記第1半導体層および前記第2半導体層および前記活性層の少なくともいずれかの構成元素と異価数元素を含む
    請求項8に記載の光電変換素子。
  20. 前記転位不活性部は、前記第1半導体層および前記第2半導体層および前記活性層の少なくともいずれかの構成元素よりも電気陰性度が大きい元素を含む
    請求項8に記載の光電変換素子。
  21. 前記転位不活性部は、酸素および窒素の少なくともいずれかを含む
    請求項8に記載の光電変換素子。
  22. 前記転位不活性部は、アルミニウムおよびホウ素およびシリコンおよびマグネシウムの少なくともいずれかを含む
    請求項8に記載の光電変換素子。
  23. 前記転位不活性部は、前記第1半導体層および前記第2半導体層および前記活性層の少なくともいずれかの結晶構造と異なる結晶構造を有する
    請求項8に記載の光電変換素子。
  24. 前記第1半導体層および前記第2半導体層および前記活性層および前記転位不活性部の少なくともいずれかの結晶構造は、多結晶もしくはアモルファスである
    請求項8に記載の光電変換素子。
  25. 第1伝導型からなる第1半導体層と、前記第1半導体層上に形成される活性層と、前記活性層上に形成され、第2伝導型からなる第2半導体層と、前記第1半導体層および前記活性層および前記第2半導体層の少なくともいずれかが、転位不活性部を備える光電変換素子の製造方法であって、
    前記第1半導体層を形成する第1工程と、
    前記第2半導体層を形成する第2工程と、
    前記活性層を形成する第3工程と、
    前記転位不活性部を形成する第4工程と、
    を有する光電変換素子の製造方法。
  26. 前記第4工程が、
    第1原料を供給する工程と、
    第2原料を供給する工程と、
    を有する請求項25に記載の光電変換素子の製造方法。
  27. 前記第4工程が、
    前記第1原料を除去する工程と、
    前記第2原料を凝縮させる工程と、
    を有する請求項26に記載の光電変換素子の製造方法。
  28. 前記第4工程が、第3原料を供給する工程
    を有する請求項25に記載の光電変換素子の製造方法。
  29. 前記第1原料と前記第2原料とが非混和系である
    請求項26に記載の光電変換素子の製造方法。
  30. 前記第1原料を供給する前記工程で、
    前記第1原料の供給量が、2分子層以上となるよう制御された
    請求項26に記載の光電変換素子の製造方法。
  31. 前記第4工程が、前記第1原料もしくは前記第2原料の少なくともいずれかの融点よりも高温で行われる
    請求項26に記載の光電変換素子の製造方法。
  32. 前記第1原料が、ガリウムもしくはインジウムの少なくともいずれかであり、
    前記第2原料がアルミニウムである
    請求項26に記載の光電変換素子の製造方法。
  33. 前記第3原料が、窒素もしくは酸素の少なくともいずれかである
    請求項28に記載の光電変換素子の製造方法。
  34. 前記第3原料が、水もしくは亜酸化窒素の少なくともいずれかである
    請求項28に記載の光電変換素子の製造方法。
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