JP2016109111A - 急速燃焼による対向ピストン内燃機関 - Google Patents
急速燃焼による対向ピストン内燃機関 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】高圧縮比を採用すると共にトリガー燃焼室の急速燃焼によってスキッシュ部の混合気を自着火させて超急速燃焼を達成し、これにより排気・冷却・摩擦の各損失を減少させ、内燃機関の熱効率を向上させること。冷却損失を減少させる為、S/V比を大幅に減少させる事ができる対向ピストン機構を採用して超ロングスロトーク化した。【解決手段】クランク軸2と連動する一対のピストン1がシリンダー内で互いに反対方向へ動き合う対向ピストン内燃機関において、各々のピストン1の頂面間に上死点位置において所定の容積を有するトリガー燃焼室3とスキッシュ部4とを備え、火炎伝播距離を短縮したトリガー燃焼室3を複数の着火源(点火プラグの電気火花の様なもの)により急速燃焼させ、その上昇した燃焼圧力・温度によってスキッシュ部4の混合気を高負荷域においては圧縮上死点以降で自着火させる様にした。【選択図】図1
Description
本発明は電気火花の様な着火源によりトリガー燃焼室を急速燃焼させ、その上昇した燃焼圧力・温度により(それを引き金として)スキッシュ部の混合気を膨張過程で自着火させ、超急速燃焼を行なって高効率を達成する対向ピストン内燃機関に関するものである。
内燃機関の高効率化を達成するには排気損失と冷却損失とを低減させる必要があるが、前者を低減させる為には高圧縮比化が有効である。
しかしながら従来では高圧縮比化を実現すると燃焼室が偏平となり、S/V比(燃焼室の表面積と容積との比)が大きくなって冷却損失が増し、期待通りの効果が得られない。特に圧縮比よりも膨張比を大とするミラーサイクルでは燃焼室のS/V比は膨張比の方の値となる為、その効果はかなり小さくなる。又、従来では電気火花の様な着火源による着火時期は上死点前である為、負の仕事が発生する上、最高燃焼圧力・温度の上昇により摩擦損失・冷却損失が増大して熱効率の向上が阻まれている。従って着火時期を上死点又はそれ以降とすれば最高燃焼圧力・温度の低下により摩擦損失、冷却損失が減少して熱効率が向上するが、その為には急速燃焼が不可欠であり、実はこれは実現が極めて困難である。
しかしながら従来では高圧縮比化を実現すると燃焼室が偏平となり、S/V比(燃焼室の表面積と容積との比)が大きくなって冷却損失が増し、期待通りの効果が得られない。特に圧縮比よりも膨張比を大とするミラーサイクルでは燃焼室のS/V比は膨張比の方の値となる為、その効果はかなり小さくなる。又、従来では電気火花の様な着火源による着火時期は上死点前である為、負の仕事が発生する上、最高燃焼圧力・温度の上昇により摩擦損失・冷却損失が増大して熱効率の向上が阻まれている。従って着火時期を上死点又はそれ以降とすれば最高燃焼圧力・温度の低下により摩擦損失、冷却損失が減少して熱効率が向上するが、その為には急速燃焼が不可欠であり、実はこれは実現が極めて困難である。
本発明の目的は排気・冷却・摩擦の各損失を減少させて内燃機関の高効率化を達成する事である。そこで本発明ではトリガー燃焼室を形成して、これを着火源による火炎伝播によって急速燃焼させ、その上昇した燃焼圧力・温度によりスキッシュ部の混合気を膨張過程で自着火させて全体を急速燃焼させるのである(燃焼期間をクランク角で従来の1/3の15°位にする)。
こうすると着火時期は大幅に遅らせる事になり、例えば圧縮上死点又はそれ以降とする事ができ(部分負荷域では圧縮上死点の僅か手前の事もあるが)、これにより圧縮上死点前燃焼は起らないから(膨張過程での燃焼)最高燃焼圧力・温度が低下して摩擦損失、冷却損失が大幅に減少する。加えて着火時期を大幅に遅らせて上死点又はそれ以降とする事によりノッキングが起らないから高圧縮比を採用し、かくして高効率化を実現する事ができる。一般に高圧縮比化を進めてゆくと燃焼室が偏平になり、前記S/V比が大となって冷却損失が増加し、期待通りの効果が得られない。これは圧縮比よりも膨張比を大とするミラーサイクルを採用したり、圧縮・膨張の有効行程が短かくなる2サイクル機関では深刻な問題となる。これに対処するにはピストンの行程と直径との比(ストローク/ボア比)を大にしてロングストローク化を進め、上記S/V比を減少させる事が有効である。そこで本発明では従来では不可能な超ロングストローク化を実現できる対向ピストン機構を採用し、高圧縮比ながらS/V比を小さくして冷却損失を減少させているのである。以上の様に本発明の目的は排気・冷却・摩擦の各損失を減少させて内燃機関の高効率化を達成するところにある。
こうすると着火時期は大幅に遅らせる事になり、例えば圧縮上死点又はそれ以降とする事ができ(部分負荷域では圧縮上死点の僅か手前の事もあるが)、これにより圧縮上死点前燃焼は起らないから(膨張過程での燃焼)最高燃焼圧力・温度が低下して摩擦損失、冷却損失が大幅に減少する。加えて着火時期を大幅に遅らせて上死点又はそれ以降とする事によりノッキングが起らないから高圧縮比を採用し、かくして高効率化を実現する事ができる。一般に高圧縮比化を進めてゆくと燃焼室が偏平になり、前記S/V比が大となって冷却損失が増加し、期待通りの効果が得られない。これは圧縮比よりも膨張比を大とするミラーサイクルを採用したり、圧縮・膨張の有効行程が短かくなる2サイクル機関では深刻な問題となる。これに対処するにはピストンの行程と直径との比(ストローク/ボア比)を大にしてロングストローク化を進め、上記S/V比を減少させる事が有効である。そこで本発明では従来では不可能な超ロングストローク化を実現できる対向ピストン機構を採用し、高圧縮比ながらS/V比を小さくして冷却損失を減少させているのである。以上の様に本発明の目的は排気・冷却・摩擦の各損失を減少させて内燃機関の高効率化を達成するところにある。
本発明は上記目的を達成する為、対向ピストン内燃機関において、各々のピストン頂面間にピストン上死点位置において所定の容積を有するトリガー燃焼室とスキッシュ部とを備え、複数の着火源により火炎伝播距離を短縮したトリガー燃焼室を着火源により急速燃焼させ、その上昇した燃焼圧力・温度によりスキッシュ部の混合気を高負荷域においては圧縮上死点以降に自着火させる様にした。
内燃機関の高効率化を達成するには着火源による着火時期を大幅に遅らせ、例えば圧縮上死点又はそれ以降とするのが良く、それは圧縮上死点前燃焼が起らないから負の仕事は発生せず、最高燃焼圧力・温度の低下により摩擦損失、冷却損失が減少するからである。しかしその為には燃焼が極めて短期間に完了する超急速燃焼が不可欠であり、換言すればピストン圧縮によって起る混合気の自着火が良いが、圧力上昇率が過大であり、ノッキングと云う有害な現象を引き起す。本発明では先ず火炎伝播距離を極めて短かくしたトリガー燃焼室で着火源により急速燃焼を引き起し(燃焼期間はクランク角で従来の1/3の15°位)、次にこの結果上昇した燃焼圧力・温度でスキッシュ部の混合気を自着火させ、超急速燃焼させているのである(この自着火はトリガー燃焼室の燃焼が進む途中で起る)。この場合、スキッシュ部の自着火は膨張行程で行なわれ、かつ自着火する混合気は少量(又は比較的少量)であるから、衝撃的燃焼とはならない(ノッキングとはならない)。以上の様に本発明では超急速燃焼が可能であり、着火時期を大幅に遅らせ、例えば圧縮上死点又はそれ以降に設定できるから、圧圧縮上死点前の負の仕事は発生せず、最高燃焼圧力・温度の低下により摩擦損失・冷却損失が減少し、カルノーサイクルが描く等温膨張に近くなり、加えて比熱比の増加、熱解離損失の減少効果も加わって熱効率は大幅に改善される。又、着火時期を上死点又はそれ以降とする事ができるから、圧縮上死点前の冷却損失もなく、高圧縮比を採用してもノッキングの心配はなく、更に熱効率を改善する事ができる。
そして最高燃焼温度が低下するから、ピストンなどの熱負荷も減少する。
一般に高圧縮比化を進めてゆくと燃焼室が偏平となり、S/V比が大となって冷却損失が増加する。これは圧縮比よりも膨張比の方が大きいミラーサイクルを採用したり、圧縮・膨張の有効行程が短かくなる2サイクル機関では深刻な問題で、S/V比が過大となって冷却損失が増加し、熱効率改善効果が非常に小さくなる。これに対処するには超ロングストローク化(ストロークとボア径との比、ストローク/ボア比を例えば1.7〜2.5程度とする)するのが良いが、ピストン速度が過大となって現実には無理がある。そこで本発明では熟慮の結果、従来では不可能な超ロングストロークを実現できる対向ピストン機構を採用して(超ロングストロークでも各ピストン速度は小さい)。S/V比を劇的に減少させ、熱効率改善効果を最大限に発揮できる様にしているのである。即ち、対向ピストン機構の採用なくして高圧縮比化の効果は少ないのである。従って有効ストロークが短かい2サイクル機関には極めて有効である。
対向ピストン機構では燃焼室はピストン頂面間に挟まれる如く形成されるから(従来ではピストン頂面と冷たいシリンダーヘッドとに挟まれる)、冷却損失が更に少なくなる。近年、内燃機関の熱効率を改善する手段として注目されているPCCI燃焼法(予混合圧縮着火)は圧縮端温度が1000K以上必要と言われ、本発明を対向ピストン式2サイクル機関として実用化すれば、上記の様に高圧縮比を採用できること、高温の既燃ガスが多量に内部EGRとして残存していること等の理由により圧縮端温度を容易に1000K以上に高め、かつ上記の様に超ロングストローク化によりS/V比が減少して、冷却損失の低減により容易にPCCI燃焼を極低負荷域でも引き起す事ができる(2サイクル機関の欠点である不整燃焼を解消する事ができる)。
そして最高燃焼温度が低下するから、ピストンなどの熱負荷も減少する。
一般に高圧縮比化を進めてゆくと燃焼室が偏平となり、S/V比が大となって冷却損失が増加する。これは圧縮比よりも膨張比の方が大きいミラーサイクルを採用したり、圧縮・膨張の有効行程が短かくなる2サイクル機関では深刻な問題で、S/V比が過大となって冷却損失が増加し、熱効率改善効果が非常に小さくなる。これに対処するには超ロングストローク化(ストロークとボア径との比、ストローク/ボア比を例えば1.7〜2.5程度とする)するのが良いが、ピストン速度が過大となって現実には無理がある。そこで本発明では熟慮の結果、従来では不可能な超ロングストロークを実現できる対向ピストン機構を採用して(超ロングストロークでも各ピストン速度は小さい)。S/V比を劇的に減少させ、熱効率改善効果を最大限に発揮できる様にしているのである。即ち、対向ピストン機構の採用なくして高圧縮比化の効果は少ないのである。従って有効ストロークが短かい2サイクル機関には極めて有効である。
対向ピストン機構では燃焼室はピストン頂面間に挟まれる如く形成されるから(従来ではピストン頂面と冷たいシリンダーヘッドとに挟まれる)、冷却損失が更に少なくなる。近年、内燃機関の熱効率を改善する手段として注目されているPCCI燃焼法(予混合圧縮着火)は圧縮端温度が1000K以上必要と言われ、本発明を対向ピストン式2サイクル機関として実用化すれば、上記の様に高圧縮比を採用できること、高温の既燃ガスが多量に内部EGRとして残存していること等の理由により圧縮端温度を容易に1000K以上に高め、かつ上記の様に超ロングストローク化によりS/V比が減少して、冷却損失の低減により容易にPCCI燃焼を極低負荷域でも引き起す事ができる(2サイクル機関の欠点である不整燃焼を解消する事ができる)。
図1(イ)は本発明による対向ピストン内燃機関を示し、クランク軸2と(連接棒を介して)連動するピストン1はシリンダー内で互いに反対方向へ動き、各々のクランク軸2は歯車列で互いに連結している(図では各々のクランク軸2は同一方向へ回転する)。図1(イ)はクランク軸1回転当り1回の膨張行程(膨張過程)を有する2サイクル機関であり、9は掃気ポンプとしてのルーツブロワで、ピストン1により掃気通路6が開かれると(その前に排気通路10がもう一方のピストンにより開かれ、シリンダー内圧力を排気ブローダウンにより低下させておく)、掃気ポンプ9からの加圧された空気によってシリンダー内が掃気される。この掃気ポンプ9はクランク軸2によりベルト等を介して駆動される場合は変速機を介して駆動し、シリンダー内既燃ガスと空気との比率を制御できる様にするのが良い。しかしながら電動モーターで駆動すれば容易に、かつ自在に掃気ポンプ9の回転速度を制御できるから、これが最も望ましい。もちろん掃気ポンプ9を使わず、クランク室を用いるクランク室圧縮式により掃気を行なっても良い。7は掃気制御弁、11は排気制御弁で、これらは必要不可欠なものではない。14は燃料噴射弁、13は排気を浄化する為の触媒コンバーター(酸化触媒)である。
燃料噴射弁14は排気通路10が閉鎖された後に燃料を噴射する。
ECU15は所定のクランク角毎にクランク角信号を出力するクランク角センサーからの信号などの各種センサーからの信号が入力される。ECU15はROM、RAM、CPU、入力・出力ポート等から成るマイクロコンピューターを中心として構成され、これらは双方性バスによって相互に接続されている。ECU15にはエンジンの運転状態の把握に必要なパラメーター用の各種センサー、例えば上記クランク角センサー、掃気ポンプ9の回転速度センサー、エンジンに吸入される空気流量センサー、アクセル開度を検出するアクセルセンサー、エンジン冷却水温を検出する水温センサー、大気圧センサー、燃焼圧センサー、ノックセンサー等からの各信号が対応するA/Dコンバーターを介して入力ポートに送信される。尚、エンジン回転速度はクランク角センサーからの出力信号により知る事ができる。又、出力ポートは燃料噴射弁14、点火プラグ5、アクチュエーター8、12等と各々対応する駆動回路を介して接続され、各々の制御信号を送信する、ROMには燃料噴射弁14の噴射量や噴射時期を決定する為の制御ルーチン、点火プラグ5への通電を制御する為の制御ルーチン等のエンジンを制御する為の制御ルーチンやそれらに用いられる制御値を含むマップが記憶されている。RAMに記憶されている各種データーはエンジン回転速度センサーが信号を出力する度に最新のデータに置き換えられる。CPUはROMに記憶されているアプリケーションプログラムに従って動作し、燃料の噴射制御や点火時期制御等を実行する。
燃料噴射弁14は排気通路10が閉鎖された後に燃料を噴射する。
ECU15は所定のクランク角毎にクランク角信号を出力するクランク角センサーからの信号などの各種センサーからの信号が入力される。ECU15はROM、RAM、CPU、入力・出力ポート等から成るマイクロコンピューターを中心として構成され、これらは双方性バスによって相互に接続されている。ECU15にはエンジンの運転状態の把握に必要なパラメーター用の各種センサー、例えば上記クランク角センサー、掃気ポンプ9の回転速度センサー、エンジンに吸入される空気流量センサー、アクセル開度を検出するアクセルセンサー、エンジン冷却水温を検出する水温センサー、大気圧センサー、燃焼圧センサー、ノックセンサー等からの各信号が対応するA/Dコンバーターを介して入力ポートに送信される。尚、エンジン回転速度はクランク角センサーからの出力信号により知る事ができる。又、出力ポートは燃料噴射弁14、点火プラグ5、アクチュエーター8、12等と各々対応する駆動回路を介して接続され、各々の制御信号を送信する、ROMには燃料噴射弁14の噴射量や噴射時期を決定する為の制御ルーチン、点火プラグ5への通電を制御する為の制御ルーチン等のエンジンを制御する為の制御ルーチンやそれらに用いられる制御値を含むマップが記憶されている。RAMに記憶されている各種データーはエンジン回転速度センサーが信号を出力する度に最新のデータに置き換えられる。CPUはROMに記憶されているアプリケーションプログラムに従って動作し、燃料の噴射制御や点火時期制御等を実行する。
本発明では点火プラグ5による電気火花の様な着火源(他にガソリンや天然ガスよりも低圧縮比で着火し易い軽油やDMEを噴射して得られる火炎等も)の着火によりトリガー燃焼室3を急速燃焼させ(手段としては点火プラグ5を2個備えるなど)、その上昇した燃焼圧力・温度によりスキッシュ部4の混合気を高負荷域においては圧縮上死点以降に自着火させる様にしているのである(低負荷域では圧縮上死点より僅か手前の事もある)。本発明ではピストン頂面間に圧縮上死点において所定の容積を有するトリガー燃焼室3とスキッシュ部4とが形成される様に構成している。図1(ロ)は図1(イ)のトリガー燃焼室3をシリンダー軸方向から見た図で、トリガー燃焼室3は点火プラグ5を2個有しており(2個の着火源を有する)、両着火源間の距離hはピストン直径dの1/2位に取る(火炎伝播距離はd/4)。計算を簡単にする為、各々のピストンのストロークをdに等しいとするとピストン排気量は2×π/4・d3であり、この排気量と等しい図1(ホ)の従来の機関の(対向ピストン式ではない)ピストン直径をDとすれば(ストロークもDとする)、2×π/4・d3=π/4D3と云う関係式を得る。従ってd/D=
と1/2.5に短縮されるが、実際は図1(ホ)の従来では図示の如く火炎面がピストン頂面に到達した後は火炎伝播速度が遅くなる為(火炎伝播距離が長くなるのと同様)、この値は1/3位になると考えて良い。
更に本発明では高負荷域では着火時期は上死点又はそれ以降に制御される事になる為(低負荷域では上死点より僅か手前のこともある)、ノッキングが抑制されて高圧縮比が採用できるから(燃料がガソリンの場合で14〜15位、天然ガスの場合で16〜17位)、圧縮端温度の上昇により燃料の低温酸化反応が進んで火炎伝播速度が増す事を考慮に入れると、上記値は確実に1/3に短縮される(図1(ハ)の様に点火プラグを3個にすれば更に短縮される)。この様に本発明ではトリガー燃焼室3により火炎伝播距離が1/3に短縮され、換言すれば従来のクランク角で40°〜50°要した燃焼期間が1/3の15°位に短縮されるのである。
ところでトリガー燃焼室3が急速燃焼したとしてもスキッシュ部4の燃焼がトリガー燃焼室3からの火炎伝播に頼る限り大幅に遅れ、全体として急速燃焼とはならない。そこでトリガー燃焼室3の燃焼が始まると、その上昇した圧力・温度によりスキッシュ部4の混合気に自着火を起させ(この自着火はトリガー燃焼室3が急速燃焼しないと実現しない)、燃焼が一瞬の内に完結し、かくして全体として超急速燃焼が可能となる様にしたのである(スキッシュ部4の自着火はトリガー燃焼室3の燃焼が完結する前に起るが、この時期は圧縮上死点におけるスキッシュ部4の間隔の大きさによって変える事ができる。)この場合、スキッシュ部4の自着火は膨張過程で起るから、ノッキングの様な衝撃的な燃焼とはならない(図1(ニ)の様にスキッシュ部を間隔の大きい部分4aと間隔の小さい部分4bとに分ければ、自着火は先ず前者で起り、続いて後者で起ると云う様に二段階で起る様になるから、より一層衝撃的燃焼は回避される)。以上の様に本発明では超急速燃焼が可能であり(燃焼期間はクランク角で従来の1/3の15°位)、この結果着火時期を大幅に遅らせ、例えば圧縮上死点又はそれ以降に設定できるから(低負荷域では上死点より僅か手前のこともあるが)、圧縮上死点前の負の仕事は発生せず、最高燃焼圧力・温度の低下により摩擦損失、冷却損失が減少し、カルノーサイクルが描く等温膨張に近くなり(燃焼が始まると、それが直ちに仕事に変換される)、熱効率は大幅に改善される。又、着火時期を上死点又はそれ以降とする事ができるから、高圧縮比を採用してもノッキングの心配はなく、一段と熱効率の改善が可能である。更には対向ピストン機構の採用により(これが本発明の重要な点であるが)超ロングストローク化する事ができるから(ストローク/ボア比を1.7〜2.5程度とする)、高圧縮比ながらS/Vが小さくなって冷却損失が減少し、熱効率の大幅改善が可能となる(熱の大量逃げ道である冷たいシリンダーヘッドがない事も冷却損失を小さくする)、2サイクル機関の課題は低負荷域における不整燃焼である。
本発明では高負荷域では着火時期を上死点又はそれ以降とする事ができる為に圧縮上死点で自着火を生じない程度の高圧縮比を採用できること(高負荷域では残留ガスは掃気作用により殆どなく、従って圧縮開始時のシリンダー内温度は低い)、及び2サイクル機関では低負荷域では(掃気ポンプの回転数を制御して)多量の高温既燃ガスが残留している為に(多量の内部EGR)圧縮端温度が十分に高くなること、更には上記理由(高圧縮比採用、多量の内部EGRにより圧縮始めの温度が高いこと)により圧縮端では燃料の低温酸化作用が進んでこれによる発熱が加わること、加えて対向ピストン機構による超ロングストロークの採用によりS/V比が小さくなって冷却損失が大幅に減少する為、圧縮端温度が一層高くなること(対向ピストン機構を採用した最大の利点がここにあり、S/V比が大で冷却損失が大きいと圧縮端温度は十分に高められない)、等の理由により点火プラグなどの着火源による燃焼が不可能な領域でも自着火により燃焼させるPCCI燃焼法(予混合圧縮着火燃焼法)を行なわせる事ができ、前記不整燃焼を解消する事ができる。
この場合、排気通路10にアクチュエーター12(電動モーター)により駆動される排気制御弁11を備え、この開度を制御して急激なブローダウンを防いだり、シリンダー内の無用な排ガスの出入りを防いで排ガスの温度を低下させない工夫が望ましい。又、掃気ポンプ9により供給された空気の吹き抜けをなくす為、掃気通路6に掃気制御弁7を備え、この開度を制御して掃気をゆっくりと行なう様にする事が望ましい(空気の吹き抜けがあると、その分余計に空気を供給する必要がある為、シリンダー内温度は低下する故)。更には排気側のピストンの位相を例えば10°CA進めて、排気通路10を掃気通路6より早く閉じる様にしても、空気の吹き抜けを防ぐ事ができる。PCCI燃焼は燃焼温度が低い超希薄燃焼である為、非常に高い熱効率が得られ、NOxの発生もない。中・高負荷域では点火プラグなどの着火源により混合気を着火・燃焼させる事ができる。
2サイクル機関は空気の吹き抜けがある為、三元触媒コンバーターは使えないが(但し、掃気ポンプ9の回転速度、掃気制御弁7、排気制御弁11の開度などを上手に制御すればユニフロー掃気式であるから、空気の吹き抜けを防ぎ、三元触媒コンバーターを使う事ができる)、高負荷域では着火時期が上死点又はそれ以降である為、最高燃焼温度が低く、NOxの発生は殆ど0である(低負荷域では着火時期が上死点前の事もあるが、多量のEGRが自動的に為されるから、NOxの発生は殆ど0である)。従って、酸化触媒コンバーターで排ガスを浄化できる。PCCI燃焼はNOxの発生は殆ど0である一方、多量のHC排出があり問題であるが、2サイクル機関では低負荷域では掃気によって排出される量は少量で、大部分がシリンダー内に留まる為(掃気ポンプ9の回転を制御してシリンダー内へ送り込まれる空気量を制限している故)、これが再び圧縮されて燃焼に加わる為、HC排出は少ない(従って触媒コンバーターの負担は小さくて済む)。同時に熱効率悪化も殆どない。加えてシリンダー内に残留した燃料の分解されたラジカル成分は活性作用が大きいので、PCCI燃焼を起し易くする。PCCI燃焼法は均質混合気が原則的に良いが(この場合を特にHCCI燃焼と称する)、2サイクル機関では多量の内部EGRが為されているから、不均一混合気でもNOxの発生はない。即ち、図2(イ)の如く排気通路10が閉鎖されてから先ず燃料噴射弁14により全体に燃料を均質となる様に噴射し、次に図2(ロ)の如く燃料噴射弁14によりトリガー燃焼室3に燃料を噴射すると、図2(ハ)の如くトリガー燃焼室3には濃混合気(理論混合比よりはもちろん希薄)、スキッシュ部4には希薄混合気が形成される。こうするとトリガー燃焼室3はスキッシュ部4より燃料の低温酸化反応による発熱が多く、高温となる為、自着火が起り易く、この自着火によりスキッシュ部の自着火が誘発され、かくして全体としてアイドル状態を含む極低負荷域でもPCCI燃焼を引き起す事ができる(多量の内部EGRによりトリガー燃焼室3のNOxの発生もない)。加えてこの方法は、トリガー燃焼室3とスキッシュ部4との混合比の比率を可変化する事で自着火が起る時期を圧縮上死点又はその直後となる様に制御する事ができる利点がある。即ち、自着火が圧縮上死点前に起ったら燃焼圧センサーにより燃焼圧を検出して、トリガー燃焼室3に噴射する燃料噴射量を減らしてやれば良い(逆に失火が起ったら、トリガー燃焼室3への噴射量を増す)。かくして低負荷域における不整燃焼を解消できるが、所定の負荷以上ではトリガー燃焼室3内の混合気は点火プラグなどの着火源により着火できるので、火炎伝播燃焼に切り換える。尚、本発明では高圧縮比を採用していること、冷却損失が少ないこと、及び多量の内部EGRにより圧縮端では非常に高温となり、かつ燃料の低温酸化反応も進んでいる事などにより電気火花の様な着火源の刺激により(複数回のスパーク実施も含む)PCCI燃焼が引き起される可能性があるから、これを利用して着火源の着火時期によりPCCI燃焼の開始時期を制御する事もできる。次に2サイクル機関の低負荷域における不整燃焼を解消する別の方法として層状給気燃焼法を説明すると、図2(イ)の状態では燃料は噴射しないが、図2(ロ)の状態で全量トリガー燃焼室3内に噴射するのである(トリガー燃焼室3の容積は図1(イ)の場合と異なる)。この場合、掃気通路6からシリンダー内に流入する掃気流は全てシリンダー中心を指向させてスワールを形成しない様にする。こうすると図2(ハ)の如く燃料がトリガー燃焼室3内に滞留し易くなる。以上により圧縮上死点ではトリガー燃焼室3内にのみ混合気が形成されると共に、濃い部分と希薄な部分とに分布し(均一にはならない)、かつトリガー燃焼室3には複数の点火プラグが臨んでいるから(従って点火プラグは図2(ハ)の如く3個備えるのが良い)、上記混合気の濃い部分に必らず点火プラグが巡り合って着火源による着火及びそれに続く火炎伝播燃焼が可能となり、アイドルを含む極低負荷域でも不整燃焼は解消される。この場合、多量の高温既燃ガスによる内部EGRと高圧縮比採用との相乗効果により圧縮上死点では高温となり、低温酸化作用により燃料は非常に活性化され、着火源により容易に着火が可能となるのである(着火後の火炎伝播も容易となる)。この場合、着火源による着火を確実にする手段として電気火花を複数回発生させる事も効果がある。以上の場合、多量の内部EGRが為されているから、NOxの発生はない。負荷の増大に従って図2(イ)の状態でも燃料を噴射する様にする。尚、トリガー燃焼室3内への燃料噴射は図2(ニ)の如く燃料噴射弁を圧縮上死点近くに移動した位置で噴射する様にしても良い。エンジン始動は点火プラグなどの着火源により行ない、暖機中も同様とする(濃混合気を供給)。本発明では超急速燃焼が可能なので、着火時期を圧縮上死点後に大幅に遅らせて排ガス温度を高め、触媒コンバーター13の早期活性化を図るのが良く、この場合、スキッシュ部4の自着火は起り難いと考えられ、トリガー燃焼室3からの火炎伝播に頼る事になるが、この事は却って燃焼が遅れ、排ガス温度を高めるので都合が良い。燃料が水素の場合は、超希薄混合気でも電気火花の様な着火源による着火・燃焼が可能であるから、アイドルを含む極低負荷域でもPCCI燃焼に頼る必要はない。即ち、着火源によるトリガー燃焼室の急速燃焼により全負荷域でスキッシュ部の混合気を自着火させ、超急速燃焼させる事ができる、又、水素は熱伝導が良好な為、冷却損失が増加すると言われているが、本発明では対向ピストン機構によりその欠点も解消される。
燃料が天然ガスの様に自着火が起り難いものについては次に述べる方法によってPCCI燃焼を引き起す(これはガソリンの様なものにも、もちろん適用される)。
先ず図3(イ)において副排気通路16が備えられ、ピストンにより副排気通路16が閉じられた時点での圧縮比は例えば16に設定され、排気通路10がピストンにより閉じられた時点の圧縮比は例えば19である様に設定されている。アイドル状態を含む低負荷域では制御弁17を全閉(又はほぼ全閉)とすると、圧縮比は19と高圧縮比となり、より多量の内部EGRとの相乗効果により圧縮端圧力・温度が上昇し、天然ガスの場合でも容易にPCCI燃焼を引き起す事ができる(不整燃焼の解消)。中・高負荷域では制御弁17を全開として圧縮比を16と適正に保って自着火を防ぎ、着火源によりトリガー燃焼室を急速燃焼させ、この燃焼によりスキッシュ部の自着火を誘発させて超急速燃焼を実現する。18はアクチュエーターであり、エンジン始動・暖機時も制御弁17を全閉としても良い。制御弁17を半開状態としてその開度を制御すれば、近似的に可変圧縮比が可能であり、PCCI燃焼領域を拡大する事ができる。
図3(イ)の場合、アイドル状態を含む極低負荷域では制御弁17は全閉状態(又はほぼ全閉)に保たれているから、高圧縮比となり、かつ図2(ロ)の如く燃料をトリガー燃焼室3内へ全量噴射する様にすると、燃焼室全体に均一に噴射した場合に比し燃料の低温酸化反応による発熱が加算され、確実にPCCI燃焼が起る。この場合、2サイクル機関では多量の内部EGR中に前サイクルで分解された燃料のラジカル成分が残っており、この成分がPCCI燃焼を起し易くする作用も見逃せない。
自着火が起る時期は排気制御弁11によって調整する事ができ、その開度を小さくすると着火時期は早まり、大きくすると遅くなる。もちろんこの場合、アイドル状態を含む極低負荷においても図2(イ)、(ロ)の如くスキッシュ部4及びトリガー燃焼室3内へ燃料を噴射し、両者の混合比の比率を変えて着火時期を調整する様にしても良い(制御弁17の開度を制御する方法も有効である)。2気筒2サイクル機関では、一方の気筒の掃気通路を閉鎖するだけで(燃料噴射は停止する)簡単に2気筒運転から1気筒運転に可変化でき(4サイクル機関の可変気筒化と同じ)、運転している気筒の負荷が上昇するから、あらゆる条件下でPCCI燃焼が可能であり、この方法も併用する手段も考えられる。負荷の増加に従って一定の負荷に到達したら、図2(イ)の如くスキッシュ部4にも燃料を噴射し(その分、トリガー燃焼室3内への噴射量は減らし、全体で調整する)、この間、自着火が起る時期はトリガー燃焼室3とスキッシュ部4との混合比の比率を変えて最適に調整するが、制御弁17の開度を制御しても調整する事ができる。以上においては多量の内部EGRが為されているから、NOxの発生はない。又未燃のHCが生成されても2サイクル機関では多量の内部EGRとしてシリンダー内に残留して次の燃焼過程で燃焼するから(この場合、未燃の分解された活性ラジカル成分は燃焼の際に燃焼を助け、PCCI燃焼を起し易くする)、排気通路内へ排出される量は少なく、熱効率の低下もない。負荷が更に上昇すると制御弁17は全開(又はほぼ全開)となり、トリガー燃焼室3内の混合気は点火プラグの電気火花などの着火源により燃焼が可能となり、このトリガー燃焼室3の急速燃焼に誘発されてスキッシュ部4の自着火が起り、かくして超急速燃焼が達成される。着火源による着火時期は低負荷域では上死点前のこともあるが、高負荷域ではスキッシュ部の自着火を上死点後とする為、圧縮上死点又はそれ以降とすることになる(従って、最高燃焼温度も低く、NOxの発生も殆どない)。尚、極低負荷域(アイドルも含む)では制御弁17は全閉又はほぼ全閉で、圧縮比も膨張比も高いから、この熱効率向上分をある目的に振り分ける、例えば掃気制御弁7を絞る事によって掃気空気の温度を上昇させ、PCCI燃焼を起し易くする事ができる。次に図3(ロ)において副排気通路19にはクランク軸と回転比1/1で連結するロータリ弁21が備えられ(副排気通路19は排気通路10より早く開く)、ロータリ弁21はピストンが副排気通路19を開いてから排気通路10を開くまでの期間(クランク角)は副排気通路19を閉じており、その後適当な時期にロータリ弁21は開き、ピストンが排気通路10を閉じてから所定の期間(クランク角)まで開き続ける様になっている。これにより副排気通路19がピストン又はロータリ弁21により閉じた時点での圧縮比に対して、排気通路10がピストンにより開かれた時点での膨張比の方が大となり、ミラーサイクルを描く事によって熱効率が向上する。エンジンのアイドルを含む低負荷域では(更には始動時、暖機運転時も)制御弁20を全閉とすると圧縮比(膨張比)は高圧縮比となり、圧縮端温度が高くなってPCCI燃焼を容易に引き起す事ができる。中・高負荷域では制御弁20を全開として圧縮比を適正に保って自着火を防ぎ、着火源によりトリガー燃焼室3を燃焼させ、これによりスキッシュ部4の自着火を誘発させ、超急速燃焼を達成する、図3(イ)と同様に制御弁20の開度を細かく制御すれば近似的に可変圧縮比化が可能で、PCCI燃焼領域を拡大する事ができる。
又、同じ理由により自着火の起る時期を制御する事ができ、制御弁20の開度を大きくすると自着火は遅れ、開度を小さくすると自着火早くなる。
尚、ロータリ弁21の代りにクランク軸で駆動されるカムにより開閉するスライド弁(ピストン形状)を使う事もできる。本発明においては、燃料が水素の場合は対向ピストン式2サイクル機関では熱点となる排気弁がなく、高圧縮比を採用できる(水素は自着火温度が高い)。もう1つの熱点となる点火プラグについては高熱価プラグ又は沿面プラグとし、排気弁が不要であるから点火プラグ周囲の冷却水通路を十分に大きく取って、冷却性を向上する事で対処する(点火プラグ周囲に冷却水を流す場合、ジェット噴流とすると冷却性は大幅に向上する)。この場合、高圧縮比なので高負荷域では理論混合比の80%位までの混合比として、水素特有の冷却損失の増大による熱効率悪下を防ぐのが良い(こうすると出力低下はあるが2サイクル機関であるから高出力であり、4サイクル機関に比し有利である)。水素は超希薄混合気でも良く燃焼するが、掃気ポンプの回転数を制御するなどして従来より空気で希釈する比率を高く取った方が比熱比が大で、有利と思われる。
本発明は4サイクル機関にも適用できる。即ち、図4(イ)においてロータリ弁22はクランク軸の回転の1/2に減速して駆動され、吸気行程ではロータリ弁の切欠き部23が吸気通路24に連通して吸気を吸入し、排気行程では切欠き部23が排気通路25に連通して排気する。圧縮・膨張行程ではロータリ弁22は閉じてシリンダー内の高圧燃焼ガスを密封している。
かくしてクランク軸2回転で吸気・圧縮・膨張・排気の各行程を行なう、ロータリ弁22の構造を図4(ロ)に示すが、26はピストリング状のシール(シリンダーヘッドに形成された溝に嵌め込まれ、その内周がロータリ弁22の外周に接触する)、27はピストンリング状のシール間にあって高圧ガスをシールする棒状シールである、図1で説明した様に高負荷域ではトリガー燃焼室3の急速燃焼による燃焼圧力・温度の上昇によって膨張過程でスキッシュ部4の自着火を誘発させ超急速燃焼を達成する(点火プラグなどの着火源による着火時期を高負荷域では上死点又はそれ以降とすることになる――低負荷域では上死点前のこともある)。4サイクル機関であるから、アイドルを含む極低負荷域でも燃焼は安定し、不整燃焼はない。
と1/2.5に短縮されるが、実際は図1(ホ)の従来では図示の如く火炎面がピストン頂面に到達した後は火炎伝播速度が遅くなる為(火炎伝播距離が長くなるのと同様)、この値は1/3位になると考えて良い。
更に本発明では高負荷域では着火時期は上死点又はそれ以降に制御される事になる為(低負荷域では上死点より僅か手前のこともある)、ノッキングが抑制されて高圧縮比が採用できるから(燃料がガソリンの場合で14〜15位、天然ガスの場合で16〜17位)、圧縮端温度の上昇により燃料の低温酸化反応が進んで火炎伝播速度が増す事を考慮に入れると、上記値は確実に1/3に短縮される(図1(ハ)の様に点火プラグを3個にすれば更に短縮される)。この様に本発明ではトリガー燃焼室3により火炎伝播距離が1/3に短縮され、換言すれば従来のクランク角で40°〜50°要した燃焼期間が1/3の15°位に短縮されるのである。
ところでトリガー燃焼室3が急速燃焼したとしてもスキッシュ部4の燃焼がトリガー燃焼室3からの火炎伝播に頼る限り大幅に遅れ、全体として急速燃焼とはならない。そこでトリガー燃焼室3の燃焼が始まると、その上昇した圧力・温度によりスキッシュ部4の混合気に自着火を起させ(この自着火はトリガー燃焼室3が急速燃焼しないと実現しない)、燃焼が一瞬の内に完結し、かくして全体として超急速燃焼が可能となる様にしたのである(スキッシュ部4の自着火はトリガー燃焼室3の燃焼が完結する前に起るが、この時期は圧縮上死点におけるスキッシュ部4の間隔の大きさによって変える事ができる。)この場合、スキッシュ部4の自着火は膨張過程で起るから、ノッキングの様な衝撃的な燃焼とはならない(図1(ニ)の様にスキッシュ部を間隔の大きい部分4aと間隔の小さい部分4bとに分ければ、自着火は先ず前者で起り、続いて後者で起ると云う様に二段階で起る様になるから、より一層衝撃的燃焼は回避される)。以上の様に本発明では超急速燃焼が可能であり(燃焼期間はクランク角で従来の1/3の15°位)、この結果着火時期を大幅に遅らせ、例えば圧縮上死点又はそれ以降に設定できるから(低負荷域では上死点より僅か手前のこともあるが)、圧縮上死点前の負の仕事は発生せず、最高燃焼圧力・温度の低下により摩擦損失、冷却損失が減少し、カルノーサイクルが描く等温膨張に近くなり(燃焼が始まると、それが直ちに仕事に変換される)、熱効率は大幅に改善される。又、着火時期を上死点又はそれ以降とする事ができるから、高圧縮比を採用してもノッキングの心配はなく、一段と熱効率の改善が可能である。更には対向ピストン機構の採用により(これが本発明の重要な点であるが)超ロングストローク化する事ができるから(ストローク/ボア比を1.7〜2.5程度とする)、高圧縮比ながらS/Vが小さくなって冷却損失が減少し、熱効率の大幅改善が可能となる(熱の大量逃げ道である冷たいシリンダーヘッドがない事も冷却損失を小さくする)、2サイクル機関の課題は低負荷域における不整燃焼である。
本発明では高負荷域では着火時期を上死点又はそれ以降とする事ができる為に圧縮上死点で自着火を生じない程度の高圧縮比を採用できること(高負荷域では残留ガスは掃気作用により殆どなく、従って圧縮開始時のシリンダー内温度は低い)、及び2サイクル機関では低負荷域では(掃気ポンプの回転数を制御して)多量の高温既燃ガスが残留している為に(多量の内部EGR)圧縮端温度が十分に高くなること、更には上記理由(高圧縮比採用、多量の内部EGRにより圧縮始めの温度が高いこと)により圧縮端では燃料の低温酸化作用が進んでこれによる発熱が加わること、加えて対向ピストン機構による超ロングストロークの採用によりS/V比が小さくなって冷却損失が大幅に減少する為、圧縮端温度が一層高くなること(対向ピストン機構を採用した最大の利点がここにあり、S/V比が大で冷却損失が大きいと圧縮端温度は十分に高められない)、等の理由により点火プラグなどの着火源による燃焼が不可能な領域でも自着火により燃焼させるPCCI燃焼法(予混合圧縮着火燃焼法)を行なわせる事ができ、前記不整燃焼を解消する事ができる。
この場合、排気通路10にアクチュエーター12(電動モーター)により駆動される排気制御弁11を備え、この開度を制御して急激なブローダウンを防いだり、シリンダー内の無用な排ガスの出入りを防いで排ガスの温度を低下させない工夫が望ましい。又、掃気ポンプ9により供給された空気の吹き抜けをなくす為、掃気通路6に掃気制御弁7を備え、この開度を制御して掃気をゆっくりと行なう様にする事が望ましい(空気の吹き抜けがあると、その分余計に空気を供給する必要がある為、シリンダー内温度は低下する故)。更には排気側のピストンの位相を例えば10°CA進めて、排気通路10を掃気通路6より早く閉じる様にしても、空気の吹き抜けを防ぐ事ができる。PCCI燃焼は燃焼温度が低い超希薄燃焼である為、非常に高い熱効率が得られ、NOxの発生もない。中・高負荷域では点火プラグなどの着火源により混合気を着火・燃焼させる事ができる。
2サイクル機関は空気の吹き抜けがある為、三元触媒コンバーターは使えないが(但し、掃気ポンプ9の回転速度、掃気制御弁7、排気制御弁11の開度などを上手に制御すればユニフロー掃気式であるから、空気の吹き抜けを防ぎ、三元触媒コンバーターを使う事ができる)、高負荷域では着火時期が上死点又はそれ以降である為、最高燃焼温度が低く、NOxの発生は殆ど0である(低負荷域では着火時期が上死点前の事もあるが、多量のEGRが自動的に為されるから、NOxの発生は殆ど0である)。従って、酸化触媒コンバーターで排ガスを浄化できる。PCCI燃焼はNOxの発生は殆ど0である一方、多量のHC排出があり問題であるが、2サイクル機関では低負荷域では掃気によって排出される量は少量で、大部分がシリンダー内に留まる為(掃気ポンプ9の回転を制御してシリンダー内へ送り込まれる空気量を制限している故)、これが再び圧縮されて燃焼に加わる為、HC排出は少ない(従って触媒コンバーターの負担は小さくて済む)。同時に熱効率悪化も殆どない。加えてシリンダー内に残留した燃料の分解されたラジカル成分は活性作用が大きいので、PCCI燃焼を起し易くする。PCCI燃焼法は均質混合気が原則的に良いが(この場合を特にHCCI燃焼と称する)、2サイクル機関では多量の内部EGRが為されているから、不均一混合気でもNOxの発生はない。即ち、図2(イ)の如く排気通路10が閉鎖されてから先ず燃料噴射弁14により全体に燃料を均質となる様に噴射し、次に図2(ロ)の如く燃料噴射弁14によりトリガー燃焼室3に燃料を噴射すると、図2(ハ)の如くトリガー燃焼室3には濃混合気(理論混合比よりはもちろん希薄)、スキッシュ部4には希薄混合気が形成される。こうするとトリガー燃焼室3はスキッシュ部4より燃料の低温酸化反応による発熱が多く、高温となる為、自着火が起り易く、この自着火によりスキッシュ部の自着火が誘発され、かくして全体としてアイドル状態を含む極低負荷域でもPCCI燃焼を引き起す事ができる(多量の内部EGRによりトリガー燃焼室3のNOxの発生もない)。加えてこの方法は、トリガー燃焼室3とスキッシュ部4との混合比の比率を可変化する事で自着火が起る時期を圧縮上死点又はその直後となる様に制御する事ができる利点がある。即ち、自着火が圧縮上死点前に起ったら燃焼圧センサーにより燃焼圧を検出して、トリガー燃焼室3に噴射する燃料噴射量を減らしてやれば良い(逆に失火が起ったら、トリガー燃焼室3への噴射量を増す)。かくして低負荷域における不整燃焼を解消できるが、所定の負荷以上ではトリガー燃焼室3内の混合気は点火プラグなどの着火源により着火できるので、火炎伝播燃焼に切り換える。尚、本発明では高圧縮比を採用していること、冷却損失が少ないこと、及び多量の内部EGRにより圧縮端では非常に高温となり、かつ燃料の低温酸化反応も進んでいる事などにより電気火花の様な着火源の刺激により(複数回のスパーク実施も含む)PCCI燃焼が引き起される可能性があるから、これを利用して着火源の着火時期によりPCCI燃焼の開始時期を制御する事もできる。次に2サイクル機関の低負荷域における不整燃焼を解消する別の方法として層状給気燃焼法を説明すると、図2(イ)の状態では燃料は噴射しないが、図2(ロ)の状態で全量トリガー燃焼室3内に噴射するのである(トリガー燃焼室3の容積は図1(イ)の場合と異なる)。この場合、掃気通路6からシリンダー内に流入する掃気流は全てシリンダー中心を指向させてスワールを形成しない様にする。こうすると図2(ハ)の如く燃料がトリガー燃焼室3内に滞留し易くなる。以上により圧縮上死点ではトリガー燃焼室3内にのみ混合気が形成されると共に、濃い部分と希薄な部分とに分布し(均一にはならない)、かつトリガー燃焼室3には複数の点火プラグが臨んでいるから(従って点火プラグは図2(ハ)の如く3個備えるのが良い)、上記混合気の濃い部分に必らず点火プラグが巡り合って着火源による着火及びそれに続く火炎伝播燃焼が可能となり、アイドルを含む極低負荷域でも不整燃焼は解消される。この場合、多量の高温既燃ガスによる内部EGRと高圧縮比採用との相乗効果により圧縮上死点では高温となり、低温酸化作用により燃料は非常に活性化され、着火源により容易に着火が可能となるのである(着火後の火炎伝播も容易となる)。この場合、着火源による着火を確実にする手段として電気火花を複数回発生させる事も効果がある。以上の場合、多量の内部EGRが為されているから、NOxの発生はない。負荷の増大に従って図2(イ)の状態でも燃料を噴射する様にする。尚、トリガー燃焼室3内への燃料噴射は図2(ニ)の如く燃料噴射弁を圧縮上死点近くに移動した位置で噴射する様にしても良い。エンジン始動は点火プラグなどの着火源により行ない、暖機中も同様とする(濃混合気を供給)。本発明では超急速燃焼が可能なので、着火時期を圧縮上死点後に大幅に遅らせて排ガス温度を高め、触媒コンバーター13の早期活性化を図るのが良く、この場合、スキッシュ部4の自着火は起り難いと考えられ、トリガー燃焼室3からの火炎伝播に頼る事になるが、この事は却って燃焼が遅れ、排ガス温度を高めるので都合が良い。燃料が水素の場合は、超希薄混合気でも電気火花の様な着火源による着火・燃焼が可能であるから、アイドルを含む極低負荷域でもPCCI燃焼に頼る必要はない。即ち、着火源によるトリガー燃焼室の急速燃焼により全負荷域でスキッシュ部の混合気を自着火させ、超急速燃焼させる事ができる、又、水素は熱伝導が良好な為、冷却損失が増加すると言われているが、本発明では対向ピストン機構によりその欠点も解消される。
燃料が天然ガスの様に自着火が起り難いものについては次に述べる方法によってPCCI燃焼を引き起す(これはガソリンの様なものにも、もちろん適用される)。
先ず図3(イ)において副排気通路16が備えられ、ピストンにより副排気通路16が閉じられた時点での圧縮比は例えば16に設定され、排気通路10がピストンにより閉じられた時点の圧縮比は例えば19である様に設定されている。アイドル状態を含む低負荷域では制御弁17を全閉(又はほぼ全閉)とすると、圧縮比は19と高圧縮比となり、より多量の内部EGRとの相乗効果により圧縮端圧力・温度が上昇し、天然ガスの場合でも容易にPCCI燃焼を引き起す事ができる(不整燃焼の解消)。中・高負荷域では制御弁17を全開として圧縮比を16と適正に保って自着火を防ぎ、着火源によりトリガー燃焼室を急速燃焼させ、この燃焼によりスキッシュ部の自着火を誘発させて超急速燃焼を実現する。18はアクチュエーターであり、エンジン始動・暖機時も制御弁17を全閉としても良い。制御弁17を半開状態としてその開度を制御すれば、近似的に可変圧縮比が可能であり、PCCI燃焼領域を拡大する事ができる。
図3(イ)の場合、アイドル状態を含む極低負荷域では制御弁17は全閉状態(又はほぼ全閉)に保たれているから、高圧縮比となり、かつ図2(ロ)の如く燃料をトリガー燃焼室3内へ全量噴射する様にすると、燃焼室全体に均一に噴射した場合に比し燃料の低温酸化反応による発熱が加算され、確実にPCCI燃焼が起る。この場合、2サイクル機関では多量の内部EGR中に前サイクルで分解された燃料のラジカル成分が残っており、この成分がPCCI燃焼を起し易くする作用も見逃せない。
自着火が起る時期は排気制御弁11によって調整する事ができ、その開度を小さくすると着火時期は早まり、大きくすると遅くなる。もちろんこの場合、アイドル状態を含む極低負荷においても図2(イ)、(ロ)の如くスキッシュ部4及びトリガー燃焼室3内へ燃料を噴射し、両者の混合比の比率を変えて着火時期を調整する様にしても良い(制御弁17の開度を制御する方法も有効である)。2気筒2サイクル機関では、一方の気筒の掃気通路を閉鎖するだけで(燃料噴射は停止する)簡単に2気筒運転から1気筒運転に可変化でき(4サイクル機関の可変気筒化と同じ)、運転している気筒の負荷が上昇するから、あらゆる条件下でPCCI燃焼が可能であり、この方法も併用する手段も考えられる。負荷の増加に従って一定の負荷に到達したら、図2(イ)の如くスキッシュ部4にも燃料を噴射し(その分、トリガー燃焼室3内への噴射量は減らし、全体で調整する)、この間、自着火が起る時期はトリガー燃焼室3とスキッシュ部4との混合比の比率を変えて最適に調整するが、制御弁17の開度を制御しても調整する事ができる。以上においては多量の内部EGRが為されているから、NOxの発生はない。又未燃のHCが生成されても2サイクル機関では多量の内部EGRとしてシリンダー内に残留して次の燃焼過程で燃焼するから(この場合、未燃の分解された活性ラジカル成分は燃焼の際に燃焼を助け、PCCI燃焼を起し易くする)、排気通路内へ排出される量は少なく、熱効率の低下もない。負荷が更に上昇すると制御弁17は全開(又はほぼ全開)となり、トリガー燃焼室3内の混合気は点火プラグの電気火花などの着火源により燃焼が可能となり、このトリガー燃焼室3の急速燃焼に誘発されてスキッシュ部4の自着火が起り、かくして超急速燃焼が達成される。着火源による着火時期は低負荷域では上死点前のこともあるが、高負荷域ではスキッシュ部の自着火を上死点後とする為、圧縮上死点又はそれ以降とすることになる(従って、最高燃焼温度も低く、NOxの発生も殆どない)。尚、極低負荷域(アイドルも含む)では制御弁17は全閉又はほぼ全閉で、圧縮比も膨張比も高いから、この熱効率向上分をある目的に振り分ける、例えば掃気制御弁7を絞る事によって掃気空気の温度を上昇させ、PCCI燃焼を起し易くする事ができる。次に図3(ロ)において副排気通路19にはクランク軸と回転比1/1で連結するロータリ弁21が備えられ(副排気通路19は排気通路10より早く開く)、ロータリ弁21はピストンが副排気通路19を開いてから排気通路10を開くまでの期間(クランク角)は副排気通路19を閉じており、その後適当な時期にロータリ弁21は開き、ピストンが排気通路10を閉じてから所定の期間(クランク角)まで開き続ける様になっている。これにより副排気通路19がピストン又はロータリ弁21により閉じた時点での圧縮比に対して、排気通路10がピストンにより開かれた時点での膨張比の方が大となり、ミラーサイクルを描く事によって熱効率が向上する。エンジンのアイドルを含む低負荷域では(更には始動時、暖機運転時も)制御弁20を全閉とすると圧縮比(膨張比)は高圧縮比となり、圧縮端温度が高くなってPCCI燃焼を容易に引き起す事ができる。中・高負荷域では制御弁20を全開として圧縮比を適正に保って自着火を防ぎ、着火源によりトリガー燃焼室3を燃焼させ、これによりスキッシュ部4の自着火を誘発させ、超急速燃焼を達成する、図3(イ)と同様に制御弁20の開度を細かく制御すれば近似的に可変圧縮比化が可能で、PCCI燃焼領域を拡大する事ができる。
又、同じ理由により自着火の起る時期を制御する事ができ、制御弁20の開度を大きくすると自着火は遅れ、開度を小さくすると自着火早くなる。
尚、ロータリ弁21の代りにクランク軸で駆動されるカムにより開閉するスライド弁(ピストン形状)を使う事もできる。本発明においては、燃料が水素の場合は対向ピストン式2サイクル機関では熱点となる排気弁がなく、高圧縮比を採用できる(水素は自着火温度が高い)。もう1つの熱点となる点火プラグについては高熱価プラグ又は沿面プラグとし、排気弁が不要であるから点火プラグ周囲の冷却水通路を十分に大きく取って、冷却性を向上する事で対処する(点火プラグ周囲に冷却水を流す場合、ジェット噴流とすると冷却性は大幅に向上する)。この場合、高圧縮比なので高負荷域では理論混合比の80%位までの混合比として、水素特有の冷却損失の増大による熱効率悪下を防ぐのが良い(こうすると出力低下はあるが2サイクル機関であるから高出力であり、4サイクル機関に比し有利である)。水素は超希薄混合気でも良く燃焼するが、掃気ポンプの回転数を制御するなどして従来より空気で希釈する比率を高く取った方が比熱比が大で、有利と思われる。
本発明は4サイクル機関にも適用できる。即ち、図4(イ)においてロータリ弁22はクランク軸の回転の1/2に減速して駆動され、吸気行程ではロータリ弁の切欠き部23が吸気通路24に連通して吸気を吸入し、排気行程では切欠き部23が排気通路25に連通して排気する。圧縮・膨張行程ではロータリ弁22は閉じてシリンダー内の高圧燃焼ガスを密封している。
かくしてクランク軸2回転で吸気・圧縮・膨張・排気の各行程を行なう、ロータリ弁22の構造を図4(ロ)に示すが、26はピストリング状のシール(シリンダーヘッドに形成された溝に嵌め込まれ、その内周がロータリ弁22の外周に接触する)、27はピストンリング状のシール間にあって高圧ガスをシールする棒状シールである、図1で説明した様に高負荷域ではトリガー燃焼室3の急速燃焼による燃焼圧力・温度の上昇によって膨張過程でスキッシュ部4の自着火を誘発させ超急速燃焼を達成する(点火プラグなどの着火源による着火時期を高負荷域では上死点又はそれ以降とすることになる――低負荷域では上死点前のこともある)。4サイクル機関であるから、アイドルを含む極低負荷域でも燃焼は安定し、不整燃焼はない。
1はピストン、2はクランク軸、3はトリガー燃焼室、4はスキッシュ部、5は点火プラグ、6は掃気通路、7は掃気制御弁、8・12・18はアクチュエーター、9は掃気ポンプ、10は排気通路、11は排気制御弁、13は触媒コンバーター、14は燃料噴射弁、15は電子制御ユニット(ECU)、16・19は副排気通路、17・20は制御弁、21はロータリ弁、22はロータリ弁、23は切欠き部、24は吸気通路、25は排気通路、26はピストンリング状シール、27は棒状シール、4aはスキッシュ部の間隔の大きい部分、4bはスキッシュ部の間隔の小さい部分である。
Claims (2)
- クランク軸と連動する一対のピストンがシリンダー内で互いに反対方向へ動き合う対向ピストン内燃機関において、前記各々のピストン頂面間にピストン上死点位置において所定の容積を有するトリガー燃焼室とスキッシュ部とを備え、火炎伝播距離を短縮した前記トリガー燃焼室を電気火花の様な複数の着火源により急速燃焼させ、その上昇した燃焼圧力・温度によりスキッシュ部の混合気を高負荷域においては圧縮上死点以降に自着火させる様にした対向ピストン内燃機関。
- トリガー燃焼室の混合気をスキッシュ部のそれよりも濃混合気とし、両者の混合気の混合比の比率を制御して自着火が起る時期を制御する様にした請求項1記載の対向ピストン内燃機関。
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2014
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