JP2016108966A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】この発明は、内燃機関の制御装置に関し、第1燃焼から第2燃焼への燃焼の切り替えの過程での燃費低減とNOx排出抑制とを両立しつつ、当該切り替えを行えるようにすることを目的とする。【解決手段】吸入空気量の増加を伴ってストイキ燃焼からリーン燃焼に切り替えるための切替モードとして、空燃比を連続的に切り替える第1切替モードと、空燃比をステップ的に切り替える第2切替モードとを有する。ストイキ燃焼からリーン燃焼への切り替えが要求された場合に、当該切り替えを第1切替モードを実行して行うと仮定した場合に空燃比の切り替えの過程で筒内から排出されるNOxの総排出量を推定する。推定されたNOxの総排出量が判定閾値未満である場合には第1切替モードを実行し、推定されたNOxの総排出量が判定閾値以上である場合には第2切替モードを実行する。【選択図】図11

Description

この発明は、内燃機関の制御装置に係り、特に、理論空燃比以下の空燃比での第1燃焼と理論空燃比よりも大きな空燃比での第2燃焼とを実施可能な内燃機関を制御する装置として好適な内燃機関の制御装置に関する。
従来、例えば特許文献1には、ディーゼルエンジンの制御装置が開示されている。この制御装置によれば、NOx吸蔵触媒で捕捉したNOxを還元するために、理論空燃比よりも大きな空燃比でのリーン燃焼中に、理論空燃比よりも小さな空燃比でのリッチ燃焼が一時的に実行される。そのうえで、リッチ燃焼からリーン燃焼への切り替え時に過給圧を上昇させる必要がある場合には、吸入空気量を増やす前に過給圧を上昇させる制御が実行される。
特開2006−291897号公報 特開2013−241896号公報
吸入空気量を調整してエンジントルクを制御するガソリンエンジン等の火花点火式内燃機関においても、理論空燃比以下の空燃比での第1燃焼(ストイキ燃焼、もしくは理論空燃比よりも小さな空燃比でのリッチ燃焼)と理論空燃比よりも大きな空燃比での第2燃焼(リーン燃焼)とを実施可能なものがある。第1燃焼と第2燃焼との切り替えは、エンジントルクに段差が生じないようにしつつ行うことが要求される。ここで、第1燃焼と第2燃焼では、同じエンジントルクを実現するために必要な吸入空気量が異なる。このため、燃焼を切り替えるときには、燃料噴射量および点火時期を吸入空気量の調整とともに調整してエンジントルクをスムーズに繋げることが必要となる。そして、このような燃焼の切り替えは、切り替えの過程での燃費低減とNOx排出抑制とに配慮されたものであることが望ましい。
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、第1燃焼から第2燃焼への燃焼の切り替えの過程での燃費低減とNOx排出抑制とを両立しつつ、当該切り替えを行えるようにした内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
本発明に係る内燃機関の制御装置は、空気量調整手段と、燃料噴射弁と、点火装置とを備える内燃機関を制御し、かつ、理論空燃比以下の空燃比での第1燃焼と理論空燃比よりも大きな空燃比での第2燃焼とを実施可能なものである。内燃機関の制御装置は、燃焼切替実行手段を備える。空気量調整手段は、吸入空気量を調整する。燃料噴射弁は、内燃機関に燃料を供給する。点火装置は、筒内の混合気に点火する。燃焼切替実行手段は、第1燃焼から第2燃焼に切り替える際に第1切替モードもしくは第2切替モードを実行する。前記第1切替モードを実行する場合に前記燃焼切替実行手段は、吸入空気量を増加させ、かつ、吸入空気量の当該増加の過程で要求トルクに対するエンジントルクの変化を抑制しつつ空燃比が第2燃焼での目標空燃比となるように燃料噴射量と点火時期とを調整する。前記第2切替モードを実行する場合に前記燃焼切替実行手段は、第1燃焼における空燃比を維持した状態で吸入空気量を増加させ、かつ、吸入空気量の当該増加に伴って、燃料噴射量を増加させるとともに点火時期を遅角し、吸入空気量が切り替え後の第2燃焼に必要な要求吸入空気量に到達してから、空燃比が第2燃焼での目標空燃比となるように燃料噴射量を減少させるとともに点火時期を進角する。前記第1切替モードは、第1燃焼から第2燃焼への切り替えを前記第1切替モードを実行して行うと仮定した場合に空燃比の切り替えの過程で筒内から排出されるNOxの総排出量が第1所定値未満となる状況下において実行され、一方、前記第2切替モードは、NOxの前記総排出量が前記第1所定値以上となる状況下において実行される。
本発明に係る前記内燃機関は、前記内燃機関の吸気通路に配置され、吸入空気を過給するコンプレッサと、前記コンプレッサよりも下流側の前記吸気通路に配置され、吸入空気量を調整するスロットルバルブと、前記コンプレッサの駆動力を調整して過給圧を制御するアクチュエータと、を備えるものであってもよい。前記制御装置は、第1燃焼から第2燃焼に切り替える際に過給圧を高める要求がある場合に、要求トルクを第1燃焼の下で実現するために必要な要求吸入空気量を維持しつつ過給圧を高める過給圧リザーブ制御を、前記スロットルバルブと前記アクチュエータとを用いて実行するリザーブ制御実行手段をさらに備えるものであってもよい。そのうえで、前記燃焼切替実行手段は、前記過給圧リザーブ制御が終了した後に、第1燃焼から前記第2燃焼への燃焼の切り替えを開始するものであってもよい。
前記制御装置は、NOxの前記総排出量を推定するNOx排出量推定手段をさらに備えるものであってもよい。そして、前記燃焼切替実行手段は、前記NOx排出量推定手段により推定されたNOxの前記総排出量が前記第1所定値未満である場合には前記第1切替モードを実行し、推定されたNOxの前記総排出量が前記第1所定値以上である場合には前記第2切替モードを実行するものであってもよい。
前記NOx排出量推定手段は、第1燃焼から第2燃焼に切り替える過程での吸入空気量の変化率に基づいて、NOxの前記総排出量を推定するものであってもよい。
前記NOx排出量推定手段は、第1燃焼から第2燃焼への切り替えが要求されたときの吸入空気量と前記要求吸入空気量との差を少なくともパラメータとしてNOxの前記総排出量を規定するマップに従って、NOxの前記総排出量を算出するものであってもよい。
前記燃焼切替実行手段は、第1燃焼から第2燃焼への切り替えが要求されたときの吸入空気量と前記要求吸入空気量との差が第2所定値未満である場合には前記第1切替モードを実行し、一方、前記差が前記第2所定値以上である場合には前記第2切替モードを実行するものであってもよい。
本発明によれば、第1燃焼から第2燃焼への切り替えが要求された場合に、当該切り替えを第1切替モードを実行して行うと仮定した場合に空燃比の切り替えの過程で筒内から排出されるNOxの総排出量が第1所定値未満となる状況下では、燃費低減の観点で優れた第1切替モードが使用される。一方、NOxの総排出量が第1所定値以上となる状況下では、NOx排出抑制の観点で優れた第2切替モードが使用される。これにより、燃費低減とNOx排出抑制という観点で、切り替えが要求されたときの個々の状況に適した切替モードが選択できるようになる。このため、本発明によれば、トルク段差を抑制しつつ第1燃焼から第2燃焼に切り替えようとする際に、燃費低減とNOxの排出抑制とを好適に両立させられるようになる。
本発明の実施の形態1に係る内燃機関のシステム構成を概略的に説明するための図である。 エンジン運転領域と燃焼方式との関係の一例を表した図である。 第1切替モードの動作を表したタイムチャートである。 第2切替モードの動作を表したタイムチャートである。 NOx排出量と空燃比(A/F)との関係を表した図である。 ストイキ燃焼からリーン燃焼への切り替えの過程の各サイクルでのNOx排出量の推定手法を説明するためのタイムチャートである。 エンジントルクと吸入空気量と空燃比との関係を表した図である。 筒内からのNOxの排出量と空燃比との関係を表した図である。 ストイキ燃焼からリーン燃焼への切り替えの過程で各気筒から排出されると予想されるNOxの総排出量の推定値の時間変化を表した図である。 NOxの総排出量の判定閾値の設定手法の一例を説明するための図である。 本発明の実施の形態1に係る制御の流れを示すフローチャートである。 ストイキ燃焼の下で吸入空気量の応答性を高めてエンジントルクを高応答に制御する手法を説明するための図である。 ストイキ燃焼からリーン燃焼への切り替え時に、切り替え時間の短縮のために図12に示すスロットル制御を適用することを想定した図である。 過給圧リザーブ制御を伴う第1切替モードの動作を表したタイムチャートである。 過給圧リザーブ制御を伴う第2切替モードの動作を表したタイムチャートである。 本発明の実施の形態2に係る制御の流れを示すフローチャートである。
実施の形態1.
まず、図1〜図13を参照して、本発明の実施の形態1について説明する。
[実施の形態1のシステムの構成]
図1は、本発明の実施の形態1に係る内燃機関10のシステム構成を概略的に説明するための図である。図1に示す内燃機関10は、内燃機関本体12を備えている。内燃機関10は、火花点火式エンジン(一例として、ガソリンエンジン)であり、車両に搭載され、その動力源とされているものとする。内燃機関本体12の各気筒には、吸気通路14および排気通路16が連通している。
吸気通路14の入口付近には、エアクリーナ18が設けられている。エアクリーナ18には、吸気通路14に取り入れられた空気の流量に応じた信号を出力するエアフローメータ20が設けられている。エアクリーナ18よりも下流側の吸気通路14には、吸入空気を過給するために、ターボ過給機22のコンプレッサ22aが配置されている。ターボ過給機22は、排気ガスの排気エネルギによって作動するタービン22bを排気通路16に備えている。コンプレッサ22aは、連結軸22cを介してタービン22bと一体的に連結されており、タービン22bに入力される排気ガスの排気エネルギによって回転駆動される。
コンプレッサ22aよりも下流側の吸気通路14には、吸気通路14を開閉する電子制御式のスロットルバルブ24が配置されている。スロットルバルブ24よりも下流側の吸気通路14は、各気筒に向けて吸入空気を分配する吸気マニホールド26として構成されている。吸気マニホールド26の集合部(サージタンク)には、コンプレッサ22aによって圧縮された吸入空気を冷却するためのインタークーラ28が配置されている。吸気通路14におけるコンプレッサ22aとスロットルバルブ24との間には、スロットル上流圧力、すなわち、過給圧を計測するための第1吸気圧力センサ30が配置されている。また、吸気マニホールド26には、スロットル下流圧力、すなわち、吸気マニホールド圧力を計測するための第2吸気圧力センサ32が配置されている。
各気筒には、燃焼室34内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁36と、燃焼室34内の混合気に点火するための点火プラグ38とが備えられている。燃焼室34内に燃料を供給する燃料噴射弁としては、燃料噴射弁36に代え、あるいはそれとともに各吸気ポートに燃料を噴射する燃料噴射弁が用いられていてもよい。
排気通路16には、タービン22bをバイパスする排気バイパス通路40が接続されている。排気バイパス通路40には、排気バイパス通路40を開閉するバイパスバルブとして、ウェイストゲートバルブ(WGV)42が配置されている。WGV42は、一例として電動式であり、所定の開度制御範囲内で任意の開度に調整可能に構成されている。WGV42の開度を変更することにより、タービン22bを通過する排気ガスの流量を調整してコンプレッサ22aの駆動力を調整することができる。
また、タービン22bよりも上流側の排気通路16には、排気ガスの空燃比を検出するための空燃比センサ44が配置されている。空燃比センサ44よりも下流側の排気通路16には、排気ガスを浄化するための各種触媒が配置されている。ここでは、一例として、排気ガスの上流側から順に、三元触媒46およびNSR触媒(吸蔵還元型NOx触媒)48が備えられている。なお、リーン燃焼運転時のNOxの浄化のために、NSR触媒48に代え、あるいはそれとともにSCR触媒(選択還元型NOx触媒)が備えられていてもよい。
さらに、本実施形態のシステムは、ECU(Electronic Control Unit)50を備えている。ECU50は、少なくとも入出力インターフェースとメモリと演算処理装置(CPU)とを備えている。入出力インターフェースは、内燃機関10もしくはこれを搭載する車両に取り付けられた各種センサからセンサ信号を取り込むとともに、内燃機関10が備える各種アクチュエータに対して操作信号を出力するために設けられている。ECU50が信号を取り込むセンサには、上述したエアフローメータ20、吸気圧力センサ30および32ならびに空燃比センサ44に加え、クランク軸の回転位置およびエンジン回転速度を取得するためのクランク角センサ52等のエンジン運転状態を取得するための各種センサが含まれる。上記センサには、内燃機関10を搭載する車両のアクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出するためのアクセル開度センサ54も含まれる。ECU50が操作信号を出すアクチュエータには、上述したスロットルバルブ24、燃料噴射弁36、点火プラグ38を利用する点火装置(図示省略)、およびWGV42等のエンジン運転を制御するための各種アクチュエータが含まれる。メモリには、内燃機関10を制御するための各種の制御プログラムおよびマップ等が記憶されている。CPUは、制御プログラム等をメモリから読み出して実行し、取り込んだセンサ信号に基づいて各種アクチュエータの操作信号を生成する。
[前提とするエンジントルク制御]
本実施形態のシステムでのエンジントルク制御では、アクセル開度に応じて要求トルクが算出され、算出された要求トルクを目標トルクとしてエンジントルクが制御される。より具体的には、要求トルクが算出されると、現在の空燃比の下で要求トルクを実現するために必要な要求吸入空気量(筒内に吸入される空気量の要求値)が算出される。吸入空気量(筒内空気量)の計算は、公知のエアモデルを用いて行うことができる。点火時期は、基本的には、空燃比に応じたMBT点火時期に制御される。
内燃機関10の場合には、吸入空気量は、スロットルバルブ24とWGV42とを用いて調整することができる。低負荷側のトルク領域では、WGV42の開度を開度制御範囲内の最大開度にて開いた状態で、スロットルバルブ24の開度調整によって要求吸入空気量が得られるように吸入空気量が調整される。この調整の下でスロットルバルブ24が全開開度に到達するときの吸入空気量よりも多くの吸入空気量を必要とする領域(すなわち、過給領域)では、スロットルバルブ24を全開開度にて開いた状態で、要求吸入空気量を実現する要求過給圧が得られるようにWGV42の開度調整によって過給圧が調整され、これにより、過給領域での吸入空気量が要求吸入空気量となるように調整される。なお、以下の説明においては、吸入空気量および過給圧の要求値(目標値)の表記について、ストイキ燃焼の下での値の場合には末尾に「S」を付し、リーン燃焼を想定した値もしくはリーン燃焼の下での値の場合には末尾に「L」を付している。
[実施の形態1における燃焼の切り替え制御]
(ストイキ燃焼領域とリーン燃焼領域)
図2は、エンジン運転領域と燃焼方式との関係の一例を表した図である。図2に示すエンジン運転領域は、エンジントルク(エンジン負荷)とエンジン回転速度とによって規定されている。エンジン運転領域には、理論空燃比よりも大きな(リーンな)空燃比を用いるリーン燃焼領域が含まれている。リーン燃焼領域は、おおよそ、低中負荷かつ低中回転の領域に該当する。リーン燃焼領域よりも高負荷高回転側には、理論空燃比を用いる第1ストイキ燃焼領域が設けられている。また、リーン燃焼領域よりも低負荷低回転側にも、理論空燃比を用いる第2ストイキ燃焼領域が設けられている。第2ストイキ燃焼領域は、この領域においてリーン燃焼を行うと燃焼が不安定となるため、それを避けるために理論空燃比を用いる領域である。
リーン燃焼領域内の高負荷側の領域は、過給リーン燃焼領域として設定されている。過給リーン燃焼領域は、この領域内のエンジントルクをリーン燃焼で実現するために過給を必要とする領域である。この領域よりも低負荷側のリーン燃焼領域が、自然吸気リーン燃焼領域となる。なお、第2ストイキ燃焼領域は、過給を必要としない領域であり、一方、第1ストイキ燃焼領域内には、図示は省略するが、過給を必要とする過給領域と過給を必要としない自然吸気領域とが含まれている。
本実施形態の制御は、ストイキ燃焼からリーン燃焼に切り替える際の動作に特徴を有している。ストイキ燃焼からリーン燃焼への切り替えの態様としては、ストイキ燃焼を実施する自然吸気領域もしくは過給領域からリーン燃焼を実施する自然吸気領域への切り替え、または、ストイキ燃焼を実施する自然吸気領域もしくは過給領域からリーン燃焼を実施する過給領域への切り替えがある。ストイキ燃焼とリーン燃焼との切り替えは、エンジントルクに段差が生じないようにしつつ行うことが要求される。ここで、ストイキ燃焼とリーン燃焼では、同じエンジントルクを実現するために必要な吸入空気量が異なる。このため、燃焼を切り替えるときには、燃料噴射量および点火時期を吸入空気量の調整とともに調整してエンジントルクをスムーズに繋げることが必要となる。より具体的には、リーン燃焼の実施時には、ストイキ燃焼でのエンジントルクと同じエンジントルクを実現するためにはストイキ燃焼の実施時よりも多くの吸入空気量を必要とする。したがって、ストイキ燃焼からリーン燃焼への切り替えは、エンジントルクを下げる場合(減速時)であっても、吸入空気量の増加を必要とするケースが多くなる。本実施形態では、吸入空気量の増加を伴ってストイキ燃焼からリーン燃焼に切り替える際の空燃比の切替モードとして、以下に説明する第1切替モードおよび第2切替モードが用いられる。
(第1切替モードと第2切替モード)
図3は、第1切替モードの動作を表したタイムチャートであり、図4は、第2切替モードの動作を表したタイムチャートである。図3および図4では、一例として、ストイキ燃焼を実施する自然吸気領域からリーン燃焼を実施する過給領域への切り替えの動作について説明する。また、図3および図4は、燃焼の切り替えの前後で目標トルク(要求トルク)が一定である場合の動作を示している。
第1切替モードは、切り替え後のリーン燃焼の下で要求トルクに相当する目標トルクを実現するために必要な要求吸入空気量Lに向けて吸入空気量を増やしながら、空燃比をリーン燃焼での目標空燃比に向けて「連続的に(すなわち、複数サイクルを利用して)」切り替えるというものである。燃焼(すなわち、空燃比)の切り替えは、図3に示すように、切り替え要求が出されたときに直ちに開始される。具体的には、要求吸入空気量Lが目標吸入空気量L(破線)として算出される。この場合の切り替え後のリーン燃焼は過給を伴うものであるため、スロットルバルブ24を全開とした状態で目標吸入空気量Lを実現するために必要な要求過給圧Lが目標過給圧L(破線)として算出される。そして、切り替え開始時点において、スロットル開度が全開開度に制御される。WGV開度は、この制御例では、実過給圧を速やかに高めるために、切り替え初期に最小開度に制御された後に目標過給圧Lに対応する開度に制御される。これに伴い、吸入空気量が目標吸入空気量Lに向けて上昇していく。切り替え中の空燃比は、変化していく実吸入空気量の下で目標トルクを維持するための値となるように燃料噴射量が調整されることで変更される。より具体的には、切り替えの過程においてスロットルバルブ24が全開とされた状態で吸気マニホールド圧が上昇していくことに伴ってポンプロスが低減していく。これに伴い、切り替えの過程での燃料噴射量は徐々に減らされていく。MBT点火時期は空燃比が理論空燃比に対して大きくなるにつれて進角するため、切り替えの過程での点火時期は、空燃比が大きくなるにつれて進角される。実空燃比がリーン燃焼での目標空燃比に到達したときに、第1切替モードによる燃焼の切り替え動作が終了される。
一方、第2切替モードは、図4に示すように、燃焼の切り替え要求が出された場合に、まず、ストイキ燃焼の下で目標トルクを維持しつつ吸入空気量を要求吸入空気量Lに向けて増加させた後に、リーン燃焼での目標空燃比に向けて空燃比を「ステップ的に(1サイクルで)」切り替えるというものである。具体的には、切り替えが要求されたときに吸入空気量および過給圧を要求吸入空気量Lおよび要求過給圧Lに向けてそれぞれ高める動作については、第1切替モードと同様である。第1切替モードとの相違点は、ストイキ燃焼の下でスロットルバルブ24を開いて目標吸入空気量Lに向けて吸入空気量を増やしながら、目標トルクを維持するために点火時期が遅角される点にある。燃料噴射量は、吸入空気量が増加する過程で理論空燃比を維持するために増やされていく。その後、吸入空気量が目標吸入空気量Lに到達したときに、理論空燃比からリーン燃焼での目標空燃比に向けて空燃比を切り替えるために、燃料噴射量が減らされる。これに伴い、リーン燃焼でのMBT点火時期となるように点火時期が進角される。これにより、第2切替モードによる燃焼の切り替え動作が終了される。
(第1切替モードと第2切替モードの長所と短所)
第2切替モードは、燃焼の切り替えのために吸入空気量を増加する過程で目標トルクに対するエンジントルクの変化を抑制するために点火時期の遅角を利用する。MBT点火時期よりも点火時期を遅角することは燃費の悪化要因となる。これに対し、第1切替モードは、エンジントルクの変化抑制のために点火時期の遅角を利用しないため、第2切替モードと比べて、切り替えの過程での燃費という点において優れている。したがって、第1切替モードを主な切替モードとして利用することで、切り替えの過程での燃費低減に配慮した燃焼の切り替えを行えるようになる。その一方で、図3および図4を比較すると分かるように、第1切替モードでは、第2切替モードと比べて、空燃比の切り替えに要する時間が長くなる。
図5は、NOx排出量と空燃比(A/F)との関係を表した図である。燃焼室34からのNOxの排出量は、図5に示すように、理論空燃比よりも少し大きな空燃比(16程度)にてピークがあり、これを超えて空燃比が大きくなるにつれて減少していく特性を有している。本実施形態のシステムでは、リーン燃焼領域にて用いる目標空燃比として、図5中に示すようにNOx排出量が十分に少なくなるレベルの値(すなわち、NOx排出量が相対的に多くなる空燃比範囲(16〜20付近)内の値よりも大きな値)が使用されるようになっている。
上記のように第1切替モードは、空燃比の切り替えに時間を要する(すなわち、切り替えの過程で複数のサイクルの経過を必要とする)。このため、理論空燃比からリーン燃焼での目標空燃比に移行する過程で、図5に示すようにNOx排出量が多い空燃比(16〜20付近)での燃焼を経験することになる。このことは、NOx排出量の増加に繋がる。特に、リーン燃焼への切り替え時に過給圧を高める必要がある場合には、吸入空気量の応答に対してより時間がかかるため、空燃比の切り替えに要する時間が長くなり、NOx排出量が多くなる。
(実施の形態1の特徴的な制御)
燃焼の切り替えは、切り替えの過程での燃費低減とNOx排出抑制とに配慮されたものであることが望ましい。図3〜図5を参照した以上の説明から、切り替えの過程における燃費低減という観点では、第1切替モードが優れているといえ、切り替えの過程におけるNOx排出抑制という観点では、第2切替モードが優れているといえる。したがって、NOxの排出が許容レベルであれば、第1切替モードを利用することで、切り替えの過程における燃費低減を図ることができるといえる。
そこで、本実施形態では、吸入空気量の増加を伴う切り替えを対象として、ストイキ燃焼からリーン燃焼への切り替えが要求されたときに、当該切り替えを第1切替モードを実行して行うと仮定した場合に空燃比の切り替えの過程で(すなわち、要求吸入空気量Lに向けて吸入空気量を変化させる過程で)各気筒から排出されると予想されるNOxの総排出量(すなわち、当該NOxの排出量の積算値)を推定することとした。そして、要求された切り替えのために、推定されたNOxの総排出量が所定の判定閾値(本発明における「第1所定値」に相当)未満である場合には第1切替モードを実行し、推定されたNOxの量が上記判定閾値以上である場合には第2切替モードを実行することとした。
ここで、図6〜図8を参照して、空燃比の切り替えの過程の各サイクルでのNOx排出量の推定手法について説明する。図6は、ストイキ燃焼からリーン燃焼への切り替えの過程の各サイクルでのNOx排出量の推定手法を説明するためのタイムチャートである。図6は、第1切替モードを利用した燃焼の切り替えの前後で目標トルクが一定のケースを例に挙げているが、ここで説明する推定手法の考え方は、アクセルペダルが操作されて目標トルクがステップ的に変化することに伴ってストイキ燃焼からリーン燃焼への切り替えが要求された場合も同様に適用することができる。ただし、図6に示す推定手法では、空燃比の切り替えの過程でエンジン回転速度が一定であると仮定している。
図6(A)は、現在の吸入空気量(すなわち、燃焼の切り替え要求が出された時の吸入空気量であり、図6の説明においては、「KL(0)」とも称する)から切り替え後の吸入空気量(すなわち、目標(要求)吸入空気量L)に向けて変化する吸入空気量の予測波形を表している。あるエンジン回転速度の下で現在の吸入空気量KL(0)から目標吸入空気量Lにまで吸入空気量を増やす際のおおよその空気量の変化率は、内燃機関10の仕様および吸入空気量の制御に用いるアクチュエータ(ここでは、スロットルバルブ24とWGV42)の制御状態に応じて定まるものである。そこで、本実施形態では、所定の空気量変化率Aを用いて、切り替えの過程での吸入空気量を推定することとしている。より具体的には、空気量変化率Aは、現在の吸入空気量KL(0)およびエンジン回転速度Ne(すなわち、現在の運転領域)と目標吸入空気量Lとの関係で事前に定めておくことができる。さらに、ここで用いている空気量変化率Aは、次のような配慮がなされた値である。すなわち、詳細は後述するが、吸入空気量の応答速度を最大限に高めることを目的として、スロットルバルブ24の操作速度を高め過ぎたり、スロットル開度を意図的に目標開度よりも一旦オーバーシュートさせたりすると、目標吸入空気量に対して実吸入空気量がオーバーシュートしてしまうことがある。そこで、空気量変化率Aは、目標吸入空気量に対する実吸入空気量のオーバーシュートが生じない範囲内での変化率の上限として位置づけられる値として事前に設定されている。
現在の吸入空気量KL(0)から目標吸入空気量Lに到達するまでの到達時間ΔT(秒)は、目標吸入空気量Lから現在の吸入空気量KL(0)を引いて得られる差ΔKLと空気量変化率Aとに基づいて次の(1)式に従って算出することができる。また、到達時間ΔT中に行われる点火の回数nは、次の(2)式に従って算出することができる。
ΔT=ΔKL/A ・・・(1)
n=ΔT×(Ne/60)×(i/2) ・・・(2)
ただし、(2)式において、Neは、上述のように一定と仮定された切り替え時のエンジン回転速度(min−1)であり、iは、内燃機関10の気筒数である。
到達時間ΔT中に各気筒において点火が行われるタイミングでの吸入空気量KL(k)の値は、点火回数kがn回であるとすると次の(3)式に従って算出することができる。例えば、点火回数kが4回であれば、4回の点火のそれぞれに対応した吸入空気量KLが順に算出されることになる。
KL(k)=KL(k−1)+A×ΔT/n ・・・(3)
図6(B)は、燃焼の切り替えの過程での目標空燃比の時間変化を表している。図7は、エンジントルクと吸入空気量と空燃比との関係を表した図である。図7に示すように、空燃比が大きくなるにつれ、同じエンジントルクを実現するために必要な吸入空気量KL(k)が多くなる。図7に示すような関係をマップとして備えておくことで、到達時間ΔT中に点火が行われるタイミングでの吸入空気量KL(k)の下で目標トルクを維持するために必要な目標空燃比A/F(k)を算出できるようになる。例えば、図6(B)に示す例では、KL(1)およびKL(2)に対応するA/F(1)およびA/F(2)がそれぞれ算出される。
図6(C)は、燃焼の切り替えの過程の各時点において燃焼が行われたとしたら筒内から排出されることになるNOxの量の時間変化を表している。図8は、筒内からのNOxの排出量と空燃比との関係を表した図である。空燃比に対するNOx排出量の図8に示す特性は、図5を参照して既述した通りである。この特性は、吸入空気量とエンジン回転速度とによって異なるものとなる。したがって、吸入空気量、エンジン回転速度および空燃比との関係でNOx排出量を定めたマップを備えておくことで、切り替えの過程での目標空燃比A/F(k)、KL(k)およびエンジン回転速度(一定値)に基づいてNOx排出量NOx(k)(図6(C)に示す例では、NOx(1)とNOx(2))を算出することができる。
到達時間ΔT中の各気筒において点火が行われるタイミングでのNOx排出量NOx(k)を足し合わせることで、切り替えの過程で各気筒から排出されると予想されるNOxの総排出量の推定値を算出することができる。図9は、切り替えの過程におけるNOxの総排出量の推定値の時間変化の一例を表した図である。図9に示すように、NOxの総排出量の推定値は、到達時間ΔT中に点火(燃焼)が行われる度に増加していく。図9は、NOxの総排出量の推定値が判定閾値よりも大きい場合のものである。この場合には、燃費面で優れているために基本の切替モードとされている第1切替モードに代えて、NOxの排出抑制に優れている第2切替モードが選択される。
図10は、NOxの総排出量の判定閾値の設定手法の一例を説明するための図である。前提として、本実施形態では、リーン燃焼運転の実行中に、NSR触媒48のNOx吸蔵能力が飽和する前にNOxの還元処理が実行されるようになっている。この還元処理は、NSR触媒48に対して還元剤(HC等)を供給し、吸蔵されたNOxを放出して還元剤と反応させることによって、NOxを窒素(N)に還元するというものである。NSR触媒48への還元剤の供給は、燃料噴射量を増やして空燃比を一時的に理論空燃比以下の空燃比に変更する処理(いわゆる、リッチスパイク処理)によって行われる。
切り替え前のストイキ燃焼の下では、三元触媒46およびNSR触媒48の雰囲気が理論空燃比近傍の空燃比雰囲気となっているため、これらの触媒46、48によってNOxがある程度浄化されることを期待することができる。これに対し、燃焼の切り替えの過程において排出されるNOxの量が多くなり過ぎると、切り替えの過程においてNSR触媒48のNOx吸蔵量が増えてしまい、切り替え後のリーン燃焼中に(排出量としては少ないが)排出が継続されるNOxを吸蔵可能な容量が少なくなってしまう。その結果、リッチスパイク処理を早いタイミングで実行する必要が生じるため、リーン燃焼の継続時間が短くなってしまう。リッチスパイク処理の頻度の上昇は燃費悪化要因となる。
ここで、リッチスパイク処理による燃料消費量が増えると、リッチスパイク処理によって投入される還元剤の量が増えることになるので、1回のリッチスパイク処理によるNSR触媒48のNOx吸蔵能力の回復量が増えることになる。その結果、ストイキ燃焼からリーン燃焼への切り替えの過程で排出が許容されるNOxの量が増えることになるといえる。したがって、図10に示すように、リッチスパイク処理(R/S)による燃料消費増加量が多いほど、切り替えの過程におけるNOxの排出許容量が多いという関係が得られる。ただし、リッチスパイク処理による燃料消費量の増加は、燃費悪化に繋がるものである。既述したように、第1切替モードは、そもそも燃費低減の観点で選択される切替モードである。そうであるのに、第1切替モードを利用した切り替えの過程で排出されるNOxの許容量を十分に確保するためにリッチスパイク処理での燃料消費量を増やし過ぎると、却って燃費の悪化を招くことが懸念される。そこで、本実施形態では、図10に示すように、第1切替モードの利用による燃費低減の成立という観点で、リッチスパイク処理による燃料消費増加量の制限値(上限値)が決定されている。この制限値が決まれば、図10に示す関係を利用して、上記制限値に対応するNOx排出量Bを求めることができる。このようにして求められたNOx排出量Bは、第1切替モードを利用する燃焼の切り替えの過程で許容されるNOxの総排出量の上限値に相当する。すなわち、切り替えの過程で各気筒から排出されるNOxの総排出量がNOx排出量B未満であれば、NOx排出量を許容レベル以下に抑制しつつ燃費の観点でもメリットがある状況下において第1切替モードを利用できることになるといえる。このため、本実施形態では、図9中に示すNOx排出量の判定閾値の好ましい設定の一例として、上記NOx排出量Bが使用される。
(実施の形態1における具体的処理)
図11は、本発明の実施の形態1における燃焼の切り替え制御の流れを示すフローチャートである。
図11に示すように、ECU50は、まず、ステップ100において、燃焼の切り替え要求があるか否かを判定する。より具体的には、ECU50は、各運転領域で用いる燃焼方式を規定した関係(図2参照)をマップとして記憶している。そして、現在の運転領域で使用している燃焼方式と、アクセル開度に基づいて算出される現在の要求トルク(目標トルク)に対応する要求運転領域での燃焼方式とを比較して、燃焼の切り替えが要求されているか否かが判定される。また、運転領域上の動作点に変更はない場合であっても、例えば、リーン燃焼が禁止されてストイキ燃焼を用いている際に、その禁止が解かれてストイキ燃焼からリーン燃焼への切り替えが可能となったときにも、燃焼の切り替え要求があると判定される。
ステップ100の判定が成立する場合には、ECU50は、ステップ102に進み、リーン燃焼での目標空燃比の下で現在の要求トルクを実現するために必要な要求吸入空気量Lを算出する。次いで、ECU50は、ステップ104に進み、今回の切り替え要求が、吸入空気量の増加を伴うストイキ燃焼からリーン燃焼への切り替えを要求するものであるか否かを判定する。具体的には、現在の運転領域で使用している燃焼方式がストイキ燃焼であり、要求されている燃焼方式がリーン燃焼である場合であって、ステップ102にて算出した要求吸入空気量Lが現在の実吸入空気量よりも多い場合には、ステップ104の判定が成立する。
ステップ104の判定が不成立となる場合、すなわち、リーン燃焼からストイキ燃焼への切り替え要求である場合、もしくは、吸入空気量の増加を伴わないストイキ燃焼からリーン燃焼への切り替え要求である場合には、ECU50は、ステップ106に進み、直ちに所定の切替動作を実行する。
一方、ステップ104の判定が成立する場合には、ECU50は、ステップ108に進み、図6〜図10を参照して説明した推定手法を利用して、第1切替モードを使用すると仮定した場合に切り替えの過程で各気筒から排出されると予想されるNOxの総排出量の推定値を算出する。次いで、ECU50は、ステップ110に進み、算出したNOxの推定値が図9および図10を参照して説明した判定閾値(NOx排出量B)以上であるか否かを判定する。
ステップ110の判定が不成立となる場合、つまり、今回の燃焼の切り替えに第1切替モードを使用すると仮定した場合に切り替えの過程で排出が予想されるNOxの総排出量が許容レベル内の値であると判断できる場合には、ECU50は、ステップ112に進み、第1切替モードを実行する。
一方、ステップ110の判定が成立する場合、つまり、今回の燃焼の切り替えに第1切替モードを使用した場合に切り替えの過程で排出が予想されるNOxの総排出量が許容レベルを超える値になると判断できる場合には、ECU50は、ステップ114に進み、第2切替モードを実行する。
以上説明した本実施形態の制御によれば、切り替えの過程(すなわち、切り替えの開始時点から終了時点までの期間)でのNOxの総排出量の推定値が判定閾値未満である場合には、燃費面で優れた第1切替モードが使用され、一方、NOxの当該推定値が判定閾値以上である場合には、NOxの排出抑制に適した第2切替モードが第1切替モードの代わりに使用される。換言すると、燃費低減とNOx排出抑制という観点で、切り替えが要求されたときの個々の状況に適した切替モードが選択できるようになる。その一方で、上記の配慮なしに第1切替モードが常に使用されると、切り替えの過程での燃費低減は基本的に図れるが、切り替えの過程で実際に排出されるNOxの総排出量が許容レベルよりも多くなってしまうケースが生じ得る。そして、このようなケースでは、リッチスパイク処理の頻度が高くなってしまうので、第1切替モードの利用による燃費低減を図れなくなる可能性がある。逆に、第2切替モードが常に使用されると、切り替えの過程でのNOxの排出抑制は図れるが、常に燃費面で劣る手法を選択することになってしまう。これに対し、本実施形態の制御によれば、トルク段差を抑制しつつストイキ燃焼からリーン燃焼に切り替えようとする際に、燃費低減とNOxの排出抑制とを好適に両立させられるようになる。
また、切り替えの過程でのNOxの総排出量の推定値に基づいて切替モードを変更するという手法を採用する本実施形態の制御は、以下に説明する空気量応答に関する課題への対策としても高い意義を有する。
図12は、ストイキ燃焼の下で吸入空気量の応答性を高めてエンジントルクを高応答に制御する手法を説明するための図である。図12に示すスロットル制御は、空気量応答を最大限に高めるために、スロットルバルブ24を最速で開き、かつ、要求トルクに応じた開度に対してオーバーシュートを伴った動作でスロットル開度を調整するというものである。その結果、図12には示していないが、吸入空気量の波形もオーバーシュートを伴ったものとなる。そのような吸入空気量のオーバーシュートに対して何らの対策がなされないと、図12中に破線に示すようにエンジントルクの波形にもオーバーシュートが表れることになる。この際、点火時期の遅角によってオーバーシュート分のエンジントルクを低下させることによって、図12中に実線で示すようにオーバーシュートを回避しつつ、吸入空気量の応答性向上によって要求トルクに沿ったエンジントルクを高応答に実現できるようになる。
図13は、ストイキ燃焼からリーン燃焼への切り替え時に、切り替え時間の短縮のために図12に示すスロットル制御を適用することを想定した図である。ストイキ燃焼の下でのトルク制御であれば、図12に示すような制御を行うことに問題はない。しかしながら、図13に示すようなストイキ燃焼からリーン燃焼への切り替え時には、ストイキ燃焼でのトルク制御と同様に点火時期の遅角を利用したエンジントルクの低下を行うことはできない。その理由は、リーン燃焼の下ではストイキ燃焼と比べて燃焼が元々不安定になり易いため、MBT点火時期に対して点火時期の遅角を行うと失火の発生が懸念される。したがって、第1切替モードを利用してストイキ燃焼からリーン燃焼に切り替える場合には、本実施形態の空気量変化率Aの設定もそうであるように、吸入空気量にオーバーシュートを生じさせない範囲内に吸入空気量の変化率を制限する必要がある。具体的には、リーン燃焼を実施する自然吸気領域への切り替えの場合には、スロットル開度をオーバーシュートを伴って制御しないことが必要となる。また、切り替え後のリーン燃焼が自然吸気領域であるか過給領域であるかを問わず、スロットル開度を最速よりも緩やかな動作で開くようにする必要がある。しかしながら、このようにオーバーシュートへの対策のためにスロットル開度の動作に制限を設けることとすると、仮に第1切替モードだけを切替モードとして備えていた場合には、空気量応答に要する時間の増加を抑制するための有効な対策を見つけることが難しくなる。これに対し、本実施形態の制御は、第1切替モードの使用を想定した場合に切り替えの過程でのNOxの総排出量の推定値が判定閾値以上となる場合には、第2切替モードが選択されるように構成されている。つまり、第1切替モードの使用時に吸入空気量の応答遅れが問題となってNOx排出量の増加が懸念される状況下では、ステップ的に空燃比を切り替え可能な第2切替モードの使用によって、吸入空気量の応答遅れの問題から解放された切り替えが可能となる。また、第2切替モードは、ストイキ燃焼の下で吸入空気量を変化させるものであるため、トルク変化の抑制のために点火時期の遅角を利用することができる。このため、吸入空気量にオーバーシュートが生じることを懸念する必要なしにスロットルバルブ24を高応答に制御することができる。
なお、上述した実施の形態1においては、スロットルバルブ24およびWGV42が本発明における「空気量調整手段」に相当している。ECU50がステップ104の判定が成立する状況下においてステップ110の判定結果に応じてステップ112または114の処理を実行することにより本発明における「燃焼切替実行手段」が実現されており、そして、ECU50がステップ108の処理を実行することにより本発明における「NOx排出量推定手段」が実現されている。
実施の形態2.
次に、図14〜図16を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。
実施の形態2のシステムの構成は、図1を参照して既述した内燃機関10のシステム構成と同じであるものとする。
[実施の形態2における燃焼の切り替え制御]
本実施形態においても、吸入空気量の増加を伴ってストイキ燃焼からリーン燃焼に切り替える際の切替モードの選択に関する基本的な考え方は、実施の形態1と同じである。ここで、吸入空気量の増加を必要としつつストイキ燃焼からリーン燃焼に切り替える場合には、切り替え後のリーン燃焼領域が過給を必要としない領域であれば、スロットルバルブ24にて吸入空気量を調整することができる。この場合には、相対的に高い応答性で吸入空気量を調整することができるといえる。一方、リーン燃焼への切り替え時に過給圧を高める必要がある場合(例えば、図2中に示す第2ストイキ燃焼領域から過給リーン領域に動作点が移行する場合)には、吸入空気量を要求吸入空気量LとするためにWGV42を利用した過給圧調整が必要とされる。この場合には、WGV42を閉じ側に制御してタービン22bの回転速度を高めることによって過給圧を高めることになるため、自然吸気領域を対象としたスロットルバルブ24だけでの調整と比べて相対的に吸入空気量の応答性が低くなる。したがって、ストイキ燃焼からリーン燃焼に切り替える際に過給圧を高める必要がある場合に第1切替モードを利用すると、空燃比の切り替えに要する時間が特に長くなる。このため、切り替えの過程においてNOx排出量が多くなる空燃比(16〜20付近の空燃比)にて燃焼が行われる時間が長くなってしまう。そうすると、切り替えの過程でのNOxの総排出量がより大きな推定値として算出されるので、NOxの排出抑制のために第2切替モードが選択され易くなる。その結果、第1切替モードの利用による燃費低減の機会が減少してしまう。
(過給圧リザーブ制御)
本実施形態では、ストイキ燃焼からリーン燃焼への切り替え要求があり、かつ、過給圧を高める要求がある場合には、吸入空気量の応答速度を高めることによって切り替え時間(上述の到達時間ΔT)を短縮するために、空燃比の切り替えに先立ち、過給圧リザーブ制御を行うこととした。ここでいう過給圧リザーブ制御とは、スロットルバルブ24とWGV42との協調制御によって、燃焼切り替え前の理論空燃比の下で要求トルクを実現するために必要な要求吸入空気量Sを維持しつつ、リーン燃焼の下で要求トルクを実現するために必要な要求過給圧Lに向けて過給圧を高める制御である。次に、図3および図4を参照して既述した過給圧リザーブ制御を伴わない場合の動作との相違点を中心として、過給圧リザーブ制御を伴う第1および第2切替モードの動作についてそれぞれ説明する。
図14は、過給圧リザーブ制御を伴う第1切替モードの動作を表したタイムチャートである。上述のように、過給圧リザーブ制御は、切り替え要求が出された時点において、空燃比の切り替えに先立って実行される。具体的には、図14の例は目標トルクが一定の場合であるため、目標吸入空気量がストイキ燃焼の下での目標吸入空気量Sにて一定とされた状態で目標過給圧(要求過給圧)Lとなるように過給圧が高められる。図14に示す目標過給圧Lの決め方自体は、図3に示す過給圧リザーブ制御を伴わない場合と同様である。
過給圧リザーブ制御を伴う場合には、過給圧リザーブ制御を伴わない場合の制御に対し、WGV開度の制御は同様であるがスロットル開度の制御は相違している。すなわち、過給圧の上昇に伴ってスロットル通過空気量(さらには筒内吸入空気量)が変化しないように、スロットル開度は過給圧の上昇に伴って小さくされていく。スロットル通過空気量、スロットル上流圧力(過給圧)およびスロットル下流圧力と、スロットル開度との間には、既知の関係がある。この関係を利用して、吸気圧力センサ30、32を用いてスロットル前後圧力を計測しながら、実過給圧が上昇していく状況において切り替え開始時のスロットル通過空気量を維持できるようにスロットル開度が制御される。
図14に示す例では、過給圧リザーブ制御によって実過給圧が目標過給圧Lとなった時点で過給圧リザーブ制御を完了して、第1切替モードを利用した燃焼(空燃比)の切り替え動作が開始される。具体的には、実過給圧が目標過給圧Lに高まっている状態でスロットルバルブ24が全開とされるとともに、実空燃比がリーン燃焼での目標空燃比に向けて切り替えられていく。切り替え中の空燃比の調整のための燃料噴射量の制御、および、これに付随する点火時期の制御の考え方は、図3を参照して説明した動作と同様である。
以上説明した過給圧リザーブ制御を伴う第1切替モードによれば、吸入空気量を増やす前に過給圧を高めておくことで、過給圧リザーブ制御を伴わない場合と比べて、速やかに吸入空気量を高めることができる。そして、これに伴い空燃比を速やかに切り替えることが可能となる。その結果、NOx排出量の多い空燃比(16〜20付近の空燃比)が使用される時間が短縮されるため、切り替えの過程におけるNOx排出量の増加を抑制することができる。
図15は、過給圧リザーブ制御を伴う第2切替モードの動作を表したタイムチャートである。第2切替モードに組み合わせられる場合にも、過給圧リザーブ制御の動作自体は、第1切替モードに対するものと同じである。そのうえで、図15に示す例では、過給圧リザーブ制御によって実過給圧が目標過給圧Lとなった時点で過給圧リザーブ制御を完了して、第2切替モードを利用した燃焼の切り替え動作が開始される。具体的には、まず、ストイキ燃焼の下で目標トルクを維持しつつ吸入空気量を要求吸入空気量Lに向けて増加させる動作が実行される。この動作は、実過給圧が目標過給圧Lに高まっている状態で行うという点が異なっていることを除き、過給圧リザーブ制御を伴わない場合の第2切替モードの動作と同様である。そして、吸入空気量が目標吸入空気量Lに到達したときに行われる空燃比の切り替えの動作自体も、過給圧リザーブ制御を伴わない場合の第2切替モードの動作と同様である。
以上説明した過給圧リザーブ制御を伴う第2切替モードによれば、過給圧リザーブ制御を伴わない場合と比べて、速やかに吸入空気量を高めることができるので、目標トルクを維持するための点火時期の遅角を行う時間を短縮することができる。このため、切り替えの過程における燃費の悪化を抑制することができる。
(実施の形態2における具体的処理)
図16は、本発明の実施の形態2における燃焼の切り替え制御の流れを示すフローチャートである。なお、図16において、実施の形態1における図11に示すステップと同一のステップについては、同一の符号を付してその説明を省略または簡略する。
図16に示すように、ECU50は、ステップ104の判定が成立した場合にはステップ200に進む。ステップ200では、過給圧を高める要求があるか否かが判定される。より具体的には、ステップ102にて算出された要求吸入空気量Lが所定の閾値よりも多いか否かが判断される。その判断が成り立つ場合にステップ200の判定が成立する。なお、上記の閾値は、要求吸入空気量Lが過給を必要とする値であるか否かを判断するための閾値として予め設定された値である。
ステップ200の判定が不成立となる場合、つまり、吸入空気量の増加を伴うストイキ燃焼からリーン燃焼への切り替えが要求されているが過給圧を高める必要はない場合(例えば、ストイキ燃焼を実施する自然吸気領域からリーン燃焼を実施する自然吸気領域への動作点の移行が要求された場合)には、ECU50は、ステップ108に進む。
一方、ステップ200の判定が成立する場合、つまり、過給圧を高めつつストイキ燃焼からリーン燃焼に切り替える要求がある場合には、ECU50は、ステップ202に進み、過給圧リザーブ制御を実行する。過給圧リザーブ制御のための各アクチュエータの動作は、図14および図15を参照して既述した通りである。
次に、ECU50は、ステップ204に進み、実過給圧が目標過給圧(要求過給圧L)に到達したか否かを判定する。その結果、この判定が不成立となる場合には、過給圧リザーブ制御が継続される。一方、本ステップ204の判定が成立した場合には、ECU50は、ステップ108に進む。過給圧リザーブ制御の実行後にステップ108に進んだ場合のNOxの総排出量の推定値の算出手法は、過給圧リザーブ制御を伴わない場合のものと基本的に同じであるが、以下の点において相違する。すなわち、過給圧リザーブ制御を伴う場合のNOx排出量NOx(k)の算出は、過給圧リザーブ制御の効果を加味して行われる。より具体的には、切り替えの過程での吸入空気量KL(k)の算出に用いる空気量変化率Aとして、過給圧リザーブ制御による吸入空気量の応答性の向上効果を加味した値(事前に定められた値)が用いられる。なお、過給圧リザーブ制御の実行後にステップ108および110を経由してステップ112または114に進んだ場合には、第1切替モードまたは第2切替モードの動作が開始されることをもって、過給圧リザーブ制御が終了されることになる。
以上説明した実施の形態2の制御によれば、実施の形態1の制御と同様の効果に加え、ストイキ燃焼からリーン燃焼への切り替え時に過給圧を高める必要がある場合に、次のような効果を奏することができる。すなわち、過給圧リザーブ制御を伴って第1切替モードが実行された場合には、吸入空気量の応答性向上によって、到達時間ΔTが短縮される。このため、過給圧リザーブ制御を伴わない場合と比べて切り替えの過程でのNOxの総排出量を低減させることができる。このことは、過給を伴うリーン燃焼への切り替えが要求された場合に燃費面で優れた第1切替モードの利用機会を増やすことに寄与する。また、過給圧リザーブ制御を伴って第2切替モードが実行された場合には、吸入空気量の応答性向上によって、目標トルクを維持するために点火時期を遅角する時間が短縮される。このため、過給圧リザーブ制御を伴わない場合と比べて切り替えの過程での点火遅角による燃費のロスを低減させることができる。これにより、第2切替モードが選択されたときの燃費の悪化を軽減させることができる。
ところで、上述した実施の形態2においては、スロットルバルブ24とWGV42との協調制御によって過給圧リザーブ制御を行う例について説明を行った。しかしながら、本発明において過給圧リザーブ制御の実行のためにスロットルバルブとともに使用される「アクチュエータ」は、コンプレッサの駆動力を調整して過給圧を制御可能なものであれば、WGV42に限られない。すなわち、上記アクチュエータは、例えば、タービンに流入する排気ガスの流量を可変とする可変ノズルを有するターボ過給機を備える内燃機関であれば可変ノズルであってもよい。また、上記アクチュエータは、例えば、コンプレッサを駆動可能な電動機を有する過給機を備える内燃機関であれば当該電動機であってもよい。
なお、上述した実施の形態2においては、ECU50がステップ200の判定が成立する状況下においてステップ204の判定が成立するまでステップ202の処理を実行することにより本発明における「リザーブ制御実行手段」が実現されている。
その他実施の形態.
ところで、上述した実施の形態1および2においては、ストイキ燃焼からリーン燃焼への切り替えを対象とした制御を例に挙げて説明を行った。しかしながら、本発明における第1燃焼から第2燃焼(リーン燃焼)への切り替えの対象となる「第1燃焼」は、ストイキ燃焼に限られるものではなく、理論空燃比よりも小さな空燃比でのリッチ燃焼であってもよい。このようなリッチ燃焼からリーン燃焼への切り替えの具体例としては、例えば、既述したリッチスパイク処理のためにリーン燃焼中にリッチ燃焼を一時的に実行した後に、リッチ燃焼からリーン燃焼に戻す要求がある場合が該当する。
また、実施の形態1および2においては、図6〜図8を参照して説明した推定手法を用いて、ストイキ燃焼からリーン燃焼への切り替えを第1切替モードを実行して行うと仮定した場合に空燃比の切り替えの過程で各気筒内から排出されるNOxの総排出量を推定することとしている。しかしながら、本発明における「NOxの総排出量」の推定手法は、上記のものに限られるものではなく、例えば、次のような手法であってもよい。すなわち、ストイキ燃焼からリーン燃焼への切り替えが要求された場合の要求吸入空気量L(目標要求吸入空気量L)から現在の(つまり、要求が出された時点の)吸入空気量を引いて得られる差(上記ΔKL)が大きくなると、第1切替モードでの空燃比の切り替えに要する時間が長くなり、NOxの総排出量が増加する。したがって、切り替えが要求された場合には、この差を算出し、算出した差の大きさを利用してNOxの総排出量を簡易的に推定するようにしてもよい。具体的には、例えば、この差を少なくともパラメータとしてNOxの総排出量を規定するマップをECU50が備えるようにしたうえで、NOxの総排出量は、そのようなマップに従って推定(算出)されるものであってもよい。より具体的には、当該マップによれば、NOxの総排出量は、上記の差が大きいほど大きくなる値として算出される。そして、このような手法によって算出されたNOxの総排出量が所定の判定閾値(例えば、上記NOx排出量B)未満である場合には第1切替モードを使用し、NOxの当該総排出量が判定閾値以上である場合には第2切替モードを使用するようにしてもよい。さらに付け加えると、吸入空気量の上記の差が同じ値であっても燃焼の切り替えの対象となるエンジン運転領域が異なると、吸入空気量の応答性が異なり、その結果として、空燃比の切り替えに要する時間が変化する。このため、上記マップは、当該マップを規定するための上記差以外のパラメータとして、例えば、燃焼の切り替えが要求されたときの現在の吸入空気量およびそのときのエンジン回転速度を備えるようにし、これらの吸入空気量およびエンジン回転速度の少なくとも一方の大きさをも考慮してNOxの総排出量が規定されることが好ましい。また、ストイキ燃焼からリーン燃焼への切り替えのために過給圧を高める必要があるか否かによって、既述したように吸入空気量の応答性が異なる。このため、上記の差に基づいてNOxの総排出量を規定する上記マップは、過給圧を高める必要の有無に応じて2通り備えるようにしてもよい。
また、本発明の思想に基づく第1切替モードまたは第2切替モードの選択は、必ずしも、NOxの総排出量の推定手法(例えば、図6〜図8を参照して説明した推定手法、もしくは上記マップを利用した推定手法)を用いて実際にNOxの総排出量を算出し、算出されたNOxの総排出量を判定閾値と比較して行うものに限られない。すなわち、例えば、吸入空気量の上記の差が所定の判定閾値(本発明における「第2所定値」に相当)未満である場合にはECU50が第1切替モードを実行するという処理を行うことにより、本発明における第1切替モードが、NOxの総排出量が第1所定値未満となる状況下において実行されるようになっていてもよい。そして、上記の差が上記判定閾値以上である場合にはECU50が第2切替モードを実行するという処理を行うことにより、本発明における第2切替モードが、NOxの総排出量が第1所定値以上となる状況下において実行されるようになっていてもよい。
また、実施の形態1および2においては、過給エンジンである内燃機関10を例に挙げて説明を行った。しかしながら、実施の形態1において説明したように、切り替えの過程でのNOxの総排出量の大きさに応じた切替モードの選択の対象には、ストイキ燃焼を実施する自然吸気領域からリーン燃焼を実施する自然吸気領域への切り替えも含まれている。したがって、本発明の対象となる内燃機関は、過給エンジンに限らず、自然吸気エンジンであってもよい。
10 内燃機関
12 内燃機関本体
14 吸気通路
16 排気通路
18 エアクリーナ
20 エアフローメータ
22 ターボ過給機
22a コンプレッサ
22b タービン
22c 連結軸
24 スロットルバルブ
26 吸気マニホールド
28 インタークーラ
30 第1吸気圧力センサ
32 第2吸気圧力センサ
34 燃焼室
36 燃料噴射弁
38 点火プラグ
40 排気バイパス通路
42 ウェイストゲートバルブ(WGV)
44 空燃比センサ
46 三元触媒
48 NSR触媒(吸蔵還元型NOx触媒)
50 ECU(Electronic Control Unit)
52 クランク角センサ
54 アクセル開度センサ

Claims (6)

  1. 吸入空気量を調整する空気量調整手段と、内燃機関に燃料を供給する燃料噴射弁と、筒内の混合気に点火する点火装置とを備える前記内燃機関を制御し、かつ、理論空燃比以下の空燃比での第1燃焼と理論空燃比よりも大きな空燃比での第2燃焼とを実施可能な内燃機関の制御装置であって、
    第1燃焼から第2燃焼に切り替える際に第1切替モードもしくは第2切替モードを実行する燃焼切替実行手段を備え、
    前記第1切替モードを実行する場合に前記燃焼切替実行手段は、吸入空気量を増加させ、かつ、吸入空気量の当該増加の過程で要求トルクに対するエンジントルクの変化を抑制しつつ空燃比が第2燃焼での目標空燃比となるように燃料噴射量と点火時期とを調整し、
    前記第2切替モードを実行する場合に前記燃焼切替実行手段は、第1燃焼における空燃比を維持した状態で吸入空気量を増加させ、かつ、吸入空気量の当該増加に伴って、燃料噴射量を増加させるとともに点火時期を遅角し、吸入空気量が切り替え後の第2燃焼に必要な要求吸入空気量に到達してから、空燃比が第2燃焼での目標空燃比となるように燃料噴射量を減少させるとともに点火時期を進角し、
    前記第1切替モードは、第1燃焼から第2燃焼への切り替えを前記第1切替モードを実行して行うと仮定した場合に空燃比の切り替えの過程で筒内から排出されるNOxの総排出量が第1所定値未満となる状況下において実行され、一方、前記第2切替モードは、NOxの前記総排出量が前記第1所定値以上となる状況下において実行されることを特徴とする内燃機関の制御装置。
  2. 前記内燃機関は、
    前記内燃機関の吸気通路に配置され、吸入空気を過給するコンプレッサと、
    前記コンプレッサよりも下流側の前記吸気通路に配置され、吸入空気量を調整するスロットルバルブと、
    前記コンプレッサの駆動力を調整して過給圧を制御するアクチュエータと、
    を備え、
    前記制御装置は、第1燃焼から第2燃焼に切り替える際に過給圧を高める要求がある場合に、要求トルクを第1燃焼の下で実現するために必要な要求吸入空気量を維持しつつ過給圧を高める過給圧リザーブ制御を、前記スロットルバルブと前記アクチュエータとを用いて実行するリザーブ制御実行手段をさらに備え、
    前記燃焼切替実行手段は、前記過給圧リザーブ制御が終了した後に、第1燃焼から前記第2燃焼への燃焼の切り替えを開始することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  3. 前記制御装置は、NOxの前記総排出量を推定するNOx排出量推定手段をさらに備え、
    前記燃焼切替実行手段は、前記NOx排出量推定手段により推定されたNOxの前記総排出量が前記第1所定値未満である場合には前記第1切替モードを実行し、推定されたNOxの前記総排出量が前記第1所定値以上である場合には前記第2切替モードを実行することを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の制御装置。
  4. 前記NOx排出量推定手段は、第1燃焼から第2燃焼に切り替える過程での吸入空気量の変化率に基づいて、NOxの前記総排出量を推定することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の制御装置。
  5. 前記NOx排出量推定手段は、第1燃焼から第2燃焼への切り替えが要求されたときの吸入空気量と前記要求吸入空気量との差を少なくともパラメータとしてNOxの前記総排出量を規定するマップに従って、NOxの前記総排出量を算出することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の制御装置。
  6. 前記燃焼切替実行手段は、第1燃焼から第2燃焼への切り替えが要求されたときの吸入空気量と前記要求吸入空気量との差が第2所定値未満である場合には前記第1切替モードを実行し、一方、前記差が前記第2所定値以上である場合には前記第2切替モードを実行することを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の制御装置。
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