JP2016108264A - フルオレセイン誘導体またはその塩、グルタチオン−s−トランスフェラーゼ測定用蛍光プローブ、およびこれを用いたグルタチオン−s−トランスフェラーゼ活性の測定方法 - Google Patents

フルオレセイン誘導体またはその塩、グルタチオン−s−トランスフェラーゼ測定用蛍光プローブ、およびこれを用いたグルタチオン−s−トランスフェラーゼ活性の測定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】GST非依存的なグルタチオンとの反応性が低く、十分に高いS/N比を達成可能で、且つ、酸性領域のpH条件下における生成物の蛍光強度の減少が最小限に抑制されうるような蛍光プローブの提供。
【解決手段】式(1)で表されるフルオレセイン誘導体又はその塩。

【選択図】図1

Description

本発明は、フルオレセイン誘導体またはその塩、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ測定用蛍光プローブ、およびこれを用いたグルタチオン−S−トランスフェラーゼ活性の測定方法に関する。
グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(本明細書中、「GST」とも称する)は、親電子性化合物と還元型グルタチオン(本明細書中、「GSH」とも称する)との抱合体の生成反応を触媒する酵素であり、薬物代謝酵素として薬物や内在性活性代謝物のグルタチオン抱合に関与していることが知られている。生体内において、GSTは、これら抱合体を生成することにより、例えば、親電子性化合物を無毒化したり、排出したりする役割を担っている。また、GSTはこれ以外にも、ステロイドホルモンの生合成・アミノ酸の分解・プロスタグランジンの生合成など、多岐にわたる機能をもつ。また、GSTのいくつかのサブタイプはがん細胞において過剰発現しており、阻害剤処理やノックダウンが細胞死を誘導することから、創薬における重要な標的と考えられている。
このため、GSTの活性を測定して特定疾患の診断に役立てるニーズもある。さらに、生化学の研究分野では、GSTを利用したキットが多数開発されており、GSTの活性を正確に測定するという要求は非常に高い。
ここで、従来提案されているGST活性の測定方法としては、吸光法(比色法)、生物発光法、蛍光法などがある。
吸光法(比色法)によるGST活性の測定方法として、例えば、2,4−ジニトロクロロベンゼン(CDNB)を用いて、グルタチオン化生成物の340nmにおける吸光度の変化を検出する方法が知られている。しかしながら、この方法では吸光法によるという性質上、生成物の波長に吸収を有する化合物を含む化合物スクリーニングなどにおいては、偽陽性または偽陰性を生じる可能性が非常に高く、また、感度が低いという問題もあった。
続いて、生物発光法によるGST活性の測定方法として、例えば非特許文献1には、ケージドルシフェリンのニトロベンゼンスルホン酸エステルがGSTによる芳香族求核置換反応(脱保護反応)を受けて生成するルシフェリンを、ATPおよびルシフェラーゼの存在下において発光させて、その発光強度からGST活性を測定する方法が開示されている。この方法は生物発光法であることから、励起光照射の必要がなく、極めて大きなシグナル−ノイズ比(S/N比)を達成可能であるという利点がある。しかしながら、ルシフェラーゼが必要であることから、GST阻害剤のスクリーニングなどにおいては、ルシフェラーゼ活性の阻害により偽陽性が生じる可能性が高く、また、活性測定の対象となりうるGST種も限られるという問題を抱えている。
さらに、蛍光法によるGST活性の測定方法として、いくつかの蛍光プローブが開発されている。例えば非特許文献2には、クレシルバイオレットのジニトロベンゼンスルホニルアミド体(DNs−CV)からなる蛍光プローブが開示されている。このDNs−CVがGSTによるグルタチオン抱合反応を受けると、ジニトロベンゼンスルホン部位が脱保護され、蛍光性クレシルバイオレットが遊離する。しかしながら、In vitroにおける酵素アッセイ・細胞内GST活性の検出には数十μMと高濃度のプローブが必要であり、反応性の面で他の蛍光プローブに劣る。また、脂溶性が極めて高いため、阻害剤スクリーニングなどのような実験系においては、偽陽性または偽陰性を生じる可能性が高いという問題もある。
非特許文献3には、極大吸収波長394nm/極大蛍光波長490nmを有する市販の化合物であるモノクロロバイマン(Monochlorobimane;mBCl〉を蛍光プローブとして用いる技術が開示されている。また、非特許文献4には、極大吸収波長394nm/極大蛍光波長490nmを有する化合物である6−クロロアセチル−2−ジメチルアミノナフタレン(CADAN)を蛍光プローブとして用いる技術が開示されている。これらの蛍光プローブはともに、GST活性によるクロロ基のGSHへの置換反応によって、強蛍光性であるグルタチオン抱合体を生成する。しかしながら、両者に共通する欠点として、UV領域の励起は実験などに用いるプレートなどから強い自家蛍光を生じるため、S/N比を大きく損ねてしまうという問題がある。阻害剤のスクリーニングなどへの応用例については報告がないが、同じ波長領域に吸収・蛍光を有する化合物の割合は少なくないことから、偽陰性を生じる可能性が非常に高いと考えられる。
さらに、非特許文献5には、490nmに極大吸収波長、510nm付近に極大蛍光波長をそれぞれ有するプローブとして、DNAF類やDNAT−Meといった一連の蛍光プローブが開示されている。これらの蛍光プローブはGST活性によるグルタチオン化と、これに伴う脱ニトロ化反応によって大きな蛍光強度上昇を示す。このように、非特許文献5に開示された蛍光プローブは、GST存在下での反応性が極めて高く、比較的有用な蛍光プローブではあるということができる。
Chem Commun (Camb). 2006 (44):4620-4622 J Am Chem Soc. 2011, 133(35):14109-14119 J. Pharm. Pharmacol. 1983, 35, 384-386 Anal. Biochem. 2002, 311, 171-178 J Am Chem Soc. 2008, 130(44):14533-14543
しかしながら、非特許文献5に開示された蛍光プローブ(DNAF類やDNAT−Me)は、GST非依存的なグルタチオンとの反応性が高いことから、十分なS/N比が得られないという問題がある。また、反応後の蛍光量子収率が0.1程度(0.1N NaOH水溶液中でのフルオレセインの量子収率を0.85とした場合〉と低い。さらに、本発明者らの検討によれば、DNAF類を蛍光プローブとして用いると、弱酸性領域のpH条件下では生成物の蛍光強度が大幅に減少するという問題もあることが判明した。
そこで本発明は、GST非依存的なグルタチオンとの反応性が低く十分に高いS/N比を達成可能で、かつ、弱酸性領域のpH条件下における生成物の蛍光強度の減少が最小限に抑制されうるような蛍光プローブを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、驚くべきことに、特定部位にフッ素原子または塩素原子が導入されたフルオレセイン誘導体が、上記課題を解決可能な蛍光プローブとして有用であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の一形態によれば、下記一般式(1):
式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子またはベンゼン環に結合する1〜3個の同一または異なる置換基を表し;R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基またはハロゲン原子を表し;XおよびXは、それぞれ独立して、フッ素原子または塩素原子を表す、
で表されるフルオレセイン誘導体またはその塩が提供される。
また、本発明の他の形態によれば、上記フルオレセイン誘導体またはその塩を含む、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ測定用蛍光プローブが提供される。
さらに、本発明のさらに他の形態によれば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ活性の測定方法であって、下記の工程:
(1)上記フルオレセイン誘導体またはその塩を、還元型グルタチオンの存在下でグルタチオン−S−トランスフェラーゼと反応させる工程;および、
(2)反応の前後における蛍光の変化を検出する工程、
を含む、測定方法が提供される。
本発明によれば、GST非依存的なグルタチオンとの反応性が低く十分に高いS/N比を達成可能で、かつ、弱酸性領域のpH条件下における生成物の蛍光強度の減少が最小限に抑制されうるような蛍光プローブが提供される。
実施例において、3,4−DNADCFおよびDNAF1について、GSTによる反応前後での吸収スペクトルおよび(反応生成物の)蛍光スペクトルのpH依存性を比較した結果を示すグラフである。 実施例において、3,4−DNADCFについて、GSHとの酵素非依存的な反応性の指標である二分子反応速度定数kのpH依存性を比較した結果を示すグラフである。 実施例において、3,4−DNADCFについて、GSTによる反応前後における吸収ピーク強度および(反応生成物の)蛍光強度のpH依存性を比較した結果を示すグラフである。 図4(A)は、実施例において、3,4−DNADCFについて、異なるpH条件下でのGSTとの反応による蛍光強度の経時的な変化を測定した結果を示すグラフである。図4(B)は、実施例において、3,4−DNADCFについて、GSTP1−1の存在下における反応速度(VGSTP1+GSH)のGSTP1−1の非存在下における反応速度(VGSH)に対する比(VGSTP1+GSH/VGSH)を算出した結果を示すグラフである。 実施例において、3,4−DNADCFについて、GSTおよび還元型グルタチオンの存在下における反応液組成の経時的な変化をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)法により測定した結果を示すチャートである。 実施例において、3,4−DNADCFについて、反応開始270秒後における反応液をLC−MS(液体クロマトグラフィー−質量分析)法により解析した結果を示す図である。 実施例において、3,4−DNADCFについて、種々の種類および濃度のGSTを用いてGST活性を測定した場合の蛍光強度の経時的な変化を測定した結果を示すグラフである。 実施例において、3,4−DNADCFについて、(A)GSTA1−1、(B)GSTM1−1、(C)GSTP1−1、および(D)GSTnoboの4種の異なるGSTを用いて酵素反応速度論を比較した結果を示すミカエリスメンテンプロットのグラフである。
以下、本発明の実施形態を説明する。
本発明の一形態は、下記一般式(1):
で表されるフルオレセイン誘導体またはその塩である。
一般式(1)において、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子またはベンゼン環に結合する1〜3個の同一または異なる置換基を表す。置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子のいずれであってもよい)、アミノ基、モノもしくはジ置換アミノ基、置換シリル基、またはアシル基などが挙げられるが、これらに限定されることはない。また、それぞれのベンゼン環上に2個以上の置換基が存在する場合には、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。なお、RおよびRとしてはともに水素原子が好ましい。
一般式(1)において、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基またはハロゲン原子を表す。好ましい実施形態において、R、R、RおよびRは、水素原子またはフッ素原子または塩素原子であり、より好ましくは、いずれも水素原子である。
一般式(1)において、XおよびXは、それぞれ独立して、フッ素原子または塩素原子を表す。好ましい実施形態において、XおよびXの少なくとも一方が塩素原子であり、特に好ましくはXおよびXがともに塩素原子である。
本発明の好ましい実施形態において、一般式(1)で表される化合物は、R、R、R、R、RおよびRが水素原子であり、XおよびXが塩素原子である化合物またはその塩である(後述する実施例において合成されている3,4−DNADCF)。
本明細書において、「アルキル基」は直鎖状、分枝鎖状、環状、またはそれらの組み合わせからなるアルキル基のいずれであってもよい。アルキル基の炭素数は特に限定されないが、例えば炭素数1〜6個程度、好ましくは炭素数1〜4個程度である。本明細書において、アルキル基は任意の置換基を1個以上有していてもよい。前記置換基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子のいずれであってもよい)、アミノ基、モノもしくはジ置換アミノ基、置換シリル基、またはアシル基などが挙げられるが、これらに限定されることはない。アルキル基が2個以上の置換基を有する場合には、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。アルキル部分を含む他の置換基(例えばアルキルオキシ基やアラルキル基など)のアルキル部分についても同様である。
本明細書において、「アルコキシ基」は、−O−アルキル基を意味し、ここで「アルキル基」は上述した定義を有する基である。
本明細書において、「アミノ基」は−NH基を意味し、「モノもしくはジ置換アミノ基」は、アミノ基の水素原子の一方または双方が置換基によって置換されてなる基を意味する。前記置換基としては、例えば、アルキル基などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
本明細書において、「置換シリル基」は、シリル基(−SiH基)の少なくとも1つの水素原子が置換基によって置換されてなる基を意味する。前記置換基としては、例えば、アルキル基などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
本明細書において、「アシル基」は脂肪族アシル基または芳香族アシル基のいずれであってもよく、芳香族基を置換基として有する脂肪族アシル基であってもよい。アシル基は1個または2個以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。例えば、アシル基としてアルキルカルボニル基(アセチル基など)、アルキルオキシカルボニル基(アセトキシカルボニル基など)、アリールカルボニル基(ベンゾイル基など)、アリールオキシカルボニル基(フェニルオキシカルボニル基など)、アラルキルカルボニル基(ベンジルカルボニル基など)、アルキルチオカルボニル基(メチルチオカルボニル基など)、アルキルアミノカルボニル基(メチルアミノカルボニル基など)、アリールチオカルボニル基(フェニルチオカルボニル基など)、又はアリールアミノカルボニル基(フェニルアミノカルボニル基など)などのアシル基が挙げられるが、これらに限定されることはない。これらのアシル基は任意の置換基を1個以上有していてもよい。前記置換基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、モノもしくはジ置換アミノ基、置換シリル基、またはアシル基などが挙げられるが、これらに限定されることはない。アシル基が2個以上の置換基を有する場合には、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。
上記一般式(1)で表される化合物は塩として存在する場合がある。塩としては、塩基付加塩、酸付加塩、アミノ酸塩などが挙げられる。塩基付加塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などの金属塩、アンモニウム塩、またはトリエチルアミン塩、ピペリジン塩、モルホリン塩などの有機アミン塩が挙げられる。また、酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩などの鉱酸塩、メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩などの有機酸塩が挙げられる。アミノ酸塩としてはグリシン塩などが例示されうる。ただし、本発明に係る化合物の塩はこれらに限定されることはない。
一般式(1)で表される本発明の化合物は、置換基の種類に応じて1個または2個以上の不斉炭素を有する場合があり、エナンチオマーまたはジアステレオマーなどの立体異性体が存在する場合がある。純粋な形態の立体異性体、立体異性体の任意の混合物、ラセミ体などはいずれも本発明の範囲に包含される。
一般式(1)で表される本発明の化合物またはその塩は、水和物または溶媒和物として存在する場合もあるが、これらの物質はいずれも本発明の技術的範囲に包含される。溶媒和物を形成する溶媒の種類は特に限定されないが、例えば、エタノール、アセトン、イソプロパノールなどの溶媒が挙げられる。
一般式(1)で表される本発明の化合物は、親水性の化合物であることが好ましい。本明細書では、化合物の親水性の指標として「logP値」を用いることができる。ここで、「logP値」とは、「オクタノール−水分配係数」や「logPow」とも称され、n−オクタノールおよび水からなる二相溶媒系の各相へのある物質の分配濃度の比の値の常用対数として定義され、値が大きいほど親油性が高い(親水性が低い)ことを意味する。なお、本明細書において、logP値の値としては、JIS Z−7260−107:2000に記載のフラスコ振盪法により測定が可能である。また、logP値については、実測に代わって、計算化学的手法または経験的方法により見積もることも可能である。
計算方法としては、Crippen’s fragmentation法(“J.Chem.Inf.Comput.Sci.”,27巻、p21(1987年))、Viswanadhan’s fragmentation法(“J.Chem.Inf.Comput.Sci.”,29巻、p163(1989年))、Broto’s fragmentation法(“Eur.J.Med.Chem.−Chim.Theor.”,19巻、p71(1984年))、CLogP法(参考文献Leo,A.,Jow,P.Y.C.,Silipo,C.,Hansch,C.,J.Med.Chem.,18,865 1975年)などが好ましく用いられるが、Crippen’s fragmentation法(“J.Chem.Inf.Comput.Sci.”,27巻、p21(1987年))がより好ましい。ただし、上述したフラスコ振盪法による測定値と計算化学的手法または経験的方法によって見積もられた値とが有意に異なる場合には、フラスコ振盪法による測定値が優先するものとする。
本発明において一般式(1)で表される化合物のlogP値は、好ましくは5.2以下であり、より好ましくは5.0以下であり、さらに好ましくは4.8以下であり、いっそう好ましくは4.6以下であり、特に好ましくは4.4以下であり、最も好ましくは4.2以下である。本発明に係る化合物が、かような範囲内のlogP値を示す程度に親水性であると、GST阻害剤のスクリーニングなどの際に、一般式(1)で表される化合物と親油性が高い阻害剤との相互作用を低減することができる。このような相互作用を低減できると、偽陰性または偽陽性に基づく判定の誤りを低減することが可能となるため、好ましい。一方、一般式(1)の化合物のlogP値の下限値について特に制限はないが、通常は1.5以上程度のlogP値であれば、上述したような効果を十分に得ることができる。なお、後述する実施例において合成されている本発明に係る化合物である3,4−DNADCFのlogP値は4.16である。
一般式(1)で表される本発明の化合物は、例えば、従来公知の文献(Synthesis 2009, 7; 1224-1226(非特許文献6)およびJ Am Chem Soc. 2008, 130(44):14533-14543(非特許文献5))に記載の手法を参照しつつ、合成することが可能である。本明細書の実施例の欄には、一般式(1)で表される本発明の化合物に包含される代表的化合物についての製造方法が具体的に示されており、当業者は本明細書の開示を参照することにより、また、必要に応じて本願出願時の技術常識を参酌することで出発原料や試薬、反応条件などを適宜選択することにより、一般式(1)に包含される任意の化合物を容易に製造することができる。
一般式(1)で表される本発明の化合物は、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)測定用の蛍光プローブとして使用することができる。本発明の化合物は、中性領域(例えばpH5〜9の範囲)では実質的に無蛍光である。一方、還元型グルタチオン(GSH)およびグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)の存在下では、本発明の化合物におけるベンゼン環のパラ位(4位)に結合しているニトロ基(−NO基)が脱離するとともにこのパラ位(4位)がグルタチオン化され、強蛍光性の化合物となる。例えば、一般式(1)で表される化合物またはその塩は、中性領域において例えば505nm程度の励起光を照射した場合にはほとんど蛍光を発しないが、上記のようにグルタチオン化された化合物は同じ条件下において極めて強い蛍光(例えば、蛍光波長525nm)を発する性質を有している。従って、本発明の化合物をGST測定用の蛍光プローブとして使用することにより、GSTの存在を蛍光強度の変化により測定することが可能になる。
このことを利用して、本発明の他の形態によれば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)活性の測定方法もまた、提供される。当該測定方法は、下記の工程:
(1)本発明により提供されるフルオレセイン誘導体(一般式(1)で表される化合物)またはその塩を、還元型グルタチオン(GSH)の存在下でグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)と反応させる工程;および、
(2)反応の前後における蛍光の変化を検出する工程、
を含むものである。一般式(1)で表される化合物を各種試料中のGSTと反応させることで強蛍光性の化合物(グルタチオン化体)を生成させ、この化合物(グルタチオン化体)の蛍光を測定することにより、試料中のGST活性を測定することができる。
上記測定方法によって活性を測定する対象であるグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)の種類は特に制限されず、還元型グルタチオン(GSH)の存在下で、一般式(1)で表される化合物のベンゼン環におけるパラ位(4位)に結合しているニトロ基を脱離させてこのパラ位(4位)をグルタチオン化できるものであればよい。例えば、図5(A)および図5(B)に記載の各種GSTが例示されるが、これらに限定されることはない。
なお、本明細書において「測定」という用語は、検出、定量、定性など種々の目的の測定を含めて最も広義に解釈されるべきである。本発明の方法によるGST活性の測定は中性条件下に行うことができ、例えば、pH5.0〜9.0の範囲で行うことができる。ここで、非特許文献5に開示されている蛍光プローブであるDNAF1をpH6.5などの弱酸性条件下で用いてGSTの活性を測定すると、反応生成物の蛍光強度の低下が見られることが判明した。これに対し、本発明に係るフルオレセイン誘導体またはその塩を蛍光プローブとして用いることで、pH6.5などの酸性条件下での測定であってもかような蛍光強度の低下はほとんど見られない。したがって、本発明に係るGST活性の測定方法の好ましい実施形態では、pH6.3〜8.5の範囲で測定が行われ、より好ましくはpH6.4〜6.6の範囲で測定が行われる。
GST活性の測定方法の対象である試料の由来は特に制限されず、生体由来の試料であってもよいし、非生体由来の試料であってもよい。生体由来の試料の種類は特に制限されないが、例えば、血液、リンパ液、髄液その他の体液;細胞抽出物(ホモジネート)などが挙げられる。
本発明に係るGST測定用蛍光プローブとしては、上記一般式(1)で表される化合物またはその塩をそのまま用いてもよいが、必要に応じて、試薬の調製に通常用いられる添加剤を配合して組成物として用いてもよい。例えば、生理的環境で試薬を用いるための添加剤として、溶解補助剤、pH調節剤、緩衝剤、等張化剤などの添加剤を用いることができ、これらの配合量は当業者に適宜選択可能である。これらの組成物は、粉末形態の混合物、凍結乾燥物、顆粒剤、錠剤、液剤など適宜の形態の組成物として提供される。
以下、実施例を用いて本発明の好ましい実施形態についてより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲が下記の実施例によって限定されるわけではない。
[合成例]
従来公知の文献(Synthesis 2009, 7; 1224-1226(非特許文献6)およびJ Am Chem Soc. 2008, 130(44):14533-14543(非特許文献5))に記載の手法を参照し、下記の合成スキームに従って本発明に係るフルオレセイン誘導体(下記の合成スキームに記載の化合物(5)(「3,4−DNADCF」とも称する))を合成した。
上記合成スキームに記載の化合物(3)〜(5)の機器データは以下の通りである。
(化合物(3)の機器データ)
(化合物(4)の機器データ)
(化合物(5)の機器データ)
[GSTによる反応前後における吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルのpH依存性]
上記で合成した化合物(5)(3,4−DNADCF)および従来公知(非特許文献5に記載)の蛍光プローブであるDNAF1(化合物(5)(3,4−DNADCF)における2つの塩素原子がともに水素原子で置換された構造を有する化合物)について、GSTによる反応前後での吸収スペクトルおよび(反応生成物の)蛍光スペクトルのpH依存性を比較した。
具体的には、1μMの3,4−DNADCFおよびDNAF1をそれぞれ100mMリン酸バッファー(pH6.5またはpH7.4;DMSO0.1%を共溶媒として用いた)に溶解し、反応前の吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルを測定した。なお、吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルの測定には、それぞれ紫外・可視分光光度計(V−550、日本分光株式会社製)および蛍光分光光度計(RF−5300PC;株式会社島津製作所製)を用いた。また、蛍光スペクトル測定時の励起波長は490nmとした。
一方、1μMの3,4−DNADCFおよびDNAF1をそれぞれ、100μMの還元型グルタチオン(GSH)および1.2μg/mlのグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GSTP1−1)を含む100mMリン酸バッファー(pH6.5またはpH7.4;DMSO0.1%を共溶媒として用いた)中、室温(25℃)にて撹拌しながら10分間反応させた。その後、上記と同様にして反応後の吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルを測定した。
3,4−DNADCFについての測定結果を図1の(A)および(B)に示し、DNAF1についての測定結果を図1の(C)および(D)に示す。これらの結果から明らかなように、pH7.4の条件下では、3,4−DNADCFとDNAF1との間で、蛍光スペクトルに違いは見られなかった。これに対し、pH6.5の条件下では、DNAF1の蛍光スペクトルの発光強度が3,4−DNADCFと比較して大幅に減少していることがわかる。このことから、本発明に係る蛍光プローブである3,4−DNADCFは、従来公知の蛍光プローブであるDNAF1よりも、GST活性測定を行う際のpH領域におけるpH変化に対して安定であることが示された。
なお、図1(A)(C)に示す吸収スペクトル(pH7.4)から得られる極大吸収波長(λex)および図1(B)(D)に示す蛍光スペクトル(pH7.4)から得られる極大蛍光波長(λem)を下記の表1に示す。また、0.1N NaOH水溶液中におけるフルオレセインの量子収率を0.84とし、これに対する相対蛍光量子収率(apparent Q. E.)を算出した結果も併せて下記の表1に示す。
[GSHとの二分子反応速度定数kのpH依存性]
上記で合成した3,4−DNADCFについて、GSHとの酵素非依存的な反応性の指標である二分子反応速度定数kのpH依存性を比較した。
具体的には、1μMの3,4−DNADCFを100mMリン酸バッファー(pH6.5またはpH7.4;DMSO0.1%を共溶媒として用いた)に溶解し、還元型グルタチオン(GSH)を終濃度2〜5mMとなるように加え、室温(25℃)で撹拌しながら時間に伴う蛍光強度変化を5分間記録した。なお、測定条件としては以下の条件を用いた:測定モード:タイムコース、パラメータは、励起/蛍光波長505/525nm、バンド幅:励起/蛍光1.5/1.5nm、感度:High。
測定終了後、測定により得られた単位時間当たりの蛍光強度上昇を、1μMの3,4−DNADCFを100μM GSHおよびGSTP1−1の存在下で反応させた際の反応生成物の蛍光強度に基づいて、単位時間当たりの濃度変化に換算した。換算された速度、使用したGSH濃度、および3,4−DNADCF濃度から、二分子反応速度定数kを算出した。
上記の測定結果を図2に示す。図2に示す結果から明らかなように、本発明に係る蛍光プローブを構成する3,4−DNADCFの還元型グルタチオン(GSH)との酵素非依存的な反応性を示す二分子反応速度定数kは、pH7.4の条件下よりもpH6.5の条件下の方がより小さい値を示すことがわかる。つまり、3,4−DNADCFを蛍光プローブとしてGST活性を測定するときには、pH6.5の条件下で測定を行うことで、pH7.4の条件下よりも酵素非依存的な反応の進行に起因するS/N比の低下が抑制されることが示された。
[GSTによる反応前後における吸収強度および蛍光強度のpH依存性]
上記で合成した3,4−DNADCFについて、GSTによる反応前後における吸収強度および(反応生成物の)蛍光強度のpH依存性を比較した。
具体的には、まず、1μMの3,4−DNADCFを100mMリン酸バッファー(図3(A)に示すpH;DMSO0.1%を共溶媒として用いた)に溶解し、紫外・可視分光光度計(V−550、日本分光株式会社製)を用いて、各pHにおける反応前の吸収強度(505nmにおける吸光度)を測定した。結果を図3(A)に示す。
一方、10μMの3,4−DNADCFを5mMリン酸バッファー(pH7.4;DMSO1%を共溶媒として用いた)に溶解し、100μMの還元型グルタチオン(GSH)および1.2μg/mlのグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GSTP1−1)の存在下、室温(25℃)にて撹拌しながら10分間反応させた。これを100mMリン酸バッファー(図3(B)に示すpH;DMSO0.1%を共溶媒として用いた)に体積の10%となるように加え、蛍光分光光度計(RF−5300PC;株式会社島津製作所製)を用いて、各pHにおける反応後の蛍光強度を測定した(反応生成物の最終濃度は1μM、励起/蛍光波長505/525nm)。結果を図3(B)に示す。
[異なるpHにおける反応性]
上記で合成した3,4−DNADCFについて、異なるpH条件下でのGSTとの反応による蛍光強度の経時的な変化を測定した。
具体的には、1μMの3,4−DNADCFを100mMリン酸バッファー(pH6.5またはpH7.4;DMSO0.1%を共溶媒として用いた)に溶解し、73.5ng/mlのグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GSTP1−1)の存在下または非存在下、100μMの還元型グルタチオン(GSH)と室温(25℃)にて撹拌しながら反応させ、蛍光強度を経時的に30分間記録した。なお、測定条件としては以下の条件を用いた:測定モード:タイムコース、パラメータは、励起/蛍光波長505/525nm、バンド幅:励起/蛍光1.5/1.5nm、感度:High。
上記の測定結果を図4(A)に示す。図4(A)に示す結果から明らかなように、本発明に係る蛍光プローブを構成する3,4−DNADCFの酵素依存的なグルタチオン化に伴う蛍光強度の上昇は、pH6.5の酸性領域においてもpH7.4の場合と同様に維持されることが確認された。またその一方で、pH6.5の酸性領域においても、酵素非依存的なグルタチオン化による蛍光強度の上昇はpH7.4の場合と同程度に著しく抑制されることが示され、上述した「GSHとの二分子反応速度定数kのpH依存性」の項における結果が裏付けられた。
さらに、1μMの3,4−DNADCFを100mMリン酸バッファー(pH6.5またはpH7.4;DMSO0.1%を共溶媒として用いた)に溶解し、23.8ng/mlのGSTP1−1の存在下または非存在下、0.1μM還元型グルタチオン(GSH)と室温(25℃)にて反応させ、蛍光分光光度計にて蛍光強度変化を10分間測定した。時間に対する蛍光強度変化のグラフにおける初速度(蛍光強度変化が線形)の領域を反応速度として、GSTP1−1の存在下における反応速度(VGSTP1+GSH)およびGSTP1−1の非存在下における反応速度(VGSH)をそれぞれ計算し、その比(VGSTP1+GSH/VGSH)を求めた。pH6.5およびpH7.4のそれぞれにおける実験結果を図4(B)に示す。図4(B)に示す結果から明らかなように、pH6.5の条件下の方がGST依存的な反応を選択的に進行させることができる。
[HPLCによる酵素反応の解析]
上記で合成した3,4−DNADCFについて、GSTおよび還元型グルタチオンの存在下における反応液組成の経時的な変化をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)法により測定した。
具体的には、20μMの3,4−DNADCFを100mMリン酸バッファー(pH6.5)に溶解し、GSTP1−1の存在下で、0.1μM還元型グルタチオン(GSH)と室温(25℃)で反応させ、蛍光分光光度計を用いて、時間に伴う蛍光強度の変化を測定した。反応開始後、70秒および270秒後において、100μlの反応液に2μlの酢酸を加えて反応を停止させ、そのうち20μlを用いてHPLC解析を行った。この際、反応前、反応開始から70秒後および270秒後、並びに反応終了後(反応開始から1800秒後)の反応液をHPLC測定に供し、波長505nmにおける吸収による検出と、波長525nmの蛍光(励起波長は505nm)による検出とをそれぞれ行った。ここで、HPLC解析は、ポンプ(PU−980)および検出器(MD−2015およびFP−2025)からなるHPLC装置(日本分光株式会社)を用い、データ取り込みおよび解析はChromNaVソフトウェア(日本分光株式会社)を用いて行った。また、分離カラムとしてInertsil ODS−3カラム(250mm×4.6mm;ジーエルサイエンス株式会社)を用いた。A液:100mM トリエチルアミン酢酸、B液:80%アセトニトリル水溶液を用い、組成比A:B=80:20→0:100(20分間)の条件で組成比を変化させて分析を行った。
上記HPLC解析について、吸収による検出結果を図5(A)に示し、蛍光による検出結果を図5(B)に示す。なお、図5(A)(B)中の「Before」は反応前の結果を示し、「After」は反応終了後の結果を示す。これらの結果から明らかなように、反応前には図5(A)における15minのピークに相当する蛍光は図5(B)においては観察されないが、反応の進行に伴って生じる10min弱の保持時間を与える反応生成物は強蛍光性を示す。
続いて、反応開始270秒後における反応液をLC−MS(液体クロマトグラフィー−質量分析)法により解析した。具体的に、LC−MS解析は、四重極型LC−MS(Aligent 1200 series/6130)を用いて行った。また、分離カラムとしてInertsil ODS−3カラム(250mm×2.1mm;ジーエルサイエンス株式会社)を用いた。A液:0.1%ギ酸水溶液、B液:0.1%ギ酸 80%アセトニトリル水溶液を用い、組成比A:B=95:5→5:95(30分間)の条件で組成比を変化させて分析を行った。LC−MS解析の結果を図6(A)〜(C)に示す。ここで、図6(A)は、波長490nmの吸収による検出結果を示す液体クロマトグラフである。図6(B)は、質量分析の結果から推定されたm/z=870に対応するピークおよびこれに対応する反応生成物の化学構造を示し、また、図6(C)は、m/z=610に対応するピークおよびこれに対応する3,4−DNADCF(オニウムカチオン型)の化学構造を示す。
[種々の種類・濃度のGSTを用いた場合の蛍光強度の比較]
上記で合成した3,4−DNADCFについて、種々の種類および濃度のGSTを用いてGST活性を測定した場合の蛍光強度の経時的な変化を測定した。
具体的には、1μMの3,4−DNADCFを100mMリン酸バッファー(pH6.5;DMSO 0.1%を共溶媒として用いた)に溶解し、0.1μg/ml、1.0μg/mlまたは10μg/mlの、図7(A)および図7(B)に示す各種グルタチオン−S−トランスフェラーゼの存在下、100μMの還元型グルタチオン(GSH)と室温(25℃)にて撹拌しながら反応させ、蛍光強度を5分ごとに30分間記録した(励起/蛍光波長505/525nm)。なお、本実験はマルチウェルプレートリーダー(SH−9000、コロナ電気株式会社)を用いて行った。30分後における蛍光強度をF、0分におけるGST非存在下での蛍光強度をFとし、蛍光強度の上昇率(F/F)を算出した。結果を図7(A)(GST濃度:0.1μg/mlまたは1.0μg/ml)および図7(B)(GST濃度:10μg/ml)に示す。図7に示す結果から、本発明に係る化合物である3,4−DNADCFを蛍光プローブとして用いることで、種々のGSTの活性を極めて高感度で測定することが可能であることが示される。
[種々の種類のGSTを用いた場合の酵素反応速度論の比較]
(A)GSTA1−1、(B)GSTM1−1、(C)GSTP1−1、および(D)GSTnoboの4種の異なるGSTを用いて、3,4−DNADCFの酵素反応速度論を比較した。具体的には、種々の濃度の3,4−DNADCFを100mMリン酸バッファー(pH6.5;DMSO0.1%を共溶媒として用いた)に溶解し、1mM還元型グルタチオン(GSH)の存在下、所定の濃度(GSTA1−1:13ng/ml、GSTM1−1:33ng/ml、GSTP1−1:7.9ng/ml、GSTnobo:50ng/ml)になるように各酵素を加え、室温(25℃)で5分間蛍光強度を測定した。それぞれの濃度における初速度(蛍光強度上昇が線形)を算出し、ミカエリスメンテン式V=Vmax/([S]+K)(Vmaxは最大反応速度、[S]は基質濃度、KはVmax/2の速度を与える基質濃度)を用いて回帰曲線を作成した。得られたミカエリスメンテンプロットを図8(A)〜(D)に示す。また、図8に示す結果から算出された各GSTにおける酵素反応速度論的パラメータを下記の表2に示す。
[種々の種類のGSTを用いた場合の比活性の比較]
10種のヒトGST(hGST)およびキイロショウジョウバエ由来GSTnobo(DmGSTnobo)について、比活性(タンパク質1mg当たりの活性)を比較した。具体的には、1μMの3,4−DNADCFを100mMリン酸バッファー(pH6.5、0.005% Tween20、DMSO0.1%を共溶媒として用いた)に溶解し、100μMの還元型グルタチオン(GSH)の存在下、室温(25℃)にて撹拌しながら反応させた。この際、酵素濃度の変化に対して反応速度が線形性を示す領域の酵素濃度を用いた。そして、マルチウェルプレートリーダー(SH−9000、コロナ電気株式会社)を用い、蛍光強度を10秒ごとに1000秒間測定した(励起/蛍光波長 505/525nm)。それぞれの酵素濃度から得られた反応速度から、比活性(1分間当たり1mgのGSTが触媒する3,4−DNADCFのナノモル数)を算出した。結果を下記の表3に示す。
表3に示す結果から明らかなように、本発明に係るGST測定用蛍光プローブは、GSTの種々のアイソザイムに対して活性を示すことがわかる。

Claims (4)

  1. 下記一般式(1):
    式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子またはベンゼン環に結合する1〜3個の同一または異なる置換基を表し;R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基またはハロゲン原子を表し;XおよびXは、それぞれ独立して、フッ素原子または塩素原子を表す、
    で表されるフルオレセイン誘導体またはその塩。
  2. 、R、R、R、RおよびRが水素原子であり、XおよびXが塩素原子である、請求項1に記載のフルオレセイン誘導体またはその塩。
  3. 請求項1または2に記載のフルオレセイン誘導体またはその塩を含む、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ測定用蛍光プローブ。
  4. グルタチオン−S−トランスフェラーゼ活性の測定方法であって、下記の工程:
    (1)請求項1または2に記載のフルオレセイン誘導体またはその塩を、還元型グルタチオンの存在下でグルタチオン−S−トランスフェラーゼと反応させる工程;および、
    (2)反応の前後における蛍光の変化を検出する工程、
    を含む、測定方法。
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