以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施の形態である車両用制御装置10を示す概略図である。
図1に示すように、車両用制御装置10は、エンジン11およびモータジェネレータ12からなるパワーユニット13を有している。パワーユニット13は無段変速機14を有しており、無段変速機14はプライマリプーリ15およびセカンダリプーリ16によって構成されている。プライマリプーリ15の一方側には、入力クラッチ17およびトルクコンバータ18を介してエンジン11が連結されている。一方、プライマリプーリ15の他方側には、ロータ軸19を介してモータジェネレータ12が連結されている。また、セカンダリプーリ16には、出力クラッチ20、駆動輪出力軸21およびディファレンシャル機構22を介して駆動輪23が連結されている。また、エンジン11のクランク軸24には、駆動ベルト25を介してISG(Integrated Starter Generator)26が連結されている。このISG26は、発電機と電動機との機能を兼ね備えている。
図1に示すように、トルクコンバータ18と無段変速機14との間には、入力クラッチ(伝達クラッチ)17が設けられている。つまり、入力クラッチ17は、トルクコンバータ18と駆動輪23との間に設けられている。この入力クラッチ17は、トルクコンバータ18のタービン軸30に連結される摩擦プレート31と、プライマリプーリ15のプライマリ軸(回転軸)32に連結される摩擦プレート33と、を有している。また、入力クラッチ17は、摩擦プレート31,33の係合状態を制御する油圧アクチュエータ34を有している。例えば、油圧アクチュエータ34に作動油を供給することにより、摩擦プレート31,33は互いに押し付けられ、入力クラッチ17は締結状態に切り替えられる。一方、油圧アクチュエータ34から作動油を排出することにより、図示しないリターンスプリングによって摩擦プレート31,33の押し付けが解除され、入力クラッチ17は解放状態に切り替えられる。
図1に示すように、セカンダリプーリ16と駆動輪出力軸21との間には、出力クラッチ20が設けられている。出力クラッチ20は、セカンダリプーリ16のセカンダリ軸35に連結される摩擦プレート36と、駆動輪出力軸21に連結される摩擦プレート37と、を有している。また、出力クラッチ20は、摩擦プレート36,37の係合状態を制御する油圧アクチュエータ38を有している。例えば、油圧アクチュエータ38に作動油を供給することにより、摩擦プレート36,37は互いに押し付けられ、出力クラッチ20は締結状態に切り替えられる。一方、油圧アクチュエータ38から作動油を排出することにより、図示しないリターンスプリングによって摩擦プレート36,37の押し付けが解除され、出力クラッチ20は解放状態に切り替えられる。
図1に示すように、エンジン11と入力クラッチ17との間には、トルクコンバータ18が設けられている。つまり、トルクコンバータ18は、エンジン11と駆動輪23との間に設けられている。このトルクコンバータ18は、クランク軸24にフロントカバー40を介して連結されるポンプインペラ41と、ポンプインペラ41に対向するとともにタービン軸30が連結されるタービンランナ42と、を有している。また、トルクコンバータ18は、クラッチプレート43からなるロックアップクラッチ44を有している。クラッチプレート43は、タービンハブ45を介してタービン軸30に軸方向に移動自在に設けられている。
トルクコンバータ18内には、クラッチプレート43を境に、アプライ室46とリリース室47とが区画されている。つまり、トルクコンバータ18内には、タービンランナ42側にアプライ室46が区画されており、フロントカバー40側にリリース室47が区画されている。アプライ室46の油圧を上昇させてリリース室47の油圧を低下させることにより、クラッチプレート43はフロントカバー40に押し付けられ、ロックアップクラッチ44は締結状態に切り替えられる。一方、リリース室47の油圧を上昇させてアプライ室46の油圧を低下させることにより、クラッチプレート43はフロントカバー40から離れ、ロックアップクラッチ44は解放状態に切り替えられる。
このように、ロックアップクラッチ44は、アプライ室46とリリース室47との圧力差によって、締結状態と解放状態とに切り替えられる。なお、アプライ室46とリリース室47との圧力差を制御することにより、ロックアップクラッチ44の締結力を自在に調整することが可能である。また、ロックアップクラッチ44を解放状態から締結状態に切り替える際の制御モードとして、再始動ロックアップモード(第1制御モード)と通常ロックアップモード(第2制御モード)とがある。再始動ロックアップモードは、ロックアップクラッチ44を第1締結速度で解放状態から締結状態に切り替える制御モードである。一方、通常ロックアップモードは、ロックアップクラッチ44を第1締結速度よりも低速の第2締結速度で解放状態から締結状態に切り替える制御モードである。すなわち、再始動ロックアップモードを実行した場合には、ロックアップクラッチ44は素早く締結される一方、通常ロックアップモードを実行した場合には、ロックアップクラッチ44は緩やかに締結される。
前述した入力クラッチ17、出力クラッチ20、無段変速機14およびトルクコンバータ18等に作動油を供給するため、パワーユニット13には、エンジン11やプライマリ軸32に駆動されるオイルポンプ50が設けられている。また、パワーユニット13には、作動油の供給先や圧力を制御するため、複数のソレノイドバルブや油路からなるバルブボディ51が設けられている。そして、オイルポンプ50から吐出される作動油は、バルブボディ51を経て、トルクコンバータ18、入力クラッチ17、出力クラッチ20等に供給される。また、オイルポンプ50は、一方向クラッチ52を備えたチェーン機構53を介して、トルクコンバータ18のポンプシェル54に連結されている。さらに、オイルポンプ50は、一方向クラッチ55を備えたチェーン機構56を介して、プライマリ軸32に連結されている。
このように、オイルポンプ50に一対のチェーン機構53,56を連結することにより、ポンプシェル54の回転速度がプライマリ軸32の回転速度以上である場合には、ポンプシェル54からチェーン機構53を介してオイルポンプ50に駆動力が伝達される。すなわち、エンジン11が駆動される場合には、エンジン動力によってオイルポンプ50が駆動される。一方、ポンプシェル54の回転速度がプライマリ軸32の回転速度未満である場合には、プライマリ軸32からチェーン機構56を介してオイルポンプ50に動力が伝達される。これにより、後述するモータ走行モードのように、エンジン11が停止する場合であっても、前進走行時にはプライマリ軸32によってオイルポンプ50が駆動される。なお、エンジン停止を伴う低速走行時や、エンジン停止を伴う後退走行時においても、制御油圧を確保する観点から、パワーユニット13には図示しない電動オイルポンプが設けられる。
車両用制御装置10は、走行モードとして、エンジン走行モードとモータ走行モードとを備えている。ここで、図2(a)〜(c)は、各走行モードにおけるパワーユニット13の作動状況を示す概略図である。なお、図2(a)〜(c)に記載される白抜きの矢印は、エンジン動力やモータ動力の伝達経路を示している。
図2(a)に示すように、モータ走行モードが設定された場合には、入力クラッチ17が解放されて出力クラッチ20が締結される。モータ走行モードにおいては、エンジン11が停止され、モータジェネレータ12の動力のみが駆動輪23に伝達される。また、図2(b)および(c)に示すように、エンジン走行モードが設定された場合には、入力クラッチ17および出力クラッチ20が締結される。エンジン走行モードにおいては、エンジン11が始動され、モータジェネレータ12およびエンジン11の動力が駆動輪23に伝達される。また、図2(b)および(c)に示すように、エンジン走行モードにおいては、走行状況に応じて、ロックアップクラッチ44が解放状態や締結状態に制御される。
また、走行モードとして、モータ走行モードを設定するか、エンジン走行モードを設定するかについては、車速、アクセル開度および充電状態SOC等に基づき決定される。例えば、アクセル開度が所定の閾値を上回る場合や、車速が所定の閾値を上回る場合等には、走行モードとしてエンジン走行モードが設定される。一方、アクセル開度が所定の閾値を下回る場合や、車速が所定の閾値を下回る場合等には、走行モードとしてモータ走行モードが設定される。このように、車速、アクセル開度および充電状態SOC等に基づいて、モータ走行モードへの切り替えが決定されると、後述のエンジン制御ユニット60によって車両走行中にエンジン11が停止される。一方、車速、アクセル開度および充電状態SOC等に基づいて、エンジン走行モードへの切り替えが決定されると、後述のエンジン制御ユニット60によって車両走行中にエンジン11が始動される。
続いて、車両用制御装置10の制御系について説明する。図3および図4は車両用制御装置10の制御系を示す概略図である。図3において、図1に示す部材と同一の部材については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図3に示すように、車両用制御装置10には、パワーユニット13の作動状態を制御するため、複数の制御ユニット60〜62が設けられている。制御ユニットとして、エンジン11を制御するエンジン制御ユニット(エンジン制御部)60が設けられており、無段変速機14、ロックアップクラッチ44、入力クラッチ17および出力クラッチ20等を制御するミッション制御ユニット(ロックアップ制御部,伝達クラッチ制御部)61が設けられている。また、制御ユニットとして、モータジェネレータ12を制御するハイブリッド制御ユニット62が設けられている。前述したエンジン制御ユニット60は、ISG26、スロットルバルブおよびインジェクタ等に制御信号を出力し、エンジン11の作動状態を制御する。また、ミッション制御ユニット61は、バルブボディ51に制御信号を出力し、無段変速機14、入力クラッチ17および出力クラッチ20等の作動状態を制御する。さらに、ハイブリッド制御ユニット62は、インバータ63やコンバータ64に制御信号を出力し、モータジェネレータ12の作動状態を制御する。なお、ハイブリッド制御ユニット62には、高電圧バッテリ65から充電状態SOCが送信される。
これらの制御ユニット60〜62は、CPU、ROM、RAM等によって構成されるマイクロコンピュータや、各種アクチュエータに対する制御電流を生成する駆動回路等を有している。図4に示すように、各制御ユニット60〜62は、CAN等の車載ネットワーク66を介して互いに接続されている。この車載ネットワーク66には、各種センサから、車両の走行状態を示す各種信号が送信されている。各種センサとして、クランク軸24の回転速度であるエンジン回転速度(以下、エンジン回転数Neと記載する。)を検出するエンジン回転数センサ70、モータジェネレータ12の回転速度を検出するモータ回転数センサ71がある。また、各種センサとして、タービン軸30の回転速度(以下、タービン回転数Ntと記載する。)を検出するタービン回転数センサ72、プライマリ軸32の回転速度(以下、プライマリ回転数Npと記載する。)を検出するプライマリ回転数センサ73、セカンダリ軸35の回転速度を検出するセカンダリ回転数センサ74がある。さらに、各種センサとして、アクセルペダルの操作状況を検出するアクセルペダルセンサ75、ブレーキペダルの操作状況を検出するブレーキペダルセンサ76がある。
続いて、走行モードの切替制御をタイミングチャートに沿って説明する。走行モードの切替制御、つまりエンジン走行モードとモータ走行モードとの切替制御は、エンジン制御ユニット60やミッション制御ユニット61等によって実行される。ここで、図5および図6は走行モードの切替制御の一例を示すタイミングチャートである。図5のタイミングチャートには、エンジン走行モードからモータ走行モードに切り替えられ、モータ走行モードにおいてエンジン11が停止した後に、再びエンジン走行モードに切り替えられる状況が示されている。一方、図6のタイミングチャートには、エンジン走行モードからモータ走行モードに切り替えられ、モータ走行モードにおいてエンジン11が停止する前に、再びエンジン走行モードに切り替えられる状況が示されている。
なお、図5および図6においては、図面の理解を容易にするため、各回転数Ne,Nt,Npが重なる場合であっても、各回転数Ne,Nt,Npを若干ずらして記載している。また、図5および図6に記載されるアクセルOFFとは、踏み込みを解除する方向にアクセルペダルが操作され、アクセルペダルの踏み込み量(以下、アクセル開度と記載する。)が所定の閾値を下回ることを示している。図5および図6に時刻t2と共に記載されるアクセルONとは、アクセルペダルが踏み込み方向に操作され、アクセル開度が所定の閾値を上回ることを示している。さらに、図5および図6に時刻t3と共に記載されるエンジン走行モードとは、入力クラッチ17が解放された状況を示し、図5および図6に記載されるモータ走行モードとは、エンジン11が始動されて入力クラッチ17が締結された状況を示している。
また、図5および図6に記載される目標ロックアップ圧とは、アプライ室46に供給される作動油の圧力つまりアプライ圧の目標値である。すなわち、目標ロックアップ圧を上昇させることにより、締結状態に向けてロックアップクラッチ44の締結力は増加する。一方、目標ロックアップ圧を低下させることにより、解放状態に向けてロックアップクラッチ44の締結力は減少する。なお、目標ロックアップ圧が上昇する際には、リリース室47に供給される作動油の圧力は低下する一方、目標ロックアップ圧が低下する際には、リリース室47に供給される作動油の圧力は上昇する。また、図5および図6に記載される目標入力クラッチ圧とは、入力クラッチ17の油圧アクチュエータ34に供給される作動油の目標圧力である。つまり、目標入力クラッチ圧を上昇させることにより、締結状態に向けて入力クラッチ17の締結力は増加する。一方、目標入力クラッチ圧を低下させることにより、解放状態に向けて入力クラッチ17の締結力は減少する。
図5および図6に示すように、走行モードをモータ走行モードからエンジン走行モードに切り替える場合、つまり車両走行中にエンジン11を始動する場合には、ロックアップクラッチ44が解放状態から締結状態に制御される。このように、エンジン始動に伴ってロックアップクラッチ44を締結することにより、エンジン回転数Neの過度な上昇を防止することができ、エンジン11の燃料消費量を抑制することができる。このロックアップクラッチ44の締結制御においては、制御モードとして、前述した再始動ロックアップモードと通常ロックアップモードとを備えている。ミッション制御ユニット61が、再始動ロックアップモードと通常ロックアップモードとの何れを選択するかについては、後述するように、エンジン11を始動する際のエンジン回転数Neに基づき決定される。
後述するように、図5には、ロックアップクラッチ44を素早く締結する再始動ロックアップモードの実行状況が示されている。また、図6には、ロックアップクラッチ44を緩やかに締結する通常ロックアップモードの実行状況が示されている。しかしながら、図5に示す状況と図6に示す状況とでは、ロックアップクラッチ44を締結する際の前提条件、つまり各回転数Ne,Nt,Npやエンジントルク等が相違している。このため、図5に示されるロックアップクラッチ44の締結速度と、図6に示されるロックアップクラッチ44の締結速度とを、単純に比較して締結速度の遅速に言及することは不可能である。すなわち、再始動ロックアップモードによるロックアップクラッチ44の締結速度が速く、通常ロックアップモードによるロックアップクラッチ44の締結速度が遅いということは、同じ前提条件下でロックアップクラッチ44を締結した際の締結速度の遅速つまり締結時間の長短を意味している。
以下、図5のタイミングチャートを用いて、エンジン始動に伴うロックアップクラッチ44の締結制御について説明する。前述したように、図5のタイミングチャートに示される状況とは、モータ走行モードでエンジン11が停止した後に、エンジン11の始動制御が開始される状況である。
図5に時刻t1で示すように、エンジン走行モードにおいては、目標ロックアップ圧は低下しており、目標入力クラッチ圧は上昇している。すなわち、時刻t1のエンジン走行モードにおいては、図2(b)に示すように、入力クラッチ17は締結状態に制御されており、ロックアップクラッチ44は解放状態に制御されている。また、図5に示すように、時刻t1のエンジン走行モードにおいては、ロックアップクラッチ44の制御フェーズが「α0」に設定される。この制御フェーズα0においては、ロックアップクラッチ44を解放状態に保持する圧力(解放圧)に目標ロックアップ圧が設定される。
図5に時刻t2で示すように、エンジン走行モードでの走行中に、アクセルペダルの踏み込みが解除され、アクセル開度が所定の閾値を下回った場合には、モータ走行モードへの切り替えが決定される。このように、モータ走行モードへの切り替えが決定されると、符号Xa1で示すように、目標入力クラッチ圧が引き下げられ、入力クラッチ17が締結状態から解放状態に切り替えられる。また、モータ走行モードへの切り替えが決定されると、符号Ya1で示すように、燃料噴射の停止やスロットルバルブの閉動作等のエンジン停止制御が実行され、エンジン停止に向けてエンジン回転数Neやタービン回転数Ntが低下する。このように、本実施の形態においては、アクセル開度が所定の閾値を下回ることが、エンジン11の停止条件の1つとして設定されている。
その後、図5に時刻t3で示すように、アクセルペダルが踏み込まれ、アクセル開度が所定の閾値を上回った場合には、エンジン走行モードへの切り替えが決定され、ISG26のクランキング動作や燃料噴射の再開等のエンジン始動制御が開始される。このように、本実施の形態においては、アクセル開度が所定の閾値を上回ることが、エンジン11の始動条件の1つとして設定されている。そして、始動条件の成立によってエンジン11の始動制御が開始されると、ミッション制御ユニット61は、プライマリ回転数Npとエンジン回転数Neとの回転速度差ΔN1(ΔN1=|Ne−Np|)を算出し、この回転速度差ΔN1に基づいてロックアップクラッチ44の制御モードを決定する。図5に時刻t3で示すように、エンジン始動を開始する際の回転速度差ΔN1が大きい場合、つまり回転速度差ΔN1が所定の閾値を上回る場合には、ロックアップクラッチ44の制御モードとして、ロックアップクラッチ44を素早く締結する再始動ロックアップモードが選択される。このように、ミッション制御ユニット61は、エンジン始動を開始する際のエンジン回転数Neに基づいて、ロックアップクラッチ44の制御モードを決定している。
このように、再始動ロックアップモードが選択されると、ロックアップクラッチ44の制御フェーズは「A1」に移行する。この制御フェーズA1においては、制御フェーズα0と同様に、ロックアップクラッチ44を解放状態に保持する圧力(解放圧)に目標ロックアップ圧が設定される。そして、ミッション制御ユニット61は、入力クラッチ17の入力側と出力側との回転速度差、つまりタービン回転数Ntとプライマリ回転数Npとの回転速度差ΔN2(ΔN2=|Nt−Np|)に基づいて、ロックアップクラッチ44に関する制御フェーズの移行を判定する。すなわち、エンジン始動に伴って上昇するタービン回転数Ntが、プライマリ回転数Npに近づき、回転速度差ΔN2が所定値(例えば2000[rpm])よりも小さくなると、ミッション制御ユニット61は制御フェーズA2への移行を決定する。この制御フェーズA2においては、解放圧よりも大きな待機圧に目標ロックアップ圧が引き上げられる。また、エンジン始動に伴って上昇するタービン回転数Ntが、更にプライマリ回転数Npに近づき、回転速度差ΔN2が所定値(例えば150[rpm])よりも小さくなると、ミッション制御ユニット61は制御フェーズA3への移行を決定する。この制御フェーズA3においては、符号Za1で示すように、目標ロックアップ圧は所定速度で引き上げられる。
ところで、図5に時刻t5で示すように、制御フェーズA3の実行中に、入力クラッチ17は締結状態に切り替えられる。すなわち、時刻t3において、エンジン11の始動制御が開始されると、その後の時刻t4において、入力クラッチ17の締結制御が開始される。入力クラッチ17の締結制御においては、符号Xa2で示すように、目標入力クラッチ圧が徐々に引き上げられる。そして、符号Ya2で示すように、入力クラッチ17が締結状態となってプライマリ回転数Npとタービン回転数Ntとが一致すると、符号Xa3で示すように、目標入力クラッチ圧が急速に引き上げられる。このように、入力クラッチ17が締結状態に切り替えられた場合には、制御フェーズの移行判定に使用していた回転速度差ΔN2が「0」になる。このため、ミッション制御ユニット61は、プライマリ回転数Npとエンジン回転数Neとの回転速度差ΔN1(ΔN1=|Ne−Np|)に基づいて、その後のロックアップクラッチ44に関する制御フェーズの移行を判定する。
図5に符号Za1で示すように、制御フェーズA3においては、目標ロックアップ圧が所定速度で引き上げられ、ロックアップクラッチ44の締結力が徐々に増加するため、エンジン回転数Neは徐々にプライマリ回転数Npに収束する。このように、エンジン回転数Neがプライマリ回転数Npに近づき、回転速度差ΔN1が所定値(例えば100[rpm])よりも小さくなると、ミッション制御ユニット61は制御フェーズA4への移行を決定する。この制御フェーズA4においては、符号Za2で示すように、目標ロックアップ圧は所定速度で引き上げられる。また、エンジン回転数Neが更にプライマリ回転数Npに近づき、回転速度差ΔN1が所定値(例えば50[rpm])よりも小さくなると、ミッション制御ユニット61は、ロックアップクラッチ44の締結動作が完了したと判断し、制御フェーズA5への移行を決定する。この制御フェーズA5においては、符号Za3で示すように、目標ロックアップ圧が最終目標値に向けて急速に引き上げられる。
このように、エンジン始動を開始する際の回転速度差ΔN1が大きい場合、つまり回転速度差ΔN1が所定の閾値を上回る場合には、ロックアップクラッチ44の制御モードとして再始動ロックアップモードが設定される。ここで、回転速度差ΔN1が所定の閾値を上回る状況とは、エンジン11を始動する際のエンジン回転数Neが低い状況であり、始動制御に伴ってエンジン回転数Neが急速に吹け上がる状況である。このような状況においては、再始動ロックアップモードを実行することにより、ロックアップクラッチ44を素早く締結している。これにより、エンジン回転数Neの過度な上昇つまりオーバーシュートを防止することができ、エンジン11の燃料消費量を抑制することができる。
また、図5に示すように、モータ走行モードからエンジン走行モードに切り替えるため、入力クラッチ17とロックアップクラッチ44とを締結状態に切り替える際には、入力クラッチ17の締結を完了させた後に、ロックアップクラッチ44の締結を完了させている。このように、トルク容量の小さな入力クラッチ17を締結させた後に、トルク容量の大きなロックアップクラッチ44を締結させることにより、入力クラッチ17およびロックアップクラッチ44を滑らかに締結することができる。
続いて、図6のタイミングチャートを用いて、エンジン始動に伴うロックアップクラッチ44の締結制御について説明する。前述したように、図6のタイミングチャートに示される状況とは、モータ走行モードでエンジン11が停止する前に、エンジン11の始動制御が開始される状況である。すなわち、図6に示される状況とは、所謂チェンジマインドが発生した状況、つまり運転手によってアクセルペダルの踏み込みが解除され(時刻t2)、その直後に再びアクセルペダルが踏み込まれた状況である(時刻t3)。この場合には、エンジン11の停止制御が開始された直後に、エンジン11の始動制御が開始されることになる。
このように、エンジン回転数Neが低下する前に、エンジン11の始動制御が開始されると、ミッション制御ユニット61は、プライマリ回転数Npとエンジン回転数Neとの回転速度差ΔN1(ΔN1=|Ne−Np|)に基づいて、ロックアップクラッチ44の制御モードを決定する。図6に示すように、エンジン始動を開始する際の回転速度差ΔN1が小さい場合、つまり回転速度差ΔN1が所定の閾値を下回る場合には、ロックアップクラッチ44の制御モードとして、ロックアップクラッチ44を緩やかに締結する通常ロックアップモードが選択される。
このように、通常ロックアップモードが選択されると、ロックアップクラッチ44の締結条件が成立していることを判定した後に、ロックアップクラッチ44の制御フェーズは「B1」に移行する。なお、ロックアップクラッチ44の締結条件としては、車速が所定の閾値以上であり、かつ走行レンジが前進走行レンジ(Dレンジ)であること等が挙げられる。また、制御フェーズB1においては、符号Zb1で示すように、制御フェーズα0の解放圧よりも大きな待機圧に目標ロックアップ圧が引き上げられる。
また、ミッション制御ユニット61は、制御フェーズB1が所定時間を超えて実行されると、制御フェーズB2への移行を決定する。この制御フェーズB2においては、符号Zb2で示すように、目標ロックアップ圧は所定速度で引き上げられる。その後、ミッション制御ユニット61は、タービン回転数Ntとエンジン回転数Neとの回転速度差ΔN3(ΔN3=|Ne−Nt|)に基づいて、ロックアップクラッチ44に関する制御フェーズの移行を判定する。ミッション制御ユニット61は、回転速度差ΔN3が所定値よりも小さくなると、ロックアップクラッチ44の締結動作が完了したと判断し、制御フェーズB3への移行を決定する。この制御フェーズB3においては、符号Zb3で示すように、目標ロックアップ圧が最終目標値に向けて急速に引き上げられる。
このように、エンジン始動を開始する際の回転速度差ΔN1が小さい場合、つまり回転速度差ΔN1が所定の閾値を下回る場合には、ロックアップクラッチ44の制御モードとして通常ロックアップモードが設定される。ここで、回転速度差ΔN1が所定の閾値を下回る状況とは、エンジン11を始動する際のエンジン回転数Neが高い状況であり、始動制御に伴ってエンジン回転数Neの急速な吹け上がりつまりオーバーシュートが発生し難い状況である。このような状況においては、通常ロックアップモードを実行することにより、ロックアップクラッチ44を緩やかに締結している。これにより、ロックアップクラッチ44の締結ショックを抑制することができる。
以下、エンジン11を始動する際のエンジン回転数Neが高い場合に、通常ロックアップモードを実行することで、ロックアップクラッチ44の締結ショックが抑制される理由について説明する。図7のタイミングチャートは、通常ロックアップモードの説明に用いた図6のタイミングチャートに、再始動ロックアップモードの実行状況を重ねて示したタイミングチャートである。なお、図7において、図5および図6に示した制御フェーズと同様の制御フェーズについては、同一の符号を付してその説明を省略する。
図7に示すように、エンジン始動を開始する際の回転速度差ΔN1が小さい場合、つまり回転速度差ΔN1が所定の閾値を下回る場合において(符号Yc1)、再始動ロックアップモードが実行された場合には(符号Xc1)、ロックアップクラッチ44が急速に締結状態に切り替えられる(符号Zc1)。前述したように、再始動ロックアップモードでは、プライマリ回転数Npとエンジン回転数Neとの回転速度差ΔN1や、タービン回転数Ntとプライマリ回転数Npとの回転速度差ΔN2に基づいて、制御フェーズα0〜A5を移行させながら目標ロックアップ圧を引き上げている。このため、エンジン停止前にエンジン11の始動制御が開始された場合には、回転速度差ΔN1,ΔN2が小さいことから、図7に符号Xc1で示すように、制御フェーズがα0からA5まで急速に移行することになる。そして、図7に符号Zc1で示すように、目標ロックアップ圧が急速に引き上げられ、ロックアップクラッチ44が急速に締結されることになる。
ここで、図7に時刻t3で示すように、車両走行中にエンジン始動が要求される状況としては、例えば、アクセルペダルが踏み込まれる加速状況である。このため、図7に符号Yc2で示すように、ロックアップクラッチ44の締結過程においてエンジン回転数Neが上昇する場合が想定される。このように、エンジン回転数Neが上昇する場合に、ロックアップクラッチ44を素早く締結する再始動ロックアップモードが実行されると、符号Yc3で示すように、ロックアップクラッチ44の締結に伴ってエンジン回転数Neが急変し、ロックアップクラッチ44の締結ショックを発生させる要因となる。これに対し、ロックアップクラッチ44を緩やかに締結する通常ロックアップモードを実行することにより、符号Yc4で示すように、エンジン回転数Neを緩やかに変化させることができ、ロックアップクラッチ44の締結ショックを抑制することができる。
以下の説明においては、ロックアップクラッチ44の締結速度を単に締結速度として記載し、ロックアップクラッチ44の締結時間を単に締結時間として記載する。本明細書において、再始動ロックアップモードにおける締結速度(第1締結速度)が、通常ロックアップモードにおける締結速度(第2締結速度)よりも速いということは、図7に示すように、同条件下でロックアップクラッチ44を締結した場合に、再始動ロックアップモードにおける締結時間が、通常ロックアップモードにおける締結時間よりも短いということを意味している。ここで、ロックアップクラッチ44の締結時間とは、ロックアップクラッチ44の締結動作の開始から完了迄の時間、つまり目標ロックアップ圧の立ち上げが開始されてから、ロックアップクラッチ44の締結動作が完了する迄の時間である。すなわち、再始動ロックアップモードにおける締結時間とは、図5に示すように、制御フェーズA2が開始されてから制御フェーズA4が完了する迄の時間である。同様に、通常ロックアップモードにおける締結時間とは、図6に示すように、制御フェーズB1が開始されてから制御フェーズB2が完了する迄の時間である。なお、目標ロックアップ圧の立ち上げが開始されてから、目標ロックアップ圧が最終目標値に到達する迄の時間を、ロックアップクラッチ44の締結時間として捉えることも可能である。
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。前述の説明では、エンジン始動を開始する際の回転速度差ΔN1に基づいて、ロックアップクラッチ44の制御モード(再始動ロックアップモード,通常ロックアップモード)を切り替えているが、これに限られることはない。例えば、エンジン始動を開始する際の回転速度差ΔN2に基づいて、ロックアップクラッチ44の制御モードを切り替えても良い。
また、エンジン始動を開始する際の回転速度差ΔN1,ΔN2に限られるだけでなく、エンジン始動を開始する際のエンジン回転数Neに基づいて、ロックアップクラッチ44の制御モードを切り替えても良い。すなわち、図5に示す状況のように、エンジン始動を開始する際のエンジン回転数Neが低い場合、つまりエンジン回転数Neが所定の閾値を下回る場合には、ロックアップクラッチ44の制御モードとして再始動ロックアップモードを設定しても良い。一方、図6に示す状況のように、エンジン始動を開始する際のエンジン回転数Neが高い場合、つまりエンジン回転数Neが所定の閾値を上回る場合には、ロックアップクラッチ44の制御モードとして通常ロックアップモードを設定しても良い。このように、エンジン回転数Neに基づいて制御モードを切り替えた場合であっても、回転速度差ΔN1に基づいて制御モードを切り替えた場合と同様に、ロックアップクラッチ44を適切に制御することが可能である。
前述の説明では、エンジン11の停止条件として、アクセル開度が所定の閾値を下回ることを挙げているが、これに限られることはない。例えば、エンジン11の停止条件として、車速が所定の閾値を下回ることを利用しても良く、高電圧バッテリの充電状態SOCが所定の閾値を上回ることを利用しても良い。また、前述の説明では、エンジン11の始動条件として、アクセル開度が所定の閾値を上回ることを挙げているが、これに限られることはない。例えば、エンジン11の始動条件として、車速が所定の閾値を上回ることを利用しても良く、高電圧バッテリの充電状態SOCが所定の閾値を下回ることを利用しても良い。
前述の説明では、図示するパワーユニット13は、動力源としてエンジン11およびモータジェネレータ12を備えるハイブリッド車両のパワーユニット13であるが、これに限られることはない。例えば、動力源としてエンジン11のみを備えるアイドリングストップ車両に対しても、本発明を有効に適用することが可能である。この場合には、エンジン11の停止条件として、ブレーキペダルが踏み込まれることや、車速が所定の閾値を下回ること等が挙げられ、エンジン11の始動条件として、ブレーキペダルの踏み込みが解除されることや、アクセルペダルが踏み込まれること等が挙げられる。
前述の説明では、第1制御モードとして、回転速度差ΔN1,ΔN2に基づいて制御フェーズを移行させる再始動ロックアップモードを挙げているが、第1制御モードとしてはこれに限られることはない。また、前述の説明では、第2制御モードとして、経過時間や回転速度差ΔN3に基づいて制御フェーズを移行させる通常ロックアップモードを挙げているが、第2制御モードとしてこれに限られることはない。すなわち、締結速度の異なる2つのロックアップモードを準備した上で、速い締結速度のロックアップモードを第1制御モードとして設定し、遅い締結速度のロックアップモードを第2制御モードとして設定すれば良い。なお、第1制御モードの第1締結速度や第2制御モードの第2締結速度は、回転速度差ΔN1〜ΔN3等の大きさに応じて適宜変化することはいうまでもない。
前述の説明では、トルクコンバータ18と駆動輪23との間に入力クラッチ17が設けられているが、これに限られることはなく、パワーユニット13から入力クラッチ17を削減しても良い。この場合であっても、ロックアップクラッチ44を解放状態に制御することにより、車両走行中にエンジン11を停止させることが可能である。また、前述の説明では、入力クラッチ17を伝達クラッチとして機能させているが、これに限られることはない。例えば、トルクコンバータ18と駆動輪23との間に設けられる出力クラッチ20を伝達クラッチとして機能させても良い。この場合には、出力クラッチ20と駆動輪23との間の駆動輪出力軸21が回転軸として機能し、エンジン11と駆動輪出力軸21との回転速度差に基づきロックアップクラッチ44の制御モード(再始動ロックアップモード,通常ロックアップモード)が切り替えられる。