JP2016088010A - 水素水保存容器用樹脂被覆アルミニウム材及びその製造方法 - Google Patents

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Takehiro Ozawa
三村達矢
Tatsuya Mimura
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Abstract

【課題】加工後における水素バリヤー性に優れた水素水保存容器用樹脂被覆アルミニウム材を提供する。【解決手段】アルミニウム材と、当該アルミニウム材の表面に形成された化成皮膜と、当該化成皮膜の上に形成され水素水と接触する樹脂皮膜とを含む樹脂被覆アルミニウム材において、前記樹脂皮膜は、7000〜12000の数平均分子量を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂と、尿素樹脂及びベンゾグアナミン樹脂の少なくとも一種の硬化剤と、ポリエチレンワックス、カルナウバワックス及びパラフィンワックスの少なくとも一種のインナーワックスとを含有し、4〜12μmの皮膜厚を有し、ピンホール数が0.1〜25個/100cm2であることを特徴とする水素水保存容器用樹脂被覆アルミニウム材及びその製造方法【選択図】なし

Description

本発明は、水素を含有する水を保存する容器に用いられる樹脂被覆アルミウム材及びその製造方法に関する。
活性酸素又はフリーラジカルと呼ばれる分子の存在が、老化、がん等を含む健康上における異常の原因の一つと考えられており、老化と健康の悪化につながることが広く認められている。フリーラジカル分子は酸化力が強く、生体に対して酸化ストレスを与えることが知られており、従来から酸化ストレスの防止には、ポリフェノール類、ビタミン類などが有効であると提唱されてきた。これらの物質は、安全性に優れ、安価に入手することができるが、細胞の内部まで容易に到達することができないという問題が残った。
特許文献1には、水素が、生体内の活性酸素及び/又はフリーラジカルを還元することにより、これらを除去できることが開示されている。ここで、活性酸素とは、酸素よりも酸化力が強く他の物質を酸化する能力が高い分子を指し、例えば、一重項酸素、過酸化水素、オゾン、スーパーオキシドラジカル、ヒドロキシラジカル、ペルオキシナイトライト等である。次に、フリーラジカルとは、活性酸素であるスーパーオキシドラジカル、ヒドロキシラジカル等のほか、一酸化窒素、アルコキシラジカル(脂質ラジカル)、脂質ペルオキシルラジカル(アルキルペルオキシルラジカル)等である。また、水素分子は、細胞膜を透過し得るので、細胞内に侵入し、細胞内の活性酸素及び/又はフリーラジカルを除去することが可能である。更に、水素分子は、核内とミトコンドリア内にも入ることができ、遺伝子を活性酸素及び/又はフリーラジカルから保護することができ、がんを抑制することが可能といわれている。
水素を体内に供給する方法としては、水素を水中に溶解させ、得られた水を飲料する方法がある。特許文献1には、加圧下において気体の水素を水に溶解させた後に圧力を取り除くことにより、水素水を製造し得ることが開示されている。このようにして製造された水素水は、容器内に収容して保存される。
水素は原子の中で最も小さく、固体を構成する原子間の隙間をすり抜けて拡散する可能性がある。金属は弾性力が強く、金属格子間への水素の吸収と侵入を許容し、溶解侵入した水素原子は濃度勾配に従って金属内を拡散する。従って、薄い金属膜の一方側を高圧水素雰囲気に晒し、他一方側を真空排気等で低圧にすると、水素が高圧側から低圧側に金属膜を通って透過する。金属内の水素透過現象は次のプロセスからなると考えられている。
(1)水素の分子運動により、高水素濃度気相側からそれと接触する金属表面への拡散
(2)水素分子が金属表面に吸着し、二つの水素原子(あるいはイオン)の解離
(3)解離水素原子(イオン)が薄い金属膜内を低水素濃度側に拡散
(4)低濃度側金属表面に水素原子(あるいはイオン)が達し、再び分子に再結合
(5)低水素濃度側表面から水素分子が脱離し、気相を拡散し、最終的に系外に排気
各種金属材料について水素透過係数が求められており、アルミニウムの水素透過係数は最も小さい。このように、アルミニウムは水素が極めて透過し難い材料であることが知られている。また、液相及び固相におけるアルミニウムへの水素の溶解度も測定されている。それによると、660℃以上の液相アルミニウムに対して水素は数ml/100g程度固溶するが、固相アルミニウム中にはほとんど固溶しないことが知られている。その為、特許文献1に開示されている通り、水素水を保存する容器の材料として、アルミニウム材を用いることが最も好ましいといえる。
水素水を保存する容器の内面には、アルミニウム材の耐食性を向上させることを目的として、樹脂皮膜を被覆する必要がある。例えば、水素水を保存する容器に2ピース缶を用いる場合、蓋には、樹脂被覆アルミニウム板を用いることができる。蓋は、樹脂被覆アルミニウム板をプレス機で絞り加工(シェル成形)と外周部のカール加工を施した後、カール部にシール用のコンパウンドを塗布して製造される。更に、蓋のカール部を別の製造工程で製造された缶胴のフランジ部に被せ、ロールによって巻き込むように圧着して缶胴と缶蓋を接合する。この際に、外観検査では問題ならないような小さなピンホールが樹脂層に多数存在すると、加工によって拡大して水素水中に含有される水素が拡散し、水素水中の水素濃度が短い期間で著しく低下するという問題が残った。
特許第5106110号公報
本発明は、上記問題点に鑑み、加工後における水素バリヤー性に優れた水素水保存容器用樹脂被覆アルミニウム材の提供を目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を有する。すなわち、本発明は請求項1において、アルミニウム材と、当該アルミニウム材の表面に形成された化成皮膜と、当該化成皮膜の上に形成され、水素水と接触する樹脂皮膜とを含む樹脂被覆アルミニウム材において、前記樹脂皮膜は、7000〜12000の数平均分子量を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂と、尿素樹脂及びベンゾグアナミン樹脂の少なくとも一種の硬化剤と、ポリエチレンワックス、カルナウバワックス及びパラフィンワックスの少なくとも一種のインナーワックスとを含有し、4〜12μmの皮膜厚を有し、ピンホール数が0.1〜25個/100cmであることを特徴とする水素水保存容器用樹脂被覆アルミニウム材とした。
また、本発明は請求項2において、2μm以上の粒径を有する粒子が1立方フィート当たり90〜900個の割合で存在する空気清浄度の環境下において、アルミニウム材を化成処理する工程と;7000〜12000の数平均分子量を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂と、尿素樹脂及びベンゾグアナミン樹脂の少なくとも一種の硬化剤と、ポリエチレンワックス、カルナウバワックス及びパラフィンワックスの少なくとも一種のインナーワックスとを含有する塗料を、前記化成処理したアルミニウム材上に塗布する工程と;塗布された塗料を焼付硬化する工程であって4〜12μmの皮膜厚を有する樹脂皮膜を形成する焼付硬化工程と;を含み、当該焼付硬化工程において、塗布された塗料の焼付開始から100℃に到達するまでの時間が4〜10秒であり、100℃から最高到達板温度に到達するまでの時間が12〜18秒であることを特徴とする水素水保存容器用樹脂被覆アルミニウム材の製造方法とした。
特定の高分子量のビスフェノールA型エポキシ樹脂を含有する塗料を、特定の空気清浄度の環境下で、特定の昇温条件で焼付けることにより、塗膜のピンホール数が低減することで、加工部での塗膜欠陥が低減し、水素水中の水素濃度を長期間にわたって高く保つことがで、その結果、水素バリヤー性に優れた水素水保存容器用樹脂被覆アルミニウム材を提供できる。
A.樹脂被覆アルミニウム材
本発明に係る水素水保存容器用樹脂被覆アルミニウム材は、アルミニウム材と、当該アルミニウム材の表面に形成された化成皮膜と、当該化成皮膜の上に形成され、水素水と接触する樹脂皮膜とを含む樹脂被覆アルミニウム材において、前記樹脂皮膜は、7000〜12000の数平均分子量を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂と、尿素樹脂及びベンゾグアナミン樹脂の少なくとも一種の硬化剤と、ポリエチレンワックス、カルナウバワックス及びパラフィンワックスの少なくとも一種のインナーワックスとを含有し、4〜12μmの皮膜厚を有し、ピンホール数が0.1〜25個/100cmであることを特徴とする。
B.アルミニウム材
本発明で用いるアルミニウム材は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる。保存容器に求められる機械的性質や化学的性質により、アルミニウム材の合金や質別が適宜選択されるが、缶蓋材として用いる場合には、5000系のアルミニウム合金を用いることが好ましい。
C.化成皮膜
本発明で用いる化成皮膜は、りん酸クロメート、りん酸ジルコニウム、又は、ベーマイトを用いて形成するのが好ましい。りん酸クロメート皮膜の付着量は金属Cr元素換算で5〜50mg/mであるのが好ましい。りん酸ジルコニウムの付着量は、金属Zr元素換算で3〜20mg/mであるのが好ましい。ベーマイトは、1000〜10000Åの厚さとするのが好ましい。
アルミニウム材表面に化成皮膜を形成させる為には、所定の処理液を30〜60℃の所定温度に加温後にアルミニウム材表面にスプレーしたり、或いは、30〜250℃の所定温度の処理液中にアルミニウム材を、2〜300秒の所定時間浸漬したりすることによって行なわれる。
なお、化成処理を行なう前に、アルミニウム材表面の汚れを除去したり表面性状を調整したりするために、硫酸、硝酸、リン酸等による酸処理(洗浄)、或いは、カセイソーダ、リン酸ソーダ、ケイ酸ソーダ等によるアルカリ処理(洗浄)を行なうことが望ましい。このような洗浄による表面処理も、アルミニウム材に所定の表面処理液をスプレーしたり、処理液中に所定温度で所定時間浸漬したりすることによって施される。なお、これら酸処理やアルカリ処理の後に、水洗を行うのが好ましい。
D.樹脂皮膜
本発明で用いられる樹脂皮膜は、7000〜12000の数平均分子量を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂と、尿素樹脂及びベンゾグアナミン樹脂の少なくとも一種の硬化剤と、ポリエチレンワックス、カルナウバワックス及びパラフィンワックスの少なくとも一種のインナーワックスとを含有する。
D−1.樹脂皮膜の構成
D−1−1.7000〜12000の数平均分子量を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂
ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、ビスフェノールAとエピハロヒドリンとの重縮合により製造される。ビスフェノールAとエピハロヒドリンとから分子鎖中に平均1個のビスフェノールA骨格を有する液状エポキシ樹脂を調製する。続いて、この液状エポキシ樹脂とビスフェノールAとを、触媒の存在下で加熱して重付加反応させる。得られるエポキシ樹脂の分子量は、この時の製造条件に影響を受ける。具体的には、(1)液状エポキシ樹脂の純度が高い程、(2)液状エポキシ樹脂とビスフェノールAの配合比が1:1に近い程、(3)反応温度が高い程、ならびに、(4)反応時間が長い程、高分子量のエポキシ樹脂が得られる。本発明に用いられるビスフェノールA型エポキシ樹脂の数平均分子量は7000〜12000であり、好ましくは8000〜10000である。数平均分子量が7000未満では、皮膜中のピンホール数が多くなり、加工後の水素バリヤー性が劣る。一方、12000を超えると、加工密着性が劣り、これまた加工後の水素バリヤー性が劣る。数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって、標準ポリスチレンの検量線を用いて測定される。
D−1−2.硬化剤
本発明に用いられる硬化剤は、尿素樹脂及びベンゾグアナミン樹脂の少なくとも一種である。尿素樹脂には、メチル化尿素樹脂、ブチル化尿素樹脂等を、ベンゾグアナミン樹脂には、メチル化ベンゾグアナミン樹脂、ブチル化ベンゾグアナミン樹脂等を用いることができる。硬化剤の配合量は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂100重量部に対して1〜50重量部とするのが好ましく、10〜40重量部とするのがより好ましい。1重量部未満では、架橋が不足して加工性が劣る場合がある。50重量部を超えると、硬化剤が過剰となり、これまた加工性が劣る場合がある。
D−1−3.インナーワックス
インナーワックスとして、ポリエチレンワックス、カルナウバワックス及びパラフィンワックスの少なくとも一種が用いられる。ポリエチレンワックスは、分子量が600〜12000であり80〜130℃の融点を有するものが好ましい。カルナウバワックスは、高級脂肪酸エステルを主成分とする植物ロウであり、80〜86℃の融点を有する。パラフィンワックスは、分子量が400以下であり40〜60℃の融点を有する。これらのインナーワックスの配合量は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂100重量部に対して1〜15重量部とするのが好ましく、2〜12重量部とするのがより好ましい。1重量部未満では潤滑性が劣る場合があり、15重量部を超えるとピンホール数が多くなる場合がある。また、これらのインナーワックスの平均粒径は、1〜5μmであるのが好ましく、2〜4μmであるのがより好ましい。1μm未満では潤滑性が劣る場合があり、5μmを超えるとピンホール数が多くなる場合がある。なお、融点の測定は、JIS K 7121に準じて測定される。平均粒径の測定は、レーザ回折・散乱法で測定される。
D−1−4.その他添加剤
本発明で用いる樹脂皮膜には、必要に応じて、レベリング剤、はじき防止剤、わき防止剤、艶消し剤、着色顔料等を含有させてもよい。
D−2.皮膜厚
樹脂皮膜の皮膜厚は、4〜12μmであり、好ましくは5〜10μmである。皮膜厚が4μm未満となると、ピンホール数が多くなり、水素バリヤー性が劣る。一方、12μmを超えると、加工密着性が劣り、これまた水素バリヤー性が劣る。なお、好ましい皮膜厚は5〜10μmである。皮膜厚は、後述するロールコート方式では、ピックアップロールとアプリケーターロール間のニップ圧や塗料粘度を適宜調整することにより制御される。
D−3.ピンホール数
本発明において用いる樹脂皮膜のピンホール数は、0.1〜25個/100m、好ましくは0.2〜8個/100mである。本発明におけるピンホールとは、寸法が200μm程度の所謂ワキ等とは異なり、0.1nm未満の極微小な欠陥をいう。なお、ピンホールとは一般に貫通孔を言うが、本発明のものは貫通孔に限らず未貫通の凹状のものも含む。ピンホール数は、JIS C 3003に準拠して測定される。樹脂被覆アルミニウム材の切断面をポリエステルテープを用いてシールし、フェノールフタレインを含有する塩化ナトリウム水溶液中に浸漬して、12Vの直流電圧下において1分間放置した際に発生する泡の個数を測定するものである。この測定を50回行ったときの平均値を算出し、これを100cm当たりに換算して樹脂皮膜のピンホール数とする。樹脂皮膜のピンホール数が少ない程好ましいが、100cm当たりのピンホール数を0.1個未満とする為には、塗装設備が極めて高価となりコストアップとなる。一方、25個を超えると、加工後の水素バリヤー性が劣る。このように、樹脂皮膜のピンホール数が0.1〜25個/100cm範囲内であれば、実用上問題ない。
E.製造方法
本発明に係る水素水保存容器用樹脂被覆アルミニウム材の製造方法は、2μm以上の粒径を有する粒子が1立方フィート当たり90〜900個の割合で存在する空気清浄度の環境下において、アルミニウム材を化成処理する工程と;7000〜12000の数平均分子量を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂と、尿素樹脂及びベンゾグアナミン樹脂の少なくとも一種の硬化剤と、ポリエチレンワックス、カルナウバワックス及びパラフィンワックスの少なくとも一種のインナーワックスとを含有する塗料を、前記化成処理したアルミニウム材上に塗布する工程と;塗布された塗料を焼付硬化する工程であって4〜12μmの皮膜厚を有する樹脂皮膜を形成する焼付硬化工程と;を含み、当該焼付硬化工程において、塗布された塗料の焼付開始から100℃に到達するまでの時間が4〜10秒であり、100℃から最高到達板温度に到達するまでの時間が12〜18秒であることを特徴とする。
E―1.空気清浄度
本発明では、2μm以上の粒径を有する粒子、好ましくは3μm以上の粒径を有する粒子が1立方フィート当たり90〜900個である空気清浄度の環境下で、アルミニウム材に化成皮膜を形成させた後に、特定の塗料を塗布し、焼付硬化させる。
樹脂皮膜のピンホール数は、塗装環境中に浮遊する2μm以上の粒径を有する粒子数の影響を受ける。この粒子数が少ない程、ピンホール数は少なくなる傾向にあるが、1立方フィート当たり90個未満とする為には、設備が高価となりコストアップとなる。一方、1立方フィート当たり900個を超えると、樹脂皮膜のピンホール数が多くなる。ここで、本発明において粒径とは、任意形状の浮遊粒子が有する最大径をいう。なお、空気清浄度は、例えばパーティクルカウンター(リオン社製、型番KA−03)を用いて測定する。
E−2.塗料組成物
本発明で用いる樹脂皮膜を形成するための塗料組成物は、溶剤系塗料であることが好ましい。水系塗料は、溶剤系塗料と比較して、ゴミの付着やハジキ等の塗膜欠陥を発生させ易く、ピンホールが多くなるからである。塗料組成物の各成分は、溶剤に溶解、分散させて調製される。溶剤は、各成分を溶解又は分散できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、炭化水素、アルコール、ケトン、エステルが用いられる。塗料組成物中の塗料固形分が、好ましくは15〜60質量%、より好ましくは18〜56質量%となるように溶剤量が適宜選択される。塗料固形分が15質量%未満では、ピンホール数が多くなる場合があり、60質量%を超えると粘度が高くなり塗装欠陥が多くなる場合がある。
E−3.塗布方法
塗料組成物の塗布方法としては、皮膜厚の均一性に優れ、生産性が良好なロールコート方式が好ましい。ロールコート方式では、通常、塗料組成物をパンに貯めておき、ピックアップロールでパンから塗料組成物をかき上げてアプリケーターロールに転写する。次いで、塗料組成物をアルミニウム材に転写させるものである。アルミニウム材の搬送は、バックアップロールを用いて行う。この他に、グラビアロール方式や、ナチュラルコート方式等の方法で塗布しても良い。
E−4.焼付方法
本発明に用いられる塗料組成物には、熱硬化性樹脂を用いているので、塗布後に、熱風炉を通板して、焼付硬化させる。焼付開始から100℃に到達するまでの時間が4〜10秒、好ましくは5〜8秒であり、100℃から最高到達板温度に到達するまでの時間が12〜18秒、好ましくは13〜16秒である。樹脂皮膜に生成するピンホールは、焼付硬化過程における塗膜の流動性の影響が強い。溶剤の蒸発に伴って塗膜の凹みが発生するが、塗膜の復元力によって塗膜が流動することで凹みを塞ぎ、これによって塗膜のピンホール数を少なくすることができる。焼付開始から100℃に到達するまでに、低沸点溶剤の蒸発とインナーワックスの溶融が進行する。焼付開始から100℃に到達するまでの時間が4秒未満では、インナーワックスの溶融が不十分となり、ピンホール数が多くなる。一方、10秒を超えると、塗膜の流動性が低下し、これまたピンホール数が多くなる。次に、100℃から最高到達温度に到達するまでの時間が12秒未満では、塗膜の流動性の低下が早く進行するために、ピンホール数が多くなる。一方、18秒を超えると、炉内の異物が再付着する場合があり、これまたピンホール数が多くなる。
最高到達板温度は、好ましくは220℃〜300℃、より好ましくは250℃〜270℃である。また、総焼付時間は、好ましくは16〜28秒、より好ましくは18〜24秒である。最高到達板温度が220℃未満又は総焼付時間が16秒未満の場合には、熱硬化性樹脂の硬化が不十分となり加工性が劣る場合がある。一方、最高到達板温度が300℃を超え又は総焼付時間が28秒を超えると、熱硬化性樹脂の劣化が始まり、これまた加工性が劣る場合がある。加熱方法は、熱風炉による加熱の他に、赤外線加熱、高周波誘導加熱を用いても良い。
以下、本発明例及び比較例からなる実施例に基づいて、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
アルミニウム材表面には、樹脂皮膜を以下のようにして形成した。アルミニウム合金板(JIS A5182P H34、2000mm幅×4000m長さ×0.3mm厚さ)を、弱アルカリ脱脂液で脱脂処理して水洗した。次いで、これに市販のりん酸クロメート処理液を用いて化成処理を施して乾燥した。この化成処理を施したアルミニウム合金板に、表1、2に示す組成の塗料組成物(塗料固形分30質量%、メチルエチルケトンとトルエンの混合溶剤)をロールコータにて塗布し、表1〜4に示す条件で熱風炉内において焼付けして、樹脂被覆アルミニウム材の試料を得た。皮膜厚は、渦電流式膜厚計にて測定した。空気清浄度はパーティクルカウンター(リオン社製、型番KA−03)で測定した。更に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の数平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって、標準ポリスチレンの検量線を用いて測定した。
Figure 2016088010
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Figure 2016088010
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得られた供試材について、ピンホール数、加工後の水素バリヤー性を後述の方法で測定した。○、○△、△を合格とし、×を不合格とした。結果を、表1〜4に示す。
<ピンホール数>
JIS C 3003に準拠して測定した。樹脂被覆アルミニウム材の切断面をポリエステルテープでシールし、フェノールフタレインを含有する塩化ナトリウム水溶液中につけて、12Vの直流電圧下において1分間放置した際に発生する泡の個数を測定した。そして、この測定を50回行ったときの平均値を算出し、これを100cm当たりに換算して樹脂皮膜のピンホール数とした。
<加工後の水素バリヤー性>
水素水生成装置を用い、水に水素を溶存・含有させた1.6ppmの水素水を調製した。次に、プレス機を用いて、供試材に絞り加工(シェル成形)と外周部のカール加工を施した後、カール部にシール用のコンパウンドを塗布して缶蓋を作製した。次に、水素水を缶胴に充填した。更に、缶蓋のカール部を缶胴のフランジ部に被せ圧着して、缶蓋と缶胴を接合した。35℃で12ヶ月保管後の水素水中の水素濃度を溶存水素計で測定した。なお、初期の水素濃度は1.6ppmであった。評価基準は、以下の通りである。
○ :1.4ppm以上1.6ppm以下
○△:1.0ppm以上1.4ppm未満
△ :0.7ppm以上1.0ppm未満
× :0.7ppm未満
本発明例1〜23ではいずれも、ピンホール数が所望の範囲内にあり、加工後における水素バリヤー性が良好であった。
これに対して、比較例1では、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の数分子量が7000未満の為、ピンホール数が多くなり加工後における水素バリヤー性が不合格となった。
比較例2では、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の分子量が12000を超える為、加工後水素バリヤー性が不合格となった。
比較例3では、空気清浄度が劣っていた為、ピンホール数が多くなり加工後における水素バリヤー性が不合格となった。
比較例4では、焼付開始から100℃に到達するまでの時間が短かった為、ピンホール数が多くなり加工後における水素バリヤー性が不合格となった。
比較例5では、焼付開始から100℃に到達するまでの時間が長かった為、ピンホール数が多くなり加工後における水素バリヤー性が不合格となった。
比較例6では、焼付において100℃から最高到達温度に到達するまでの時間が短かった為、ピンホール数が多くなり加工後における水素バリヤー性が不合格となった。
比較例7では、焼付において100℃から最高到達温度に到達するまでの時間が長かった為、ピンホール数が多くなり加工後における水素バリヤー性が不合格となった。
比較例8では、皮膜厚が4μm未満の為、ピンホール数が多くなり加工後における水素バリヤー性が不合格となった。
比較例9では、膜厚が12μmを超えた為、加工後における水素バリヤー性が不合格となった。
比較例10では、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とは異なる樹脂、ならびに、尿素樹脂及びベンゾグアナミンと異なる硬化剤を用いたので、水素バリヤー性が不合格となった。
比較例11では、尿素樹脂及びベンゾグアナミン樹脂とは異なる硬化剤を用いたので水素バリヤー性が不合格となった。
比較例12では、ポリエチレンワックス、カルナウバワックス及びパラフィンワックスとは異なるインナーワックスを用いたので、水素バリヤー性が不合格となった。
本発明により、水素を含有する水を保存する容器に用いられ、加工後における水素バリヤー性に優れた樹脂被覆アルミニウム材を提供することができる。

Claims (2)

  1. アルミニウム材と、当該アルミニウム材の表面に形成された化成皮膜と、当該化成皮膜の上に形成され、水素水と接触する樹脂皮膜とを含む樹脂被覆アルミニウム材において、前記樹脂皮膜は、7000〜12000の数平均分子量を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂と、尿素樹脂及びベンゾグアナミン樹脂の少なくとも一種の硬化剤と、ポリエチレンワックス、カルナウバワックス及びパラフィンワックスの少なくとも一種のインナーワックスとを含有し、4〜12μmの皮膜厚を有し、ピンホール数が0.1〜25個/100cmであることを特徴とする水素水保存容器用樹脂被覆アルミニウム材。
  2. 2μm以上の粒径を有する粒子が1立方フィート当たり90〜900個の割合で存在する空気清浄度の環境下において、アルミニウム材を化成処理する工程と;7000〜12000の数平均分子量を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂と、尿素樹脂及びベンゾグアナミン樹脂の少なくとも一種の硬化剤と、ポリエチレンワックス、カルナウバワックス及びパラフィンワックスの少なくとも一種のインナーワックスとを含有する塗料を、前記化成処理したアルミニウム材上に塗布する工程と;塗布された塗料を焼付硬化する工程であって4〜12μmの皮膜厚を有する樹脂皮膜を形成する焼付硬化工程と;を含み、当該焼付硬化工程において、塗布された塗料の焼付開始から100℃に到達するまでの時間が4〜10秒であり、100℃から最高到達板温度に到達するまでの時間が12〜18秒であることを特徴とする水素水保存容器用樹脂被覆アルミニウム材の製造方法。
JP2014227609A 2014-11-08 2014-11-08 水素水保存容器用樹脂被覆アルミニウム材及びその製造方法 Pending JP2016088010A (ja)

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