JP2016085165A - シンチレータパネルおよび放射線検出器 - Google Patents

シンチレータパネルおよび放射線検出器 Download PDF

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Abstract

【課題】鮮鋭性により優れる放射線画像を提供することのできるシンチレータパネルおよび放射線検出器を提供する。【解決手段】シンチレータパネルは、支持体と、前記支持体上に形成されたシンチレータ層とを含み、前記シンチレータ層が蛍光体を含み、前記蛍光体が、側面に凸部を有する複数の柱状結晶であり、前記複数の柱状結晶は、互いに、前記凸部を有する部位において実質的に接触していないシンチレータパネル。【選択図】図1

Description

本発明は、放射線画像を形成する際に用いられるシンチレータパネルおよび放射線検出器に関する。
従来、X線画像のような放射線画像は医療現場において病状の診断に広く用いられている。特に、増感紙−フィルム系による放射線画像は、長い歴史のなかで高感度化と高画質化が図られた結果、高い信頼性と優れたコストパフォーマンスを併せ持った撮像システムとして、今なお、世界中の医療現場で用いられている。しかしながら、これら画像情報は、いわゆるアナログ画像情報であって、現在発展を続けているデジタル画像情報のような、自由な画像処理や瞬時の電送が出来ない。
近年、コンピューテッドラジオグラフィ(computed radiography:CR)やフラットパネル型の放射線ディテクタ(flat panel detector:FPD)等に代表されるデジタル方式の放射線検出器が登場している。これら放射線検出器では、デジタルの放射線画像が直接得られ、陰極管を利用したパネルや液晶パネル等の画像表示装置に画像を直接表示することが可能なので、写真フィルム上への画像形成が必要ない。その結果、これらのデジタル方式の放射線検出器、例えばX線検出器は、銀塩写真方式による画像形成の必要性を低減させ、病院や診療所での診断作業の利便性を大幅に向上させている。
X線画像に関するデジタル技術の一つとしてコンピューテッドラジオグラフィ(CR)が現在医療現場で受け入れられている。しかしながら、CRで得られるX線画像は、銀塩写真方式などのスクリーン・フィルムシステムによる画像と比べて鮮鋭性が充分でなく空間分解能も不充分であり、その画質レベルはスクリーン・フィルムシステムの画質レベルには到達していない。そこで、更に新たなデジタルX線画像技術として、例えば、薄膜トランジスタ(TFT)を用いた平板X線検出器(Flat panel detector、FPD)が開発されている。
上記FPDでは、その原理上、X線を可視光に変換するために、照射されたX線を可視光に変換して発光する特性を有するX線蛍光体で作られた蛍光体層を有するシンチレータパネルが使用されるが、低線量のX線源を用いたX線撮影では、シンチレータパネルから検出されるシグナルとノイズとの比(SN比)を向上するために、X線の可視光への変換率である発光効率が高いシンチレータパネルを使用することが必要になる。一般にシンチレータパネルの発光効率は、蛍光体層の厚さ、蛍光体のX線吸収係数によって決まるが、蛍光体層の厚さを厚くすればするほど、X線照射によって蛍光体層内で発生した発光光がシンチレータ層内で散乱しやすくなり、シンチレータパネルを介して得られるX線画像の鮮鋭性が低下する。そのため、X線画像の画質に必要な鮮鋭性を設定すると、シンチレータパネルにおける蛍光体層の膜厚の限度が自ずと定まる。
ここで、蛍光体はシンチレータ、蛍光体層はシンチレータ層ともいう。
また、輝度が高く、鮮鋭性に優れたX線画像を提供できるシンチレータパネルを得るうえでは、蛍光体層を構成する蛍光体の形状も重要である。多くのシンチレータパネルでは、シンチレータ層を構成する蛍光体として柱状結晶の形状を有するものが採用されており、通常、基板または支持体等にこのような柱状結晶を複数配置した構成を有している。ここで、シンチレータ層を構成する柱状結晶は、その中で生じた蛍光である発光光を基板または支持体等の主面に対して垂直の方向に効率よく放出できるよう、それぞれ、基板または支持体等の主面に対して垂直に伸びた形状を有している。シンチレータ層にこのようなレイアウトを採用したシンチレータパネルは、上記輝度と鮮鋭性を高く維持できる共に、基板または支持体等に対して垂直の方向における強度をも高く維持できる。なお、「基板または支持体等に対して垂直の方向」は、以下、「膜厚方向」ということがある。
近年、シンチレータ層を構成する蛍光体の結晶形状に着目した研究や試みが種々なされるようになってきている。
例えば、特許文献1には、特定の蛍光体を備え、該蛍光体の蛍光出射側で、柱状結晶の柱側面に孔構造が形成され、前記柱状部において、蛍光出射側で蛍光物質の結晶の充填率が、蛍光射出側の反対側よりも高い放射線画像変換パネルが記載されている。そして、特許文献1は、このような放射線画像変換パネルでは、蛍光体の蛍光出射側における蛍光物質の結晶の充填率を高くしながら、柱側面に孔構造を設けているため、蛍光発光量を多くしつつ、この領域での光学的クロストークを防止できると教示している。
特許文献2には、特定の柱状結晶構造の蛍光体層を有し、さらに、該柱状結晶が、柱側面に特定の孔を特定の密度で有する放射線画像変換パネルが記載されている。そして、特許文献2は、このような放射線画像変換パネルでは、柱側面の小孔が酸素の吸着点として作用し、この酸素と賦活剤との相互作用によって、蛍光体層の感度が向上すると教示している。
特許文献3には、基板上にシンチレータ層を有し、該シンチレータ層が、各側面に実質的に凹凸を有さない複数の柱状結晶により構成されている放射線検出素子が記載されている。そして、特許文献3は、このような放射線画像素子では、MTF特性のばらつきが低減され、解像度特性が向上すると教示している。
特許文献4には、特定の基板と、該基板上に形成されたシンチレータ層とを有し、前記シンチレータ層が、光を前記基板側に反射させる反射層を表面側に有し、前記反射層が、シンチレータの結晶が螺旋状に積層した螺旋構造を有するシンチレータパネルが記載されている。そして、特許文献4は、このようなシンチレータパネルは、反射層の反射率が高く、輝度の高いシンチレータパネルなどが得られると教示している。
特開2012−173127号公報 特開2007−232633号公報 特開2012−98175号公報 特開2011−27569号公報
しかし、特許文献1、2に記載された放射線画像変換パネル、特許文献3に記載された放射線画像素子、特許文献4に記載されたシンチレータパネルにおいても、得られる放射線画像の鮮鋭性の点で改善の余地がある。
すなわち、特許文献1、2に記載された放射線画像変換パネルにおける、柱状結晶に孔を設ける手段、特許文献3に記載された放射線検出素子における、放射線検出素子を各側面に実質的に凹凸を有さない複数の柱状結晶により構成する手段、および、特許文献4に記載されたシンチレータパネルにおける、シンチレータの結晶が螺旋状に積層した螺旋構造を有する反射層を設ける手段は、いずれも、柱状結晶が融着することで光散乱が生じて、得られる放射線画像の鮮鋭性が低下することを防げるものではない。
したがって、柱状結晶の融着の度合いを精密に制御することで、得られる放射線画像の鮮鋭性を向上させることができると考えられる。
本発明の目的は、鮮鋭性により優れる放射線画像を提供することのできるシンチレータパネルおよび放射線検出器を提供することにある。
本発明に係るシンチレータパネルは、支持体と、前記支持体上に形成されたシンチレータ層とを含み、前記シンチレータ層が蛍光体を含み、前記蛍光体が、側面に凸部を有する複数の柱状結晶であり、前記複数の柱状結晶は、互いに、前記凸部を有する部位において実質的に接触していないことを特徴とする。
また、本発明に係るシンチレータパネルにおいて、前記柱状結晶の凸部を有する部位が、シンチレータ層の厚さを100%としたときに、シンチレータ層の、柱状結晶成長開始面から厚さが1〜50%となる厚み領域に存在することが好ましい。
また、本発明に係るシンチレータパネルにおいて、前記柱状結晶の凸部を有する部位が、シンチレータ層の厚さを100%としたときに、シンチレータ層の、柱状結晶成長開始面から厚さが1〜50%となる厚み領域のみに存在することがより好ましい。
また、本発明に係るシンチレータパネルにおいて、前記シンチレータ層が、前記柱状結晶の凸部を有する部位が存在する厚み領域と、前記柱状結晶の凸部を有する部位が存在しない厚み領域からなり、前記柱状結晶の凸部を有する部位が存在する厚み領域が、前記柱状結晶の凸部を有する部位が存在しない厚み領域よりも柱状結晶成長開始面側にあり、前記柱状結晶の凸部を有する部位が存在する厚み領域の、柱状結晶成長開始面に平行な断面における柱状結晶の数(a)と、前記柱状結晶の凸部を有する部位が存在しない厚み領域の、柱状結晶成長開始面に平行な断面における柱状結晶の数(b)との比(a/b)が、1〜8であることがさらに好ましい。
また、本発明に係るシンチレータパネルにおいて、前記柱状結晶の凸部を有する部位が存在する厚み領域における、前記柱状結晶の充填率が、30〜95%であることが好ましい。
本発明に係る第1の放射線検出器は、上記シンチレータパネルと光電変換素子パネルとを含むことを特徴とする。
本発明に係る第2の放射線検出器は、光電変換素子パネルと、前記光電変換素子パネル上に形成されたシンチレータ層とを含み、前記シンチレータ層が蛍光体を含み、前記蛍光体が、側面に凸部を有する複数の柱状結晶であり、前記複数の柱状結晶は、互いに、前記凸部を有する部位において実質的に接触していないことを特徴とすることを特徴とする。
また、本発明に係る第2の放射線検出器において、前記柱状結晶の凸部を有する部位が、シンチレータ層の厚さを100%としたときに、シンチレータ層の、柱状結晶成長開始面から厚さが1〜50%となる厚み領域に存在することが好ましい。
また、本発明に係る第2の放射線検出器において、前記柱状結晶の凸部を有する部位が、シンチレータ層の厚さを100%としたときに、シンチレータ層の、柱状結晶成長開始面から厚さが1〜50%となる厚み領域のみに存在することがより好ましい。
また、本発明に係る第2の放射線検出器において、前記シンチレータ層が、前記柱状結晶の凸部を有する部位が存在する厚み領域と、前記柱状結晶の凸部を有する部位が存在しない厚み領域からなり、前記柱状結晶の凸部を有する部位が存在する厚み領域が、前記柱状結晶の凸部を有する部位が存在しない厚み領域よりも柱状結晶成長開始面側にあり、前記柱状結晶の凸部を有する部位が存在する厚み領域の、柱状結晶成長開始面に平行な断面における柱状結晶の数(a)と、前記柱状結晶の凸部を有する部位が存在しないの、柱状結晶成長開始面に平行な断面における柱状結晶の数(b)との比(a/b)が、1〜8であることがさらに好ましい。
また、本発明に係る第2の放射線検出器において、前記柱状結晶の凸部を有する部位が存在する厚み領域における、前記柱状結晶の充填率が、30〜95%であることが好ましい。
本発明によれば、鮮鋭性により優れる放射線画像を提供することのできるシンチレータパネルおよび放射線検出器を提供することができる。
すなわち、本発明のシンチレータパネルおよび放射線検出器では、シンチレータ層における蛍光体が側面に凸部を有する複数の柱状結晶であることから、柱状結晶が互いに前記凸部を有する部位において実質的に接触しておらず、それ故、柱状結晶同士の融着によって生じる光散乱に起因して得られる放射線画像の鮮鋭性の低下が生じない。そのため、柱状結晶同士の融着を防止する手段を有さない、特許文献1、2に記載された放射線画像変換パネル、特許文献3に記載された放射線検出素子、特許文献4に記載されたシンチレータパネルに比して、鮮鋭性が向上した放射線画像を提供することができる。
さらに、本発明のシンチレータパネルおよび放射線検出器では、柱状結晶において上記凸部が存在する領域(特に、中央から柱状結晶成長開始面までの厚み領域)や充填率をより精密に制御することで、より効果的に柱状結晶同士の融着によって生じる光散乱を防止することができ、より鮮鋭性が向上した放射線画像を提供することができる。
図1は、シンチレータ層における、蛍光体の凸部について説明する概略図であり、また、シンチレータパネルの厚さ方向と平行な面の断面図である。 図2は、シンチレータ層における、蛍光体の形状などについて説明する概略図であり、また、シンチレータパネルの厚さ方向と平行な面の断面図である。 図3は、シンチレータ層における、「柱状結晶の凸部を有する部位が存在する厚み領域の、柱状結晶成長開始面に平行な断面における柱状結晶の数(a)と、柱状結晶の凸部を有する部位が存在しない厚み領域の、柱状結晶成長開始面に平行な断面における柱状結晶の数(b)との比(a/b)」について説明する概略図であり、また、シンチレータパネルの厚さ方向と平行な面の断面図である。 図4は、本発明に係るシンチレータパネルおよび放射線検出器の例示的な構成を示す概略図であり、シンチレータパネルおよび放射線検出器の厚さ方向と平行な面の断面図である。また、図4(a)は、支持体11と該支持体11上にシンチレータ層12が形成されたシンチレータパネル10を説明する図である。また、図4(a)は、シンチレータパネル10のシンチレータ層12における厚さ方向、柱状結晶120の高さを示す図でもある。なお、シンチレータ層の厚さ方向、柱状結晶の高さは、放射線検出器においても同様に適用される。図4(b)は、光電変換素子パネル20と該光電変換素子パネル20上にシンチレータ層が形成された第2の放射線検出器31を説明する図である。 図5は、本発明に係るシンチレータパネルの例示的な構成を示す概略図であり、また、シンチレータパネルおよび放射線検出器の厚さ方向と平行な面の断面図である。 図6は、本発明に係る放射線検出器の例示的な構成を示す概略図であり、また、シンチレータパネルおよび放射線検出器の厚さ方向と平行な面の断面図である。 図7は、本発明で用いられる例示的な蒸着装置の一つの構成を示す概略図である。 図8は、本発明で用いられる例示的な蒸着装置の一つの構成を示す概略図である。
以下に、本発明に係るシンチレータパネル、放射線検出器及びそれらの製造方法について詳細に説明する。
[シンチレータパネル]
本発明に係るシンチレータパネルは、支持体と、前記支持体上に形成されたシンチレータ層とを含む。
前記シンチレータ層は、蛍光体を含み、前記蛍光体が、側面に凸部を有する複数の柱状結晶であり、前記複数の柱状結晶は、互いに、前記凸部を有する部位において実質的に接触していない。
シンチレータパネルは、被検体の放射線画像を取得するに当たり、シンチレータ層で被検体を透過した放射線を吸収し、発光光を生じる。該発光光には、被検体の情報が含まれる。シンチレータパネルを後述の光電変換素子パネルとカップリングして放射線検出器とすることで、該発光光に含まれる情報を電気信号に変えて放射線画像として取得できる。
放射線としては、汎用性などの観点から、X線が好ましい。なお、これは、後述の放射線検出器においても同じである。
以下、本発明に係るシンチレータパネルについて説明する。
支持体
本発明に係るシンチレータパネルは、支持体を含む。
「支持体」は、「シンチレータパネル」を構成する層の一つであり、シンチレータ層を形成する際に柱状結晶の土台となる。また、支持体は、シンチレータ層の構造を保持する役割も有する。
但し、本明細書においては、シンチレータ層が光電変換素子パネルに直接形成されている放射線検出器の光電変換素子パネルは、支持体とはいわず、支持体と区別する。
支持体の原材料としては、X線等の放射線を透過させることが可能な、各種のガラス、高分子、金属等のフィルム、シート、板等が挙げられる。支持体の原材料の具体例としては、石英、ホウ珪酸ガラス、化学的強化ガラスなどの板ガラス;アモルファスカーボン板;サファイア、チッ化珪素、炭化珪素などの板状セラミック;シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム燐、ガリウム窒素などを板状に成形した半導体;又、セルロースアセテートフィルム、ポリエステル樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム等の高分子フィルム(プラスチックフィルム)や炭素繊維強化樹脂シート等の高分子シート(プラスチックシート);アルミニウムシート、鉄シート、銅シート等の金属シート或いは該金属の酸化物の被覆層を有する金属シート;バイオナノファイバーフィルムなどが挙げられる。支持体は、1層の上記原材料からなっていてもよいし、同種または異種の2層以上の上記原材料からなっていてもよい。
支持体は、厚さ50〜500μmの可撓性を有するフィルムまたはシートであることが好ましい。
ここで、「可撓性を有する」とは、120℃での弾性率(E120)が、0.1〜300GPaであることをいう。また、「弾性率」とは、引張試験機を用い、JIS−C2318に準拠したサンプルの標線が示すひずみと、それに対応する応力が直線的な関係を示す領域において、ひずみ量に対する応力の傾きを求めた値である。これがヤング率と呼ばれる値であり、かかるヤング率を弾性率とする。
支持体は、上記120℃での弾性率(E120)が、0.1〜300GPaであることが好ましく、1〜100GPaであることがより好ましい。
可撓性を有する支持体の原材料としては、上記原材料の中でも、特に、厚さ50〜500μmの可撓性を有する高分子フィルムおよび高分子シートが好ましい。
可撓性を有する高分子フィルムとしては、具体的には、ポリエチレンナフタレートフィルム(E120=7GPa)、ポリエチレンテレフタレートフィルム(E120=4GPa)、ポリカーボネートフィルム(E120=2GPa)、ポリイミドフィルム(E120=7GPa)、ポリエーテルイミドフィルム(E120=3GPa)、アラミドフィルム(E120=12GPa)、ポリスルホンフィルム(E120=2GPa)、ポリエーテルスルホンフィルム(E120=2GPa)、バイオナノファイバーフィルム等が挙げられる。なお、弾性率の値は、同種の高分子フィルムでも変動しうるので、必ずしも括弧内の値になるわけではないが、括弧内の値は目安として一例を示したものである。上記高分子フィルムは、いずれも高い耐熱性を有し、蛍光体の蒸着に耐えうる点でも好ましい。上記高分子フィルムの中でも、ポリイミドフィルムは、特に耐熱性に優れ、CsI(ヨウ化セシウム)を原材料として気相法にて蛍光体(シンチレータ)の柱状結晶を形成する場合に好適である観点から、特に好ましい。
可撓性を有する高分子フィルムは、単独の高分子化合物のフィルムであってもよいし、上記高分子化合物の混合物のフィルムであってもよい。
支持体は、1層の可撓性を有する高分子フィルムからなっていてもよいし、同種または異種の二層以上の、可撓性を有する高分子フィルムからなっていてもよい。
また、支持体がバイオナノファイバーフィルムである場合は、バイオナノファイバーフィルムが、(i)軽い、(ii)鉄の5倍以上の強度がある(高強度)、(iii)熱で膨張しにくい(低熱膨張性)、(iv)フレキシブルである(可撓性に優れる)、(v)混ぜる、塗る、フィルム状にするなど様々な処理ができる、(vi)植物繊維は廃棄時の環境負荷が小さいなど、既存のガラス板、プラスチックシートおよびプラスチックフィルムでは得られない特性を有することから、支持体の特性や環境上のメリットを享受できる。
支持体は、その反射率を調整する目的で、光吸収性や光反射性が、例えば、着色により付与されていてもよい。すなわち、支持体は反射層としての機能を兼ね備えていてもよい。そのような支持体としては、例えば、支持体中に白色顔料やカーボンブラックが練りこまれた白色PETや黒色PETが挙げられる。
シンチレータ層
本発明に係るシンチレータパネルにおいて、シンチレータ層は、上記支持体上に形成されている。
上記シンチレータ層は、支持体上に直接形成されていてもよいし、反射層などのような、シンチレータ層や支持体以外の層を介して、支持体上に間接的に形成されていてもよい。
すなわち、本発明に係るシンチレータパネルでは、例えば、「支持体/シンチレータ層」、「支持体/反射層/シンチレータ層」等の層構成を採用することができる。
シンチレータ層は、外部から入射されたX線等の放射線のエネルギーを、可視光などの光に変換する作用を有している。
「蛍光体」および「シンチレータ」は、入射されたX線等の放射線のエネルギーを吸収して、「光」を発光する。「蛍光体」および「シンチレータ」には、「賦活剤で賦活されていない蛍光体」および「賦活剤で賦活されている蛍光体」が含まれる。以下において、「賦活剤で賦活されていない蛍光体」は「蛍光体(pure)」ともいい、賦活剤で賦活されている蛍光体は「賦活蛍光体」ともいう。
「光」は、電磁波のうち、可視光線を中心に紫外領域から赤外領域にわたる波長領域の電磁波、具体的には、300nmから800nmにかけての波長を有する電磁波である。
蛍光体母材化合物としては、外部から入射されたX線等の放射線のエネルギーを効率よく光に変換でき、かつ、柱状結晶を形成可能な原材料である限り特に限定されない。したがって、この条件を満たす限り、従来公知の種々の蛍光体(pure)を蛍光体母材化合物として用いることができる。
ここで、「蛍光体母材化合物」は、蛍光体(pure)であって、シンチレータ層を構成する蛍光体の柱状結晶を形成するための原材料である。
これら蛍光体母材化合物の中でも、ヨウ化セシウム(CsI)等の立方晶系ハライド蛍光体、硫酸化ガドリニウム(GOS)、タングステン酸カドミウム(CWO)、ケイ酸ガドリニウム(GSO)、ゲルマニウム酸ビスマス(BGO)、ケイ酸ルテチウム(LSO)、タングステン酸鉛(PWO)などを好適に用いることができ、特に、立方晶系ハライド蛍光体が、得られる放射線画像の鮮鋭性の向上の観点から好ましい。
また、立方晶系ハライド蛍光体の中でも、特に、CsIが、X線から可視光への変換率が比較的高く、蒸着によって容易に柱状結晶を形成し、該結晶構造に起因する光ガイド効果によって結晶内での発光光の散乱が抑えられ、その分シンチレータ層の厚さを厚くすることができる観点から好ましい。
蛍光体母材化合物は、CsIなどの瞬時発光の蛍光体に限られず、シンチレータパネルの用途によっては、臭化セシウム(CsBr)などの輝尽性蛍光体であってもよい。
本発明に係るシンチレータパネルでは、シンチレータ層は、賦活剤を含んでいてもよい。該賦活剤によって、蛍光体が賦活される。
蛍光体としてCsIを例にとれば、CsIのみからなるシンチレータ層原材料から得られるシンチレータ層では、充分に高い発光効率が得られない場合がある。そこで、シンチレータ層は、蛍光体母材化合物であるCsIに加えて各種の賦活剤のうちの1種または2種以上の賦活剤を含むシンチレータ層原材料から得られるシンチレータ層、すなわち、CsIが各種の賦活剤のうちの1種または2種以上の賦活剤で賦活されてなる賦活蛍光体を含むシンチレータ層であることが好ましい。
ここで、「シンチレータ層原材料」とは、蛍光体母材化合物や賦活剤など、シンチレータ層を形成するための原材料の総称である。
賦活蛍光体を含むシンチレータ層としては、例えば、特公昭54−35060号公報に開示されているような、CsIを任意の量のヨウ化ナトリウム(NaI)で賦活して得られる賦活蛍光体であるCsI:Naを含むシンチレータ層が挙げられる。また、賦活蛍光体を含むシンチレータ層の中でも、例えば特開2001−59899号公報に開示されているような、CsI:Tl、CsI:Eu、CsI:In、CsI:Li、CsI:K、CsI:Rb、CsI:Naなどのいずれかの賦活蛍光体または複数の賦活蛍光体を含むシンチレータ層が好ましい。
尚、本発明では、賦活剤で賦活された蛍光体を、「蛍光体:賦活剤の発光中心」と表すことがある。例えば、ヨウ化タリウムなどのタリウム化合物で賦活されたヨウ化セシウムは、「CsI:Tl」と表す。
本発明に係るシンチレータパネルにおいては、特に、1種または2種以上のタリウム化合物を含む賦活剤と蛍光体とを原材料とするシンチレータ層が好ましく、1種または2種以上のタリウム化合物を含む賦活剤とヨウ化セシウムとを原材料とするシンチレータ層がより好ましく、タリウム化合物を含む賦活剤とヨウ化セシウムとを原材料とするシンチレータ層が、該原材料から形成されるタリウム賦活ヨウ化セシウム(CsI:Tl)が300nm〜750nmまでの広い発光波長をもつことから、特に好ましい。
タリウム化合物としては、1価のタリウムの化合物や3価のタリウムの化合物が挙げられ、より具体的には、例えば、沃化タリウム(TlI)、臭化タリウム(TlBr)、塩化タリウム(TlCl)、フッ化タリウム(TlF、TlF3)等が挙げられる。これらの中でも、沃化タリウム(TlI)が、蛍光体、特にCsIの賦活度に優れる観点から好ましい。
また、タリウム化合物の融点は、400〜700℃の範囲内にあることが好ましい。タリウム化合物の融点が上記範囲内であると、蒸着により形成されたシンチレータ層において、賦活剤が蛍光体の柱状結晶内に取り込まれ、得られる賦活蛍光体の発光効率が、蛍光体(pure)の発光効率に比べて向上する。なお、融点は、常圧下における融点であり、常圧は、約0.101MPaである。
本発明に係るシンチレータパネルのシンチレータ層において、賦活剤の相対含有量は0.1〜5モル%が好ましい。
ここで、シンチレータ層における賦活剤の相対含有量は、シンチレータ層原材料中に存在する蛍光体母材化合物の全量を100モル%としたときの、シンチレータ層原材料中に存在する賦活剤の全量をモル%で示した相対値である。
蛍光体母材化合物がCsI1molであり、賦活剤がTlI0.01molである場合を例に挙げれば、賦活剤のモル量は蛍光体母材化合物のモル量の100分の1であるので、蛍光体母材化合物を100mol%としたときの賦活剤の相対含有量は、1mol%となる。
このように、シンチレータ層中の賦活剤の相対含有量とは、シンチレータ層中の蛍光体を構成する成分の量から直接導き出されるものではなく、原材料換算値である。
賦活剤の相対含有量は、シンチレータ層から測定対象となる領域をカッターなどを用いて削り出した後、ICP発光分光分析法(ICP-OES:Inductively-Coupled-Plasma Optical Emission Spectrometry)により測定する。ICP発光分光分析は、常法に従って行えばよい。ICP発光分光分析器としては、例えば、セイコーインスツルメンツ株式会(株)製 SPS3100などを用いることができる。
本発明のシンチレータパネルでは、シンチレータ層に含まれる蛍光体は、側面に凸部を有する複数の柱状結晶であり、前記複数の柱状結晶は、互いに、前記凸部を有する部位において実質的に接触していない。
柱状結晶同士が実質的に接触している部位である接触部がシンチレータ層に含まれると、接触部で光散乱が生じるため、シンチレータパネルや放射線検出器を介して得られる放射線画像の鮮鋭性が低下する。
これに対して、本発明に係るシンチレータパネルや放射線検出器では、上記柱状結晶が側面に凸部を有することで、該柱状結晶同士が、実質的に接触しないように制御されており、柱状結晶同士の接触に起因する光散乱が生じないため、得られる放射線画像の鮮鋭性を向上させることができる。
それゆえ、本発明に係るシンチレータパネルや放射線検出器は、従来のシンチレータパネルや放射線検出器よりも、鮮鋭性に優れた放射線画像を提供することができる。
ここで、「凸部」は、図1に示すように、表面が略平滑な柱状結晶を基準柱状結晶(図1の(a))と想定し、該基準柱状結晶の表面よりも外側に凸部を有するものである。このような凸部の一例を、図1(c)に示す。これに対して、図1(b)に示すような、柱状結晶が歪んだり螺旋を形成したりしている場合などは、歪みや螺旋などにより生じた凸部は、本発明における上記凸部には含まれない。また、図1(d)に示すような、基準柱状結晶に対して凹部を設けることで形成される凸部は、基準柱状結晶の表面よりも外側にある凸部ではないので、本発明における上記凸部には含まれない。
「凸部を有する部位」は、図1(c)に示すように、シンチレータ層を、支持体と平行な平面で、凸部が含まれる領域および凸部が含まれない領域に分けたときに、凸部が含まれる領域に属する柱状結晶の部分である。
なお、「凸部を有する部位」に対する用語である「凸部を有さない部位」は、凸部が含まれない領域に属する柱状結晶の部分である。
「凸部」は、基準柱状結晶の表面に、所定の形状で点在していることが、柱状結晶同士の接触に起因する光散乱を防止して、シンチレータパネルや放射線検出器を介して得られる放射線画像の鮮鋭性を向上させるという観点から好ましい。
柱状結晶の側面に存在する凸部の形状は、図2に示すように、略半形状であってもよいし、多角形の立体であってもよいし、図3(c)に示すように、球形状であってもよい。
これらの中でも、球形状が、隣り合う柱状結晶同士が実質的に接触しないように制御しやすい形状であり、柱状結晶同士の接触に起因する光散乱をより効果的に防止して、放射線画像の鮮鋭性をより向上させることができる観点から好ましい。
柱状結晶の側面に存在する凸部の大きさは、図2に示すように、実質的に揃っていてもよいし、ばらついていてもよい。
柱状結晶の凸部を有する部位における表面粗さ(x)は、0μmを超えて1μm以下であると、隣り合う柱状結晶同士が接触している部分がより少ないか、全く接触していない状態となり、得られる放射線画像の鮮鋭性がより向上する観点から好ましい。柱状結晶の凸部を有する部位における表面粗さ(x)は、JIS(JIS B 0601−2001)に準じて、電子顕微鏡画像上で、柱状結晶の凸部を有する部分の基準長さおよび凸部の粗さ曲線を求め、これらから算術平均粗さ(Ra)を求め、これを表面粗さ(x)とする。
また、柱状結晶の凸部を有する部位が、シンチレータ層の厚さを100%としたときに、シンチレータ層の、柱状結晶成長開始面から厚さが1〜50%となる厚み領域に存在することが、隣り合う柱状結晶同士が接触している部分がより少ないか、全く接触していない状態となり、柱状結晶同士の接触に起因する光散乱をより効果的に防止でき、得られる放射線画像の鮮鋭性がより向上する観点から好ましい。
柱状結晶の凸部を有する部位は、シンチレータ層の厚さを100%としたときに、シンチレータ層の、柱状結晶成長開始面から厚さが1〜50%となる厚み領域のみに存在することが、隣り合う柱状結晶同士が接触している部分がより少ないか、全く接触していない状態となり、柱状結晶同士の接触に起因する光散乱をより効果的に防止でき、得られる放射線画像の鮮鋭性がさらに向上する観点からさらに好ましい。
ここで、柱状結晶の凸部を有する部位がシンチレータ層の厚さを100%としたときに、シンチレータ層の、柱状結晶成長開始面から厚さが1〜50%となる厚み領域に存在すると、柱状結晶成長初期の隣り合う柱状結晶同士の融着を効果的に抑制でき、柱状結晶の根元の独立性が高くなるため、得られる放射線画像の鮮鋭性がさらに向上するものと推察される。
また、柱状結晶の凸部を有する部位がシンチレータ層の厚さを100%としたときに、シンチレータ層の、柱状結晶成長開始面から厚さが1〜50%となる厚み領域のみに存在すると、例えば、柱状結晶の凸部を有する部位がシンチレータ層の厚み領域全体に存在する場合に比べて、必要以上に柱状結晶の凸部を有する部位が存在しないため、得られる放射線画像の鮮鋭性がさらに向上するものと推察される。
前記シンチレータ層は、前記柱状結晶の凸部を有する部位が存在する厚み領域と、前記柱状結晶の凸部を有する部位が存在しない厚み領域からなり、前記柱状結晶の凸部を有する部位が存在する厚み領域が、前記柱状結晶の凸部を有する部位が存在しない厚み領域よりも柱状結晶成長開始面側にあり、前記柱状結晶の凸部を有する部位が存在する厚み領域の、柱状結晶成長開始面に平行な断面における柱状結晶の数(a)と、前記柱状結晶の凸部を有する部位が存在しない厚み領域の、柱状結晶成長開始面に平行な断面における柱状結晶の数(b)との比(a/b)が、1〜8であることが、柱状結晶同士が接触している部分がより少ないか、全く接触していない状態となり、隣り合う柱状結晶同士の接触に起因する光散乱をより効果的に防止でき、得られる放射線画像の鮮鋭性がさらに向上する観点から特に好ましい。
ここで、上記比(a/b)は、上記柱状結晶の太さが、シンチレータ層の根元側から先端側に向かってどのように変化しているかを表す指標である。
例えば、図2に示すように、柱状結晶の太さがシンチレータ層の根元側から先端側に向かって太くなる場合、シンチレータ層の根元側から先端側に向かうにつれて、各柱状結晶の融着が起こるなどして、シンチレータ層の任意の厚さ位置での柱状結晶成長開始面に平行な断面における柱状結晶の断面の数が減少する。従って、上記比(a/b)は1よりも大きくなる。
同様に、図2に示すように、柱状結晶の太さがシンチレータ層の根元側から先端側に向かって同じである場合、シンチレータ層の根元側から先端側に向かうにつれて、シンチレータ層の任意の厚さ位置での柱状結晶成長開始面に平行な断面における柱状結晶の断面の数は変化しない。従って、上記比(a/b)は1となる。
柱状結晶の凸部を有する部位が存在する厚み領域における、前記柱状結晶の充填率は、30〜95%であることが、隣り合う柱状結晶同士が接触している部分が少ないか、全く接触していない状態となり、隣り合う柱状結晶同士の接触に起因する光散乱をより効果的に防止でき、得られる放射線画像の鮮鋭性がより向上する観点から好ましい。
ここで、「柱状結晶の充填率」は、シンチレータ層の、ある厚み領域における、該厚み領域の全体積に対する柱状結晶の割合である。例えば、シンチレータ層の根元部において、柱状結晶および空間を含めた根元部全体の体積を100%としたときに、その体積の80%を柱状結晶が占め、空間が20%を占めるとき、根元部の柱状結晶の充填率は80%である。
「蛍光体の柱状結晶の根元」は、蛍光体の柱状結晶の、シンチレータ層の柱状結晶成長開始面に接している部分である(図4(a)の付番80参照)。
また、シンチレータ層の、柱状結晶成長開始面から5μmの厚み領域を「シンチレータ層の根元部」とする。
「蛍光体の柱状結晶の先端」とは、シンチレータ層の、上記柱状結晶の根元側にある主面とは反対の主面側の柱状結晶の先端であり(図4(a)の付番90参照)、シンチレータ層の柱状結晶終了面から5μmの厚み領域を「シンチレータ層の先端部」とする。
上記複数の柱状結晶は、根元同士が互いに独立した態様で存在していることが、得られる放射線画像の鮮鋭性が向上する観点から好ましく、シンチレータ層の柱状結晶の根元から先端までの全体において、全ての柱状結晶が互いに独立した態様で存在していることがより好ましい。ここで、「複数の柱状結晶の根元同士が互いに独立している」とは、複数の柱状結晶の根元同士が、互いに融着したり接触したりすることなく、離間した状態で存在していることをいう。本発明に係るシンチレータパネルは、このような構成であることで、シンチレータ層の根元部での蛍光体の充填率を制御することができ、鮮鋭性により優れた放射線画像を提供できる。また、柱状結晶がこのような態様であると、シンチレータパネルに膜厚方向からの押圧が掛かったときに、柱状結晶にかかる荷重が分散されるので、柱状結晶が変形しにくくなり、シンチレータパネルの耐久性が高まるという効果も奏される。
上記柱状結晶の凸部の形状、表面粗さ(x)、前記柱状結晶の凸部を有する部位が存在する厚み領域の、柱状結晶成長開始面に平行な断面における柱状結晶の数(a)と、前記柱状結晶の凸部を有する部位が存在しない厚み領域の、柱状結晶成長開始面に平行な断面における柱状結晶の数(b)との比(a/b)、および、上記柱状結晶の根元同士の独立性は、電子顕微鏡で観察することで確認できる。
また、後述のシンチレータパネルの製造方法の項目で詳述するように、柱状結晶の凸部の形状、柱状結晶の凸部を有する部位の表面粗さ(x)、上記比(a/b)や、柱状結晶の根元同士を互いに独立させることは、例えば、蛍光体を支持体上に蒸着してシンチレータ層を形成する場合には、支持体の温度および蛍光体母材化合物の蒸着速度を調整することで達成できる。具体的には、例えば、蛍光体の柱状結晶の側面における凸部は、支持体温度が室温〜300℃、蛍光体母材化合物の蒸着速度が5〜200nm/sである蒸着条件下にて、支持体温度や蛍光体母材化合物の蒸着速度を周期的に変化させることで形成できる。なお、「室温」とは、通常25℃である。さらに、蛍光体を蒸着する被蒸着層の表面エネルギーが特定の範囲にあると、柱状結晶の凸部の形状、柱状結晶の凸部を有する部位の表面粗さ(x)、上記比(a/b)、および、柱状結晶の根元同士の独立性をより精密に制御できる。
シンチレータ層は、1層からなっていてもよいし、2層以上からなっていてもよい。シンチレータ層が2層以上からなる場合は、下地層となる層を含み、支持体上に、下地層とそれ以外の層とがこの順で積層されている構造を有するものであってもよいし、下地層を含まない構造を有するものであってもよい。シンチレータ層が下地層を含む2層以上で構成される場合、これらの層は、蛍光体母材化合物が同じである限り、同じ材質からなるものであってもよく、あるいは異なる材質からなるものであってもよい。すなわち、シンチレータ層は、(1)蛍光体母材化合物と賦活剤とを含む原材料から形成される1層だけであってもよく、(2)蛍光体母材化合物のみからなる原材料から形成される下地層と、蛍光体母材化合物と賦活剤とを含む原材料から形成される、下地層とは別の層とからなるものであってもよく、(3)蛍光体母材化合物と第1の賦活剤とを含む原材料から形成される下地層と、蛍光体母材化合物と第2の賦活剤とを含む原材料から形成される、下地層とは別の層とからなるものであってもよい。
なお、柱状結晶の根元が互いに独立したシンチレータ層を形成する場合は、下地層を形成する原材料として賦活剤を用いないことが、柱状結晶の根元が互いに独立したシンチレータ層をより精度よく形成できる観点から好ましい。但し、形成された下地層に賦活剤に由来する成分が含まれていてはならないということでなく、シンチレータ層形成後に、加熱などにより下地層以外の層から下地層に賦活剤に由来する成分が移動するなどして、下地層に賦活剤に由来する成分が含まれるなどしても構わない。
また、本明細書において、「下地層」とは、シンチレータ層の一部であり、シンチレータ層を構成する層のうち、柱状結晶成長開始面側の最外層をいう。
本発明においては、シンチレータ層が、(i)蛍光体母材化合物と賦活剤とを原材料とする下地層以外の層と、(ii)支持体と該下地層以外の層との間に設けられ、蛍光体母材化合物を原材料とし賦活剤を原材料とせず、空隙率が該下地層以外の層よりも高い値を示す下地層とからなるシンチレータ層であることが好ましい。
下地層の存在によって柱状結晶性が良好になり、蛍光体の発光量が増加して、得られる放射線画像の輝度も向上し、また、シンチレータパネルの保存性が向上して、輝度の向上した放射線画像を長期間安定して得られる。
ここで、空隙率は、シンチレータ層を柱状結晶成長開始面に平行に切断した断面において、蛍光体の柱状結晶の総和断面積および空隙の総和断面積の合計に対する、空隙の総和断面積の比率をである。
空隙率は、シンチレータパネルのシンチレータ層を柱状結晶成長開始面に平行に切除し、その断面の走査型電子顕微鏡写真を、画像処理ソフトを使用して、蛍光体の柱状結晶部分および空隙部を2値化することにより求めることができる。
下地層の蛍光体母材化合物の量を100モル%としたときの、下地層における賦活剤の相対含有量は、0.01〜1モル%が好ましく、0.3〜0.7モル%が更に好ましい。下地層における賦活剤の相対含有量がこのような範囲にあることが、放射線画像の輝度向上及びシンチレータパネルの保存性の点で非常に好ましい。
シンチレータ層における蛍光体の特定の面指数を有する面のX線回折スペクトルに基づく配向度は、シンチレータ層の厚さ方向の位置に拘らず、80〜100%の範囲内であることが、シンチレータ層の発光効率などの観点から好ましい。例えば、タリウム賦活ヨウ化セシウム(CsI:Tl)の柱状結晶における面指数は、(100)、(110)、(111)、(200)、(211)、(220)、(311)等のうちのいずれかであり得るが、本発明においてX線測定で利用される面指数は、(200)であることが好ましい。面指数については、X線解析入門(東京化学同人)の42〜46頁に詳細に記載されている。
ここで、シンチレータ層の厚さ方向は、図4の矢印が示すように、シンチレータ層の主面と直行する方向である。
また、「特定の面指数の面のX線回折スペクトルに基づく配向度」とは、ある面指数の強度Ixが他の面指数の面を含めた全体の総強度Iに占める割合である。例えば、X線回折スペクトルにおける(200)面の強度I200の配向度は、「配向度=I200/I」である。
配向度決定のための面指数の測定方法としては、例えばX線回折(XRD)が挙げられる。X線回折は、特定波長の固有X線を結晶性物質に照射し、Braggの式を満足する回折が起こることを利用して、物質の同定、結晶相の構造などに関する知見を得ることのできる汎用性の高い分析手法である。照射系のターゲットにはCu、Fe、Coなどが用いられ、装置能力によるが、一般的に照射時の出力は0〜50mA、0〜50Kv程度である。
本発明に係るシンチレータパネルにおいて、シンチレータ層の厚さは、本発明に係るシンチレータパネルを介して得られる放射線画像の輝度と鮮鋭性とのバランスがよい点から、100〜1000μmであることが好ましく、100〜800μmであることがより好ましく、120〜700μmであることがさらに好ましい。
下地層の膜厚は、得られる放射線画像の輝度の高さ、鮮鋭性の維持の点から、0.1μm〜50μmであることが好ましく、3μm〜50μmであることがより好ましく、5μm〜40μmであることがさらに好ましい。
支持体およびシンチレータ層以外の、シンチレータパネルを構成する層
本発明に係るシンチレータパネルは、支持体、シンチレータ層の他、従来公知のシンチレータパネルと同様、例えばその反射率を調整する目的で、反射層、遮光層、顔料層などを更に含むことができ、またその他にも、反射層用保護層、耐湿保護膜などを含むことができる。
なお、前述の通り、支持体が反射層を兼ねていてもよく、その場合、シンチレータパネルは、反射層として機能する支持体のみを反射層として含んでいてもよいし、反射層として機能する支持体以外に別途の反射層を含んでいてもよい。
(反射層)
以下の反射層の説明は、反射層として機能する支持体および支持体とは別に設けられる反射層において共通である。
本発明に係るシンチレータパネルが反射層を含む場合、反射層は、例えば、支持体とシンチレータ層との間や支持体の非シンチレータ層側となる面上に設けられる。
そのようなシンチレータパネルとしては、例えば、「支持体/反射層/シンチレータ層」という層構成を有するシンチレータパネルが挙げられ、この場合、シンチレータパネルのシンチレータ層面が光電変換素子パネル面に貼り付けられる。
反射層としては、バインダー樹脂と顔料とを含む層が挙げられる。
反射層を形成するバインダー樹脂は、本発明の目的を損なわない限り特に制限されず、適宜入手した市販のものであってもよいし、適宜製造したものであってもよい。具体的には、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル・アクリロニトリル共重合体、ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、ポリビニルブチラール、ニトロセルロース等のセルロース誘導体またはスチレン・ブタジエン共重合体などからなる樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、アクリル系樹脂ならびに尿素ホルムアミド樹脂等が挙げられる。これらの中では、蒸着により形成されてなる蛍光体の柱状結晶および支持体に対する膜付性に優れる点で、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等の疎水性樹脂が好ましい。また、バインダー樹脂は、単独の樹脂からなっていてもよいし、2種以上の樹脂の混合物からなってもよい。特に、バインダー樹脂が、ガラス転移温度(Tg)を有する高分子化合物からなる場合は、ガラス転移温度(Tg)が5℃以上異なる2種以上の樹脂の混合物であると、バインダー樹脂などの反射層用の原材料が配合された反射層形成用塗布液から得られる塗膜の物性を容易に制御できる観点から好ましい。この場合、2種以上の樹脂は、互いにガラス転移温度が異なる限りにおいて、全てまたは一部が、同種類であっても、異種であってもよい。
反射層を形成するバインダー樹脂中に配合する顔料としては、例えば、ファーストエロー、ジスアゾエロー、ピラゾロンオレンジ、レーキレッド4R、ナフトールレッドなどの不溶性アゾ顔料;クロモフタルエロー、クロモフタルレッドなどの縮合アゾ顔料;リソールレッド、レーキレッドC、ウオッチングレッド、ブリリアントカーミン6B、ボルドー10Bなどのアゾレーキ顔料;ナフトールグリーンBなどのニトロソ顔料;ナフトールエローSなどのニトロ顔料;フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン顔料;アントラピリミジンエロー、ペリノンオレンジ、ペリレンレッド、チオインジゴレッド、インダントロンブルーなどのスレン顔料;キナクリドンレッド、キナクリドンバイオレットなどのキナクリドン顔料;ジオキサジンバイオレットなどのジオキサジン顔料;イソインドリノンエローなどのイソインドリノン顔料;ピーコックブルーレーキ、アルカリブルーレーキなどの酸性染料レーキ;ローダミンレーキ、メチルバイオレットレーキ、マラカイトグリーンレーキなどの塩基性染料レーキ;カーボンブラック等が挙げられる。
白色顔料としては、アルミナ、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、シリカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウム等が挙げられる。
顔料は、反射層を形成するバインダー樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましい。顔料の量が上記範囲にあると、充分に着色した反射層が得られると共に、反射層の着色度がそれ以上変化しないにもかかわらず、反射層に過剰に顔料を添加してしまい、反射層を形成するバインダー樹脂の伸びや強度等の機械的物性が劣化することを防止できる。例えば、支持体上に顔料を含む反射層形成用塗布液を塗布した場合、充分に着色し、バインダー樹脂の伸びあるいは強度等の機械的物性の劣化が少ない塗膜が得られる。
また、反射層の別の例としては、各種金属膜やアモルファスカーボン板などのような光反射性又は遮光性である原材料からなる層が挙げられる。
それらの中でも、反射率の高い金属からなる金属膜が好ましい。そのような金属膜を構成する金属の特性としては、電気伝導率が6.0S/m(ジーメンス毎メートル)以上であることが好ましく、30S/m以上であることがより好ましい。金属膜を構成する金属は、1種単独であってもよいし、2種以上であってもよい。反射率の高い金属膜としては、Al、Ag、Cr、Cu、Ni、Mg、Pt、Auからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む原材料からなる金属膜が挙げられる。これら金属膜の中では、特に、Al(40S/m)、Ag(67S/m)、Au(46S/m)からなる金属膜が、反射率の点で好ましい。
反射層は、1層からなっていてもよいし、二層以上からなっていてもよい。
反射層の膜厚は、反射層の付着方法にもよるが、真空蒸着の場合は50nm〜400nm、スパッタ蒸着の場合は20nm〜200nmが好ましい。
(遮光層)
遮光層は、通常、支持体とシンチレータ層との間や、支持体のシンチレータ層とは反対側の主面上に設けられる。
遮光層は、遮光性を有する材料を含む。
遮光性を有する材料としては、アルミニウム、銀、白金、パラジウム、金、銅、鉄、ニッケル、クロムおよびコバルト等から選択される1種または2種以上の原子を含む金属材料やステンレスを含む金属薄膜であることが、支持体の反射率を適切に調整できる観点より好ましい。中でも、アルミニウムもしくは銀を主成分とする金属材料が、遮光層に優れた遮光性、耐食性を付与できる観点から特に好ましい。また、遮光層は、1層の上記金属薄膜からなっていてもよいし、2層以上の上記金属薄膜からなっていてもよい。
遮光層を支持体上に設ける場合は、遮光層と支持体との密着性を向上させる観点より、支持体と遮光層との間に中間層を設けることが好ましい。中間層を構成する原材料としては、一般的な易接着性のポリマー、例えばエポキシ樹脂などの他、遮光層の金属とは異なる金属、すなわち、異種金属が挙げられる。異種金属としては、例えば、ニッケル、コバルト、クロム、パラジウム、チタン、ジルコニウム、モリブデンおよびタングステンが挙げられる。中間層は、これら異種金属を単独で含んでいても2種以上を含んでいてもよく、中でもニッケルまたはクロムを単独、もしくは双方を含んでいることが、遮光層の遮光性の観点より好ましい。遮光層の厚さは、発光光取り出し効率の観点から、好ましくは0.005〜0.3μm、より好ましくは0.01〜0.2μmである。
このような金属原材料を含む遮光層は、帯電防止層としても機能する為、本発明に係るシンチレータパネルの帯電を防止する目的でも好適に使用することができる。このような金属原材料を含む遮光層は、帯電防止層として、帯電防止剤となる金属原材料を添加した反射層に替えてあるいは共に採用することもできる。この場合、支持体上に金属原材料を含む遮光層を設けた積層体をサンプルとして、金属原材料を含む遮光層の、支持体とは反対側の表面で測定した表面抵抗値は、本発明に係るシンチレータパネルの帯電防止の観点から、1.0×1012Ω/□以下が好ましく、1.0×1011Ω/□以下がさらに好ましく、1.0×1010Ω/□以下が最も好ましい。
(顔料層)
顔料層は、通常、支持体とシンチレータ層との間や、支持体のシンチレータ層とは反対側の主面上に設けられる。
顔料層は、顔料で着色されており、かつ、光吸収性であれば特に制限されず、例えば、顔料およびバインダー樹脂を含む層である。顔料層の顔料としては、従来公知の顔料も使用可能である。顔料は、より光散乱しやすい赤色の長波光成分を吸収する観点から、青色の顔料が好ましい。そのような青色の顔料としては、無機青色顔料や有機青色顔料が挙げられる。無機青色顔料としては、ウルトラマリン青、フエローシアン化鉄であるプロシア青等を成分とする顔料が好ましい。また、有機青色顔料としては、アゾ、フタロシアニン等を成分とする顔料が好ましい。それら有機青色顔料の中でも、顔料層の放射線耐久性、紫外線耐久性などの観点から、フタロシアニンを成分とする顔料が好ましい。顔料層のバインダー樹脂としては、例えば、反射層を形成するバインダー樹脂として例示した樹脂と同様の樹脂等が挙げられ、それらの中では、例えば蒸着により形成される蛍光体の柱状結晶および支持体に対する膜付性に優れる点で、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等の疎水性樹脂が好ましく、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂がより好ましい。顔料層のバインダー樹脂は、反射層を形成するバインダー樹脂と同様に、単独の樹脂からなっていてもよいし、2種以上の樹脂の混合物からなってもよい(バインダー樹脂のガラス転移温度に関しても反射層を形成するバインダー樹脂と同じ。以下、同様)。顔料層の顔料の量は、バインダー樹脂100重量部に対して0.01〜10重量部であることが、顔料層の光吸収性の観点から好ましい。
顔料層の厚さは、断裁性の観点から、1〜500μmが好ましい。
(反射層用保護層)
本発明に係るシンチレータパネルが反射層を含む場合には、シンチレータ層中の蛍光体による反射層の腐食等を防止するために、反射層とシンチレータ層との間に、反射層用保護層が設けられていてもよい。
反射層用保護層は、通常、樹脂を含む層であり、反射層用保護層に含まれる樹脂としては、ガラス転位温度が30〜100℃のポリマーが、反射層用保護層の、反射層およびシンチレータ層中の柱状結晶に対する膜付の点で好ましい。
反射層用保護層に含まれる樹脂の具体例としては、反射層を形成するバインダー樹脂として例示した樹脂と同様の樹脂等が挙げられるが、特にポリエステル樹脂が好ましい。反射層用保護層に含まれる樹脂は、反射層を形成するバインダー樹脂と同様に、単独の樹脂からなっていてもよいし、2種以上の樹脂の混合物からなってもよい。
反射層用保護層の膜厚は、反射層用保護層の、反射層およびシンチレータ層中の柱状結晶に対する膜付きの観点からは0.1μm以上が好ましく、反射層用保護層表面の平滑性を確保する観点からは3.0μm以下が好ましく、0.2〜2.5μmがより好ましい。
(耐湿保護膜)
本発明に係るシンチレータパネルは、外周全体が耐湿保護膜で覆われていることが好ましい。耐湿保護膜は、シンチレータパネル全体を防湿し、シンチレータ層の劣化を抑制する役割を有する。そのような劣化としては、例えば、シンチレータ層の蛍光体が潮解性である場合は、蛍光体の潮解によるシンチレータ層の劣化などがある。
耐湿保護膜は防湿性が付与された膜であり、シンチレータ層の劣化防止の点から、耐湿保護膜の透湿度は、50g/m2・day以下であることが好ましく、10g/m2・day以下であることがさらに好ましく、1g/m2・day以下であることが特に好ましい。
ここで、耐湿保護膜の透湿度は、以下の通り、JIS Z 0208により規定された方法に準拠して測定できる。
耐湿保護膜を規定の容器に設け、容器内の温度を40℃に保ちながら、前記耐湿保護膜を境界面として、一方の側の空間を90%RH(相対湿度)、他方の側の空間を、吸湿剤を用いて乾燥状態に保つ。この状態で24時間にこの耐湿保護膜を通過する水蒸気の質量(g)(保護フィルムを1m2に換算する)を耐湿保護膜の透湿度と定義する。
耐湿保護膜としては、透湿度の低い保護フィルムや、ポリパラキシリレンのような耐湿膜などが挙げられる。
保護フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いることができる。PETフィルムの他には、PETフィルム以外のポリエステルフィルム、ポリメタクリレートフィルム、ニトロセルロースフィルム、セルロースアセテートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等が挙げられる。
耐湿保護膜の透湿度を上記の範囲に調整し、耐湿保護フィルムの防湿性を向上させる観点からは、耐湿保護膜は、上記保護フィルムや耐湿膜に、金属酸化物などが蒸着された蒸着フィルムが複数枚積層された積層フィルムまたは積層膜であることが好ましい。
そのような積層フィルムまたは積層膜としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンテレフタレートフィルム上にアルミナ薄膜を蒸着した蒸着フィルムが好ましい。
耐湿保護膜は、熱融着性の樹脂を含む熱融着層からなっていてもよい。
熱融着層に含まれる熱融着性の樹脂としては、一般に使用されるインパルスシーラーで融着可能な樹脂であれば特に制限されないが、例えば、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)やポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等が挙げられる。
耐湿保護膜の厚さは、10〜100μmであることが好ましい。
[放射線検出器]
本発明に係る放射線検出器は、図5に示すように、シンチレータ層12を有する上述のシンチレータパネル10に、光電変換素子パネル20を組み合わせてなる放射線検出器30であってもよいし、図6に示すように、後述するシンチレータ層12'と光電変換素子パネル20とが一体化されてなる放射線検出器31であってもよい。
本明細書においては、前者の放射線検出器30を「第1の放射線検出器」、後者の放射線検出器31を「第2の放射線検出器」ともいう。
(第1の放射線検出器)
本発明に係る第1の放射線検出器は、上述したシンチレータパネルと、光電変換素子パネルとを含む。
本発明に係る第1の放射線検出器は、例えば、シンチレータ層を蒸着などにより支持体上に直接形成してシンチレータパネルを作製し、得られたシンチレータパネルを別途作製した光電変換素子パネルとカップリングして得られるものであり、いわゆる「デタッチ型のFPD」である。
第1の放射線検出器では、シンチレータパネルのシンチレータ層面と光電変換素子パネルの平面受光素子面とが、直接貼り合わせられていることが、シンチレータ層で生じた発光光を効率よく光電変換素子パネルに入射できるなどの点から好ましい。
シンチレータパネルの外周全体に耐湿保護膜が設けている場合は、同観点より、シンチレータ層上に設けられた耐湿保護膜面と、光電変換素子パネルの平面受光素子面とが、直接貼り合わせられていることが好ましい。
シンチレータパネルについては既に説明した通りである。
光電変換素子パネル
本発明に係る放射線検出器に含まれる光電変換素子パネルは、シンチレータ層で発生した発光光を吸収して、電荷の形に変換することで電気信号に変換して、発光光に含まれる情報を電気信号として放射線検出器の外部に出力する機能を有している。光電変換素子パネルは、そのような機能を果たせるものであれば特に制限されず、従来公知のものとすることができる。
光電変換素子パネルは、光電変換素子がパネルに組み込まれたものである。光電変換素子パネルの構成は特に制限されないが、通常、光電変換素子パネル用基板と、画像信号出力層と、光電変換素子とがこの順で積層されている。
光電変換素子は、シンチレータ層で発生した光を吸収して、電荷の形に変換する機能を有する限り、どのような具体的な構造を有していてもよく、例えば透明電極と、入射した光により励起されて電荷を発生する電荷発生層と、対電極とからなるものとすることができる。これら透明電極、電荷発生層および対電極は、いずれも、従来公知のものとすることができる。また、光電変換素子は、適当なフォトセンサーから構成されていてもよく、例えば、複数のフォトダイオードを2次元的に配置してなるものであってもよく、あるいは、CCD(Charge Coupled Devices)、CMOS(Complementary metal-oxide-semiconductor)センサーなどの2次元的なフォトセンサーからなるものであってもよい。
また、画像信号出力層は、光電変換素子で得られた電荷を蓄積するとともに、蓄積された電荷に基づく信号の出力を行う機能を有する。画像信号出力層は、そのような機能を有する限り、どのような構造を有していてもよく、例えば、光電変換素子で生成された電荷を画素毎に蓄積する電荷蓄積素子であるコンデンサと、蓄積された電荷を信号として出力する画像信号出力素子であるトランジスタとを用いて構成することができる。ここで、好ましいトランジスタの例として、TFT(薄膜トランジスタ)が挙げられる。
また、基板は、光電変換素子パネルの支持体として機能するものであり、上述した本発明に係るシンチレータパネルで用いられる支持体と同様のものとすることができる。
このように、本発明においては、光電変換素子パネルとして種々の構成のものを用いることができる。例えば、後述する実施例で用いられているように、ガラス基板上に複数のフォトダイオードと複数のTFT素子を形成してなる光電変換素子パネルを用いることができる。
さらに、光電変換素子パネルは、電気信号に変換されたX線等の放射線の強度情報および位置情報に基づく画像信号を記憶するためのメモリ部、光電変換素子パネル20を駆動させるために必要な電力を供給する電源部、外部に画像情報を取りだすための通信用出力部など、公知の放射線検出器を構成する光電変換素子パネルが有しうる各種部品をさらに備えることができる。
第1の放射線検出器の例を図5に示す。図5に示すように、第1の放射線検出器30では、上記シンチレータパネル10と光電変換素子パネル20とを組み合わせることにより、外部から進入してきたX線を、シンチレータパネル10を構成するシンチレータ層12において光に変換することができ、この光を、光電変換素子パネル20を構成する光電変換素子にて電気信号に変換することができる。ここで、図5において、太矢印はX線等の放射線の例示的な入射方向を示す。
このような変換が効率よく行われるよう、第1の放射線検出器30は、シンチレータパネル10を構成するシンチレータ層12と、光電変換素子パネル20を構成する光電変換素子(図示なし)とが互いに向かい合う態様で、上記シンチレータパネル10と光電変換素子パネル20とが組み合わされたものであることが好ましい。ここで、シンチレータパネル10として、支持体11とシンチレータ層12との間に反射層13を有するものを採用すると、シンチレータ層12からの発光光のうち光電変換素子パネル20とは反対側に向かう光についても、反射層13での反射を通じて光電変換素子パネル20に導くことができるので、より好ましい。
(第2の放射線検出器)
本発明に係る第2の放射線検出器は、光電変換素子パネルと、前記光電変換素子パネル上に形成されたシンチレータ層とを含む。前記シンチレータ層は、柱状結晶である蛍光体を含み、前記蛍光体が、側面に凸部を有する複数の柱状結晶であり、前記複数の柱状結晶は、互いに、前記凸部を有する部位において実質的に接触していない。
本発明に係る第2の放射線検出器は、シンチレータ層が光電変換素子パネル上に直接設けられており、いわゆる「直接蒸着タイプFPD」であり、本発明に係る第1の放射線検出器でいうところの、シンチレータパネルに含まれる支持体は必要としない。「直接蒸着タイプFPD」は、光電変換素子パネルとシンチレータ層との脱着は不可である。なお、光電変換素子パネルに後述の中間樹脂層が設けられている場合は、シンチレータ層は光電変換素子パネルに設けられた中間樹脂層上に直接設けられていればよい。
本発明に係る第2の放射線検出器の基本構成の一例を図4(b)に示す。
第2の放射線検出器は、本発明に係る第1の放射線検出器と、シンチレータ層と光電変換素子パネルとを含み、必要に応じて反射層、遮光層、顔料層を含む点で共通し、また、シンチレータ層、光電変換素子パネル、反射層、遮光層、顔料層自体も共通であるが、シンチレータ層が形成される位置が支持体上ではなく(図4(a))、光電変換素子パネル上である(図4(b))点で相違する。また、第2の放射線検出器は、反射層、遮光層、顔料層が設けられる位置も、本発明に係る第1の放射線検出器とは相違し、それらの位置は、支持体とシンチレータ層との間や、支持体の非シンチレータ層側となる面上ではなく、シンチレータ層と光電変換素子パネルとの間、もしくはシンチレータ層の柱状結晶成長終了面(非光電変換素子パネル側となる面)上である。
中間樹脂層
本発明に係る第2の放射線検出器においては、シンチレータ層に由来する成分が光電変換素子パネルを汚染することを防ぐ目的で、光電変換素子パネルとシンチレータ層との間に、中間樹脂層を含んでいてもよい。中間樹脂層は、光電変換素子パネルの保護層として機能する。
中間樹脂層に含まれる樹脂は、ガラス転移温度が30〜100℃のポリマーであることが、シンチレータ層中の蛍光体の柱状結晶と光電変換素子パネルとの膜付の点で好ましい。
具体的には、例えば、反射層を形成するバインダー樹脂として例示した樹脂と同様の樹脂等が挙げられ、これらの中では、特にポリエステル樹脂であることが好ましい。また、中間樹脂層に含まれる樹脂は、反射層を形成するバインダー樹脂と同様に、単独の樹脂からなっていてもよいし、2種以上の樹脂の混合物からなってもよい。
また、中間樹脂層は、例えば、蒸着により製膜されたポリパラキシリレン膜などであってもよい。
中間樹脂層の膜厚としては、シンチレータ層中の蛍光体の柱状結晶と光電変換素子パネルとの膜付の観点からは、0.1μm以上が好ましく、中間樹脂層の表面の平滑性を確保する観点からは、3.0μm以下が好ましく、0.2〜2.5μmの範囲がより好ましい。
耐湿保護膜
本発明に係る第1および第2の放射線検出器には、外周全体が覆われるように耐湿保護膜が設けられていることが好ましい。
また、コストなどの観点からは、本発明に係る第1および第2の放射線検出器では、シンチレータ層の、シンチレータ層以外の層と接触していない面全体だけが覆われるように耐湿保護膜が設けられていることが好ましい。
耐湿保護膜は、パネル全体あるいはシンチレータ層の、シンチレータ層以外の層と接触していない面全体を防湿し、シンチレータ層の劣化を抑制する機能を有する。
耐湿保護膜を構成する材質、膜厚などは、それぞれ、シンチレータパネルにおける耐湿保護膜のものと同様である。
[シンチレータパネルの製造方法]
本発明に係るシンチレータパネルは、本発明の目的を損なわない限り、その製造方法に特に制限はなく、例えば、従来公知のシンチレータパネルの製造方法をベースに、シンチレータ層における複数の柱状結晶が、互いに、前記凸部を有する部位において実質的に接触せずに形成されるように蒸着条件などの条件を設定すればよい。
具体的には、例えば、支持体上に、必要に応じて反射層や反射層用保護層を形成し、次いでシンチレータ層を形成し、さらに、必要に応じて、得られた積層体の外周全体などが覆われるように耐湿保護膜を設けることにより、シンチレータパネルを製造できる。
シンチレータ層の形成
シンチレータ層の形成方法は、シンチレータ層を構成する蛍光体を、凸部を有する複数の柱状結晶の形態とすることができ、かつ、それら複数の柱状結晶が、互いに、前記凸部を有する部位において実質的に接触しないように柱状結晶を形成可能である方法である限り、その具体的な方法は特に限定されないが、シンチレータ層は気相法、特に蒸着法によって成膜されることで形成されることが好ましい。
蒸着法に用いる装置は、特に限定されないが、例えば、図7や図8に示されるような蒸着装置40であることが好ましい。
図7や図8に示す通り、蒸着装置40は箱状の真空容器41を有しており、真空容器41の内部には蒸着源47が配されている。この蒸着源47は、加熱装置を備えた容器に収められ、加熱装置を作動させることにより、蒸着源47を加熱・蒸発させることができるようになっている。蒸着源47は、例えば、蛍光体母材化合物、あるいは蛍光体母材化合物と賦活剤とを含む混合物である。ここで、蒸着源47は、図8に示すように複数存在していてもよく、シンチレータ層を構成する原材料の種類や数などに合わせて蒸着源の個数を変えればよい。シャッタ48についても同様である。図8に示す蒸着装置40は、蒸着源47として、蒸着源47a,47b,47cの3つが備えられている蒸着装置の一例である。
賦活剤を含む蒸着源47は、賦活剤を含まない蒸着源47が充填された容器とは別の容器に充填されていることが好ましい。このような態様では、賦活剤を含む蒸着源47の加熱温度を個別に調整したり、賦活剤を含む蒸着源47に対して設けられたシャッタ48の開放度を調整したりすることにより、柱状結晶の任意の位置、特にシンチレータ層の厚さ方向の位置毎に、賦活剤の相対含有量をより精度よくコントロールできる。
加熱装置を備えた容器としては、例えば、抵抗加熱ルツボ等を用いることができる。ここで、容器を構成する材質は、アルミナ等のセラミックであってもよく、タンタル、モリブデン等の高融点金属であってもよい。
真空容器41内の蒸着源47の直上には、蒸着用基板43を保持するホルダ44が配されている。ここで、蒸着用基板43として、支持体に反射層や保護層などの他の層が積層されていない支持体そのものを用いてもよく、あるいは、支持体上に反射層、遮光層、顔料層や反射層用保護層などが形成されてなる積層体を用いてもよい。
ホルダ44にはヒータ(図示なし)が配されており、当該ヒータを作動させることでホルダ44に装着した蒸着用基板43を加熱することができるようになっている。蒸着用基板43を加熱した場合には、蒸着用基板43の温度を適宜の範囲に制御することにより、蛍光体母材化合物などを蒸着してシンチレータ層を形成する前の蒸着用基板43の表面の吸着物を離脱・除去したり、該表面に形成されるシンチレータ層との間に不純物層が形成されるのを防止したり、該表面に形成されるシンチレータ層との密着性を強化したり、該表面に形成されるシンチレータ層の膜質の調整を行うことができる。
ホルダ44には当該ホルダ44を回転させる回転機構45が配されている。回転機構45は、ホルダ44に接続された回転軸46とその駆動源となるモータ(図示なし)から構成されたもので、当該モータを駆動させると、回転軸46が回転してホルダ44を蒸着源47に対向させた状態で回転させることができる。
蒸着装置40では、上記構成の他に、真空ポンプ42が真空容器41に配されている。真空ポンプ42は、真空容器41の内部の排気と真空容器41の内部へのガスの導入とを行うもので、当該真空ポンプ42を作動させることにより、真空容器41の内部を一定圧力のガス雰囲気下に維持することができる。
シンチレータ層は、加熱装置を備えた容器に蛍光体母材化合物などの蒸発源を充填し、装置内を排気すると同時にアルゴン等の不活性なガスを導入口から導入して装置内を10-3〜1Pa程度(絶対圧)の減圧環境とし、次いで、蛍光体母材化合物などの蒸発源を加熱蒸発させて、反射層、反射層用保護層などが必要に応じて積層された支持体である蒸着用基板43の表面に蛍光体の蒸着結晶を堆積することで形成できる。ここで、蛍光体母材化合物と賦活剤との混合物からなる結晶を形成する際には、図7に示すような蒸着装置40を用い、第1の加熱装置を備えた容器に蛍光体母材化合物を、第2の加熱装置を備えた容器に賦活剤をそれぞれ充填し、それぞれ蒸発源47a及び47bとして、蒸着を行うことができる。
また、下地層を含む2層以上の層を含むシンチレータ層は、下地層形成用の蛍光体母材化合物、必要により用いられる下地層形成用の賦活剤、下地層以外の層形成用の蛍光体母材化合物、下地層以外の層形成用の賦活剤を、個々にあるいは適宜混合して、それぞれ別々の加熱装置を備えた容器に充填し、それぞれの蒸着源の充填量を加減し、更に/あるいは、シャッタ48を蒸着源毎に個別に開閉しながら蒸着を行うことで、形成できる。
蒸着用基板43に形成されるシンチレータ層の蛍光体の柱状結晶の凸部や柱状結晶の凸部を有する部位の表面粗さ(x)、比(a/b)は、蒸着用基板43の温度や蛍光体母材化合物の蒸着速度を調整することにより制御することができる。例えば、蒸着用基板43の温度を高くするほど柱状結晶の結晶径を大きくすることができる。また、蛍光体母材化合物の蒸着速度を上げることで柱状結晶の結晶径を大きくすることもできる。したがって、柱状結晶が根元から先端に成長する際に、蒸着用基板43の温度や蒸着速度を適宜増減させれば、柱状結晶の成長に伴い柱状結晶の結晶径の大きい部分と小さい部分とを形成することができ、柱状結晶の側面に凸部を形成することができる。具体的には、蒸着用基板43の温度を室温〜320℃の範囲で周期的に変化させ、かつ、蛍光体母材化合物の蒸着速度を5〜200nm/sの範囲で周期的に変化させることで、蛍光体の柱状結晶の凸部や該柱状結晶の凸部を有する部位の表面粗さ(x)を制御することが好ましい。
反射層の形成
反射層は、所望の層の上、例えば支持体上に、反射層用原材料を真空蒸着、スパッタ蒸着、又はメッキすることにより、直接付着することで形成できるが、生産性の観点からスパッタ蒸着が好ましい。
遮光層の形成
遮光層で支持体の一方の主面の全面を被覆する方法としては、特に制限されず、例えば、蒸着、スパッタにより遮光層を支持体の一方の主面全体に形成する方法、あるいは、金属箔である遮光層を支持体の一方の主面全体に貼り合わせる方法が挙げられるが、遮光層の支持体への密着性の観点からスパッタにより遮光層を支持体の一方の主面全体に形成する方法が最も好ましい。
顔料層の形成
顔料層で支持体の一方の主面全体を被覆する方法としては、上記顔料や溶媒などを含む顔料層形成用塗布液を支持体の一方の主面上全体に塗布、乾燥する方法により形成することができる。
反射層用保護層の形成
反射層用保護層は、反射層用保護層の原材料となる樹脂などを溶剤に溶解して得られる塗料を塗布、乾燥して形成することが、反射層用保護層の、反射層およびシンチレータ層の柱状結晶に対する接着性の向上や、シンチレータパネルの生産性向上の観点から好ましい。溶剤に溶解する樹脂としては、反射層の項目で述べた、ガラス転位温度が30〜100℃のポリマーであることが、反射層用保護層の、反射層およびシンチレータ層の柱状結晶に対する膜付の点で好ましい。
反射層用保護層を形成するための塗布液に用いる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノールなどの低級アルコール;メチレンクロライド、エチレンクロライドなどの塩素原子含有炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、キシレンなどの芳香族化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル;ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル;及びそれらの混合物を挙げることができる。
耐湿保護膜の形成
耐湿保護膜は、従来公知の方法に従って、シンチレータパネルの所定の領域に形成すればよい。
耐湿保護膜が、熱融着層である場合は、例えば、未封止のシンチレータパネルの上下に配置された熱融着層用の樹脂フィルムでシンチレータパネルを挟み、減圧雰囲気中で上下の樹脂フィルムが接触する端部を融着して封止することで、シンチレータパネルの外周全体に耐湿保護膜を形成できる。
また、耐湿保護膜として、ポリパラキシリレンなどの耐湿膜を用いる場合には、シンチレータ層が形成された支持体を含むシンチレータパネルを、CVD装置の蒸着室に設置して、ジパラキシリレンが昇華した蒸気中に露出させておくことにより、外周全体がポリパラキシリレン膜で被覆されたシンチレータパネルを得ることができる。
第1の放射線検出器の製造方法
本発明に係る第1の放射線検出器の製造方法は、本発明の目的を損なわない限り特に制限はなく、基本的には従来公知の放射線検出器の製造方法と同様の方法とすることができる。
例えば、上記シンチレータパネルに、光電変換素子パネルをカップリングすることで、本発明に係る第1の放射線検出器を得ることができる。
シンチレータパネルの接合面は、支持体に対してシンチレータ層側となる最表面層であり、シンチレータパネルの構成に依り、シンチレータ層面であったり、シンチレータ層上に設けられた耐湿保護膜の面であったりする。
光電変換素子パネルとシンチレータ層は、中間樹脂層を介してカップリングされていてもよい。
以下、シンチレータパネルの接合面がシンチレータ層であり、シンチレータパネルのシンチレータ層面と光電変換素子パネル面とを接合する場合を例に挙げて説明する。
上記シンチレータパネルと光電変換素子パネルとをカップリングするにあたっては、それらの接合面での光拡散を抑制するような貼り合せ方法を選択することが好ましい。上記接合面での光散乱を抑制することで、得られる放射線画像の鮮鋭性が劣化することを抑制できる。そのような貼り合わせ方法としては、例えば、シンチレータパネルのシンチレータ層面と光電変換素子パネル面とを何らかの加圧手段によって密着させる方法や、シンチレータパネルのシンチレータの屈折率の値と光電変換素子パネルの受光素子の屈折率の値との中間の値の屈折率を有する接合剤にて接合する方法などが挙げられる。
シンチレータパネルのシンチレータ層面と光電変換素子パネル面とを接合する接合剤としては、例えば、接着剤、光学グリース、および、シンチレータパネルと光電変換素子パネルとに対して粘着性を有する光学オイル等が挙げられる。
接着剤としては、例えば、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコン系接着剤などの常温硬化型(RTV型)の接着剤や、弾力性を有する接着樹脂を含むゴム系接着剤が挙げられる。
アクリル系接着剤としては、主鎖や側鎖にシリコン成分がペンダントされたアクリル系重合体を含む接着剤を使用してもよい。
シリコン接着剤としては、過酸化物架橋タイプや付加縮合タイプのシリコン接着剤が挙げられ、これらを単体でまたは混合して使用してもよい。
ゴム系接着剤としては、スチレンイソプレンスチレン等のブロック共重合体や、ポリブタジエン、ポリブチレン等の単独重合体を含む合成ゴム系接着剤、及び天然ゴム系接着剤等が挙げられる。市販されているゴム系接着剤の例としては、一液型RTVゴムKE420(信越化学工業(株)製)などが好適に挙げられる。
上記接着剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。例えば、アクリル系接着剤やゴム系接着剤を混合して使用することもできる。
光学オイルは、透明性が高く粘着性があれば、市販品を含めて公知のいかなるものも使用できる。例えば、KF96H(100万CS:信越化学工業(株)製)、CArgille Immersion Oil Type 37(CArgille(株)製・屈折液)などが好適に使用される。
シンチレータパネルと光電変換素子パネルとを接着剤で張り合わせる場合は、通常、シンチレータパネル、接着剤、光電変換素子パネルをこの順で積層し、得られた積層体に、積層体の主面に対して垂直な方向から、10〜500g/cm2の圧力を、接着剤が固化するまで加える。加圧により接着剤層から気泡が除去される。接着剤としてホットメルト樹脂を使用した場合は、上記積層体に、積層体の主面に対して垂直な方向から、10〜500g/cm2の圧力を加えながら、該積層体をホットメルト樹脂の溶融開始温度より10℃以上高い温度まで加熱して1〜2時間静置後、徐々に冷却する。急冷するとホットメルト樹脂の収縮応力により光電変換素子パネルに含まれる受光素子にダメージを与える傾向がある。好ましくは20℃/hour以下の速度で50℃以下まで冷却する。
また、シンチレータパネルと光電変換素子パネルとの接合面での光拡散に起因する放射線画像の鮮鋭性の劣化に関する問題は、シンチレータパネルのシンチレータ層面および光電変換素子パネルの受光素子面に散乱防止加工を施すことで解決することもできる。散乱防止加工は、例えば、シンチレータパネルのシンチレータ層面上に光拡散防止層を設けたり、シンチレータパネルのシンチレータ層面上か光電変換素子パネルの受光素子面上の少なくとも一方に反射防止層を設けたり、互いに対向するシンチレータ層面および光電変換素子パネルの受光素子面のいずれかまたは双方の表面粗さ(Ra)を0.5μm以上、5.0μm以下にしたりすることで実施できる。
また、これら散乱防止加工と、上述した既知の接合方法とを組み合わせると、上記接合面での光散乱をより効果的に防止でき、鮮鋭性やその均一性により優れた放射線画像を得ることができる。
ここで、光拡散防止層は、波長550nmの光に対して、60%以上99%以下の光透過率を有し、光拡散防止層中を長い光路で伝播する発光光の強度を減衰させる機能を有する。シンチレータパネルのシンチレータ層内の発光した位置から光電変換素子パネルの受光素子に直接向かう発光光は、光拡散防止層での発光光の光路が短いため、光拡散防止層において強度は殆ど低下しない。光拡散防止層内を受光素子面と平行に近い角度で進行する散乱光などは、光拡散防止層での光路が長いため、光拡散防止層内で効果的に除去される。光拡散防止層は、設けられる位置に応じて、上述の耐湿保護膜や反射層用保護層としても機能する。
上記光拡散防止層としては、例えば、樹脂層が挙げられ、該樹脂層に含まれる樹脂としては、例えば、反射層を形成するバインダー樹脂として例示した樹脂と同様の樹脂等が挙げられる。光拡散防止層に含まれる樹脂は、反射層を形成するバインダー樹脂と同様に、単独の樹脂からなっていてもよいし、2種以上の樹脂の混合物からなってもよい。また、光拡散防止層は、CVD法(気相化学成長法)により形成されるポリパラキシリレン膜からなる層であってもよく、光拡散防止層がこのようなポリパラキシリレン膜からなる層であると、シンチレータパネルのシンチレータ層面あるいは受光素子面への形成が容易であり、耐湿保護膜や反射層用保護層としての機能も有するなどの観点から、特に好ましい。この場合、ポリパラキシリレン膜が、光散乱防止層の他に、耐湿保護膜や反射層用保護層としても機能するので、必ずしも別途耐湿保護膜や反射層用保護層を設けなくてもよい。また、ポリパラキシリレン膜は、反射防止層としても機能する。
光拡散防止層の光透過率を、光拡散防止層に色材を含有させることによって調整する場合、色材としては、各波長の光の中でもより光散乱しやすい赤色の長波光を吸収するという観点から、赤色の長波光を吸収する青色の着色材が好ましい。青色の着色材としては、顔料層の青色の顔料として例示した顔料と同様の顔料が挙げられる。
反射防止層とは、シンチレータパネルのシンチレータ層で生じた発光光の反射を防止することで、該発光光が、シンチレータパネルのシンチレータ層面−光電変換素子パネルの受光素子面間において反射を繰り返して、シンチレータ層面−受光素子面間を伝播するといった現象を防止し、ひいては、発光位置から離れた位置の受光素子部の画素領域で誤検出されることを防止するものである。反射防止層は、シンチレータ層面上に設けられる場合は、シンチレータ層の屈折率よりも小さい屈折率を有する樹脂層であり、受光素子面上に設けられる場合は、受光素子の屈折率よりも小さい屈折率を有する樹脂層である。反射防止層である樹脂層に含まれる樹脂としては、反射層を形成するバインダー樹脂として例示した樹脂と同様の樹脂等が挙げられる。光拡散防止層に含まれる樹脂は、反射層を形成するバインダー樹脂と同様に、単独の樹脂からなっていてもよいし、2種以上の樹脂の混合物からなってもよい。また、反射防止層は、光拡散防止層がCVD法(気相化学成長法)により形成されるポリパラキシリレン膜からなる層である態様で述べたのと同様の観点より、CVD法(気相化学成長法)により形成されるポリパラキシリレン膜からなる層であることが好ましい。
反射防止層の、波長550nmの光に対する光透過率は、上記光拡散防止層としての機能も付与できるという観点から、60%以上99%以下となるように設計することが好ましい。
互いに対向するシンチレータ層面および光電変換素子パネル面のいずれかまたは双方の表面粗さを0.5μm以上、5.0μm以下にすると、光の入射面における凹凸による光の正反射及び全反射を抑制できるので、シンチレータ層で生じた発光光のシンチレータ層面−受光素子面間における光拡散を効果的に防止できる。ここで、「表面粗さ」は「算術平均粗さ(Ra)」である。
また、シンチレータ層面上や光電変換素子パネル上に設ける光拡散防止層や反射防止層についても、それぞれ、シンチレータパネル面や光電変換素子パネル面と接触させる面(表面)の算術平均粗さを0.5μm以上、5.0μm以下とすることが、上記光拡散防止に関して複合効果が得られる観点から、より好ましい。
第2の放射線検出器の製造方法
本発明に係る第2の放射線検出器の製造方法は、第1の放射線検出器の製造方法と、同様のシンチレータ層、反射層、遮光層、顔料層や光電変換素子パネルを用いる点やそれらの形成方法の点などで共通するが、シンチレータ層を支持体上ではなく光電変換素子パネル上に形成する点で相違する。また、本発明に係る第2の放射線検出器の製造方法は、反射層、遮光層、顔料層を形成する位置も、本発明に係る第1の放射線検出器の製造方法とは相違し、それらの位置は、支持体とシンチレータ層との間や、支持体の非シンチレータ層側となる上ではなく、シンチレータ層の、非光電変換素子パネル側となる面上である。
なお、第2の放射線検出器を構成するシンチレータ層の形成を、図7または図8に示したような蒸着装置を用いて行う場合、蒸着用基板として光電変換素子パネルを用いればよく、光電変換素子パネル面のうち、光電変換素子が設けられた側の面を被蒸着面として蒸着を行えばよい。
この際、加熱によって光電変換素子パネルが損傷されることを防ぐため、シンチレータ層121'を形成しない側をホルダ54に固定した状態で光電変換素子パネル20を冷却しながらシンチレータ層121'を形成する側の温度を150〜320℃に保つ方法を取り入れてもよい。ここで、光電変換素子パネル20を冷却する具体的な手段は特に限定されないが、例えば、ホルダ54内部に施された配管(図示略)に水や冷媒を流すことにより、および/または、ペルチェ素子などを用いることにより、光電変換素子パネル20を冷却することができる。
中間樹脂層は、樹脂を溶剤に溶解して得られる塗布液を塗布、乾燥して形成することが好ましい。
中間樹脂層を作製するための塗布液に用いる溶剤としては、シンチレータパネルの製造方法の項目に記載した、反射層用保護層を形成するために用いられる溶剤と同様のものを用いることができる。
また、中間樹脂層は、CVD装置などを用いて、光電変換素子パネル上に、例えばポリパラキシリレンなどを成膜することにより形成してもよい。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
[実施例1]
(支持体)
支持体として、厚さ125μmのポリイミドフィルム(宇部興産(株)製UPILEX−125S)製支持体を採用した。
(シンチレータ層の形成)
実施例1では、次に示すように、図8に示す蒸着装置40を使用して、蛍光体母材化合物であるCsIを2つのルツボ(第1、第2の抵抗加熱ルツボ)に充填し、且つ、蒸着開始から蒸着終了まで、第1、第2の抵抗加熱ルツボからCsIが蒸発し続けるように制御することで、支持体上に下地層および下地層以外のシンチレータ層を構成する部分を順に形成して、2層からなるシンチレータ層を支持体の一方の面上に形成した。具体的には、以下の通りである。
まず、蛍光体母材化合物としてCsIを第1、第2の抵抗加熱ルツボに充填し、賦活剤としてTlIを第3の抵抗加熱ルツボに充填し、それぞれの内容物を、それぞれ、蒸着源47a,47b,47cとした。また、蒸着用基板43として上記支持体を回転可能なホルダ44に設置し、蒸着用基板43と蒸着源47aとの間隔、蒸着用基板43と蒸着源47bとの間隔、および、蒸着用基板43と蒸着源47cとの間隔をそれぞれ400mmに調整した。
次いで、真空ポンプ42を用いて、蒸着装置40の真空容器41内の空気を一旦排気し、排気終了後に、真空容器41内にArガスを導入して、蒸着装置40の真空容器41内における真空度を0.5Pa(絶対圧)に調整した後、10rpmの速度でホルダ44と共に蒸着用基板43を回転させた。
そして、蒸着用基板43を加熱して、蒸着用基板43の温度が50℃となった時点で、第1の抵抗加熱ルツボおよび第3の抵抗加熱ルツボを加熱して蒸着を開始し、蛍光体母材化合物を蒸着用基板のシンチレータ層形成予定面に蒸着して、シンチレータ層を構成する部分のうち根元部を3μm形成した。
このように根元部を形成した後、蒸着用基板43を、その温度が周期的に昇降するようにしながら150℃に達するように、加熱した。また第2の抵抗加熱ルツボの加熱も開始し、蒸着速度が周期的に増減するように変化し、かつ、平均蒸着速度が200nm/sとなるように、蒸着速度を制御した。これらにより根元部以外のシンチレータ層を構成する部分も形成した。このとき、シンチレータ層全体の賦活剤濃度が0.3mol%となるように、第3の抵抗加熱ルツボの加熱温度を制御して賦活剤の蒸着速度を調整することで、シンチレータ層全体の賦活剤濃度を制御した。
シンチレータ層の膜厚が400μmとなったところで蒸着を終了し、蒸着用基板43のシンチレータ層形成予定面上に所定膜厚のシンチレータ層を有するシンチレータパネルを得た。
上記のようにして得られたシンチレータパネルを、別途用意したPaxScan(Varian(株)製FPD:2520)に予め供えつけられているシンチレータパネルと交換することで、「シンチレータパネルの支持体/シンチレータパネルのシンチレータ層/PaxScanの光電変換素子パネル」という配置が形成されるようにPaxScanにセットして、放射線検出器を得た。以下、このような「放射線検出器」を「FPD」ともいう。
得られたシンチレータパネルおよび放射線検出器について、後述の各種評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例2]
根元部を形成した後、蒸着用基板43を、その温度が周期的に昇降するようにしながら150℃に達するように、加熱し、また第2の抵抗加熱ルツボの加熱も開始して、蒸着速度が周期的に増減するように変化し、かつ、平均蒸着速度が200nm/sとなるように、蒸着速度を制御する操作を、シンチレータ層の膜厚が200μmとなるまで実施し、次いで、蒸着速度と蒸着速度を概ね一定として蒸着を実施し、シンチレータ層の膜厚が400μmとなったところで蒸着を終了した以外は、実施例1と同様の方法によりシンチレータパネルおよび放射線検出器を得た。得られたシンチレータパネルおよび放射線検出器について、各種評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例3]
根元部を形成した後の、蒸着用基板43をその温度が周期的に昇降するようにしながら加熱する操作を、200℃に達するまで行った以外は、、実施例2と同様の方法によりシンチレータパネルおよび放射線検出器を得た。得られたシンチレータパネルおよび放射線検出器について、各種評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例4]
根元部を形成した後の、蒸着用基板43をその温度が周期的に昇降するようにしながら加熱する操作を、250℃に達するまで行った以外は、実施例2と同様の方法によりシンチレータパネルおよび放射線検出器を得た。得られたシンチレータパネルおよび放射線検出器について、各種評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例5]
根元部を形成した後の、蒸着速度が周期的に増減するように変化させる時の平均蒸着速度が250nm/sとなるように、蒸着速度を制御した以外は、実施例2と同様の方法によりシンチレータパネルおよび放射線検出器を得た。得られたシンチレータパネルおよび放射線検出器について、各種評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例6]
支持体の替わりに光電変換素子パネルを用いた以外は、実施例3と同様の方法によりシンチレータパネルおよび放射線検出器を得た。得られたシンチレータパネルおよび放射線検出器について、各種評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例1]
根元部を形成した後から、シンチレータ層の膜厚が200μmとなるまでの操作において、蒸着用基板43の温度が単純増加するように150℃まで蒸着用基板43を加熱した後その温度を一定に保ち、蒸着速度が100nm/sの一定速度に維持されるように制御した以外は、実施例1と同様の方法によりシンチレータパネルおよび放射線検出器を得た。得られたシンチレータパネルおよび放射線検出器について、各種評価を行った。結果を表1に示す。
[シンチレータパネルおよび放射線検出器の評価]
各実施例および比較例で得られたシンチレータパネルおよび放射線検出器につき、以下の項目について、測定、評価を行った。
ここで、シンチレータパネルに含まれるシンチレータ層における柱状結晶の凸部の有無、表面粗さ(x)、比(a/b)や、上記柱状結晶の根元同士が互いに独立しているか融着しているかどうかの評価については、シンチレータパネルを用いて行った。
放射線検出器の耐湿性、得られる放射線(X線)画像の輝度およびMTFの評価については、放射線検出器を用いて行った。
上記柱状結晶の凸部の有無、形状、位置、上記柱状結晶の凸部同士の接触の有無、柱状結晶の根元の独立性、柱状結晶の凸部を有する部位の表面粗さ(x)比(a/b)は、電子顕微鏡で観察することで確認した。
柱状結晶の凸部を有する部位における表面粗さ(x)は、JIS(JIS B 0601−2001)に準じて、電子顕微鏡画像上で、柱状結晶の凸部を有する部分の基準長さおよび凸部の粗さ曲線を求め、これらから算術平均粗さ(Ra)を求め、これを表面粗さ(x)とすることで求めた。
柱状結晶の凸部を有する部位が存在する厚み領域における、柱状結晶の充填率は、膜厚方向に柱状結晶を切削し、膜厚方向に平行な面である切削面における、柱状結晶の面積および空間の面積を電子顕微鏡画像上で定量化する事で測定し、該測定値から柱状結晶および空間を含む全面積に対する柱状結晶の面積の割合を算出することで求めた。
(得られたX線画像の鮮鋭性)
鉛製のMTFチャートを通して管電圧80kVpのX線を放射線検出器の放射線入射面側に照射し、画像データを検出してハードディスクに記録した。その後、ハードディスク上の記録をコンピュータで分析して当該ハードディスクに記録されたX線画像の変調伝達関数MTFを得られたX線画像の鮮鋭性の指標とした。変調伝達関数MTFとは、空間周波数1サイクル/mmにおけるMTF値である。また、MTFはModulation Transfer Functionの略号を示す。
表1中のMTF値は放射線検出器内の9箇所を測定し、その平均値(平均MTF値)を評価した。表1では、比較例1の放射線検出器の平均MTFを1.0とし、評価対象の放射線検出器の平均MTF値が1.2倍以上である場合は、評価対象の放射線検出器から得られたX線画像の鮮鋭性を「◎」と評価し、同様に、平均MTF値が1倍(同等)以上1.2倍未満である場合はX線画像の鮮鋭性を「○」、平均MTF値が0.8倍以上1倍未満である場合はX線画像の鮮鋭性を「△」、0.8倍未満である場合はX画像の鮮鋭性を「×」と評価した。
Figure 2016085165
本発明に係るシンチレータパネル、放射線検出器は、種々の態様の放射線画像撮影システム、特にX線画像撮影システムなどに好適に用いることができる。
11 ・・・支持体
12,12’ ・・・シンチレータ層
120,120’・・・柱状結晶
121,121’ ・・下地層以外の層
122,122’ ・・下地層
13、13’ ・・反射層
20 ・・・光電変換素子パネル
30 ・・・第1の放射線検出器
31 ・・・第2の放射線検出器
40 ・・・蒸着装置
41 ・・・真空容器
42 ・・・真空ポンプ
43 ・・・蒸着用基板
44 ・・・ホルダ
45 ・・・回転機構
46 ・・・回転軸
47,47a,47b,47c・・・蒸着源
48 ・・・シャッタ
50 ・・・シンチレータ層の厚さ方向
60 ・・・柱状結晶の高さ
80 ・・・柱状結晶の根元
90 ・・・柱状結晶の先端
91 ・・・柱状結晶成長開始面
92 ・・・柱状結晶成長終了面
93 ・・・シンチレータ層に対して支持体側となる面
94 ・・・シンチレータ層に対して非支持体側となる面
95 ・・・シンチレータ層に対して光電変換素子パネル側となる面
96 ・・・シンチレータ層に対して非光電変換素子パネル側となる面

Claims (11)

  1. 支持体と、前記支持体上に形成されたシンチレータ層とを含み、
    前記シンチレータ層が蛍光体を含み、
    前記蛍光体が、側面に凸部を有する複数の柱状結晶であり、
    前記複数の柱状結晶は、互いに、前記凸部を有する部位において実質的に接触していないことを特徴とするシンチレータパネル。
  2. 前記柱状結晶の凸部を有する部位が、シンチレータ層の厚さを100%としたときに、シンチレータ層の、柱状結晶成長開始面から厚さが1〜50%となる厚み領域に存在することを特徴とする請求項1に記載のシンチレータパネル。
  3. 前記柱状結晶の凸部を有する部位が、シンチレータ層の厚さを100%としたときに、シンチレータ層の、柱状結晶成長開始面から厚さが1〜50%となる厚み領域のみに存在することを特徴とする請求項1または2に記載のシンチレータパネル。
  4. 前記シンチレータ層が、前記柱状結晶の凸部を有する部位が存在する厚み領域と、前記柱状結晶の凸部を有する部位が存在しない厚み領域からなり、
    前記柱状結晶の凸部を有する部位が存在する厚み領域が、前記柱状結晶の凸部を有する部位が存在しない厚み領域よりも柱状結晶成長開始面側にあり、
    前記柱状結晶の凸部を有する部位が存在する厚み領域の、柱状結晶成長開始面に平行な断面における柱状結晶の数(a)と、前記柱状結晶の凸部を有する部位が存在しない厚み領域の、柱状結晶成長開始面に平行な断面における柱状結晶の数(b)との比(a/b)が、1〜8であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシンチレータパネル。
  5. 前記柱状結晶の凸部を有する部位が存在する厚み領域における、前記柱状結晶の充填率が、30〜95%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のシンチレータパネル。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のシンチレータパネルと光電変換素子パネルとを含むことを特徴とする放射線検出器。
  7. 光電変換素子パネルと、前記光電変換素子パネル上に形成されたシンチレータ層とを含み、
    前記シンチレータ層が蛍光体を含み、
    前記蛍光体が、側面に凸部を有する複数の柱状結晶であり、
    前記複数の柱状結晶は、互いに、前記凸部を有する部位において実質的に接触していないことを特徴とする放射線検出器。
  8. 前記柱状結晶の凸部を有する部位が、シンチレータ層の厚さを100%としたときに、シンチレータ層の、柱状結晶成長開始面から厚さが1〜50%となる厚み領域に存在することを特徴とする請求項7に記載の放射線検出器。
  9. 前記柱状結晶の凸部を有する部位が、シンチレータ層の厚さを100%としたときに、シンチレータ層の、柱状結晶成長開始面から厚さが1〜50%となる厚み領域のみに存在することを特徴とする請求項7または8に記載の放射線検出器。
  10. 前記シンチレータ層が、前記柱状結晶の凸部を有する部位が存在する厚み領域と、前記柱状結晶の凸部を有する部位が存在しない厚み領域からなり、
    前記柱状結晶の凸部を有する部位が存在する厚み領域が、前記柱状結晶の凸部を有する部位が存在しない厚み領域よりも柱状結晶成長開始面側にあり、
    前記柱状結晶の凸部を有する部位が存在する厚み領域の、柱状結晶成長開始面に平行な断面における柱状結晶の数(a)と、前記柱状結晶の凸部を有する部位が存在しないの、柱状結晶成長開始面に平行な断面における柱状結晶の数(b)との比(a/b)が、1〜8であることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の放射線検出器。
  11. 前記柱状結晶の凸部を有する部位が存在する厚み領域における、前記柱状結晶の充填率が、30〜95%であることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の放射線検出器。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN111149176A (zh) * 2017-09-27 2020-05-12 浜松光子学株式会社 闪烁器面板及放射线检测器
JP2020091144A (ja) * 2018-12-04 2020-06-11 浜松ホトニクス株式会社 シンチレータモジュール、放射線撮像装置、及びシンチレータモジュールの製造方法

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