最初に、本発明に使用する熱膨張性樹脂組成物層を構成する熱膨張性樹脂組成物について説明する。
本発明に使用する膨張性樹脂組成物は、樹脂成分100重量部、熱膨張性黒鉛3〜300重量部、無機充填材3〜200重量部および可塑剤20〜200重量部を含む。
本発明に使用する膨張性樹脂組成物は、塩素化ポリ塩化ビニルおよびEPDMの少なくとも一方である樹脂成分を含む。
塩素化ポリ塩化ビニル樹脂は、ポリ塩化ビニル樹脂の塩素化物である。塩素化ポリ塩化ビニル樹脂の塩素含有量は少なくなると耐熱性が低下し、多くなると溶融押出成形が困難となるので60〜72重量%の範囲であることが好ましい。
ポリ塩化ビニル樹脂は特に限定されず、従来公知の任意のポリ塩化ビニル樹脂を使用することができる。ポリ塩化ビニル樹脂としては、例えば、塩化ビニル単独重合体、塩化ビニルモノマーと塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとの共重合体、塩化ビニルモノマー以外の重合体または塩化ビニルモノマー以外の共重合体に塩化ビニルをグラフト共重合したグラフト共重合体等が挙げられる。ポリ塩化ビニル樹脂は一種もしくは二種以上を使用することができる。
塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとしては、塩化ビニルモノマーと共重合可能であれば特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のα−オレフィン類、酢酸ビニル、フロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、 ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステル類、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類などが挙げられる。塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーは一種もしくは二種以上を使用することができる。
塩化ビニルモノマー以外の重合体または塩化ビニルモノマー以外の共重合体としては、塩化ビニルをグラフト重合するものまたはグラフト共重合するものであれば特に限定されず、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート−一酸化炭素共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなどが挙げられる。これらは一種もしくは二種以上を使用することができる。
ポリ塩化ビニル樹脂の平均重合度は特に限定されるものではないが、小さくなると成形体の機械的物性が低下し、大きくなると溶融粘度が高くなって溶融押出成形が困難になる。このためポリ塩化ビニル樹脂の平均重合度は600〜1500の範囲であることが好ましい。
またEPDMは、エチレン、プロピレンおよび架橋用ジエンモノマーとの三元共重合体である。
EPDMに用いられる架橋用ジエンモノマーとしては特に限定されず、例えば、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−プロピリデン−5−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、ノルボルナジエン等の環状ジエン類、1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,7−オクタジエン等の鎖状非共役ジエン類等が挙げられる。
EPDMは、ムーニー粘度(ML1+41 25℃)が4〜30の範囲であることが好ましい。ムーニー粘度が4以上であると、柔軟性に優れる。またムーニー粘度が30以下の場合は硬くなりすぎるのを防止することができる。なお、上記ムーニー粘度は、EPDMのムーニー粘度計による粘度の尺度のことをいう。
EPDMは、架橋用ジエンモノマーの含有量が2.0重量%〜5.0重量%の範囲であることが好ましい。2.0重量%以上であれば、分子間の架橋が進むことから柔軟性に優れる、また5.0重量%以下の場合には耐候性に優れる。
熱膨張性黒鉛は、従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とにより処理してグラファイト層間化合物を生成させたものである。生成された熱膨張性黒鉛は炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物である。
本発明に使用される熱膨張性黒鉛は、酸処理して得られた熱膨張性黒鉛がアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和されたものを使用することもできる。
脂肪族低級アミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。
アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
熱膨張性黒鉛の具体例としては、例えば、日本化成社製「CA−60S」等が挙げられる。
熱膨張性黒鉛の粒度は特に限定されないが、細かくなりすぎると黒鉛の膨張度が小さく、発泡性が低下する傾向がある。また大きくなりすぎると膨張度が大きいという点では効果があるが、樹脂と混練する際に、分散性が悪く成形性が低下し、得られた押出成形体の機械的物性が低下する傾向がある。このため熱膨張性黒鉛の粒度は20〜200メッシュの範囲のものが好ましい。
熱膨張性黒鉛の添加量は、少なくなると耐火性能および発泡性が低下する傾向がある。また多くなると押出成形しにくくなり、得られた成形体の表面性が悪くなり、機械的物性が低下する傾向がある。このため塩素化ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対する熱膨張性黒鉛の添加量は、3〜300重量部の範囲である。熱膨張性黒鉛の添加量の範囲は、10〜200重量部の範囲であれば好ましい。
無機充填材は、一般にポリ塩化ビニル樹脂成形体を製造する際に使用されている無機充填材であれば、特に限定はない。具体的には、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーンナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイ力、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セビオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカバルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコニア鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。
中でも炭酸カルシウムおよび加熱時に脱水し、吸熱効果のある水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の含水無機物が好ましい。
また酸化アンチモンは難燃性向上の効果があるので好ましい。
無機充填材は一種もしくは二種以上を使用することができる。
無機充填材の添加量は、少なくなると耐火性能が低下する傾向があり、多くなると押出成形しにくくなり、得られた成形体の表面性が悪くなり、機械的物性が低下する傾向がある。このため無機充填材の添加量は、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して、3〜200重量部の範囲である。
無機充填材の添加量は、10〜150重量部の範囲であれば好ましい。
可塑剤は、一般にポリ塩化ビニル樹脂成形体を製造する際に使用されている可塑剤であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)等のフタル酸エステル可塑剤、 ジ−2−エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)等の脂肪酸エステル可塑剤;エポキシ化大豆油等のエポキシ化エステル可塑剤;アジピン酸エステル、アジピン酸ポリエステル等のポリエステル可塑剤;トリー2−エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリイソノニルトリメリテート(TINTM)等のトリメリット酸エステル可塑剤;トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)等の燐酸エステル可塑剤;鉱油等のプロセスオイルなどが挙げられる。
可塑剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
可塑剤の添加量は、少なくなると押出成形性が低下する傾向があり、多くなると得られた成形体が柔らかくなり過ぎる傾向がある。このため塩素化ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対して、可塑剤の添加量は20〜200重量部の範囲である。
先に説明した通り、本発明に使用する塩素化ポリ塩化ビニル含有熱膨張性樹脂組成物は、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂、熱膨張性黒鉛、無機充填材および可塑剤を含む。塩素化ポリ塩化ビニル含有熱膨張性樹脂組成物は燐酸エステル可塑剤を除くリン化合物を含有すると、押出成形性が低下する。このため好ましくは燐酸エステル可塑剤を除くリン化合物を含有するものではない。なお、先に説明した可塑剤である燐酸エステル可塑剤を含有することができる。
押出成形性を阻害するリン化合物は次の通りである:赤リン;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム類; 下記化学式で表される化合物;等が挙げられる。
上記化学式中、R1およびR3は、水素、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または、炭素数6〜16のアリール基を表す。
R2は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、または、炭素数6〜16のアリールオキシ基を表す。
化学式で表される化合物としては、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。
ポリリン酸アンモニウム類としては、特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられる。
また本発明に使用する熱膨張性樹脂組成物には、その物性を損なわない範囲で、必要に応じて、一般に使用されている、リン化合物以外の熱安定剤、滑剤、加工助剤、熱分解型発泡剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、架橋剤、架橋促進剤等が添加されてもよい。
熱安定剤としては、例えば、三塩基性硫酸鉛、三塩基性亜硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、ステアリン酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛等の鉛熱安定剤;有機錫メルカプト、有機錫マレート、有機錫ラウレート、ジブチル錫マレート等の有機錫熱安定剤;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸熱安定剤;等が挙げられる。
熱安定剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
滑剤としては、例えば、ポリエチレン、パラフィン、モンタン酸等のワックス類、各種エステルワックス類;ステアリン酸、リシノール酸等の有機酸類;ステアリルアルコール等の有機アルコール類;ジメチルビスアミド等のアミド化合物類;等が挙げられる。
滑剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
加工助剤としては、例えば、塩素化ポリエチレン、メチルメタクリレートーエチルアクリレート共重合体、高分子量のポリメチルメタクリレート等が挙げられる。
熱分解型発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、p,p−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール化合物等が挙げられる。
帯電防止剤としては、例えば、アミノ化合物等が挙げられる。
顔料としては、例えば、アゾ類、フタロシアニン類、スレン類、染料レーキ類等の有機顔料、酸化物類、クロム酸モリブデン類、硫化物・セレン化物類、フェロシアニン化物類などの無機顔料等が挙げられる。
架橋剤としては、例えば、硫黄等が挙げられる。また架橋促進剤としては、例えば、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、N,N,N’,N’−テトラエチルチウラムジスルフィド、ジエチルジチオカルバミン酸ベンジル等が挙げられる。
[熱膨張性樹脂組成物の具体例]
本発明に使用される熱膨張性樹脂組成物の具体例は次の通りである。
(a)樹脂成分、熱膨張性黒鉛部、無機充填材部および可塑剤を含む樹脂組成物
(b)上記(a)の樹脂組成物に対し、熱安定剤、滑剤、加工助剤、熱分解型発泡剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、架橋剤および架橋促進剤からなる群より選ばれる少なくとも一つを添加してなる樹脂組成物
次に、本発明に使用する熱可塑性樹脂組成物層を構成する熱可塑性樹脂組成物について説明する。
熱可塑性樹脂組成物としては押出成形ができるものであれば特に限定はないが、熱可塑性樹脂組成物に含まれる樹脂成分としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂(CPVC)、ポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、クロロプレン(CR)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル−スチレン−アクリロニトリル共重合体(ASA)、アクリロニトリル/エチレン−プロピレン−ジエン/スチレン共重合体(AES)等が挙げられる。
樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂(CPVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン−架橋用ジエンモノマー共重合体(EPDM)、クロロプレン(CR)等が好ましい。
ポリ塩化ビニル樹脂は特に限定されず、従来公知の任意のポリ塩化ビニル樹脂を使用することができる。
ポリ塩化ビニル樹脂としては、例えば、塩化ビニル単独重合体;塩化ビニルモノマーと塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとの共重合体; 塩化ビニルモノマー以外の重合体または塩化ビニルモノマー以外の共重合体に塩化ビニルをグラフト共重合したグラフト共重合体;等が挙げられる。
ポリ塩化ビニル樹脂は一種もしくは二種以上を使用することができる。
塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとしては、塩化ビニルモノマーと共重合可能であれば特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、ブ
チレン等のα−オレフィン類;酢酸ビニル、フロピオン酸ビニル等のビニルエステル類; ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステル類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類; スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類;などが挙げられる。
塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーは一種もしくは二種以上を使用することができる。
塩化ビニルモノマー以外の重合体または塩化ビニルモノマー以外の共重合体としては、塩化ビニルをグラフト重合するものまたはグラフト共重合するものであれば特に限定されず、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、 エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート−一酸化炭素共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなどが挙げられる。
これらは一種もしくは二種以上を使用することができる。
ポリ塩化ビニル樹脂の平均重合度は特に限定されるものではないが、小さくなると成形体の機械的物性が低下し、大きくなると溶融粘度が高くなって溶融押出成形が困難になる。このためポリ塩化ビニル樹脂の平均重合度は600〜1500の範囲であることが好ましい。
また塩素化ポリ塩化ビニル樹脂(CPVC)としては、例えば、先に説明したポリ塩化ビニル樹脂(PVC)を塩素化したもの等が挙げられる。
塩素化ポリ塩化ビニル樹脂の塩素含有量は少なくなると溶融押出成形が容易となり、多くなると耐熱性が向上することから60〜72重量%の範囲であることが好ましい。
EPDMとしては、先の熱膨張性樹脂組成物の樹脂成分として使用するEPDMの場合と同様のものを使用することができる。
熱可塑性樹脂組成物に含まれる樹脂成分に対し、先に説明した無機充填材、可塑剤を添加することにより、本発明に使用する熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
本発明に使用する熱可塑性樹脂組成物には、その物性を損なわない範囲で、必要に応じて、押出成形の際に一般に使用されている、熱安定剤、滑剤、加工助剤、熱分解型発泡剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料等が添加されてもよい。
これらの具体例については先に例示したものと同様である。
[熱可塑性樹脂組成物層を構成する熱可塑性樹脂組成物の具体例]
本発明に使用される熱可塑性樹脂組成物層を構成する熱可塑性樹脂組成物の具体例は次の通りである。
(c)樹脂成分、および無機充填材を含む樹脂組成物
(d)樹脂成分、可塑剤および無機充填材を含む樹脂組成物
(e)上記(c)の樹脂組成物に対し、熱安定剤、滑剤、加工助剤、熱分解型発泡剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、架橋剤および架橋促進剤からなる群より選ばれる少なくとも一つを添加してなる樹脂組成物
(f)上記(d)の樹脂組成物に対し、熱安定剤、滑剤、加工助剤、熱分解型発泡剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、架橋剤および架橋促進剤からなる群より選ばれる少なくとも一つを添加してなる樹脂組成物
熱可塑性樹脂組成物に使用する樹脂成分を選択することにより、本発明の建材用熱膨張性多層パッキンに多様な機能を付与することができる。
本発明に使用する熱可塑性樹脂組成物は、樹脂成分として塩化ビニル樹脂、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂、EPDM等の一種もしくは二種以上を選択することが好ましい。
樹脂成分として塩化ビニル樹脂、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂、EPDM等の一種もしくは二種以上を選択した場合には、得られる建材用熱膨張性多層パッキンが柔軟性、気密性、水密性、強度に優れる。
熱可塑性樹脂組成物に使用するポリ塩化ビニル樹脂組成物は従来公知であり、例えば日本工業規格(JIS)に規定されるものを使用することができる。
ポリ塩化ビニル樹脂組成物には、軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物と硬質ポリ塩化ビニル樹脂組成物がある。
通常軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物は可塑剤を含むものであり、硬質ポリ塩化ビニル樹脂組成物は可塑剤を含まないものである。可塑剤としては、先に説明した可塑剤と同じものを使用することができる。
また軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物としては、例えば日本工業規格に定める軟質ポリ塩化ビニルコンパウンド(JIS K6723)等を使用することができる。
硬質ポリ塩化ビニル樹脂組成物としては、例えば日本工業規格に定める無可塑ポリ塩化ビニル成形用および押出用材料(JIS K6740−1〜2)等を使用することができる。
次に、熱膨張性樹脂組成物層の一部または全部を被覆する被覆部を構成する熱可塑性樹脂組成物について説明する。被覆部を構成する熱可塑性樹脂組成物は、上記の熱可塑性樹脂組成物層を構成する熱可塑性樹脂組成物と、同じであっても異なっていてもよく、例えば、熱可塑性樹脂組成物に含まれる樹脂成分としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂(CPVC)、ポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、クロロプレン(CR)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル−スチレン−アクリロニトリル共重合体(ASA)、アクリロニトリル /エチレン−プロピレン−ジエン/スチレン共重合体(AES)等の軟質性の樹脂が挙げられる。好ましくは、被覆部を構成する熱可塑性樹脂組成物は、上記の熱可塑性樹脂組成物層を構成する熱可塑性樹脂組成物とは異なる材料から構成されており、熱可塑性樹脂組成物層を構成する熱可塑性樹脂組成物では付与されない特性、例えば滑り性、耐候性等をパッキンに付与する。一つの実施形態では、被覆部を構成する熱可塑性樹脂組成物はポリオレフィン樹脂である。ポリオレフィンの場合、耐候性を向上できる上、燃焼時に塩素を発生せず環境低負荷である。また、色素等の配合により、視覚性を高めるようパッキンの外観を設計することも可能である。
本発明に使用する樹脂組成物、つまり熱膨張性樹脂組成物、熱可塑性樹脂組成物層の熱可塑性樹脂組成物、および被覆部の熱可塑性樹脂組成物は、押出成形用に好ましく使用することができる。樹脂組成物を使用して、常法に従い、一軸押出機、二軸押出機等の押出機で100〜250℃で溶融させて同時共押出することにより熱膨張性樹脂組成物層と、熱可塑性樹脂組成物層とを含む多層構造の長尺の建材用熱膨張性多層パッキンを得ることができる。被覆部の熱可塑性樹脂組成物は、熱膨張性樹脂組成物層および熱可塑性樹脂組成物層と同時共押出してもよいし、熱膨張性樹脂組成物層と熱可塑性樹脂組成物層を同時共押出した後、その上に積層させてもよい。
長尺の建材用熱膨張性多層パッキンを用途に応じて適切な長さに切断することにより、本発明の建材用熱膨張性多層パッキンが得られる。
本発明の建材用熱膨張性多層パッキンとしては、例えば、窓、扉等の建材に使用されるものが挙げられる。建材用熱膨張性多層パッキンの具体例としては、例えば、グレージングチャンネル、タイト材、ガスケット等が挙げられる。
以下に図面を参照しつつ実施例により本発明を詳細に説明する。なお本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
[グレージングチャンネル100の構造]
図1は実施例1に係るグレージングチャンネルを説明するための模式断面図であり、実施例1に係るグレージングチャンネルの長手方向に対する垂直面を基準とする断面形状を示したものである。図2は実施例1に係るグレージングチャンネルを説明するための模式部分斜視図である。また図3は実施例1に係るグレージングチャンネルがガラスパネルに装着された状態を説明するための模式部分断面図である。
実施例1に係るグレージングチャンネル100は、二以上のガラス板を重ねて形成されるガラスパネル300の周縁部310に装着される。グレージングチャンネル100は、ガラスパネル300の端面301に対向する底壁部1と、底壁部1の両側に底壁部1と連続して設けられてガラスパネル端面301の長手方向に沿ってガラスパネル周縁部310を覆う側壁部2とを有する。底壁部1と側壁部2とは、グレージングチャンネル100の本体部10を形成する。
グレージングチャンネル100に含まれる底壁部1および側壁部2は、硬質塩化ビニル樹脂組成物により形成されている。
各側壁部2の上部には突起部20が設けられている。各突起部20は、内側、すなわちガラスパネル300側に向かって突き出た外ヒレ部21aおよび内ヒレ部21bを有する。
また各突起部20は、外側、すなわちガラスパネル300側とは反対側に、溝部21cを有する。サッシ320の端部を溝部21cに挿入することにより、サッシ320にグレージングチャンネル100を固定することができる。
突起部20は、表1に示す配合比を有する塩素化ポリ塩化ビニル含有熱膨張性樹脂組成物により形成されている。塩素化ポリ塩化ビニル含有熱膨張性樹脂組成物は可塑剤が含まれていることから柔軟性を有する。
[グレージングチャンネル100の製造例]
表1に示した所定量の塩素化塩化ビニル樹脂(徳山積水社製、「HA−53K」重合度1000、塩素含有量67.3重量%、以下「CPVC−1」と言う。)、塩化ビニル樹脂(徳山積水社製「TS−1000R」、重合度1000、以下「PVC」と言う。)、中和処理された熱膨張性黒鉛(東ソ一社製「GREP−EG」)、炭酸カルシウム(白石カウシウム社製「ホワイトンBF300」)、ジイソデシルフタレート(ジェイ・プラス社製「DID P」、以下「DIDP」と言う。)、Ca−Zn複合安定剤(水沢化学社製「NT−231」)、ステアリン酸カルシウム(堺化学社製「SC−100」)、塩素化ポリエチレン(威海金弘社製「135A」)およびポリメチルメタクリレート(三菱レーヨン社製「P−530A」)からなる塩素化ポリ塩化ビニル含有熱膨張性樹脂組成物;PVC、炭酸カルシウム(白石カルシウム社製「ホワイトンBF300」)、ジイソデシルフタレート(「DIDP」)、Ca−Zn複合安定剤(水沢化学社製「NT−231」)、ステアリン酸カルシウム(堺化学社製「SC−100」)、塩素化ポリエチレン(威海金弘社製「135A」)およびポリメチルメタクリレート(三菱レーヨン社製「P−530A」)からなるポリ塩化ビニル樹脂組成物;ならびにポリオレフィン樹脂等の軟質性樹脂組成物;を一軸押出機(池貝機販社製、65mm押出機)に供給し、150tで同時共押出を行うことにより、図1に示される断面形状の、熱膨張性樹脂組成物層からなる突起部20と熱可塑性樹脂組成物層からなる本体部10と、突起部20、および本体部10及び突起部20の周囲の被覆部30とからなる長尺異型成形体を1m/hrの速度で同時共押出成形することができる。
実施例1に係るグレージングチャンネル100では、被覆部30がグレージングチャンネル100の長手方向における外周面全体に延びている。
得られた3層からなる長尺異型成形体を、長尺異型成形体の長手方向に対して垂直方向に切断することにより、実施例1に係るグレージングチャンネル100が得られる。このグレージングチャンネル100は外観に優れる。
[グレージングチャンネル100の作用]
図1に示すグレージングチャンネル100は、熱膨張性樹脂組成物層からなる突起部20と、熱可塑性樹脂組成物層からなる本体部10とを有する。
熱膨張性樹脂組成物層は火災等の熱により膨張することから耐火性の機能を担う。
一方、熱可塑性樹脂組成物層は、ガラスパネル300(図3)を外部からの衝撃から守る保護層の機能を担う。
この様に実施例1に係るグレージングチャンネル100は機能の異なる樹脂組成物層を二以上有することから一つのグレージングチャンネル100に対し全く異なる複数の機能を付与することが可能となる。
図3に示すグレージングチャンネル100およびガラスパネル300を備えたサッシ320が火災等の熱にさらされた場合、熱膨張性樹脂組成物層からなる突起部20は膨張する。この膨張により生じた膨張残渣が、ガラスパネル300とサッシ320との隙間を閉塞する。
この膨張残渣により、火災により生じた炎、煙等がガラスパネル300とサッシ320との隙間を通って、火災の生じていない側に侵入することを遅延させることができる。
上述の通り、実施例1に係るグレージングチャンネル100を備えたサッシ320は耐火性に優れる。
また、突起部20と本体部10との接合部3の位置において突起部20と本体部10とが被覆部30で連続的に被覆されているため、パッキンの外観に優れると共に、引き裂き性が向上し層間剥離が起こりにくい。
[グレージングチャンネル110の構造]
図4は実施例2に係るグレージングチャンネルを説明するための模式断面図である。
実施例2に係るグレージングチャンネル110は、先の実施例1に係るグレージングチャンネル100の変形例である。
実施例1に係るグレージングチャンネル100では、被覆部30がグレージングチャンネル110の長手方向における外周面全体に延びていたが、実施例2に係るグレージングチャンネル110では、被覆部30が本体部10の側壁部2の長手方向における両側面と、突起部20の長手方向における外周面全体とに連続的に延びているが、本体部10の底壁部1は被覆部30に覆われていない。
このように、被覆部30が熱可塑性樹脂組成物層からなる本体部10の一部のみ被覆していてもよい。
この場合も、突起部20と本体部10との接合部3の位置において突起部20と本体部10とが被覆部30で連続的に被覆されているため、パッキンの外観に優れると共に、引き裂き性が向上し層間剥離が起こりにくくなっている。
[グレージングチャンネル120の構造]
図5は実施例3に係るグレージングチャンネルを説明するための模式断面図である。 実施例1に係るグレージングチャンネル100では、被覆部30がグレージングチャンネル100の長手方向における外周面全体に延びていた。
これに対し実施例3に係るグレージングチャンネル120では、被覆部30を形成する熱可塑性樹脂と本体部10を形成する熱可塑性樹脂が同じであって、一体成形されている。よって、突起部20と本体部10との接合部3の位置において突起部20と本体部10とが被覆部30で連続的に被覆されているため、パッキンの外観に優れると共に、引き裂き性が向上し層間剥離が起こりにくくなっている。本体部10と被覆部30が分離することもなく、接着性に優れている。
[グレージングチャンネル130の構造]
図6は実施例4に係るグレージングチャンネルを説明するための模式断面図である。 実施例1に係るグレージングチャンネル100は、突起部20が熱膨張性樹脂組成物層であり、本体部10がポリ塩化ビニル樹脂組成物層であった。
これに対し実施例4に係るグレージングチャンネル130は、突起部20がポリ塩化ビニル樹脂組成物層であり、本体部10が熱膨張性樹脂組成物層である点が異なる。
実施例4のポリ塩化ビニル樹脂組成物層に使用したポリ塩化ビニル樹脂組成物は、軟質ポリ塩化ビニルを含む。
具体的にはPVC、炭酸カルシウム(白石カウシウム社製「ホワイトンBF300」)、ジイソデシルフタレート(「DIDP」)、Ca−Zn複合安定剤(水沢化学社製「NT−231」)、ステアリン酸カルシウム(堺化学社製「SC−100」)、塩素化ポリエチレン(威海金弘社製「135A」)およびポリメチルメタクリレート(三菱レーヨン社製「P−530A」)からなる。
[グレージングチャンネル130の製造例]
実施例4に係るグレージングチャンネル130は、突起部20の成形にポリ塩化ビニル樹脂を使用し、本体部10の成形に実施例1に用いた塩素化ポリ塩化ビニル含有熱膨張性樹脂組成物を使用して、実施例1の場合と同様に3層を同時共押出成形し、製造することができる。
同時共押出成形により得られたグレージングチャンネル130は外観、耐火性に優れる。
[グレージングチャンネル130の作用]
図6に示すグレージングチャンネル130は、熱可塑性樹脂組成物層からなる突起部20と、熱膨張性樹脂組成物層からなる本体部10と、突起部20および本体部10の周囲の熱可塑性樹脂組成物層からなる被覆部30とを有する。
熱膨張性樹脂組成物層は火災等の熱により膨張することから耐火性の機能を担う。
一方、熱可塑性樹脂組成物層は、軟質性樹脂組成物から形成されているため、グレージングチャンネル110の突起部20および被覆部30は柔軟性を有し、ガラスパネル300と密着させることができる。
このため突起部20はガラスパネル300に結露した水等がサッシの内部等に浸入することを防止できることから水密の機能を担う。
この様に実施例4に係るグレージングチャンネル130は機能の異なる樹脂組成物層を二以上有することから一つのグレージングチャンネル130に対し全く異なる複数の機能を付与することが可能となる。
また実施例4に係るグレージングチャンネル110は、図3におけるグレージングチャンネル100に代えてグレージング130を使用した場合でも、塩素化ポリ塩化ビニル含有熱膨張性樹脂組成物からなるグレージングチャンネル130の本体部10が火災等の熱により膨張する。
この膨張残渣によりガラスパネル300とサッシ320との隙間を閉塞することができる。
この場合も、突起部20と本体部10との接合部3の位置において突起部20と本体部10とが被覆部30で連続的に被覆されているため、パッキンの外観に優れると共に、引き裂き性が向上し層間剥離が起こりにくくなっている。
図7は実施例5に係るグレージングチャンネルを説明するための模式断面図である。
実施例5に係るグレージングチャンネル140は、先の実施例4に係るグレージングチャンネル130の変形例である。
実施例4に係るグレージングチャンネル130では、被覆部30がグレージングチャンネル110の長手方向における外周面全体に延びていたが、実施例5に係るグレージングチャンネル140では、被覆部30が本体部10の内表面4および外表面5と、突起部20のうち突起部20と本体部10との接合部3の位置のみを被覆する。このように、被覆部30が熱可塑性樹脂組成物層からなる突起部20の一部のみ被覆していてもよい。この場合でも、突起部20と本体部10との接合部3の位置において突起部20と本体部10とが被覆部30で連続的に被覆されているため、引き裂き性が向上し層間剥離が起こりにくくなっている。
[グレージングチャンネル150の構造]
図8は実施例6に係るグレージングチャンネルを説明するための模式断面図である。
実施例6に係るグレージングチャンネル150は、熱可塑性樹脂組成物層からなる突起部20および本体部10を有し、本体部10には、熱膨張性樹脂組成物層からなる外側壁部6が本体部10の両側の側壁部2の外側にそれぞれ接して設置されている。被覆部30は、突起部20における突起部20と本体部10(外側壁部6)との接合部3の位置と、本体部10の外側壁部6と、本体部10の底面7とを連続的に被覆する。
実施例6に係るグレージングチャンネル150は、同時共押出成形により得ることができる。
突起部20と本体部10との接合部3の位置において突起部20と本体部10とが被覆部30で連続的に被覆されているため、パッキンの外観に優れると共に、引き裂き性が向上し層間剥離が起こりにくくなっている。
[タイト材160の構造]
図9は実施例7に係るタイト材を説明するための模式断面図であり、実施例7に係るタイト材の長手方向に対する垂直面を基準とする断面形状を示したものである。図10は実施例7に係るタイト材を説明するための模式部分斜視図である。また図11および図12は実施例7に係るタイト材と扉との関係を説明するための模式部分断面図である。
実施例7に係るタイト材160は、熱膨張性樹脂組成物層からなる本体部10と軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物層からなる突起部20とを有する。
本体部10は、固定部22および筒部23を有する。また突起部20は、湾曲部24を有する。突起部20の内部には、湾曲部24および筒部23により囲まれる空間25が形成されている。被覆部30は、突起部20と本体部10の長手方向における外周面全体を被覆する。
図11および図12に示す扉400は、枠体410に対して開閉することができる。扉400を枠体410に接触させると、扉400はタイト材160の突起部20の湾曲部24に接触する。
またタイト材160の本体部10の固定部22は、枠体410の溝部411の内部に挿入されている。固定部22が溝部411に挿入されることにより、タイト材160を枠体410に固定することができる。
タイト材160の突起部20は柔軟性を有する。このため扉400を枠体410に接触させると、タイト材160の空間25が変形して、扉400と枠体410との隙間を閉塞することができる。
[タイト材160の製造例]
実施例7に係るタイト材160の製造方法は実施例1の場合と同様である。同時共押出成形に使用する樹脂組成物の配合を表1に示す。
突起部20の成形に実施例1に用いた軟質ポリ塩化ビニルを含むポリ塩化樹脂組成物を使用し、本体部10の成形に、実施例1に用いた塩素化ポリ塩化ビニル含有熱膨張性樹脂組成物を使用して、実施例1の場合と同様の同時共押出成形によりタイト材160を製造することができる。
得られるタイト材160は外観に優れる。
[タイト材160の作用]
図11および図12に示すタイト材160は、熱可塑性樹脂組成物層からなる突起部20と、熱膨張性樹脂組成物層からなる本体部10とを有する。
熱膨張性樹脂組成物層は火災等の熱により膨張することから耐火性の機能を担う。
また熱可塑性樹脂組成物層は柔軟性を有することから、扉400と枠体410との隙間を閉塞する気密の機能も担う。
一方、熱膨張性樹脂組成物層は、扉400が閉じた状態でも突起部20を支えることのできる強度を有する。
このため本体部10はタイト材160全体の強度の機能を担う。
この様に実施例7に係るタイト材160は機能の異なる樹脂組成物層を二以上有することから一つのタイト材160に対し全く異なる複数の機能を付与することが可能となる。また、突起部20と本体部10とが接合部3の位置において被覆部30で被覆されているため、引き裂き性が向上し層間剥離が起こりにくくなっている。
また図11および図12に示すタイト材160を備えた枠体410および扉400が火災等の熱にさらされた場合、熱膨張性樹脂組成物層からなる本体部10は膨張する。
この膨張により生じた膨張残渣が、扉400と枠体410との隙間を閉塞する。
この膨張残渣により、火災により生じた炎、煙等が扉400と枠体410との隙間を通って、火災の生じていない側に侵入することを遅延させることができる。
上述の通り、実施例7に係るタイト材160を備えた枠体410および扉400は耐火性に優れる。
[タイト材170の構造]
図13は実施例8に係るタイト材を説明するための模式断面図であり、実施例8に係るタイト材の長手方向に対する垂直面を基準とする断面形状を示したものである。
実施例8に係るタイト材170は、軟質ポリ塩化ビニルを含むポリ塩化ビニル樹脂組成物層からなる固定部26および熱膨張性樹脂組成物層からなる筒部27を有する本体部10と、空間25を有しない軟質ポリ塩化ビニルを含むポリ塩化ビニル樹脂組成物層からなる突起部20とを有し、被覆部30は突起部20と本体部10の長手方向における外周面全体を被覆する。
実施例7の場合と同様、タイト材170の本体部10を嵌めることのできる溝部を有する枠体を使用して、枠体にタイト材170を固定することができる。
実施例8に係るタイト材170も実施例7に係るタイト材160の場合と同様の同時共押出により成形することができる。
得られるタイト材170は、実施例7に係るタイト材160の場合と同様、扉と枠体とを備える建築部材に応用することができる。またタイト材170は外観および耐火性に優れる。
[タイト材180の構造]
実施例9に係るタイト材180は実施例7に係るタイト材160の変形例である。
図14は実施例9に係るタイト材を説明するための模式断面図であり、実施例9に係るタイト材の長手方向に対する垂直面を基準とする断面形状を示したものである。
先の実施例7に係るタイト材160の場合は、熱膨張性樹脂組成物層からなる本体部10と軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物層からなる突起部20とを有しており、突起部20は半円状であった。
これに対し、実施例9に係るタイト材180の場合は、突起部20を形成するヒレ部28の形状が、内部に空間のない略三日月状となっていて、本体部10の端部に設置されている点が異なる。
ここで略三日月状とは、曲面を異なる曲面で切り取ることにより得られる形状のことをいい、外側に向かって滑らかに突き出る曲線と、内側に向かって滑らかに突き出る曲線とを含む外周を備えるものである。
なお本体部10に対する突起部20の設置場所は本体部10の端部に限定されることはなく、適宜設定することができる。
実施例7の場合と同様、実施例9に係るタイト材180も、タイト材180の本体部10を嵌めることのできる溝部を有する枠体を使用して、枠体に固定することができる。
実施例9に係るタイト材180も実施例7に係るタイト材160の場合と同様、同時共押出により成形することができる。
得られるタイト材180は、実施例7に係るタイト材160の場合と同様、扉と枠体とを備える建築部材に応用することができる。またタイト材180は外観および耐火性に優れる。
[タイト材190の構造]
実施例10に係るタイト材190は実施例9に係るタイト材180の変形例である。
図15は実施例10に係るタイト材190を説明するための模式断面図であり、実施例10に係るタイト材190の長手方向に対する垂直面を基準とする断面形状を示したものである。
実施例10に係るタイト材190は、熱膨張性樹脂組成物層からなる筒部41、筒部41から連続して延びる熱膨張性樹脂組成物層からなる連結部43、連結部43から延出する軟質ポリ塩化ビニルを含むポリ塩化ビニル樹脂組成物層からなる一対の拡張部45、連結部43の端部から延出する軟質ポリ塩化ビニルを含むポリ塩化ビニル樹脂組成物層からなる一対の固定部44を本体部10が有する。
実施例9の場合と同様、実施例10に係るタイト材190も、タイト材190の本体部10を嵌めることのできる溝部を有する枠体を使用して、枠体に固定することができる。
実施例10に係るタイト材190も実施例9に係るタイト材180の場合と同様の同時共押出により成形することができる。
得られるタイト材190は、実施例9に係るタイト材180の場合と同様、扉と枠体とを備える建築部材に応用することができる。またタイト材190は外観および耐火性に優れる。
[タイト材200の構造]
図16は実施例11に係るタイト材を説明するための模式断面図であり、実施例11に係るタイト材の長手方向に対する垂直面を基準とする断面形状を示したものである。
実施例11に係るタイト材200は、熱膨張性樹脂組成物層からなる筒部37により形成された本体部10の中央部に、軟質ポリ塩化ビニルを含むポリ塩化ビニル樹脂組成物層からなる突起部20が設置されている。突起部20は先端に行くほど先が細くなる先細形状のヒレ部37により形成されている。また、本体部10および突起部20の長手方向における外周面全体が被覆部30により被覆されている。
実施例7〜10の場合と同様、タイト材200の本体部10を嵌めることのできる溝部を有する枠体を使用して、枠体にタイト材200を固定することができる。
実施例11に係るタイト材200も実施例7,8,9,10に係るタイト材160,170,180,190の場合と同様の同時共押出により成形することができる。
得られるタイト材200は、実施例7,8,9,10に係るタイト材160,170,180,190の場合と同様、扉と枠体とを備える建築部材に応用することができる。またタイト材200は外観および耐火性に優れる。
[ガスケット210の構造]
図17は実施例12に係るガスケットを説明するための模式断面図であり、実施例12に係るガスケットの長手方向に対する垂直面を基準とする断面形状を示したものである。
図18は実施例12に係るガスケットを説明するための模式部分斜視図である。また図19は実施例12に係るガスケットと壁との関係を説明するための模式部分断面図である。
実施例12に係るガスケット210は、熱膨張性樹脂組成物層からなる本体部10、軟質ポリ塩化ビニル樹脂を含むポリ塩化ビニル樹脂組成物層からなる突起部20と、本体部10と突起部20の長手方向における外周面全体を被覆する被覆部30とを有する。
本体部10は、熱膨張性樹脂組成物層からなるコア部40と、コア部40から連続的に互いに反対方向に突出するいずれも熱膨張性樹脂組成物層からなる一対の延出部41および一対の延出部42を有する。
突起部20は、軟質ポリ塩化ビニル樹脂を含むポリ塩化ビニル樹脂組成物層からなる湾曲部43を有する。突起部20の内部には、湾曲部43により囲まれる空間44が形成されている。
図19に示す2つの外壁440の目地441に、実施例12に係るガスケット210を挿入することができる。
ガスケット210を目地441に挿入すると、ガスケット210の延出部41,42および突起部20が2つの外壁440にはさまれて、ガスケット210を目地441内部に固定することができる。
またガスケット210の延出部42および突起部20は柔軟性を有する。このためガスケット210を目地441に挿入すると、ガスケット210の延出部41,42および突起部20により目地441を閉塞することができる。
[ガスケット210の製造例]
実施例12に係るガスケット210の製造方法は実施例1の場合と同様である。同時共押出成形に使用する樹脂組成物の配合を表1に示す。
突起部20の成形に実施例1に用いた軟質ポリ塩化ビニルを含むポリ塩化樹脂組成物を使用し、本体部10の成形に、実施例1に用いた塩素化ポリ塩化ビニル含有熱膨張性樹脂組成物を使用して、実施例1の場合と同様の同時共押出成形によりガスケット210を製造することができる。
得られるガスケット210は外観に優れる。
[ガスケット210の作用]
図19に示すガスケット210は、熱可塑性樹脂組成物層からなる突起部20と、熱膨張性樹脂組成物層からなる本体部10と、本体部10及び突起部20を被覆する被覆部30とを有する。
熱膨張性樹脂組成物層は火災等の熱により膨張することから耐火性の機能を担う。また熱可塑性樹脂組成物層は柔軟性を有することから、2つの外壁44間の目地441を閉塞する気密の機能も担う。
この様に実施例12に係るガスケット210は機能の異なる樹脂組成物層を二以上有することから一つのガスケット210に対し全く異なる複数の機能を付与することが可能となる。
また図19に示すガスケット210を備えた外壁440が火災等の熱にさらされた場合、熱膨張性樹脂組成物層からなる本体部10は膨張する。この膨張により生じた膨張残渣が、2つの外壁440間の目地441を閉塞する。
この膨張残渣により、火災により生じた炎、煙等が2つの外壁440間の目地441を通って、火災の生じていない側に侵入することを遅延させることができる。
上述の通り、実施例12に係るガスケット210を備えた外壁440間の目地441は耐火性に優れる。
また、突起部20と本体部10とが接合部3の位置において被覆部30で被覆されているため、引き裂き性が向上し層間剥離が起こりにくくなっている。
ここまで、本発明を実施例1〜12を例にとって説明してきたが、本発明はこれに限られず、以下のような種々の変形が可能である。
○被覆層30は熱膨張性樹脂組成物層の一部または全部を被覆すればよく、実施例1−12で示した以外の態様で本体部10および突起部20を被覆してもよい。例えば図4の実施例2において、被覆部30は本体部10の本体部10の側壁部2の長手方向における両側面を覆う代わりに、本体部10の側壁部2の長手方向における外側面のみを覆ったり、本体部10の側壁部2の長手方向における外側面と本体部10の底壁部1の外側面とを覆ったりしてもよい。
○本発明のパッキンは、グレージングチャンネル、タイト材、またはガスケット以外に、グレージングビード等の他の態様に具現化してもよい。