JP2016084299A - D−グルコピラノシルグリセロール組成物およびその安定化方法 - Google Patents

D−グルコピラノシルグリセロール組成物およびその安定化方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2016084299A
JP2016084299A JP2014217231A JP2014217231A JP2016084299A JP 2016084299 A JP2016084299 A JP 2016084299A JP 2014217231 A JP2014217231 A JP 2014217231A JP 2014217231 A JP2014217231 A JP 2014217231A JP 2016084299 A JP2016084299 A JP 2016084299A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
glucopyranosylglycerol
composition
compound represented
formula
total mass
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2014217231A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2016084299A5 (ja
Inventor
敦史 長井
Atsushi Nagai
敦史 長井
相澤 恭
Yasushi Aizawa
恭 相澤
純久 飯田
Sumihisa Iida
純久 飯田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyo Sugar Refining Co Ltd
Original Assignee
Toyo Sugar Refining Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyo Sugar Refining Co Ltd filed Critical Toyo Sugar Refining Co Ltd
Priority to JP2014217231A priority Critical patent/JP2016084299A/ja
Publication of JP2016084299A publication Critical patent/JP2016084299A/ja
Publication of JP2016084299A5 publication Critical patent/JP2016084299A5/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Medicinal Preparation (AREA)
  • Cosmetics (AREA)

Abstract

【課題】安定性が改善されたD−グルコピラノシルグリセロール組成物の提供。【解決手段】1−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール(1A)、1−O−β−D−グルコピラノシルグリセロール(1B)、2−O−α−D−モノグルコピラノシルグリセロール(2A)および2−O−β−D−モノグルコピラノシルグリセロール(2B)を含有するD−グルコピラノシルグリセロール組成物であって、化合物(1A)および(1B)の合計質量(S1)と、化合物(2A)および(2B)物の合計質量(S2)の比率が、80:20〜90:10(S1とS2の合計を100とする。)であり、かつ化合物(1A)および(2A)の合計質量(SA)と、化合物(1B)および(2B)の合計質量(SB)の比率が、55:45〜70:30(SAとSBの合計を100とする。)であることを特徴とする、D−グルコピラノシルグリセロール組成物。【選択図】なし

Description

本発明はD−グルコピラノシルグリセロール組成物およびその安定化方法に関する。
α−D−グルコピラノシルグリセロールは、清酒に0.5質量%程度含まれており、すっきりとした甘さを与えていることが知られている物質である。近年では、α−D−グルコピラノシルグリセロールが非う蝕性、難消化性、保湿性等の機能を有することが報告されており、その機能性材料としての有用性が注目されている。特開平11−222496号公報(特許文献1)には、これらの機能に着目して、1−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール(2R体および2S体)ならびに2−O−α−D−グルコピラノシルグリセロールを含有するα−D−グルコピラノシルグリセロール混合物を、α−グルコシダーゼを用いる酵素法により効率的に製造する方法や、そのような製造方法により得られたα−D−グルコピラノシルグリセロール混合物を調味料や保湿剤の主成分として利用し、各種飲食品、化粧品、医薬品等に添加することが開示されている。
特開平9−124457号公報(特許文献2)では、様々なヘキソシルグリセリド類および/または(ヘキソシル)ヘキソシルグリセリド類を含む化粧品および薬学的調製物類に言及されているが、特に保湿剤の用途において好ましい化合物として(2−O−β−D−グルコピラノシル)−sn−グリセロールが挙げられており、実施例ではそれを含有する様々な組成物が開示されている。
また、特開2011−236152号公報(特許文献3)には、1−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール(1−O−α−D−ジヒドロキシプロピルグルコピラノシド)とその立体異性体である1−O−β−D−グルコピラノシルグリセロール(1−O−β−D−ジヒドロキシプロピルグルコピラノシド)を特定の比率で含有する糖組成物を有機合成法により製造する方法や、そのような製造方法により得られた糖組成物を、1−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール単独よりも保湿性が向上された保湿剤として利用することが開示されている。
特開平11−222496号公報 特開平9−124457号公報 特開2011−236152号公報
上記の特許文献に記載されているD−グルコピラノシルグリセロールを含有する組成物は、温度やpHの条件によっては、そこに含まれるD−グルコピラノシルグリセロール化合物が分解されやすく、安定性の面で改善の余地があった。
本発明は一つの側面において、安定性が改善されたD−グルコピラノシルグリセロール組成物を提供することを課題とする。また、本発明は別の側面において、D−グルコピラノシルグリセロール組成物の安定性を向上させる方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、1−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール(化合物1A)、1−O−β−D−グルコピラノシルグリセロール(化合物1B)、2−O−α−D−モノグルコピラノシルグリセロール(化合物2A)および2−O−β−D−モノグルコピラノシルグリセロール(化合物2B)を、化合物1Aおよび1Bの合計質量と化合物2Aおよび2Bの合計質量との比率が特定の範囲となるよう、かつ化合物1Aおよび2Aの合計質量と化合物1Bおよび2Bの合計質量との比率が特定の範囲となるよう、混合して用いることにより、そのような条件を満たさないまま用いるときよりも、安定性を向上させることができ、しかも保湿性などの面では同等の効果を保持させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は下記の事項を包含する。
[1]
下記式(1A)で表される化合物、下記式(1B)で表される化合物、下記式(2A)で表される化合物および下記式(2B)で表される化合物を含有するD−グルコピラノシルグリセロール組成物であって、
下記式(1A)で表される化合物および下記式(1B)で表される化合物の合計質量(S1)と、下記式(2A)で表される化合物および下記式(2B)で表される化合物の合計質量(S2)の比率が、80:20〜90:10(S1とS2の合計を100とする。)であり、かつ
下記式(1A)で表される化合物および下記式(2A)で表される化合物の合計質量(SA)と、下記式(1B)で表される化合物および下記式(2B)で表される化合物の合計質量(SB)の比率が、55:45〜70:30(SAとSBの合計を100とする。)であることを特徴とする、D−グルコピラノシルグリセロール組成物。
[2]
さらにグリセリンを含有する、項1に記載のD−グルコピラノシルグリセロール組成物。
[3]
項1または2に記載のD−グルコピラノシルグリセロール組成物を含有する、化粧品または医薬部外品。
[4]
上記式(1A)で表される化合物および上記式(1B)で表される化合物を含有する1−O−D−グルコピラノシルグリセロール組成物と、上記式(2A)で表される化合物および上記式(2B)で表される化合物を含有する2−O−D−グルコピラノシルグリセロール組成物とを、
上記式(1A)で表される化合物および上記式(1B)で表される化合物の合計質量(S1)と、上記式(2A)で表される化合物および上記式(2B)で表される化合物の合計質量(S2)の比率が、80:20〜90:10(S1とS2の合計を100とする。)であり、かつ
上記式(1A)で表される化合物および上記式(2A)で表される化合物の合計質量(SA)と、上記式(1B)で表される化合物および上記式(2B)で表される化合物の合計質量(SB)の比率が、55:45〜70:30(SAとSBの合計を100とする。)である、D−グルコピラノシルグリセロール組成物が調製されるよう混合することにより、
前記1−O−D−グルコピラノシルグリセロール組成物よりも、上記式(1A)および(1B)で表される化合物の安定性を向上させることを特徴とする、D−グルコピラノシルグリセロール組成物の安定化方法。
[5]
上記式(1A)で表される化合物および上記式(2A)で表される化合物を含有するα−D−グルコピラノシルグリセロール組成物と、上記式(1B)で表される化合物および上記式(2B)で表される化合物を含有するβ−D−グルコピラノシルグリセロール組成物とを、
上記式(1A)で表される化合物および上記式(1B)で表される化合物の合計質量(S1)と、上記式(2A)で表される化合物および上記式(2B)で表される化合物の合計質量(S2)の比率が、80:20〜90:10(S1とS2の合計を100とする。)であり、かつ
上記式(1A)で表される化合物および上記式(2A)で表される化合物の合計質量(SA)と、上記式(1B)で表される化合物および上記式(2B)で表される化合物の合計質量(SB)の比率が、55:45〜70:30(SAとSBの合計を100とする。)である、D−グルコピラノシルグリセロール組成物が調製されるよう混合することにより、
前記α−D−グルコピラノシルグリセロール組成物よりも、上記式(1A)および(2A)で表される化合物の安定性を向上させることを特徴とする、D−グルコピラノシルグリセロール組成物の安定化方法。
[6]
前記安定性がpHに対する安定性である、項4または5に記載の安定化方法。
[7]
前記pHが1〜10である、項6に記載の安定化方法。
[8]
前記安定性が酵素に対する安定性である、項4または5に記載の安定化方法。
[9]
前記酵素がグルコアミラーゼまたはトランスグルコシダーゼである、項8に記載の安定化方法。
本発明のD−グルコピラノシルグリセロール組成物またはその安定化方法を使用することにより、従来のD−グルコピラノシルグリセロール組成物を使用したときと保湿性などの面で同等の効果を保持させつつ、安定性を向上させることができる。したがって、D−グルコピラノシルグリセロール組成物を使用した製品(化粧品等)の製造工程において、あるいはその使用環境において、温度やpHが多少過酷な場合であっても、D−グルコピラノシルグリセロール化合物の特性を利用しやすくなり、化粧品等の様々な分野における用途を広げることができる。また、D−グルコピラノシルグリセロール組成物の製造工程、特に精製工程における過酷な温度やpH帯においても安定性が高いことから製品歩留まりが上り、製造コストの低減につながる。
図1[A]、[B]および[C]はそれぞれ、HPLC測定条件1、2および3で測定した、試料3(コスアルテ−2G)のクロマトグラムの例である。[A]において、「1位体」は1−O−α−D−モノグルコピラノシルグリセロールおよび1−O−β−D−モノグルコピラノシルグリセロールを含むピークを表し、「2位体」は2−O−α−D−モノグルコピラノシルグリセロールおよび2−O−β−D−モノグルコピラノシルグリセロールを含むピークを表す。[B]において、「α体」は1−O−α−D−モノグルコピラノシルグリセロールおよび2−O−α−D−モノグルコピラノシルグリセロールを含むピークを表し、「β体」は1−O−β−D−モノグルコピラノシルグリセロールおよび2−O−β−D−モノグルコピラノシルグリセロールを含むピークを表す。[C]において、「1α体」、「1β体」、「2α体」および「2β体」はそれぞれ、1−O−α−D−モノグルコピラノシルグリセロール、1−O−β−D−モノグルコピラノシルグリセロール、2−O−α−D−モノグルコピラノシルグリセロールおよび2−O−β−D−モノグルコピラノシルグリセロールのピークを表す。 図2は、HPLC測定条件4で測定した、試料3(コスアルテ−2G)のクロマトグラムの例である。「G1体」、「G2体」および「G3体」はそれぞれ、グリセリンへのグルコピラノシル基の結合数が1、2および3である化合物を含むピークを表す。 図3は、実施例1(温度およびpHに対する安定性)における、各試料の残存率を表すグラフである。 図4は、実施例2(温度および酵素処理に対する安定性)における、各試料の残存率を表すグラフである。 図5は、参考例における、グルコピラノシル基の結合数が異なる各化物別の残存率を表すグラフである。
− D−グルコピラノシルグリセロール組成物 −
D−グルコピラノシルグリセロールは、1−O−D−グルコピラノシルグリセロール、2−O−D−グルコピラノシルグリセロール、1,2−O−D−グルコピラノシルグリセロール、1,3−O−D−グルコピラノシルグリセロール、1,2,3−O−D−グルコピラノシルグリセロールなど、グリセロール(グリセリン)の一以上の水酸基のそれぞれに、一以上のD−グルコピラノシル基が結合した化合物の総称である。「一以上のD−グルコピラノシル基」は、1個だけのD−グルコピラノシル基であってもよいし、複数のD−グルコピラノシル基が連結した基、例えば2個のD−グルコピラノシル基がα1−4結合で連結した構造を有するマルトシル基、3個のD−グルコピラノシル基がα1−4結合で連結した構造を有するマルトトリオシル基などであってもよい。「D−グルコピラノシルグリセロール組成物」は、このようなD−グルコピラノシルグリセロールを含有する組成物を指す用語である。
1−O−D−グルコピラノシルグリセロールは、式(1)で表される化合物、すなわち1−O−(α−またはβ−)D−(モノまたはポリ)グルコピラノシルグリセロールの総称である。当該化合物は1−O−(α−またはβ−)D−ジヒドロキシプロピル(モノまたはポリ)グルコピラノシドと称されることもある。「1−O−D−グルコピラノシルグリセロール組成物」は、このような1−O−D−グルコピラノシルグリセロールを含有し、次に述べる2−O−D−グルコピラノシルグリセロール組成物との区別のために2−O−D−グルコピラノシルグリセロールを含有しない組成物を指す用語である。
式(1)中の*印を付けた2位の炭素原子は不斉炭素原子であり、光学異性体、すなわち(2R)体および(2S)体が存在する。
式(1)中のnは糖縮合度であり、1以上の整数を表す。後述するような製造方法によって得られる糖組成物中の化合物については、nは通常1〜6の整数、ほとんどは1〜4の整数であり、特にnが1の化合物が糖組成物中に多く存在している。
2−O−D−グルコピラノシルグリセロールは、式(2)で表される化合物、すなわち2−O−(α−またはβ−)D−(モノまたはポリ)グルコピラノシルグリセロールの総称である。当該化合物は2−O−(α−またはβ−)D−ジヒドロキシプロピル(モノまたはポリ)グルコピラノシドと称されることもある。「2−O−D−グルコピラノシルグリセロール組成物」は、このような2−O−D−グルコピラノシルグリセロールを含有し、前述した1−O−D−グルコピラノシルグリセロール組成物との区別のために1−O−D−グルコピラノシルグリセロールを含有しない組成物を指す用語である。
式(2)中のmは糖縮合度であり、1以上の整数を表す。後述するような製造方法によって得られる糖組成物中の化合物については、mは通常1〜6の整数、ほとんどは1〜4の整数であり、特にmが1の化合物が糖組成物中に多く存在している。
式(1)および(2)中の波線は、グリセリンの水酸基が、α−D−グルコピラノシル基の1位の水酸基と反応して結合していてもよいし(α結合)、β−D−グルコピラノシル基の1位の水酸基と反応して結合していてもよい(β結合)ことを表す。
式(1)および(2)中、nおよびmが2以上である場合、グルコピラノシル基同士の結合様式は特に限定されるものではなく、α1−4結合、β1−4結合、α1−6結合、β1−6結合、α1−2結合、β1−2結合、α1−3結合およびβ1−3結合からなる群より選ばれる少なくとも1種で連結していればよい。例えば、後述するような酵素合成法において原料として澱粉等を用いた場合は、通常、グルコピラノシル基同士がα1−4結合で連結した生成物が得られ、n=1である1−O−もしくは2−O−α−D−モノグルコピラノシルグリセロールだけでなく、n=2である1−O−もしくは2−O−α−D−ジグルコピラノシルグリセロール(1−O−もしくは2−O−α−D−マルトシルグリセロール)、n=3である1−O−もしくは2−O−α−D−トリグルコピラノシルグリセロール(1−O−もしくは2−O−α−D−マルトトリオシルグリセロール)などが生成する。しかし、有機合成法を用いた場合は、波線がα結合を表すかβ結合を表すかにかかわらず、グルコピラノシル基同士のほとんどはα1−4結合、β1−4結合、α1−6結合またはβ1−6結合によって結合している(α1−2結合、β1−2結合、α1−3結合またはβ1−3結合は極めて少ない)ものと推測される。
本発明のD−グルコピラノシルグリセロール組成物は、少なくとも、1−O−α−D−モノグルコピラノシルグリセロール(化合物1A、「1α体」と称することもある。)、1−O−β−D−モノグルコピラノシルグリセロール(化合物1B、「1β体」と称することもある。)、2−O−α−D−モノグルコピラノシルグリセロール(化合物2A、「2α体」と称することもある。)および2−O−β−D−モノグルコピラノシルグリセロール(化合物2B、「2β体」と称することもある。)を含有する。本明細書中では、これら4種の化合物を「特定D−グルコピラノシルグリセロール」と称することもある。化合物1Aは式(1)において波線がα結合を表しnが1である化合物、化合物1Bは式(1)において波線がβ結合を表しnが1である化合物、化合物2Aは式(2)において波線がα結合を表しnが1である化合物、化合物2Bは式(2)において波線がβ結合を表しnが1である化合物に、それぞれ相当する。
本発明において、化合物1Aおよび化合物1Bの合計質量(S1)と、化合物2Aおよび化合物2Bの合計質量(S2)の比率は、通常80:20〜90:10であり、好ましくは82:18〜88:12であり、より好ましくは83:17〜87:13(いずれもS1とS2の合計を100とする。)。
また、化合物1Aおよび化合物2Aの合計質量(SA)と、化合物1Bおよび化合物2Bの合計質量(SB)の比率は、通常55:45〜70:30であり、好ましくは60:40〜65:35であり、より好ましくは62:38〜63:37である(いずれもSAとSBの合計を100とする。)。
本発明のD−グルコピラノシルグリセロール組成物は、化合物1A、1B、2Aおよび2B以外の化合物、たとえば下記式(3)で表される1,2−O−D−グルコピラノシルグリセロール、下記式(4)で表される1,3−O−D−グルコピラノシルグリセロール、下記式(5)で表される1,2,3−O−D−グルコピラノシルグリセロールなどの、他のD−グルコピラノシルグリセロールを含有していてもよい。
式(3)中のmおよびn、式(4)中のnおよびl、ならびに式(5)中のl、mおよびnは糖縮合度であり、それぞれ独立に1以上の整数を表す。式(3)、(4)および(5)中の波線は、それぞれ独立して、式(1)および(2)中の波線と同様に、グリセリンの水酸基が、α−D−グルコピラノシル基の1位の水酸基と反応して結合していてもよいし、β−D−グルコピラノシル基の1位の水酸基と反応して結合していてもよいことを表す。式(3)、(4)および(5)中、n、mおよびlが2以上である場合、式(1)および(2)中と同様、グルコピラノシル基同士は、α1−4結合、β1−4結合、α1−6結合、β1−6結合などで連結していてもよい。
本発明のD−グルコピラノシルグリセロール組成物は、さらにD−グルコピラノシルグリセロール以外の化合物、例えば水や、有機合成法によりD−グルコピラノシルグリセロールを調製する際に混入することのある未反応物または反応副生物(不純物)をさらに含有していてもよい。
前記不純物としては、D−グルコピラノシルグリセロールを合成するための一方の原料として配合されるグリセリンおよびそれに由来する反応副生物、たとえばエタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、ジグリセリン、ポリグリセリン等のアルコールが挙げられる。
なお、グリセリンは飲食品、調味料、化粧品等への配合量が制限される場合がある。そのため、本発明のD−グルコピラノシルグリセロール組成物をそれらの製品の製造に用いる場合、有機合成法によって得られるD−グルコピラノシルグリセロール組成物中に残存するグリセリンの割合は、D−グルコピラノシルグリセロール組成物中の全固形分(水を除く成分)に対して、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。一方、グリセリンの配合量が特に問題とならない場合は、D−グルコピラノシルグリセロール組成物中の全固形分に対して、20質量%以上であってもよい。
また、前記不純物としては、D−グルコピラノシルグリセロールを合成するためのもう一方の原料として配合されるグルコース源およびそれに由来する反応副生物、たとえば、グルコース源が二糖以上の糖である場合にその分解により生じた糖や、そのような糖同士が反応して副生した糖なども挙げられる。
D−グルコピラノシルグリセロール組成物の形態及び純度(水分や残存した原料、副生物等を含む組成物中の成分全体の質量に対する、前述したような4種の特定D−グルコピラノシルグリセロールの合計質量の比率=含有率)は特に限定されるものではない。D−グルコピラノシルグリセロール組成物の形態としては、例えば、水溶液、水溶液を濃縮した水あめ状の高粘度溶液などが挙げられる。D−グルコピラノシルグリセロール組成物の純度は10重量%以上が好ましく、例えば、前記高粘度溶液中のD−グルコピラノシルグリセロールの純度は40重量%程度またはそれ以上とすることができる。
(D−グルコピラノシルグリセロール組成物の製造方法)
D−グルコピラノシルグリセロール組成物は、酵素法、有機合成法などの公知の手法により製造することができる。本発明のD−グルコピラノシルグリセロール組成物は、そのような公知の手法を適切な条件下で行うことにより一段階で製造することもできるし、公知の手法により得られたD−グルコピラノシルグリセロール(化合物)ないしD−グルコピラノシルグリセロール組成物同士を混合することで調製することもできる。製造条件や混合割合を調節することにより、様々な組成の本発明のD−グルコピラノシルグリセロール組成物を得ることができる。
たとえば、特開平11−0222496号公報(特許文献1)に記載されているような酵素法を用いることにより、1−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール(2R体および2S体)ならびに2−O−α−D−グルコピラノシルグリセロールを主成分とする組成物(本発明におけるα−D−グルコピラノシルグリセロール組成物)が得られる。一方で、de Roode et al(Biotechnology and Bioengineering, 72(5), 2001)に記載されている酵素法を用いることによっても、1−O−β−D−グルコピラノシルグリセロール(2R体と2S体の混合物)および2−O−β−D−グルコピラノシルグリセロールを主成分とする組成物(本発明におけるβ−D−グルコピラノシルグリセロール組成物)が得られる。さらに、Albini et al.(Synthetic communications, 24(12), 1651-1661, 1994)に記載されている有機合成法を用いることにより、1−O−β−D−グルコピラノシルグリセロール(当該文献中では3−O−β−D−グルコピラノシルグリセロールと表記)(2R体と2S体の混合物)および2−O−β−D−グルコピラノシルグリセロールをそれぞれ独立して得ることができ、したがってこれらの化合物を主成分とする組成物(本発明におけるβ−D−グルコピラノシルグリセロール組成物)も調製することができる。これらのα−D−グルコピラノシルグリセロール組成物およびβ−D−グルコピラノシルグリセロール組成物を、本発明における合計質量比S1:S2およびSA:SBの条件を満たすように混合すれば、本発明のD−グルコピラノシルグリセロール組成物を調製することができる。
また、公知の方法を用いることにより、1−O−α−D−グルコピラノシルグリセロールおよび1−O−β−D−グルコピラノシルグリセロールを主成分とする組成物(本発明における1−O−D−グルコピラノシルグリセロール組成物)と、2−O−α−D−グルコピラノシルグリセロールおよび2−O−β−D−グルコピラノシルグリセロールを主成分とする組成物(本発明における2−O−D−グルコピラノシルグリセロール組成物)とのそれぞれを得ることも可能である。たとえば、上述した特開平11−0222496号公報(特許文献1)に記載された酵素法により得られる組成物から、1−O−α−D−グルコピラノシルグリセロールおよび2−O−α−D−グルコピラノシルグリセロールをそれぞれ分画することができ、またde Roode et al.の文献に記載された酵素法により得られる組成物から、1−O−β−D−グルコピラノシルグリセロールおよび2−O−β−D−グルコピラノシルグリセロールをそれぞれ分画することができるので、各精製物を混合することにより、1−O−D−グルコピラノシルグリセロール組成物および2−O−D−グルコピラノシルグリセロール組成物を調製することができる。また、特表2012−500781および特表2012−506882号公報に記載されているように、2−O−α−D−グルコシルグリセロールおよび2−O−β−D−グルコシルグリセロールは、それぞれ特定の細菌、たとえばシネコシスティス属の藍色細菌(シアノバクテリア)から得ることができ、それらを混合することにより2−O−D−グルコピラノシルグリセロール組成物を調製することもできる。このようにして調製可能な1−O−D−グルコピラノシルグリセロール組成物および2−O−D−グルコピラノシルグリセロール組成物を、本発明における合計質量比S1:S2およびSA:SBの条件を満たすように混合すれば、本発明のD−グルコピラノシルグリセロール組成物を調製することができる。
さらに、有機合成法を用いれば、本発明における合計質量比S1:S2およびSA:SBの条件を満たす、4種の特定グルコピラノシルグリセロールを含有するD−グルコピラノシルグリセロール組成物を製造することもできる。このような有機合成法は、グルコース源とグリセリンとを酸性触媒を用いて反応させることによりD−グルコピラノシルグリセロールを合成する工程(グリコシル化工程)および酸性触媒の中和剤をグルコシル化工程の反応系内に添加して反応を停止させる工程(反応停止工程)を含み、必要に応じてさらに、残存グリセリン、残存グルコース源、副生物等を除去するための精製工程(蒸留工程、脱色工程等)や、粘度を低下させてハンドリング性を向上させるための水溶液調製工程などを含んでいてもよい。
有機合成法としては、たとえば特開2011−236152号公報(特許文献3)に記載されている製造方法を用いることができる。この製造方法は、グルコース源とグリセリンとを酸性触媒を用いて反応させる工程を有し、得られる糖組成物中の成分比率を調節するため、前記グルコース源のグルコース換算の仕込み量と前記グリセリンの仕込み量とのモル比を特定の範囲に調節する。前記グルコース源と前記グリセリンとの反応は、反応系内の水を除去して反応性を向上させることができるよう、真空下で行うことが好ましい。さらに、前記グルコース源と前記グリセリンとを反応させて得られた反応生成物から、蒸留により前記グリセリンを除去する工程を有し、蒸留時の熱による着色を抑制するため、前記蒸留をpH(25℃)5.0〜10.0の範囲内にて行うことが好ましい。前記蒸留時のpHの制御には、ハイドロタルサイト類を用いることが好ましい。
ここで、上記有機合成法においては、下記のようにして成分比率を調節することができる。
(1)グルコース源のグルコース換算の仕込み量に対する、グリセリンの仕込み量のモル比が高いほど、α−D−グルコピラノシルグリセロール組成物(1−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール等)およびβ−D−グルコピラノシルグリセロール組成物(1−O−β−D−グルコピラノシルグリセロール等)の合計に対するβ−D−グルコピラノシルグリセロール組成物の比率が高くなる傾向にある。
(2)グルコシル化工程での反応温度が低いほど、α−D−グルコピラノシルグリセロール組成物およびβ−D−グルコピラノシルグリセロール組成物の合計に対するβ−D−グルコピラノシルグリセロール組成物の比率が高くなる傾向にある。
(3)グルコシル化工程で使用する産生触媒量が少ないほど、α−D−グルコピラノシルグリセロール組成物およびβ−D−グルコピラノシルグリセロール組成物の合計に対するβ−D−グルコピラノシルグリセロール組成物の比率が高くなる傾向にある。
また、グルコシル化工程後または蒸留工程後、適宜精製処理を行うことで、糖組成物中のα−D−グルコピラノシルグリセロール組成物およびβ−D−グルコピラノシルグリセロール組成物の質量比などを調節することができる。同様に、精製処理を行うことで、糖組成物中の1−O−D−グルコピラノシルグリセロール組成物および2−O−D−グルコピラノシルグリセロール組成物の質量比などを調節することもできる。
一方、有機合成法としては、たとえば、国際公開公報を2013/061802号に記載されている製造方法を用いてもよい。この製造方法では、グリセリンとグルコースとを、スルホ基を有する酸型イオン交換樹脂の存在下加熱して反応させ、得られた反応液に塩基性化合物を添加し、pHを4〜7に調整した後、反応液からスルホ基を有する酸型イオン交換樹脂を除去する。必要に応じてさらに未反応のグリセリンの全部または一部を留去してもよい。このようなグリセリルグルコシド含有組成物の製造方法を利用することにより、D−グルコピラノシルグリセロール組成物が得られる。
さらに、必要に応じて、4種の特定D−グルコピラノシルグリセロールの純度を高めるために、上述のいずれかの製造方法により得られたD−グルコピラノシルグリセロール組成物の精製を行ってもよい。
− D−グルコピラノシルグリセロール組成物の安定化方法 −
本発明のD−グルコピラノシルグリセロール組成物の安定化方法の第1実施形態は、式(1A)で表される化合物および式(1B)で表される化合物を含有する1−O−D−グルコピラノシルグリセロール組成物と、式(2A)で表される化合物および式(2B)で表される化合物を含有する2−O−D−グルコピラノシルグリセロール組成物とを混合し、D−グルコピラノシルグリセロール組成物が調製されるようにする際に行われるものである。
本発明のD−グルコピラノシルグリセロール組成物の安定化方法の第2実施形態は、式(1A)で表される化合物および式(2A)で表される化合物を含有するα−D−グルコピラノシルグリセロール組成物と、式(1B)で表される化合物および式(2B)で表される化合物を含有するβ−D−グルコピラノシルグリセロール組成物とを混合し、D−グルコピラノシルグリセロール組成物が調製される際に行われるものである。
上記混合は、第1実施形態および第2実施形態ともに、式(1A)で表される化合物および式(1B)で表される化合物の合計質量(S1)と、式(2A)で表される化合物および式(2B)で表される化合物の合計質量(S2)の比率が80:20〜90:10、好ましくは82:18〜88:12、より好ましくは83:17〜87:13(S1とS2の合計を100とする。)であり、かつ
式(1A)で表される化合物および式(2A)で表される化合物の合計質量(SA)と、式(1B)で表される化合物および式(2B)で表される化合物の合計質量(SB)の比率が55:45〜70:30、好ましくは60:40〜65:35、より好ましくは62:38〜63:37(SAとSBの合計を100とする。)となるように行われる。
このような条件を満たすことにより、第1実施形態では混合前の1−O−D−グルコピラノシルグリセロール組成物よりも、また第2実施形態では混合前のα−D−グルコピラノシルグリセロール組成物よりも、安定性が向上したD−グルコピラノシルグリセロール組成物が得られる。
本発明のD−グルコピラノシルグリセロール組成物の安定化方法に係る混合は、たとえば、前述したような本発明のD−グルコピラノシルグリセロール組成物を調製する際に、原料となる2種類の組成物を混合することによって実施されるものである。
− 安定性の向上 −
4種類の特定D−グルコピラノシルグリセロール(1−O−α−D−モノグルコピラノシルグリセロール、1−O−β−D−モノグルコピラノシルグリセロール、2−O−α−D−モノグルコピラノシルグリセロールおよび2−O−β−D−モノグルコピラノシルグリセロール)を特定の合計質量比S1:S2および/またはSA:SBの条件を満たすよう含有している本発明のD−グルコピラノシルグリセロール組成物は、そのような条件を満たさない従来のD−グルコピラノシルグリセロール組成物、たとえば前述したような1−O−D−グルコピラノシルグリセロール組成物やα−D−グルコピラノシルグリセロール組成物と比較して、安定性が向上している。また、本発明のD−グルコピラノシルグリセロール組成物の安定化方法も、上記と同様に、D−グルコピラノシルグリセロール組成物の安定性を従来よりも向上させることができる。
「安定性が向上している」とは、具体的には、所定の温度、pH、酵素処理、またはその他の条件下で所定の時間ないし期間経過させた際に、本発明のD−グルコピラノシルグリセロール組成物中の特定D−グルコピラノシルグリセロールの残存率が、従来のD−グルコピラノシルグリセロール組成物中の特定D−グルコピラノシルグリセロールの残存率よりも高いことを意味する。なお、「残存率」は、基準となる温度、pH、酵素処理、またはその他の条件下で所定の時間ないし期間経過させた際の特定D−グルコピラノシルグリセロールの質量(2種以上の場合はそれらの合計質量)に対する、所定の温度、pH、酵素処理、またはその他の条件下で前記基準と同じ時間ないし期間経過させた後の特定D−グルコピラノシルグリセロールの質量の比率を意味する。
安定性の向上の効果に関する、温度、pH、酵素処理、またはその他の条件や、経過させる時間ないし期間は、D−グルコピラノシルグリセロール組成物の用途を考慮して、目的とする効果が得られるものであればよく、一概に限定されるものではない。
一例として、本発明のD−グルコピラノシルグリセロール組成物は、比較的高温(例えば60℃)における安定性に優れている。特に、その温度においてpHが2以下(例えばpH1〜2)の場合、長期間(例えば60日)経過させた際の残存率は、前述したような従来品の残存率よりも高い。また、その温度においてpHが4以上(例えばpH4〜10)の場合も、残存率は90%以上ないし100%近くにまで達し、従来品よりも高い。このようなことから、本発明におけるpHに対する安定性は、好ましくはpHが1〜10、より好ましくはpHが2〜10の範囲において発揮されるものと言える。
また、本発明のD−グルコピラノシルグリセロール組成物は、酵素処理に対する安定性にも優れている。酵素処理は、たとえばグルコアミラーゼ(EC 3.2.1.3)、トランスグルコシダーゼ(EC 3.2.1.20)を用いた処理である。
グルコアミラーゼは、一般的にデンプンの構成要素であるアミロースとアミロペクチンのα−1,4グルコシド鎖を非還元性末端からグルコース単位で切断するエキソ型酵素であり、またアミロペクチンやグリコーゲンにあるα−1,6結合も切断する。また、トランスグルコシダーゼはα−グルコシダーゼの一種であり、基質の非還元末端から加水分解によりグルコースを遊離する作用があるが、基質濃度が高い条件では加水分解ではなくグルコースの転移反応を行うためトランスグルコシダーゼとも言われている。トランスグルコシダーゼは、α−1,6−グルコシル転移型、α−1,4−グルコシル転移型、ならびにα−1,2およびα−1,3−グルコシル転移型に大きく分類される。
本発明においては、グルコアミラーゼまたはトランスグルコシダーゼは、1−O−α−D−(モノまたはポリ)グルコピラノシルグリセロールおよび2−O−α−D−(モノまたはポリ)グルコピラノシルグリセロールにおけるグリセリンに結合したα−D−グルコピラノシル基を切断する作用、ならびに1−O−α−D−ポリグルコピラノシルグリセロール、1−O−β−D−ポリグルコピラノシルグリセロール、2−O−α−D−ポリグルコピラノシルグリセロールおよび2−O−β−D−ポリグルコピラノシルグリセロールにおけるα−1,4結合で互いに連結しているα−D−グルコピラノシル基を切断する作用を有する。本発明においては、このような作用を有する酵素処理に対する安定性を向上させることができる。
− 用途 −
本発明のD−グルコピラノシルグリセロール組成物は、従来、1−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール(化合物1A)、1−O−β−D−グルコピラノシルグリセロール(化合物1B)、2−O−α−D−モノグルコピラノシルグリセロール(化合物2A)、2−O−β−D−モノグルコピラノシルグリセロール(化合物2B)などのD−グルコピラノシルグリセロールまたはそれらを含有する組成物が用いられていた用途と同等の用途を有し、それらの一部または全部に代えて用いることができる。
たとえば、化合物1Aおよび化合物2Aを含有するα−D−グルコピラノシルグリセロールは、非齲蝕性および難消化性を有する甘味料(剤)、呈味改良剤または矯味剤、あるいは保湿剤などとして利用することができる(特許文献1:特開平11−222496号公報参照)。化合物2Bも特に好ましい保湿剤として利用することができる(特許文献2;特開平9−124457号公報参照)。化合物1Aおよび1Bを含有する糖組成物も好ましい保湿剤として利用することができる(特許文献3:特開2011−236152号公報)。本発明のD−グルコピラノシルグリセロール組成物もそれらと同様に、甘味料(剤)、呈味改良剤または矯味剤、あるいは保湿剤として利用することが好適である。
上記のような用途において、本発明のD−グルコピラノシルグリセロール組成物は、各種の製品、例えば、飲食品(飲料、冷菓、デザート、菓子、レトルト食品、インスタント食品、調味料等)や、化粧品、医薬部外品、その他の日用生活品(オイル、クリーム、ローション、スプレー、エアゾール、スティック、口紅、化粧水、シャンプー、リンス、トリートメント、石けん、ボディソープ、ハンドソープ、マウスウォッシュ、練り歯磨き、芳香剤、アロマキャンドル、内服液等)などの製品に配合することができる。
本発明のD−グルコピラノシルグリセロール組成物を配合した製品は、それを配合していない従来の製品と基本的には同様の製造方法により製造することができ、必要に応じて、本発明のD−グルコピラノシルグリセロール組成物の特性、すなわち温度やpHに対する安定性の向上に応じて製造条件を調節することもできる。
(HPLC測定条件1:1位体・2位体分離可能)
・検出器:Shodex RI−210
・カラム:Shodex Asahipak NH2P−50 4E
・カラム温度:40℃
・移動相:88%アセトニトリル(試料1);85%アセトニトリル(試料2および3)
・流速:2.0ml/min
(HPLC測定条件2:α体・β体分離可能)
・検出器:Shodex RI−210
・ポンプ:PU730
・カラム:SHISEIDO C18(4.6 I.D.×250mm) Cat No.61504
・カラム温度:40℃
・移動相:水
・収取時間:10min
・流速:1.0ml/min
・注入量:10μl
(HPLC測定条件3:1α体・1β体・2α体・2β体分離可能)
・検出器:Shodex RI−210
・カラム:NH2−MS(ナカライテクノス)
・移動相:90%アセトニトリル
・流速:2.5ml/min
(HPLC測定条件4:G1体、G2体、G3体分離可能)
・検出器:Shodex RI−210
・カラム:SHIMADZU Shim−Pack SCR−101N
・カラム温度:40℃
・移動相:蒸留水
・流速:0.570ml/min
・注入量:20μl
(実施例で用いた試料)
試料1:「αGG(登録商標)−L」
試料1として用いた辰馬本家酒造(株)の商品「αGG−L」は、4種の特定D−グルコピラノシルグリセロールのうち化合物1A:1−O−α−D−グルコピラノシルグリセロールおよび化合物2A:2−O−α−D−グルコピラノシルグリセロールの2種のみを含有する、α−D−グルコピラノシルグリセロール組成物に相当する組成物である(HPLCにより確認、クロマトグラムは図示せず)。前記測定条件1に従って測定された、試料1中の化合物1Aおよび2Aの質量比(S1:S2)は87:13である。
試料2:「SPGG」
グリセリンとスクロースを1:1の割合で混合し、適量の水を加えてpH5.5に調整した後、キッコーマンバイオケミファ(株)製のシュークロースホスホリラーゼ(EC2.4.1.7)を加えて30℃で反応させた。反応液に酵母を加えてフルクトースを除去し、続いて酵母を除去した。試料2として用いた、このようにして調製された「SPGG」は、4種の特定D−グルコピラノシルグリセロールのうち化合物1A:1−O−α−D−グルコピラノシルグリセロールおよび化合物2A:2−O−α−D−グルコピラノシルグリセロールの2種のみを含有する、α−D−グルコピラノシルグリセロール組成物に相当する組成物である(HPLCにより確認、クロマトグラムは図示せず)。前記HPLC測定条件1に従って測定された、試料2中の化合物1Aおよび2Aの質量比(S1:S2)は9:91である。
試料3:「コスアルテ-2G(登録商標)」
東洋精糖(株)製の商品「コスアルテ-2G」は、本発明に用いる4種の特定D−グルコピラノシルグリセロール(化合物1A:1−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール、化合物1B:1−O−β−D−グルコピラノシルグリセロール、化合物2A:2−O−α−D−グルコピラノシルグリセロールおよび化合物2B:2−O−β−D−グルコピラノシルグリセロールの混合物)、水およびグリセリンを含有する組成物である。この商品中の、4種の特定D−グルコピラノシルグリセロールの純度(水およびグリセリンも含めた組成物中の成分全体の質量に対する、4種の特定D−グルコピラノシルグリセロールの合計質量の比率)は、約70〜78%、平均73.5%であり、また前述したような合計質量比S1:S2はおよそ86:14、合計質量比SA:SBはおよそ62:38である。この商品から試料3として6サンプル(試料3a〜3f)を選び、実施例に用いた。これらのサンプルの、前記HPLC測定条件1および2によりそれぞれ測定した合計質量比S1:S2および合計質量比SA:SBは下記表の通りである。また、前記HPLC測定条件1、2および3でそれぞれ測定した、試料3のサンプルのクロマトグラムの例を図1[A]、[B]および[C]に示す。さらに、前記HPLC測定条件4で測定した、試料3のサンプルのクロマトグラムの例を図2に示す。
(実施例で用いた酵素)
酵素1:「グルターゼS」
エイチビィアイ(株)製の商品「グルターゼS」は、クモノスカビ(Rhizopus sp.)由来のグルコアミラーゼである。
酵素2:「スミチーム」
新日本化学工業(株)製の商品「スミチーム」は、クモノスカビ(Rhizopus oryzae)由来のグルコアミラーゼである。
酵素3:トランスグルコシダーゼ
天野エンザイム(株)製の商品「トランスグルコシダーゼL「アマノ」」は、クロコウジカビ(Aspergillus niger)由来のトランスグルコシダーゼである。
[実施例1]温度およびpHに対する安定性
試料1〜3のそれぞれを1%(w/v)となるよう、pHを1,2,4,7および10に調節した緩衝液に溶解させた溶液を調製し、60℃で静置した。14日目、31日目および61日目に、前記HPLC測定条件1で、各試料溶液中に存在する4種の特定D−グルコピラノシルグリセロール(1−O−α−D−モノグルコピラノシルグリセロール、1−O−β−D−モノグルコピラノシルグリセロール、2−O−α−D−モノグルコピラノシルグリセロールおよび2−O−β−D−モノグルコピラノシルグリセロール)の合計量を、クロマトグラム中の「1位体」および「2位体」のピークの合計面積に基づいて測定した。各試料溶液を調製直後から4℃で保存し、前記の日にちに同様に測定した合計量を基準値(100%)としたときの、その基準値に対する前記測定値の比率を残存率として算出した。結果を図3に示す。61日目における本発明品である「コスアルテ-2G」(試料3)の残存率は、pH1および2については他の2つの試料よりも高く、またpH4,7および10については「αGG−L」よりも高く、pHに対する安定性に全体的に優れていることが示されている。
[実施例2]温度および酵素に対する安定性
試料1〜3のそれぞれを1%(w/v)となるよう、イオン交換水に溶解させた溶液を調製し、酵素1〜3のそれぞれを適量加えた後、60℃で24時間反応させた。その後、前記HPLC条件1で、実施例1と同様に残存率を算出した。結果を図4に示す。本発明品である「コスアルテ-2G」(試料3)の残存率は他の2つの試料よりも高く、酵素処理に対する安定性に優れていることが示されている。
[参考例]
試料3(コスアルテ-2G)および酵素3(トランスグルコシダーゼ)を用いた実施例2において、前記HPLC測定条件4により、前述したようなグリセリンへのグルコピラノシル基の結合数が1である化合物(G1体)についてのみならず、その結合数が2である化合物(G2体)および3である化合物(G3体)についても定量し、残存率を算出した。結果を図5に示す。G1体およびG2体の残存率が約80%であるのに対し、G3体の残存率はそれよりも高くほぼ100%(106%)であった。
これらの結果から、G2体の化合物には、グルコピラノシル基が直列に2つ結合している化合物だけでなく、グルコピラノシル基がグリセリンの1位の水酸基および2位の水酸基に並列に結合している化合物が存在すること、G3体の化合物には、グルコピラノシル基が直列に3つ結合している化合物だけでなく、グルコピラノシル基がグリセリンの1位の水酸基、2位の水酸基および3位の水酸基に並列に結合している化合物が存在することが考えられる。もしもG3体が直列のみで結合しているとすると、エキソ型であるトランスグルコシダーゼを作用させた場合、グリセリンとの立体構造の関係から分解を受けやすいと思われるので、G3体の残存率は低くなる(図5に示されているほど高くはならない)はずである。ところが、G3体の残存率は100%程度であるので、これはG3体のほとんどが、グルコピラノシル基がグリセリンの1,2,3位の水酸基に並列に結合していることにより、立体構造的に酵素の影響を受けにくいものであるためだと考えられる。立体構造の違いにより酵素の影響が異なることは、実施例2においてトランスグルコシダーゼにより処理した場合の結果からも推察される。グリセリンの1位への結合の多い(約85%)試料3(コスアルテ−2G)は残存率が比較的高く、グルコピラノシル基の切断のみならず分子内転移しているため特定グルコピラノシルグリセロールの減少とはなっていない可能性があることが示唆されたのに対し、グリセリンの2位への結合の多い(約80%)試料2(SPGG)では、分子内転移が起こりにくいため特定D−グルコピラノシルグリセロールの減少幅が大きくなっていることが示唆されている。
以上より、本発明のグルコピラノシルグリセロール組成物は、結合様式の異なるグルコピラノシルグリセロールが混在することにより、熱、酵素に対する安定性が改善されているものと考えられる。そのため、飲食品、化粧品、日用生活品等における経時変化を受けにくくなり、ひいては着色、変色、異臭等が低減することから、商品のシェルフライフが延びることが期待できる。

Claims (9)

  1. 下記式(1A)で表される化合物、下記式(1B)で表される化合物、下記式(2A)で表される化合物および下記式(2B)で表される化合物を含有するD−グルコピラノシルグリセロール組成物であって、
    下記式(1A)で表される化合物および下記式(1B)で表される化合物の合計質量(S1)と、下記式(2A)で表される化合物および下記式(2B)で表される化合物の合計質量(S2)の比率が、80:20〜90:10(S1とS2の合計を100とする。)であり、かつ
    下記式(1A)で表される化合物および下記式(2A)で表される化合物の合計質量(SA)と、下記式(1B)で表される化合物および下記式(2B)で表される化合物の合計質量(SB)の比率が、55:45〜70:30(SAとSBの合計を100とする。)であることを特徴とする、D−グルコピラノシルグリセロール組成物。
  2. さらにグリセリンを含有する、請求項1に記載のD−グルコピラノシルグリセロール組成物。
  3. 請求項1または2に記載のD−グルコピラノシルグリセロール組成物を含有する、化粧品または医薬部外品。
  4. 上記式(1A)で表される化合物および上記式(1B)で表される化合物を含有する1−O−D−グルコピラノシルグリセロール組成物と、上記式(2A)で表される化合物および上記式(2B)で表される化合物を含有する2−O−D−グルコピラノシルグリセロール組成物とを、
    上記式(1A)で表される化合物および上記式(1B)で表される化合物の合計質量(S1)と、上記式(2A)で表される化合物および上記式(2B)で表される化合物の合計質量(S2)の比率が、80:20〜90:10(S1とS2の合計を100とする。)であり、かつ
    上記式(1A)で表される化合物および上記式(2A)で表される化合物の合計質量(SA)と、上記式(1B)で表される化合物および上記式(2B)で表される化合物の合計質量(SB)の比率が、55:45〜70:30(SAとSBの合計を100とする。)である、D−グルコピラノシルグリセロール組成物が調製されるよう混合することにより、
    前記1−O−D−グルコピラノシルグリセロール組成物よりも、上記式(1A)および(1B)で表される化合物の安定性を向上させることを特徴とする、D−グルコピラノシルグリセロール組成物の安定化方法。
  5. 上記式(1A)で表される化合物および上記式(2A)で表される化合物を含有するα−D−グルコピラノシルグリセロール組成物と、上記式(1B)で表される化合物および上記式(2B)で表される化合物を含有するβ−D−グルコピラノシルグリセロール組成物とを、
    上記式(1A)で表される化合物および上記式(1B)で表される化合物の合計質量(S1)と、上記式(2A)で表される化合物および上記式(2B)で表される化合物の合計質量(S2)の比率が、80:20〜90:10(S1とS2の合計を100とする。)であり、かつ
    上記式(1A)で表される化合物および上記式(2A)で表される化合物の合計質量(SA)と、上記式(1B)で表される化合物および上記式(2B)で表される化合物の合計質量(SB)の比率が、55:45〜70:30(SAとSBの合計を100とする。)である、D−グルコピラノシルグリセロール組成物が調製されるよう混合することにより、
    前記α−D−グルコピラノシルグリセロール組成物よりも、上記式(1A)および(2A)で表される化合物の安定性を向上させることを特徴とする、D−グルコピラノシルグリセロール組成物の安定化方法。
  6. 前記安定性がpHに対する安定性である、請求項4または5に記載の安定化方法。
  7. 前記pHが1〜10である、請求項6に記載の安定化方法。
  8. 前記安定性が酵素に対する安定性である、請求項4または5に記載の安定化方法。
  9. 前記酵素がグルコアミラーゼまたはトランスグルコシダーゼである、請求項8に記載の安定化方法。
JP2014217231A 2014-10-24 2014-10-24 D−グルコピラノシルグリセロール組成物およびその安定化方法 Pending JP2016084299A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014217231A JP2016084299A (ja) 2014-10-24 2014-10-24 D−グルコピラノシルグリセロール組成物およびその安定化方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014217231A JP2016084299A (ja) 2014-10-24 2014-10-24 D−グルコピラノシルグリセロール組成物およびその安定化方法

Related Child Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016182988A Division JP2017031181A (ja) 2016-09-20 2016-09-20 D−グルコピラノシルグリセロール組成物の安定化方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016084299A true JP2016084299A (ja) 2016-05-19
JP2016084299A5 JP2016084299A5 (ja) 2016-11-10

Family

ID=55972446

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014217231A Pending JP2016084299A (ja) 2014-10-24 2014-10-24 D−グルコピラノシルグリセロール組成物およびその安定化方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2016084299A (ja)

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013170172A (ja) * 2012-02-17 2013-09-02 Toyo Seito Kk ラジカルによる蛋白質の変性および/または分解を抑制するための変性・分解抑制剤、それを含む変性・分解抑制剤含有組成物および、それを用いたラジカルによる蛋白質の変性および/または分解の抑制方法。

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013170172A (ja) * 2012-02-17 2013-09-02 Toyo Seito Kk ラジカルによる蛋白質の変性および/または分解を抑制するための変性・分解抑制剤、それを含む変性・分解抑制剤含有組成物および、それを用いたラジカルによる蛋白質の変性および/または分解の抑制方法。

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
JPN6016041804; 東洋精糖株式会社: 'コスアルテーツージー COSARTE-2G' フレグランスジャーナル(2011年1月号) Vol.39,No.1, 20110115, p.108-109 *

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6457009B2 (ja) 分岐α−グルカン及びこれを生成するα−グルコシル転移酵素とそれらの製造方法並びに用途
EP1284286B1 (en) Alpha-isomaltosyltransferase, process for producing the same and use thereof
EP0387042B1 (en) Preparation and uses of alphaglycosyl rutin
JP4983258B2 (ja) イソサイクロマルトオリゴ糖及びイソサイクロマルトオリゴ糖生成酵素とそれらの製造方法並びに用途
EP1229112A1 (en) Alpha-isomaltosylglucosaccharide synthase, process for producing the same and use thereof
JP6962674B2 (ja) 分岐α−グルカン混合物シラップとその用途
US7223570B2 (en) Branched cyclic tetrasaccharide, process for producing the same, and use
JP4224302B2 (ja) イソマルトースの製造方法並びに用途
JP2823640B2 (ja) 腸内フローラ改善物質
JP4224401B2 (ja) イソマルトース及びイソマルチトールの製造方法とそれらの用途
JP2017031181A (ja) D−グルコピラノシルグリセロール組成物の安定化方法
JP2016084299A (ja) D−グルコピラノシルグリセロール組成物およびその安定化方法
JP4363967B2 (ja) 環状五糖及びそのグリコシル誘導体とそれらの製造方法並びに用途
JP5027395B2 (ja) 環状マルトシルマルトースの糖質誘導体とその製造方法並びに用途
EP3895711A1 (en) Cycloisomaltotetraose, cycloisomaltotetraose production enzyme, and production methods and uses thereof
Haewpetch et al. Enzymatic production and characterization of glucosyl-polyols
WO2023219487A2 (en) Glucosylated stevia compositions
US20060183714A1 (en) 3-Alpha-glycosyl alpha, alpha-trehalose compound, process for producing the same, and use

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160920

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160920

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20160920

A975 Report on accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971005

Effective date: 20161006

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20161101

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20170221