JP2016083702A - 連続鋳造鋳片の切断方法 - Google Patents

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Tetsushi Shoji
哲史 小路
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宏優 林
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Abstract

【課題】連続鋳造鋳片を切断して切り出されるスラブの端部に付着する溶断ノロの除去処理の対象領域を減少させ、除去処理の作業負担を低減できると共に、スラブの先端部又は尾端部に板厚変動を生じさせることなく、圧延設備や幅圧下設備の負担増加を回避できる。【解決手段】連続鋳造鋳片の切断方法は、連続鋳造鋳片3の上面を連続鋳造鋳片3の長手方向に垂直となる方向に沿って、選択的に切削して上面溝1を形成する工程と、上面溝1の底部に沿って連続鋳造鋳片3を溶断するとともに、この溶断によって生じる上流側の溶融物7及び下流側の溶融物8の高さを、連続鋳造鋳片3の上面以下の高さで上面溝1の内側に貯留させる工程と、を含み、溶融物7,8が連続鋳造鋳片3の上面に付着することを防止する。【選択図】図2

Description

本発明は、連続して鋳造された鋳片の切断方法に関する。
製鉄所では、連続して鋳造された連続鋳造鋳片(以下、単に「鋳片」ともいう。)を切断機によって所定の長さに切断して、連続鋳造スラブ(以下、単に「スラブ」ともいう。)を生産する連続鋳造工程が行われる。通常、鋳片の切断方法として、鋳片の上面上の所定の切断位置に溶断用のトーチからガスを噴射して溶断するガス溶断が行われる。溶断により、切断部における鋳片の端部及びスラブの端部のそれぞれの上下面及び端面には、溶断バリやノロ、溶融ダレと呼ばれる溶着物(以下、これらを総称して「溶断ノロ」という。)が付着する。
尚、以下の説明では、溶断処理によって鋳片が除去されて発生する生成物について、主に鋳片の溶断中で流動性が比較的高い状態のものを「溶融物」と称するとともに、溶断後で凝固して鋳片又はスラブの端部に付着した状態のものを「溶断ノロ」と称する。更に「溶断ノロ」のうち、これが主に長手方向端面に付着している場合を「端面ノロ」、スラブ端部の上面や下面に付着している場合を「上下面ノロ」と称する。
溶断ノロがスラブ端部に付着した状態のまま、後工程の圧延工程が施された場合、溶断ノロは粗圧延処理後のクロップ切断処理でも除去しきれず、結果、仕上圧延処理後に巻き取られた熱延コイルの端部に「ヘゲ」とよばれる欠陥として残る状態となる。ヘゲは熱延コイルの端部と完全に一体化した状態ではなく、その後、更に圧延されると熱延コイルの端部に不完全な圧着部をなす。更に熱延コイルを薄板へと圧延を進めると、この圧着部が熱延コイルの端部から剥離し、圧延ライン内の搬送ロールや圧延ロールの端部に噛み込まれたり、ロール表面を傷つけたりする。その後、更にめっき工程に進むと、この圧着部は、表面剥離等の不具合を生じさせる原因となる。一方、ヘゲが残らないようにクロップ切断する方法も考えられるが、その場合、例えば長手方向に300mm程度といった具合に相当長く切断する必要が生じ、歩留まりが悪化してしまう。
溶断ノロを除去する方法として、鋳片からスラブを切り出した後、スラブの切断部の端部の上下辺及び端面の計3箇所を対象領域とした上で、フライスカッターによりこれら3箇所を切削して面取りし、溶断ノロを除去する処理方法が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の発明では、3箇所の溶断ノロに対応して、同時に3台のフライスカッターにより別々に除去する方法と、1台のフライスカッターを上下及び左右方向に移動させ3箇所を順々に除去する方法の2通りの方法が開示されている。
また溶断ノロの付着を制御する方法として、スラブの切断予定位置に対応する下面に予め逆V字形状の溝を形成し、形成した溝を用いてガス溶断する処理方法が提案されている(特許文献2参照)。特許文献2に記載の発明では、鋳片を長手方向に分割する際、側面から見て逆V字形状のローラを鋳片の下面に下側から押し当てて、鋳片の長手方向(縦方向)に沿って移動させることで鋳片を塑性変形させ、移動の軌跡に沿って逆V字形状の溝を形成し、その後、形成した溝の上側から溝に沿ってガス溶断することにより、溶断厚さを小さくする。特許文献2では、ガス溶断厚さが小さくなることにより溶断速度が向上すると共に、ガス溶断時に発生するスラグ(溶断ノロ)を、溝の傾斜部に付着させるように制御することが企図されている。
特開2014−73507号公報 特開平08−281398号公報
しかし、特許文献1に記載の発明の3台のフライスカッターにより別々に除去する方法の場合、連続鋳造機の下流側であって熱間圧延設備の上流側に、3台のフライスカッターを配置することとなり、配置可能な空間は限られたスペースであることが多いため、レイアウトが困難になる。また特許文献1に記載の発明の1台のフライスカッターで面取りを行う場合、上下方向にフライスカッターの大きなストロークが生じるとともに加工パス数が多くなるため、耐久性の観点から、複数台のフライスカッターでローテーションを行う必要が生じる。よって設備投資が嵩むとともに、複数台のフライスカッターを配置するスペースが別途必要となる。またフライスカッターの加工速度を速めて加工時間を短縮し、作業効率の向上を図る場合、厳しい切削条件となるため、1台ではフライスカッターの寿命が短くなるという問題がある。そのため、溶断ノロを除去する処理の負担を低減できる技術が求められている。
また特許文献2に記載の技術を用いる場合、逆V字形状の溝をロールで形成するには、特許文献2の図3に示されたものと同様に、平滑部と逆V字形状の突起部とが隣接しているロールを用いる方法と、平滑部を有さず逆V字形状の突起部のみを有するロールを用いる方法とがある。いずれのロールを用いる方法であっても、ロールが鋳片の幅方向に横断走行すると、溝を形成するためにロールに押し出された鋳片の領域が溝の周囲に盛り上がれる。このとき、鋳片の溝掘り部分より長手方向先端側の領域は、鋳片を下側から支持して搬送する搬送ローラにより、所定の速度で移動するように一定の力で拘束されている。そのため、逆V字形状のロールの食い込みにより押し出された鋳片の一部の領域は、鋳片の長手方向に沿って吸収される量は少なくなる。すなわち鋳片は先端側に十分に伸びることはできない。
また鋳片の溝掘り部分より長手方向後端側の領域も、連続鋳造機から逐次的に流れ出てくる鋳片の領域に押し出されるので、ロールの食い込みにより押し出された鋳片の一部の領域は、鋳片の長手方向に沿って吸収される量は少なくなる。結果、鋳片の溝掘り部分から押し出され、溝の両側に盛り上がった領域により、切り出されたスラブの先端部及び後端部の厚みがロールの食い込み体積に応じて増加する。
元々、スラブの先端部が圧延設備の圧延ロールへ突入する時の圧延荷重は定常時に比べて高く、圧延ロールへの負荷が大きいため、先端部の板厚が増加すると、圧延ロール突入時の負荷が更に増大する。このことは、例えば粗圧延設備で圧延ロールを駆動する電動機や、電動機から圧延ロールまでの動力伝達機構といった設備の寿命の減少につながる。特にスピンドル部の応力増加による疲労からの設備寿命の減少は著しくなる。このように板厚の増加は、設備の劣化要因となるため許容することができない。
また近年、鋳造能率の改善を図るため、スラブの加熱後から粗圧延までの間にサイジングプレスなどの幅圧下設備をライン内に設け、連続鋳造機での鋳造幅を変更する作業を減少させるように操業する場合がある。このときスラブの先端部又は後端部の板厚が大きいと、幅圧下設備の負荷が増大するだけでなく、幅圧下時の板厚変動が大きくなって、幅圧下後のスラブの先端部及び後端部が非定常な形状に変形する場合がある。先端部の形状が変形したスラブを粗圧延すると、粗圧延設備にかかる負荷も増大する。また先端部及び後端部が変形したスラブにより、粗圧延設備における通板性が悪化するリスクが生じる。
更に加えて特許文献2に記載の発明の場合、溝を形成するのは鋳片の下面のみであるため、鋳片の上面は平坦なままであり、この上面に溶断トーチ等の火炎を噴射すると、溶融物が上面の噴射位置周辺に堆積し易くなり、スラブの切り出し後に上面ノロとして残存することを回避できない場合も生じる。
本発明は上記の問題に着目して為されたものであって、連続鋳造鋳片を切断して切り出されるスラブの端部に付着する溶断ノロの除去処理の対象領域を減少させ、除去処理の作業負担を低減できると共に、スラブの先端部又は尾端部に板厚変動を生じさせることなく、圧延設備や幅圧下設備の負担増加を回避できる技術を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の連続鋳造鋳片の切断方法に係るある態様は、連続鋳造鋳片の上面を、連続鋳造鋳片の長手方向に垂直となる方向に沿って、選択的に切削して上面溝を形成する工程と、上面溝の底部に沿って連続鋳造鋳片を溶断するとともに、この溶断によって生じる溶融物の高さを連続鋳造鋳片の上面以下の高さで上面溝の内側に貯留させる工程と、を含むことを要旨とする。
尚、本発明の連続鋳造鋳片の切断方法に係るある態様によれば、鋳片の上面を選択的に切削して溝を形成するため、鋳片の下面に例えば逆V字形状のローラを押し当てて変形させて溝を形成する場合に比べると、溝の切削による切り屑または切り粉が発生し、状況によってはこの切り屑または切り粉が、スラブ表面に付着することも生じる。しかし切り屑または切り粉は薄く細かいので、スラブを熱間圧延処理する前に加熱炉で高温に加熱した後に、スケールなどの酸化鉄となる。そして加熱後、搬送中にスラブに伝達される振動により、または圧延前のスラブの表面のデスケーリング(高圧水噴射)により、酸化鉄となった切り屑または切り粉はスラブ表層から剥がされることになるため、スラブを鋳片から切り出す際のスラブ表面への切り屑または切り粉の付着は、問題とならない。
したがって本発明の連続鋳造鋳片の切断方法によれば、連続鋳造鋳片を切断して切り出されるスラブの端部に付着する溶断ノロの除去処理の対象領域を減少させ、除去処理の作業負担を低減できる。また本発明の連続鋳造鋳片の切断方法によれば、スラブの先端部又は尾端部に板厚変動を生じさせることなく、圧延設備や幅圧下設備の負担増加を回避できる。
本発明の実施の形態に係る連続鋳造鋳片の切断方法が適用される連続鋳造設備の概略を模式的に示す側面図である。 図2(a)は切削された溝を説明する側面図であり、図2(b)は溶融される領域を模式的に説明する側面図であり、図2(c)は溶断中の溝の状態を模式的に説明する側面図である。 図3(a)〜(c)は、本発明の実施の形態に係る連続鋳造鋳片の切断方法を概略的に説明する斜視図である(その1)。 図4(a)〜(c)は、本発明の実施の形態に係る連続鋳造鋳片の切断方法を概略的に説明する斜視図である(その2)。 図5(a)及び図5(b)は比較例に係る連続鋳造鋳片の切断方法を概略的に説明する斜視図である。 図6(a)〜(c)は、本発明の第1変形例に係る連続鋳造鋳片の切断方法を概略的に説明する斜視図である(その1)。 図7(a)〜(c)は、本発明の第1変形例に係る連続鋳造鋳片の切断方法を概略的に説明する斜視図である(その2)。 図8(a)〜(c)は、本発明の第2変形例に係る連続鋳造鋳片の切断方法を概略的に説明する斜視図である。
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各装置や各部材の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。また以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」に、「右」が「左」になることは勿論である。
(連続鋳造鋳片の切断装置)
本発明の実施の形態に係る連続鋳造鋳片の切断方法に用いる切断装置は、図1に示すように、連続鋳造鋳片3(鋳片3)の出側である連続鋳造機の下流側(図1中の右側)に配置された切削装置10と、切削装置10より更に下流側に設けられた溶断装置20とを備える。
まず連続鋳造機では、溶鋼は、上流側(図1中の左上側)の取鍋31へ注入された後、タンディッシュ32において介在物等が分離・除去された上で鋳型へと注入される。溶鋼は鋳型33で冷却され凝固し、所定の形状に鋳込まれ、鋳片3として連続鋳造機の下流側へ連続的に送り出される。
送り出された鋳片3の端部が切断装置によって、搬送ロール34j−1,34,34j+1,…上で所定の寸法に切断されることによりスラブ4が形成される。切断は鋳片3の流れに併せて連続的に行われ、切り出されたスラブ4は、図1中の右向き矢印で示すように、後工程の熱間圧延工程に逐次的に送り込まれる。すなわち図1に例示する製鋼工程では、連続鋳造機による連続鋳造処理後、比較的高温を保ったままスラブ4を加熱炉に装入する方法や、スラブ4を再加熱することなく、熱間圧延設備に直接搬送して熱間圧延処理を行う直送圧延法(HDR:Hot Direct Rolling)が行われ、エネルギー効率の高い操業を行う場合がある。尚、切断後のスラブ4を冷却してストックヤードに貯蔵する等、HDR以外の処理工程が行われてもよい。
切削装置10は、直径0.5m〜1.5m程度の回転する鋸刃12と、鋸刃12を上下方向及び鋳片3の幅方向(図1の紙面の表側から裏側に貫通する向き)に移動自在にして、鋸刃12を回転可能に支持する支持装置11と、鋸刃12の回転軸(符号を不図示)に接続された図示しない駆動装置とを備えた、いわゆる鋸刃カッターである。尚、説明のため、図中では鋸刃12の刃先部の詳細な形状の図示は省略する。
鋸刃12の刃先部の先端部は、例えばタングステンカーバイド等の超硬素材、また廉価にはS50Cなどの炭素鋼でできており、刃先部が回転することによって、700〜800℃程度の高温の鋳片3の上面が切削される。回転する鋸刃12の刃先部の周速は、炭素鋼の場合、概ね1,000m/分以上であり、鋸刃12が高速回転することにより、鋳片3の上面に、図1に示すように、鋳片3の幅方向に沿った上面溝1が形成される。
鋸刃12の回転方向の垂直方向となる刃先部の断面形状を適宜変更することで、上面溝1の断面形状を設定することが可能である。上面溝1の断面形状は、U字型やV字型等適宜設定されてよいが、上面溝1の内側に鋳片3の溶断中に生じる溶融物を効率的に留める観点で、図2(a)に示すように、上面溝1の底部1aの上面はU字型がより好ましい。上面溝1をU字型に形成するためには、例えば、刃先部を厚み方向(鋳片3の搬送方向)から見た場合に略矩形状に形成されたチップ等を備えた刃先部を用いればよい。鋸刃12の刃先部の厚みは、所望の上面溝1の幅wに応じて設定される。
また切削装置10は図示しない冷却装置を備える。鋳片3の切削中は、被削材である鋳片3が高温であるとともに切削加工による熱が発生し、鋸刃12及び鋸刃12に近接する部位の温度が上昇する。そのため冷却装置により鋸刃12の冷却が行われる。冷却は、例えば鋸刃12に対して冷却水を噴射する等の方法により行われる。噴射される冷却水は、冷却水に接触する切削装置10の近くに位置する鋳片3及びスラブ4が、所定の温度以下に低下しない程度に調節されている。
また切削装置10は図示しない移動手段を備え、鋳片3の搬送速度(約2〜3m/分程度)と同期した速度で移動するように制御されている。すなわち鋳片3の走行途中に切削装置10も鋳片3と同方向に走行する走間切削が可能である。そのため切削装置10と鋳片3との相対速度は略ゼロ(零)であり、鋳片3が移動しても、回転する鋸刃12の位置が搬送方向にぶれ、上面溝1が歪むことがない。
尚、切削装置10としては鋸刃カッターに限定されず、鋳片3に窪みを有する溝を形成できる限り、エンドミル等の他の手段を用いてもよい。また砥石を回転させて研削するグラインダー加工であってもよい。ただし回転する鋸刃カッターの場合、加工速度の面で有利である。
上面溝1は、図2(a)に示すように、搬送テーブルと平行な水平面を有する底部1aと、底部1aの搬送方向の上流側の末端から垂直に立ち上がる第1側壁1bと、底部1aの搬送方向の下流側の末端から垂直に立ち上がる第2側壁1cと、を有する段差構造である。第1側壁1b及び第2側壁1cは、いずれも平坦面に形成され、互いに正対している。上面溝1は、鋳片3を切断してスラブ4を切り出す際の切断ラインをなすものであり、溶断の際には、底部1aの中央が鋳片3の幅方向に沿って溶断される。上面溝1の内側の空間に、溶断により生じる溶融物を貯留するので、鋳片3及びスラブ4の上面に溶断ノロが付着することを防止できる。上面溝1については、後で詳細に説明する。
溶断装置20は、一対のトーチ22a,22b(図3(c)参照)と、この一対のトーチ22a,22bを上下方向及び鋳片3の幅方向に移動自在に支持する支持装置21とを備える。一対のトーチ22a,22bは例えば、酸素とアセチレンガスの混合ガスを着火燃焼させ、一対のトーチ22a,22bのそれぞれの先端の火口から被溶断物に対して火炎を噴射できる構造のガス溶断トーチを用いることができる。尚、トーチに用いる可燃性のガスとしては、製鉄所内のコークス炉等の設備で発生する副生ガスに由来するガスを用いてもよい。一対のトーチ22a,22bは、支持装置21により上下方向に移動自在に支持され、一対のトーチ22a,22bと鋳片3との間隔が制御される。また一対のトーチ22a,22bは、いずれも鋳片3の幅方向に進退自在に支持され、互いに近接離間できるように構成されている(図4(a)及び図4(b)参照)。
また溶断装置20は、図3(c)において図示を省略した移動手段を備え、切削装置10と同様に、鋳片3の搬送速度と同期した速度で移動するように制御されている。溶断装置20と鋳片3との相対速度は略ゼロ(零)であるため、溶断ラインを上面溝1の内側からずらすことなく鋳片3を切断し、スラブ4を切り出すことができる。
(溝の構造)
次に、本発明の実施の形態に係る上面溝1の幅w及び深さd(図2(a)参照)について、詳細に説明する。上面溝1の幅wは、鋸刃12の厚みに応じて形成され、上面溝1の深さdは、鋳片3を切削する際の、鋳片3の上面から内部への鋸刃12の侵入深さに応じて形成される。尚、上面溝1の幅wは、鋳片3の搬送方向の長さと定義する。よって本明細書では「上面溝1の幅w」方向と「鋳片3の幅(スラブ4の幅)」方向とは、互いに直交する。
上面溝1の幅w及び深さdは、大きく分けて、溶断装置20の溶断によって生じる溶融物の堆積による制約条件(1)と、その他の制約条件(2)とを満たすように設定される。
(1)溶融物の堆積による制約条件
上面溝1の幅w及び深さdは、溶融物が鋳片3及びスラブ4の上面上に溢れないように設定される。具体的には、まず図2(b)に示すように、トーチの火炎によって溶融させる底部1aの中央の領域Aを設定する。領域Aは、例えば、上端部が底部1aの幅wの方向の中央に位置し、下端部が鋳片3の下面側に位置する、図2(b)に例示したような下に凸状の領域を設定できる。このとき上面溝1の幅wは、溶融される中央の領域Aの上端部の最大幅w0と、底部1aにおける領域A以外の領域における第1側壁1b側の幅w1と、第2側壁1c側の幅w2とに分かれ、上面溝1の幅wは、w=w0+w1+w2で表される。
領域Aを溶融させる場合、図2(c)に示すように、領域Aを構成する鋳片3の体積に基づいて、第1側壁1b側の溶融物7と、第2側壁1c側の溶融物8とが、トーチ22aの火炎の両側に発生する。上面溝1の内側における第1側壁1b側の溶融物7の堆積形状と、第2側壁1c側の溶融物8の堆積形状は左右対称であり、第1側壁1b側の溶融物7の体積と、第2側壁1c側の溶融物8の体積とは略等しいものとする。
第1側壁1b側の溶融物7は、底部1aの領域A以外の領域における上流側の領域に、底部1aの上面より隆起して堆積する。また第2側壁1c側の溶融物8は、底部1aの領域A以外における下流側の領域に、底部1aの上面より隆起して堆積する。すなわち第1側壁1b側の溶融物7の下端部の最大幅w7は、上流側の第1側壁1b側の幅w1と略等しい(w1=w7)とともに、第2側壁1c側の溶融物8の下端部の最大幅w8は、下流側の第2側壁1c側の幅w2と略等しい(w2=w8)。このとき上面溝1の幅wは、w=w0+w7+w8で表される。
ここでトーチの火炎によって溶融される底部1aの中央の領域Aの体積の変化と、第1側壁1b側の溶融物7の体積の変化と、第2側壁1c側の溶融物8の体積の変化との関係を、図2(b)及び図2(c)に示すように鋳片3を側面視した場合の2次元的な領域の面積の変化を用いて解析する。このとき、第1側壁1b側の溶融物7によって示される領域(図2(c)中に井桁状のハッチングが施された左側の領域)と第2側壁1c側の溶融物8によって示される領域(図2(c)中に井桁状のハッチングが施された右側の領域)とは、略左右対称である。そして第1側壁1b側の溶融物7が示す領域の面積と、第2側壁1c側の溶融物8が示す領域の面積との和が、溶融によって除去される中央の領域A(図2(b)参照)が示す断面領域の面積Sと略等しい。
よって第1側壁1b側の溶融物7の最大幅w7と同じ長さを有する一方の辺と、上面溝1の深さdと同じ長さを有する他方の辺を備える矩形を仮定し、矩形の面積S1L=w7×dが、中央の領域Aの面積Sの半分以上となるように、中央の領域Aの上端の最大幅w0及び領域A以外の領域の第1側壁1b側の幅w1が設定される。
また第1側壁1b側と同様に、第2側壁1c側の溶融物8の最大幅w8と同じ長さを有する一方の辺と、上面溝1の深さdと同じ長さを有する他方の辺とを備える矩形を仮定し、矩形の面積S1R=w2×dが、中央の領域Aの面積Sの半分以上となるように、中央の領域Aの上端の最大幅w0及び領域A以外の領域の第2側壁1c側の幅w2が設定される。
中央の領域Aの上端の最大幅w0と、領域A以外の領域の第1側壁1b側の幅w1及び第2側壁1c側の幅w2が設定されることにより、上面溝1の幅wが設定される。第1側壁1b側の矩形の面積S1Lと、第2側壁1c側の矩形の面積S1Rを用いて上面溝1の幅wを設定することにより、第1側壁1b側と同様に、第2側壁1c側の溶融物8が鋳片3の上面に溢れない。
このとき、中央の領域Aの深さ(鋳片の厚み方向の最大長さ)として、例えば、上面溝1が形成された部分の鋳片3の厚みの値を用いることができる。すなわち、領域Aにおいて下方向への溶融が僅かでも進行すると、上面溝1の底部1aと鋳片3の下面とが貫通する状態の領域Aの深さである。上面溝1が形成された部分の鋳片3の厚みは、鋳片3の厚み(図1中の上下方向の長さ)から上面溝1の深さdを引いた値dとなる。そして中央の領域Aの面積Sとして、中央の領域Aの最大幅w0と同じ長さの一方の辺と、上面溝1が形成された部分の鋳片3の厚みdと同じ長さの他方の辺とを備える矩形の面積を用いることができる。上面溝1が形成された部分の鋳片3の厚みの値を用いることにより、溶融開始時点から貫通時点までの間に発生する、第1側壁1b側の溶融物7の量と第2側壁1c側の溶融物8の量を考慮して、領域Aの深さを設定できる。
(2)その他の制約条件
その他の制約条件として、(a)〜(c)の4点を以下に記す。
(a)切断後の端面に残存する段差
上面溝1の幅wが長すぎると、鋳片3の切断後、鋳片3の端部の角部に、切断後の段差(不図示)が形成されるとともに、スラブ4の端部の角部にも、切断後の段差(不図示)が形成される。そのため熱間圧延工程の前に、スラブ4の端部の溶断ノロに加え、鋳片3の切断後の段差及びスラブ4の切断後の段差を切削して除去する処理が付帯して生じることとなり、フライスカッターの移動の軌跡を大きく変化させる等、作業負担が増加する。よって上面溝1の幅wの上限値は、鋳片3及びスラブ4にそれぞれ切断後の段差が生じないように設定される。切断後の段差が生じないことにより、例えばフライスカッターを用いてスラブ4の端部の溶断ノロの除去と同時に、切断後の各段差を除去可能となり、処理負担が実質的に増加しない。
(b)衝突噴流による溶融物の飛散
トーチによる鋳片3の切断幅が短い程、溶融物の発生量が小さくなり、溶融物が鋳片3又はスラブ4の上面に溢れることが抑えられる。しかし、切断幅を短くする代償にトーチのガス噴射圧力を高める場合には、噴射ガスの衝突噴流圧力が高まり、鋳片3の溶断中に火炎の近傍の溶融物が衝突噴流に巻き上げられて飛散し、鋳片3の上面に付着する場合がある。よって中央の領域Aの最大幅w0の下限値は、溶融物が衝突噴流に巻き上げられない程度のガス噴射圧力及び火炎の径によって形成される長さに設定される。
(c)鋸刃の強度低下
上面溝1の幅wを比較的小さく形成する場合、鋸刃12の厚さが薄すぎると、鋸刃12の強度が不足して、切削不良や鋸刃12の損傷が発生する可能性が高まる。また切削時には、被削材である鋳片3が高温であるため、鋸刃12の厚さが薄すぎると、鋸刃12の温度が急速に上昇し、更に鋸刃12の強度低下が顕著になる。
また上面溝1の幅wを比較的大きく形成する場合、鋸刃12の厚さが厚すぎると、鋸刃12の厚さに比例して切削加工時の発熱量が大きくなるため、刃先部に対して必要な冷却量が不足し、強度が低下する可能性がある。例えば略円形の鋸刃12に対しては、通常、円の側面に対して冷却水が噴射され冷却が行われる。このとき冷却効率を高めるためには、冷却水が噴射される円の面積すなわち鋸刃12の径を大きくする方法がある。しかし、鋸刃12を大径化すると切削装置10自体が大きくなり、製鉄所のレイアウト上、配置が困難であることが多い。新規設備投資の場合は、負担が増加する。また既存の冷却装置を用いて鋸刃12に接触させる冷却水の量を増加させると、鋳片3やスラブ4が冷却水に接触することにより、鋳片3やスラブ4の温度低下が生じる場合がある。よって上面溝1の幅wの上限値及び下限値は、鋸刃12の強度の低下を考慮して設定される。
上記した(1)、及び(2)の(a)〜(c)の制約条件に応じて、例えば鋳片3の厚みが200〜300mm程度の場合、上面溝1の幅wは10mm以上50mm以下に形成するとともに、上面溝1の深さは20mm以上100mm以下に形成することが可能である。
尚、上面溝1の幅w及び深さdは、例えば、上記した制約条件に応じて各々の値を適宜変更しながら鋳片3の切断試験を複数回行い、試験結果の中から有効な値を抽出することにより設定することが可能である。またシミュレーション解析等により算出してもよい。また中央の領域Aの最大幅w0、領域A以外の領域の第1側壁1b側の幅w1及び第2側壁1c側の幅w2を、個別に設定することも可能である。また設定された中央の領域Aの最大幅w0に応じて、底部1aの上面に接触させるトーチの火炎の径が設定される。
例えば、厚み200mm程度の鋳片3の平坦な上面を、上面溝1を形成することなくトーチで切断した場合、鋳片3及びスラブ4の切断部の端部の上面に形成される溶断ノロの断面積の概略寸法を、幅40mm×高さ10mm以内程度であるとする。この場合、上面溝1の幅wは約50mm、深さdは約20mmに形成することができる。上面溝1の幅wの約50mmのうち、底部1aの中央の溶融する領域Aの最大幅w0を約10mm、領域A以外の領域の第1側壁1b側の幅w1及び第2側壁1c側の幅w2をいずれも約20mmに設定する。
また、上面溝1の幅w及び深さdの他の設定例として、予め厚みdと底部1aの切断幅とを設定し、設定された厚みdと底部1aの切断幅とを用いて底部1aの中央の領域Aの断面積を算出することによって、幅wを設定してもよい。例えば、厚み220mm程度の鋳片3の上面に形成する上面溝1の深さdを、鋳片3の厚みの半分程度である100mmに予め設定する。このとき上面溝1が形成された部分の鋳片3の厚みdは120mm程度となる。またトーチの火炎による底部1aの切断幅を、例えば10mmと設定する。そして上面溝1が形成された部分の鋳片3の厚みdに等しい長さを有する一方の辺と、底部1aの切断幅に等しい長さを有する他方の辺とを備える矩形を仮定し、この矩形の面積を、溶融されて除去される領域の面積とみなす。溶融される領域の矩形の面積は、120mm×10mm=1200mmとなる。
次に、1200mmの矩形の面積を、第1側壁1b側に仮定する矩形と、第2側壁1c側に設定する矩形とで600mmずつ等分する。両方の側壁側に仮定されるそれぞれの矩形は、いずれも一辺の長さが側壁の高さ(上面溝1の深さd)に対応するとともに、他方の辺の長さが、上面溝1の底部1aの幅wのうち切断幅を除いた長さの半分に対応する。上面溝1の深さdは100mmであるので、一方の側壁側の矩形の他辺の長さについては、600mm÷100mm=6mm、という値が一旦、仮の長さとして導かれる。この仮の長さに、更に上記(2)の(b)、(c)で説明したような上面溝1の幅wの下限値に関する制約条件を満たすように設定された補正値を加える。例えば、片側の側壁側の他辺の長さを10mmと設定する。このとき上面溝1の幅wは、切断幅(10mm)に、第1側壁1b側に仮定する矩形の他辺の長さ(10mm)と、第2側壁1c側に仮定する矩形の他辺の長さ(10mm)とを加えて、30mmという値に設定することができる。
(連続鋳造鋳片の切断方法)
次に、本発明の実施の形態に係る連続鋳造鋳片の切断方法を説明する。尚、図3及び図4中、鋸刃12以外の切削装置10の構造と、一対のトーチ22a,22b以外の溶断装置20の構造は、説明のため図示を省略する。まず、連続鋳造機から下流側に送り出された鋳片3の先端側の切断予定位置の上方に鋸刃12が位置するように、切削装置10を鋳片3の移動に同期させて配置する。このとき溶断装置20は、切削装置10より更に下流側に配置する。
次に、図3(a)に示すように、鋸刃12を回転させつつ鋳片3の上面に接触させ、更に鋸刃12を下降させ鋳片3の内部に侵入させ、鋳片3の上部に所定の深さの上面溝1を形成する。次に、鋸刃12の高さを一定に保持して所定の深さを維持し、鋸刃12を回転させながら、図3(a)中の矢印で示すように、鋳片3の長手方向に垂直となる方向に沿って一端側から他端側へ移動させ、鋳片3の上面を選択的に切削する。そして図3(b)に示すように、所定の幅w及び深さdを有する直線状の上面溝1を形成する。
次に切削装置10を、上面溝1の上方に移動させるとともに上面溝1より上流側に移動させ上面溝1から離間させる。尚、上面溝1から離間した切削装置10は、鋳片3の上面上において、相対的に一定距離移動した位置で、新たな上面溝を切削することとなる。次に、溶断装置20を移動させ、切削装置10が離間した後の上面溝1の上方に一対のトーチ22a,22bが位置するように、溶断装置20を鋳片3の移動に同期させて配置する。また溶断装置20は、一方のトーチ22aの先端の火口が上面溝1の一端上に位置するとともに、他方のトーチ22bの先端の火口が上面溝1の他端上に位置するように配置される。
次に、図3(c)に示すように、一対のトーチ22a,22bの先端からそれぞれ火炎を噴出させて、上面溝1の底部1aの両端部を同時に溶融する。このときトーチの火炎は、底部1aにおける上面溝1の幅方向の中央の領域の鋳片3に対して噴射され、鋳片3を溶融させる。溶融により、図4(a)に示すように、鋳片3の両端部における上面溝1の底部1aが溶融し、上面溝1の内側で、火炎の両側に第1側壁側の溶融物7と、第2側壁側の溶融物8とが発生する。このとき第1側壁側の溶融物7及び第2側壁側の溶融物8のそれぞれの高さは、鋳片3の上面以下に抑えられ、溶融物が鋳片3の上面に溢れない。
次に、一対のトーチ22a,22bの火口をそれぞれ下方へ移動させる又は火炎を伸長させることにより、鋳片3の溶融部を下方へ拡大させ、上面溝1の底部1aと鋳片3の下面とを貫通させる。溶融開始から貫通までの間、第1側壁側の溶融物7及び第2側壁側の溶融物8のそれぞれの高さは、鋳片3の上面以下に抑えられている。尚、貫通により、発生する溶融物が鋳片3の下面側へ移動する経路が形成されるので、貫通後は、第1側壁側の溶融物7及び第2側壁側の溶融物8の高さの上昇は抑制される。
次に、上面溝1の両端部を溶融させた段階において一対のトーチ22a,22bをそれぞれ下方へ移動させていた場合には、一対のトーチ22a,22bを再度上昇させる。そして、一対のトーチ22a,22bの火口の先端の位置を、図4(b)に示すように、上面溝1の内側において、更に鋳片3の幅方向の内側に向かって所定量移動させる。そして再び、一対のトーチ22a,22bの火口の先端からそれぞれ火炎を噴出させて、上面溝1の底部1aを溶融する。
次に、一対のトーチ22a,22bの火口をそれぞれ下方へ移動させる又は火炎を伸長させることにより、鋳片3の溶融部を下方へ拡大させ、上面溝1の底部1aと鋳片3の下面とを貫通させることにより、鋳片3の貫通部分を上面溝1の両端部から中央部に向かって拡大させる。そして一対のトーチ22a,22bの火口の先端の位置を、上面溝1の内側において、更に鋳片3の幅方向の内側に向かって所定量移動させ…の処理を、上面溝1の両端部の貫通部が中央部で合流するまで繰り返すことにより、図4(c)に示すように、鋳片3を切断する。
尚、鋳片3の切断後、切削装置10と同様に、溶断装置20を切断部の上流側に一定距離移動させ、切削装置10により形成された後続の上面溝に対して、上記した上面溝1に対する溶断処理と同様に溶断処理を行うことにより、鋳片3の搬送に同期して、連続してスラブ4を切り出す。
切断部の鋳片3の端面及び下面には、溶融物7が凝固して付着することにより、溶断ノロが形成されるが、鋳片3の上面には鋳片3の幅方向に亘って溶断ノロが付着しない。また切断部のスラブ4の端面及び下面には、鋳片3の端面及び下面と同様に、溶融物8による溶断ノロが形成されるが、スラブ4の上面にはスラブ4の幅方向に亘って溶断ノロが付着しない。
尚、スラブ4の端面の溶断ノロに対しては、例えば、特開2008‐183610号に示すような、往復移動するハンマーを用いて多針タガネ束を打撃させて除去することが可能である。またスラブ4の下面の溶断ノロに対しては、例えば特開平10‐24353号に示すような、回転揺動刃を用いて除去することが可能である。すなわちスラブの端面及び下面の溶断ノロについては比較的容易に除去できる一方、スラブの上面の溶断ノロに対しては、容易な除去方法が確立されていない。
本発明の実施の形態に係る連続鋳造鋳片の切断方法によれば、スラブ4の上面に対する溶断ノロの付着を防止するので、熱間圧延工程に投入する前に施されるスラブ4の端部の溶断ノロの除去処理において、上面に施すべき処理量を極めて少なくするとともに、スラブ4の端面及び下面の溶断ノロだけを容易な除去方法を用いて処理できる。よって溶断ノロの除去処理を、スラブ4の端部全体で見たとき、作業時間や作業負担を従来に比し著しく低減させることができる。
一方、比較例として、図3及び図4に示す鋳片3と同寸法の鋳片3に、上面溝1を形成することなく、鋳片3を切断する場合の状態を図5(a)に示す。鋳片3の上面と下面とが貫通しない溶断処理の初期段階において、溶断処理中に発生する上流側の溶融物27と下流側の溶融物28とが鋳片3の下面側へ流れることができず、鋳片3の上面上に溢れる。そのため、図5(b)に示すように、切断後の鋳片3の端部においては溶断ノロ37が鋳片3の上面に付着するとともに、切断後のスラブ4の端部においても、溶断ノロ38がスラブ4の上面に付着する。
尚、本発明の実施の形態に係る連続鋳造鋳片の切断方法を用いて切り出したスラブ4に対しては、スラブ4の端面及び下面の溶断ノロの除去処理を施すことなく、後工程の熱間圧延工程中のクロップ処理で、溶断ノロをクロップ部分に含めて切断し除去してもよい。スラブ4の上面での溶断ノロの発生が防止されるため、スラブ4の端部の溶断ノロの除去処理自体を省略しても、ヘゲの発生を許容範囲に抑えることが可能であり、作業の簡略化を図ることができる。
またスラブ4の端部の溶断ノロの除去処理において、更に溶断ノロの除去率を高めるため、スラブ4の端部に切り込ませて面取り処理を行うフライスカッター等の切削装置を別途設け、端部の切り込みと同時に、上面、端面及び下面に付着した溶断ノロを除去する場合がある。このとき本発明の実施の形態に係る切断方法で得られたスラブ4に対しては、スラブ4の端面と下面とに対して互いに独立した回転軸を有するフライスカッターを設けるのみでよく、上面用のフライスカッターの回転軸を設ける必要がない。よって、切削装置の台数を減らし、切削装置10を省スペースにレイアウトできる。また切削装置10の設備投資を抑えることができる。
またスラブ4の上面と端面と下面とを同一の回転軸を有するフライスカッターを上下昇降させて面取りする場合、上面の面取りプロセスが無い分、回転軸の上下昇降ストロークを小さくできる。また、溶断ノロの除去処理の工程数が2分の1又は3分の2程度に減少するので、処理能力の増加や、切削速度及び切削条件の緩和を図ることができる。そのため切削装置の台数を減らすとともに、切削装置の寿命を延ばすことができる。
本発明の実施の形態に係る連続鋳造鋳片の切断方法によれば、鋳片3の溶断前に、予め鋳片3の上面を切削して上面溝1を設け、上面溝1の内側に、溶断処理中に発生する溶融物を、鋳片3の上面以下の高さとなるように貯留する。すなわち溶融物の付着や流動を上面溝1の範囲内で抑える。そのため、鋳片3の上面と下面とが未貫通状態の溶断処理の初期段階において、下面側へ流れることができない溶融物が、鋳片3の上面に溢れて流出することを防止する。よって溶断後の鋳片3及びスラブ4のそれぞれの上面に溶断ノロが付着することを防止し、鋳片3を切断して切り出したスラブ4の端部における溶断ノロの除去処理の対象領域をスラブ4の端面と下面とに抑制し、除去処理の作業負担を低減できる。
また本発明の実施の形態に係る連続鋳造鋳片の切断方法によれば、鋳片を押し出して変形させて溝を形成するのではなく、鋳片の一部を選択的に切削して鋳片本体から除去することにより溝を形成するので、押し出された領域が盛り上がって堆積し、鋳片から切り出したスラブの先端部及び後端部で板厚増加が発生しない。よって鋳片から切り出したスラブを圧延設備や幅圧下設備に突入させても、圧延設備や幅圧下設備にかかる負担増加を回避できる。
また本発明の実施の形態に係る連続鋳造鋳片の切断方法によれば、鋳片3の厚みの一部を切削して上面溝1を形成し、形成された上面溝1に沿って溶断を行う。鋳片3の厚さをすべて切削する全厚さ切削の場合に比べて切削量が少なくなり、切削装置10の出力や切削装置10に加わる反力を抑えることが可能となり、切削装置10の構成を簡素化することができる。
また鋳片3の厚みすべてを鋸刃12で切削するのではなく、一部の切削に留めることにより、鋸刃12の鋳片3への侵入深さが抑えられるので、鋸刃12の刃先部において鋳片3の外側に露出する部位の比率が高まり、刃先部の冷却が容易になる。そのため、冷却能力に比べて、切削速度を全厚さ切削に比べて高く設定できる。また鋸刃12の冷却時間を短縮できるため、鋸刃12の直径を小さくし、切削装置10をコンパクト化することができる。
また本発明の実施の形態に係る連続鋳造鋳片の切断方法によれば、鋳片3の上面だけを切削し、下面を切削しないので、鋳片3の上面側にのみ鋸刃12を配置すれば済む。よって鋳片3の下側に位置する搬送ロール34j−1,34,34j+1,…と、下面側の鋸刃との干渉を避けることができる。
本発明は上記のとおり開示した実施の形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになると考えられるべきである。例えば上面溝1の幅w及び深さdの設定は、上記した(1)及び(2)の制約条件に応じた設定に限定されず、上記した制約条件の一部を用いたり、上記以外の他の制約条件を適宜用いたりしてもよい。溶断処理中に発生する溶融物が、上面溝1の内側で、鋳片3の上面の高さ以下に貯留されるように、上面溝1が構成されればよい。
(その他の実施の形態:第1変形例)
また鋳片3の上下両面に予め溝を形成した上で、鋳片3を切断してもよい。図6及び図7に、第1変形例として、鋳片3の上面に上面溝1を形成するとともに、下面に下面溝2を形成する場合の鋳片3の切断方法を示す。第1変形例に係る切削装置は、図6(a)に示すように、図3に示す鋳片3の上側に配置された鋸刃12に加え、更に鋳片3の下側に配置された鋸刃13を備える。鋸刃13は、上面溝1の形成に用いた鋸刃12と同様の構造を有する。尚、図6及び図7中、上面側の鋸刃12及び下面側の鋸刃13以外の切削装置の構造と、一対のトーチ22a,22b以外の溶断装置の構造は、説明のため図示を省略する。
第1変形例に係る鋳片3の切断方法では、まず、図6(a)に示すように、上面側の鋸刃12を回転させつつ、鋳片3の長手方向に垂直となる方向に沿って一端側から他端側へ移動させることにより、鋳片3の上面を切削し、上面溝1を形成する。同時に、下面側の鋸刃13を回転させつつ、鋳片3の長手方向に垂直となる方向に沿って一端側から他端側へ移動させることにより、鋳片3の下面を選択的に切削し、上面溝1に対向させて下面溝2を形成する。上面溝1と下面溝2とは、図6(b)に示すように、上下対称的に形成されており、下面溝2は、図中に符号を付さないが、上面溝1と同様に、底部と、底部の両端から立ち上がる2つの側壁を有する。
その後、図6(c)に示すように、上面溝1の両端部に一対のトーチ22a,22bの火炎を接触させ、同時に上面溝1の底部1aを溶融させる。次に、一対のトーチ22a,22bをそれぞれ下方へ移動させる又は火炎を伸長させることにより、図7(a)に示すように、鋳片3の溶融部を下方へ拡大させ、上面溝1の底部1aと下面溝2の底部とを貫通させる。次に、図7(b)に示すように、一対のトーチ22a,22bをそれぞれ上面溝1の内側へ移動させつつ貫通部を拡大する。そして図7(c)に示すように、鋳片3を切断してスラブ4を切り出す。
第1変形例では、鋳片3に上面溝1と下面溝2とが形成されていることにより、鋳片3を上下方向に貫通させるために除去すべき鋳片3の体積が低減し、発生する溶融物の量が抑えられる。また鋳片3を貫通するまでの作業時間が短縮する。よって第1変形例では、図7(c)に示すように、鋳片3の切断部の端面には溶断ノロ17aが付着するが、上面及び下面には付着しない。またスラブ4の切断部の端面には溶断ノロ18aが付着するが、上面及び下面には付着しない。
尚、上面溝1と下面溝2とは、図6(a)中では同時に形成されるが、形成の時期は若干ずれても構わない。また上面溝1と下面溝2とは互いに上下対称的に形成されているが、深さが同じである必要はなく、例えば下面溝2の深さが、上面溝1の深さより短く構成されてもよい。ただし上面溝1の幅の中央位置と下面溝2の幅の中央位置とが、上下でずれることなく互いに重なるように形成されることが好ましい。よって鋳片3の上側の鋸刃12を支持する支持装置(不図示)と、下側の鋸刃13を支持する支持装置(不図示)とは機械的に連結され、鋳片3の移動速度と同期して構成されることが好ましい。
(その他の実施の形態:第2変形例)
また切削装置10と溶断装置20とを、搬送方向に沿って直列に配置する構成(図1参照)に変えて、搬送方向に直交し、且つ同一直線上に配置する構成としてもよい。すなわち、図8(a)に示すように、上面溝1を形成する鋸刃12に追従してトーチ22aを、鋸刃12と同一方向に移動させるように、切削装置10と溶断装置20とを一体的に構成する。尚、図8中、鋸刃12以外の切削装置10の構造及びトーチ22a以外の溶断装置20の構造は、説明のため、図示を省略する。
第2変形例の場合、図8(a)に示すように、鋳片3の一端側から鋸刃12を回転させつつ移動させて鋳片3の上面を選択的に切削し、上面溝1を形成すると同時に、形成された上面溝1の一端側からトーチ22aにより上面溝1の底部1aを溶融する。そして、鋸刃12が鋳片3の他端側へ移動して、上面溝1が鋳片3の両端間に亘って形成された時点で、上面溝1の溶融部を下方へ拡大させるように構成できる。そして上面溝1の底部1aと下面溝2の底部とを貫通させた後、図8(b)に示すように、トーチ22aを上面溝1の他端側へ移動させつつ貫通部を拡大する。そして図8(c)に示すように、鋳片3を切断してスラブ4を切り出す。鋳片3の端部には、溶断ノロ17が端面と下面とに付着するが、上面には形成されない。またスラブ4の端部には、溶断ノロ18が端面と下面とに付着するが、上面には形成されない。
第2変形例では、切削装置10と溶断装置20とを一体的に構成することにより、鋳片3の切断方法に係る切断装置をコンパクト化することができる。また、このとき鋸刃12を、図8(a)中の半時計回りの矢印で示すように、トーチ22aに近い側から鋳片3の上面に接触する向きの回転方向に設定することで、鋳片3の上面から削り出されて飛散する切削物がトーチ22aに衝突して溶断処理に干渉することを抑制できる。
以上のように、本発明は、本明細書及び図面に記載していない様々な実施の形態等を含むとともに、本発明の技術的範囲は、上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
1 上面溝
2 下面溝
3 連続鋳造鋳片
4 スラブ
7 溶融物
8 溶融物
10 切削装置
12 鋸刃
13 鋸刃
20 溶断装置

Claims (3)

  1. 連続鋳造鋳片の上面を、前記連続鋳造鋳片の長手方向に垂直となる方向に沿って、選択的に切削して上面溝を形成する工程と、
    前記上面溝の底部に沿って前記連続鋳造鋳片を溶断するとともに、該溶断によって生じる溶融物の高さを前記連続鋳造鋳片の上面以下の高さで前記上面溝の内側に貯留させる工程と、
    を含むことを特徴とする連続鋳造鋳片の切断方法。
  2. 更に、前記連続鋳造鋳片の下面を前記上面溝に対向させて選択的に切削して下面溝を形成する工程を含み、
    前記上面溝と前記下面溝とを貫通させるように、前記連続鋳造鋳片を溶断する処理を行うこと、を特徴とする請求項1に記載の連続鋳造鋳片の切断方法。
  3. 前記上面溝を形成する工程及び前記下面溝を形成する工程のうち少なくとも一方の工程は、回転する鋸刃を前記垂直となる方向に移動することによって前記連続鋳造鋳片の上面及び下面のうち少なくとも一方を切削して行うこと、を特徴とする請求項2に記載の連続鋳造鋳片の切断方法。
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