JP2016080685A - リポタンパク質のコレステロール取り込み能を測定する方法及び試薬キット - Google Patents

リポタンパク質のコレステロール取り込み能を測定する方法及び試薬キット Download PDF

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Abstract

【課題】リポタンパク質のコレステロール取り込み能を簡便に測定する方法及び試薬キットを提供することを課題とする。【解決手段】試料中のリポタンパク質に標識コレステロールを取り込ませ、標識コレステロールを取り込んだリポタンパク質と、リポタンパク質と結合する抗体とを接触させることにより、リポタンパク質と抗体との複合体を形成させ、この複合体から生じる標識を測定することにより、上記の課題を解決する。【選択図】なし

Description

本発明は、リポタンパク質のコレステロール取り込み能を測定する方法に関する。また、本発明は、リポタンパク質のコレステロール取り込み能の測定用試薬キットに関する。
コレステロールの代謝異常は種々の疾患に関与し、血中のコレステロール濃度がその指標となることが知られている。しかし、コレステロール濃度は疾患の存在や疾患リスク等を反映していない場合がある。そこで、コレステロール濃度などの量的指標だけでなく、コレステロールの機能に着目した質的指標が注目されている。
たとえば、血中の高比重リポタンパク質コレステロール(HDL-C)濃度が高くても心血管疾患(CVD)リスクが低減されない場合があり、HDL-C濃度はCVDリスクを完全に反映していない可能性が指摘されている。高比重リポタンパク質(HDL)の機能が着目されており、HDLによる末梢組織からのコレステロールの排出機能がCVDリスクに対する負の予後因子であることが報告されている。
HDLの機能を調べる方法として、例えば、非特許文献1には、蛍光標識コレステロール及び培養細胞を用いる方法が記載されている。この方法では、蛍光標識コレステロールを取り込ませたマクロファージからHDLにより引き抜かれた標識コレステロール量を測定することにより、HDLのコレステロール排出機能を調べている。この方法は、(1)標識コレステロールをマクロファージ細胞に取り込ませる、(2)アシルCoAコレステロールアシル転移酵素の阻害剤を添加し、細胞内でのコレステロールのエステル化を阻害する、(3)HDLを添加してマクロファージを刺激する、及び(4)培養上清及び細胞可溶化液を回収し、これらの液中の標識コレステロールを定量するという4つの工程を含む。
一方、特許文献1には、培養細胞を用いずに、蛍光標識コレステロールにより脂質異常症を判定する方法が記載されている。この方法では、低比重リポタンパク質(LDL)やHDLなどを含む種々のリポタンパク質の周縁の単層を蛍光標識コレステロール(コレステロールピレン)で標識し、標識されたリポタンパク質を測定して得た蛍光スペクトルに基づいて、被験者が脂質異常症か否かを判定している。なお、この文献には、標識されたリポタンパク質と、遊離している蛍光標識コレステロールとを、超遠心分離法、透析、又はゲルろ過カラムを用いるFPLCによって分離できることが記載されている。
国際公開第2012/104411号パンフレット
Sankaranarayanan S.ら, A sensitive assay for ABCA1-mediated cholesterol efflux using BODIPY-cholesterol. J. Lipid Res., vol.52, p.2332-2340 (2001)
本発明者らは、リポタンパク質のコレステロール取り込み能に着目し、これを簡便に測定する方法を検討した。そして、本発明者らは、標識コレステロールと、リポタンパク質と結合する抗体とを用いて、リポタンパク質のコレステロール取り込み能を簡便に測定できることを見出して、本発明を完成した。
よって、試料中のリポタンパク質と、標識コレステロールとを接触させることにより、標識コレステロールをリポタンパク質に取り込ませる工程と、標識コレステロールを取り込んだリポタンパク質と、リポタンパク質と結合する抗体とを接触させることにより、リポタンパク質と抗体との複合体を形成する工程と、この複合体から生じる標識を測定する工程とを含む、リポタンパク質のコレステロール取り込み能を測定する方法が提供される。
さらに、標識コレステロールを含む第1試薬と、リポタンパク質と結合する抗体を含む第2試薬とを含むリポタンパク質のコレステロール取り込み能測定用試薬キットが提供される。
本発明によれば、リポタンパク質のコレステロール取り込み能を簡便に測定することが可能になる。
ボロンジピロメテン骨格構造を有する蛍光団を含む蛍光標識コレステロールがHDLによりエステル化されることを示す写真である。 ベンゾオキサジアゾール骨格構造を有する蛍光団を含む蛍光標識コレステロールがHDLによりエステル化されることを示す写真である。 本実施形態の方法による測定結果と従来法による測定結果とが相関することを示す散布図である。 サンドイッチELISA法により、HDLが、固相に固定化された抗アポリポプロテインAI(ApoAI)抗体に捕捉されていることを示すグラフである。 抗ApoAI抗体に捕捉されたHDLが蛍光標識コレステロールを取り込んでいないことを示すグラフである。 本実施形態の試薬キットの一例を示す図である。図中、11は標識コレステロールを含む第1試薬、22はリポタンパク質と結合する抗体を含む第2試薬を示す。 標識コレステロールと、リポタンパク質と結合する抗体と、固相とを含む本実施形態の試薬キットの一例を示す図である。図中、11は標識コレステロールを含む第1試薬、22はリポタンパク質と結合する抗体を含む第2試薬、33は固相(96ウェルマイクロプレート)を示す。 標識コレステロールと、リポタンパク質と結合する抗体を固定化した固相とを含む本実施形態の試薬キットの一例を示す図である。図中、11は標識コレステロールを含む第1試薬、33はリポタンパク質と結合する抗体を固定化した固相(96ウェルマイクロプレート)を示す。
本実施形態のリポタンパク質のコレステロール取り込み能を測定する方法(以下、単に「測定方法」ともいう)は、後述のように、試料中のリポタンパク質に標識コレステロールを直接取り込ませるので、従来のコレステロール排出機能の測定法(例えば、非特許文献1に記載の方法)のように、マクロファージなどのコレステロールを溜め込んだ細胞を用いなくともよい。よって、本実施形態の測定方法は、後述のいずれの工程においても無細胞系で行うことができる。ここで、無細胞系とは、リポタンパク質のコレステロール取り込み能の測定に利用する目的で細胞を添加することがないことを意味する。すなわち、本実施形態の測定方法は、測定のために細胞を添加してその性質及び機能などを利用することなく、実施できる。なお、本実施形態では、用いる試料に被験者由来の細胞が含まれている場合であっても、その細胞自体はリポタンパク質の標識コレステロールの取り込みにほとんど影響しないと考え、測定方法は無細胞系であるとみなす。
本実施形態の測定方法では、まず、試料中のリポタンパク質と、標識コレステロールとを接触させることにより、標識コレステロールをリポタンパク質に取り込ませる工程を行う。本実施形態において、試料は、哺乳動物のリポタンパク質、好ましくはヒトのリポタンパク質を含む限り、特に限定されない。そのような試料としては、例えば、血液、血清及び血漿といった血液試料が挙げられる。
本実施形態の測定対象となるリポタンパク質は、HDL、LDL、中間比重リポタンパク質(IDL)、超低比重リポタンパク質(VLDL)、又はカイロミクロン(CM)であり得る。HDLは、1.063 g/mL以上の密度を有するリポタンパク質である。LDLは、1.019 g/mL以上1.063 g/mL未満の密度を有するリポタンパク質である。IDLは、1.006 g/mL以上1.019 g/mL未満の密度を有するリポタンパク質である。VLDLは、0.95 g/mL以上1.006 g/mL未満の密度を有するリポタンパク質である。CMは、0.95 glmL未満の密度を有するリポタンパク質である。好ましい実施形態では、上記のリポタンパク質のうち、HDLを測定対象とする。
本実施形態の測定に際しては、超遠心分離法やポリエチレングリコール(PEG)沈殿法などの公知の方法によって血液試料を分離して、所定のリポタンパク質を含む画分を取得することができる。
本実施形態においては、リポタンパク質濃度を調整するために、上記の血液試料及び所定のリポタンパク質画分を水性媒体で希釈して得た液を、試料として用いてもよい。そのような水性媒体としては、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)及びTris-HClなどの緩衝液などが挙げられる。なお、試料中のリポタンパク質濃度は、リポタンパク質の主要な構成成分であるApoAIの濃度が指標となるので、本実施形態では、試料の一部を取り、これに含まれるApoAIの濃度を公知の免疫学的測定法(例えば免疫比濁法)により測定してもよい。得られたApoAIの濃度に基づいて、試料中のリポタンパク質濃度を調整することができる。
試料には、必要に応じて、ウシ血清アルブミン(BSA)やリポソームのようなブロッキング剤などを添加してもよい。また、リポタンパク質はコレステロールをエステル化して取り込むことが知られているので、リポタンパク質によるコレステロールのエステル化反応に必要となる脂肪酸又はそれを含む組成物(例えばリポソーム)を試料に添加してもよい。
本実施形態の測定方法では、リポタンパク質に取り込ませるコレステロールとして、標識コレステロールを用いる。標識コレステロールは、コレステロール分子の一部に、標識となる分子が結合した物質である。ここで、標識コレステロールにおけるコレステロール部分は、天然に存在するコレステロールの構造を有してもよいし、又は、天然に存在するコレステロールのC17位に結合しているアルキル鎖から1つ以上のメチレン基及び/又はメチル基が除かれたコレステロール(ノルコレステロールとも呼ばれる)の構造を有してもよい。
上述のように、リポタンパク質はコレステロールをエステル化して取り込むので、リポタンパク質によりエステル化される標識コレステロールを用いることがより好ましい。なお、本実施形態の方法において、標識コレステロールは、試料と接触した際に、該試料に含まれる生体由来のレシチン-コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)によりエステル化される。リポタンパク質による標識コレステロールのエステル化を確認する方法自体は当該技術において公知であり、当業者にとってルーチンに行うことができる。
標識は、標識自体から検出可能なシグナルを発生する物質であることが好ましい。たとえば、蛍光物質、発色物質、発光物質などが挙げられる。これらのうち、蛍光物質が特に好ましい。蛍光物質は、有極性構造を有する蛍光団を含むことが好ましい。当該技術分野において、蛍光標識コレステロール及び有極性構造を有する蛍光団を含む標識物質自体は公知である。
そのような有極性構造を有する蛍光団を含む蛍光標識コレステロールとしては、例えば、下記の式(I):
で表されるボロンジピロメテン(BODIPY(登録商標))骨格構造又は下記の式(II):
で表されるベンゾオキサジアゾール骨格構造を有する蛍光団を含む蛍光標識コレステロールなどが挙げられる。
標識コレステロールは、公知の方法によって、標識をコレステロールに付加することにより製造することができる。なお、コレステロールにおいて標識が付加される位置は特に限定されず、用いる標識に応じて適宜決定できる。コレステロールと標識との結合様式は特に限定されないが、両者が共有結合を介して直接結合していることが好ましい。
本実施形態においては、市販の標識コレステロールを用いてもよい。例えば、上記のBODIPY骨格構造を有する蛍光団を含む蛍光標識コレステロールとしては、下記の式(III):
で表される蛍光標識コレステロール(23-(ジピロメテンボロンジフルオリド)-24-ノルコレステロール、商品名TopFluor Cholesterol、CAS No: 878557-19-8、Avanti Polar Lipids社より入手できる)が挙げられる。
また、上記のベンゾオキサジアゾール骨格構造を有する蛍光団を含む蛍光標識コレステロールとしては、下記の式(IV):
で表される蛍光標識コレステロール(25-[N-[(7-ニトロ-2-1,3-ベンゾオキサジアザオール-4-イル)メチル]アミノ]-27-ノルコレステロール、商品名25-NBD Cholesterol、CAS No: 105539-27-3、Avanti Polar Lipids社より入手できる)が挙げられる。
本実施形態において、試料中のリポタンパク質と標識コレステロールとの接触は、例えば、上記の試料と標識コレステロール溶液とを混合することにより行うことができる。混合後、リポタンパク質が標識コレステロールを取りこみ始める。本実施形態において、標識コレステロールの添加量は特に限定されないが、標識コレステロールが枯渇しないよう、やや過剰に添加してもよい。例えば、標識コレステロールを終濃度0.1〜30μM、好ましくは1〜10μMとなるように試料に添加できる。この工程における温度条件及び接触時間は特に限定されないが、例えば、試料と標識コレステロールとの混合液を25〜40℃、好ましくは35〜38℃にて、30分〜24時間、好ましくは1〜4時間インキュベーションすることができる。インキュベーションの間、混合液は静置してもよいし、攪拌又は振とうしてもよい。
本実施形態では、リポタンパク質に取り込まれなかった遊離の標識コレステロールを除去する工程をさらに行ってもよい。例えば、超遠心分離法などにより、リポタンパク質だけを回収することにより、リポタンパク質に取り込まれなかった遊離の標識コレステロールを除去できる。本実施形態においては、遊離の標識コレステロールを除去した後、回収したリポタンパク質をPBSなどの適切な水性媒体で洗浄してもよい。
次いで、本実施形態の測定方法では、標識コレステロールを取り込んだリポタンパク質と、リポタンパク質と結合する抗体とを接触させることにより、該リポタンパク質と該抗体との複合体を形成する工程を行う。本実施形態において、リポタンパク質と結合する抗体は、リポタンパク質の表面の一部と特異的に結合できる抗体であれば特に限定されないが、好ましくは、リポタンパク質の構成成分であるアポリポプロテインと特異的に結合できる抗体である。そのような抗体としては、例えば、抗ApoAI抗体、抗ApoAII抗体などが挙げられるが、それらの中でも抗ApoAI抗体が特に好ましい。本実施形態においては、市販の抗リポタンパク質抗体及び抗ApoAI抗体を用いてもよい。
リポタンパク質と結合する抗体は、モノクローナル抗体であってもよいし、ポリクローナル抗体であってもよい。抗体の由来は特に限定されず、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ヤギ、ウマ、ラクダなどのいずれの哺乳動物に由来する抗体であってもよい。また、抗体のアイソタイプはIgG、IgM、IgE、IgAなどのいずれであってもよいが、好ましくはIgGである。なお、抗体には、抗体のフラグメント及びその誘導体も含まれ、例えば、Fabフラグメント、F(ab')2フラグメントなどが挙げられる。
なお、リポタンパク質と結合する抗体として抗ApoAI抗体を用いる場合、該抗体と、標識コレステロールを取り込んだリポタンパク質とを接触させる前に、該リポタンパク質を酸化剤で処理してもよい。酸化剤の作用により、抗ApoAI抗体とリポタンパク質との反応性が改善されうる。そのような酸化剤としては、例えば、過酸化水素、過酸化亜硝酸、二酸化塩素などが挙げられる。
本実施形態において、標識コレステロールを取り込んだリポタンパク質と、リポタンパク質と結合する抗体との接触は、例えば、該リポタンパク質を含む液と該抗体の溶液とを混合することにより行うことができる。混合後、リポタンパク質と抗体とが結合して複合体を形成する。ここで、リポタンパク質と結合する抗体の添加量は特に限定されず、抗体の種類などに応じて当業者が適宜設定できる。この工程における温度条件及び接触時間は特に限定されないが、例えば、リポタンパク質と抗体との混合液を20〜40℃、好ましくは22〜28℃にて、30分〜8時間、好ましくは1〜2時間インキュベーションすることができる。インキュベーションの間、混合液は静置してもよいし、攪拌又は振とうしてもよい。
本実施形態においては、上記のリポタンパク質と抗体との複合体の形成工程の後に、リポタンパク質に取り込まれなかった遊離の標識コレステロールを除去することにより、リポタンパク質と、遊離の標識コレステロールとを分離する工程をさらに行うことが好ましい。例えば、超遠心分離法などにより、複合体だけを回収することにより、リポタンパク質に取り込まれなかった遊離の標識コレステロールを除去して、リポタンパク質と、遊離の標識コレステロールとを分離することができる。あるいは、上記の複合体形成工程の後、複合体と、該複合体を捕捉するための固相とを接触させてもよい。複合体を捕捉した固相を回収することにより、リポタンパク質に取り込まれなかった遊離の標識コレステロールを除去し、該複合体と、遊離の標識コレステロールとを分離することができる。本実施形態においては、遊離の標識コレステロールを除去した後、回収した複合体をPBSなどの適切な水性媒体で洗浄してもよい。
上記の固相としては、複合体中のリポタンパク質と結合する抗体を捕捉可能な固相が好ましい。固相の種類は特に限定されず、例えば、抗体を物理的に吸着する材質の固相、抗体と特異的に結合する分子が固定化されている固相などが挙げられる。抗体と特異的に結合する分子としては、プロテインA又はG、該抗体を特異的に認識する抗体(すなわち二次抗体)などが挙げられる。また、抗体と固相との間を介在する物質の組み合わせを用いて、両者を結合させることもできる。そのような物質の組み合わせとしては、ビオチンとアビジン(又はストレプトアビジン)、グルタチオンとグルタチオン-S-トランスフェラーゼ、ハプテンと抗ハプテン抗体などの組み合わせが挙げられる。例えば、リポタンパク質と結合する抗体をあらかじめビオチン修飾している場合、アビジン又はストレプトアビジンが固定化された固相によって該抗体を捕捉できる。
固相の素材としては、有機高分子化合物、無機化合物、生体高分子などから選択できる。有機高分子化合物としては、ラテックス、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、スチレン−スチレンスルホン酸塩共重合体、メタクリル酸重合体、アクリル酸重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、ポリ酢酸ビニルアクリレートなどが挙げられる。無機化合物としては、磁性体(酸化鉄、酸化クロム、コバルト及びフェライトなど)、シリカ、アルミナ、ガラスなどが挙げられる。生体高分子としては、不溶性アガロース、不溶性デキストラン、ゼラチン、セルロースなどが挙げられる。これらのうちの2種以上を組み合わせて用いてもよい。固相の形状は特に限定されず、例えば、粒子、マイクロプレート、マイクロチューブ、試験管などが挙げられる。
別の実施形態においては、リポタンパク質と結合する抗体、好ましくは抗ApoAI抗体をあらかじめ固相に固定化しておき、該固相に固定化された抗体と、標識コレステロールを取り込んだリポタンパク質とを接触させてもよい。
そして、本実施形態の測定方法では、上記の複合体から生じる標識を測定する工程を行う。測定には標識の種類に応じて従来公知の方法を用いることができる。測定工程においては、標識に由来するシグナルの強度や波長の変化などが測定され得る。測定結果は、リポタンパク質に取り込まれた標識コレステロールの量を反映するので、リポタンパク質の取り込み能の指標となる。したがって、上記の測定方法は、標識コレステロールを取り込んだリポタンパク質と、リポタンパク質と結合する抗体との複合体から生じる標識に基づいて、リポタンパク質の取り込み能を評価する方法ともいうことができる。
蛍光標識コレステロールを用いる場合は、蛍光強度を測定することができる。蛍光強度を測定する方法自体は当該技術において公知であり、例えば、分光蛍光光度計及び蛍光プレートリーダーなどの公知の測定装置を用いて、複合体から生じる蛍光強度を測定できる。なお、励起波長及び蛍光波長は、用いた蛍光標識コレステロールの種類に応じて適宜決定できる。例えば、上記の式(III)及び式(IV)の蛍光標識コレステロールを用いた場合は、励起波長は470〜490 nm、蛍光波長は525〜550 nmの範囲から決定すればよい。
本実施形態においては、濃度が既知である標識コレステロールの希釈系列を調製し、これらの標識を測定して、検量線を作成してもよい。この検量線に基づいて、試料中のリポタンパク質に取り込まれた標識コレステロールを定量することができる。
本実施形態においては、脱脂作用のある試薬、例えば、シクロデキストリン、CHAPSなどの界面活性剤などを複合体に添加してから、標識を測定してもよい。このような試薬を添加することで、取り込まれた標識コレステロールがリポタンパク質から漏出するので、より正確に測定できる。
別の実施形態においては、上記の測定方法で得られたリポタンパク質のコレステロール取り込み能の結果を、被験者が脂質異常症であるか否かの判定に利用してもよい。すなわち、以下の工程を含む、脂質異常症の判定を補助する方法が提供される:
被験者から得た試料中のリポタンパク質と、標識コレステロールとを接触させることにより、標識コレステロールをリポタンパク質に取り込ませる工程、
上記の標識コレステロールを取り込んだリポタンパク質と、リポタンパク質と結合する抗体とを接触させることにより、リポタンパク質と上記の抗体との複合体を形成する工程、
上記の複合体から生じる標識を測定する工程、及び
測定結果に基づいて、上記の被験者の脂質異常に関する情報を取得する工程。
上記の測定方法により健常者及び脂質異常症患者の試料から得た標識の測定結果のデータを蓄積することで、リポタンパク質のコレステロール取り込み能に関する閾値又は基準範囲を定めることができる。そして、その閾値又は基準範囲と被験者の検体を用いた際の測定結果とを比較することで、該被験者の脂質異常に関する情報、すなわち、被験者のリポタンパク質のコレステロール取り込み能が正常又は基準の範囲内であるか否かの情報を取得することができる。この情報に基づいて、被験者が脂質異常症であるか否かの判定を補助することができる。
別の実施形態においては、上記の測定方法に用いるための試薬キットが提供される。すなわち、標識コレステロールを含む第1試薬と、リポタンパク質と結合する抗体を含む第2試薬とを含むリポタンパク質のコレステロール取り込み能測定用試薬キット(以下、単に「試薬キット」ともいう)が提供される。
標識コレステロールを含む第1試薬の形態は、粉末であってもよいし、溶液であってもよい。また、リポタンパク質と結合する抗体を含む第2試薬の形態は、溶液であってもよいし、凍結乾燥品であってもよい。本実施形態では、第1試薬と第2試薬とは、それぞれ別の容器に保存されているか又は個別に包装されていることが好ましい。なお、試料、標識コレステロール、リポタンパク質と結合する抗体及びこれらの取り扱いなどの詳細は、上記の測定方法についての説明で述べたことと同様である。図5Aに、本実施形態の試薬キットの一例を示した。
上記の試薬キットは、リポタンパク質と結合する抗体を固定化するための固相をさらに含んでいてもよい。この場合、標識コレステロールを含む第1試薬と、リポタンパク質と結合する抗体を含む第2試薬と、固相とはそれぞれ別の容器に保管されているか又は個別に包装されていることが好ましい。図5Bに、固相を含む試薬キットの一例を示した。なお、固相についての詳細は、上記の測定方法についての説明で述べたことと同様である。
固相には、リポタンパク質と結合する抗体、好ましくは抗ApoAI抗体があらかじめ固定化されていてもよい。この場合、試薬キットは、標識コレステロールを含む第1試薬と、リポタンパク質と結合する抗体を固定化した固相とを含む構成となる。図5Cに、本実施形態の試薬キットの一例を示した。
上記の試薬キットは、必要に応じて、試料を希釈するための水性媒体、ブロッキング剤、コレステロールのエステル化のための脂肪酸若しくはそれを含む組成物、及び酸化剤などを、それぞれ個別の試薬としてさらに含んでいてもよい。なお、これらについての詳細は、上記の測定方法についての説明で述べたことと同様である。
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1:HDLによるボロンジピロメテン標識コレステロールのエステル化の検討
生体内では、HDLはコレステロールをエステル化して取り込むことから、この実施例では、BODIPY標識コレステロールがHDLのLCAT活性依存的にエステル化されるか否かを検討した。
(1-1) HDL画分の抽出
健常者由来の血清(0.1 ml)に等量の22%ポリエチレングリコール4000(和光純薬工業株式会社)を添加し、懸濁した。得られた懸濁液を室温にて20分間静置した後、3000 rpmで15分間室温にて遠心分離した。そして、上清をHDL画分として回収し、これを4℃にて保存した。
(1-2) BODIPY標識コレステロールのエステル化
上記で得られたHDL画分(20μl)に、LCAT阻害剤である100 mM ヨードアセトアミド(IAA)(和光純薬工業株式会社)を0.4μl(終濃度2mM)もしくは100 mM 5,5'-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)(株式会社同仁化学研究所)を0.4μL(終濃度2mM)又は等量の水を添加し、37℃にて800 rpmで1時間振とうした。そして、得られたHDL含有液の一部を取り、ApoAI測定用キット(N-アッセイ TIA ApoAI-H、ニットーボーメディカル株式会社)を用いてApoAI濃度を測定した。なお、具体的な操作は、該キットに添付のマニュアルに従って行った。測定後、ApoAI濃度が100μg/mlとなるようにHDL含有液を反応バッファー(2%BSA及び2mM リポソーム(日本精化株式会社製)を含むPBS)で希釈した。なお、反応バッファーに含まれるリポソームの組成は、2mM ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、2mM コレステロール及び4mM 水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC)である。また、PBSは、Phosphate buffered saline tablet(Sigma-Aldrich社)を水に溶解して調製した。得られた希釈液(50μl)に0.5 mM BODIPY標識コレステロール(TopFluor Cholesterol、Avanti Polar Lipids社)を0.5μl添加し(終濃度5μM)、37℃にて800 rpmで一晩振とうした。そして、得られた液を、シリカゲルがコートされたガラス基板上にパスツールピペットでスポットし、薄層クロマトグラフィー(TLC)を行った。展開溶媒として、テトラヒドロフラン(THF):ヘキサン:酢酸=3:7:0.2の混合溶媒を用いた。基板上に展開された蛍光標識コレステロールを、蛍光イメージャー(PharosFX、Bio-Rad社製)により488 nmの励起波長で検出した。結果を図1に示す。
(1-3) 結果
図1に示されるように、HDLとBODIPY標識コレステロールとを接触させたレーン(レーンNo.2)では、BODIPY標識コレステロール自体の移動距離とは異なる移動距離を示すバンドが検出されたが、LCAT阻害剤を添加したレーン(レーンNo.3及びNo.4)では、そのようなバンドは検出されなかった。このバンドは、HDLのLCATによりエステル化されたBODIPY標識コレステロールのバンドと考えられる。よって、BODIPY標識コレステロールは、健常者由来HDLのLCAT活性依存的にエステル化されることが確認された。
実施例2:HDLによるニトロベンゾオキサジアゾール(NBD)標識コレステロールのエステル化の検討
この実施例では、NBD標識コレステロールがHDLのLCAT活性依存的にエステル化されるか否かを検討した。
(2-1) NBD標識コレステロールのエステル化
実施例1と同様にして健常者由来の血清検体から得たHDL画分(20μl)に、LCAT阻害剤である100 mM IAAを0.4μl(終濃度2mM)もしくは100 mM DTNBを0.4μL(終濃度2mM)又は等量の水を添加し、37℃にて800 rpmで1時間振とうした。そして、得られたHDL含有液の一部を取り、実施例1と同様にしてApoAI濃度を測定した。測定後、ApoAI濃度が100μg/mlとなるようにHDL含有液を反応バッファーで希釈した。得られた希釈液(50μl)に1mM NBD標識コレステロール(25-NBD Cholesterol、Avanti Polar Lipids社)を1μl添加し(終濃度 20μM)、37℃にて800 rpmで2時間振とうした。そして、得られた液を、シリカゲルがコートされたガラス基板上にパスツールピペットでスポットし、TLCを行った。展開溶媒には、実施例1と同じ混合溶媒を用いた。基板上に展開された蛍光標識コレステロールを、蛍光イメージャー(PharosFX、Bio-Rad社製)により488 nmの励起波長で検出した。結果を図2に示す。
(2-2) 結果
図2に示されるように、HDLとNBD標識コレステロールとを接触させたレーン(レーンNo.2)では、NBD標識コレステロール自体の移動距離とは異なる移動距離を示すバンドが検出されたが、LCAT阻害剤を添加したレーン(レーンNo.3及びNo.4)では、そのようなバンドは検出されなかった。このバンドは、HDLのLCATによりエステル化されたNBD標識コレステロールのバンドと考えられる。よって、NBD標識コレステロールは、健常者由来HDLのLCAT活性依存的にエステル化されることが確認された。
実施例3:本実施形態の方法と従来法との比較
この実施例では、BODIPY標識コレステロール及びHDL捕捉用抗体を用いる本実施形態の方法と、培養細胞を用いる従来方法との測定結果を比較して、本実施形態の方法の性能を評価した。
(3-1) HDL画分の抽出
実施例1と同様にして、PEG4000を用いてヒト血清検体(n=12)からHDL画分を得た。これらのHDL画分を試料として、以下の操作に用いた。
(3-2) 本実施形態の方法による測定
(i) 測定用プレートの準備
固相としての96ウェルマイクロプレート(蛍光測定用黒色プレートH、住友ベークライト株式会社製)の各ウェルに50 mM Tris-HCl(pH 7.5)を200μlずつ添加して洗浄した。この洗浄操作を合計2回行った。各ウェルに、50 mM Tris-HCl(pH 7.5)で10μg/mlの濃度に希釈した抗ApoAI抗体(MONO5030、SANBIO社)の溶液を100μlずつ添加し、4℃にて一晩以上静置した。抗体溶液を除去し、各ウェルにPBSを200μlずつ添加して洗浄した。この洗浄操作を合計3回行った。各ウェルに4%BSA/PBSを200μlずつ添加し、25℃にて500 rpmで3時間振とうした。
(ii) 測定用試料の調製(HDLと標識コレステロールとの接触)
上記で得た各HDL画分の一部を取り、実施例1と同様にしてApoAI濃度を測定した。測定後、ApoAI濃度が0.1μg/ml以下となるように各HDL画分に等量の反応バッファーを添加し、希釈した。得られた各希釈液(300μl)に0.5 mM BODIPY標識コレステロール(TopFluor Cholesterol、Avanti Polar Lipids社)を3μl(終濃度5μM)ずつ添加し、37℃にて800 rpmで2時間振とうした。得られた各液(303μl)に酸化剤(8.8 M 過酸化水素、1.76 mM 亜硝酸ナトリウム及び0.86 mM DTPA)を34μlずつ添加した(各終濃度1M、0.2 mM、0.1 mM)。これらを37℃にて800 rpmで1時間振とうして、標識コレステロールを取り込ませたHDLを含む測定用試料を得た。
(iii) HDLと抗ApoAI抗体との複合体の形成及び蛍光強度の測定
96ウェルマイクロプレートからBSA溶液を除去し、各測定用試料を100μlずつウェルに添加した。そして、プレートを25℃にて600 rpmで1時間振とうして、HDLと抗ApoAI抗体との複合体を形成させた。プレートから測定用試料を除去し、10 mM シクロデキストリン/PBSを100μlずつ各ウェルに添加し、25℃にて600 rpmで15分間振とうした。そして、蛍光強度を蛍光プレートリーダー(Infinite(登録商標)200 Pro、TECAN社製)で測定した(励起光485 nm/蛍光535 nm)。
(3-3) 従来法による測定
(i) 試料の調製
マウスマクロファージ様細胞株J774A.1を、48ウェルプレート(IWAKI製)に10% FBS含有DMEM培地(400μl培地/ウェル)を用いて、70,000 cells/ウェルの濃度で播種した。1日培養した後、培地を除去して、ウェルに、10 mM メチル-β-シクロデキストリン、10% FBS、0.9μM BODIPY標識コレステロール(TopFluor Cholesterol、Avanti Polar Lipids社)及びフェノールレッドを含むDMEM培地を200μlずつ添加した。また、対照として、別のウェルに、10 mM メチル-β-シクロデキストリン、10% FBS、DMSO(900倍希釈)及びフェノールレッドを含むDMEM培地を200μlずつ添加した。そして、細胞を37℃にて5% CO2の雰囲気下で2.5時間インキュベーションした。培地を吸引除去し、血清及びフェノールレッドを含まないDMEM培地を400μlずつ各ウェルに添加して洗浄した。そして、各ウェルに、上記で得たHDL画分をHDL濃度0.78μg/mlで含む、血清及びフェノールレッド不含のDMEM培地を200μlずつ添加した。また、対照として、別のウェルに、ApoAI組換えタンパク質を6μg/mlの濃度で含む血清及びフェノールレッド不含DMEM培地を200μlずつ添加した。プレートを37℃にて5% CO2の雰囲気下で24時間インキュベーションした。
(ii) 蛍光強度の測定
各ウェルの培養上清を新しい96ウェルV底プレートに移し、室温にて1600 rpmで2分間遠心分離した。得られた上清(180μl/ウェル)を新しい96ウェル平底黒色プレート(corning社製又はSUMILON社製)に移した。上清の蛍光強度を蛍光プレートリーダー(Infinite(登録商標)200 Pro、TECAN社製)で測定した(励起光485 nm/蛍光535 nm)。一方で、培養上清を除かれた48ウェルプレートの各ウェルにPBSを500μlずつ添加して洗浄した。各ウェルに可溶化バッファー(50 mM Tris-HCl(pH 7.5)、1% CHAPS、5mM EDTA(pH 8.0)及び150 mM NaCl)を500μlずつ添加した。そして、プレートを25℃にて450 rpmで15分間振とうして、細胞を溶解させた。各ウェルから細胞可溶化液を200μlずつ回収し、上清が移された96ウェル平底黒色プレートの対応するウェルに添加した。上清と細胞可溶化液との混合物の蛍光強度を蛍光プレートリーダー(Infinite(登録商標)200 Pro、TECAN社製)で測定した(励起光485 nm/蛍光535 nm)。
(3-4) 比較
本実施形態の方法による測定結果を横軸にとり、従来法による測定結果を縦軸にとって、各血清検体のデータをプロットすると、直線に近似可能な散布図が得られた。これを図3に示す。また、エクセル(マイクロソフト社)により決定係数R2を求めると、0.7602であった。よって、BODIPY標識コレステロール及びHDL捕捉用抗体を用いたHDLのコレステロール取り込み機能の測定の結果は、培養細胞を用いた従来法による測定結果と相関し、本実施形態の方法は従来法と同程度の性能を示すことが確認された。
比較例:測定用試料の調製手順の検討
この比較例では、抗体によるHDLの捕捉後に蛍光標識コレステロールを取り込ませる手順で測定を行う場合について検討した。
(4-1) HDL画分の抽出
実施例1と同様にして、PEG4000を用いてヒト血清検体(検体1および検体2)からHDL画分を得た。
(4-2) 測定用プレートの準備
実施例3の本実施形態の方法と同様にして、抗ApoAI抗体(MONO5030、SANBIO社)を96ウェルマイクロプレートの各ウェルに固相化し、BSA溶液でブロッキングして、測定用プレートを準備した。
(4-3) 蛍光強度の測定
(i) HDLと抗ApoAI抗体との複合体の形成
上記で得た各HDL画分の一部を取り、実施例1と同様にしてApoAI濃度を測定した。測定後、ApoAI濃度が0.1μg/mlとなるように各HDL画分を反応バッファーで希釈した。得られた各希釈液(300μl)に酸化剤(1M 過酸化水素、200μM 亜硝酸ナトリウム及び100μM DTPA)を34μlずつ添加して、37℃にて800 rpmで1時間振とうした。上記の測定用プレートからBSA溶液を除去し、酸化剤と反応させたHDL画分を100μlずつウェルに添加した。また、陰性対照として、HDL画分を添加しないウェルも用意した。そして、プレートを25℃にて600 rpmで1時間振とうして、HDLと抗ApoAI抗体との複合体を形成させた。プレートからHDL画分を除去し、実施例3と同様にして各ウェルをPBSで3回洗浄した。
(ii) HDLと蛍光標識コレステロールとの接触及び蛍光強度の測定
3μlの0.5 mM BODIPY標識コレステロール(TopFluor Cholesterol、Avanti Polar Lipids社)と、300μlの反応バッファーとを混合した。得られた混合液(303μl)と、酸化剤(34μl)とを混合した。得られた標識コレステロール溶液を100μlずつ、上記のプレートの各ウェルに添加して、37℃にて800 rpmで1時間振とうした。プレートから標識コレステロール溶液を除去し、各ウェルをPBSで5回洗浄した。10 mM シクロデキストリン/PBSを100μlずつ各ウェルに添加し、25℃にて600 rpmで15分間振とうした。そして、蛍光強度を蛍光プレートリーダー(Infinite(登録商標)200 Pro、TECAN社製)で測定した(励起光485 nm/蛍光535 nm)。
(iii) サンドイッチELISA法によるHDLの検出
上記の測定後のプレートからシクロデキストリン溶液を除去し、各ウェルをPBSで3回洗浄した。ApoAI測定用キット(N-アッセイ TIA ApoAI-H、ニットーボーメディカル株式会社)のヤギ抗ApoAI血清をブロッキングバッファー(StartingBlock、Thermo Scientific社)で1000倍に希釈し、得られた希釈液を100μlずつ各ウェルに添加した。プレートを25℃にて600 rpmで1時間振とうした後、希釈液を除去して、各ウェルをPBSで3回洗浄した。HRP標識ウサギ抗ヤギIgGポリクローナル抗体(P 0449、Dako社)をブロッキングバッファー(StartingBlock、Thermo Scientific社)で1000倍に希釈し、得られた希釈液を100μlずつ各ウェルに添加した。プレートを25℃にて600 rpmで1時間振とうした後、希釈液を除去して、各ウェルをPBSで3回洗浄した。化学発光基質溶液(SuperSignal ELISA Pico、37069、Thermo Scientific社)を100μlずつ各ウェルに添加した。プレートを25℃にて600 rpmで2分間振とうした後、発光量をマイクロプレートリーダー(Infinite(登録商標)F200 Pro、TECAN社製)で測定した。
(4-4) 測定結果及び考察
ELISA法によるHDL検出と蛍光強度の測定の結果を、それぞれ図4A及び4Bに示す。図4Aに示されるように、血清検体中のHDLは、プレートに固定化された抗ApoAI抗体によって捕捉されていることが確認された。一方、図4Bに示されるように、HDL画分と蛍光標識コレステロールとを接触させたにも関わらず、蛍光強度は、HDLを添加していない陰性対照と同程度であった。よって、抗ApoAI抗体によってHDLを捕捉してから、標識コレステロールと接触させても、標識コレステロールはHDLに取り込まれないことがわかった。
11:標識コレステロールを含む第1試薬
22:リポタンパク質に結合する抗体を含む第2試薬
33:固相(96ウェルマイクロプレート)

Claims (16)

  1. 試料中のリポタンパク質と、標識コレステロールとを接触させることにより、前記標識コレステロールを前記リポタンパク質に取り込ませる工程と、
    前記標識コレステロールを取り込んだ前記リポタンパク質と、リポタンパク質に結合する抗体とを接触させることにより、前記リポタンパク質と前記抗体との複合体を形成する工程と、
    前記複合体から生じる標識を測定する工程とを含む、リポタンパク質のコレステロール取り込み能を測定する方法。
  2. 前記リポタンパク質が、高比重リポタンパク質である請求項1に記載の方法。
  3. 前記標識コレステロールが、蛍光標識コレステロールであって、
    前記測定工程において、前記複合体から生じる蛍光の強度が測定される、
    請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記標識コレステロールを前記リポタンパク質に取り込ませる工程において、前記標識コレステロールが、前記試料との接触によりエステル化され、エステル化された標識コレステロールが前記リポタンパク質に取り込まれる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記標識コレステロールを前記リポタンパク質に取り込ませる工程、複合体を形成する工程、及び標識を測定する工程を、無細胞系で行う請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記リポタンパク質に取り込まれなかった遊離の標識コレステロールを除去する工程をさらに含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 複合体形成工程の後に、リポタンパク質に取り込まれなかった遊離の標識コレステロールを除去することにより、前記複合体と、遊離の標識コレステロールとを分離する工程をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記リポタンパク質に結合する抗体が、抗ApoAI抗体である請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記抗ApoAI抗体が固相に固定化されている、請求項8に記載の方法。
  10. 前記試料が、血液、血清又は血漿である請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記標識コレステロールが、有極性構造を有する蛍光団を含む請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 前記標識コレステロールが、下記の式(I):
    で表されるボロンジピロメテン骨格構造又は下記の式(II):
    で表されるベンゾオキサジアゾール骨格構造を有する蛍光団を含む請求項11に記載の方法。
  13. 前記ボロンジピロメテン骨格構造を有する蛍光団を含む蛍光標識コレステロールが、下記の式(III):
    で表される蛍光標識コレステロールである請求項12に記載の方法。
  14. 前記ベンゾオキサジアゾール骨格構造を有する蛍光団を含む蛍光標識コレステロールが、下記の式(IV):
    で表される蛍光標識コレステロールである、請求項12に記載の方法。
  15. 標識コレステロールを含む第1試薬と、リポタンパク質と結合する抗体を含む第2試薬とを含むリポタンパク質のコレステロール取り込み能測定用試薬キット。
  16. 固相をさらに含む、請求項15に記載の試薬キット。
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