JP7211591B2 - コレステロール引き抜き能の測定方法 - Google Patents
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Description
[1](1)細胞を含む培養液に安定同位体標識されたコレステロールを添加して培養し、該細胞に該安定同位体標識されたコレステロールを取り込ませる工程、
(2)該コレステロールを取り込ませた細胞を、被験物質存在下で培養する工程、
(3)該細胞から引き抜かれた安定同位体標識されたコレステロールの量を測定する工程、
を含む、被験物質のコレステロール引き抜き能の測定方法。
[2]前記(1)において、前記細胞を含む培養液中における前記安定同位体標識されたコレステロールの濃度が、2μg/mL~30μg/mLである、[1]に記載の方法。
[3]前記(1)において、前記培養の時間が48時間より短い、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]前記(1)において、前記培養液における細胞の濃度が2.0×105cells/mLより高い、[1]~[3]のいずれか1に記載の方法。
[5]前記(2)で得られた培養物に、前記安定同位体とは別の安定同位体で標識されたコレステロールを所定の濃度で添加してその量を測定し、検量線を作成することをさらに含む、[1]~[4]のいずれか1に記載の方法。
[6]前記安定同位体標識されたコレステロールの量の測定が質量分析による定量である、[1]~[5]のいずれか1に記載の方法。
[7]前記被験物質が、血清、血清より分離した高比重リポ蛋白もしくはアポリポ蛋白A-1、又はアポリポ蛋白Bを除去した血清試料である、[1]~[6]のいずれか1に記載の方法。
なお、本明細書において、放射性同位体、蛍光色素、又は安定同位体によりコレステロールを標識することを、単に放射性同位体標識、蛍光標識、安定同位体標識ということがある。
(1-1)コレステロールの取込み(1)
10%の濃度になるようFBS(BIOLOGICAL INDUSTRIES社製,04-001-1A)を添加したDMEM(GIBCO社製)(以下、10%FBS-DMEMという)、1%の濃度になるようFBSを添加したDMEM(以下、1%FBS-DMEMという)、0.2%の濃度になるようBSAを添加したDMEM(以下、0.2%BSA-DMEMという)の各培養液に、J774細胞を0.3×105cells/mL、2.0×105cells/mL、6.0×105cells/mLの濃度になるよう播種した。次いで、コレステロール(2,2,3,4,4,6)-D6(関東化学社製,49123-87)をエタノールで10mg/mLの濃度に溶解したものを添加し、コレステロール終濃度50μg/mL、10μg/mL、2μg/mLの細胞希釈液を調製した。更に、全てのサンプルにACAT(acyl-CoA:cholesterol acyltransferase)阻害剤であるSandoz 58-035(Sigma社製,S9318)を2μg/mLの濃度になるよう添加した。各条件で調製した細胞希釈液を24well培養プレートに0.5mLずつ播き、24時間、48時間、72時間、96時間培養したのち、細胞の培養上清を全て除去してPBSで2回洗浄した。各培養条件を表1に示した。
上記(1-1)“コレステロールの取込み(1)”で得られたPBS洗浄後に残存する細胞について、1wellあたりに残存する細胞数を計測した。
上記(1-1)“コレステロールの取込み(1)”で得られたPBS洗浄後に残存する細胞に、ヘキサンとイソプロパノールを2:1で混合した液(以下、ヘキサン-イソプロパノール抽出液という)を250μLずつ添加し、室温で30分間静置したのち、細胞をピペッティングして回収した(回収細胞液1)。各wellに残った細胞にヘキサン-イソプロパノール抽出液を追加で250μLずつ添加して30分間静置したのち、ピペッティングして回収した(回収細胞液2)。回収細胞液1、回収細胞液2を各々プールして合計500μLとした。続いて12,000rpm、4℃で10分間遠心分離し、各サンプルから上清25μLずつを回収したものを遠心エバポレーターで乾燥して乾燥サンプルを得た。
上記乾燥サンプルに20μLのイソプロパノールを添加して溶解し、そのうち5μLをLC-MSシステムに注入した。LC-MSシステムには、LaChrom(HITACHI社製)、UHRS Q-TOF MS Maxis3G(Bruker社製)、CORTECS UPLC C18(1.6μm,2.1×50mm)(Waters社製)を使用した。この際、流速を0.3mL/min、カラム温度を40℃とし、アセトニトリルとメタノールを4:1で混合した溶液を移動相に使用してアイソクラティック溶出を行った。質量分析には、APCI法を用いた。各サンプルの測定値は、10、5、2、1ng/mLの濃度にそれぞれ希釈したコレステロール(2,2,3,4,4,6)-D6のピーク面積から検量線を作成し、1wellあたりに含まれる細胞中コレステロール量として算出した。なお、上記(1-1)で作製した培養物のうち、細胞生育が不良又はオーバーグロースと判断されたものについては、上記(1-2)~(1-4)の測定は行わなかった。
上記(1-2)の“細胞数の計測”の結果を図1に、上記(1-4)の“質量分析による細胞中コレステロール量の測定”の結果を図2にそれぞれ示した。図1によれば、J774細胞の希釈濃度を6.0×105cells/mL、培養液を10%FBS-DMEM、培養時間を24時間とすることで、コレステロール取込み後の細胞数が最も多く、細胞生育が良好であることが示された。0.2%BSA-DMEMでは細胞が生育しなかった(データ示さず)。また図2によれば、これと同様の条件において、コレステロール取込み量が最も良好であることが示された。以上より、J774細胞の希釈濃度を6.0×105cells/mL、培養液を10%FBS-DMEM、培養時間を24時間とすることが、コレステロール取込み量を高めるうえで望ましいことが明らかとなった。
(2-1)コレステロールの取込み(2)
J774細胞を10%FBS-DMEMで6.0×105cells/mLの濃度に希釈したものに、コレステロール(2,2,3,4,4,6)-D6をエタノールで10mg/mLの濃度に溶解したものを添加し、コレステロール終濃度50μg/mL、20μg/mL、10μg/mL、5μg/mLの細胞希釈液をそれぞれ調製した。更に、全てのサンプルにSandoz 58-035を2μg/mLの濃度になるよう添加した。各条件の細胞希釈液を24well培養プレートに0.5mLずつ播き、24時間培養した。
上記(2-1)“コレステロールの取込み(2)”で得られた細胞について、トリパンブルーで染色される細胞数と染色されない細胞数の比率から、細胞生存率を計測した。
上記(2-1)“コレステロールの取込み(2)”で得られた細胞の培養上清を全て除去してPBSで2回洗浄したのち、0.2%BSA-DMEMにcAMPを0.3mMの濃度になるよう希釈したものを0.25mLずつ添加し、18時間培養した。次いで、トリパンブルーで染色される細胞数と染色されない細胞数の比率から、細胞生存率を計測した。
上記(2-2)“細胞生存率の計測1回目”、及び上記(2-3)“細胞生存率の計測2回目”の結果を図3に示す。図3によれば、コレステロール(2,2,3,4,4,6)-D6を20μg/mL以上の濃度で添加すると、cAMPを添加してから18時間後には、細胞生存率が50%以下まで低下することを示している。一方で、コレステロール(2,2,3,4,4,6)-D6の添加濃度を10μg/mL以下にすると、cAMP添加18時間後も、細胞生存率は70%以上と良好であることを示している。以上より、コレステロール(2,2,3,4,4,6)-D6の添加濃度を10μg/mLとすることが、細胞状態を良好に保つうえで望ましいことが明らかとなった。
(3-1)アポB除去血清検体の調製(1)
PEG6000(和光純薬工業社製,169-09125)を200mM Glycine pH7.4に20%(w/v)の濃度で溶解したものを、血清検体(3種;検体1、2、3)200μLに80μLずつ加えて室温で20分間インキュベートした。次いで、4℃、10,000rpmで30分間遠心分離して上清を回収し、アポB除去血清検体を調製した。
J774細胞を10%FBS-DMEMで6.0×105cells/mLの濃度に希釈したものに、コレステロール(2,2,3,4,4,6)-D6をエタノールで10mg/mLの濃度に溶解したものを添加して、コレステロール終濃度10μg/mLの細胞希釈液を調製した。更に、全てのサンプルにSandoz 58-035を2μg/mLの濃度になるよう添加した。各条件の細胞希釈液を24well培養プレートに0.5mLずつ播き、24時間培養した。
上記(3-2)“コレステロールの取込み(3)”で得られた培養物から培養上清を全て除去した。残った細胞をPBSで2回洗浄したのち、0.2%BSA-DMEMにcAMPを0.3mMの濃度になるよう希釈したものを0.25mLずつ添加し、18時間培養した。次いで、細胞をPBSで2回洗浄後、上記(3-1)“アポB除去血清検体の調製(1)”で得られたアポB除去血清検体3種(検体1、2、3)のいずれかを0.2%BSA-DMEMでそれぞれ2.0%、1.0%、0.5%、0.25%の濃度に希釈したものを0.25mLずつ添加し、2時間培養した。この培養上清を回収した。
上記(3-3)“血清検体によるコレステロールの引抜き”で得られた細胞の培養上清各70μLに、内部標準試料としてコレステロール(3,4)-13C2(太陽日酸社製,488585)をDMEMで8μg/mLに調製したものを10μL(即ちコレステロール(3,4)-13C2を80ng)添加した。次いで、メタノールとクロロホルムを1:2で混合した液を300μL添加し、混合しながら室温で1.5時間インキュベートした。続いて12,000rpm、4℃で5分間遠心分離したのち、下層200μLの1/8量(25μL)を回収して遠心エバポレーターで乾燥し、乾燥サンプルを得た。
上記(3-4)“培養上清からのコレステロール抽出”で得られた乾燥サンプルに、それぞれ20μLのイソプロパノールを添加して溶解した。以降の操作は、上記(1-4)“質量分析による細胞中コレステロール量の測定”と同様にして実施した。なお、培養上清から得られた各サンプルの測定値(培養上清サンプル中(70μL:上記(3-4))における引き抜かれたコレステロールの総量)は、内部標準試料の測定値を用いて下記の補正式から算出した。内部標準試料の測定値は、20、10、5、2、1ng量のコレステロール(3,4)-13C2のピーク面積から検量線を作成して算出した。下記補正式は、(3-4)で調製した下層1/8量からの乾燥サンプル中に内部標準試料(コレステロール(3,4)-13C2)が10ng(80ng×1/8)含まれているという仮定に基づく。
〔補正式〕
培養上清サンプル70μL中における引き抜かれたコレステロールの総量(ng)
=A×[10(ng)/B]×8
A:コレステロール(2,2,3,4,4,6)-D6の測定値(ng)
B:内部標準試料(コレステロール(3,4)-13C2)の測定値(ng)
上記(3-5)“質量分析による培養上清中コレステロール量の測定”の結果を図4に示す。図4によれば、3種いずれのアポB除去血清検体についても、その添加濃度に依存してコレステロール(2,2,3,4,4,6)-D6の測定値が上昇している。これは、添加したアポB除去血清検体に含まれるHDL量に依存して、培養上清中に引き抜かれるコレステロール(2,2,3,4,4,6)-D6の量が増加していることを示している。すなわち、本試験方法によって、HDLによるコレステロール引抜き能の定量的な評価が可能であることが明らかとなった。
(4-1)血清検体によるコレステロールの引抜き(2)
血清検体(13種)を使用して、上記(3-1)“アポB除去血清検体の調製(1)”と同様の手順で、アポB除去血清検体を調製した。上記(3-2)“コレステロールの取込み(3)”及び(3-3)“血清検体によるコレステロールの引抜き”と同様の手順で、ただし血清検体を2.8%の濃度に希釈したものを使用して、またコレステロールとしてコレステロール(25,26,26,26,27,27,27)-D7(関東化学社製,49123-89)を用いて、細胞培養物を得た。該培養物から培養上清を全て回収した。
培養上清を回収した後残った細胞にDNase(10U/mL)含有の1%コール酸ナトリウムを200μLずつ添加して室温で1時間インキュベートした。
上記(4-1)“血清検体によるコレステロールの引抜き(2)”で得られた細胞の培養上清、及び(4-2)“細胞溶解液の調製(1)”で得られた細胞溶解液各30μLに、8.9mol/L KOH-エタノール(1:9)を330μLずつ加え、50℃で2時間インキュベートした。次いで、270μLの水、600μLのヘキサン、内部標準試料としてコレステロール(25,26,26,26)-D4(関東化学社製,49317-86)をDMEMで3μg/mLに調製したものを10μL(即ちコレステロール(25,26,26,26)-D4を30ng)添加した。これを15分間ボルテックスし、12,000rpm、4℃で5分遠心分離して400μLのヘキサン層(上層の2/3量)をマイクロチューブに回収して遠心エバポレーターで乾燥し、乾燥サンプルを得た。
上記(4-1)“血清検体によるコレステロールの引抜き(2)”で得られた細胞の培養上清、及び(4-2)“細胞溶解液の調製(1)”で得られた細胞溶解液各30μLに、0.1mol/L KOH-エタノール(1:1)を600μLずつ加えた。次いで、600μLのヘキサン、内部標準試料としてコレステロール(25,26,26,26)-D4をDMEMで3μg/mLに調製したものを10μL(即ちコレステロール(25,26,26,26)-D4を30ng)添加した。これを10分間ボルテックスし、12,000rpm、4℃で5分遠心分離して400μLのヘキサン層(上層の2/3量)をマイクロチューブに回収して遠心エバポレーターで乾燥し、乾燥サンプルを得た。
上記(4-3)“コレステロール抽出(加水分解あり)(1)”、及び上記(4-4)“コレステロール抽出(加水分解なし)(1)”で得られた各乾燥サンプルに、それぞれ20μLのイソプロパノールを添加して溶解した。以降の操作は、上記(1-4)“質量分析による細胞中コレステロール量の測定”と同様にして、コレステロール量の測定を実施した。なお、培養上清及び細胞溶解液よりコレステロール抽出に供した各サンプル30μL中(上記(4-3)及び(4-4))のコレステロール量は、内部標準試料の測定値を用いて下記の補正式から算出した。内部標準試料の測定値は、20、10、5、2、1ng量のコレステロール(25,26,26,26)-D4のピーク面積から検量線を作成して算出した。下記補正式は、上記(4-3)及び(4-4)で調製したヘキサン層(上層)の2/3量からの乾燥サンプル中に内部標準試料(コレステロール(25,26,26,26)-D4)が20ng(30ng×2/3)含まれているという仮定に基づく。
〔補正式〕
培養上清(又は細胞溶解液)サンプル30μL中のコレステロール量(ng)
=C×[20(ng)/D]×3/2
C:培養上清(又は細胞溶解液)から得られた乾燥サンプル中のコレステロール(25,26,26,26,27,27,27)-D7の測定値(ng)
D:内部標準試料(コレステロール(25,26,26,26)-D4)の測定値(ng)
〔培養上清測定値〕G=E×250(μL)/30(μL)
〔細胞測定値〕H=F×200(μL)/30(μL)
E:培養上清サンプル30μL中のコレステロール量(ng)
F:細胞溶解液サンプル30μL中のコレステロール量(ng)
c-efflux値(%)
=(G:培養上清測定値)/{(G:培養上清測定値)+(H:細胞測定値)}
上記(4-5)“質量分析による培養上清及び細胞中コレステロール量の測定(2)”で求めたc-efflux値の結果を、図5及び図6に示す。図5は、上記(4-3)“コレステロール抽出(加水分解あり)(1)”で得たサンプルのc-efflux値をX、上記(4-4)“コレステロール抽出(加水分解なし)(1)”で得たサンプルのc-efflux値をYとした、各検体の測定値のプロットを示している。最小二乗法による回帰式:y=1.01x、相関係数(r):0.90と、両方法間のc-efflux値の相関性は良好であった。図6は、調べた13検体のうちの4検体(検体4、5、6、7)について“加水分解あり”と“加水分解なし”で得られた各c-efflux値の比較を示している。図6のとおり、加水分解ありとなしの間でc-efflux値は同等であった(図中のp値はt検定の結果を示す(n=3)。p<0.05で有意差なし)。引き抜かれたコレステロールが血清中LCATによりエステル型に転換されることによる測定への影響が懸念されたため、本試験では、サンプル中のコレステロールの加水分解処理の効果を調べた。その結果、加水分解処理をせずとも加水分解処理を施した試験と同等の結果が得られたことから、本試験方法では加水分解処理を省略することができることが明らかとなった。
(5-1)血清検体によるコレステロールの引抜き(3)
血清検体(3種;検体5-1、5-2、5-3)を使用して、上記(3-1)“アポB除去血清検体の調製(1)”と同様の手順で、アポB除去血清検体を調製した。この血清検体を用いて、上記(4-1)と同様の手順で、細胞培養物を得た。該培養物から培養上清を全て回収した。残った細胞を、上記(4-2)“細胞溶解液の調製(1)”と同様に処理して、細胞溶解液を調製した。
上記得られた培養上清及び細胞溶解液から、上記(4-4)“コレステロール抽出(加水分解なし)(1)”と同様にしてコレステロールを抽出し、乾燥サンプルを得た。
上記(5-2)で得られた各検体について、培養上清及び細胞溶解液中のコレステロール量を、下記の(i)内部標準による補正あり、及び(ii)内部標準による補正なし、のそれぞれの方法で同時測定(n=5)した。得られたc-efflux値のC.V.値を(i)及び(ii)の方法毎に算出した。
上記(4-5)“質量分析による培養上清及び細胞中コレステロール量の測定(2)”と同様に補正式を用いてサンプル中のコレステロール量を測定し、培養上清測定値G、細胞測定値H、及びc-efflux値を算出した。
上記(4-5)“質量分析による培養上清及び細胞中コレステロール量の測定(2)”の手順で、ただし補正式を使用せずにサンプル中のコレステロール量を測定した。次いで、以下のように培養上清測定値Kと細胞測定値Lをそれぞれ算出した。
〔培養上清測定値〕K=I×3/2×250(μL)/30(μL)
〔細胞測定値〕L=J×3/2×200(μL)/30(μL)
I:培養上清から得られた乾燥サンプルのコレステロール(25,26,26,26,27,27,27)-D7の測定値(ng)
J:細胞溶解液から得られた乾燥サンプルのコレステロール(25,26,26,26,27,27,27)-D7の測定値(ng)
※上記I及びJは、内部標準試料コレステロール(25,26,26,26)-D4の測定値(ng)による補正を実施していない数値
c-efflux値(%)
=(K:培養上清測定値)/{(K:培養上清測定値)+(L:細胞測定値)}
上記(5-3)“質量分析による培養上清及び細胞中コレステロール量の測定(3)”で得られた(i)内部標準による補正あり、と(ii)内部標準による補正なし、によるc-efflux値のC.V.値(n=5)の結果を、表2に示す。表2によれば、“補正あり”のほうが“補正なし”と比較してC.V.値が明らかに良好であった。すなわち、内部標準による補正を実施することで、より正確なコレステロール量測定が可能なことが明らかとなった。
(6-1)血清検体によるコレステロールの引抜き(4)
血清検体(1種)を使用して、上記(3-1)“アポB除去血清検体の調製(1)”と同様の手順で、アポB除去血清検体を調製した。上記(4-1)と同様の手順で、ただしcAMP添加培地と、cAMP非添加の培地の2種を使用して、更に、コレステロール引抜き時のアクセプターとして、アポB除去血清検体を0.2%BSA-DMEMで5.6%、2.8%、1.4%、0.7%の4濃度に希釈したものと、精製アポA-1(Alfa Aesar,J64506)を16μg/mL、8μg/mL、4μg/mL、2μg/mLの4濃度に希釈したものをそれぞれ使用して、細胞培養物を得た。該培養物から培養上清を全て回収した。残った細胞を用いて、上記(4-2)“細胞溶解液の調製(1)”と同様の手順で、細胞溶解液を調製した。
上記で得られた培養上清及び細胞溶解液から、上記(4-4)“コレステロール抽出(加水分解なし)(1)”と同様にしてコレステロールを抽出し、乾燥サンプルを得た。
上記(6-2)“コレステロール抽出(2)”で得られた各乾燥サンプルに、それぞれ20μLのイソプロパノールを添加して溶解したものを使用して、上記(4-5)“質量分析による培養上清及び細胞中コレステロール量の測定(2)”と同様にしてコレステロール測定を実施した。
測定された各c-efflux値の結果を、図7及び図8に示す。図7及び図8によれば、アポA-1又はアポB除去血清検体の濃度に依存してc-efflux値が上昇した。アポA-1はHDLを構成する成分であり、細胞膜に発現するABCA-1を介してコレステロールを引抜く中心的役割を果たす。したがって本測定方法によってHDLによるコレステロール引抜き能を正しく評価できることが裏付けられた。また、ABCA-1発現を促進する機能を持つcAMPを添加することでコレステロール引抜き量が増加したことから、本試験で確認したコレステロールの引抜きは、ABCA-1を介した経路を含むことが証明された。
(7-1)血清検体によるコレステロールの引抜き(5)
血清検体(2種;検体7-1、7-2)を使用して、上記(3-1)“アポB除去血清検体の調製(1)”と同様の手順で、アポB除去血清検体を調製した。この血清検体を用いて、上記(4-1)と同様の手順で、細胞培養物を得た。該培養物から培養上清を全て回収した。残った細胞を、上記(4-2)“細胞溶解液の調製(1)”と同様に処理して、細胞溶解液を調製した。
上記で得られた培養上清、及び細胞溶解液を使用して、上記(4-4)“コレステロール抽出(加水分解なし)(1)”と同様にしてコレステロールを抽出し、乾燥サンプルを得た。
上記(7-2)“コレステロール抽出(3)”で得られた各乾燥サンプルに、それぞれ20μLのイソプロパノールを添加して溶解したものを使用して、上記(4-5)“質量分析による培養上清及び細胞中コレステロール量の測定(2)”と同様にしてコレステロール測定を実施した。
上記(7-1)~(7-3)までの試験を、同一検体を使用して試験日を変えて再度実施した。
上記(7-3)“質量分析による培養上清及び細胞中コレステロール量の測定(5)”で得られた各c-efflux値の結果(試験2日分)を図9に示す。図9中、p値はt検定の結果を示す(実験1日目:n=3, 実験2日目:n=8、p<0.05で有意差なし)。本測定方法によって日差再現性が良好なc-efflux値が得られた。本測定方法によってHDLによるコレステロール引抜き能を正確に評価できることが判明した。
(8-1)アポB除去血清検体の調製
脂質値正常の血清検体(8種)を使用して、上記(3-1)“アポB除去血清検体の調製(1)”と同様の手順で、アポB除去血清検体を調製した。
J774細胞を1%FBS-DMEMで6.0×105cells/mLの濃度に希釈したものに、コレステロール(1,2)-3H(Perkin Elmer,NET139)を添加して、コレステロール終濃度2μCi/mLの細胞希釈液を調製した。更に、全てのサンプルにSandoz 58-035を2μg/mLの濃度になるよう添加した。得られた細胞希釈液を24well培養プレートの各wellに0.5mLずつ播き、24時間培養した。
上記(8-2)で得られた細胞培養物から培養上清を全て除去した。残った細胞をPBSで2回洗浄したのち、cAMPを0.3mM及びSa・BR>獅р盾・58-035を2μg/mL含む0.2%BSA-DMEMを0.5mLずつ添加し、18時間培養した。次いで、細胞をPBSで2回洗浄後、上記アポB除去血清検体8種を0.2%BSA-DMEMでそれぞれ2.8%の濃度に希釈したものを0.5mLずつ添加し、4時間培養した。この培養上清を回収した。
上記(8-3)“血清検体によるコレステロールの引抜き(6)”で得られた細胞培養物に、培養上清を全て除去した後、ヘキサン-イソプロパノール抽出液を250μLずつ添加して室温で30分間静置したのち、細胞をピペッティングして回収した(回収細胞液1)。各wellに残った細胞にヘキサン-イソプロパノール抽出液を追加で250μLずつ添加して30分間静置したのち、ピペッティングして回収した(回収細胞液2)。回収細胞液1、回収細胞液2を各々プールして合計500μLとし、12,000rpm、4℃で10分間遠心分離した後、各サンプルから上清100μLずつを回収して細胞抽出サンプルとした。
上記(8-3)“血清検体によるコレステロールの引抜き(6)”で得られた培養上清、及び上記(8-4)“ヘキサン-イソプロパノールによる細胞からのコレステロール抽出(3)”で得られた細胞抽出サンプル各100μLに、Picо-Fluor Plus(Perkin Elmer,6013691)を5mLずつ添加し、よく攪拌した後、液体シンチレーションカウンターTri-Carb3100TR(Perkin Elmer)を使用して各サンプル中の放射線量を測定した。得られたDPM値から、以下の式によって1wellあたりの培養上清中に引き抜かれたコレステロール分のDPM値(培養上清測定値O)、及びコレステロール引き抜き後の1wellあたりの細胞中に残存するコレステロール分のDPM値(細胞測定値P)をそれぞれ算出した。
〔培養上清測定値〕O=M×500(μL)/100(μL)
〔細胞測定値〕P=N×500(μL)/100(μL)
M:培養上清サンプルから得られた測定値(DPM)
N:細胞抽出サンプルから得られた測定値(DPM)
c-efflux値(%)
=(O:培養上清測定値)/{(O:培養上清測定値)+(P:細胞測定値)}
上記[実施例4]の(4-1)~(4-5)と同様の方法を実施し、上記(8-1)で調製したアポB除去血清検体8種について、c-efflux値を得た。但し本試験では、(4-3)“コレステロール抽出(加水分解あり)(1)”を実施せず、“加水分解なし”で得られた乾燥サンプルのみ測定を行った。
上記(8-5)及び(8-6)の各試験で得られたc-efflux値の関係を、図10に示す。図10は、上記(8-5)で得た各検体サンプルのc-efflux値をX、上記(8-6)で得た各検体サンプルのc-efflux値をYとして、各検体をプロットしている。最小二乗法による回帰式はy=0.74x+2.8、相関係数(r)は0.75で、両方法間のc-efflux値の相関性は良好であった。すなわち、本発明によるコレステロール引抜き能の測定方法では、放射性同位体標識されたコレステロールを用いた測定法と良好に相関が得られることが判明した。
(9-1)アポB除去血清検体の調製
脂質値正常の血清検体(8種)を使用して、上記(3-1)“アポB除去血清検体の調製(1)”と同様の手順で、アポB除去血清検体を調製した。
J774細胞を10%FBS-DMEMで1.5×105cells/mLの濃度に希釈したものを48well培養プレートに0.5mLずつ播き、24時間培養した。次いで、培養上清を全て除去して、残った細胞を10mM HEPES-MEM(pH7.4)で洗浄したのち、超音波処理でエタノールに溶解したTopFluor Cholesterol(CAS番号878557-19-8、Avanti Polar Lipids社製,810255)を、Sandoz 58-035を含む0.2%BSA,1%FCS-DMEMに濃度25μmol/Lとなるよう希釈したものを、0.25mLずつ添加して、1時間培養した。
上記(9-2)で得られた細胞培養物から培養上清を全て除去した。残った細胞を10mM HEPES-MEM(pH7.4)で洗浄したのち、cAMPを0.3mM及びSandoz 58-035を2μg/mL含む0.2%BSA-DMEMを250μLずつ添加し、16時間培養した。次いで、細胞を10mM HEPES-MEM(pH7.4)で2回洗浄後、上記アポB除去血清検体8種を10mM HEPES-MEM(pH7.4)でそれぞれ2.8%の濃度に希釈したものを250μLずつ添加し、4時間培養した。この培養上清を回収した。
上記(9-3)で得られた細胞培養物から上清を全て除き、残存する細胞に1%コール酸ナトリウム水溶液を200μLずつ添加して室温で4時間インキュベートし、細胞溶解液を調製した。
上記(9-3)“血清検体によるコレステロールの引抜き(7)”で得られた培養上清、及び上記(9-4)“細胞溶解液の調製(5)”で得られた細胞溶解液をサンプルとし、それぞれ96well蛍光測定用プレートの各wellに100μLずつ添加した後、蛍光プレートリーダーINFINITE F PLEX(TECAN)を使用して各サンプル中の蛍光強度を測定した(励起波長485nm、検出波長535nm)。得られた蛍光強度から、以下の式によって1wellあたりの培養上清中に引き抜かれたコレステロール分の蛍光強度(培養上清測定値S)、及びコレステロール引き抜き後の1wellあたりの細胞中に残存するコレステロール分の蛍光強度(細胞測定値T)をそれぞれ算出した。
〔培養上清測定値〕S=Q×250(μL)/100(μL)
〔細胞測定値〕T=R×200(μL)/100(μL)
Q:培養上清サンプルから得られた測定値(intensity)
R:細胞溶解液サンプルから得られた測定値(intensity)
c-efflux値(%)
=(S:培養上清測定値)/{(S:培養上清測定値)+(T:細胞測定値)}
上記[実施例4]の(4-1)~(4-5)と同様の方法を実施し、上記(9-1)で調製したアポB除去血清検体8種について、c-efflux値を得た。但し本試験では、(4-3)“コレステロール抽出(加水分解あり)(1)”を実施せず、“加水分解なし”で得られた乾燥サンプルのみ測定を行った。
上記(9-5)及び(9-6)の各試験で得られたc-efflux値の関係を、図11に示す。図11は、上記(9-5)で得た各サンプルのc-efflux値をX、上記(9-6)で得た各サンプルのc-efflux値をYとして、各検体をプロットしている。最小二乗法による回帰式はy=0.23x+2.3、相関係数(r)は0.72で、両方法間のc-efflux値の相関性は良好であった。すなわち、本発明によるコレステロール引抜き能の測定方法では、蛍光標識されたコレステロールを用いた測定法と良好に相関が得られることが確認された。また、本発明の方法であれば、コレステロールの加水分解処理なしで信頼性あるc-efflux値を得ることが可能であることが再確認された。
(10-1)アポB除去血清検体の調製
脂質値正常の血清検体(41種)を使用して、上記(3-1)“アポB除去血清検体の調製(1)”と同様の手順で、アポB除去血清検体を調製した。
(10-2-1)コレステロールの取込み
上記(3-2)“コレステロールの取込み(3)”と同様の手順で、ただしコレステロールとしてコレステロール(25,26,26,26,27,27,27)-D7(関東化学社製,49123-89)を用いて、細胞培養物を得た。
上記(10-2-1)“コレステロールの取込み”で得られた細胞培養物から培養上清を全て除去した。残った細胞をPBSで2回洗浄したのち、cAMPを0.3mM及びSandoz 58-035を2μg/mL含む0.2%BSA-DMEMを0.5mLずつ添加し、18時間培養した。次いで、細胞をPBSで2回洗浄後、上記アポB除去血清検体41種のいずれかを2.8%含む0.2%BSA-DMEMを250μL添加し、4時間培養した。
上記(10-2-1)“コレステロールの取込み”で得られた細胞培養物から培養上清を全て除去した。残った細胞をPBSで2回洗浄したのち、cAMPを0.3mM及びSandoz 58-035を2μg/mL含む0.2%BSA-DMEMを0.5mLずつ添加し、18時間培養した。次いで、細胞をPBSで2回洗浄後、DNase(10U/mL)含有の1%コール酸ナトリウムを200μLずつ添加して室温で1時間インキュベートした(すなわち、アクプター非添加の細胞を用いて細胞溶解液を調製した)。
上記(10-2-2)“血清検体によるコレステロールの引抜き(8)”で得られた細胞の培養上清、及び(10-2-3)“細胞溶解液の調製(6)”で得られた細胞溶解液各30μLに、水-メタノール(5:18)を230μLずつ加えた。次いで、360μLのクロロホルム、内部標準試料としてコレステロール(25,26,26,26)-D4をDMEMで12μg/mLに調製したものを10μL(即ちコレステロール(25,26,26,26)-D4を120ng)添加した。これを5分間ボルテックスし、12,000rpm、4℃で5分遠心分離して120μLのクロロホルム層(下層の2/7量)をマイクロチューブに回収して遠心エバポレーターで乾燥し、乾燥サンプルを得た。
上記(10-2-4)“コレステロール抽出”で得られた各乾燥サンプルに、それぞれ20μLのイソプロパノールを添加して溶解した。以降の操作は、上記(1-4)“質量分析による細胞中コレステロール量の測定”と同様にして実施した。なお、培養上清及び細胞溶解液よりコレステロール抽出に供した各サンプル30μL中(上記(10-2-4))のコレステロール量は、内部標準試料の測定値を用いて下記の補正式から算出した。内部標準試料の測定値は、20、10、5、2、1ng量のコレステロール(25,26,26,26)-D4のピーク面積から検量線を作成して算出した。下記補正式は、上記(10-2-4)で調製したクロロホルム層(下層)の2/7量からの乾燥サンプル中に内部標準試料(コレステロール(25,26,26,26)-D4)が34ng(120ng×2/7)含まれているという仮定に基づく。
〔補正式〕
培養上清(又は細胞溶解液)サンプル30μL中のコレステロール量(ng)
=U×[34(ng)/V]×7/2
U:培養上清(又は細胞溶解液)から得られた乾燥サンプルのコレステロール(25,26,26,26,27,27,27)-D7の測定値(ng)
V:内部標準試料コレステロール(25,26,26,26)-D4の測定値(ng)
〔培養上清測定値〕
Y=W×250(μL)/30(μL)
〔細胞測定値〕
Z=X×200(μL)/30(μL)
W:培養上清サンプル30μL中のコレステロール量(ng)
X:細胞溶解液サンプル30μL中のコレステロール量(ng)
最後に、細胞に取り込まれたコレステロール量に対する培養上清中に引き抜かれたコレステロール量の割合を、c-efflux値として以下の式によって算出した。
〔c-efflux値(%)〕
=(Y:培養上清測定値)/(Z:細胞測定値)
(10-3-1)コレステロールの取込み
上記(8-2)“コレステロールの取込み”と同様の手順を実施した。
上記(10-1)“アポB除去血清検体の調製”で調製したアポB除去血清検体を使用して、上記(8-3)“血清検体によるコレステロールの引抜き(6)”と同様の手順を実施した。
(10-3-1)“コレステロールの取込み”で得られた細胞培養物から培養上清を全て除去した。残った細胞をPBSで2回洗浄したのち、cAMPを0.3mM及びSandoz 58-035を2μg/mL含む0.2%BSA-DMEMを0.5mLずつ添加し、18時間培養した。次いで、細胞をPBSで2回洗浄してヘキサン-イソプロパノール抽出液を250μLずつ添加した。次いで室温で30分間静置したのち、細胞をピペッティングして回収した(回収細胞液1)。各wellに残った細胞にヘキサン-イソプロパノール抽出液を追加で250μLずつ添加して30分間静置したのち、ピペッティングして回収した(回収細胞液2)。回収細胞液1、回収細胞液2を各々プールして合計500μLとし、12,000rpm、4℃で10分間遠心分離した後、各サンプルから上清100μLずつを回収して細胞抽出サンプルとした(すなわち、アクプター非添加の細胞を用いて細胞抽出サンプルを調製した)。
上記(10-3-2)“血清検体によるコレステロールの引抜き(9)”で得られた細胞培養物の培養上清、及び上記(10-3-3)“ヘキサン-イソプロパノールによる細胞からのコレステロール抽出(4)”で得られた細胞抽出サンプル各100μLに、Picо-Fluor Plus(Perkin Elmer,6013691)を5mLずつ添加し、よく攪拌した後、液体シンチレーションカウンターTri-Carb3100TR(Perkin Elmer)を使用して各サンプル中の放射線量を測定した。得られたDPM値から、以下の式によって1wellあたりの培養上清中に引き抜かれたコレステロール分のDPM値(培養上清測定値)、及びコレステロール引き抜き前の1wellあたりの細胞中に取り込まれているコレステロール分のDPM値(細胞測定値)をそれぞれ算出した。
〔培養上清測定値〕
C2=A2×500(μL)/100(μL)
〔細胞測定値〕
D2=B2×500(μL)/100(μL)
A2:培養上清サンプルから得られた測定値(DPM)
B2:細胞抽出サンプルから得られた測定値(DPM)
次に、細胞に取り込まれたコレステロール量に対する培養上清中に引き抜かれたコレステロール量の割合を、c-efflux値として以下の式によって算出した。
〔c-efflux値(%)〕
=(C2:培養上清測定値)/(D2:細胞測定値)
(10-4-1)コレステロールの取込み
上記(9-2)“コレステロールの取込み”と同様の手順を実施した。
上記(10-1)“アポB除去血清検体の調製”で調製したアポB除去血清検体を使用して、上記(9-3)“血清検体によるコレステロールの引抜き(7)”と同様の手順を実施した。
(10-4-1)“コレステロールの取込み”で得られた細胞培養物から培養上清を全て除去した。残った細胞を10mM HEPES-MEM(pH7.4)で洗浄したのち、cAMPを0.3mM及びSandoz 58-035を2μg/mL含む0.2%BSA-DMEMを250μLずつ添加し、16時間培養した。次いで、細胞を10mM HEPES-MEM(pH7.4)で2回洗浄し、1%コール酸ナトリウムを200μLずつ添加して室温で4時間インキュベートした(すなわち、アクプター非添加の細胞を用いて細胞溶解液を調製した)。
上記(10-4-2)“血清検体によるコレステロールの引抜き(10)”で得られた細胞培養物の培養上清、及び上記(10-4-3)“細胞溶解液の調製(7)”で得られた細胞溶解液をサンプルとし、それぞれ96well蛍光測定用プレートの各wellに100μLずつ添加した後、蛍光プレートリーダーINFINITE F PLEX(TECAN)を使用して各サンプル中の蛍光強度を測定した(励起波長485nm、検出波長535nm)。得られた蛍光強度から、以下の式によって1wellあたりの培養上清中に引き抜かれたコレステロール分の蛍光強度(培養上清測定値)、及びコレステロール引き抜き前の1wellあたりの細胞中に取り込まれているコレステロール分の蛍光強度(細胞測定値)をそれぞれ算出した。
〔培養上清測定値〕
G2=E2×250(μL)/100(μL)
〔細胞測定値〕
H2=F2×200(μL)/100(μL)
E2:培養上清サンプルから得られた測定値(intensity)
F2:細胞溶解液サンプルから得られた測定値(intensity)
次に、細胞に取り込まれたコレステロール量に対する培養上清中に引き抜かれたコレステロール量の割合を、c-efflux値として以下の式によって算出した。
〔c-efflux値(%)〕
=(G2:培養上清測定値)/(H2:細胞測定値)
上記(10-2)“安定同位体標識されたコレステロールの引抜き能の測定(3)”、(10-3)“放射性同位体標識されたコレステロールの引抜き能の測定”、ならびに(10-4)“蛍光標識されたコレステロールの引抜き能の測定”の各試験で得られたc-efflux値の相関を図12に示す。41検体について、図12(A)は、上記(10-3)で得たc-efflux値(X軸)と、上記(10-2)で得たc-efflux値(Y軸)についてのプロットを示し、図12(B)は、上記(10-4)で得たc-efflux値(X軸)と、上記(10-2)で得たc-efflux値(Y軸)についてのプロットを示し、図12(C)は、上記(10-3)で得たc-efflux値(X軸)と、上記(10-4)で得たc-efflux値(Y軸)についてのプロットを示す。(A)では、最小二乗法による回帰式:y=0.94x+1.2、相関係数(r):0.73と、両方法間のc-efflux値の相関性は良好であった。一方(B)では、回帰式:y=0.28x+3.2、相関係数(r):0.47、また(C)では、回帰式:y=1.2x+13、相関係数(r):0.55と、いずれの場合でも(A)と比較して良好な相関性は得られなかった。この結果から、本発明の方法であれば、従来の蛍光色素を標識物質として使用した方法以上に、ゴールドスタンダートといわれている放射性同位体を標識物質として使用した方法との相関性が高い結果が得られることを確認した。
Claims (5)
- (1)細胞を含む培養液に安定同位体標識されたコレステロールを添加して培養し、該細胞に該安定同位体標識されたコレステロールを取り込ませる工程、
(2)該コレステロールを取り込ませた細胞を、被験物質存在下で培養する工程、
(3)該(2)で得られた培養物に、該安定同位体とは別の安定同位体で標識されたコレステロールを所定の濃度で添加してその量を測定し、検量線を作成する工程、
(4)該細胞から引き抜かれた該(1)で添加した安定同位体標識されたコレステロールの量を測定し、得られた測定値を該検量線を用いて補正する工程、
を含む、被験物質のコレステロール引き抜き能の測定方法。 - 前記(1)において、前記細胞を含む培養液中における前記安定同位体標識されたコレステロールの濃度が、2μg/mL~30μg/mLである、請求項1記載の方法。
- 前記(1)において、前記培養の時間が48時間より短い、請求項1又は2記載の方法。
- 前記(1)において、前記培養液における細胞の濃度が2.0×105cells/mLより高い、請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
- 前記安定同位体標識されたコレステロールの量の測定が質量分析による測定である、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
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