JP2016079240A - 水なし平版印刷インキ - Google Patents
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Abstract
Description
近年、湿し水に関わる作業の煩雑さ及び環境上の問題を解決する方法として、湿し水を版面に供給しなくてもインキ反発性を示す性質を有するシリコーンゴム層を非画線部とし、それ以外の部分を画線部とする印刷版を用いて行う水なし平版印刷方法が実用化されている。
印刷インキの物性が変動すると、印刷物の汚れ、画線の欠損、用紙の紙剥け(エッジピック)などの印刷適性の不良が起きやすい。
尚、タックとは、例えば2000年朝倉書店発行の色材工学ハンドブックの記載に有る通り、インキがローラー間で練られつつ転移していく際にインキ膜が分裂して示す粘着性を言う。測定にはインコメーターを用いる。
さらに該印刷インキを用いる印刷方法であって、印刷時にインキの物性を安定させて印刷品質を向上させる印刷方法を提供することを課題とする。
(1)
すなわち本発明は、下記の条件(a)及び(b)を全て満足する水性平版印刷インキである。
(a)顔料、水分散性樹脂(A)、及び水(W)を含有する。
(b)20℃において、水の溶解度が5〜80質量%である有機溶媒(B)を含有する。
(2)
さらに本発明は、水酸基を2個以上有し、沸点が140℃以上であって、且つ20℃において水と任意の割合で溶解する水溶性有機溶媒(C)を含有する前記(1)に記載の水性平版印刷インキである。
(3)
さらに本発明は、前記有機溶媒(B)が、次の式(1)〜(4)で表される4種類の化合物から任意に選ばれる一つ以上である前記(1)または(2)のいずれかに記載の水性平版印刷インキ。
(a)炭素数3〜18の飽和若しくは不飽和脂肪族鎖。
(b)フェニル基。
(c)ベンジル基。
式(1)〜(4)において、Ytは水素又はメチル基である。
式(1)〜(4)において、Ztは水素又はメチル基である。
式(1)〜(4)において、0≦mu≦15であり、0≦nv≦15であり、
且つmu+nv≧1である。
尚、t、u及びvは1〜4の範囲の任意の整数である。
(4)
さらに本発明は、前記有機溶媒(B)が、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノラウリルエーテル、トリエチレングリコールモノラウリルエーテル、テトラエチレングリコールモノラウリルエーテル、ペンタエチレングリコールモノラウリルエーテル、テトラエチレングリコールモノオレイルエーテル及びオクタエチレングリコールモノオレイルエーテルからなる群から任意に選ばれる一つ以上の化合物である前記(3)記載の水性平版印刷インキである。
(5)
さらに本発明は、印刷時に、少なくともインキ壺、インキングロール、版、及びブランケットから成る印刷ユニットを加湿しながら印刷することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の水性平版印刷インキの印刷方法である。
(6)
さらに本発明は、前記の印刷ユニットを加湿しながら印刷することを、水を加熱せずに加湿することによって行う前記(5)記載の水性平版印刷インキの印刷方法である。
(7)
さらに本発明は、前記の水を加熱せずに加湿することを、超音波加湿器を用いて行う前記(6)記載の水性平版印刷インキの印刷方法である。
(8)
さらに本発明は、印刷ユニットの一部又は全体を覆って加湿する前記(5)記載の水性平版印刷インキの印刷方法である。
さらに本発明の印刷方法によれば、本発明の水なし平版印刷インキを用いて印刷する場合に、インキの物性の変動がより起こりにくく、安定して印刷を行うことができる。
本発明の水なし平版印刷インキは、顔料、水分散性樹脂(A)、及び水(W)を含有し、且つ20℃において水を有機溶媒に溶解する場合に、水の溶解度が5〜80質量%である有機溶媒(B)を含有する。
前記水分散性樹脂(A)としては、水分散性、或いは水溶性の合成樹脂であれば特に限定されないが、例えばそれぞれ水分散性或いは水溶性の、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、α−オレフィンマレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂(アルキド樹脂も含む)及びポリウレタン樹脂から成る群から任意に選ばれる一つ以上を用いることができる。これらは単独でも、複数を併用することもできる。
なお、以下に挙げる樹脂についても、同様の手法で水溶化または水分散化が可能である。
この有機溶媒(B)としては、次の式(1)〜(4)で表される4種類の化合物から任意に選ばれるものが好ましく用いられる。任意に選んだ一つ以上を任意に混合して用いることができる。
(a)炭素数3〜18の飽和若しくは不飽和脂肪族鎖。
(b)フェニル基。
(c)ベンジル基。
式(1)〜(4)において、Ytは水素又はメチル基である。
式(1)〜(4)において、Ztは水素又はメチル基である。
式(1)〜(4)において、0≦mu≦15であり、0≦nv≦15であり、
且つmu+nv≧1である。
尚、t、u及びvは1〜4の範囲の任意の整数である。
また、有機溶媒(B)は印刷中に蒸発揮散しにくいためにインキの機上安定性が向上し、インキの物性の変動が減少して、画線部の欠損や用紙の紙向け(エッジピック)が軽減すると考えられる。
前記の有機溶媒(B)の印刷インキ中の含有量は、1〜10質量%がより好ましく、さらに好ましくは3〜7質量%である。含有量がこの範囲より少ないと耐地汚れ適性を向上させる効果が小さく、多いと粘弾性が低下し効果が得られにくい。
この水溶性有機溶媒(C)としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、グリセリン、ジグリセリン、アセチレンジオール、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600等が挙げられる。これらの中でも、グリセリンが好ましい。
前記〔(a)/(c)〕が0.8未満の場合、乾燥後のインキ皮膜中に残留する水溶性有機溶媒の比率が大きいため、表面のべたつきが残り、乾燥皮膜が得られない。
前記〔(a)/(c)〕が2.2を超える場合、インキ中の樹脂含有量が多くなり、インキ粘度及びタックが高くなりすぎて版の画線部への着肉が悪く、良好な品質の印刷物が得られない。
前記〔(c)/(w)〕が0.8未満の場合、インキ中の水分含有量が多く、また樹脂含有量が少なすぎるため、インキ粘度及びタックが低すぎて、版の非画線部からインキが剥がれにくくなり、良好な品質の印刷物が得られない。
前記〔(c)/(w)〕が2.5を超える場合、インキ中の水分含有量が少なすぎるため、印刷中にインキ中の水分含有量が蒸発等により減少した場合にインキ粘度及びタックが増大し、良好な品質の印刷物が得られない。
無機顔料としては硫酸バリウム、酸化チタン、亜鉛華、弁柄、アルミナホワイト、炭酸カルシウム、群青、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウム粉等が例示される。
有機顔料としては、溶性アゾ顔料(アゾレーキ顔料)、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、無金属フタロシアニン顔料、縮合多環顔料、及び酸性若しくは塩基性染料のレーキ顔料が例示される。
前記の有機顔料を例示すれば、溶性アゾ顔料(アゾレーキ顔料)としてはアセト酢酸アニリド系、ピラゾロン系、β−ナフトール系、β−オキシナフトエ酸系及びβ−オキシナフトエ酸アニリド系が例示される。前記の不溶性アゾ顔料としてはアセト酢酸アニリド系モノアゾ、アセト酢酸アニリド系ジスアゾ、ピラゾロン系モノアゾ、ピラゾロン系ジスアゾ、β−ナフトール系、β−オキシナフトエ酸アニリド系モノアゾ及びβ−オキシナフトエ酸アニリド系ジスアゾが例示される。前記の縮合アゾ顔料としてはアセト酢酸アニリド系及びβ−オキシナフトエ酸アニリド系が例示される。前記の銅フタロシアニン顔料としては銅フタロシアニン、ハロゲン化銅フタロシアニン及びスルホン化銅フタロシアニンレーキが例示される。前記の縮合多環顔料としてはアントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系及び金属錯体系等の顔料が例示される。
前記植物油としては、大豆油、亜麻仁油、キリ油、ひまし油、脱水ひまし油、コーン油、サフラワー油、南洋油桐油、再生植物油、カノール油等の油類及びこれらの熱重合油、酸化重合油が挙げられる。
前記植物油由来脂肪酸エステルとしては、アマニ油脂肪酸メチルエステル、アマニ油脂肪酸エチルエステル、アマニ油脂肪酸プロピルエステル、アマニ油脂肪酸ブチルエステル、大豆油脂肪酸メチルエステル、大豆油脂肪酸エチルエステル、大豆油脂肪酸プロピルエステル、大豆油脂肪酸ブチルエステル、パーム油脂肪酸メチルエステル、パーム油脂肪酸エチルエステル、パーム油脂肪酸プロピルエステル、パーム油脂肪酸ブチルエステル、ひまし油脂肪酸メチルエステル、ひまし油脂肪酸エチルエステル、ひまし油脂肪酸プロピルエステル、ひまし油脂肪酸ブチルエステル、再生植物油のエステル、南洋油桐油のエステル等が挙げられる。
前記植物油を原料とするエーテルとしては、ジ−n−オクチルエーテル、ジ−ノニルエーテル、ジヘキシルエーテル、ノニルヘキシルエーテル、ノニルブチルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジデシルエーテル、ノニルオクチルエーテル等が挙げられる。
前記印刷機周辺を加湿する方法としては、印刷ユニット全体を加湿する方法があるが、印刷ユニット全体ではなく、その一部を加湿してもよい。
印刷ユニット全体又はその一部を加湿する場合は、印刷ユニットをビニールシートやプラスチックケース等で覆い、加湿することができる。
また印刷ユニットを加湿するために、加湿器、水供給部及び湿度センサー等からなる加湿装置が設けられる。湿度センサーは加湿しようとする印刷ユニット近傍の湿度を計測するために設けられ、その値に応じて加湿量を調節する。
<樹脂製造例>
還流冷却器、攪拌機、温度計、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応容器に、イソプロピルアルコール500部を仕込んで撹拌を開始し、80℃まで昇温した。ここに窒素気流下で、スチレン100部、メチルメタクリレート160部、ブチルアクリレート140部、アクリル酸100部およびt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート30部とを5時間かけて連続滴下した。80℃で2時間攪拌後、IPAを減圧脱溶剤にて留去することにより固形アクリル樹脂(R−1)を得た。この固形アクリル樹脂(R−1)の酸価は156mgKOH/gであった。
下記表1に示す組成で、ワニス1を調製した。なお、表中のDMEAはジメチルエタノールアミンを表す。
次いで、下記表2〜表4に示す組成で、前記ワニス1を含有する実施例及び比較例の印刷インキを製造し、次いで、後述する方法で評価した。評価結果をそれぞれの表に示す。顔料はDIC株式会社製の藍顔料FASTOGEN BLUE FDB15を用いた。
尚、表3はトリプロピレングリコールモノブチルエーテルの含有量を変化させた実施例であり、その含有量が5部のものは実施例4と同じ組成である。
比較例3および4は、水の溶解度が5%より低い有機溶媒(トリデカノール)若しくは植物油を含有するために、耐地汚れ適性を向上させる安定的な効果が得られず、劣る結果となった。
印刷適性の評価として、耐地汚れ適性を下記の方法で評価した。
東洋精機(株)製のインコメーターを用いる。画線が形成されたプレステック社製の水なし版をインコメーターの上部ゴムローラーに貼り付け、インキ0.5ccをローラーに塗布する。ローラー温度32℃で回転スピードを50rpm、100rpm及び150rpmにした場合の3条件にて、1分間回転させた時の版上の画線の形成度合い及び非画線部の汚れの程度を目視で観察して、水なし印刷適性を評価した。
評価は次に記載の1〜4の4段階で、4が最も優れる。
4:印刷適性が非常に優れる。回転スピード50rpm、100rpm及び150rpmのいずれにおいても画線が再現されており、非画線部へのインキの付着は無い。
3:印刷適性が良好である。回転スピード50rpmでは非画線にインキがやや付着する傾向があるが、100rpm及び150rpmでは画線が再現され、汚れもほとんど無い。
2:印刷適性が標準的なレベルである。回転スピード100rpmでは非画線にインキがやや付着する傾向があるが、150rpmでは画線が再現され、汚れもほとんど無い。
1:印刷適性が実用レベルにない。回転スピード50rpm、100rpm及び150rpmのいずれにおいても非画線にインキの汚れが付着したままで画線が形成されなかったり、或いは画線へのインキ着肉が悪かったりして、画線が再現できない。
印刷時に、印刷ユニットを加湿することによって印刷インキの物性の変動を少なくし、安定した印刷が行えるようにすることについて、以下に記載の方法で実験評価を行った。
尚、本実験には表2の実施例2の印刷インキを用いた。
東洋精機(株)製のインコメーターを用いる。インコメーター全体をビニールシートで覆い、超音波加湿器で内部を加湿する。ビニールシート内部に湿度センサーを設置し、湿度が80〜90%RHに保たれるように加湿水量を調節した。
インキ1.31ccをインコメーターのロールに塗布し、ロール温度32℃、回転スピード400rpmに設定して回転。測定初期のタック値と、その1分後のタック値を読み取り、タックの経時的な変動(タック値の変化量)を測定し、機上安定性を評価した。結果を表5に示す。評価は次の1〜3の3段階で、3が最も優れる。
3:タックの変動が少ない。
2:タックの変動があるが実用上問題がない。
1:タックの変動が大きく実用レベルにない。
インコメーターは前記の通り、印刷インキのタックの測定器である。本器を用いることにより回転するロール上のインキの挙動を実際の印刷機に近い条件で観察することができるため、実際の印刷機に代えてインコメーターを用いて前記の方法で評価を行った。
(評価結果)
表5より、加湿することによって機上安定性が改善されることがわかる。
Claims (8)
- 下記の条件(1)及び(2)を全て満足する水性平版印刷インキ。
(1)顔料、水分散性樹脂(A)、及び水(W)を含有する。
(2)20℃において、水の溶解度が5〜80質量%である有機溶媒(B)を含有する。 - 水酸基を2個以上有し、沸点が140℃以上であって、且つ20℃において水と任意の割合で溶解する水溶性有機溶媒(C)を含有する請求項1に記載の水性平版印刷インキ。
- 前記有機溶媒(B)が、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノラウリルエーテル、トリエチレングリコールモノラウリルエーテル、テトラエチレングリコールモノラウリルエーテル、ペンタエチレングリコールモノラウリルエーテル、テトラエチレングリコールモノオレイルエーテル及びオクタエチレングリコールモノオレイルエーテルからなる群から任意に選ばれる一つ以上の化合物である請求項3記載の水性平版印刷インキ。
- 印刷時に、少なくともインキ壺、インキングロール、版、及びブランケットから成る印刷ユニットを加湿しながら印刷することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水性平版印刷インキの印刷方法。
- 前記の印刷ユニットを加湿しながら印刷することを、水を加熱せずに加湿することによって行う請求項5記載の水性平版印刷インキの印刷方法。
- 前記の水を加熱せずに加湿することを、超音波加湿器を用いて行う請求項6記載の水性平版印刷インキの印刷方法。
- 印刷ユニットの一部又は全体を覆って加湿する請求項5記載の水性平版印刷インキの印刷方法。
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