以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
(1)草刈機1の構成
図1に示すように、本実施形態の草刈機1は、メインパイプ2と、制御ユニット3と、駆動ユニット4と、ハンドル6とを備えている。メインパイプ2は、長尺かつ中空の棒状に形成されている。メインパイプ2の後端側に制御ユニット3が設けられ、メインパイプ2の前端側に駆動ユニット4が設けられている。
駆動ユニット4は、図1及び図2に示すように、モータハウジング16と、刈刃17とを備えている。刈刃17は、草や小径木などの刈り取り対象物(以下「草等」ともいう)を刈り取るための作業要素である。刈刃17は、金属製であって、円板状の形状をなしており、外周全体に渡って鋸刃状の歯が形成されている。メインパイプ2の前端側には、カバー5(図2では図示略)が設けられている。このカバー5は、刈刃17により刈り取られた草等が作業者(草刈機1の使用者)に飛んでくることを抑止するために設けられている。
モータハウジング16の内部には、図2に示すように、刈刃17を回転駆動させるためのモータ50が搭載されている。モータ50の回転(詳しくはモータ50の出力軸51の回転)は、減速機構52を介して作業要素回転軸53に伝達される。作業要素回転軸53には、刈刃17が装着されている。モータ50が回転すると、その回転が作業要素回転軸53に伝達されて、作業要素回転軸53と共に刈刃17が回転する。
刈刃17がモータ50によって回転駆動されているときに、刈刃17の外周部分を草等に当接させることで、草等を切断することができ、草等の刈り取り作業を行うことができる。なお、本実施形態のモータ50は、ブラシレスモータである。
メインパイプ2全体のうち、前端から一定長の部分は、図2に示すように、モータハウジング16内に挿入されてモータハウジング16に固定されている。
なお、本実施形態の草刈機1は、草等を刈り取るための作業要素として、刈刃17に代えて、ナイロンコードを用いることもできる。即ち、刈刃17は、モータハウジング16に対して着脱可能に構成されている。そして、刈刃17に代えて、図3に例示するように、ナイロンコードアセンブリ100を装着することができる。
ナイロンコードアセンブリ100は、略円筒状のスプール101と、このスプール101に収容されたナイロンコード102と、カバー103とを備える。カバー103は、モータハウジング16に対して固定される。一方、スプール101は、作業要素回転軸53に装着され、作業要素回転軸53と共に回転可能である。つまり、スプール101は、刈刃17と同様にモータ50の回転力が伝達されて回転する。
スプール101の側面2箇所には、ナイロンコード102を引き出すための穴が形成されており、この2箇所の穴からナイロンコード102が引き出されている。これにより、スプール101を回転させ、その回転中にナイロンコード102を草等に当接させることで、草等を刈り取ることができる。
また、スプール101の回転中に、スプール101の底面101aで地面を叩くなどして、スプール101の底面101aに対して回転軸上方向の外力を加える動作(以下「タップ」という)を行うと、スプール101に収容されているナイロンコード102が、遠心力によって少しずつ送り出される。送り出されたナイロンコード102は、その先端側が、カバー103の内側面に設けられているカッタ105によって切断される。つまり、スプール101の回転中にタップ作業を行うことで、新しいナイロンコード102を送り出すと共に、ナイロンコード102における先端側の古い部分を切断することができる。
ここで、草刈機1に対し、左右方向Dx、上下方向Dy、及び前後方向Dzの3つの方向を規定する。即ち、図1及び図2(特に図2)に示すように、メインパイプ2の軸心2aと平行な方向を前後方向Dzとする。また、前後方向Dzに垂直な方向であって且つ刈刃17の回転面に平行な方向を左右方向Dxとする。また、左右方向Dx及び前後方向Dzの双方に垂直な方向を上下方向Dyとする。
ハンドル6は、図1に示すように、U字状に形成されており、メインパイプ2の長さ方向における中間位置近傍でメインパイプ2に接続されている。ハンドル6の両端のうち一端側には作業者が右手で把持する右グリップ7が設けられ、他端側には作業者が左手で把持する左グリップ8が設けられている。
右グリップ7の先端側には、正逆切替レバー9、ロックオフボタン10、及びトリガ引金11が設けられている。正逆切替レバー9は、モータ50の回転方向、つまり刈刃17の回転方向を、正回転又は逆回転の何れかに切り替えるためのスイッチである。正逆切替レバー9には、例えばロッカースイッチが採用されている。作業者が正逆切替レバー9の一方側(例えば左側)を押すと刈刃17の回転方向は正回転(例えば左回転)に設定され、作業者が正逆切替レバー9の他方側(例えば右側)を押すと刈刃17の回転方向は逆回転(例えば右回転)に設定される。なお、正回転は、草等を刈り取る際に設定すべき回転方向であり、逆回転は、刈刃17に絡まった草等を取り除く際に設定すべき回転方向である。
トリガ引金11は、刈刃17の回転又は停止を指示するための操作部材である。右グリップ7の内部には、トリガ引金11と連動して動作するトリガスイッチ67が内蔵されている。トリガスイッチ67は、トリガ引金11が操作されるとオンしてトリガ引金11の非操作時にはオフし、そのオン、オフ状態を示すトリガスイッチ信号を出力する。
後述するメインスイッチ24がオンされて草刈機1が起動(詳しくは後述するメインコントローラ30が起動)した状態で、作業者がトリガ引金11を引き操作することによりトリガスイッチ67がオンすると、モータ50への通電が行われ、モータ50が回転(ひいては刈刃17が回転)する。
トリガ引金11は、ロックオフボタン10を押した状態でなければオンすることはできない。ロックオフボタン10は、刈刃17の誤動作を防止するためのボタンである。ロックオフボタン10が押されていない状態では、ロックオフボタン10がトリガ引金11に機械的に係合することにより、トリガ引金11の動きが規制され、オンされない。
右グリップ7の下端と制御ユニット3の前端の間には、制御配線パイプ12が設けられている。制御配線パイプ12は、中空の棒状に形成されており、内部には、トリガスイッチ67及び正逆切替レバー9と制御ユニット3とを電気的に接続するための配線である制御用ハーネス39(図5参照)が配設されている。
制御ユニット3は、図1及び図4A〜図4Cに示すように、後端ハウジング21と、バッテリパック22とを備えている。バッテリパック22は、後端ハウジング21に対してその後端部において着脱可能に構成されている。
バッテリパック22には、バッテリ60が内蔵されている。バッテリ60は、後端ハウジング21内の各部及びモータ50へ電力を供給するための、繰り返し充電可能な電源である。本実施形態のバッテリ60はリチウムイオン2次電池により構成されているが、これはあくまでも一例である。また、バッテリ60の定格電圧は、本実施形態では例えば18Vであるが、これもあくまでも一例である。
後端ハウジング21の上面における前端側には、変速ダイヤル23及びメインスイッチ24が、作業者が操作可能な状態で設けられており、さらに異常表示灯25及び残容量表示灯26が、作業者が視認可能な状態で設けられている。
メインスイッチ24は、草刈機1を使用可能な状態にするためのスイッチである。作業者がメインスイッチ24をオンすると、バッテリ60から、後端ハウジング21内のメインコントローラ30及びセンサユニット40(いずれも図5参照)へバッテリ電圧VBが供給され、メインコントローラ30内のメイン制御部61及びセンサユニット40内のセンサ制御部71が起動する。そして、メイン制御部61の起動後、作業者がトリガ引金11を引き操作すると、刈刃17が回転して草等の刈り取り作業が可能となる。
なお、メインスイッチ24の近傍には、メイン制御部61の起動中に点灯する表示灯も設けられているが、この表示灯については図示を省略している。
変速ダイヤル23は、メインコントローラ30がモータ50への通電を制御する際の通電デューティ比の目標値である目標デューティ比を設定するために作業者により回転操作される。目標デューティ比は、変速ダイヤル23の設定位置に応じた値に設定される。作業者が変速ダイヤル23を回すと、目標デューティ比が所定の調整範囲内で連続的又は段階的に変化する。作業者は、変速ダイヤル23によって、目標デューティ比を上記調整範囲内における所望の値に調整することができる。つまり、変速ダイヤル23によってモータ50の回転速度(ひいては刈刃17の回転速度)を可変設定することができる。
異常表示灯25は、センサユニット40によって異常が検出された場合にその異常の発生を作業者に知らせるためのランプであり、例えばLEDにより構成されている。異常表示灯25の点灯及び消灯は、センサユニット40によって制御される。センサユニット40が検出可能な異常状態には、少なくとも、草刈機1のキックバック、及び作業者の転倒(転倒に伴う草刈機1の後端側の落下)が含まれる。
残容量表示灯26は、バッテリ60の残容量を表示するためのランプであり、例えばLEDにより構成されている。
次に、後端ハウジング21の内部の構成について、図5及び図6を用いて説明する。なお、図5及び図6は、いずれも、バッテリパック22が後端ハウジング21に装着されていない状態の後端ハウジング21を図示している。
図5に示すように、後端ハウジング21の前端側には、第1パイプ挿入口31及び第2パイプ挿入口32が形成されている。第1パイプ挿入口31には、メインパイプ2の後端側が挿入されている。メインパイプ2は、その後端が、後端ハウジング21内において第1パイプ支持部33により支持されている。第2パイプ挿入口32には、制御配線パイプ12の後端側が挿入されている。制御配線パイプ12は、その後端側が、後端ハウジング21内において第2パイプ支持部34により支持されている。
後端ハウジング21内における略中心部には、図5及び図6に示すように、メインコントローラ30が配置されている。メインコントローラ30は、図5に示すように、コントローラ支持部35上に載置され、このコントローラ支持部35により位置決めされて支持されている。メインコントローラ30の主な機能は、モータ50への通電を制御することによりモータ50の回転を制御するモータ制御機能である。
また、後端ハウジング21内における後端下部側には、図5及び図6に示すように、センサユニット40が配置されている。センサユニット40の具体的な構成は、図7にも図示している。センサユニット40の主な機能は、草刈機1に生じる加速度を検出して異常状態の有無を判断し、その判断結果に基づく各種の処理を行う異常状態検知機能である。
本実施形態では、モータ制御機能を有するメインコントローラ30と、加速度に基づく異常状態検知機能を有するセンサユニット40とが、それぞれ別体として構成されている。また、センサユニット40は、メインコントローラ30とは別に、メインコントローラ30に対して上下方向Dyにおいてメインコントローラ30よりも下側に配置されている。
また、制御ユニット3を構成する各種構成部材のうち最も重量が大きい構成部材(以下「最重量物」ともいう)はバッテリパック22である。そして、センサユニット40は、前後方向Dzにおいて、制御ユニット3における最重量物であるバッテリパック22の重心よりも前方(前端側、即ち駆動ユニット4側)に配置されている。
図5〜図7に示すように、センサユニット40は、ケース41と、ケース側固定部42と、センサ基板43と、加速度センサ44とを備えている。加速度センサ44を含め、後述する図8におけるセンサユニット40内の各ブロックは、いずれも、センサ基板43に形成、配置されている。
ケース41とケース側固定部42は例えば樹脂素材により一体成形されている。ケース41は、中空直方体形状の箱の各面のうち1面側が開口された形状となっている。ケース側固定部42には、ユニット固定ネジ45を挿入させるためのネジ挿入孔42a(図7B参照)が形成されている。
ケース41の内部、即ちケース側固定部42が形成された外面側とは反対側の内面側には、センサ基板43が配置されている。センサ基板43は、4つの基板固定ネジ43a,43b,43c,43dによってケース41に固定されている。
センサ基板43には、加速度センサ44が実装されている。本実施形態の加速度センサ44は、互いに直交する3軸(X軸、Y軸、Z軸)の加速度を独立して検出可能に構成された、3軸加速度センサである。即ち、加速度センサ44は、X軸方向の加速度を検出するX軸検出部と、Y軸方向の加速度を検出するY軸検出部と、Z軸方向の加速度を検出するZ軸検出部とを有している。各軸検出部はそれぞれ、対応する軸方向の加速度に応じた検出電圧を出力する。
センサユニット40は、加速度センサ44のX軸検出部の検出軸(X検出軸)が草刈機1の左右方向Dxと一致するよう、且つ、加速度センサ44のY軸検出部の検出軸(Y検出軸)が草刈機1の上下方向Dyと一致するように、後端ハウジング21内に固定される。
具体的には、図5及び図6に示すように、後端ハウジング21内における後端下部側に、ハウジング側固定部28が形成されている。このハウジング側固定部28には、ユニット固定ネジ45を挿入するためのネジ穴が形成されている。このネジ穴の開口面にセンサユニット40のケース側固定部42を当接させてユニット固定ネジ45にてネジ締めすることで、後端ハウジング21に対してセンサユニット40を固定(延いては加速度センサ44を固定)することができる。
本実施形態では、センサユニット40が、ユニット固定ネジ45を用いたネジ締め固定によって、図4〜図6に示すように、加速度センサ44のX検出軸が草刈機1の左右方向Dxと一致するよう、且つ、加速度センサ44のY検出軸が草刈機1の上下方向Dyと一致するように、後端ハウジング21内に固定されている。
加速度センサ44内の各軸検出部はそれぞれ、対応する軸方向の加速度に応じた検出電圧を出力可能であるが、本実施形態のセンサユニット40は、各軸検出部からの各検出電圧のうち2軸分の検出電圧を用いて、後述する異常検知を行う。具体的には、センサユニット40内のセンサ制御部71(図8参照)が、加速度センサ44内のX軸検出部から出力されるX軸検出電圧Vsx、及び加速度センサ44内のY軸検出部から出力されるY軸検出電圧Vsyに基づいて、異常検知を行う。
つまり、本実施形態の草刈機1では、加速度センサ44によって、左右方向Dxの加速度と上下方向Dyの加速度を検出するように構成されている。これは、草刈機1を用いた作業中に生じる可能性のある異常状態のうち、少なくとも、草刈機1のキックバック、及び作業者の転倒(転倒に伴う草刈機1の後端側の落下)を独立して検知できるようにするためである。
草刈機1を用いて刈り取り作業をしている作業者が作業中に転倒すると、草刈機1に対して上下方向Dyに大きな衝撃が生じ、上下方向Dyに大きな加速度が生じる。一方、刈り取り作業中にキックバックが生じると、左右方向Dxに大きな衝撃が生じ、左右方向Dxに大きな加速度が生じる。
これら転倒及びキックバックを1軸の加速度センサで検知しようとすると、転倒の検知感度とびキックバックの検知感度をそれぞれ独立に調整することができない。転倒時に生じる加速度とキックバック時に生じる加速度とでは、一般に、転倒時に生じる加速度よりもキックバック時に生じる加速度の方が小さい。そのため、1軸加速度センサの検知感度を、加速度の小さいキックバックでも検知できる程度に敏感にすれば、1軸加速度センサであっても転倒及びキックバックを検知することは一応可能ではある。
しかし、検知感度を敏感にすると、正常な使用状態で草刈機1に発生する衝撃まで異常状態と判断されてしまう可能性が高くなる。具体例として、例えば、ナイロンコードアセンブリ100を装着してナイロンコード102で刈り取り作業を行う場合、必要に応じてタップ作業を行うことがあるが、そのタップ作業時の衝撃が誤って異常(転倒又はキックバック)と誤判断されてしまう可能性がある。またそもそも、1軸の加速度センサでは、転倒及びキックバックのどちらが発生したのかを識別することも難しい。
そこで本実施形態の草刈機1では、左右方向Dxと上下方向Dyの加速度を個別に検出すべく、加速度センサとして、直交する3の加速度を独立して検出可能な加速度センサ44を採用している。そして、この加速度センサ44を、X検出軸が左右方向Dxと平行、且つY軸検出軸が上下方向Dyと平行となるように、後端ハウジング21内に固定して設置している。これにより、加速度センサ44からのX軸検出電圧Vsx及びY軸検出電圧Vsyに基づいて、草刈機1に生じる左右方向Dxの加速度及び上下方向Dyの加速度をそれぞれ独立して検出可能となっている。
そして、左右方向Dx及び上下方向Dyの加速度を独立して検出可能であることにより、各軸における異常検知の感度を個別に調整することができる。即ち、X軸検出軸については、少なくともキックバック発生時にこれを検知できるように、X軸検出電圧Vsxに基づく異常検知の感度を調整することができる。また、Y軸検出軸については、少なくとも転倒発生時にこれを検知できるように、Y軸検出電圧Vsyに基づく異常検知の感度を調整することができる。各検出軸における異常検知の感度調整は、具体的には、異常と判定すべき加速度領域と正常と判定すべき加速度領域との境界である加速度閾値を調整することにより行うことができる。これについては後で詳述する。
図5及び図6に示すように、後端ハウジング21の後端面には、バッテリ装着部27が設けられている。バッテリパック22は、このバッテリ装着部27に対して着脱可能に構成されている。また、後端ハウジング21内において、バッテリ装着部27とメインコントローラ30の間には、バッテリパック22とメインコントローラ30とを電気的に接続するためのバッテリ用ハーネス37が配設されている。
バッテリパック22がバッテリ装着部27に装着されると、バッテリパック22と名コントローラ30がバッテリ用ハーネス37によって電気的に接続され、バッテリパック22内のバッテリ60の電力をメインコントローラ30へ供給可能な状態となる。
また、図5に示すように、制御配線パイプ12内に配設される制御用ハーネス39の一端が、メインコントローラ30に接続されている。この制御用ハーネス39の他端は、右グリップ7に設けられたトリガスイッチ67及び正逆切替レバー9に接続されている。
また、メインパイプ2の内部には、駆動用ハーネス38が配設されている。この駆動用ハーネス38の一端は、図5に示すように、メインコントローラ30に接続されている。駆動用ハーネス38の他端は、モータハウジング16内のモータ50に接続されている。つまり、モータ50を回転させるためのモータ50への通電は、メインコントローラ30から駆動用ハーネス38を介して行われる。
また、図5に示すように、センサユニット40とメインコントローラ30との間には、センサ用ハーネス36が配設されている。このセンサ用ハーネス36により、センサユニット40とメインコントローラ30とが電気的に接続されている。メインコントローラ30からセンサユニット40への電源供給や、センサユニット40とメインコントローラ30との間で行われる各種信号の送受は、センサ用ハーネス36を介して行われる。
(2)草刈機1の電気的構成
次に、草刈機1の電気的構成について、図8のブロック図を用いて具体的に説明する。図8に示すように、草刈機1は、メインコントローラ30と、センサユニット40とを備えている。バッテリ60から供給されるバッテリ電圧VBは、直接的には、メインコントローラ30に入力される。
メインコントローラ30には、メインスイッチ24から、メインスイッチ24のオン、オフ状態を示すメインスイッチ信号が入力される。また、メインコントローラ30には、トリガスイッチ67からのトリガスイッチ信号が入力される。なお、図1に示した変速ダイヤル23及び正逆切替レバー9も、メインコントローラ30と電気的に接続されているが、図8では図示を省略している。
メインコントローラ30は、メイン制御部61と、レギュレータ62と、給電スイッチ63と、信号出力部64と、信号入力部65と、駆動回路66とを備えている。
メイン制御部61は、メインコントローラ30の主機能であるモータ制御機能を担う主要要素である。メイン制御部61は、本実施形態では、マイクロコンピュータ(以下「マイコン」と略す)により構成されている。具体的に、メイン制御部61は、CPU61aと、ROM61bと、RAM61cと、フラッシュメモリ61dと、A/D変換器61eとを備えている。
ROM61b及びフラッシュメモリ61dには、モータ制御機能を含む各種機能を実現するための各種プログラムやデータなどが記憶されている。CPU61aは、ROM61b及びフラッシュメモリ61dに記憶されている各種プログラムやデータに基づいて各種処理を実行することで、モータ制御機能を含む各種機能を実現する。RAM61cは、CPU61aが各種処理を実行する際の、プログラムの展開エリアや演算用のワークエリアなどとして用いられる。A/D変換器61eは、メイン制御部61に入力される各種アナログ信号をデジタルデータに変換してCPU61aへ出力する。
給電スイッチ63は、バッテリ60からメインコントローラ30のレギュレータ62へのバッテリ電圧VBの供給経路(以下「電源供給経路」ともいう)上に設けられている。給電スイッチ63は、メインスイッチ24がオンされるとオンし、メインスイッチ24がオフされるとオフするように構成されている。給電スイッチ63がオフしている間は、バッテリ60のバッテリ電圧VBは、レギュレータ62側(給電スイッチ63の下流側)には供給されない。
給電スイッチ63がオンすると、電源供給経路が導通して、バッテリ60からのバッテリ電圧VBが給電スイッチ63の下流側へ供給され、これによりレギュレータ62にバッテリ電圧VBが入力される。また、給電スイッチ63がオンすると、バッテリ60からのバッテリ電圧VBが給電スイッチ63を介して駆動回路66にも供給される(この供給経路については図8では図示略)。
レギュレータ62は、バッテリ60から給電スイッチ63を介してバッテリ電圧VBが入力されている間、そのバッテリ電圧VBを降圧して直流の所定電圧値(例えば5V)の制御電源電圧Vcc1を生成する。レギュレータ62で生成された制御電源電圧Vcc1は、メインコントローラ30内の各部の動作用電源として用いられる。
メインコントローラ30内の各部は、レギュレータ62で制御電源電圧Vcc1が生成されている間、その制御電源電圧Vcc1により動作する。よって、メインスイッチ24がオンされると、レギュレータ62が動作して制御電源電圧Vcc1が生成され、メイン制御部61に供給されることにより、メイン制御部61が起動する。なお、メイン制御部61が起動するとは、メイン制御部61のCPU61aが起動することを意味する。
メイン制御部61は、メインスイッチ24のオンにより動作を開始した後、その動作中に変速ダイヤル23が操作された場合は、その操作状態に応じて(つまり変速ダイヤル23の設定位置に応じて)目標デューティ比を設定する。また、メイン制御部61は、その動作中に正逆切替レバー9が操作されたら、その操作状態に応じてモータ50の回転方向を設定する。また、メイン制御部61は、バッテリ電圧VBに基づいてバッテリ60の残容量を演算し、その演算結果に応じて、バッテリ60の残容量を示す残容量表示信号を残容量表示灯26へ出力する。
また、メイン制御部61は、その動作中にトリガ引金11が引き操作されることによりトリガスイッチ67がオンしたら、モータ50を回転させるための通電電流のデューティ比である制御デューティ比を演算して、その制御デューティ比を示す制御信号を駆動回路66へ出力する。
駆動回路66は、例えば、6つの半導体スイッチング素子を用いた三相ブリッジ回路を備えている。駆動回路66は、メイン制御部61から入力される制御信号が示す制御デューティ比に従って三相ブリッジ回路の各スイッチング素子をスイッチング動作させることで、制御デューティ比に応じた電流(本実施形態では三相交流電流)をモータ50へ供給する。
メイン制御部61は、トリガスイッチ67のオン、オフ状態を示すトリガ信号を、信号出力部64を介してセンサユニット40へ出力する。このトリガ信号により、センサユニット40は、トリガスイッチ67がオンされているか否かを認識することができる。
また、センサユニット40にて異常が検出された場合、センサユニット40からメインコントローラ30へモータ停止信号が入力される。メインコントローラ30に入力されたモータ停止信号は、信号入力部65を介してメイン制御部61に入力される。メイン制御部61は、センサユニット40からモータ停止信号が入力された場合は、センサユニット40において異常が検知された状態であると判断して、トリガスイッチ67のオン、オフ状態にかかわらず、モータ50への通電を停止させてモータ50の回転を強制停止させる。
次に、センサユニット40の電気的構成について説明する。センサユニット40は、センサ制御部71と、給電スイッチ77と、レギュレータ72と、信号入力部73と、信号出力部74と、EEPROM75と、加速度センサ44とを備えている。
給電スイッチ77は、バッテリ60からセンサユニット40のレギュレータ72へのバッテリ電圧VBの供給経路(電源供給経路)上に設けられている。給電スイッチ77は、メインスイッチ24がオンされるとオンし、メインスイッチ24がオフされるとオフするように構成されている。給電スイッチ77がオフしている間は、バッテリ60のバッテリ電圧VBは、レギュレータ72側(給電スイッチ77の下流側)には供給されない。
給電スイッチ77がオンすると、電源供給経路が導通して、バッテリ60からのバッテリ電圧VBが給電スイッチ77の下流側へ供給され、これによりレギュレータ72にバッテリ電圧VBが入力される。
なお、センサユニット40のレギュレータ72へのバッテリ電圧VBは、メインコントローラ30を経由して直接供給されてもよい。つまり、メインコントローラ30の給電スイッチ63がオンすると、バッテリ60からのバッテリ電圧VBが、その給電スイッチ63を介して、メインコントローラ30のレギュレータ62及びセンサユニット40のレギュレータ72の双方に供給される構成であってもよい。
センサ制御部71は、センサユニット40の主機能である異常状態検知機能を担う主要要素である。センサ制御部71は、本実施形態では、マイコンにより構成されている。具体的に、センサ制御部71は、CPU71aと、ROM71bと、RAM71cと、フラッシュメモリ71dと、A/D変換器71eとを備えている。
ROM71b及びフラッシュメモリ71dには、異常状態検知機能を含む各種機能を実現するための各種プログラムやデータなどが記憶されている。後述する図12の異常状態検知処理で用いられる各種閾値Ax,Ay,Bx,Byは、フラッシュメモリ71dに記憶されている。
センサユニット40において、CPU71aは、ROM71b及びフラッシュメモリ71dに記憶されている各種プログラムやデータに基づいて各種処理を実行することで、異常状態検知機能を含む各種機能を実現する。なお、CPU71aは、必要に応じて、EEPROM75に対するデータの読み書きも行う。RAM71cは、CPU71aが各種処理を実行する際の、プログラムの展開エリアや演算用のワークエリアなどとして用いられる。
センサユニット40のA/D変換器71eは、センサ制御部71に入力される各種アナログ信号をデジタルデータに変換してCPU71aへ出力する。A/D変換器71eによりA/D変換されるアナログ信号には、少なくとも、加速度センサ44から入力されるX軸検出電圧Vsx及びY軸検出電圧Vsyが含まれる。
加速度センサ44からセンサ制御部71に入力されたX軸検出電圧Vsx及びY軸検出電圧Vsyは、それぞれ、A/D変換器71eでA/D変換される。センサ制御部71のCPU71aは、A/D変換器71eにてA/D変換された各軸検出電圧Vsx,Vsyの各デジタルデータに基づいて、後述する図12の異常状態検知処理を含む、加速度に基づく各種の処理を実行する。
センサユニット40のレギュレータ72は、バッテリ60からセンサユニット40内の給電スイッチ77を介してバッテリ電圧VBが入力されている間、そのバッテリ電圧VBを降圧して直流の所定電圧値(例えば5V)の制御電源電圧Vcc2を生成する。レギュレータ72で生成された制御電源電圧Vcc2は、センサユニット40内の各部の動作用電源として用いられる。
メインコントローラ30のレギュレータ62及びセンサユニット40のレギュレータ72は、入力されるバッテリ電圧VBにばらつきがあっても一定の制御電源電圧Vcc1,Vcc2を生成可能である。本実施形態では、各レギュレータ62,72は、例えば5V〜72Vまでのバッテリ電圧VBに対応可能であり、この範囲内のバッテリ電圧VBであれば、一定の制御電源電圧Vcc1,Vcc2を生成可能である。また、メインコントローラ30とセンサユニット40を別体にしているため、センサユニット40のレギュレータ72は、メインコントローラ30の要求仕様やメインコントローラ30の有無によらず、センサユニット40の仕様に応じて適宜搭載することが可能である。なお、本実施形態では、各レギュレータ62,72は、例えばシリーズレギュレータとして構成されている。
センサユニット40内の各部は、レギュレータ72で制御電源電圧Vcc2が生成されている間、その制御電源電圧Vcc2により動作する。よって、メインスイッチ24がオンされると、センサユニット40のレギュレータ72が動作して制御電源電圧Vcc2が生成され、センサ制御部71に供給されることにより、センサ制御部71が起動する。センサ制御部71が起動するとは、センサ制御部71のCPU71aが起動することを意味する。
なお、センサユニット40の各部の動作に必要な電源として、センサユニット40のレギュレータ72が生成する制御電源電圧Vcc2ではなく、メインコントローラ30のレギュレータ62で生成される制御電源電圧Vcc1を代用してもよい。即ち、メインコントローラ30のレギュレータ62で生成された制御電源電圧Vcc1がセンサユニット40にも供給されるように構成し、センサユニット40内の各部がその制御電源電圧Vcc1で動作できるようにしてもよい。その場合、センサユニット40からレギュレータ72を省いてもよい。
センサユニット40において、センサ制御部71には、メインコントローラ30からのトリガ信号が、信号入力部73を介して入力される。センサ制御部71は、このトリガ信号に基づいて、トリガスイッチ67のオン、オフ状態を認識できる。
センサ制御部71は、メインスイッチ24のオンにより動作を開始すると、加速度センサ44からの各軸検出電圧Vsx,Vsyに基づいて後述する図12の異常状態検知処理を実行することで、草刈機1の異常状態の有無を判定する。なお、センサ制御部71は、起動中は定期的に加速度センサ44からの各軸検出電圧Vsx,Vsyを取得するが、異常状態の判定は、トリガスイッチ67がオンされている間に行う。即ち、センサ制御部71は、起動中、メインコントローラ30から入力されるトリガスイッチ信号をモニタすることによりトリガスイッチ67のオン、オフ状態を判断し、トリガスイッチ67がオンされている場合に、異常状態の判定を行う。
センサ制御部71は、加速度センサ44からの各軸検出電圧Vsx,Vsyに基づいて異常状態の判定を行った結果、異常状態が発生していると判定した場合は、信号出力部74を介してモータ停止信号を出力する。モータ停止信号は、メインコントローラ30に入力され、既述の通り、メインコントローラ30内において信号入力部65を介してメイン制御部61に入力される。
また、センサ制御部71は、異常状態が発生していると判定した場合は、異常状態が発生していることを作業者に知らせるために、異常表示灯25を点灯させ、且つ、ブザー76を鳴動させる。つまり、作業者に対し、異常状態が発生していることを視覚的及び聴覚的に知らせる。なお、ブザー76は、図1〜図7においては図示を省略している。
本実施形態の草刈機1では、メインコントローラ30とセンサユニット40とが別体として構成され、これら両者間は、図5に示したように、センサ用ハーネス36によって電気的に接続されている。
そのため、何らかの要因によってセンサ用ハーネス36が断線すると、センサユニット40には、メインコントローラ30からのトリガ信号が入力されなくなる。この場合、センサユニット40のセンサ制御部71が、トリガ信号が入力されない状態に基づいてトリガスイッチ67がオフされていると認識してしまうと、実際にはモータ50が回転しているにもかかわらずセンサユニット40において異常判定が行われないという状況が発生する可能性がある。
そこで、本実施形態では、センサ用ハーネス36を構成する各種リード線のうちトリガ信号伝送用のリード線が断線した場合には、センサユニット40のセンサ制御部71が、トリガスイッチ67がオンされていると判断して異常判定を実行するように構成されている。つまり、トリガ信号伝送用のリード線が断線した場合にはセンサ制御部71に対して強制的にトリガスイッチ67がオンされていると認識させるように構成されている。これを可能とするための具体的な回路構成については、図10を用いて後で説明する。
また、センサ用ハーネス36が断線すると、センサユニット40からのモータ停止信号がメインコントローラ30に入力されなくなる。この場合、仮にセンサユニット40において異常状態が判定され、センサユニット40がモータ停止信号を出力したとしても、メインコントローラ30のメイン制御部61は異常状態の発生を認識できない。そのため、異常状態が発生していてモータ50を強制停止させるべき状態であるにもかかわらずモータ50が回転し続けるという状況が発生する可能性がある。
そこで、本実施形態では、センサ用ハーネス36を構成する各種リード線のうちモータ停止信号伝送用のリード線が断線した場合には、メインコントローラ30のメイン制御部61が、センサユニット40からモータ停止信号が出力されていると判断してモータ50を強制停止させるように構成されている。つまり、モータ停止信号伝送用のリード線が断線した場合にはメイン制御部61に対して強制的に異常状態が発生していること(即ちモータ50を停止させるべきであること)を認識させるように構成されている。これを可能とするための具体的な回路構成について、図9を用いて説明する。
図9に示すように、センサユニット40において、信号出力部74は、抵抗及びトランジスタを用いたロジック回路として構成されている。具体的に、信号出力部74は、トランジスタT1と、一端がセンサ制御部71に接続されて他端がトランジスタT1のベースに接続された抵抗R1と、一端がトランジスタT1のベースに接続されて他端がグランドライン(接地電位)に接続された抵抗R2と、一端が制御電源電圧Vcc2の給電ラインに接続されて他端がトランジスタT1のコレクタに接続された抵抗R3とを備えている。トランジスタT1のエミッタはグランドラインに接続されている。そして、トランジスタT1のコレクタ電圧が、信号出力部74からメインコントローラ30への出力信号として出力される。
一方、メインコントローラ30において、信号入力部65は、基本的にセンサユニット40の信号出力部74と同じ構成となっている。具体的に、メインコントローラ30の信号入力部65は、トランジスタT2と、一端にセンサユニット40からの出力信号が入力されて他端がトランジスタT2のベースに接続された抵抗R6と、一端がトランジスタT2のベースに接続されて他端がグランドラインに接続された抵抗R7と、一端が制御電源電圧Vcc1の給電ラインに接続されて他端がトランジスタT2のコレクタに接続された抵抗R8とを備えている。トランジスタT2のエミッタはグランドラインに接続されている。そして、トランジスタT2のコレクタ電圧が、信号入力部65からメイン制御部61への入力指令としてメイン制御部61へ入力される。
センサユニット40において、センサ制御部71は、異常状態を検知していない場合は、モータ50を停止させるためのモータ停止指令の出力を停止する。具体的には、Lowレベル(以下「Lレベル」と略す)の電圧信号を信号出力部74へ出力する。センサ制御部71からモータ停止指令が出力されていない場合は、信号出力部74において、トランジスタT1がオフし、トランジスタT1のコレクタ電圧はHレベルとなり、このHレベル信号がメインコントローラ30に入力される。
センサユニット40の信号出力部74からの出力信号がHレベルであるということは、モータ停止信号の出力が停止されていることを意味する。この場合、メインコントローラ30の信号入力部65では、トランジスタT2がオンし、トランジスタT2のコレクタはLレベルとなる。このLレベル信号が入力指令としてメイン制御部61へ入力される。メイン制御部61は、入力指令としてLレベル信号が入力された場合は、センサユニット40において異常状態が検知されていないと認識する。
一方、センサユニット40において、センサ制御部71は、異常状態を検知した場合には、モータ50を停止させるためのモータ停止指令を信号出力部74へ出力する。具体的には、Highレベル(以下「Hレベル」と略す)の電圧信号を信号出力部74へ出力する。センサ制御部71からのモータ停止指令(Hレベル信号)が信号出力部74に入力されると、信号出力部74において、トランジスタT1がオンし、トランジスタT1のコレクタ電圧はLレベルとなり、このLレベル信号がメインコントローラ30に入力される。
センサユニット40の信号出力部74からの出力信号がLレベルであるということは、モータ停止信号が出力されていることを意味する。この場合、メインコントローラ30の信号入力部65では、トランジスタT2がオフし、トランジスタT2のコレクタはHレベルとなる。このHレベル信号が入力指令としてメイン制御部61へ入力される。メイン制御部61は、入力指令としてHレベル信号が入力された場合は、センサユニット40において異常状態が検知されていると認識する。
ここで、センサユニット40からメインコントローラ30へモータ停止信号を伝送するためのリード線81(センサ用ハーネス36の一部)が断線したとする。この場合、メインコントローラ30において、信号入力部65の入力側はオープン状態となる。そのため、信号入力部65において、トランジスタT2はオフし、トランジスタT2のコレクタはHレベルとなって、このHレベル信号が入力指令としてメイン制御部61へ入力される。つまり、この場合、メイン制御部61は、センサユニット40において異常状態が検知されていると認識する。
このように、本実施形態では、センサユニット40からメインコントローラ30へモータ停止信号を伝送するためのリード線81が断線した場合には、メインコントローラ30のメイン制御部61が、センサユニット40において異常状態が検知されていると認識するように構成されている。
次に、トリガ信号伝送用のリード線が断線した場合にセンサ制御部71に対して強制的にトリガスイッチ67がオンされていると認識させるための具体的回路構成について、図10を用いて説明する。
図10に示すように、メインコントローラ30において、信号出力部64は、基本的にセンサユニット40の信号出力部74と同じ構成となっている。具体的に、メインコントローラ30の信号出力部64は、トランジスタT12と、一端がメイン制御部61に接続されて他端がトランジスタT12のベースに接続された抵抗R16と、一端がトランジスタT12のベースに接続されて他端がグランドラインに接続された抵抗R17と、一端が制御電源電圧Vcc1の給電ラインに接続されて他端がトランジスタT12のコレクタに接続された抵抗R18とを備えている。トランジスタT12のエミッタはグランドラインに接続されている。そして、トランジスタT12のコレクタ電圧が、信号出力部64からセンサユニット40へのトリガ信号として出力される。
一方、センサユニット40において、信号入力部73は、基本的にメインコントローラ30の信号入力部65と同じ構成となっている。具体的に、センサユニット40の信号入力部73は、トランジスタT11と、一端にメインコントローラ30からのトリガ信号が入力されて他端がトランジスタT11のベースに接続された抵抗R11と、一端がトランジスタT11のベースに接続されて他端がグランドラインに接続された抵抗R12と、一端が制御電源電圧Vcc2の給電ラインに接続されて他端がトランジスタT11のコレクタに接続された抵抗R13とを備えている。トランジスタT11のエミッタはグランドラインに接続されている。そして、トランジスタT11のコレクタ電圧が、信号入力部73からセンサ制御部71への入力指令としてセンサ制御部71へ入力される。
メインコントローラ30において、メイン制御部61は、トリガスイッチ67がオフされている場合は、トリガスイッチ67がオフされている旨を示すトリガ信号を出力する。具体的には、Lレベルの電圧信号を信号出力部64へ出力する。
この場合、信号出力部64において、トランジスタT12がオフし、トランジスタT12のコレクタ電圧はHレベルとなり、このHレベル信号がトリガ信号としてセンサユニット40に入力される。センサユニット40の信号入力部73は、Hレベルのトリガ信号が入力されると、トランジスタT11がオンし、トランジスタT11のコレクタはLレベルとなる。このLレベル信号が入力指令としてセンサ制御部71へ入力される。センサ制御部71は、入力指令としてLレベル信号が入力された場合は、トリガスイッチ67がオフされていると認識する。
一方、メインコントローラ30において、メイン制御部61は、トリガスイッチ67がオンされている場合は、トリガスイッチ67がオンされている旨を示すトリガ信号を出力する。具体的には、Hレベルの電圧信号を信号出力部64へ出力する。
この場合、信号出力部64において、トランジスタT12がオンし、トランジスタT12のコレクタ電圧はLレベルとなり、このLレベル信号がトリガ信号としてセンサユニット40に入力される。センサユニット40の信号入力部73は、Lレベルのトリガ信号が入力されると、トランジスタT11がオフし、トランジスタT11のコレクタはHレベルとなる。このHレベル信号が入力指令としてセンサ制御部71へ入力される。センサ制御部71は、入力指令としてHレベル信号が入力された場合は、トリガスイッチ67がオンされていると認識する。
ここで、メインコントローラ30からセンサユニット40へトリガ信号を伝送するためのリード線82(センサ用ハーネス36の一部)が断線したとする。この場合、センサユニット40において、信号入力部73の入力側はオープン状態となる。そのため、信号入力部73において、トランジスタT11はオフし、トランジスタT11のコレクタはHレベルとなって、このHレベル信号が入力指令としてセンサ制御部71へ入力される。つまり、この場合、センサ制御部71は、トリガスイッチ67がオンされていると認識する。
このように、本実施形態では、メインコントローラ30からセンサユニット40へトリガ信号を伝送するためのリード線82が断線した場合には、センサユニット40のセンサ制御部71が、トリガスイッチ67がオンされていると認識するように構成されている。
(3)加速度に基づく異常判定方法の概要
次に、センサユニット40のセンサ制御部71が異常状態の有無の判定を行う方法について、具体的に説明する。
センサ制御部71は、加速度センサ44からのX軸検出電圧Vsxに基づいてX軸方向の加速度を演算し、加速度センサ44からのY軸検出電圧Vsyに基づいてY軸方向の加速度を演算する。演算されたX軸方向の加速度は、草刈機1に生じる左右方向Dxの加速度と捉えることができる。また、演算されたY軸方向の加速度は、草刈機1に生じる上下方向Dyの加速度と捉えることができる。
なお、加速度は、その発生方向によって、正の加速度と負の加速度が発生し得る。そのため、X軸方向及びY軸方向のいずれも、加速度の発生方向に応じて、正の加速度が演算されることもあれば、負の加速度が演算されることもある。ただし、本実施形態では、センサ制御部71は、加速度の向きは考慮せず、加速度の絶対値に基づいて、異常状態の有無を判定する。そのため、以下の説明では、加速度というときは、特にことわりのない限り、加速度の絶対値を意味しているものとする。
ここで、異常状態としてのキックバックが発生したときに発生する加速度、異常状態としての転倒が発生したときに発生する加速度、及びナイロンコード102で刈り取り作業を行う際のタップ動作時に発生する加速度の一例を、図11A、図11Bに示す。
図11Aに示すように、加速度センサ44で検出されるX軸方向の加速度(即ち左右方向Dxの加速度)は、タップ作業時及び転倒時は共に非常に低く、また、タップ作業時と転倒時の加速度の大きさも同程度である。これに対し、キックバック発生時に加速度センサ44で検出されるX軸方向の加速度は、タップ作業時及び転倒時に比べると非常に高い。
そのため、X軸方向の加速度に基づいて、キックバックの発生を検知することができる。本実施形態では、センサユニット40において、X軸方向の加速度に対し、キックバックの発生の有無を判断するための基準となるX軸加速度閾値Axが設定されている。そして、センサ制御部71は、X軸方向の加速度がX軸加速度閾値Axより高くなった場合に、X軸方向に大きな衝撃が生じるような異常状態が発生したと判断する。
X軸方向に大きな衝撃が生じるような異常状態として最も多いものの1つが、キックバックである。そのため、本実施形態では、キックバックが発生した場合にそれを検知できるように、X軸加速度閾値Axが設定されている。
キックバック発生時、転倒発生時、及びタップ作業時のそれぞれにおいて発生し得るX軸方向の加速度は、理論的あるいは実験的におおよそ予測することができる。具体的には、図11Aに例示するように、キックバック発生時のX軸方向の加速度については、おおよそ、キックバック時変動範囲Wkxの範囲内で発生する。そのため、キックバックを高精度に検知できるようにするためには、X軸加速度閾値Axを、キックバック時変動範囲Wkxの最小値よりも低い値に設定するのが望ましい。
一方、転倒発生時も、図11Aに例示するように、おおよそ転倒時変動範囲Wfxの範囲内でX軸方向に加速度が発生する。さらに、タップ作業時も、図11Aに例示するように、おおよそタップ作業時変動範囲Wtxの範囲内でX軸方向に加速度が発生する。そのため、タップ作業を誤って異常状態と検知しないようにするためには、X軸加速度閾値Axを、タップ作業時変動範囲Wtxの最大値よりも高い値に設定するのが望ましい。
そこで、本実施形態では、X軸加速度閾値Axが、タップ作業時変動範囲Wtxの最大値よりも高く、且つ、キックバック時変動範囲Wkxの最小値よりも低い値に、設定されている。
本実施形態では、図11Aに例示するように、タップ作業時に発生しうるX軸方向の加速度のレベルは、キックバック時に発生するX軸方向の加速度のレベルよりも非常に低い。そのため、X軸加速度閾値Axは、タップ作業時に異常発生が誤検知されない範囲内で、検出感度を敏感に(即ちX軸加速度閾値Axをより低く)設定することができる。
次に、加速度センサ44で検出されるY軸方向の加速度(即ち上下方向Dyの加速度)は、図11Bに例示するように、転倒時が最も高く、その次にキックバック発生時が高く、タップ作業時が最も低い。ただし、転倒時の加速度とキックバック発生時の加速度との差に比べ、キックバック発生時の加速度とタップ作業時の加速度との差はあまり大きくない。 そのため、Y軸方向の加速度に基づいて、転倒の発生を検知することができる。本実施形態では、センサユニット40において、Y軸方向の加速度に対し、転倒の発生の有無を判断するための基準となるY軸加速度閾値Ayが設定されている。そして、センサ制御部71は、Y軸方向の加速度がY軸加速度閾値Ayより高くなった場合に、Y軸方向に大きな衝撃が生じるような異常状態が発生したと判断する。
Y軸方向に大きな衝撃が生じるような異常状態として最も多いものの1つが、転倒である。そのため、本実施形態では、転倒が発生した場合にそれを検知できるように、Y軸加速度閾値Ayが設定されている。
キックバック発生時、転倒発生時、及びタップ作業時のそれぞれにおいて発生し得るY軸方向の加速度についても、理論的あるいは実験的におおよそ予測することができる。具体的には、図11Bに例示するように、転倒発生時のY軸方向の加速度については、おおよそ、転倒時変動範囲Wfyの範囲内で発生する。そのため、転倒の発生を高精度に検知できるようにするためには、Y軸加速度閾値Ayを、転倒時変動範囲Wfyの最小値よりも低い値に設定するのが望ましい。
一方、キックバック発生時も、図11Bに例示するように、おおよそキックバック時変動範囲Wkyの範囲内でY軸方向に加速度が発生する。さらに、タップ作業時も、図11Bに例示するように、おおよそタップ作業時変動範囲Wtyの範囲内でY軸方向に加速度が発生する。そのため、タップ作業を誤って異常状態と検知しないようにするためには、Y軸加速度閾値Ayを、タップ作業時変動範囲Wtyの最大値よりも高い値に設定するのが望ましい。
そこで、本実施形態では、Y軸加速度閾値Ayが、タップ作業時変動範囲Wtyの最大値よりも高く、且つ、転倒時変動範囲Wkyの最小値よりも低い値に、設定されている。
本実施形態では、図11Aと図11Bを比較して明らかなように、タップ作業時に発生しうる加速度は、X軸方向の加速度よりもY軸方向の加速度の方が高い。そのため、Y軸加速度閾値Ayは、その比較的レベルが高いタップ作業時のY軸方向加速度によって異常が誤検知されないよう、X軸加速度閾値Axよりも高く設定する必要がある。つまり、X軸方向ほどは感度を敏感にすることはできない。
もっとも、転倒が発生した時のY軸方向の加速度は、他のキックバック発生時及びタップ作業時のY軸方向加速度よりも非常に高い。そのため、Y軸方向については、Y軸加速度閾値Ayを高めに設定して検出感度を鈍くしても、転倒発生時にその異常を十分に検知することができる。つまり、Y軸加速度閾値Ayは、X軸加速度閾値Axよりも高い値に設定することができる。
なお、Y軸加速度閾値Ayの設定レベルによっては、キックバックが発生した場合にも、Y軸方向にY軸加速度閾値Ayより高い加速度が発生する可能性があり、その場合は異常状態が検知されることになるが、それは特に問題ではない。転倒もキックバックも、共に検知すべき異常状態であって、それらが発生した場合にはモータ50を強制停止させるべき異常状態である。
そのため、転倒を確実に検知することを想定して設定されたY軸加速度閾値Ayによってキックバックが検知されることは、草刈機1の信頼性の観点ではむしろ好ましいとも言える。よって、Y軸方向の加速度に基づいてキックバックも検知できるように、Y軸加速度閾値Ayを、キックバック時変動範囲Wkyの範囲内(ただし、タップ作業時変動範囲Wtyの最大値より高い範囲)に設定するようにしてもよい。ただし、キックバックと転倒を区別して検知する必要がある場合、つまりY軸方向の加速度によってキックバックが検知されないようにする必要がある場合には、Y軸加速度閾値Ayを高めに(キックバック時変動範囲Wkyの最大値より高く)設定すればよい。
X軸方向についても、転倒が発生した場合に、転倒する方向や衝撃の大きさによっては、X軸加速度閾値Axより高い加速度が発生する可能性があり、その場合は異常状態が検知されることになるが、それは特に問題ではない。ただし、キックバックと転倒を区別して検知する必要がある場合、つまりX軸方向の加速度によって転倒が検知されないようにするためには、X軸加速度閾値Axを高めに(転倒時変動範囲Wfxの最大値より高く)設定すればよい。
(4)異常状態検知処理
次に、センサユニット40のセンサ制御部71が実行する異常状態検知処理について、図12を用いて説明する。センサ制御部71のCPU71aは、起動すると、ROM71b又はフラッシュメモリ71dから、図12の異常状態検知処理のプログラムを読み込み、所定の制御周期で繰り返し実行する。センサ制御部71のCPU71aがこの異常状態検知処理を実行することで、センサユニット40の主機能である異常状態検知機能が実現される。
センサ制御部71のCPU71aは、図12の異常状態検知処理を開始すると、S110で、X軸方向の加速度(X軸加速度)及びY軸方向の加速度(Y軸加速度)をそれぞれ取得する。具体的には、加速度センサ44から入力されるX軸検出電圧Vsxに基づいてX軸加速度を演算し、加速度センサ44から入力されるY軸検出電圧Vsyに基づいてY軸加速度を演算する。
S120では、トリガスイッチ67がオンされているか否か判断する。この判断は、メインコントローラ30から信号入力部73を介して入力されるトリガ信号に基づいて行う。トリガスイッチ67がオフされている場合は(S120:NO)、S230に進む。
S230では、Y軸用カウンタKyを0にリセットする。S240では、Y軸転倒検知フラグをクリアする。S250では、X軸用カウンタKxを0にリセットする。S260では、X軸キックバック検知フラグをクリアする。S260の処理後は、S270に進む。
S120で、トリガスイッチ67がオンされている場合は(S120:YES)、S130に進む。S130では、Y軸加速度がY軸加速度閾値Ayより高いか否か判断する。Y軸加速度がY軸加速度閾値Ay以下の場合は(S130:NO)、S170で、Y軸用カウンタKyを0にリセットして、S180に進む。
Y軸加速度がY軸加速度閾値Ayより大きい場合は(S130:YES)、S140で、現在のY軸用カウンタKyの値に1を加算して、S150に進む。S150では、Y軸用カウンタKyがY軸時間閾値Byより大きいか否か判断する。Y軸用カウンタKyがY軸時間閾値By以下の場合は(S150:NO)、S180に進む。Y軸用カウンタKyがY軸時間閾値Byより大きい場合は(S150:YES)、S160で、Y軸転倒検知フラグをセットして、S180に進む。Y軸転倒検知フラグがセットされるということは、Y軸方向に大きな衝撃が生じるような異常状態(基本的には転倒)が発生したことが判定されたことを意味する。
なお、Y軸用カウンタKyは、Y軸加速度がY軸加速度閾値Kyより大きい状態が継続している時間を計時するためのソフトウェアカウンタである。本実施形態では、Y軸加速度がY軸加速度閾値Kyより大きい状態が一定時間継続した場合に、Y軸方向に大きな衝撃が生じるような異常状態が発生したと判定するようにしている。そのため、Y軸時間閾値Byは、その一定時間に対応したカウンタ値として設定されている。
S180では、X軸加速度がX軸加速度閾値Axより高いか否か判断する。X軸加速度がX軸加速度閾値Ax以下の場合は(S180:NO)、S220で、X軸用カウンタKxを0にリセットして、S270に進む。
X軸加速度がX軸加速度閾値Axより大きい場合は(S180:YES)、S190で、現在のX軸用カウンタKxの値に1を加算して、S200に進む。S200では、X軸用カウンタKxがX軸時間閾値Bxより大きいか否か判断する。X軸用カウンタKxがX軸時間閾値Bx以下の場合は(S200:NO)、S270に進む。X軸用カウンタKxがX軸時間閾値Bxより大きい場合は(S200:YES)、S210で、X軸キックバック検知フラグをセットして、S270に進む。X軸キックバック検知フラグがセットされるということは、X軸方向に大きな衝撃が生じるような異常状態(基本的にはキックバック)が発生したことが判定されたことを意味する。
なお、X軸用カウンタKxは、X軸加速度がX軸加速度閾値Kxより大きい状態が継続している時間を計時するためのソフトウェアカウンタである。本実施形態では、X軸加速度がX軸加速度閾値Kxより大きい状態が一定時間継続した場合に、X軸方向に大きな衝撃が生じるような異常状態が発生したと判定するようにしている。そのため、X軸時間閾値Bxは、その一定時間に対応したカウンタ値として設定されている。
X軸時間閾値Bx及びY軸時間閾値Byは、それぞれ独立して設定可能である。そのため、両者をそれぞれ異なる値にすることもできるし、両者を同じ値にすることもできる。
S270では、Y軸加速度又はY軸加速度に基づいて異常が検知されたか否かを判断する。具体的には、Y軸転倒検知フラグ及びX軸キックバック検知フラグのうち何れか一方でもセットされているか判断し、何れか一方でもセットされている場合は、異常状態が検知されたと判定する。
S270で異常状態が検知されなかった場合は(S270:NO)、S290でモータ停止信号をオフにして、異常状態検知処理を終了する。具体的には、センサ制御部71から、モータ50を停止させるためのモータ停止指令を信号出力部74へ出力させないことで、メインコントローラ30へモータ停止信号を出力させないようにする。
一方、S270で異常状態が検知された場合は(S270:YES)、S280でモータ停止信号をオンにして、異常状態検知処理を終了する。具体的には、センサ制御部71から、モータ50を停止させるためのモータ停止指令を信号出力部74へ出力することで、メインコントローラ30へモータ停止信号を出力させる。これにより、トリガスイッチ67のオン、オフ状態にかかわらず、モータ50は強制的に停止される。
なお、図12では図示を省略したが、S270で異常状態が検知された場合は、S280でモータ停止信号をオンにすると共に、異常表示灯25を点灯させ、且つ、ブザー76を鳴動させる。また、S270で異常状態が検知された場合は、センサ制御部71内のフラッシュメモリ71d又は他の記録媒体に、異常状態が検知されたことや検知された異常状態の種類を示す情報を、履歴として記憶させるようにしてもよい。
上記のように、本実施形態の異常状態検知処理では、メインスイッチ24がオンされてセンサユニット40のセンサ制御部71が起動しても、トリガスイッチ67がオフされている限り、加速度に基づく異常判定のための一連の処理(S130〜S220)は行われない。つまり、モータ50が停止していて刈刃17が回転していない状態では、加速度に基づく異常判定は行わない。そして、トリガスイッチ67がオンされてモータ50に回転駆動用の電力が供給されているときに、加速度に基づく異常判定を行う。
また、Y軸転倒検知フラグ及びX軸キックバック検知フラグの何れか一方又は双方がセットされてモータ停止信号がオンにされた場合は、トリガスイッチ67がオフされるまでは、そのフラグのセット状態は継続される。つまり、トリガスイッチ67がオフされない限り、モータ停止信号の出力は継続される。そして、トリガスイッチ67がオフされた場合に、S230以降に進んで、各フラグが共にクリアされ、モータ停止信号の出力が停止される。
(5)実施形態の効果
以上説明した本実施形態の草刈機1によれば、検出方向が異なる2軸の加速度を独立して検出可能な加速度センサ44を用い、各軸の検出信号に基づいて、草刈機1に発生する衝撃を検出する。そのため、加速度の発生方向が異なる複数種類の異常状態をそれぞれ精度良く検知することができる。
しかも、本実施形態では、加速度センサ44により、互いに直交するX軸方向及びY軸方向の2方向の加速度がそれぞれ独立して検出される。即ち、X軸方向の加速度については加速度センサ44内のX軸検出部により検出され、Y軸方向の加速度については加速度センサ44内のY軸検出部により検出される。そのため、X軸方向に加速度が発生するような異常状態と、X軸方向に直交するY軸方向に加速度が発生するような異常状態とを、それぞれ精度良く検出することができる。
更に、本実施形態では、加速度センサ44が、後端ハウジング21の内部において、加速度センサ44のX検出軸が草刈機1の左右方向Dxと平行になるよう、且つ加速度センサ44のY検出軸が草刈機1の上下方向Dyと平行になるように配置されている。そのため、主に左右方向Dxに衝撃が生じるキックバックと、主に上下方向Dyに衝撃が生じる転倒とを、それぞれ精度良く検出することができる。
また、異常状態が検知された場合には、トリガスイッチ67のオン、オフの状態にかかわらず、モータ50の回転が強制的に停止される。そのため、異常状態の発生に対する作業者への悪影響を抑止することができる。
また、本実施形態では、センサユニット40が、メインコントローラ30とは別体として、メインコントローラ30の下側に配置されている。そのため、後端ハウジング21内において、センサユニット40の配置位置や配置角度などを高い自由度で決めることができる。
なお、メインコントローラ30内に加速度センサ44及びセンサ基板43内の回路を組み込むことも可能であり、そのようにしてもよい。しかし、メインコントローラ30と加速度センサ44を一体化すると、メインコントローラ30の大型化を招く可能性がある。また、加速度センサ44の配置位置や配置角度などの自由度も制限される可能性がある。
これに対し、本実施形態のように、センサユニット40を、メインコントローラ30とは別体として構成すれば、メインコントローラ30の大型化が抑制される。しかも、センサユニット40の配置の自由度が高くなるため、後端ハウジング21内において加速度センサ44を適切な位置及び角度で配置することが可能となる。
さらに、メインコントローラ30とセンサユニット40のそれぞれに、レギュレータが設けられている。そのため、メインコントローラ30及びセンサユニット40はそれぞれ、他方の仕様や有無にかかわらず、独立して搭載し動作させることができる。
また、本実施形態では、加速度センサ44がセンサ基板43に実装され、センサ基板43がケース41に対してネジにより固定されている。さらに、ケース41が、後端ハウジング21に対してネジにより固定されている。つまり、加速度センサ44は、後端ハウジング21に対して確実に位置決めされ固定されている。このような固定方法により、加速度センサ44に基づく異常判定の精度の低下が抑止される。
また、本実施形態では、加速度センサ44と、加速度センサ44からの各検出電圧Vsx,Vsyに基づいて加速度演算及び異常判定などを行うセンサ制御部71とが、センサユニット40内に一体的に配置されている。そのため、加速度センサからセンサ制御部71へ各検出電圧Vsx,Vsyを伝送するための伝送経路を効率的に形成することができる。また、各検出電圧の伝送経路を短くできるため、ノイズや減衰などに起因する各検出電圧Vsx,Vsyの伝送品質の低下を抑制できる。
また、本実施形態では、センサ制御部71が、加速度センサ44からの各検出電圧Vsx,Vsyに基づいてX,Y各軸方向の加速度を演算し、その演算した各軸方向の加速度それぞれに基づいて異常状態の有無を判定する。その際、X軸方向の加速度に対しては、X軸加速度閾値Axが設定されていて、X軸方向の加速度とX軸加速度閾値Axとの比較に基づいて異常の有無(具体的にはキックバックの発生有無)を判定する。また、Y軸方向の加速度に対しては、Y軸加速度閾値Ayが設定されていて、Y軸方向の加速度とY軸加速度閾値Ayとの比較に基づいて異常の有無(具体的には転倒の発生有無)を判定する。このように、各軸毎の個別の加速度閾値を用いて異常の有無を判定することで、X軸方向に衝撃が発生するような異常状態、及びY軸方向に衝撃が発生するような異常状態をそれぞれ高精度に検知することができる。
また、図11Aを用いて説明したように、X軸方向の加速度は、タップ作業時及び転倒時に発生する加速度に比べて、キックバック時に発生する加速度の方が非常に高い。そのため、X軸加速度閾値Axは、タップ作業時変動範囲Wtxの最大値よりも高く、且つ、キックバック時変動範囲Wkxの最小値よりも低い値に、設定されている。これにより、X軸方向の加速度に基づいてキックバックを高精度且つ高い感度で検知することが可能となっている。
また、図11Bを用いて説明したように、Y軸方向の加速度は、タップ作業時及びキックバック時に発生する加速度に比べて、転倒時に発生する加速度の方が非常に高い。そのため、Y軸加速度閾値Ayは、タップ作業時変動範囲Wtyの最大値よりも高く、且つ、転倒時変動範囲Wfyの最小値よりも低い値に、設定されている。
また、Y軸方向の加速度については、タップ作業時もある程度の加速度が発生するため、X軸加速度閾値Axと同程度の低い値に設定することは困難であるが、転倒時にはタップ作業時よりも非常に大きい加速度が発生する。そのため、Y軸加速度閾値Ayについては、高めに設定して感度を鈍くしても問題ない。実際、図11Bと図11Aを比較して明らかなように、Y軸加速度閾値Ayは、X軸加速度閾値Axと比べて相対的に高い値に設定されている。
Y軸加速度閾値Ayがこのように設定されているため、Y軸方向の加速度に基づいて、低い感度ながら高い精度で転倒を検知することが可能となっている。
このように、X軸加速度閾値Ax及びY軸加速度閾値Ayをそれぞれ適切に設定していることで、タップ作業を誤って異常状態と判定してしまうことが抑止される。しかも、キックバック及び転倒の判別も行うことができる。
また、本実施形態では、検出された加速度が対応する加速度閾値を超えたことをもってすぐに異常状態と判定するのではなく、加速度閾値を超えた状態が一定時間(時間閾値)以上継続した場合に異常状態と判定するようにしている。これにより、作業者による草刈機1の使い勝手の向上と、異常状態の検知性能の高さとの両立が図られている。
また、上記の時間閾値は、X軸方向の加速度に基づく判定用の時間閾値Bxと、Y軸方向の加速度に基づく判定用の時間閾値Byとが、個別に設定されている。そのため、キックバックの発生態様及び転倒の発生態様を考慮して各時間閾値Bx,Byを適切に設定することができ、そのようにして設定された各時間閾値Bx,Byを用いることで、キックバック及び転倒を、作業者の使い勝手の低下を抑止しつつ、より適切に検知することができる。
また、本実施形態では、センサ制御部71は、異常状態を検知してモータ停止信号の出力を開始した場合、トリガスイッチ67がオフされるまでは、モータ停止信号の出力を継続する。そして、トリガスイッチ67がオフされたら(図12のS120:NO)、各フラグをクリアすることによってモータ停止信号の出力を停止する。つまり、作業中にキックバックや転倒などの異常状態が検知されてモータ50が強制停止すると、作業者がトリガ引金11を引き操作し続けている限り、モータ50は停止状態を維持する。この場合、作業者は、モータ50を再び回転させるためには、トリガ引金11を一旦戻してトリガスイッチ67を一旦オフさせ、その後に再びトリガ引金11を操作する必要がある。このような構成により、異常状態の発生に対する作業者の安全性が高いレベルで実現されている。
また、本実施形態では、メインスイッチ24がオンされてセンサ制御部71が起動しても、センサ制御部71はすぐには異常状態の判定を行わない。センサ制御部71は、起動中、トリガスイッチ67がオンされている場合に(図12のS120:YES)、異常状態の判定を行う。つまり、モータ50に実際に回転のための通電が行われてモータ50が回転中又は回転可能な状態にある場合に、異常状態の判定を行う。一方、トリガスイッチ67がオフされている間は、モータ50は通電駆動されず、異常判定を行う必要が低いため、異常判定は行わない。このように、異常判定の必要がある間に異常判定を行って異常判定の必要性が低い間は異常判定を行わないようにすることで、センサ制御部71の処理負荷を軽減でき、その分、消費電力の低減も可能となる。
また、本実施形態では、図10を用いて説明したように、メインコントローラ30からセンサユニット40へトリガ信号を伝送するためのリード線82が断線した場合には、センサユニット40のセンサ制御部71が、トリガスイッチ67がオンされていると認識するように構成されている。そのため、リード線82が断線しても、センサ制御部71による異常状態の有無の判定(具体的には図12のS130以降の処理)を継続させることができる。
また、本実施形態では、図9を用いて説明したように、センサユニット40からメインコントローラ30へモータ停止信号を伝送するためのリード線81が断線した場合には、メインコントローラ30のメイン制御部61が、センサユニット40において異常状態が検知されていると認識するように構成されている。そのため、リード線81が断線した場合、トリガスイッチ67の状態にかかわらずモータ50を強制的に停止させることができる。
なお、本実施形態において、草刈機1は本発明の作業機の一例に相当する。メインパイプ2は本発明の棹の一例に相当する。ハンドル6は本発明の把持部の一例に相当する。トリガ引金11は本発明の操作部の一例に相当し、トリガスイッチ67は本発明の操作検出部の一例に相当する。草等の刈り取り対象物は本発明の作業対象物の一例に相当する。刈刃17及びナイロンコードアセンブリ100は本発明の作業要素の一例に相当する。モータ50は本発明の駆動源及び電動モータの一例に相当する。加速度センサ44は本発明の第1加速度検出部及び第2加速度検出部の一例に相当する。加速度センサ44におけるX検出軸の方向(X軸方向)は本発明の第1方向の一例に相当し、Y検出軸の方向(Y軸方向)は本発明の第2方向の一例に相当する。キックバックは本発明の第1の事象の一例に相当し、転倒は本発明の第2の事象の一例に相当する。センサ制御部71は本発明の事象判定部及び駆動停止部の一例に相当する。X軸加速度閾値Axは本発明の第1加速度閾値の一例に相当し、Y軸加速度閾値Ayは本発明の第2加速度閾値の一例に相当する。時間閾値Bxは本発明の第1時間閾値の一例に相当し、時間閾値Byは本発明の第2時間閾値の一例に相当する。
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得る。
(1)上記実施形態では、センサユニット40のセンサ制御部71が、X,Y各軸の加速度の絶対値と各軸の加速度閾値Ax,Ayとの比較結果によって異常発生の有無を判定する、という構成を例示したが、加速度の絶対値に基づいて異常発生を判定することは必須ではない。
即ち、加速度の方向を区別し、加速度が正の方向の場合と負の方向の場合とでそれぞれ加速度閾値を設定するようにしてもよい。そして、演算した加速度が、正の加速度閾値以上か若しくは負の加速度閾値以下の場合に、異常状態が発生したと判定するようにしてもよい。その場合、正の加速度閾値の絶対値と負の加速度閾値の絶対値は異なる値としてもよい。
(2)図12の異常状態検知処理で用いられるX軸加速度閾値Ax、Y軸加速度閾値Ay、X軸時間閾値Bx、及びY軸時間閾値Byは、作業者によって又は草刈機1の販売店やメーカなどにおいて、設定変更できるようにしてもよい。
(3)上記実施形態では、加速度センサ44からの各軸検出電圧Vsx,Vsyに基づく演算により得られる加速度に対して閾値を設定し、加速度と閾値との比較によって異常状態の有無を判定した。これに対し、加速度センサ44からの各軸検出電圧Vsx,Vsyに対して閾値を設定し、各軸検出電圧Vsx,Vsyと閾値との比較によって異常状態の有無を判定するようにしてもよい。つまり、加速度を演算してその演算した加速度に基づいて判定することは必須ではなく、加速度を間接的に示す物理量に基づいて判定を行うようにしてもよい。
(4)上記実施形態の草刈機1は、センサユニット40のセンサ制御部71が、加速度センサ44からの各軸検出電圧Vsx,Vsyに基づく異常状態の判定を、トリガスイッチ67がオンされている間に行うように構成されていたが、トリガスイッチ67のオン、オフ状態にかかわらず、センサ制御部71の起動中は常に判定を行うようにしてもよい。
(5)草刈機1に対する、左右方向Dx、上下方向Dy、前後方向Dzの規定方法は、上記実施形態の規定方法に限定されない。また、加速度センサ44における検出対象の2軸をそれぞれ草刈機1の左右方向Dxと上下方向Dyに一致させることは必須ではない。また、2軸の各検出軸が直交していることも必須要件ではない。
キックバック時に生じる加速度及び転倒時に生じる加速度をそれぞれ適切に検出でき、且つその検出結果に基づいてキックバック及び転倒の発生をそれぞれ適切に検出できる限り、加速度センサ44における検出対象の2軸の方向は適宜決めることができる。例えば、Y検出軸が刈刃17の回転面に対して垂直な方向となるように加速度センサ44を固定してもよい。
(6)上記実施形態では、3軸の加速度を独立して検出可能な加速度センサ44を用い、3軸の検出軸のうち2軸(X軸とY軸)の検出電圧に基づいて異常発生を検知するようにしたが、3軸の検出軸のうちどの2つの軸を用いるかについては適宜決めることができる。例えば、加速度センサ44の配置状態を、上記実施形態の配置状態からY軸を中心に90度回転させた状態として、左右方向Dxの加速度についてはZ軸検出部からのZ軸検出電圧Vszに基づいて検出するようにしてもよい。
(7)加速度センサ44から出力される各検出電圧Vsx,Vsyに基づいて異常状態が検知された場合における、異常表示灯25の点灯やブザー76の作動は、メインコントローラ30が行うようにしてもよい。
(8)図12の異常状態検知処理において、S160でY軸転倒検知フラグがセットされた場合は、すでに、転倒が検知されてモータ50を停止させるべき状況になっている。そのため、その場合はS180に進まずにすぐにS280に移行してモータ停止信号を出力させてもよい。
また、図12の異常状態検知処理では、まずY軸加速度に基づく異常判定(S130〜S170)を行い、その後にX軸加速度に基づく異常判定(S180〜S220)を行う構成であったが、この順序を逆にしてもよい。
また、図12の異常状態検知処理において、S280でメインコントローラ30へモータ停止信号を出力させる際、2軸のうちどちらの検出軸で閾値を超える加速度が発生したのかを示す情報も出力するようにしてもよい。このようにすることで、メインコントローラ30は、どのような異常が発生したのか(例えばキックバックと転倒のどちらが発生したのか)を知ることができる。
また、図12の異常状態検知処理では、加速度が閾値を超えている状態が一定時間継続した場合に異常発生と判定するようにしたが、一定時間の継続を待つことなく、加速度が閾値を超えた場合にはすぐに異常発生と判定するようにしてもよい。
(9)上記実施形態では、転倒やキックバックなどの異常を検出するためのセンサとして、3軸の加速度センサ44を用いたが、2軸の加速度を独立して検出可能な2軸加速度センサを用いてもよい。また、4軸以上を独立して検出可能な加速度センサを用い、その4軸以上の検知軸のうち2軸を用いて異常を検出するようにしてもよい。また、1軸のみ検出可能に構成された加速度センサを2つ用い、その2つの加速度センサからの検出信号に基づいて異常を検出するようにしてもよい。
(10)上記実施形態では、加速度に基づいて転倒やキックバックなどの異常を検知したが、加速度以外の他の物理量を検出し、その検出した物理量に基づいて転倒やキックバックなどの異常を検知するようにしてもよい。例えば、加速度ではなく速度あるいは変位量を検出し、その検出結果に基づいて異常を検知するようにしてもよい。
(11)バッテリパック22は、後端ハウジング21に対してその後端面ではなく別の位置に装着される構成であってもよい。例えば、後端ハウジング21の下面側にバッテリパックを装着可能な構成でもよい。その場合、加速度センサ44は、制御ユニット3全体の中で最重量物であるバッテリパックの重心よりも上側に位置するように配置するとよい。
(12)上記実施形態では、後端ハウジング21にバッテリパック22を着脱可能に構成された草刈機1を示したが、草刈機の各部への電力供給方法は、バッテリパック22を後端ハウジング21に直接装着して供給する方法に限定されない。
例えば、後端ハウジング21内にバッテリ60が内蔵された草刈機であってもよい。この場合、後端ハウジング21内における最重量物がバッテリ60であれば、加速度センサ44はバッテリ60の重心よりも前方に配置してもよい。
また例えば、草刈機とは別のバッテリユニットから電源コードを介して草刈機へバッテリ電力を供給するように構成された草刈機であってもよい。また例えば、商用交流電源から電源コードを介して交流電力が供給され、その交流電力によってモータが駆動される構成の草刈機であってもよい。
(13)上記実施形態では、モータ50がブラシレスモータである例を示したが、モータ50は、ブラシレスモータ以外の各種のモータであってもよい。また、上記実施形態では、刈刃17がモータ50で駆動される構成の草刈機1を示したが、刈刃17の動力源はモータ50に限定されない。
例えば、内燃機関を動力源として刈刃17を回転させるよう構成された草刈機に対しても本発明を適用可能である。動力源として内燃機関が用いられる草刈機の場合、制御ユニット全体における最重量物は、通常、内燃機関本体となる(内燃機関本体が後端ハウジング内に収められることになる)。その場合、加速度センサは、後端ハウジング内において内燃機関本体の重心よりも前方に配置してもよい。
(14)上記実施形態では、草等を刈り取るための作業要素として、少なくとも刈刃17とナイロンコードアセンブリ100の何れかを任意に選択して使用できる構成を示したが、これはあくまでも一例であり、装着可能な作業要素の数や種類は特に限定されない。
(15)本発明は、草刈機への適用に限らず、例えばチェーンソー、ヘッジトリマ、バリカンなど、動力源によって作業要素が駆動されるよう構成された各種の作業機に対して適用可能である。
(16)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合させたりしてもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、同様の機能を有する公知の構成に置き換えてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。なお、特許請求の範囲に記載した文言のみによって特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本発明の実施形態である。