JP2016075675A - 応力ゲージ、及びこれを備えた鋼材 - Google Patents

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Abstract

【課題】設置や計測を簡単に行うことで、これらの作業にかかる手間や時間を低減することができ、コストの低減を図ることができる。【解決手段】鋼材2に設けられ、鋼材2の応力・ひずみ状態を測定するための応力ゲージ1であって、切欠き3aが形成された検出部材3を単数あるいは複数備え、検出部材3は、鋼材2のひずみの変化に基づいて、切欠き端部から発生するき裂が進展可能に設けられ、複数の検出部材3は、それぞれ切欠き長さaが異なり、切欠き長さaの長い順に配列されている構成の応力ゲージ1を提供する。【選択図】図1

Description

本発明は、被計測物の応力・ひずみ状態を測定するための応力ゲージ、及びこれを備えた鋼材に関する。
構造物等の被計測物の応力・ひずみ状態を計測する場合には、ひずみゲージを用いるのが一般的である。他には、例えば、特許文献1、2に記載される方法、装置により応力・ひずみ状態を把握するものが知られている。
特許文献1には、き裂を有する試験片を応力ゲージとして被計測物に設け、そのき裂進展をモニタリングし、得られたき裂進展長さと別途定めたS−N線図より疲労損傷度を評価する方法について記載されている。
また、特許文献2には、被計測物に設けた切欠きを有する試験片から発生する音響放出波(AE波)を検出して応力を推定する応力検出装置について開示されている。
特許第3020162号公報 特公昭62−32411号公報
しかしながら、従来の応力ゲージでは、以下のような問題があった。
すなわち、一般的に使用されるひずみゲージや特許文献2に示す応力検出装置では、計測機器による継続的あるいは断続的な電気的モニタリング、そのための電源の確保、さらにはゲージと計測機器との配線が必要となるため、計測に手間と時間がかかり、コストが増大するという問題があった。一方、特許文献1に示す評価方法についても、応力ゲージとなる試験片のき裂長さを継続的あるいは断続的に測定することが必要であり、ひずみゲージや特許文献2に示す応力検出装置と同様に、計測に手間と時間を要する。結果として、従来の方法については改善の余地があり、新たな技術が求められていた。
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、継続的あるいは断続的なモニタリング無しで応力・ひずみ状態を定量化することが可能であり、また特別な計測装置が無くとも対応できる応力ゲージ、及びこれを備えた鋼材を提供することを目的とする。このような技術の提供によって、特にひずみ・応力状態の計測にかかる手間や時間を省くことができ、結果としてコストを低減することが可能となる。
上記目的を達成するため、本発明に係る応力ゲージは、被計測物の部材表面に設けられ、該被計測物の応力・ひずみ状態を測定するための応力ゲージであって、切欠きを有する検出部材を備え、該検出部材は、前記被計測物のひずみの変化に基づいて、前記切欠きの先端部から発生するき裂が進展可能に設けられ、き裂の進展状況を検出することにより応力・ひずみ状態を測定可能に構成されていることを特徴としている。
本発明に係る応力ゲージでは、被計測物の検出部材が例えば貼付あるいは印刷等による直接形成によって設けられた箇所に応力・ひずみが生じ、その応力・ひずみが所定の大きさに達したときに、検出部材の切欠きの先端部(切欠き先端)からき裂が進展する。この検出部材のき裂の進展状況を目視やカメラ、或いは他の検出手段によって検出することにより、被計測物が被った応力・ひずみ状態を容易に測定し、確認することができる。本応力ゲージは、検出部材の材質や切欠きサイズの選択により、検出部材の切欠き先端からき裂が進展することを利用し、被計測物が被った応力・ひずみ状態を直接的に計測するところに特徴がある。
このように、本発明に係る応力ゲージは、被計測物の部材表面に設けた検出部材のき裂の進展により、容易に被計測物の応力・ひずみ状態を特定することが可能となる。この結果、従来の方法と比較して、応力・ひずみ状態の評価を簡単に行うことができ、コストの低減を実現することができる。
また、本発明に係る応力ゲージでは、切欠きを有する検出部材を被計測物の任意の位置に複数配置したり、複数の切欠きを有する検出部材を被計測物の任意の位置に配置したりすることができる。つまり、被計測物における必要なスケールに応じて、μm〜mm〜cm単位の大きさの検出部材を選択して配置することが可能であり、必要とする目的、被計測物の構造などの条件に応じて構成することができる。
したがって、ひずみが発生しやすい箇所など測定したい箇所に集中的に検出部材を配置することができ、その付与位置から複数の応力状態を精度よく確認することができる。そのため、インフラ設備の経年劣化の評価に好適である。しかも、複数の検出部材を配置することで、比較的広い範囲の応力・ひずみ状態を評価することができる。
また、本発明に係る応力ゲージにおいて、前記検出部材は、複数設けられてなり、これら前記複数の検出部材に設けられる少なくとも2つの切欠きの長さが異なることが好ましい。
この場合には、被計測物の計測したい箇所の条件に合せて好適な切欠き長さの切欠きを有する検出部材を選択することができるため、被計測物の応力・ひずみ状態を精度よく確認することができる。
また、本発明に係る応力ゲージにおいて、前記検出部材は、複数設けられてなり、これら前記複数の検出部材に設けられる切欠きの長さが同じであるようにしてもよい。
本発明では、それぞれの検出部材に同じ応力・ひずみが生じる場合において、それぞれの切欠きの先端部から発生するき裂が進展状況の違いから、応力ゲージの精度のばらつきを確認することができる。
また、本発明に係る応力ゲージは、前記複数の検出部材に設けられる前記切欠きの向きを異なる方向に向けた状態で配置されていてもよい。
本発明では、複数の検出部材を、それぞれの切欠きの開口の向きを変えるだけで、任意の方向に向けて容易に配置することができる。例えば同じ切欠き長さの切欠きを有する検出部材を円周方向に複数配置することによって、任意の方向の応力を自在に測定することができる。
また、本発明に係る応力ゲージは、前記複数の検出部材は、それぞれ1つの切欠きを有し、前記切欠きの長さの長い順、短い順、あるいはランダムに配列されていてもよい。
この場合、被計測物の応力が大きくなるに従い、例えば切欠き長さの長い検出部材から短い検出部材となるように順次、き裂を進展させることができる。そのため、複数の検出部材のうちき裂が進展した検出部材の位置を確認することで、被計測物に作用した応力・ひずみ状態の程度(大きさ)を把握することができる。つまり、切欠き長さの異なる検出部材は、一種のインジケーターの機能を有することから、連続的な応力・ひずみの評価が可能であり、より高い精度で被計測物の応力・ひずみ状態を確認することができる。
また、本発明に係る応力ゲージは、前記検出部材は、複数の切欠きを有するようにしてもよい。
さらに、前記複数の切欠きは、前記切欠きの長さの長い順、短い順、あるいはランダムに配列されていてもよい。
さらにまた、前記切欠きは、互いに対向して配置されるとともに、前記対向する一対の切欠きの切欠き先端同士が互いに前記せん断方向に離れていてもよい。
これにより、本発明に係る応力ゲージを用いて鋼材の大変形を測定することもできる。
この場合、一対の切欠きが切欠き先端同士を結ぶ線においてせん断力が作用し、そのせん断ラインでき裂が進展する。これを目視などにより把握することで、被計測物のせん断状態を確認することができる。
また、本発明に係る応力ゲージは、前記検出部材は、前記被計測物よりも破壊靱性値が小さい材料であることが好ましい。
この場合、被計測物よりも破壊靱性値が小さい検出部材を用いることで、被計測物に生じる小さな変位(ひずみ)の応力・ひずみ状態を測定することができる。
また、本発明に係る応力ゲージは、前記検出部材は、き裂の進展ひずみが1%より大きい材料であることが好ましい。
この場合、き裂の進展ひずみが1%より大きい検出部材を用いることで、被計測物に生じる大きな変位(ひずみ)の応力・ひずみ状態を測定することができる。
また、本発明に係る応力ゲージは、前記検出部材には、電気的な機能を有する端子を備えていてもよい。
この場合には、検出部材が切欠き先端部からき裂が進展したことを電気的に確認することができる。例えば、端子を可視的に確認できるモニター等の機器に接続しておくことで、容易に確認することが可能となる。
また、検出部材に端子を接続し、電気回路の一部として利用することもできる。さらに、蛍光体を含む材料や外部からの電磁波照射に対して発光することや、熱を発生することも可能である。
また、本発明に係る応力ゲージを備えた鋼材は、上述した応力ゲージが設けられていることを特徴としている。
本発明では、上述した作用効果により、応力ゲージが設けられた鋼材の応力・ひずみ状態を容易に、かつ精度よく確認することができる。
本発明の応力ゲージ、及びこれを備えた鋼材によれば、構造物の各部位における応力・ひずみ状態を測定する方法として、構造物の健全性の評価において、従来のひずみゲージを用いた計測に対して、その健全性を確認するための臨界応力、臨界ひずみの検出を容易にすることで、設置や計測を簡単に行うことが可能となり、これらの作業にかかる手間や時間を低減することができ、コストの低減を図ることができる。
本発明の第1の実施の形態による鋼材に設ける応力ゲージの構成を示す平面図である。 図1に示す応力ゲージに設けられる検出部材を示す平面図である。 検出部材の接着状態の一例を示す平面図である。 検出部材の接着状態の他の例を示す図であって、(a)は検出部材の平面図、(b)は(a)に示すA−A線断面図、(c)は(b)における接着状態の他の例を示す断面図である。 実施例による応力ゲージを示す平面図である。 図5に示す実施例の切欠き先端の形状を示す拡大図である。 切欠き長さとクラック発生時応力の関係を示す図であって、試験結果と理論値を示す図である。 第2の実施の形態による応力ゲージの構成を示す平面図である。 第3の実施の形態による応力ゲージの作用を説明する図であって、ひずみと応力の関係を示す図である。 第4の実施の形態による応力ゲージの構成を示す平面図である。 (a)、(b)は、図10に示す検出部材の接着状態の示す平面図である。 応力ゲージの適用例を示す図であって、橋梁の主桁と横桁の接合部の斜視図である。 (a)〜(e)は、変形例による検出部材を示す平面図である。 変形例によるせん断力を確認するための応力ゲージを示す平面図である。 適用例1による箱体に応力ゲージを設けた構成を示す斜視図である。 適用例2による箱体に応力ゲージを設けた構成を示す斜視図である。 適用例3による箱体に応力ゲージを設けた構成を示す斜視図である。 適用例4による箱体に応力ゲージを設けた構成を示す斜視図である。 (a)はガーダーのき裂発生箇所の一例を示す斜視図、(b)は図19(a)のR3部分のき裂発生箇所を示す拡大図、(c)は図19(b)に示すき裂発生箇所の補修状態を示す平面図である。 (a)〜(d)は、適用例(A)〜(D)によるガーダーにおける他の溶接部近傍、或いはその周辺に応力ゲージを貼付した例を示す要部斜視図である。
以下、本発明の実施の形態による応力ゲージ、及びこれを備えた鋼材について、図面に基づいて説明する。
(第1の実施の形態)
図1に示すように、本実施の形態の応力ゲージ1は、鋼材2(被計測物)に設けられ、その鋼材2の応力・ひずみ状態を測定するためのものであり、1つの応力ゲージ1中に多数の検出部材3を有している。
応力ゲージ1は、円形のベース部材11の上面に1つの切欠き3aが形成された検出部材3(3A、3B、3C、3D)を複数備え、鋼材2のひずみの変化に基づいて、切欠き先端3b(先端部)からき裂が進展することが可能に設けられ、き裂の進展状況を検出することにより応力・ひずみ状態を測定可能に構成されている。
ここで、「き裂の進展」とは、切欠き先端3bから生じるき裂の長さ方向に延びるき裂の状態を示すが、破断した状態も含んでいる。
ベース部材11は、円形シート状に形成されており、例えばフィルム、紙、金属板等の材料のものを接着することができる。ベース部材11が金属板の場合には、上面に検出部材3が接着により配置されるとともに、下面が適宜な接着剤などからなる接着材料層によって鋼材2に貼着される。この時、応力ゲージ1は検出部材3(切欠き3aを含む部分)の全面(図3参照))、あるいは一部が接着している構造とする。
検出部材3は、上述したようにベース部材11の上面に例えば接着剤により貼着され、単体(1個)で設けられるもの(符号3Dの検出部材)と、ベース部材11の半径方向Rに沿って複数個(ここでは3個、符号3A〜3Cの検出部材)を配列させた組み合わせとして構成されるゲージ群30(図1の二点鎖線で囲まれた集合体)と、を有している。これら検出部材3は、図2に示すように、平面視で正方形をなし、脆性材料を対象としており、鋼材2よりも破壊靱性値KICが小さい材料が用いられる。あるいは鋼材2よりも破断ひずみが小さい材料を用いてもよい。検出部材3としては、例えばアルミナ(Al2O3)やシリコン(Si)、タングステン(W)などのセラミックス、半導体、金属のいずれの材料でも用いることができる。また、これらの中の異なる材料を積層構造としても良い。さらに、検出部材3の表面には必要に応じて任意の色で着色することや蛍光塗料で着色しても良い。着色により、視認性を高めることができる。
また、検出部材3は、接着によりベース部材11に貼着する構成に限定されず、例えば上面に検出部材3を蒸着技術や印刷技術などによりコーティングしたベース部材11を鋼材2の表面に設けるようにしてもよい。高能率な印刷技術を用いる場合には、検出部材3となる脆性材料の付与を低コストで行うことができる。
検出部材3は図3に示すように全体(全面)、図4(a)、(b)に示すように一部(符号3c)が接着材により貼着(符号3dは非貼着部)されているもの、あるいは図4(c)に示すように検出部材3がベース部材11に直接貼着されないようにフィルム、紙、金属箔等の材料(符号3e)が検出部材3とベース部材11との間に存在しても良い。例えば、ベース部材11の表面上に検出部材3を直接貼着しない部分では、水溶液や溶剤により除去できる材料をあらかじめコーティングしておいても良い。
なお、検出部材3の接着範囲は、図4(a)に示すように、切欠き3aを挟んだ両端部分においてき裂の進展方向(切欠き3aの長さ方向)に対して平行で、かつ同一幅となる範囲としているが、このような接着範囲であることに制限されるものではなく、例えば前記進展方向に対して傾きをもつように設けることも可能である。また、検出部材3の接着範囲として、き裂の進展方向に沿って同一幅ではなく、その幅寸法が前記進展方向の一方から他方に向かうに従い漸次、拡大または縮小するような範囲に設定してもよい。
図1に示すように、検出部材3の切欠き3aは、4辺のうちの1辺を三角形状に切り欠いた形状をなしている。検出部材3は、それぞれ切欠き3aの長さ寸法(切欠き長さa)が異なっている。具体的には、単体で設けられる2つの検出部材3Dは、共に同形状の切欠き長さaをなし、切欠き先端3bを半径方向Rの中心O側に向けて配置されている。
また、2箇所のゲージ群30は、例えば応力ゲージ1のうちとくに精度よく計測したい位置(図1で紙面右側部分)に集中させて配置されている。ゲージ群30を構成する3つの検出部材3A、3B、3Cは、半径方向Rの内側から外側に向けて切欠き長さaの長いものから短いものになる順で配列され、3個の検出部材3A〜3Cとも切欠き先端3bを半径方向Rの中心O側に向けて配置されている。つまり、鋼材2とともに応力ゲージ1に円周方向のひずみが作用すると、切欠き長さaの長い半径方向Rの中心O側に位置する検出部材3Aの切欠き先端3bから最先でき裂が進展し、その後、符号3B、3Cの検出部材の切欠き先端3bからその順でき裂が進展する。つまり、1つのゲージ群30において、3つの検出部材3A、3B、3Cが設けられていることから、3段階の応力・ひずみ状態を確認することができる。
円周方向の異なる位置に設けられる検出部材3は、それぞれ切欠き3aの開口の向きを異なる方向に向けて配置されている。
また、検出部材3の厚さは、100nm以上に設定され、検出部材3を構成する材料の引張強度、或いは降伏応力の小さい方の応力σが0.06/√a<σ<60/√aを満足するように設定されている。さらに、検出部材3は、その面内で厚さが異なっていてもよい。さらにまた、1つのベース部材11において、全ての検出部材3の厚さが同じであってもよいし、全て或いは一部の検出部材3の厚さが異なっていてもよい。
ここで、本実施の形態の応力ゲージ1では、測定すべき位置に配置される検出部材3の部位における応力が一定の値を超えたときに、この検出部材3が切欠き先端3bからき裂が進展するが、検出部材3の材料の破壊靱性値KICを確認することで、(1)式を用いて、この部位に生じた応力σ(ひずみ)を算出することができる。ここで、(1)式において、αは、検出部材3と切欠き3aの形と寸法で決定される定数であり、1〜0.2程度の値である。
Figure 2016075675
次に、上述した応力ゲージ、及びこれを備えた鋼材の作用について図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、本実施の形態では、被計測物である鋼材2の検出部材3が貼付により設けられた箇所にひずみが生じると、その応力が所定の大きさに達したときに、検出部材3は切欠き3aが拡大することによりその切欠き先端3bからき裂が進展する(図2参照)。そして、この検出部材3のき裂の進展状況を目視やカメラ、或いは他の検出手段(図示省略)によって検出することにより、鋼材2が被った応力・ひずみ状態を容易に測定し、確認することができる。本応力ゲージ1は、検出部材3の材質や切欠きサイズの選択により、検出部材3の切欠き先端3bからき裂が進展することを利用し、鋼材2が被った応力・ひずみ状態を直接的に計測するところに特徴がある。
このように、本実施の形態の応力ゲージ1は、鋼材2の部材表面に設けた検出部材3のき裂の進展により、容易に鋼材2の応力・ひずみ状態を特定することが可能となる。この結果、従来の方法と比較して、応力・ひずみ状態の評価を簡単に行うことができ、コストの低減を実現することができる。
このように、本実施の形態による応力ゲージ1では、鋼材2に対する検出部材3の付与とそのき裂の進展状況のモニタリングとを極めて簡単に行うことができ、コストの低減を図ることができる。なお、具体的なモニタリングの方法としては、目視の他に、電気的、光学的、画像的、熱的な検出による方法を採用することができる。
したがって、鋼材2に設けた検出部材3のき裂の進展により、容易に鋼材2の応力・ひずみ状態を特定することが可能となる。この結果、従来の方法と比較して、応力・ひずみ状態の評価を簡単に行うことができ、コストの低減を実現することができる。
また、本実施の形態の応力ゲージ1では、切欠き3aを有する検出部材3を鋼材2の任意の位置に複数配置したり、複数の切欠き3aを有する検出部材3を鋼材2の任意の位置に配置したりすることができる。つまり、鋼材2における必要なスケールに応じて、μm〜mm〜cm単位の大きさの検出部材3を選択して配置することが可能であり、必要とする目的、鋼材2などの被計測物の構造などの条件に応じて構成することができる。
そして、半径方向R及び円周方向に配置する検出部材3の数量は、図1に示す形態に限定されることはなく、検出を必要とする応力の方向とその大きさに応じて1〜n個の数を自由に選択することができる。
したがって、ひずみが発生しやすい箇所など測定したい箇所に集中的に検出部材3を配置することができ、その付与位置から複数の応力状態を精度よく確認することができる。
そのため、インフラ設備の経年劣化の評価に好適である。しかも、複数の検出部材3を配置することで、より広い範囲の応力・ひずみ状態を評価することができる。
また、本実施の形態の応力ゲージ1では、ゲージ群30において、複数の検出部材3A〜3Cはそれぞれ切欠き長さaが異なる構成であるので、鋼材2の計測したい箇所の条件に合せて好適な切欠き長さaの切欠き3aを有する検出部材3を選択することができる。
そのため、鋼材2の応力・ひずみ状態を精度よく確認することができる。
しかも、本実施の形態のゲージ群30では、例えば切欠き長さaの長い順に複数の検出部材3を連続的に配列することで、鋼材2の応力が大きくなるに従い、切欠き長さの長い検出部材3から短い検出部材3となるように順次、き裂を進展させることができる。そのため、連続的に配列される複数の検出部材3のうちき裂が進展した検出部材3の位置を確認することで、被計測物が被った応力・ひずみ状態の程度(大きさ)を把握することができる。つまり、切欠き長さaの異なる検出部材3は、一種のインジケーターの機能を有することから、連続的なひずみを確認することができ、より簡便かつ高い精度で鋼材2の応力・ひずみ状態を確認することができる。
また、本実施の形態の応力ゲージ1において、複数の検出部材3を、それぞれの切欠き3aの開口の向きを変えるだけで、任意の方向に向けて容易に配置することができる。そのため、本実施の形態のように、同じ切欠き長さの切欠き3aを有する単体の検出部材3を円周方向の異なる位置で同心円上に配置することによって、任意の方向の応力を自在に測定することができる。
上述した本実施の形態による応力ゲージ、及びこれを備えた鋼材では、被計測物となる構造物(鋼材2)の各部位における応力・ひずみ状態を測定する方法として、構造物の健全性の評価において、従来のひずみゲージを用いた計測に対して、簡便に応力、ひずみの検出を可能とすることで、設置や計測が簡単に行え、手間や時間を低減することができ、コストの低減を図ることができる。
次に、上述した実施の形態による応力ゲージ、及びこれを備えた鋼材の効果を裏付けるための実施例について以下に説明する。
(実施例)
本実施例では、図5に示すように、厚さ0.15mm×巾30mm ×長さ160mmで、ヤング率210GPaの鋼板41(ベース部材)の上に、異なる切欠き長さaの切欠き42a、42b、42c、42dを有する4つのAl薄膜(検出部材42A〜42D)をPVD法で蒸着した。図5中の検出部材42A〜42Dの接着部4a、4a同士の間の部分には、あらかじめアルコール溶剤で除去できる有機材料を厚さ10〜100nmで設けておく。Al薄膜をPVD法でコーティングした後、鋼板をアルコール溶剤中に入れ、有機材料を除去した。なお、図5の数値の単位はmmである。切欠き42a〜42dの切欠き長さaは、それぞれa=7mm、10mm、13mm、16mmである。検出部材42A〜42Dは、50μm厚、20mm角の正方形で、破壊靭性値KIC =4.0 MPa・√mを有する。
ここで、これら検出部材42A、42B、42C、42Dを備えた鋼板41は応力ゲージ4を構成している。なお、各切欠き42a、42b、42c、42dの先端の形状は、図6に示すように、θ=90°で直角となっている。
試験は、応力ゲージ4に対して、引張試験機を用いて徐々に応力を加えながら、その表面を観察した。荷重の増加に伴い、最も長いき裂(切欠き)を有する検出部材42A(a=16mm)でクラックが先ず発生し、その後の荷重の増加に伴って、a=13mm、10mm、7mmの切欠き42b、42c、42dの各検出部材42B、42C、42Dの順にクラックが発生することが観察された。また、クラックが発生した時の荷重はそれぞれ72N、79N、90N、109Nであった。
クラックが発生するき裂先端における破壊応力σは、上述した(1)式で求められる。
(1)式中のαは、1.12とされる。その結果、クラック発生時の応力の測定値は、それぞれ16.0MPa、17.6MPa、20.0MPa、24.2MPaであった。試験結果と理論値との対応関係を図7に示す。図7の結果より、精度よく応力の検出が可能であることを確認することができる。
次に、本発明の応力ゲージ、及びこれを備えた鋼材による他の実施の形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1の実施の形態と異なる構成について説明する。
(第2の実施の形態)
図8に示すように、第2の実施の形態による応力ゲージ1Aは、平面視で四角形のベース部材12において複数の検出部材31を配置した構成となっている。
検出部材31の切欠き31aは、スリット状に切り込まれている。その切欠き31aの長さ(切欠き長さ)の異なる検出部材31、31、…を、切欠き長さの長いものから順に一方向から他方向に向けて配列したゲージ群30Aがベース部材12上に4つ設けられている。
これら4つのゲージ群30Aは、それぞれ45°ずつの異なる方向にずらした状態で配置されており、複数の応力の測定に対応できる構成となっている。
(第3の実施の形態)
次に、上記の実施の形態では検出部材3、31として脆性材料を対象としているが延性材料に適用する場合について説明する。
この場合の検出部材として、延性を有する材料で公称ひずみまで測定すると仮定し、検出部材の材料の降伏強度をσとし、き裂の進展ひずみをεとする。ひずみ計測の場合には、ε>1%以上の材料が使用される。
図9に示すように、切欠きを設けた材料では負荷荷重(ひずみ)が大きくなると、切欠き先端で降伏領域が生じるが、その降伏領域の大きさは、γ〜Ω(K/σとなる。ここで、Ωは応力状態による定数、Kは応力拡大係数((2)式)、aは切欠き長さを示している。
Figure 2016075675
本実施の形態の検出部材では、変形が進み降伏領域が全面降伏状態になった場合、降伏領域部の応力はσ以上にはならないが、ひずみは伸びにつれて増加する。すなわち、切欠き先端部での応力集中ではなく、ひずみ集中が生じることになる。つまり、ひずみ集中の最大がき裂の進展ひずみに等しくなったときが切欠き先端から破壊が始まる条件となるので、一端破壊が始まれば切欠きは外部からの変位の増加(伸びの増加)なしに進展することになる。
すなわち、検出部材として、小さな変位(ひずみ)に対しては脆性材料を使用し、大きな変位(ひずみ)に対しては延性材料を使用することが好ましい。このような延性材料の伸びは、たとえば、金属やプラスチックスに小さなセラミックス粒子を混入することにより、制御することができる。
(第4の実施の形態)
次に、第4の実施の形態による応力ゲージについて、図面に基づいて説明する。
図10に示す第4の実施の形態による応力ゲージ1Bは、上述した実施の形態と同様に、鋼材2に設けられ、鋼材2の応力・ひずみ状態を測定するためのものであって、1つの検出部材32に複数の切欠長さa1〜a4の異なる切欠き32a〜32dが形成された構成となっている。この検出部材32は、鋼材2のひずみの変化に基づいて、複数の切欠き32a〜32dがそれぞれ拡大することによってき裂の進展が可能なように設けられている。これら複数の切欠き32a〜32dは、切欠き長さの長い順に配列されている。
図11(a)、(b)には、接着部3cを示している。接着部3cは、図11(a)に示すように検出部材32の両端部のみに設けられていてもよいし、図11(b)に示すように検出部材32の両端部および切欠き32a、32b、32c、32d同士の間の部分に設けられていてもよい。
この場合、1つの検出部材32において切欠き長さの長い順に複数の切欠き32a〜32dを連続的に配列することで、被計測物2の応力が大きくなるに従い、切欠き長さの長い切欠き32aから短い切欠き32dとなるように順次、き裂を進展させることができる。そのため、連続的に配列される複数の切欠き32a〜32dのうちき裂の進展した切欠き32a〜32dを確認することで、応力・ひずみ状態の程度(大きさ)を把握することができる。つまり、切欠き長さの長い(短い)順に配列されるこれら切欠き32a〜32dは、インジケーターの機能を有することから、連続的なひずみを確認することができ、より高い精度で鋼材の応力・ひずみ状態を精度よく確認することができる。
以上、本発明による応力ゲージ、及びこれを備えた鋼材の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば本実施の形態では、複数の検出部材に設けられる少なくとも2つの切欠きの長さが異なる構成、又は複数の切欠きを有する検出部材の構成としているが、これらの形態に限定されることはなく、複数の検出部材に設けられる切欠きの長さが同じである構成としてもよい。このような構成では、それぞれの検出部材に同じ応力・ひずみが生じる場合において、それぞれの切欠きの先端部から発生するき裂が進展状況の違いから、応力ゲージの精度のばらつきを確認することができる。
また、上述した実施の形態では、切欠き長さの長い順(短い順)に直線状に一列に配列されている例を示しているが、これに限定されることはない。例えば、切欠き長さの長い順(短い順)に円周方向に沿って配列する構成でもよい。また、長さの順に関係なく、一列又は円周状に配列される切欠きのそれぞれの切欠き長さが、その配列順に沿ってランダムに配置されていてもよい。
また、本実施の形態では、応力ゲージ1、1A、1Bを設ける被計測物として、鋼材を対象としているが、これに限定されることはない。例えば、被計測物の他の材料として、非鉄(金属)、ガラス、セラミック、コンクリート(モルタル)、アスファルト、プラスチック(樹脂)、木材、石膏、ゴム、紙、複合材料等に適用することができる。また、人体や動物のような生体に適用することもできる。
なお、被計測物として種々の材料を挙げたが、上記の実施の形態のように汎用性として、建材用、橋梁用、船舶用、海洋構造物用として用いられる鋼板やH形鋼、鋼矢板等の鋼材を対象とすることが好ましい。例えば、好適な使用方法として、被計測物が建築物の場合、鉄骨からなる柱梁の接続部における塑性化し易い部分に検出部材を取り付け、地震によって被った応力・ひずみ状態をモニタリングし、その健全性を定量化することができる。
また、一般的な適用例として、図12に示すように、橋梁5の主桁51と横桁52とが補剛材53を介して接合される接合部において、例えば図12において二点鎖線で囲んだ部分5A、5B、5Cの疲労き裂が発生しやすい部分や発生が予想される部分に、上述した複数の検出部材3、31、32を備えた円形状或いは四角形状等の応力ゲージ1、1A、1Bを適宜な箇所に設け、その接合部における応力・ひずみ状態をモニタリングし、疲労き裂の発生・進展の状況を把握することができる。
また、上述した実施の形態のように、応力ゲージにおける検出部材の形状、大きさ(寸法)、材質、数量は、付与する被計測物の条件(材質、大きさ、形状など)や、被計測物に対する付与方法(直接接着、ベース部材を介して接着、蒸着、印刷等による直接形成など)の条件に応じて適宜設定することができる。そのため、検出部材の形状としては、上記実施の形態の正方形に限らず、円形、三角形、長方形や五角形以上の多角形、楕円形などの任意の形状に設定することができる。
そして、検出部材は、電気伝導性のものでも良いし、電気絶縁性のものでもよい。
また、検出部材の材質として、蛍光体、発光体、発熱体を含ませることで、き裂の進展状態を目視で確認し易い機能をもたせることも可能である。
さらに、検出部材は、1つの材料から形成される部材であっても良いし、2つ以上の材料からなる積層構造の部材であってもかまわない。例えば、電気伝導性を有する部材の層と電気絶縁性を有する部材の層を組み合わせて積層させることもできる。
さらにまた、検出部材に電気的な機能を有する端子を備えるようにしても良い。この場合には、検出部材が切欠き先端からでき裂が進展したときに電気的に確認することができる。例えば、端子を可視的に確認できるモニター等の機器に接続しておくことで、容易に確認することが可能となる。
また、検出部材に接続される端子を電気回路の一部として利用することができ、蛍光体を含む材料や外部からの電磁波照射に対して発光することや、熱を発生することも可能である。
また、検出部材は、被計測物に対してコーティング(例えば蒸着や印刷)や接着剤を用いた接着により直接的に設けることも可能であるので、上述した実施の形態のようなフィルム等のベース部材11、12を省略してもよい。さらに、ベース部材として、転写プロセス用接着材料層が表面に設けられたものとし、検出部材のみを被計測物に接着させるようにしても良い。
なお、検出部材のコーティング(印刷)に関しても、上記実施の形態のようにフィルム等のベース部材11、12に印刷するのではなく、ベース部材11、12を省略して直接、被計測物2に印刷する方法によるものでもよい。
さらに、フィルム等のベース部材上に検出部材をコーティング(印刷)した状態で、さらにその表面にベース部材と同じ材料(フィルム等)、或いは異なる材料のものをコーティング(印刷)してもよく、これにより、設置条件(水分、湿度などの影響)による耐環境特性を向上させることができ、測定精度を高めることが可能となる。
検出部材の切欠きにおける切欠き先端の形状は、直線でも円弧状(曲線)でもよい。直線の場合、たとえば図6にあるような90°である必要はなく、θは任意の角度に設定することができる。また、円弧状の場合、そのラディアスは任意に設定することができる。
ただし、切欠き先端の曲率半径ρが切欠き長さaより小さい(ρ<a)条件を満たす必要がある。そして、前記ラディアスは、自然に発生するき裂を利用しても良い。
検出部材において、切欠きの切欠き長さaが検出部材の最も長い辺よりも小さければ良く、直線であっても、曲線であってもよい。さらに、直線や曲線の一部が2つ以上の直線や曲線に分岐していてもよい。
このように個々の検出部材3に設ける切欠き3aの配置と切欠き3aの形状、寸法(サイズ)、及び切欠き数量(1〜k個)は任意に設定することが可能である。
例えば、図13(a)に示す第1変形例による検出部材33は、同軸上に対向して2つの三角形状の切欠き33aを設けた形状である。
図13(b)に示す第2変形例による検出部材34は、同軸上に対向する2個を、直交方向に配置して計4個の切欠き34aを設けた形状である。
図13(c)に示す第3変形例による検出部材35は、異なる軸上に2個の切欠き35aを設けた形状である。
図13(d)に示す第4変形例による検出部材36は、切欠き36aを1個設けた形状である。
図13(e)に示す第5変形例による検出部材37は、検出部材の形状が四角ではなく、正三角形状をなす場合であって、3つの各辺に切欠き37aを設けた形状である。
また、本発明による応力ゲージでは、被計測物におけるせん断力を測定することも可能である。例えば、図14に示すように、応力ゲージ1Cの検出部材38は、一対の切欠き38a、38aが互いに対向して配置されるとともに、対向する一対の切欠き38a、38aの切欠き先端38b、38b同士が互いにせん断方向Eに離れた位置に配置されている。
これにより、一対の切欠き38a、38aが切欠き先端38b、38b同士を結ぶ線(図14で点線で示すせん断ライン)においてせん断力τが作用し、そのせん断ラインでき裂が進展する。これを上述した実施の形態と同様に目視などにより把握することで、被計測物のせん断状態を確認することが可能である。
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
次に、以上説明した応力ゲージの適用事例について、図面に基づいて説明する。
図15〜図18に示す適用例1〜4は、それぞれ例えば輸送用で商品梱包用の段ボール箱からなる箱体6を形成する6面のうち1面(これを検出面6Aという)の四隅に応力ゲージ1D〜1Gを貼付したものである。
図15に示す適用例1の応力ゲージ1Dは、1つの切欠き3aを有する平面視で四角形状をなす1枚の検出部材3からなり、その切欠き3aが検出面6Aの角頂部6aに向けた状態で貼り付けられている。適用例1では、輸送時に箱体6の落下や衝突が起こった場合に、応力ゲージ1Dのき裂状況を見ることで、衝撃を受けた履歴がわかり、箱体6内に収容されている商品の状態を簡易に確認することができる。
また、図16に示す適用例2における箱体6に設けられる応力ゲージ1Eは、異なる切欠き長さの2枚の四角形状をなす検出部材3A、3Bが箱体6の検出面6Aにおける対角線方向に沿って配列された構成となっている。一対の検出部材3A、3Bのうち対角線方向で角頂部6a側に配置される第1検出部材3Aは、他方の第2検出部材3Bよりも小さい切欠き3aのものが配置されている。そして、検出部材3A、3Bは、それぞれの切欠き3aが角頂部6aに向けた状態で貼り付けられている。
この場合には、箱体6が受ける応力に応じてひずみが作用すると、先に切欠き3aの長さが長い第2検出部材3Bの切欠き3aが第1検出部材3Aよりも先にき裂が進展し、その後、第1検出部材3Aの切欠き3aでき裂が進展する。そのため、適用例2では、受けた最大応力の程度を段階的に推測することが可能になる。なお、応力ゲージ1Eの枚数は、2枚であることに限定されず、3枚以上を設けるようにしてもよい。
また、図17に示す適用例3における箱体6に設けられる応力ゲージ1Fは、1枚の四角形状をなす検出部材3Cに複数(ここでは2つ)の切欠き3a、3aを設けたものである。検出部材3Cは、四角形の4辺のうち隣り合う2辺のそれぞれに切欠き3aが設けられ、各切欠き3aの方向は箱体6の面互いに直交する方向に切欠き3a、3aが形成されている。適用例3では、直交する2方向のき裂の状況を確認することができるので、箱体6に作用する応力の向きを評価することが可能となっている。
また、図18に示す適用例4における箱体6に設けられる応力ゲージ1Gは、平面視で正三角形状の検出部材3Dの各辺に切欠き3aを設けた構成となっている。検出部材3Dは、1つの頂部3fを箱体6の検出面6Aにおける角頂部6a側に向けて配置されている。この場合には、箱体6に作用する応力の向きを3方向から評価することができる。
ここで、上述した適用例1〜4のように箱体6における発生応力を評価する方向は任意であるが、検出面6Aの四隅のそれぞれに1つの検出部材のみを貼付する場合には、検出面6Aの角部が引き裂かれる方向、すなわち図15に示す適用例1のように、切欠き3aの向きが角部を構成する一辺に対して45°の方向となるように貼り付けるのが通常である。或いは、角部の凹みを対象とする場合には、図17に示す適用例2のように、切欠き3aの向きが角部を構成する一辺と平行な方向となるように貼り付けるようにしてもよい。
また、上述した適用例1〜4では、箱体6の6面のうち1面のみを検出面6Aとしているが、1面であることに限らず、2面以上、或いは全面に設けられていてもよい。
このように構成される適用例1〜4では、従来、輸送時の衝撃履歴を確認することが困難であったが、応力ゲージの使用により、容易に確認することができる。また、異なる切欠き長さの応力ゲージを複数枚することで受けた最大応力の程度が容易に推定できる。このような使用により、輸送時の保証制度にも活用することができる。
次に、応力ゲージを備えた鋼材において、溶接時の応力上昇を確認した適用事例について、図面に基づいて説明する。
図19(a)、(b)は、H形鋼からなるガーダー7において、応力集中してき裂Kが発生しやすい箇所を図中の符号R1〜R3の二点鎖線で示している。ガーダー7は、上フランジ71、下フランジ72、及びウェブ73からなり、適宜な箇所にガセットプレート74を接合させた構成となっている。図19(b)は、下フランジ72とガセットプレート74との溶接部に発生しているき裂Kの状態を示している。
図19(c)は、下フランジ72の上面72aにおけるガセットプレート74との接合部付近に生じているき裂Kの近傍に応力ゲージ1を貼付した補修状態を示している。き裂Kは、下フランジ72の延在方向に対して略直交する方向に延びている。このき裂Kは、ガウジング(溝掘り)した部位に溶接を施した補修が施される。そして、このき裂Kに対する補修部R3の両側に1箇所の切欠き3aを有する四角形状の検出部材3(応力ゲージ1)を貼り付けている。検出部材3は、切欠き3aがウェブ73に対して対向し、かつ切欠き3aの方向がき裂Kの向きと略平行となるように配置されている。すなわち、検出部材3は、き裂補修時のガウジングによる引張応力(図19(c)の矢印P)に対して略直交する方向に切欠き3aが位置するように配置されている。
また、図20(a)〜(d)には、上述したガーダー7における他の溶接部近傍、或いはその周辺に応力ゲージ1を貼付するなどの例を示している。図20中の矢印(符号P)は、図19(c)と同様に、溶接時の引張応力の作用方向(引張応力方向)を示している。応力ゲージ1の検出部材3は、切欠き3aの向きが引張応力方向Pの方向に対して直交するように配置されている。
図20(a)に示すように、適用例(A)は、下フランジ72の下面72bにおいて、面外ガセットまわし溶接部W1の近傍に2つの応力ゲージ1を貼付した一例を示している。この場合、二方向の引張応力Pのそれぞれに対応する向きに切欠き3aを向けて配置されている。
図20(b)に示すように、適用例(B)は、上フランジ71とウェブ73のガセットプレート74が接続される部分の近傍において、面外ガセットまわし溶接部W2、すなわち上フランジ71から鉛直力が卓越していると考えられる部分の近傍に複数の応力ゲージ1を貼付した一例を示している。この場合、上フランジ71及びウェブ73のそれぞれにおいて、ガセットプレート74を挟んだ両側に配置されている。
図20(c)に示すように、適用例(C)は、下フランジ72に接続されるガセットプレート74において、面内ガセットまわし溶接部W3の近傍に応力ゲージ1を貼付した一例を示している。
また、図20(d)に示すように、適用例(D)は、板継溶接部W4の近傍に応力ゲージ1を貼付した一例を示している。
このように、鋼材を溶接する場合には、応力ゲージを溶接部近傍、或いはその周辺に貼付しておくことにより、溶接時による母材の応力上昇の程度を容易に確認することができる。また、所定の応力上昇内に収まり、溶接作業の品質確認を簡易に把握することができる。
1、1A〜1G、4 応力ゲージ
2 鋼材(被計測物)
3、31〜38、42A〜42D 検出部材
3a、31a〜38a、42a〜42d 切欠き
3b、31b〜38b 切欠き先端(切欠きの先端部)
11、12 ベース部材
30、30A ゲージ群
R 検出部材の半径方向

Claims (12)

  1. 被計測物の部材表面に設けられ、該被計測物の応力・ひずみ状態を測定するための応力ゲージであって、
    切欠きを有する検出部材を備え、
    該検出部材は、前記被計測物のひずみの変化に基づいて、前記切欠きの先端部から発生するき裂が進展可能に設けられ、き裂の進展状況を検出することにより応力・ひずみ状態を測定可能に構成されていることを特徴とする応力ゲージ。
  2. 前記検出部材は、複数設けられてなり、
    これら前記複数の検出部材に設けられる少なくとも2つの切欠きの長さが異なることを特徴とする請求項1に記載の応力ゲージ。
  3. 前記検出部材は、複数設けられてなり、
    これら前記複数の検出部材に設けられる切欠きの長さが同じであることを特徴とする請求項1に記載の応力ゲージ。
  4. 前記複数の検出部材に設けられる前記切欠きの向きを異なる方向に向けた状態で配置されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の応力ゲージ。
  5. 前記複数の検出部材は、それぞれ1つの切欠きを有し、前記切欠きの長さの長い順、短い順、あるいはランダムに配列されていることを特徴とする請求項2に記載の応力ゲージ。
  6. 前記検出部材は、複数の切欠きを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の応力ゲージ。
  7. 前記複数の切欠きは、前記切欠きの長さの長い順、短い順、あるいはランダムに配列されていることを特徴とする請求項6に記載の応力ゲージ。
  8. 前記切欠きは、互いに対向して配置されるとともに、前記対向する一対の切欠きの切欠き先端同士が互いに前記せん断方向に離れていることを特徴とする請求項6又は7に記載の応力ゲージ。
  9. 前記検出部材は、前記被計測物よりも破壊靱性値が小さい材料であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の応力ゲージ。
  10. 前記検出部材は、き裂の進展ひずみが1%より大きい材料であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の応力ゲージ。
  11. 前記検出部材には、電気的な機能を有する端子を備えていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の応力ゲージ。
  12. 請求項1乃至11のいずれか1項に記載の応力ゲージが設けられていることを特徴とする応力ゲージを備えた鋼材。
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