JP2016073210A - 家畜下垂体細胞の集団からのゴナドトロフ細胞の分離方法 - Google Patents

家畜下垂体細胞の集団からのゴナドトロフ細胞の分離方法 Download PDF

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Abstract

【課題】フローサイトメーターを用いて家畜下垂体細胞の集団からゴナドトロフ細胞を分離する方法を提供すること。【解決手段】家畜下垂体細胞を含む液に、抗GnRHR抗体と、抗GnRHR抗体に結合する蛍光標識第二抗体を添加して免疫染色した家畜下垂体細胞を調製し、さらに死細胞を標識する色素を添加して染色する。かかる染色細胞をフローサイトメーターで測定し、前方散乱光パルス面積、後方散乱光パルス面積、蛍光パルス面積を測定する。次に、所定の細胞の大きさ又は所定の細胞内部構造の複雑さを有し、かつ特異的に結合した抗GnRHR抗体を介して蛍光標識第二抗体が結合した状態のゴナドトロフ細胞のみが発する強い蛍光を有する細胞、及び生細胞で、かつ特異的に結合した抗GnRHR抗体を介して蛍光標識第二抗体が結合した状態のゴナドトロフ細胞が発する蛍光を有する細胞それぞれにゲートを設け、3つのゲートの論理積をとった細胞を分取する。【選択図】なし

Description

本発明は、フローサイトメーターを用いて家畜下垂体細胞の集団からゴナドトロフ細胞を分離する方法に関する。
ゴナドトロフ細胞は、下垂体前葉に存在する細胞で、黄体形成(性腺刺激)ホルモン(LH)や卵胞刺激ホルモン(FSH)といった性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)を分泌する重要な細胞である。したがって、医学などにおける下垂体を標的とする研究開発において、ゴナドトロフ細胞は重要な研究対象である。しかしながら、下垂体前葉は多様な細胞が存在する組織であるため、性腺刺激ホルモンに関する研究を行う際にはゴナドトロフ細胞を高純度に分離することが本来は必要であったが、これまでは不可能であった。
下垂体前葉から細胞を分離する試みとして、たとえば、ヒツジにおいてパーコールを用いた密度勾配遠心法で、下垂体前葉細胞集団から、成長ホルモン分泌細胞を分離する方法(非特許文献1参照)が報告されているが、純度はわずか50〜85%にすぎなかった。また、ヒツジにおいてパーコールを用いた密度勾配遠心法で、下垂体前葉細胞集団からゴナドトロフ細胞を分離する方法(非特許文献2参照)が報告されているが、純度については記載がなく不明である。
さらに、ラットにおいて、パラホルムアルデヒドで固定し界面活性剤であるTritonX−100で細胞膜に穴を開けた下垂体前葉細胞集団から、死んだゴナドトロフ細胞をフローサイトメトリーにより収集する方法(非特許文献3参照)が報告されているが、このような細胞は、正常な構造を有さない死細胞であるため、重要な医学データを得る材料としては限界がある。
また、モデル細胞として下垂体由来の一種のがん細胞であるLβT2細胞を用いる方法が提案されているが(特許文献1参照)、純粋なゴナドトロフ細胞でも得られる現象か否かは不明であった。
さらに、ラットにおいて、ゴナドトロフ細胞がLHを細胞外に分泌するための1ステップであるエクソサイトーシス(開口分泌)の途中にあるLHを抗体で検出することを原理としたフローサイトメトリーにより、ゴナドトロフ細胞を純化する方法(非特許文献4参照)が報告されている。しかし、LH分泌型のゴナドトロフ細胞の分離には成功しておらず、収率も低いという問題があった。
特開2009−091265号公報
Chen C. et al., Neuroendocrinology 59;1-9(1994) Smith J. T. et al., Endocrinology 149(4):1951-1959(2008) Chtistian H. C. et al., Journal of Neuroendocrinology 11:707-714(1999) Wynick, M. S. et al., Journal of Endocrinology 126:261-268(1990)
本発明の課題は、フローサイトメーターを用いて家畜下垂体細胞の集団からゴナドトロフ細胞を分離する方法を提供することにある。
ゴナドトロフ細胞は非常に重要なホルモンを分泌する細胞であるが、これまでに高純度に分離する方法は存在しなかった。そこで、本発明者らは、まずは性腺刺激ホルモン放出ホルモン(以下、単に「GnRH」ともいう)に対する受容体(以下、単に「GnRHR」ともいう)の細胞外領域のポリペプチドに対する抗体(以下、単に「抗GnRHR抗体」ともいう)を作製した。得られた抗GnRHR抗体は、下垂体前葉から抽出したタンパク質に対するウエスタンブロットによりGnRHRに対する特異性を示した。またGnRHにより誘起される培養下垂体前葉細胞からのLH分泌に対する阻害実験においてもGnRHRに対する特異性を示した。
つぎに、上記抗GnRHR抗体を用いてフローサイトメーターによるゴナドトロフ細胞の分離を試みた。しかしながら、血液細胞や株化細胞と異なり、ゴナドトロフ細胞はフローサイトメトリー分析において頻繁に使われている前方散乱光と後方散乱光だけによる分類では不可能であり、また、他種動物も含めて、生きたゴナドトロフ細胞を分取するためのゲートに関する既報は存在しなかったため、生きたゴナドトロフ細胞を分取するための条件検討に大変な試行錯誤を要した。その過程で、前方散乱光パルス面積、後方散乱光パルス面積、GnRHRの発現、生細胞の4つのパラメーターを測定し、(1)所定の細胞の大きさを有し、かつGnRHRを細胞膜上に発現する細胞、(2)所定の細胞内部構造の複雑さを有し、かつGnRHRを細胞膜上に発現する細胞、(3)生細胞で、かつGnRHRを細胞膜上に発現する細胞の3種類のゲートを設定し、かかる3種類のゲートの論理積をとった細胞を分取することで、ゴナドトロフ細胞を分離することが可能であることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下に示すとおりのものである。
(1)フローサイトメーターを用いて家畜下垂体細胞の集団からゴナドトロフ細胞を分離する方法であって、以下の工程(a)〜(i)を備えたことを特徴とする方法
(a)家畜下垂体細胞を含む液に、ゴナドトロフ細胞の細胞膜上に存在する性腺刺激ホルモン放出ホルモンに対する受容体(GnRHR)の細胞外領域のポリペプチドに特異的に結合する抗体(抗GnRHR抗体)と、前記抗GnRHR抗体に結合する蛍光標識第二抗体を添加して、抗GnRHR抗体に続いて蛍光標識第二抗体を用いて免疫染色した家畜下垂体細胞を調製する工程;
(b)工程(a)で調製した家畜下垂体細胞を含む液に死細胞を標識する色素を添加して家畜下垂体細胞を染色処理し、抗GnRHR抗体処理サンプル細胞を調製する工程;
(c)家畜下垂体細胞を含む液に、家畜下垂体細胞に非特異的に結合する正常動物抗体と、前記正常動物抗体に結合する蛍光標識第二抗体を添加して、正常動物抗体に続いて蛍光標識第二抗体を用いて免疫染色した家畜下垂体細胞を調製する工程;
(d)工程(c)で調製した家畜下垂体細胞を含む液に死細胞を標識する色素を添加して家畜下垂体細胞を染色処理し、非特異的抗体結合コントロール細胞を調製する工程;
(e)工程(b)又は工程(d)で調製した抗GnRHR抗体処理サンプル細胞又は非特異的抗体結合コントロール細胞を含む液をそれぞれフローサイトメーターにかけて、前方散乱光パルス面積、後方散乱光パルス面積、第二抗体に結合する蛍光色素が発する蛍光のパルス面積、ならびに死細胞染色に用いた蛍光色素が発する蛍光のパルス面積を測定する工程;
(f)前方散乱光パルス面積と、家畜下垂体細胞に特異的あるいは非特異的に結合した抗GnRHR抗体を介して結合した蛍光標識第二抗体、又は家畜下垂体細胞に直接非特異的に結合した蛍光標識第二抗体が発する蛍光のパルス面積で展開したグラフを作成し、所定の細胞の大きさを有し、かつゴナドトロフ細胞の細胞膜上のGnRHRに特異的に結合した抗GnRHR抗体に結合した蛍光標識第二抗体が発する強い蛍光強度の領域に第一ゲートを設定する工程;
(g)後方散乱光パルス面積と、家畜下垂体細胞に特異的あるいは非特異的に結合した抗GnRHR抗体を介して結合した蛍光標識第二抗体、又は家畜下垂体細胞に直接非特異的に結合した蛍光標識第二抗体が発する蛍光のパルス面積で展開したグラフを作成し、所定の細胞内部構造の複雑さを有し、かつゴナドトロフ細胞の細胞膜上のGnRHRに特異的に結合した抗GnRHR抗体に結合した蛍光標識第二抗体が発する強い蛍光強度の領域に第二ゲートを設定する工程;
(h)死細胞を標識した色素の蛍光パルス面積と、家畜下垂体細胞に特異的あるいは非特異的に結合した抗GnRHR抗体を介して結合した蛍光標識第二抗体、又は家畜下垂体細胞に直接非特異的に結合した蛍光標識第二抗体が発する蛍光のパルス面積で展開したグラフを作成し、生細胞で、かつゴナドトロフ細胞の細胞膜上のGnRHRに特異的に結合した抗GnRHR抗体に結合した蛍光標識第二抗体が発する蛍光強度の領域に第三ゲートを設定する工程;
(i)工程(f)〜工程(h)で設定した第一ゲート、第二ゲート、及び第三ゲートの論理積をとった細胞を分取する工程;
(2)抗GnRHR抗体が、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドに対する抗体であることを特徴とする上記(1)記載の方法。
(3)家畜下垂体細胞がウシ下垂体前葉細胞であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の方法。
(4)工程(i)で分取した細胞を還流培養チャンバーに載置後、顕微鏡を用いて細胞を観察し、家畜下垂体細胞の細胞膜表面に抗GnRHR抗体を介して結合した蛍光標識第二抗体が発する強い蛍光を指標としてゴナドトロフ細胞を選択する工程を有することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか記載の方法。
(5)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドに対する抗体を含む、家畜下垂体細胞の集団からゴナドトロフ細胞を分離するためのキット。
本発明の方法を用いれば、高純度で家畜下垂体細胞の集団からゴナドトロフ細胞を分離することが可能となる。得られたゴナドトロフ細胞は高純度であることから、ゴナドトロフ細胞のみで発現する遺伝子の発見解析や、ゴナドトロフ細胞を標的とする医薬の開発を行うことが可能となる。
配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるウシGnRHRの細胞外領域のポリペプチドに対する抗体(以下、単に「抗ウシGnRHR抗体」ともいう)を用いた、ウシ下垂体前葉からのタンパク質抽出液に対するウエスタンブロット解析の結果を示す図である。 抗ウシGnRHR抗体によるLH分泌の抑制能力を調べた結果を示す図である。 フローサイトメーターによる分析結果を示す図である。(A)〜(C)は正常ギニアピッグ抗体に続いて蛍光物質であるAlexa Fluor(登録商標)488(以下、単に「AF488」ともいう)で標識した第二抗体を用いて免疫染色した家畜下垂体細胞の場合である。(A)、(B)、(C)それぞれのグラフのX軸は家畜下垂体細胞へ非特異的に結合した正常ギニアピッグ抗体に結合したAF488標識第二抗体、又は家畜下垂体細胞へ非特異的に結合したAF488標識第二抗体が発するAF488の蛍光パルス面積である。また(A)のY軸は家畜下垂体細胞の前方散乱光パルス面積、(B)のY軸は家畜下垂体細胞の後方散乱光パルス面積、(C)のY軸は死細胞を標識した色素(ヨウ化プロピジウム(Propidium iodide:PI))の蛍光パルス面積である。一方、(D)〜(F)は抗GnRHR抗体に続いてAF488標識第二抗体を用いて免疫染色した家畜下垂体細胞の場合である。(D)、(E)、(F)それぞれのグラフのX軸は家畜下垂体細胞へ特異的あるいは非特異的に結合した抗GnRHR抗体に結合したAF488標識第二抗体、又は家畜下垂体細胞へ非特異的に結合したAF488標識第二抗体が発するAF488の蛍光パルス面積である。また(D)のY軸は家畜下垂体細胞の前方散乱光パルス面積、(E)のY軸は家畜下垂体細胞の後方散乱光パルス面積、(F)のY軸は家畜下垂体細胞の中の死細胞を標識した色素(PI)の蛍光パルス面積である。 分取した細胞を共焦点顕微鏡によって観察した結果1を示す図である。 分取した細胞を共焦点顕微鏡によって観察した結果2を示す図である。
本発明のフローサイトメーターを用いて家畜下垂体細胞の集団からゴナドトロフ細胞を分離する方法としては、
(a)家畜下垂体細胞を含む液に、ゴナドトロフ細胞の細胞膜上に存在する性腺刺激ホルモン放出ホルモンに対する受容体(GnRHR)の細胞外領域のポリペプチドに特異的に結合する抗体(抗GnRHR抗体)と、前記抗GnRHR抗体に結合する蛍光標識第二抗体を添加して、抗GnRHR抗体に続いて蛍光標識第二抗体を用いて免疫染色した家畜下垂体細胞を調製する工程;
(b)工程(a)で調製した家畜下垂体細胞を含む液に死細胞を標識する色素を添加して家畜下垂体細胞を染色処理し、抗GnRHR抗体処理サンプル細胞を調製する工程;
(c)家畜下垂体細胞を含む液に、家畜下垂体細胞に非特異的に結合する正常動物抗体と、前記正常動物抗体に結合する蛍光標識第二抗体を添加して、正常動物抗体に続いて蛍光標識第二抗体を用いて免疫染色した家畜下垂体細胞を調製する工程;
(d)工程(c)で調製した家畜下垂体細胞を含む液に死細胞を標識する色素を添加して家畜下垂体細胞を染色処理し、非特異的抗体結合コントロール細胞を調製する工程;
(e)工程(b)又は工程(d)で調製した抗GnRHR抗体処理サンプル細胞又は非特異的抗体結合コントロール細胞を含む液をそれぞれフローサイトメーターにかけて、前方散乱光パルス面積、後方散乱光パルス面積、第二抗体に結合する蛍光色素が発する蛍光のパルス面積、ならびに死細胞染色に用いた蛍光色素が発する蛍光のパルス面積を測定する工程;
(f)前方散乱光パルス面積と、家畜下垂体細胞に特異的あるいは非特異的に結合した抗GnRHR抗体を介して結合した蛍光標識第二抗体、又は家畜下垂体細胞に直接非特異的に結合した蛍光標識第二抗体が発する蛍光のパルス面積で展開したグラフを作成し、所定の細胞の大きさを有し、かつゴナドトロフ細胞の細胞膜上のGnRHRに特異的に結合した抗GnRHR抗体に結合した蛍光標識第二抗体が発する強い蛍光強度の領域に第一ゲートを設定する工程;
(g)後方散乱光パルス面積と、家畜下垂体細胞に特異的あるいは非特異的に結合した抗GnRHR抗体を介して結合した蛍光標識第二抗体、又は家畜下垂体細胞に直接非特異的に結合した蛍光標識第二抗体が発する蛍光のパルス面積で展開したグラフを作成し、所定の細胞内部構造の複雑さを有し、かつゴナドトロフ細胞の細胞膜上のGnRHRに特異的に結合した抗GnRHR抗体に結合した蛍光標識第二抗体が発する強い蛍光強度の領域に第二ゲートを設定する工程;
(h)死細胞を標識した色素の蛍光パルス面積と、家畜下垂体細胞に特異的あるいは非特異的に結合した抗GnRHR抗体を介して結合した蛍光標識第二抗体、又は家畜下垂体細胞に直接非特異的に結合した蛍光標識第二抗体が発する蛍光のパルス面積で展開したグラフを作成し、生細胞で、かつゴナドトロフ細胞の細胞膜上のGnRHRに特異的に結合した抗GnRHR抗体に結合した蛍光標識第二抗体が発する蛍光強度の領域に第三ゲートを設定する工程;
(i)工程(f)〜工程(h)で設定した第一ゲート、第二ゲート、及び第三ゲートの論理積をとった細胞を分取する工程;
の上記工程(a)〜(i)を備えた方法であれば特に制限されないが、家畜としてはウシ(Bos taurus)、水牛(Bubalus bubalis)、家畜種及び野生種のヤク(Bos mutusとBos gunniens)、ヤギ(capra hircus)、ヒツジ(Ovis aries)、チルー(Pantholops hodgsonii)、ラクダ(Camelus ferus)、イノシシ及びブタ(Sus scrofa)などの人が飼育する動物を挙げることができ、ウシを好適に挙げることができる。
上記フローサイトメーターとしては特に制限されないが、SH800(ソニー社製)、BD FACSAria(登録商標:ベクトン・ディッキンソン社製)、Mo−Flo(登録商標:ベックマン・コールター社製)などを用いることができ、フローサイトメーターの分析に用いるソフトウェアとしては、SH800ソフトウェア(ソニー社製)、CellQuest(ベクトン・ディッキンソン社製)、Flow−jo(Tree Star社製)などを用いることができる。かかるフローサイトメーターやソフトウェアにより細胞の前方散乱光パルス面積、後方散乱光パルス面積、蛍光パルス面積などを測定、分析することが可能となる。なお、後方散乱光パルス面積が測定できないフローサイトメーターにおいては、後方散乱光パルス面積の代わりに側方散乱光パルス面積を測定して、本明細書における後方散乱光パルス面積を側方散乱光パルス面積に置き換えて本発明を実施してもよい。
また、フローサイトメーターにかける細胞はできるだけ一つずつの細胞に分散化したうえ、細胞残屑などの不純物はできるだけ除去することが望ましい。細胞を分散化するには、たとえば2%FBS含有PBSに懸濁する方法を挙げることができる。また、不純物を除去するには、たとえば細胞をフィルタリングする方法を挙げることができ、フィルタリングに用いられるフィルターとしては、細胞残屑が除けるメッシュサイズを有するものであれば特に限定されないが、例えばポア径(30μm)のメッシュフィルターを挙げることができる。
下垂体細胞とは、下垂体に存在する細胞を意味する。下垂体細胞は下垂体前葉細胞、下垂体中葉細胞、及び下垂体後細胞に分類できるが、下垂体前葉細胞を用いることが好ましい。また、下垂体前葉細胞を用いる場合には、下垂体中葉細胞又は下垂体後細胞や、下垂体周辺組織の細胞が混在していてもよい。なお、下垂体前葉細胞にはLHやFSHを分泌するゴナドトロフ細胞以外にも、少なくとも成長ホルモン(GH)分泌細胞や、プロラクチン(PRL)分泌細胞や、甲状腺刺激ホルモン(TSH)分泌細胞や、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)分泌細胞のほか、ホルモン非産生細胞である濾胞星状細胞(FS細胞)など、複数種類の細胞が存在している。
上記抗GnRHR抗体としては、ゴナドトロフ細胞の細胞膜上に存在するGnRHRの細胞外領域のポリペプチドに特異的に結合する抗体であれば特に制限されないが、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドに対する抗体であることがより好ましい。
上記正常動物抗体としては、家畜下垂体細胞に非特異的に結合する正常哺乳動物の抗体を挙げることができるが、精製された抗体に限定されずに、正常哺乳動物の血清や血漿も用いることができる。
上記抗GnRHR抗体や正常動物抗体における抗体の種類としては特に制限されず、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体や、F(ab’)2、Fab、diabody、Fv、ScFv、Sc(Fv)2などの抗体の一部からなる抗体断片などを挙げることができる。また、上記抗GnRHR抗体は、上記GnRHRの細胞外領域を抗原として用いて常法により作製することができ、動物(好ましくはヒト以外)に上記GnRHRの細胞外領域を免疫することにより産生する方法や、ハイブリドーマ法(Nature 256, 495-497, 1975)、トリオーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Immunology Today 4, 72, 1983)及びEBV−ハイブリドーマ法(MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY, pp.77-96, Alan R.Liss, Inc., 1985)などを挙げることができる。
抗GnRHR抗体に結合する蛍光標識第二抗体としては、抗GnRHR抗体と結合し、蛍光標識されている抗体であればよく、正常動物抗体に結合する蛍光標識第二抗体としては、正常動物抗体と結合し、蛍光標識されている抗体であればよい。それぞれの蛍光標識第二抗体を蛍光標識する蛍光物質としては、AF488、フルオレセイン イソチオシアナート(fluorescein isothiocyanate:FITC)、Cy5、フィコエリスリン(Phycoerythrin:PE)、アロフィコシアニン(Allophycocyanin:APC)、パシフィックブルー(Pacific Blue)、テキサスレッド(Texas Red)、ビオチンなどを挙げることができ、AF488を好適に挙げることができる。なお、蛍光物質としてビオチンを用いる場合には、ビオチンと結合するマグネティックビーズを用いて、抗GnRHR抗体が結合したゴナドトロフ細胞を集めることが可能となる。また、第二抗体の代わりに、抗GnRHR抗体や正常動物抗体と結合するプロテインAやプロテインGなどの抗体に対する親和性のあるタンパクを用いてもよい。
本発明において、抗GnRHR抗体に続いて蛍光標識第二抗体を用いて免疫染色した家畜下垂体細胞としては、家畜下垂体細胞を含む液に、抗GnRHR抗体と、前記抗GnRHR抗体に結合する蛍光標識第二抗体とを添加することによって調製された細胞であって、家畜下垂体細胞に前記抗GnRHR抗体が結合し、前記抗GnRHR抗体に蛍光標識第二抗体が結合したものであれば特に制限されない。家畜下垂体細胞に、抗GnRHR抗体と、前記抗GnRHR抗体と結合する蛍光標識第二抗体とを添加する方法としては特に制限されず、次の(1)から(3)のどの方法でもよい。すなわち(1)家畜下垂体細胞を含む液に抗GnRHR抗体を添加して、家畜下垂体細胞に抗GnRHR抗体を結合させた後に、蛍光標識第二抗体を添加してもよく、(2)あらかじめ抗GnRHR抗体を含み下垂体細胞を含まない液に蛍光標識第二抗体を添加して抗GnRHR抗体と蛍光標識第二抗体を結合させた後に、蛍光標識第二抗体結合済みの抗GnRHR抗体を家畜下垂体細胞に添加してもよく、(3)家畜下垂体細胞を含む液に抗GnRHR抗体及び蛍光標識第二抗体を同時に添加してもよい。
本発明において、正常動物抗体に続いて蛍光標識第二抗体を用いて免疫染色した家畜下垂体細胞としては、家畜下垂体細胞を含む液に、正常動物抗体と、前記正常動物抗体に結合する蛍光標識第二抗体とを添加することによって調製された細胞であって、家畜下垂体細胞に前記正常動物抗体が結合し、前記正常動物抗体に蛍光標識第二抗体が結合したものであれば特に制限されない。家畜下垂体細胞に、正常動物抗体と、前記正常動物抗体と結合する蛍光標識第二抗体とを添加する方法としては特に制限されず、次の(4)から(6)のどの方法でもよい。すなわち(4)家畜下垂体細胞を含む液に正常動物抗体を添加して、家畜下垂体細胞に正常動物抗体を結合させた後に、蛍光標識第二抗体を添加してもよく、(5)あらかじめ正常動物抗体を含み下垂体細胞を含まない液に蛍光標識第二抗体を添加して正常動物抗体と蛍光標識第二抗体を結合させた後に、蛍光標識第二抗体結合済みの正常動物抗体を家畜下垂体細胞に添加してもよく、(6)家畜下垂体細胞を含む液に正常動物抗体及び蛍光標識第二抗体を同時に添加してもよい。
本発明において、抗GnRHR抗体で免疫染色し家畜下垂体細胞からゴナドトロフ細胞を選抜するためには、蛍光標識第二抗体を使う方法に制限されない。すなわち、家畜下垂体細胞を含む液に、蛍光標識した抗GnRHR抗体を添加することによる免疫染色法でもよい。上記のように蛍光標識した抗GnRHR抗体を用いる場合には、非特異的抗体結合コントロール細胞の調製において、蛍光標識第二抗体の代わりに蛍光標識した正常動物抗体を添加すればよい。
死細胞を標識する色素としては、損傷した細胞膜を透過して核を染色する色素であれば特に制限されず、ヨウ化プロピジウム(PI)、7−アミノ-アクチノマイシンD(7-amino-actinomycin D:7-ADD)などを挙げることができる。
工程(b)又は(d)において、家畜下垂体細胞を含む液に死細胞を標識する色素を添加して家畜下垂体細胞を染色処理する方法としては特に制限されず、色素を添加した家畜下垂体細胞における核の染色を調べることによって、生細胞か死細胞を判別することが可能となる。また、工程(b)で調製した抗GnRHR抗体処理サンプル細胞には、免疫染色処理で細胞膜上のGnRHRに抗GnRHR抗体が特異的、あるいは非特異的に結合したゴナドトロフ細胞だけでなく、抗GnRHR抗体が結合しなかったゴナドトロフ細胞以外の家畜下垂体細胞も含まれ、工程(d)で調製した非特異的抗体結合コントロール細胞には、免疫染色処理で正常動物抗体が非特異的に結合した家畜下垂体細胞だけでなく、正常動物抗体が結合しなかった家畜下垂体細胞も含まれる。
前方散乱光パルス面積と、蛍光標識第二抗体が発する蛍光のパルス面積で展開したグラフや、後方散乱光パルス面積と、蛍光標識第二抗体が発する蛍光のパルス面積で展開したグラフや、死細胞を標識した色素の蛍光量パルス面積と蛍光標識第二抗体が発する蛍光のパルス面積で展開したグラフは、上述のフローサイトメーターの分析に用いるソフトウェアを用いて作成することが可能である。
本発明において、第一ゲートを設定する方法としては、所定の細胞の大きさを有し、かつゴナドトロフ細胞の細胞膜上のGnRHRに特異的に結合した抗GnRHR抗体に結合した蛍光標識第二抗体が発する強い蛍光強度の領域にゲートを設定すればよい。
所定の細胞の大きさを有する細胞としては、たとえば3μm以上の大きさの細胞を挙げることができ、この場合には3μmの標識化ビーズの前方散乱光パルス面積をあらかじめ測定し、かかる標識化ビーズの前方散乱光パルス面積より前方散乱光パルス面積が大きい細胞をゲート設定の指標とすることができる。
また、GnRHRを発現する細胞は、上記抗GnRHR抗体処理サンプル細胞と上記非特異的抗体結合コントロール細胞それぞれの細胞集団における蛍光標識第二抗体が発する蛍光のパルス面積の分布を比較し、抗GnRHR抗体処理サンプル細胞において、非特異的抗体結合コントロール細胞よりも蛍光標識第二抗体が発する蛍光のパルス面積が明確に大きい細胞の集団をゲート設定の指標とすることができる。
本発明において、第二ゲートを設定する方法としては、所定の細胞内部構造の複雑さを有し、かつGnRHRを発現する細胞にゲートを設定すればよい。
所定の細胞内部構造の複雑さを有する細胞としては、抗GnRHR抗体処理サンプル細胞の集団のためのグラフと非特異的抗体結合コントロール細胞の集団のためのグラフにおける後方散乱光パルス面積の分布を比較し、非特異的抗体結合コントロール細胞の集団のためのグラフにおいては少ない細胞が存在する領域であるが、抗GnRHR抗体処理サンプル細胞の集団のためのグラフにおいては、後方散乱光パルス面積が明確に大きく、かつ、蛍光標識第二抗体が発する蛍光のパルス面積も大きい領域をゲート設定の指標とすることができる。
本発明において、第三ゲートを設定する方法としては、生細胞で、かつGnRHRを発現する細胞にゲートを設定すればよい。
生細胞としては、死細胞を標識した色素の蛍光パルス面積が明確に小さい細胞の集団をゲート設定の指標とすることができる。GnRHRを発現する細胞については、蛍光標識第二抗体が発する蛍光のパルス面積が大きい細胞からなる領域をゲート設定の指標とする方法を挙げることができる。
上記工程(a)〜(i)によって高純度でゴナドトロフ細胞を分取可能であるが、さらに分取した細胞を顕微鏡で観察することによって、ゴナドトロフ細胞の純度を評価することも可能である。工程(a)〜(i)によって分取した細胞を顕微鏡で観察するによって、ゴナドトロフ細胞を選択する方法としては特に制限されないが、作業効率の観点から、工程(i)で分取した細胞を還流培養チャンバーに載置後、顕微鏡、好ましくは共焦点顕微鏡を用いて細胞を観察し、細胞膜上に結合した蛍光標識第二抗体が発する蛍光を指標としてゴナドトロフ細胞を選択する方法を挙げることができる。従来は分取した細胞をスライドガラスに載置して顕微鏡で観察していたが、カバーガラスを載せる場合には、スライドガラスとカバーグラスを接着剤により接着させる必要があり、固化して顕微鏡観察が可能になるまで半日程度の待ち時間を要することや、待ち時間の間に細胞が壊れるなどの問題があった。またカバーガラスを載せない場合には、表面張力により細胞懸濁液が厚くなり、ピントを合わせるのが難しい、細胞が速く移動しすぎて観察や写真撮影が困難といった問題があった。しかしながら、還流培養チャンバーを用いれば、細胞を壊さずに、かつ浮遊細胞の動きを減速させた状態になり、懸濁液の厚さが薄くなるためピントを合わせやすくなり細胞の観察や写真撮影が容易になり、上記問題が解決でき、多数の細胞を短時間で効率よく観察することが可能となる。還流培養チャンバーとしては、μ-Slide VI(Ibidi社製)を挙げることができる。
本発明の家畜下垂体細胞の集団からゴナドトロフ細胞を分離するためのキットとしては、配列番号1に示されるポリペプチドに対する抗体を含んでいれば特に制限されず、家畜下垂体細胞の集団からからゴナドトロフ細胞を分離するための方法、好ましくは上記本発明のフローサイトメーターを用いて家畜下垂体細胞の集団からからゴナドトロフ細胞を分離する方法を記載した説明書、試薬などを含んでいてもよい。
[抗GnRHR抗体]
(抗ウシGnRHR抗体の調製)
ウシGnRHR配列(GenBank番号:NM_001768.6(更新日:2014年1月26日)のN末端側に位置する配列番号1に示されるアミノ酸配列(細胞外領域の配列)に相当する純度99.0%以上の合成ペプチド(スクラム社に依頼合成した)を用い、以下の方法で抗ウシGnRHR抗体を作製した。まず、合成ペプチドの14位のシステインのスルフヒドリル基にキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)を結合させた。かかる合成ペプチド−KLH複合体を免疫抗原とし、完全フロイントアジュバントと共にエマルジョンとして、ギニアピッグに14日のインターバルで5回投与した。さらに、最終投与日から7日後に血液を回収して抗ウシGnRHRギニアピッグ抗体を得た。得られた抗体は抗原ペプチドを結合したアフィニティーカラムを用いたクロマトグラフィー(PD10:GEヘルスケア社製)によって精製した。
(ウエスタンブロット解析)
得られた抗ウシGnRHR抗体を用い、ウシ下垂体前葉から抽出したタンパク質に対するウエスタンブロット解析を行った。SDSポリアクリルアミドゲルはCriterion TGXプレキャストゲル(バイオ・ラッド社製)を用い、PVDF膜への転写はトランスブロット(登録商標)Turbo転写システム(バイオ・ラッド社製)を用いた。イムノブロットは、膜を0.1%Tween20及び5%ノンファットドライミルクでブロッキング後、抗ウシGnRHR抗体(1:20,000希釈)を用いて行った。二次抗体としては、HRP結合抗ギニアピッグ抗体(1:50,000希釈:KPL社製)を用いた。コントロールとして、正常ギニアピッグ抗体(和光純薬工業社製)を用いて、上記と同様にウエスタンブロット解析を行った。
抗ウシGnRHR抗体を用いた場合のウエスタンブロット解析の結果を図1に示す。図1に示すように、抗ウシGnRHR抗体はウシ下垂体前葉から抽出したタンパク質を転写した位置にシングルバンドを検出した。また、検出したバンドは次の文献(Hazum et al., Mol. Cell. Endocrinol. 35:107-111(1984))に記載されたウシGnRHRの推定分子量(30kDa)と一致した。なお、正常ギニアピッグ抗体を用いた場合はバンドが検出されなかった(図示せず)。したがって、抗ウシGnRHR抗体はウシGnRHRに特異的であることが確認された。
(LH分泌抑制効果の確認)
抗ウシGnRHR抗体の特異性を、GnRHによって刺激されるLH分泌に対する抑制能力を調べることによっても確認した。具体的には、春機発動後の黒毛和種牛(26月齢:n=9)から下垂体前葉細胞を得た。かかる下垂体前葉細胞を酵素的に分散させた後、1×非必須アミノ酸(Gibco社製)、100U/mlのペニシリン、50μg/mlのストレプトマイシン、10%のウマ血清(Gibco社製)、及び2.5%のウシ胎児血清を含有するダルベッコ改変イーグル培地(D1152:シグマアルドリッチ社製)で82時間、5%CO2、37℃で培養した。培養した下垂体前葉細胞をPBSで洗浄後、上記で作製した抗ウシGnRHR抗体又は正常ギニアピッグ抗体を含有する495μlのDMEM(1:109、1:108又は1:107)で3時間インキュベートした。さらに、LHの分泌を刺激させるために、上記下垂体前葉細胞に対してDMEMで溶解した5μlの100nMの哺乳動物I型GnRH(ペプチド研究所社製)を添加して(GnRHの終濃度1nM)2時間処理した。
GnRHを添加して2時間の培養の後、培地を回収して125I標識bLHと抗oLH血清(AFP11743B、AFP192279:NIDDK製)を用いた2抗体放射免疫測定(RIA)によって、培地中のLH濃度を測定した。結果を図2に示す。図中、「Control」は抗体を用いた前処理もGnRHの培養液への添加も無いもの、「GnRH」は抗体を用いた前処理は無くGnRHを培養液に添加したもの、「anti−GnRHR」は抗GnRHR抗体を用いた前処理がありGnRHの培養液への添加もあるもの、「normal guinea pig 抗体」は正常ギニアピッグ抗体を用いた前処理がありGnRHの培養液への添加もあるものを示す。また、縦軸はControlを100とした場合のLH分泌量の相対値(%)である。
図2に示すように、抗ウシGnRHR抗体による前処理により、GnRHによって刺激されるLHの分泌を抑制し、正常ギニアピッグ抗体による前処理では、GnRHによって刺激されるLHの分泌を抑制できないことが明らかとなった。したがって、抗ウシGnRHR抗体はLHを分泌するゴナドトロフ細胞膜上のGnRHRに結合することが確認された。
[フローサイトメーターによる測定]
(細胞の調製)
春機発動後の黒毛和種牛(26月齢)由来の下垂体前葉細胞を、上記ダルベッコ改変イーグル培地で82時間、90mmディッシュ(MS−13900:住友ベークライト社製)中で培養した。
培養した下垂体前葉細胞をPBSで2回洗浄し、その後培養ディッシュから下垂体前葉細胞を離すために酵素フリー細胞分離溶液(merckmillipore社製)で1分処理した。下垂体前葉細胞を免疫染色するために、懸濁した下垂体前葉細胞を氷上に置いた低吸着性マイクロチューブ(MS−4265M:住友ベークライト社製)へ移した。
なお、下垂体前葉細胞を固定処理すると、細胞染色又はフローサイトメトリーの過程で細胞が壊れることや、細胞膜が半透性を失うことにより、Triton−Xの非存在下でも抗体が容易に細胞の細胞質に入り込むため、細胞質内で非特異的に結合する抗体のために強い蛍光をもたらす結果、分離されるゴナドトロフ細胞の純度は低下する。したがって、細胞の固定処理は行わなかった。さらに、フローサイトメーターによる分析を行うまでの全ての工程において、GnRHRの細胞内移行を防ぐために上記下垂体前葉細胞を4℃に維持した。
上記低吸着性マイクロチューブに移した下垂体前葉細胞を、2%FBSを含有するPBSで2回洗浄後、2%FBSを含むPBSに溶解した抗ウシGnRNR抗体(1:1,000)又はコントロールとしての正常ギニアピッグ抗体を添加して1時間、4℃でインキュベートし、その後、2%FBSを含むPBSに溶解した4μg/mlのAlexa Fluor(登録商標)488ヤギ抗ギニアピッグ抗体(インビトロジェン社製)を添加して30分、4℃でインキュベートして、AF488標識ヤギ抗ギニアピッグ抗体が結合した抗GnRHR抗体が特異的に結合した下垂体前葉細胞(以下、抗GnRHR抗体特異的結合細胞)、又は、AF488標識ヤギ抗ギニアピッグ抗体が結合した正常ギニアピッグ抗体が非特異的に結合した下垂体前葉細胞(以下、正常ギニアピッグ抗体非特異的結合細胞)を調製した。さらに、凝集を避けるために上記調製したそれぞれの下垂体前葉細胞を1mlの2%FBSを含むPBSで懸濁させると共に、フローサイトメーターにおけるサンプルの流れを妨げる大きな粒子を除くために、30μmのセルトリクスフィルター(partec社製)でろ過した。次に、ろ過した下垂体前葉細胞の懸濁液に1μlのヨウ化プロピジウム(PI)溶液(0.5mg/ml 2706505 ソニー社製)を加えて染色処理した。
[フローサイトメーター分析]
(分析条件)
上記で調製した、蛍光免疫染色及びPI染色した抗GnRHR抗体特異的結合細胞と正常ギニアピッグ抗体非特異的結合細胞それぞれをフローサイトメーター(SH800:ソニー社製)で分析した。フローサイトメーターによる分析や細胞の分取は内径が100μmのソーティングチップ(LE−C3100:ソニー社製)及びシース液(IsoFlow sheath fluid 8599600:Beckham Coulter社製)を用いて行い、トータル10,000イベントを記録するために、最大100イベント/秒程度で作動させた。
(ゲートの設定)
SH800ソフトウェア(バージョン1.3:ソニー社製)を用い、X軸がAF488蛍光強度パルス面積(AF488−A)、Y軸が前方散乱光パルス面積(FSC−A)としたグラフ(AF488−FSC)を作成した。FSC−Aは大まかに細胞の大きさに比例する測定値である。作成したグラフを図3(A)、(D)に示す。
抗GnRHR抗体特異的結合細胞と正常ギニアピッグ抗体非特異的結合細胞それぞれを分析したAF488−FSCグラフにおいて、200FSCaと命名したゲートによって下垂体前葉細胞数を推定した。200FSCaゲートの下限FSC−A値は200×103とした。これは前方散乱光のゲインを16に設定した場合に3μmの自動調整ビーズ(ソニー社製)と同等のFSC−Aとなる値である。200FSCaゲートの上限FSC−A値は、過大なゴミを除去するために、990×103とした。
さらに、抗GnRHR抗体特異的結合細胞と正常ギニアピッグ抗体非特異的結合細胞それぞれを分析した上記AF488−FSCグラフにおいて、Specific200FSCaと命名したゲートを設けた。Specific200FSCaゲートの下限と上限のFSC−A値は200FSCの下限や上限のFSC−A値と同じであるが、さらに、AF488−Aの値に基づき、GnRHRを発現する細胞にゲートを設定した。GnRHRを発現する細胞は、それぞれの細胞の分析によって得られたAF488−FSCグラフにおけるAF488−Aを比較し、抗GnRHR抗体特異的結合細胞において、正常ギニアピッグ抗体非特異的結合細胞よりもAF488−A値が明確に大きい細胞の集団の領域をゲート設定の指標とした。
また、上記SH800ソフトウェアを用い、X軸がAF488−A、Y軸が後方散乱光パルス面積(BSC−A)としたグラフ(AF488−BSC)を作成した。BSC−Aは大まかに細胞内部構造の複雑さに比例する測定値である。作製したAF488−BSCグラフを図3(B)、(E)に示す。
抗GnRHR抗体特異的結合細胞と正常ギニアピッグ抗体非特異的結合細胞それぞれの細胞で分析したAF488−BSCグラフにおいて、Specific400BSCaと命名したゲートを設けた。Specific400BSCaゲートの下限BSC−A値は400×103とし、上限BSC−A値は990×103とし、さらに、AF488−Aの値に基づき、GnRHRを発現する細胞にゲートを設定した。抗GnRHR抗体特異的結合細胞と正常ギニアピッグ抗体非特異的結合細胞それぞれの細胞の分析によって得られたAF488−BSCグラフを比較し、抗GnRHR抗体特異的結合細胞の集団では多数存在するが、正常ギニアピッグ抗体非特異的結合細胞の集団において少数のみ存在する後方散乱光蛍光パルス面積(BSC−A)とAF488−Aを示す細胞の集団の領域をゲート設定の指標とした。
加えて、上記SH800ソフトウェアを用い、X軸がAF488−A、Y軸がPI蛍光強度パルス面積(PI−A)としたグラフ(AF488−PI)を作成した。PIの染色によって染色される細胞(PI陽性細胞)は死細胞であり、第一及び第二抗体が容易にPI陽性細胞の細胞質に入り込む。作製したAF488−PIグラフを図3(C)、(F)に示す。
抗GnRHR抗体特異的結合細胞で分析したAF488−PIグラフにおいて、生細胞(LIVE)と命名したゲートを設けた。生細胞(LIVE)においては、PI−Aが小さく、AF488−Aが大きい細胞をゲート設定の指標とした。
(細胞の分取)
抗GnRHR抗体特異的結合細胞において上記設定した「Specific200FSCa」と「Specific400BSCa」と「生細胞」の3つのゲートに基づき、「Specific200FSCa」と「Specific400BSCa」と「生細胞」との論理積ゲートを設定した。さらに、フローサイトメーターの高純度モードにより、上記論理積ゲートに基づいて細胞を2%ウシ胎子血清(FBS)−PBSを含有する低吸着性マイクロチューブに分取した。
(分取した細胞の共焦点顕微鏡観察)
分取した細胞を30秒ほど遠心分離することで集め、細胞ペレットをマイクロスコープチャンバー(μ-Slide VI:Ibidi社製)に載置し、共焦点顕微鏡によって細胞を観察した。結果を図4、図5に示す。
図4、図5に示すように、論理積ゲートに基づいて分取された細胞は緑蛍光を細胞膜表面に示し、ゴナドトロフ細胞であることが確認された。なお、図では一部の細胞のみ示しているが、分取した細胞のうち1000個の細胞を共焦点顕微鏡によって細胞したところ、1000個すべての細胞において緑蛍光を細胞膜表面に示したため、本発明の方法によってゴナドトロフ細胞を分離すれば、きわめて高精度でゴナドトロフ細胞を分離することが可能であることが明らかとなった。なお、マイクロスコープチャンバーを用いて細胞を観察すると、載置した細胞はマイクロスコープチャンバー内で浮遊していたが移動速度が遅かったため、多数の細胞を短時間で効率よく観察することや写真撮影が可能であった。
本発明の方法を用いれば、高純度で下垂体前葉の集団からゴナドトロフ細胞を分離することが可能となることから、ゴナドトロフ細胞のみで発現する遺伝子の発見解析や、ゴナドトロフ細胞を標的とする医薬、医療、獣医療の研究、開発分野で利用可能である。

Claims (5)

  1. フローサイトメーターを用いて家畜下垂体細胞の集団からゴナドトロフ細胞を分離する方法であって、以下の工程(a)〜(i)を備えたことを特徴とする方法。
    (a)家畜下垂体細胞を含む液に、ゴナドトロフ細胞の細胞膜上に存在する性腺刺激ホルモン放出ホルモンに対する受容体(GnRHR)の細胞外領域のポリペプチドに特異的に結合する抗体(抗GnRHR抗体)と、前記抗GnRHR抗体に結合する蛍光標識第二抗体を添加して、抗GnRHR抗体に続いて蛍光標識第二抗体を用いて免疫染色した家畜下垂体細胞を調製する工程;
    (b)工程(a)で調製した家畜下垂体細胞を含む液に死細胞を標識する色素を添加して家畜下垂体細胞を染色処理し、抗GnRHR抗体処理サンプル細胞を調製する工程;
    (c)家畜下垂体細胞を含む液に、家畜下垂体細胞に非特異的に結合する正常動物抗体と、前記正常動物抗体に結合する蛍光標識第二抗体を添加して、正常動物抗体に続いて蛍光標識第二抗体を用いて免疫染色した家畜下垂体細胞を調製する工程;
    (d)工程(c)で調製した家畜下垂体細胞を含む液に死細胞を標識する色素を添加して家畜下垂体細胞を染色処理し、非特異的抗体結合コントロール細胞を調製する工程;
    (e)工程(b)又は工程(d)で調製した抗GnRHR抗体処理サンプル細胞又は非特異的抗体結合コントロール細胞を含む液をそれぞれフローサイトメーターにかけて、前方散乱光パルス面積、後方散乱光パルス面積、第二抗体に結合する蛍光色素が発する蛍光のパルス面積、ならびに死細胞染色に用いた蛍光色素が発する蛍光のパルス面積を測定する工程;
    (f)前方散乱光パルス面積と、家畜下垂体細胞に特異的あるいは非特異的に結合した抗GnRHR抗体を介して結合した蛍光標識第二抗体、又は家畜下垂体細胞に直接非特異的に結合した蛍光標識第二抗体が発する蛍光のパルス面積で展開したグラフを作成し、所定の細胞の大きさを有し、かつゴナドトロフ細胞の細胞膜上のGnRHRに特異的に結合した抗GnRHR抗体に結合した蛍光標識第二抗体が発する強い蛍光強度の領域に第一ゲートを設定する工程;
    (g)後方散乱光パルス面積と、家畜下垂体細胞に特異的あるいは非特異的に結合した抗GnRHR抗体を介して結合した蛍光標識第二抗体、又は家畜下垂体細胞に直接非特異的に結合した蛍光標識第二抗体が発する蛍光のパルス面積で展開したグラフを作成し、所定の細胞内部構造の複雑さを有し、かつゴナドトロフ細胞の細胞膜上のGnRHRに特異的に結合した抗GnRHR抗体に結合した蛍光標識第二抗体が発する強い蛍光強度の領域に第二ゲートを設定する工程;
    (h)死細胞を標識した色素の蛍光パルス面積と、家畜下垂体細胞に特異的あるいは非特異的に結合した抗GnRHR抗体を介して結合した蛍光標識第二抗体、又は家畜下垂体細胞に直接非特異的に結合した蛍光標識第二抗体が発する蛍光のパルス面積で展開したグラフを作成し、生細胞で、かつゴナドトロフ細胞の細胞膜上のGnRHRに特異的に結合した抗GnRHR抗体に結合した蛍光標識第二抗体が発する蛍光強度の領域に第三ゲートを設定する工程;
    (i)工程(f)〜工程(h)で設定した第一ゲート、第二ゲート、及び第三ゲートの論理積をとった細胞を分取する工程;
  2. 抗GnRHR抗体が、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドに対する抗体であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 家畜下垂体細胞がウシ下垂体前葉細胞であることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
  4. 工程(i)で分取した細胞を還流培養チャンバーに載置後、顕微鏡を用いて細胞を観察し、家畜下垂体細胞の細胞膜表面に抗GnRHR抗体を介して結合した蛍光標識第二抗体が発する強い蛍光を指標としてゴナドトロフ細胞を選択する工程を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の方法。
  5. 配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドに対する抗体を含む、家畜下垂体細胞の集団からゴナドトロフ細胞を分離するためのキット。
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