JP2016069510A - 蓄熱材の使用・保存方法および蓄熱・熱供給システム - Google Patents
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Abstract
【課題】新規な蓄熱材の使用・保存方法及び蓄熱・熱供給システムの提供。
【解決手段】ガラス転移点(Tg)及び融点(Tm)を有する多価アルコールであって、ガラス状態3の多価アルコールを含む蓄熱材を、多価アルコールのTg以上に加熱し冷結晶化5させて、多価アルコールの冷結晶化に伴い発生する熱量を得る工程Aを有する、多価アルコールを含む蓄熱材の使用方法。溶融状態1の多価アルコールを含む蓄熱材を冷却して、ガラス状態3の多価アルコールを含む蓄熱材を得る工程Bを更に有し、工程Bが、溶融状態1の多価アルコールを含む蓄熱材を、多価アルコールのTgを超えてTm以下の温度に冷却して、過冷却液体状態2の多価アルコールを含む蓄熱材を得る工程B1と、過冷却液体状態2の多価アルコールを含む蓄熱材を、多価アルコールのTg以下の温度に冷却して、ガラス状態3の多価アルコールを含む蓄熱材を得る工程B2とを有する
【選択図】図1
【解決手段】ガラス転移点(Tg)及び融点(Tm)を有する多価アルコールであって、ガラス状態3の多価アルコールを含む蓄熱材を、多価アルコールのTg以上に加熱し冷結晶化5させて、多価アルコールの冷結晶化に伴い発生する熱量を得る工程Aを有する、多価アルコールを含む蓄熱材の使用方法。溶融状態1の多価アルコールを含む蓄熱材を冷却して、ガラス状態3の多価アルコールを含む蓄熱材を得る工程Bを更に有し、工程Bが、溶融状態1の多価アルコールを含む蓄熱材を、多価アルコールのTgを超えてTm以下の温度に冷却して、過冷却液体状態2の多価アルコールを含む蓄熱材を得る工程B1と、過冷却液体状態2の多価アルコールを含む蓄熱材を、多価アルコールのTg以下の温度に冷却して、ガラス状態3の多価アルコールを含む蓄熱材を得る工程B2とを有する
【選択図】図1
Description
本発明は、蓄熱材の使用・保存方法および蓄熱・熱供給システムに関する。
潜熱蓄熱方法は、蓄熱物質として用いられる相変化物質の固液相変化に伴う潜熱を利用する方法であり、高密度蓄熱が可能である。また、熱貯蔵された蓄熱物質は、相変化温度が一定の恒温熱源として熱供給が可能である。熱貯蔵の方法としては、蓄熱物質を溶融状態で保存する方法1と、蓄熱物質を過冷却液体状態で保存する方法2が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
上記方法1は、最も一般的ではあるが、蓄熱物質を溶融状態で保存するため、日単位という短期的な熱貯蔵以外には適用することが困難である。また、溶融状態の蓄熱物質が流出することを防止するため、蓄熱物質を例えばカプセル化する必要がある。
上記方法2は、蓄熱物質を過冷却液体状態で保存するため、長期的な熱貯蔵が可能である。しかしながら、蓄熱物質に貯蔵された熱を利用するためには、機械的衝撃等を加えて蓄熱物質の過冷却液体状態を解除する必要がある。このため、ハンドリング性に問題がある。また、過冷却液体状態の蓄熱物質が流出することを防止するため、蓄熱物質を例えばカプセル化する必要がある。
本発明は、従来技術に伴う上記問題を解決することができる、新規な蓄熱材の使用・保存方法および蓄熱・熱供給システムを提供することを課題とする。
蓄熱物質の中には、溶融状態の蓄熱物質をある速度以上で冷却すると、過冷却液体状態を経て、ガラス状態に移行する物質がある。ガラス状態の蓄熱物質は非晶質固体であるため、年単位という長期間に亘って安定して保存することが可能である。また、昇温時に過冷却液体状態において発生する冷結晶化という現象を利用すれば、機械的衝撃等によって過冷却液体状態を解除するという手段によらずに、加熱という簡単な方法により蓄熱物質に貯蔵された熱を利用することができる。本発明者らは、このような着想に基づき、以下の構成により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、例えば以下の[1]〜[12]に関する。
[1]ガラス転移点(Tg)および融点(Tm)を有する多価アルコールであって、ガラス状態の多価アルコールを含む蓄熱材を、前記多価アルコールのTg以上に加熱し冷結晶化させて、前記多価アルコールの冷結晶化に伴い発生する熱量を得る工程Aを有する、多価アルコールを含む蓄熱材の使用方法。
[1]ガラス転移点(Tg)および融点(Tm)を有する多価アルコールであって、ガラス状態の多価アルコールを含む蓄熱材を、前記多価アルコールのTg以上に加熱し冷結晶化させて、前記多価アルコールの冷結晶化に伴い発生する熱量を得る工程Aを有する、多価アルコールを含む蓄熱材の使用方法。
[2]溶融状態の多価アルコールを含む蓄熱材を冷却して、ガラス状態の多価アルコールを含む蓄熱材を得る工程Bをさらに有する、前記[1]に記載の蓄熱材の使用方法。
[3]工程Bが、溶融状態の多価アルコールを含む蓄熱材を、前記多価アルコールのTgを超えてTm以下の温度に冷却して、過冷却液体状態の多価アルコールを含む蓄熱材を得る工程B1と、過冷却液体状態の多価アルコールを含む蓄熱材を、前記多価アルコールのTg以下の温度に冷却して、ガラス状態の多価アルコールを含む蓄熱材を得る工程B2とを有する、前記[2]に記載の蓄熱材の使用方法。
[3]工程Bが、溶融状態の多価アルコールを含む蓄熱材を、前記多価アルコールのTgを超えてTm以下の温度に冷却して、過冷却液体状態の多価アルコールを含む蓄熱材を得る工程B1と、過冷却液体状態の多価アルコールを含む蓄熱材を、前記多価アルコールのTg以下の温度に冷却して、ガラス状態の多価アルコールを含む蓄熱材を得る工程B2とを有する、前記[2]に記載の蓄熱材の使用方法。
[4]結晶状態の多価アルコールを含む蓄熱材を、前記多価アルコールのTm以上の温度に加熱して、溶融状態の多価アルコールを含む蓄熱材を得る工程Cをさらに有する、前記[2]または[3]に記載の蓄熱材の使用方法。
[5]工程C、工程Bおよび工程Aをこの順で有する、前記[4]に記載の蓄熱材の使用方法。
[6]前記多価アルコールが、糖アルコールである、前記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の蓄熱材の使用方法。
[6]前記多価アルコールが、糖アルコールである、前記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の蓄熱材の使用方法。
[7]前記多価アルコールが、結晶状態において、2種以上の糖アルコールから形成された共晶である、前記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の蓄熱材の使用方法。
[8]ガラス転移点(Tg)および融点(Tm)を有する多価アルコールであって、ガラス状態の多価アルコールを含む蓄熱材を、前記多価アルコールのガラス状態を維持して保存する工程A’を有する、多価アルコールを含む蓄熱材の保存方法。
[8]ガラス転移点(Tg)および融点(Tm)を有する多価アルコールであって、ガラス状態の多価アルコールを含む蓄熱材を、前記多価アルコールのガラス状態を維持して保存する工程A’を有する、多価アルコールを含む蓄熱材の保存方法。
[9]結晶状態の多価アルコールを含む蓄熱材を、前記多価アルコールのTm以上の温度に加熱して、溶融状態の多価アルコールを含む蓄熱材を得る工程Cと、溶融状態の多価アルコールを含む蓄熱材を冷却して、ガラス状態の多価アルコールを含む蓄熱材を得る工程Bとをさらに有する、前記[8]に記載の蓄熱材の保存方法。
[10]ガラス転移点(Tg)および融点(Tm)を有する多価アルコールであって、結晶状態の多価アルコールを含む蓄熱材1を加熱して溶融状態の多価アルコールを含む蓄熱材2を得るための加熱部と、蓄熱材2を冷却してガラス状態の多価アルコールを含む蓄熱材3を得るための冷却部とを有する蓄熱装置、ならびに蓄熱材3を多価アルコールのTg以上に加熱し多価アルコールを冷結晶化させるための加熱部と、前記多価アルコールの冷結晶化に伴い発生する熱量を外部に取り出す熱輸送部とを有する熱供給装置を備える、蓄熱・熱供給システム。
[11]ガラス状態の多価アルコールを含む蓄熱材3を貯蔵する貯蔵装置をさらに備える、前記[10]に記載の蓄熱・熱供給システム。
[12]ガラス状態の多価アルコールを含む蓄熱材3を蓄熱装置から熱供給装置へと輸送するための、蓄熱装置と熱供給装置とを接続する輸送ラインと、結晶状態の多価アルコールを含む蓄熱材1を熱供給装置から蓄熱装置へと輸送するための、熱供給装置と蓄熱装置とを接続する輸送ラインとをさらに備える、前記[10]または[11]に記載の蓄熱・熱供給システム。
[12]ガラス状態の多価アルコールを含む蓄熱材3を蓄熱装置から熱供給装置へと輸送するための、蓄熱装置と熱供給装置とを接続する輸送ラインと、結晶状態の多価アルコールを含む蓄熱材1を熱供給装置から蓄熱装置へと輸送するための、熱供給装置と蓄熱装置とを接続する輸送ラインとをさらに備える、前記[10]または[11]に記載の蓄熱・熱供給システム。
本発明によれば、必要な時・場所で、蓄熱物質に熱貯蔵された熱量を容易に得ることができる蓄熱材の使用方法、長期間に亘る安定した熱貯蔵が可能な蓄熱材の保存方法、および蓄熱・熱供給システムを提供することができる。
本発明において使用する用語を以下に定義する。
多価アルコールの「融点」(Tm)とは、多価アルコールの固体(結晶)が液体に相変化する温度をいう。多価アルコールにおいて、結晶も液体も、熱力学的には「安定平衡状態」にある。多価アルコールの「溶融」または「融解」とは、多価アルコールの固体(結晶)が液体に相変化することをいい、「溶融状態」または「融解状態」とは、前記液体状態をいう。結晶から液体への相変化の際に吸収される熱量を「融解潜熱」といい、液体から結晶への相変化の際に放出される熱量を「結晶化潜熱」という。
多価アルコールの「融点」(Tm)とは、多価アルコールの固体(結晶)が液体に相変化する温度をいう。多価アルコールにおいて、結晶も液体も、熱力学的には「安定平衡状態」にある。多価アルコールの「溶融」または「融解」とは、多価アルコールの固体(結晶)が液体に相変化することをいい、「溶融状態」または「融解状態」とは、前記液体状態をいう。結晶から液体への相変化の際に吸収される熱量を「融解潜熱」といい、液体から結晶への相変化の際に放出される熱量を「結晶化潜熱」という。
多価アルコールの「過冷却液体状態」とは、多価アルコールの液体が融点(Tm)以下に冷却されても、固化(結晶化)せず、液体状態を維持した状態をいう。過冷却液体状態は、熱力学的には「準安定平衡状態」にあり、不安定状態ではない。
多価アルコールの「ガラス転移」とは、多価アルコールの過冷却液体が有する構造が、潜熱を伴わずにそのまま凍結・固化することによる転移をいい、当該転移温度を「ガラス転移点」(Tg)という。多価アルコールの「ガラス状態」とは、ガラス転移点(Tg)未満の温度においてもTgでの過冷却液体の構造を持ち続けている状態をいい、熱力学的には「非平衡状態(不安定状態)」にある。ガラス状態は力学的には固体であるため、「非晶質固体」ともいう。Tgは、通常は冷却速度依存性を示す。
ガラス状態にある多価アルコールを昇温すると、多価アルコールは、ガラス転移点で脱ガラス化して過冷却液体に移行し、さらに昇温すると、過冷却液体状態から結晶化することがある。この結晶化を、多価アルコールの「冷結晶化」といい、冷結晶化する温度を、多価アルコールの「冷結晶化点」といい、この際に放出される熱量を「冷結晶化潜熱」という。
本発明の原理を以下に説明するが、この説明は本発明を限定するものではない。
本発明の原理を以下に説明するが、この説明は本発明を限定するものではない。
本発明では、蓄熱物質である相変化物質として、ガラス転移点(Tg)および融点(Tm)を有する多価アルコール、好ましくは糖アルコールを用いる。本発明では、例えば、多価アルコールの溶融により蓄熱を行い、ガラス状態で蓄熱状態を維持し、冷結晶化により熱供給を行う。
結晶状態の多価アルコールをその融点以上に加熱すると、溶融状態の多価アルコールが得られる。溶融状態の多価アルコールは、結晶状態のそれに比べて、蓄熱された状態にある。
溶融状態の多価アルコールを、ある速度以上で冷却すると、結晶化潜熱を放出することなく、過冷却液体状態を経て、ガラス状態の多価アルコールが得られる。ガラス状態の多価アルコールは、結晶化潜熱に相当する熱量を放出していないことから、結晶状態のそれに比べて、蓄熱された状態にある。
ガラス状態の多価アルコールは、非晶質固体であることから保存安定性および輸送性に優れている。また、ガラス状態の多価アルコールは、固体であることから、カプセル化する必要もなく、例えばカプセル化による蓄熱容量および熱交換速度の低下を防ぐこともできる。このため、結晶状態に比べて、蓄熱状態にある、ガラス状態の多価アルコールにより熱を貯蔵することで、例えば年単位という長期間に亘る安定した熱貯蔵が可能である。
ガラス状態の多価アルコールを加熱すると、ガラス転移点で脱ガラス化して過冷却液体状態に移行し、さらに加熱して、過冷却液体状態から冷結晶化させ、冷結晶化潜熱を得ることができる。このように、ガラス状態の多価アルコールに対して、ガラス転移点以上の熱を与えるのみで、必要な時・場所で、多価アルコールに熱貯蔵された熱量を容易に得ることができる。
冷結晶化して得られた固体(結晶)を多価アルコールの融点以上に加熱すると、溶融状態の多価アルコールが得られる。このように、例えば、結晶状態、融解、溶融状態、過冷却液体状態、ガラス状態、過冷却液体状態、冷結晶化、結晶状態というサイクルにより、蓄熱・熱供給が可能である。
《蓄熱材》
本発明では、ガラス転移点を有し、かつガラス転移点以上に昇温すると、過冷却液体状態に移行し、冷結晶化潜熱を放出する性質を示しやすいことから、蓄熱物質である相変化物質として、糖アルコール等の多価アルコールが用いられる。
本発明では、ガラス転移点を有し、かつガラス転移点以上に昇温すると、過冷却液体状態に移行し、冷結晶化潜熱を放出する性質を示しやすいことから、蓄熱物質である相変化物質として、糖アルコール等の多価アルコールが用いられる。
多価アルコールは、相変化に伴って発生する潜熱を利用して蓄熱を行う潜熱蓄熱物質として機能する。なお、本発明では、物質の比熱を利用する顕熱蓄熱による蓄熱効果を排除するものではない。
多価アルコールとしては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ピナコール、および糖アルコールが挙げられ、好ましくは糖アルコールが用いられる。多価アルコールの炭素数は、通常4〜12、好ましくは4〜6である。
糖アルコールとは、糖のカルボニル基が還元された鎖状または環状の多価アルコールをいう。例えば、アルドースまたはケトースを還元して得られるポリヒドロキシアルカンが挙げられる。具体的には、エリスリトール、スレイトール、キシリトール、マンニトール、ガラクチトール、ソルビトール、イノシトール、マルチトール、アラビトールが挙げられる。
糖アルコールとしては、2種以上の糖アルコールから形成された共晶を用いることが好ましく、2〜3種の糖アルコールから形成された共晶を用いることがより好ましい。例えば共晶組成を調整することで、所望の融点、融解潜熱、冷結晶化点および冷結晶化潜熱を有する糖アルコールを調製することができる。ここで、「共晶」とは、溶液から同時に結晶として析出する2種以上の結晶の混合物をいう。例えば、マンニトール、ガラクチトールおよびイノシトールの共晶が好ましい。
多価アルコールのガラス転移点は、15〜80℃の範囲にあることが好ましく、15〜50℃の範囲にあることがより好ましい。共晶を用いる場合は、糖アルコールのガラス転移点は、共晶のガラス転移点が前記範囲にあることが好ましい。ガラス転移点が前記範囲にある多価アルコールを用いることにより、例えば室温付近でガラス状態を維持することができ、熱貯蔵の点から好ましい。
多価アルコールの融点は、蓄熱材を広範な分野にて活用する観点から、30〜250℃の範囲にあることが好ましく、50〜150℃の範囲にあることがより好ましい。多価アルコールの融解潜熱は、種々の分野で利用するという観点から、好ましくは150kJ/kg以上、より好ましくは200〜300kJ/kgである。共晶を用いる場合は、糖アルコールの融点および融解潜熱は、共晶の融点および融解潜熱がそれぞれ前記範囲にあることが好ましい。なお、多価アルコールの融点は、多価アルコールのガラス転移点より高温となる。
多価アルコールの冷結晶化点は、15〜250℃の範囲にあることが好ましく、15〜150℃の範囲にあることがより好ましい。冷結晶化点は、通常、ガラス転移点を超え、融点未満である。多価アルコールの冷結晶化潜熱は、好ましくは150kJ/kg以上、より好ましくは150〜300kJ/kgである。
多価アルコールのガラス転移点、融点、融解潜熱、冷結晶化点および冷結晶化潜熱は、示差走査熱量測定(DSC)により、降温・昇温速度=2℃/分の条件で測定することができる。測定条件の詳細は、実施例に記載したとおりである。
本発明の一実施態様では、多価アルコールの微粒子を使用することができる。微粒子化により、熱を輸送する媒体(熱輸送媒体)として蓄熱材を利用することができ、例えば、パイプライン輸送や循環流動層型システムへの適用が挙げられる。
多価アルコール微粒子の、Mie散乱理論に基づく粒子径は、0.01〜2mmであることが好ましく、より好ましくは0.02〜0.10mmである。前記粒子径は、結晶状態の多価アルコール微粒子の粒子径を指す。粒子径の測定には、例えばレーザー回折式粒度分布測定装置を用いることができる。
本発明では、蓄熱材として多価アルコールそのものを使用してもよく、多価アルコールのほか、エラストマーおよび樹脂等のバインダーを含有する蓄熱材を使用してもよい。前記蓄熱材がバインダーを含有することで、多価アルコールを良好に固定化することができ、また、多価アルコールが相変化を繰り返しても蓄熱材の形状を維持することができる。
また、必要に応じて、マイクロカプセル化された蓄熱材を用いることも可能である。マイクロカプセルは、例えば樹脂膜中に蓄熱材が内包された物質である。マイクロカプセル化には、従来公知の方法を用いることができ、例えば、In−Situ重合法、液中硬化被覆法、液中乾燥法、気中懸濁被覆法、滴下造粒法、ゾルゲル法、スプレードライング法、粉体合体法、静電気的合体法、粉床法が挙げられる。マイクロカプセルの粒子径としては、好ましくは0.1μm〜3.0mm、より好ましくは10μm〜1.0mmである。粒子径の測定には、例えばレーザー回折式粒度分布測定装置を用いることができる。
本発明の実施形態を以下に説明する。
本発明の実施形態を以下に説明する。
〔蓄熱材の使用方法〕
本発明の、多価アルコールを含む蓄熱材の使用方法は、上述した、ガラス転移点(Tg)および融点(Tm)を有する多価アルコールであって、ガラス状態の多価アルコールを含む蓄熱材を、前記多価アルコールのTg以上に加熱し冷結晶化させて、前記多価アルコールの冷結晶化に伴い発生する熱量を得る工程Aを有する。
本発明の、多価アルコールを含む蓄熱材の使用方法は、上述した、ガラス転移点(Tg)および融点(Tm)を有する多価アルコールであって、ガラス状態の多価アルコールを含む蓄熱材を、前記多価アルコールのTg以上に加熱し冷結晶化させて、前記多価アルコールの冷結晶化に伴い発生する熱量を得る工程Aを有する。
本発明の上記使用方法は、溶融状態の多価アルコールを含む蓄熱材を冷却して、ガラス状態の多価アルコールを含む蓄熱材を得る工程Bをさらに有することが好ましい。
本発明の上記使用方法は、結晶状態の多価アルコールを含む蓄熱材を、前記多価アルコールのTm以上の温度に加熱して、溶融状態の多価アルコールを含む蓄熱材を得る工程Cをさらに有することが好ましい。
本発明の上記使用方法は、結晶状態の多価アルコールを含む蓄熱材を、前記多価アルコールのTm以上の温度に加熱して、溶融状態の多価アルコールを含む蓄熱材を得る工程Cをさらに有することが好ましい。
本発明の上記使用方法は、通常、工程C、工程Bおよび工程Aをこの順で有する。また、上述した多価アルコールは蓄熱・熱供給に係る繰り返し特性に優れている。このため、工程C、工程Bおよび工程Aを繰り返し行っても、安定して蓄熱・熱供給が可能である。
《工程A》
工程Aでは、ガラス状態の多価アルコールを含む蓄熱材を、前記多価アルコールのTg以上に加熱し冷結晶化させて、前記多価アルコールの冷結晶化潜熱を得る。通常、ガラス状態の多価アルコールを加熱すると、Tgで脱ガラス化して過冷却液体に移行し、さらに加熱すると、冷結晶化して結晶となる。
工程Aでは、ガラス状態の多価アルコールを含む蓄熱材を、前記多価アルコールのTg以上に加熱し冷結晶化させて、前記多価アルコールの冷結晶化潜熱を得る。通常、ガラス状態の多価アルコールを加熱すると、Tgで脱ガラス化して過冷却液体に移行し、さらに加熱すると、冷結晶化して結晶となる。
工程Aにおける昇温速度は、通常0.03〜200℃/秒、好ましくは0.15〜100℃/秒である。昇温速度が前記範囲にあれば、多価アルコールの冷結晶化が容易に起こり、冷結晶化潜熱を得ることができる。
《工程B》
工程Bでは、溶融状態の多価アルコールを含む蓄熱材を冷却して、ガラス状態の多価アルコールを含む蓄熱材を得る。溶融状態の多価アルコールを、結晶化できないような適度に速い速度で冷却すると、過冷却液体状態を経てガラス転移点に到達し、ガラス状態に移行する。工程Bでは、結晶化潜熱は放出されないため、ガラス状態の多価アルコールは、結晶状態の多価アルコールに比べて、熱貯蔵されている。
工程Bでは、溶融状態の多価アルコールを含む蓄熱材を冷却して、ガラス状態の多価アルコールを含む蓄熱材を得る。溶融状態の多価アルコールを、結晶化できないような適度に速い速度で冷却すると、過冷却液体状態を経てガラス転移点に到達し、ガラス状態に移行する。工程Bでは、結晶化潜熱は放出されないため、ガラス状態の多価アルコールは、結晶状態の多価アルコールに比べて、熱貯蔵されている。
工程Bにおける冷却速度は、通常0.03〜200℃/秒、好ましくは0.15〜150℃/秒である。Tgは、通常は冷却速度依存性を示す。冷却速度を前記範囲に制御することで、Tgを制御することができる。
工程Bは、溶融状態の多価アルコールを含む蓄熱材を、前記多価アルコールのTgを超えてTm以下の温度に冷却して、過冷却液体状態の多価アルコールを含む蓄熱材を得る工程B1と、過冷却液体状態の多価アルコールを含む蓄熱材を、前記多価アルコールのTg以下の温度に冷却して、ガラス状態の多価アルコールを含む蓄熱材を得る工程B2とを有することが好ましい。
《工程C》
工程Cでは、結晶状態の多価アルコールを含む蓄熱材を、前記多価アルコールのTm以上の温度に加熱して、溶融状態の多価アルコールを含む蓄熱材を得る。工程Cにおける昇温速度は、通常0.03〜200℃/秒、好ましくは0.15〜150℃/秒である。
工程Cでは、結晶状態の多価アルコールを含む蓄熱材を、前記多価アルコールのTm以上の温度に加熱して、溶融状態の多価アルコールを含む蓄熱材を得る。工程Cにおける昇温速度は、通常0.03〜200℃/秒、好ましくは0.15〜150℃/秒である。
〔蓄熱材の保存方法〕
本発明の、多価アルコールを含む蓄熱材の保存方法は、上述した、ガラス転移点(Tg)および融点(Tm)を有する多価アルコールであって、ガラス状態の多価アルコールを含む蓄熱材を、前記多価アルコールのガラス状態を維持して保存する工程A’を有する。上記保存方法では、溶融状態または過冷却液体状態ではなく、ガラス状態(蓄熱状態)にある多価アルコールを保存する。
本発明の、多価アルコールを含む蓄熱材の保存方法は、上述した、ガラス転移点(Tg)および融点(Tm)を有する多価アルコールであって、ガラス状態の多価アルコールを含む蓄熱材を、前記多価アルコールのガラス状態を維持して保存する工程A’を有する。上記保存方法では、溶融状態または過冷却液体状態ではなく、ガラス状態(蓄熱状態)にある多価アルコールを保存する。
上記保存方法は、溶融状態の多価アルコールを含む蓄熱材を冷却して、ガラス状態の多価アルコールを含む蓄熱材を得る工程Bをさらに有することが好ましく、結晶状態の多価アルコールを含む蓄熱材を、前記多価アルコールのTm以上の温度に加熱して、溶融状態の多価アルコールを含む蓄熱材を得る工程Cをさらに有することがより好ましい。なお、工程Bおよび工程Cは、〔蓄熱材の使用方法〕の欄で説明した工程Bおよび工程Cと、それぞれ同様である。
上記保存方法では、多価アルコールにおいて、結晶状態に比べて熱貯蔵されたガラス状態を維持し、蓄熱状態の多価アルコールを含む蓄熱材を保存する。ガラス状態で多価アルコールを保存することで、溶融状態または過冷却液体状態で保存する場合に比べて、例えば年単位という長期間での熱貯蔵が可能である。また、ガラス状態であり固体であることから、カプセル化を必要とせず、蓄熱容量および熱交換速度の低下を防ぐこともできる。また、保存されている多価アルコールを含む蓄熱材に対して、多価アルコールのガラス転移点以上の熱を与えるのみで、必要な時・場所で冷結晶化潜熱を供給することができる。
〔蓄熱・熱供給システム〕
本発明の蓄熱・熱供給システムは、
上述した多価アルコールであって、結晶状態の多価アルコールを含む蓄熱材1を加熱して溶融状態の多価アルコールを含む蓄熱材2を得るための加熱部A1と、蓄熱材2を冷却してガラス状態の多価アルコールを含む蓄熱材3を得るための冷却部A2とを有する蓄熱装置A、ならびに
蓄熱材3を多価アルコールのTg以上に加熱し多価アルコールを冷結晶化させるための加熱部B1と、前記多価アルコールの冷結晶化に伴い発生する熱量を外部に取り出す熱輸送部B2とを有する熱供給装置B
を備える。
本発明の蓄熱・熱供給システムは、
上述した多価アルコールであって、結晶状態の多価アルコールを含む蓄熱材1を加熱して溶融状態の多価アルコールを含む蓄熱材2を得るための加熱部A1と、蓄熱材2を冷却してガラス状態の多価アルコールを含む蓄熱材3を得るための冷却部A2とを有する蓄熱装置A、ならびに
蓄熱材3を多価アルコールのTg以上に加熱し多価アルコールを冷結晶化させるための加熱部B1と、前記多価アルコールの冷結晶化に伴い発生する熱量を外部に取り出す熱輸送部B2とを有する熱供給装置B
を備える。
本発明の蓄熱・熱供給システムでは、蓄熱装置Aにより蓄熱材に熱を蓄え、所望のタイミングにおいて、この熱を熱供給装置Bにより外部に取り出すことができる。
一実施態様では、本発明の蓄熱・熱供給システムは、ガラス状態の多価アルコールを含む蓄熱材3を貯蔵する貯蔵装置Cをさらに備えることができる。貯蔵装置Cは、上述の蓄熱装置Aおよび熱供給装置Bのいずれかが有していてもよく、両方が有していてもよい。例えば、蓄熱装置Aが、ガラス化後、熱供給装置Bに移送される前の蓄熱材3を貯蔵する前記貯蔵装置C(貯蔵装置C1と附番する)を有しており、熱供給装置Bが、加熱部B1に移送される前の蓄熱材3を貯蔵する前記貯蔵装置C(貯蔵装置C2と附番する)を有する態様が挙げられる。また、本発明の蓄熱・熱供給システムが、蓄熱装置Aおよび熱供給装置Bとは別に、貯蔵装置Cを有する態様でもよい。
一実施態様では、本発明の蓄熱・熱供給システムは、ガラス状態の多価アルコールを含む蓄熱材3を貯蔵する貯蔵装置Cをさらに備えることができる。貯蔵装置Cは、上述の蓄熱装置Aおよび熱供給装置Bのいずれかが有していてもよく、両方が有していてもよい。例えば、蓄熱装置Aが、ガラス化後、熱供給装置Bに移送される前の蓄熱材3を貯蔵する前記貯蔵装置C(貯蔵装置C1と附番する)を有しており、熱供給装置Bが、加熱部B1に移送される前の蓄熱材3を貯蔵する前記貯蔵装置C(貯蔵装置C2と附番する)を有する態様が挙げられる。また、本発明の蓄熱・熱供給システムが、蓄熱装置Aおよび熱供給装置Bとは別に、貯蔵装置Cを有する態様でもよい。
一実施態様では、本発明の蓄熱・熱供給システムは、結晶状態の多価アルコールを含む蓄熱材1を貯蔵する貯蔵装置Dをさらに備えることができる。貯蔵装置Dは、上述の蓄熱装置Aおよび熱供給装置Bのいずれかが有していてもよく、両方が有していてもよい。例えば、蓄熱装置Aが、加熱部A1に移送される前の蓄熱材1を貯蔵する前記貯蔵装置D(貯蔵装置D1と附番する)を有しており、熱供給装置Bが、熱供給後、蓄熱装置Aに移送される前の蓄熱材1を貯蔵する前記貯蔵装置D(貯蔵装置D2と附番する)を有する態様が挙げられる。また、本発明の蓄熱・熱供給システムが、蓄熱装置Aおよび熱供給装置Bとは別に、貯蔵装置Dを有する態様でもよい。
蓄熱装置Aが有する加熱部A1としては、蓄熱用の熱交換器が挙げられる。この熱交換器により、結晶状態の多価アルコールを、蓄熱された、溶融状態の多価アルコールに変換する。ここでの熱源としては、電気、燃焼熱;工場排熱、自動車が有するエンジン・モーター等の各種機器の排熱;太陽熱など、特に限定されない。
蓄熱装置が有する冷却部A2としては、ガラス化装置が挙げられる。ガラス化装置により、加熱部A1から移送された溶融状態の多価アルコールを急冷して、ガラス状態の多価アルコールを得る。ガラス化装置としては、例えば、スプレードライ装置が挙げられる。スプレードライヤー法により、溶融状態の多価アルコールを造粒して、ガラス状態の多価アルコールが得られる。ガラス化装置としては、蓄熱材としてマイクロカプセルを用いる場合、従来公知の熱交換器が挙げられる。
加熱部A1および冷却部A2は、例えば配管により接続される。
このようにして得られたガラス状態の多価アルコールは、例えば、熱供給装置Bに直接移送されてもよく、または、貯蔵装置Cに移送され、一定期間貯蔵され、貯蔵後に熱供給装置Bに移送されてもよい。
このようにして得られたガラス状態の多価アルコールは、例えば、熱供給装置Bに直接移送されてもよく、または、貯蔵装置Cに移送され、一定期間貯蔵され、貯蔵後に熱供給装置Bに移送されてもよい。
熱供給装置Bが有する加熱部B1としては、冷結晶化用の熱交換器が挙げられる。ここでの熱源としては、電気、燃焼熱など、特に限定されない。この熱交換器により、ガラス状態の多価アルコールを冷結晶化させる。
熱供給装置が有する熱輸送部B2としては、放熱用の熱交換器が挙げられる。この熱交換器により、加熱部B1から移送された冷結晶化した多価アルコールから発生した潜熱を、外部に供給する。
加熱部B1および熱輸送部B2は、例えば配管により接続される。
加熱部B1および熱輸送部B2は、例えば配管により接続される。
本発明の蓄熱・熱供給システムでは、蓄熱材が、蓄熱装置Aが有する加熱部A1、冷却部A2、熱供給装置Bが有する加熱部B1、熱輸送部B2の順に循環される。例えば、本発明のシステムは、微粒子化またはマイクロカプセル化した蓄熱材(熱輸送媒体)が流体中に分散された熱輸送流体を循環させる、循環流動層型であってもよい。蓄熱材を搬送する流体としては、例えば、気体;水、シリコーンオイルその他のオイル等の液体など、公知の流体を用いることができる。
本発明のシステムは、一つの装置が蓄熱装置Aおよび熱供給装置Bを有する蓄熱・熱供給装置として構成することができる。この場合、蓄熱装置Aおよび熱供給装置B、必要に応じて設けられる貯蔵装置C,Dは、例えば、相互に配管により接続される。
蓄熱装置A、熱供給装置Bおよび貯蔵装置C,Dをそれぞれ構成する、蓄熱材を収容または移送する容器および配管の材質や、これらを相互に接続する配管の材質としては、耐熱性・耐食性を有する材質であれば特に限定されず、例えば、ステンレス鋼;ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂等の合成樹脂が挙げられる。
本発明のシステムは、離れた場所に蓄熱装置Aおよび熱供給装置Bが各々設置された蓄熱・熱供給システムとして構成することもできる。この場合、蓄熱材の輸送は、例えば車両により貯蔵装置C,Dを輸送することで行うこともできるが、例えば蓄熱装置Aと熱供給装置Bとを輸送ラインで接続することもできる。
一実施態様では、本発明の蓄熱・熱供給システムは、ガラス状態の多価アルコールを含む蓄熱材3を蓄熱装置Aから熱供給装置Bへと輸送するための、蓄熱装置Aと熱供給装置Bとを接続する輸送ラインと、結晶状態の多価アルコールを含む蓄熱材1を熱供給装置Bから蓄熱装置Aへと輸送するための、熱供給装置Bと蓄熱装置Aとを接続する輸送ラインとをさらに備える。
輸送ラインとしては、例えば、パイプラインが挙げられる。
輸送ラインとしては、例えば、パイプラインが挙げられる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は、特に断らない限り質量基準である。
蓄熱物質である多価アルコール(糖アルコール)の熱分析には、示差走査熱量測定(DSC)を採用し、「DSC823」(メトラー・トレド(株)製)を用いた。
蓄熱物質である多価アルコール(糖アルコール)の熱分析には、示差走査熱量測定(DSC)を採用し、「DSC823」(メトラー・トレド(株)製)を用いた。
《糖アルコール》
試料である糖アルコールとして、マンニトール、ガラクチトールおよびイノシトールの共晶を用いた。前記共晶は、マンニトール55.7モル%、ガラクチトール23.7モル%およびイノシトール20.6モル%を室温で乳鉢にて混合し、次に180℃まで加熱し、180℃にて一時間保持し、冷却することで得た。共晶組成は、マンニトール55.7モル%、ガラクチトール23.7モル%、イノシトール20.6モル%であった。
試料である糖アルコールとして、マンニトール、ガラクチトールおよびイノシトールの共晶を用いた。前記共晶は、マンニトール55.7モル%、ガラクチトール23.7モル%およびイノシトール20.6モル%を室温で乳鉢にて混合し、次に180℃まで加熱し、180℃にて一時間保持し、冷却することで得た。共晶組成は、マンニトール55.7モル%、ガラクチトール23.7モル%、イノシトール20.6モル%であった。
マンニトールの融点は166℃、融解潜熱は308kJ/kgである。ガラクチトールの融点は187℃、融解潜熱は357kJ/kgである。イノシトールの融点は224℃、融解潜熱は266kJ/kgである。
《物性測定》
窒素雰囲気下、以下の条件でDSC曲線を測定した。試料を180℃で1時間保持し、完全に融解させた。次に、2℃/分の降温速度で−30℃まで冷却し(1)、試料をガラス化させた。試料を−30℃で1時間保持した。次に、2℃/分の昇温速度で180℃まで加熱し(2)、試料を完全に融解させた。DSC曲線を図1に、そのガラス転移点付近の拡大図を図2に示す。降温時(1)におけるDSC曲線からガラス転移点を、昇温時(2)におけるDSC曲線から、ガラス転移点、冷結晶化点、冷結晶化潜熱、融点および融解潜熱を測定した。
窒素雰囲気下、以下の条件でDSC曲線を測定した。試料を180℃で1時間保持し、完全に融解させた。次に、2℃/分の降温速度で−30℃まで冷却し(1)、試料をガラス化させた。試料を−30℃で1時間保持した。次に、2℃/分の昇温速度で180℃まで加熱し(2)、試料を完全に融解させた。DSC曲線を図1に、そのガラス転移点付近の拡大図を図2に示す。降温時(1)におけるDSC曲線からガラス転移点を、昇温時(2)におけるDSC曲線から、ガラス転移点、冷結晶化点、冷結晶化潜熱、融点および融解潜熱を測定した。
融点および冷結晶化点は、以下の様にして決定した。DSC曲線において、融解または冷結晶化に基づき、DSC曲線が変化し、大きなピークを示す。このとき、融解では下に凸のピーク(吸熱ピーク)、冷結晶化では上に凸のピーク(発熱ピーク)を示す。このときの各ピークの補外開始点をそれぞれ、「融点」、「冷結晶化点」とした。
また、ガラス転移点は、以下の様にして決定した。DSC曲線において、ガラス転移に基づき、DSC曲線のベースラインが変化し、新たなベースラインへとシフトする。ベースラインの変化の開始点onsetと終点offsetとの中間点midpoint(図2中でa=bとなる位置)を「ガラス転移点」とした。
図1に示すように、溶融状態の試料を融点以下の温度に冷却しても、結晶化による発熱ピークは観測されず、過冷却液体状態に移行した。過冷却液体状態から更に冷却を続けると、DSC曲線のベースラインAが変化し、新たなベースラインBへとシフトした。このベースラインの変化が「ガラス転移」であり、試料が過冷却液体状態からガラス状態へと転移したことを示す。次に、ガラス状態から昇温すると、冷却時と同様にベースラインCが変化し、新たなベースラインDへとシフトした。試料がガラス状態から過冷却液体状態へと転移したことを示す。さらに昇温すると、冷結晶化による発熱ピークが観測された。試料が、過冷却液体状態から固体(結晶)へと変化したことを示す。さらに昇温すると、融解による吸熱ピークが観測された。試料が、固体(結晶)から液体へと変化したことを示す。
降温時(1)に測定されたガラス転移点は16.1℃、昇温時(2)に測定されたガラス転移点は15.2℃、冷結晶化点は72.8℃、冷結晶化潜熱は157kJ/kg、融点は150℃、融解潜熱は248kJ/kgであった。降温時(1)に測定された値を、試料のガラス転移点とした。
《蓄熱・放熱の繰返し特性》
窒素雰囲気下、試料の昇温および降温を100回繰り返し、試料の蓄熱性能である繰返し特性を評価した。昇降温速度を10℃/分とし、測定温度範囲を−30℃から180℃として、DSC曲線を測定した。融点、融解潜熱、冷結晶化点およびガラス転移点を測定した。結果を図3に示す。試料の物性値に大きな変化はなく、試料は蓄熱・放熱の優れた繰返し特性を有することが分かった。
窒素雰囲気下、試料の昇温および降温を100回繰り返し、試料の蓄熱性能である繰返し特性を評価した。昇降温速度を10℃/分とし、測定温度範囲を−30℃から180℃として、DSC曲線を測定した。融点、融解潜熱、冷結晶化点およびガラス転移点を測定した。結果を図3に示す。試料の物性値に大きな変化はなく、試料は蓄熱・放熱の優れた繰返し特性を有することが分かった。
Claims (12)
- ガラス転移点(Tg)および融点(Tm)を有する多価アルコールであって、ガラス状態の多価アルコールを含む蓄熱材を、前記多価アルコールのTg以上に加熱し冷結晶化させて、前記多価アルコールの冷結晶化に伴い発生する熱量を得る工程Aを有する、多価アルコールを含む蓄熱材の使用方法。
- 溶融状態の多価アルコールを含む蓄熱材を冷却して、ガラス状態の多価アルコールを含む蓄熱材を得る工程Bをさらに有する、請求項1に記載の蓄熱材の使用方法。
- 工程Bが、
溶融状態の多価アルコールを含む蓄熱材を、前記多価アルコールのTgを超えてTm以下の温度に冷却して、過冷却液体状態の多価アルコールを含む蓄熱材を得る工程B1と、
過冷却液体状態の多価アルコールを含む蓄熱材を、前記多価アルコールのTg以下の温度に冷却して、ガラス状態の多価アルコールを含む蓄熱材を得る工程B2と
を有する、請求項2に記載の蓄熱材の使用方法。 - 結晶状態の多価アルコールを含む蓄熱材を、前記多価アルコールのTm以上の温度に加熱して、溶融状態の多価アルコールを含む蓄熱材を得る工程C
をさらに有する、請求項2または3に記載の蓄熱材の使用方法。 - 工程C、工程Bおよび工程A
をこの順で有する、請求項4に記載の蓄熱材の使用方法。 - 前記多価アルコールが、糖アルコールである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の蓄熱材の使用方法。
- 前記多価アルコールが、結晶状態において、2種以上の糖アルコールから形成された共晶である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の蓄熱材の使用方法。
- ガラス転移点(Tg)および融点(Tm)を有する多価アルコールであって、ガラス状態の多価アルコールを含む蓄熱材を、前記多価アルコールのガラス状態を維持して保存する工程A’を有する、多価アルコールを含む蓄熱材の保存方法。
- 結晶状態の多価アルコールを含む蓄熱材を、前記多価アルコールのTm以上の温度に加熱して、溶融状態の多価アルコールを含む蓄熱材を得る工程Cと、
溶融状態の多価アルコールを含む蓄熱材を冷却して、ガラス状態の多価アルコールを含む蓄熱材を得る工程Bと
をさらに有する、請求項8に記載の蓄熱材の保存方法。 - ガラス転移点(Tg)および融点(Tm)を有する多価アルコールであって、結晶状態の多価アルコールを含む蓄熱材1を加熱して溶融状態の多価アルコールを含む蓄熱材2を得るための加熱部と、蓄熱材2を冷却してガラス状態の多価アルコールを含む蓄熱材3を得るための冷却部とを有する蓄熱装置、ならびに
蓄熱材3を多価アルコールのTg以上に加熱し多価アルコールを冷結晶化させるための加熱部と、前記多価アルコールの冷結晶化に伴い発生する熱量を外部に取り出す熱輸送部とを有する熱供給装置
を備える、蓄熱・熱供給システム。 - ガラス状態の多価アルコールを含む蓄熱材3を貯蔵する貯蔵装置
をさらに備える、請求項10に記載の蓄熱・熱供給システム。 - ガラス状態の多価アルコールを含む蓄熱材3を蓄熱装置から熱供給装置へと輸送するための、蓄熱装置と熱供給装置とを接続する輸送ラインと、結晶状態の多価アルコールを含む蓄熱材1を熱供給装置から蓄熱装置へと輸送するための、熱供給装置と蓄熱装置とを接続する輸送ラインと
をさらに備える、請求項10または11に記載の蓄熱・熱供給システム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014200098A JP2016069510A (ja) | 2014-09-30 | 2014-09-30 | 蓄熱材の使用・保存方法および蓄熱・熱供給システム |
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JP2016069510A true JP2016069510A (ja) | 2016-05-09 |
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JP2014200098A Pending JP2016069510A (ja) | 2014-09-30 | 2014-09-30 | 蓄熱材の使用・保存方法および蓄熱・熱供給システム |
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JP (1) | JP2016069510A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2018083383A1 (en) * | 2016-11-02 | 2018-05-11 | Aalto University Foundation Sr | Cold-crystallizing material and method for utilizing cold-crystallization in heat storing |
-
2014
- 2014-09-30 JP JP2014200098A patent/JP2016069510A/ja active Pending
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CN110114436A (zh) * | 2016-11-02 | 2019-08-09 | 阿尔托大学注册基金会 | 冷结晶材料和在热量储存中利用冷结晶的方法 |
JP2020511555A (ja) * | 2016-11-02 | 2020-04-16 | アールト・ユニバーシティ・ファウンデイション・エスアールAalto University Foundation sr | 冷結晶化材および蓄熱において冷結晶化を利用するための方法 |
US11203707B2 (en) | 2016-11-02 | 2021-12-21 | Aalto University Foundation Sr | Cold-crystallizing material and method for utilizing cold-crystallization in heat storing |
JP7249646B2 (ja) | 2016-11-02 | 2023-03-31 | アールト・ユニバーシティ・ファウンデイション・エスアール | 冷結晶化材および蓄熱において冷結晶化を利用するための方法 |
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