以下、本発明に係る好適な実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、実施形態に係る2段過給ターボ付きエンジンの概略構成図である。図1に示すように、実施形態に係る2段過給ターボ付きエンジン1は、例えばバスやトラック等の車両Vの駆動用として用いられる。図示する例では、2段過給ターボ付きエンジン1は、6つのシリンダ(気筒)10を直列に有する直列6気筒のディーゼルエンジンとされている。
2段過給ターボ付きエンジン1は、各シリンダ10に空気を分配して供給するインテークマニホールド8と、各シリンダ10から排気された排気ガスを合流させるエキゾーストマニホールド11と、を有している。2段過給ターボ付きエンジン1は、高圧段コンプレッサC1及び高圧段タービンT1を有する高圧段ターボ50と、低圧段コンプレッサC2及び低圧段タービンT2を有する低圧段ターボ51と、を備えている。
高圧段タービンT1は、2段過給ターボ付きエンジン1のエキゾーストマニホールド11の下流に配置されている。高圧段タービンT1は、エキゾーストマニホールド11から導入された排気ガスを、排気管2fへ導出する。高圧段タービンT1は、高圧段コンプレッサC1と同軸で回転可能とされており、エキゾーストマニホールド11から導入された排気ガスにより回転される。
高圧段コンプレッサC1は、2段過給ターボ付きエンジン1の吸気側におけるインタークーラ6の下流に配置されている。高圧段コンプレッサC1は、高圧段タービンT1と同軸で回転されることで空気を圧縮し、圧縮した当該空気をアフタークーラ7へ向けて第1給気として過給する。
低圧段タービンT2は、2段過給ターボ付きエンジン1の排気側における高圧段タービンT1の下流に配置されている。低圧段タービンT2は、排気管2fから導入された排気ガスを、排気管2gへ導出する。低圧段タービンT2は、低圧段コンプレッサC2と同軸で回転可能とされており、排気管2fから導入された排気ガスにより回転される。
低圧段コンプレッサC2は、2段過給ターボ付きエンジン1の吸気側におけるエアクリーナ3の下流に配置されている。低圧段コンプレッサC2は、低圧段タービンT2と同軸で回転されることで空気を圧縮し、圧縮した当該空気をインタークーラ6へ向けて第2給気として過給する。
ここでの高圧段ターボ50は、2段過給ターボ付きエンジン1の全負荷時における第2給気の圧力が第2セット圧(所定圧力)P2以下となる2段過給ターボ付きエンジン1の回転数範囲R1にて、第1給気の圧力が最大となるピーク部Pkを含む全負荷給気圧力特性を有する(図2参照)。低圧段ターボ51は、2段過給ターボ付きエンジン1の全負荷時において、例えば第2給気の圧力が2段過給ターボ付きエンジン1の回転数に対して略単調増加となる全負荷給気圧力特性を有する(詳しくは後述)。
また、2段過給ターボ付きエンジン1は、バイパス流路2eと、バイパス弁20と、第1アクチュエータ21と、遮断弁22と、第2アクチュエータ23とを備えている。バイパス流路2eは、高圧段タービンT1の上流側の排気ガスを高圧段タービンT1の下流側にバイパスさせる(高圧段タービンT1を介さずに流通させる)流路である。バイパス流路2eは、例えばエキゾーストマニホールド11と排気管2fとを接続するように設けられる。
バイパス弁20は、バイパス流路2eに設けられている。バイパス弁20は、その開閉により、バイパス流路2eを介して高圧段タービンT1の上流側の排気ガスを高圧段タービンT1の下流側にバイパスさせるか否かを切り替える弁である。バイパス弁20は、第1アクチュエータ(第1駆動装置)21により、その開閉を制御される。
第1アクチュエータ21は、高圧段コンプレッサC1で過給された第1給気が供給され、当該第1給気の圧力によりバイパス弁20を開口させる。ここでの第1アクチュエータ21としては、正圧ダイヤフラムを有するアクチュエータが採用される。第1アクチュエータ21では、例えば当該正圧ダイヤフラムの第1セット圧P1以上の圧力で第1給気が供給されると、バイパス弁20を開くようにステム21aが駆動される。第1アクチュエータ21には、例えば、流路21b、遮断弁22及び流路21cを介して第1給気が供給される。
遮断弁22は、その弁体22aの開閉により、流路21bを介して遮断弁22に供給された第1給気を第1アクチュエータ21へ供給するか否かを切り替える弁である。遮断弁22は、第1アクチュエータ21へ第1給気を供給する流路21bと、流路21cとの間に設けられている。遮断弁22は、第2アクチュエータ(第2駆動装置)23により、弁体22aの開閉を制御される。
第2アクチュエータ23は、低圧段コンプレッサC2で過給された第2給気が供給され、当該第2給気の圧力により遮断弁22を開口させる。ここでの第2アクチュエータ23としては、正圧ダイヤフラムを有するアクチュエータが採用される。第2アクチュエータ23では、第2セット圧P2よりも大きい圧力で第2給気が供給されると、遮断弁22を開くようにステム23aが駆動される。すなわち、第2アクチュエータ23は、第2給気の圧力が第2セット圧P2以下の場合に弁体22aを閉口させるように遮断弁22を制御する。第2アクチュエータ23には、例えば、流路23bを介して第2給気が供給される。
また、2段過給ターボ付きエンジン1は、EGRシステム15を備えている。EGRシステム15は、エキゾーストマニホールド11における排気ガスの少なくとも一部を吸気側にEGRガスとして還流させる。EGRシステム15は、EGRバルブ16と、エキゾーストマニホールド11とインテークパイプ2dとを連絡するEGRパイプ17と、EGRクーラ18とを備えている。EGRバルブ16は、例えばEGRパイプ17における下流側の位置に設けられ、EGRガスの流量を制御する。EGRクーラ18は、例えばEGRパイプ17におけるEGRバルブ16の上流側に設けられ、EGRガスを冷却する。
以上のように構成された2段過給ターボ付きエンジン1では、その吸気側において、まず空気がエアクリーナ3により清浄化され、インテークパイプ2aを介して低圧段コンプレッサC2に流入され、当該低圧段コンプレッサC2で圧縮される。低圧段コンプレッサC2で圧縮された空気は、インテークパイプ2bを介してインタークーラ6に流入されて冷却された後、高圧段コンプレッサC1に流入され、当該高圧段コンプレッサC1で更に圧縮される。高圧段コンプレッサC1で圧縮された空気は、インテークパイプ2cを介してアフタークーラ7に流入されて冷却され、インテークパイプ2c及びインテークマニホールド8を介して各シリンダ10に適宜吸気される。
一方、2段過給ターボ付きエンジン1の排気側においては、まず、排気ガスがエキゾーストマニホールド11から高圧段タービンT1に導入された後、排気管2fを介して低圧段タービンT2に導入される。低圧段タービンT2から導出された排気ガスは、排気管2gを通って後処理装置12に導かれる。後処理装置12では、例えばDPF触媒により排気ガス中の粒子状物質が除去されて浄化されると共に、例えばSCR触媒により排気ガス中の窒素酸化物が還元されて浄化される。後処理装置12から導出された排気ガスは、マフラ(図示せず)により消音されて車外に排気される。
次に、2段過給ターボ付きエンジン1において、高圧段ターボ50の上流側から高圧段ターボ50の下流側へ排気ガスが不要にバイパスされることを抑制するメカニズムについて、図2を参照しつつ説明する。
図2は、高圧段ターボ及び低圧段ターボの全負荷給気圧力特性の例である。図2に示すように、高圧段ターボ50は、2段過給ターボ付きエンジン1の全負荷時において、第2給気の圧力が第2セット圧P2以下となる2段過給ターボ付きエンジン1の回転数範囲R1にて(低中速高負荷時)、第1給気の圧力が最大となるピーク部Pkを含む全負荷給気圧力特性を有する。低圧段ターボ51は、2段過給ターボ付きエンジン1の全負荷時において、例えば第2給気の圧力が2段過給ターボ付きエンジン1の回転数に対して略単調増加となる全負荷給気圧力特性を有する。
このような2段過給ターボ付きエンジン1において、高圧段ターボ50で過給された第1給気が直接(遮断されることなく)第1アクチュエータ21に供給されると仮定した場合、以下のように不要にバイパス弁20が作動してしまうことがある。
第1アクチュエータ21は、第1セット圧P1よりも大きい第1給気が供給された場合に作動してバイパス弁20を開口させる。第1セット圧P1としては、例えば高圧段ターボ50における耐久性確保及びポンピングロス低減の観点から、例えば回転数範囲R1よりも高回転側の回転数範囲R2(高速高負荷時)において第1アクチュエータ21が作動するように(高速高負荷時に排気ガスがバイパスされるように)設定される。図2の例では、高速高負荷時において第1アクチュエータ21が作動することで排気ガスが高圧段タービンT1をバイパスするため、第1給気の過給圧は第1セット圧P1よりも小さい過給圧に抑制される。
ここで、上述のように、高圧段ターボ50が低中速高負荷時にピーク部Pkを含む全負荷給気圧力特性を有することから、低中速高負荷時において第1セット圧P1よりも大きい過給圧を高圧段ターボ50により得ることが望まれる。しかし、第1給気の圧力によりバイパス弁20を開口させようとすると、低中速高負荷時において第1セット圧P1よりも大きい第1給気が第1アクチュエータ21へ供給されてしまい、高圧段タービンT1の上流側から高圧段タービンT1の下流側へ排気ガスが不要にバイパスされ易い。よって、排気ガスが高圧段タービンT1を不要にバイパスされると、第1給気の過給圧は第1セット圧P1よりも小さい過給圧に抑制され、必要な過給圧(第1セット圧P1よりも大きい過給圧)が得られなくなる。
そこで、本実施形態の2段過給ターボ付きエンジン1では、流路21b及び流路21cの間に遮断弁22が設けられている。遮断弁22は、その弁体22aの開閉を第2アクチュエータ23により制御され、例えば第2給気の圧力が第2セット圧P2以下の場合に第2アクチュエータ23が遮断弁22を閉口する。第2セット圧としては、例えば全負荷時における第1給気が第1セット圧P1に達するときの第2給気の過給圧に設定される。
図2の例では、低中速高負荷時において第2給気の圧力が第2セット圧P2以下の場合に、第2アクチュエータ23により遮断弁22が閉口される。そして、流路21bを介して遮断弁22に供給された第1給気が流路21cへ流れなくなり、第1アクチュエータ21への第1給気の供給が遮断されて第1アクチュエータ21の作動が抑制される。よって、第1給気の過給圧が第1セット圧P1よりも大きい過給圧となったとしても、第1アクチュエータ21がバイパス弁20を開口させることが抑制され(バイパス弁20が停止され)、排気ガスが高圧段タービンT1を不要にバイパスすることが抑制される。その結果、電子制御を用いることなく、高圧段ターボの上流側から高圧段ターボの下流側へ排気ガスが不要にバイパスされることを抑制することが可能となる。
以上、本実施形態に係る2段過給ターボ付きエンジン1によれば、第2給気の圧力が第2セット圧(所定圧力)P2以下の場合に第2アクチュエータ23によって遮断弁22が閉口される。これにより、例えば回転数範囲R1において第2給気の圧力が小さいとき(低中速高負荷時)に第1給気の圧力が第1セット圧P1よりも高くなったとしても、第1給気が第1アクチュエータ21に供給されないことから、第1アクチュエータ21がバイパス弁20を開口させるのが抑制される。その結果、電子制御を用いることなく、高圧段ターボの上流側から高圧段ターボの下流側へ排気ガスが不要にバイパスされることを抑制可能となる。
また、高圧段ターボ50は、2段過給ターボ付きエンジン1の全負荷時における第2給気の圧力が第2セット圧P2以下となる2段過給ターボ付きエンジン1の回転数範囲R1にて、第1給気の圧力が最大となるピーク部Pkを含む全負荷給気圧力特性を有している。このような全負荷給気圧力特性を高圧段ターボ50が有する場合、第1給気の圧力によりバイパス弁を開口させようとすると、2段過給ターボ付きエンジン1の全負荷時における第2給気の圧力が第2セット圧P2以下となる回転数範囲R1(低中速高負荷時)において、高圧段ターボの上流側から高圧段ターボの下流側へ排気ガスが不要にバイパスされ易い。従って、第1給気の圧力が上記全負荷給気圧力特性を有している場合、第2給気の圧力が小さいときに第1給気の圧力が高くなったとしてもバイパス弁の開口を抑制し、不要にバイパスされるのを抑制するという上記作用効果は特に有効である。
以上、本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用してもよい。
例えば、上記実施形態では、バイパス流路2eは、エキゾーストマニホールド11と排気管2fとを接続するように設けられていたが、例えば高圧段ターボ50のハウジング内に設けられていてもよい。