以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
図1は、本発明の熱・音波変換ユニットおよび熱・音波変換部品の一実施形態が適用された電力発生システムの模式的な構成図である。
図1に示す電力発生システム1000は、熱・音波変換ユニット100、ループ管4、共鳴管5、およびエネルギー変換器6により構成されている。
ループ管4は、熱・音波変換ユニット100の図の上側の端部(上端部)と下側の端部(下端部)とに接続されたループ状の管である。共鳴管5は直線状の管であり、共鳴管5の一端はループ管4に接続されており、共鳴管5の他端はエネルギー変換器6に接続されている。ここで、共鳴管5とエネルギー変換器6とを合わせた全体は、実質的に図の右方向の端が閉じた管となっている。
熱・音波変換ユニット100は、熱・音波変換部品1、高温側熱交換器2、および、低温側熱交換器3を有している。
高温側熱交換器2は、高温の加熱流体(たとえば高温の排気ガス等)の流入を受けて、その熱を図1の熱・音波変換部品1の下端部に伝達し、流入時よりも温度の下がった加熱流体を流出させるものである。一方、低温側熱交換器3は、高温側熱交換器2に流入する加熱流体に比して相対的に温度の低い冷却流体(たとえば水等)の流入を受けて、その冷熱を図1の熱・音波変換部品1の上端部に伝達し、流入時よりも温度の上がった冷却流体を流出させるものである。このような高温側熱交換器2および低温側熱交換器3の働きにより、熱・音波変換部品1の下端部が上端部よりも相対的に温度が高い状態が実現する。熱・音波変換部品1は、図の上下方向に延びる複数の細い管状の貫通孔(以下、セルと呼ぶ)を有するハニカム構造を有している。各セルは、隣接するセルから隔壁により隔てられており、高温側熱交換器2および低温側熱交換器3を介してループ管4と連通している。
ここで、ループ管4、共鳴管5、および熱・音波変換部品1の各セル、のそれぞれの内部は、縦波の振動を生じて音波を伝播する作動流体で満たされている。作動流体としては、たとえば、低粘性で反応性の低い希ガス等の気体を用いることができる。
熱・音波変換部品1では、その両端部に上述の温度差が存在することにより、各セル内の作動流体は、各セルの貫通方向に振動を開始し、その振動は音波として熱・音波変換部品1から外部に伝播していく。このように温度差を与えると作動流体が振動する現象は、自励振動と呼ばれており、細い管に温度勾配を与えたときに起きる従来からよく知られた現象である。熱音響効果とは、熱に起因するこうした作動流体の自励振動により音波が発生することを指している。ここで、この自励振動について簡単に説明する(なお、詳細については、数多くの文献で説明されているが、たとえば、特許文献3でも詳しく説明されている)。
細い管に温度勾配が与えられると、高温側では、細い管の内部の作動流体は、管の壁面から熱を吸収して高温側から低温側へ向けて膨張する。そして、その低温側で壁面に対し熱を放出して圧縮して元の高温側の方に戻る。このような壁面との熱の授受と膨張圧縮が繰り返されることで、結果的に、作動流体が管の延在方向に振動することとなる。簡単にいえば、この作動流体の動きは、壁の壁面の温度勾配を緩和する(弱める)ように、熱を運ぶ作動流体の動きだということができる。この説明からも明らかであるが、この現象は、管が細いために内部の作動流体に対する壁面の熱的影響が大きい場合にのみ生じるものである。このため、管を太くしていくと壁面の熱的影響が小さくなっていき(すなわち断熱状態に近づき)、こうした自励振動は生じにくくなる。そこで、自励振動により音波を発生させる上では、管の太さが重要な要素となり、この管の太さは、より定量的には、管の断面の面積をS、この断面の周長をCとしたときにHD=4×S/Cで定義される水力直径HDによって評価できる。
以下、図1に戻って電力発生システム1000の説明を続ける。
熱・音波変換部品1では細い管状のセルが複数存在し各セル内で自励振動が起きることで、それら複数のセルの作動流体の振動の集合からなる音波が、熱・音波変換部品1からループ管4に向けて発せられる。そして、その音波は、この図の点線矢印の向きにループ管4内を伝播していく。ループ管4内を伝播する音波の多くは共鳴管5内に進行し共鳴管5内を図の右方向に進行する。上述したように、共鳴管5とエネルギー変換器6とを合わせた全体は、実質的に図の右方向の端が閉じた管となっているため、反射して逆の図の左方向に進行するものも発生し、共鳴管5内では、両進行波が重ね合わされることとなる。このとき、進行波の周波数が、共鳴管5の長さ等で決まる共鳴周波数と整合すると、共鳴管5内ではいわゆる共鳴が起こり、両進行波の重ね合わせからなりその共鳴周波数を有する定在波が発生する。図では、定在波の存在が一点鎖線の両矢印で示されている。
ここで、エネルギー変換器6では、共鳴管5の実効的な長さを変化させることができる不図示の機構が設けられており、これにより共鳴が起きるよう共鳴周波数を調整することができる。共鳴管5の実効的な長さを変化させる機構としては、たとえば、特許文献1記載のものを採用することができる。なお、ここでは、共鳴管5の実効的な長さを変化させることができるものとして説明を行うが、図1の電力発生システム1000では、熱・音波変換部品1で発生しループ管4内を進行する音波の周波数成分のうち最も支配的な周波数成分をあらかじめ把握しておき、共鳴管5の長さが、その支配的な周波数成分の周波数が共鳴周波数となるような特定の長さにあらかじめ設計されている形態が採用されてもよい。
また、エネルギー変換器6には、音波を電気信号に変換する機構も設けられている。こうした変換機構としては、たとえば、特許文献1に記載されているようなマイクロフォンを備えた機構を挙げることができる。このようにマイクロフォンを利用する変換機構が最も簡便ではあるが、マイクロフォンを利用する変換機構に限らず、音波のエネルギーを力学的なエネルギーに変換しその力学的なエネルギーを電磁誘導により電力に変換する、従来からよく知られた様々な機構(たとえば特許文献2の機構)が採用できる。
図1の電力発生システム1000では、以上説明した構成により、高温側熱交換器2に流入する高温の加熱流体(たとえば高温の排気ガス等)の熱を電力に変換することができ、エネルギーの有効利用(リサイクル)が可能となっている。
次に、上記の熱・音波変換ユニット100および熱・音波変換部品1が適用された冷熱発生システムについて説明する。
図2は、図1の熱・音波変換ユニット100および熱・音波変換部品1が適用された冷熱発生システムの模式図である。
図2に示す冷熱発生システム2000は、ループ管4’、伝播管5’、音波発生部7、および、図1で説明した熱・音波変換ユニット100により構成されている。
ループ管4’は、熱・音波変換ユニット100の図2の上側の端部(上端部)と下側の端部(下端部)とに接続されたループ状の管であり、高温側熱交換器2および低温側熱交換器3を介して熱・音波変換部品1の複数のセルと連通している。伝播管5’は直線状の管であり、伝播管5’の一端はループ管4’に接続されており、伝播管5’の他端は音波発生部7に接続されている。音波発生部7は、音波を発生する機能を有しており、音波発生部7としては、たとえば、電力の供給を受けて音波を出力するスピーカを採用することができる。また、図1の電力発生システム1000からエネルギー変換器6を取り除いた、熱の供給を受けて音波を発生させるシステム(この場合、共鳴管5の右側は開放端となって反射が起きないため、図1の状況とは異なり共鳴管5内では右向きの進行波が伝播する)を採用することもできる。
熱・音波変換ユニット100は、その構成自体は図1で説明したものと同じであるが、図1のときとは異なり、図2の高温側熱交換器2および低温側熱交換器3の双方には、図1の低温側熱交換器3に流入したのと同様の冷却流体(たとえば水)が流入するようになっている。
ここで、ループ管4’、伝播管5’、および熱・音波変換部品1の各セルの内部は、縦波の振動を生じて音波を伝播する作動流体で満たされている。作動流体としては、たとえば、図1の電力発生システム1000と同様のものを採用できる。
音波発生部7で発生した音波は、伝播管5’を図2の一点鎖線矢印の方向に伝播し、さらにループ管4’内を図2の点線矢印の方向に伝播していく。そして、熱・音波変換ユニット100に到達し、熱・音波変換部品1の図2の上側から各セル内に進行していく。このとき、音波による熱輸送により、高温側熱交換器2側の端部が低温側熱交換器3側の端部よりも相対的に温度が高い状態が実現する。高温側熱交換器2では常温近傍の冷却流体が流入し、常温より高い温度で流出する。一方、音波による熱輸送により熱が高温側熱交換器2側の端部へ輸送されてしまうので、熱・音波変換部品1の低温側熱交換器3側の端部は、常温より低い温度となる。低温側熱交換器3では常温近傍の媒体流体が流入し、熱・音波変換部品1の低温側熱交換器3側の端部に熱を奪われるため、常温より低い温度で流出する。言い換えれば、冷水の形で、冷熱が出力されることになる。
図2の冷熱発生システム2000では、以上説明した構成により、音波発生部7で発生した音波のエネルギーを用いて冷熱を出力することができる。特に、音波発生部7として、図1の電力発生システム1000からエネルギー変換器6を取り除いたシステムを採用した場合には、図1の高温側熱交換器2に流入する高温の加熱流体(たとえば高温の排気ガス等)の熱を冷熱に変換することができ、エネルギーの有効利用(リサイクル)が可能となっている。
以上説明したように、図1の電力発生システム1000および図2の冷熱発生システム2000においては、本発明の一実施形態である熱・音波変換ユニット100がきわめて重要な役割を果たしている。以下では、図1の電力発生システム1000で使用されている状況を例にとって、熱・音波変換ユニット100について、さらに詳しく説明する。以下の説明では、一例として、図1の電力発生システム1000として、図1の高温側熱交換器2には、自動車の排気ガスの典型的な温度である400〜600℃程度の高温の加熱流体(たとえば排気ガスそのもの)が流入し、低温側熱交換器3には、20〜70℃程度の低温の冷却流体(たとえば水)が流入するものとして話を進める。この場合、熱・音波変換部品1の両端部における温度差は、330〜580℃程度となる。
なお、当然のことではあるが、以下に説明する熱・音波変換ユニット100の特性そのものは、図2の冷熱発生システム2000において使用する場合も変わるものではない。
図3は、図1の熱・音波変換ユニット100の構成を表した模式図である。
熱・音波変換ユニット100は、熱・音波変換部品1、高温側熱交換器2、および、低温側熱交換器3、金属部材32、および、干渉材1aを備えており、これら全体は、ハウジング100a内に収容されてループ管4(図1も合わせて参照)に接続されている。
熱・音波変換部品1では、それぞれが細い管状の貫通孔である複数のセル14が、隔壁11によって区画形成されてなるハニカム構造を有している。ここで、本明細書では、「セル」という語を、隔壁を含まない貫通孔のみを指すものとして用いる。各セル14は、図3の上下方向を貫通方向とし、低温側熱交換器3側の端面および高温側熱交換器2側の端面の両端面において開口する。熱・音波変換部品1の、低温側熱交換器3側の端面は、金属部材32と接しているとともに、金属部材32を間において低温側熱交換器3に対向している。なお、ここでは、金属部材32が配置されているが、本発明では、金属部材32が省略された形態も採用可能である。金属部材32が省略された場合には、後述のメッシュ積層体30と接触する作動流体が冷却された後に、その冷却された作動流体が、音波の振動に対応した作動流体の変位により熱・音波変換部品1の端面近傍に接触しこの端面近傍を冷却する。ここで、金属部材32が省略された形態では、熱・音波変換部品1と低温側熱交換器3との間の隙間は極力小さいことが好ましい。
金属部材32は、中央部に互いに平行な複数本のスリット(不図示)が形成された板状の金属製部材であり、図3では、その板状の側面部(厚みの部分)のみが図示されている。
低温側熱交換器3は、複数枚の金属製(たとえば銅製)メッシュ板を重ね合わせてなるメッシュ積層体30を有している。また、低温側熱交換器3は、メッシュ積層体30の側面を取り巻く環状の管である低温側環状管31を有している。このようにメッシュ積層体30の側面を取り巻く低温側環状管31は、図3では、流入口31aおよび流出口31bを含む断面においてメッシュ積層体30の両側を挟み込むものとして模式的に示されている。この低温側環状管31は、流入口31aから、後述する高温側熱交換器2に流入する加熱流体よりは相対的に低温の冷却流体(たとえば水)の流入を受け、その冷却流体の冷熱をメッシュ積層体30に伝達し(逆の言い方をすればメッシュ積層体30の熱を冷却流体に伝達し)、流出口31bから、温度が上昇した冷却流体を流出させる役割を果たしている。
メッシュ積層体30に伝達された冷熱は、接触している作動流体に伝わり、さらに音波の変位で熱・音波変換部品1の、低温側熱交換器3側の端面に伝達され、熱・音波変換部品1の低温側熱交換器3側の端部を冷却する。このため、金属部材32の材質としては熱伝導率の高いものが好ましく、たとえば、銅製のものを用いることができる。
なお、以上では、低温側熱交換器3の構成について詳しく説明したが、本発明の熱・音波変換ユニットは、低温側の熱交換器の詳細に特に限定されず、従来から知られている熱交換器を採用してもよい。また、後述する高温側熱交換器2と同じ構成のものを採用してもよい。
熱・音波変換部品1の側面は、干渉材1aによって取り巻かれており、図3の模式的な断面図では、その取り巻く干渉材1aが、熱・音波変換部品1を図の左右両側から挟み込む2つに分かれた干渉材1aとして示されている。この干渉材1aは、熱・音波変換部品1の、低温側熱交換器3側の端部と高温側熱交換器2側の端部との間で熱・音波変換部品1外部の周囲環境を介して熱の伝達が行われるのを防ぐ断熱材としての役割を果たしている。
高温側熱交換器2は、熱交換ハニカム構造体20および高温側環状管21を備えている。熱交換ハニカム構造体20は、熱・音波変換部品1と同様にハニカム構造を有しており、それぞれが図3の上下方向を貫通する細い管状の貫通孔である2以上のセル20dが、隔壁20aによって区画形成されている。高温側環状管21は、熱交換ハニカム構造体20の側面を取り巻く環状の管であり、流入口21aから高温の加熱流体(たとえば、高温の排気ガス)の流入を受けてその加熱流体の熱を熱交換ハニカム構造体20に伝達し流出口21bから温度が低下した加熱流体を流出させる役割を果たす。ここで、図3に示すように、高温側環状管21の管内には、加熱流体との接触面積を増加させるために、金属製あるいはSiC(炭化珪素)を主成分とするセラミックス製のフィン21eが設けられている。
図4は、図3の熱・音波変換ユニット100における高温側熱交換器2の外観斜視図であり、図5は、高温側環状管21の流入口21aおよび流出口21bを含む平面で見たときの高温側熱交換器2の断面図である。
図4に示すように、高温側熱交換器2では、高温側環状管21の環状形状における中央の空洞部分に熱交換ハニカム構造体20が嵌め込まれた構成となっている。この高温側環状管21には、図4の太い矢印で示すように、図の下側の流入口21aから高温の加熱流体(たとえば、高温の排気ガス)が流入し、図の上側の流出口21bから流出する。このとき、流入口21aから流入した高温の加熱流体は、図5の矢印で示すように、熱交換ハニカム構造体20の円形の外周を構成する外周壁20bに直接に突き当たり、外周壁20bの左右二手に分かれて外周壁20bに沿って進み、流出口21bで合流して流出する。このように熱交換ハニカム構造体20の外周壁20bに対して直接に高温の加熱流体が接触することで、高温の加熱流体から外周壁20bに対して多量の熱が直接に伝達され、その熱は、熱交換ハニカム構造体20内部の隔壁20aやセル20d内部の作動流体にも伝達される。このように、熱交換ハニカム構造体20が高温の加熱流体に直接に接触できるのは、後述するように、熱交換ハニカム構造体20が、耐熱性および熱伝導性が高い材料で構成されているためであり、直接に加熱流体と接触できることで、間に他の部材を介した場合と比べ、熱の損失を抑え熱交換効率の向上が図られる。
なお、このように熱交換ハニカム構造体20が直接に加熱流体と接触する形態が好ましいが、本発明では、熱交換ハニカム構造体20の外周壁20bが高温の加熱流体に直接に接触する代わりに、外周壁20bの周囲を金属で覆う形態も採用することができる。特に、音波を伝播する作動流体として高圧の気体(たとえばアルゴン等の不活性の希ガス)を用いる場合には、こうした高圧の気体を密閉して漏れを防ぐ観点からこのように外周壁20bの周囲を金属で覆う形態が好ましい。この場合、外周壁20bの周囲を覆った金属の外周面に、図5の熱交換ハニカム構造体20の中心からみて外向き方向(動径方向)に突出した金属製のフィン(たとえば図3のフィン21e参照)を備えていることが好ましい。これは、高温の加熱流体との接触面積を増加させて熱交換効率を高めるためである。高温の加熱流体との接触面積が小さいと、高温の加熱流体と高温側熱交換器2との熱の授受が不十分で高温側熱交換器2の熱交換効率が低下してしまうので、高温加熱流体との接触面積をできるだけ大きくすることが高温側熱交換器2にとって重要となる。
特に、SiC(炭化珪素)を主成分とするセラミックス材料で構成された、さらに別のハニカム構造体が高温側環状管の管内に嵌合している形態が最も好ましい。これは、SiC(炭化珪素)を主成分とするセラミックス材料は、金属製のフィンより高温での熱伝導率が高く、高温ガスとの接触面積も飛躍的に増加させることができ、さらに、金属製のフィンでは問題となり得る高温の加熱流体による腐食劣化の問題も回避できるからである。以下、この好ましい形態について説明する。
図6は、高温側環状管の管内にさらに別のハニカム構造体が嵌合している熱・音波交換ユニットの一形態を表す模式図であり、図7は、図6のA−A線の断面における高温側熱交換器の模式的な断面構成図である。
図6および図7では、図3〜図5と同一の構成要素については同一の符号を付し、その重複説明は省略する。
図6の熱・音波交換ユニット200における高温側熱交換器2’は、熱交換ハニカム構造体20’および2つの互いに異なる高温側環状管211,212を有している。熱交換ハニカム構造体20’は、図中の水平方向を貫通方向とする2以上のセルが隔壁により区画形成されたハニカム構造を有しており、2つの異なる高温側環状管211,212により加熱流体から伝達された熱を熱・音波変換部品1に伝達する。ここで、熱交換ハニカム構造体20’は、熱・音波変換部品1から間隔tを置いて配置されている。
図7に示すように、2つの高温側環状管211,212の内部には、SiC(炭化珪素)を主成分とするセラミックス材料で構成された管内ハニカム構造体2110,2120がそれぞれ備えられている。管内ハニカム構造体2110,2120は、いずれも図中の水平方向を貫通方向とする2以上のセルが隔壁により区画形成されたハニカム構造を有している。2つの高温側環状管211,212では、図の矢印で示すように、流入した加熱流体が管内ハニカム構造体2110,2120の各セルを通過して流出していく。このとき、各セルを通過する加熱流体の熱が管内ハニカム構造体2110,2120に伝わり、その熱は、高温側環状管211,212の壁面、および、熱交換ハニカム構造体20’の側面(外周壁の面)を取り巻く金属管(不図示)を介して、熱交換ハニカム構造体20’に伝達される。なお、図7では、簡単のため、熱交換ハニカム構造体20’の断面が矩形形状で図示されているが、図4および図5のように断面が円形状の場合であっても、高温側環状管211,212の形状を円形に沿うようにする等により実質的に同様の構成を取り得る。
このように熱交換ハニカム構造体20’の外周壁を金属管で覆い、その外側に、SiC(炭化珪素)を主成分とするセラミックス材料で構成された2つの管内ハニカム構造体2110,2120を配置する構造では、熱交換ハニカム構造体20’は直接加熱流体と接触せず、このため、高温の加熱流体による腐食劣化を抑えることができる。また、作動流体として不活性な希ガス(たとえばアルゴン等)を用いる場合には、作動流体により熱交換ハニカム構造体20’が腐食する問題も生じない。この場合、熱交換ハニカム構造体20’の材料としては、SiC(炭化珪素)を主成分とするセラミックス材料の他、熱伝導性の高い金属材料、たとえば銅も採用できる。
ここで、図6における熱交換ハニカム構造体20’の長さL’は、作動流体の振動より発生する音波の波長程度であることが好ましい。音波の波長よりも長すぎると作動流体(たとえば不活性な希ガス)への熱の供与が不十分となる。一方、長さL’が音波の波長よりも短すぎると、外側から熱交換ハニカム構造体20’を通り抜けて熱・音波変換部品1へ達してしまい、比較的低温の作動流体が熱・音波変換部品1の高温熱交換器側の端部を冷やしてしまうといった悪影響が生じ得る。
図8は、図6および図7に示す熱・音波交換ユニットとは別の本発明の熱・音波交換ユニットの一形態を表す模式図、図9は、図8に示す熱・音波交換ユニットとはさらに別の熱・音波交換ユニットの一形態を表す模式図である。
図8に示す熱・音波交換ユニットでは、高温側熱交換器2Aにおいて、図中の上側から加熱流体が流入し高温側熱交換器2Aの内部を通って図中の下方向に向けて流出する。一方、図9に示す熱・音波交換ユニットでは、高温側熱交換器2A’において、図中の上側から加熱流体が流入し高温側熱交換器2Aの内部を通って図中の上方向に向けて流出する。ここで、図8および図9に示す熱・音波交換ユニットのいずれも、低温側熱交換器3Aにおいては、図中の上側から冷却流体が流入し低温側熱交換器3Aの内部を通って図中の上方向に向けて流出する。ここで、図8および図9では、内部構造(以下の2つのハニカム構造体22,23を含む構造)を明らかにするために、一部については透視図となっている。
図8の高温側熱交換器2Aおよび図9の高温側熱交換器2A’は、金属材料で構成された柱状のハニカム構造体23と、その周りを取り囲む、SiC(炭化珪素)を主成分とするセラミックス材料で構成された中空の円柱状(言い換えれば厚みのある円筒状)のハニカム構造体22とを有している。ハニカム構造体23の外周では同一の金属材料の後述の金属メッシュ外筒23aが金属製のハニカム構造体23と一体に形成されている。なお、正確には、2つのハニカム構造体22,23の間にはメタライズ層が存在するが、これについては後述する。これら2つのハニカム構造体22,23は、いずれも、円柱状の形状の延在方向を貫通方向とする2以上のセルが隔壁により区画形成されたハニカム構造を有している。このような図8および図9の構造によっても、熱の損失を抑え熱交換効率の向上が図られる。
なお、ここでは、金属材料で構成されたハニカム構造体23によるハニカム構造が採用されているが、これに代えて金属製のメッシュで構成されたメッシュ構造が採用されてもよい。
図10は、メッシュ構造を採用した高温側熱交換器の断面図である。
図10に示す高温側熱交換器では、金属外筒22aで外周が囲まれた、SiC(炭化珪素)を主成分とするセラミックス材料で構成されたハニカム構造体22のさらなる内側に、円筒状のメタライズ層23bおよび金属メッシュ外筒23aを介して金属メッシュ体23’が備えられている。ここで、メタライズ層23bは、モリブデンやマンガン等の金属の焼き付けによって形成された層であり、金属製の金属メッシュ外筒23aとセラミックス製のハニカム構造体22を接合させるための層である。図10に示す構造によっても、熱の損失を抑え熱交換効率の向上が図られる。
以下、再び、図3〜図5に戻って説明を続ける。
図3に示すように、熱交換ハニカム構造体20の、熱・音波変換部品1側の端面(熱交換ハニカム構造体20の上側の端面)は、熱・音波変換部品1の、高温側熱交換器2側の端面(熱・音波変換部品1の下側の端面)と直接に接触している。以下、この熱交換ハニカム構造体20の上側の端面を接触面20sと呼ぶ。なお、本発明では、このように熱・音波変換部品1と熱交換ハニカム構造体20とが直接に接触する代わりに、熱・音波変換部品1と熱交換ハニカム構造体20との間に図6の隙間tのような隙間が存在していてもよい。この場合、熱交換ハニカム構造体20に対して伝達された熱は、熱交換ハニカム構造体20と接した作動流体に伝達され、その加熱された作動流体が、音波の振動に対応した作動流体の変位により熱・音波変換部品1の端面近傍に接触し、この端面近傍が加熱される。これにより、熱・音波変換部品1の、高温側熱交換器2側の端部は、低温側熱交換器3側の端部に比して相対的に温度の高い状態に維持されることとなる。
ここで、この熱交換ハニカム構造体20は、SiC(炭化珪素)を主成分とするセラミックス材料で構成されている。セラミックス材料は、耐熱性が高いため、上述のように直接に高温の加熱流体に接触する熱交換ハニカム構造体20の材料に適している。さらに、セラミックス材料の中でもSiCを主成分とするセラミックス材料は、熱伝導率が相対的に高いため、上述したように熱交換ハニカム構造体20が熱・音波変換部品1に熱を伝達する役割を果たすのに適した材料となっている。ここで、「SiCを主成分とする」とは、SiCが、熱交換ハニカム構造体20の材料の50質量%以上を占めることを意味する。このときの気孔率としては、0〜10%であることが好ましい。また、隔壁20aの厚さが0.25〜0.51mmであってセル密度が15〜62セル/cm2であることが好ましい。
SiCを主成分とするセラミックス材料としては、具体的には、単純なSiCに加え、Si含浸SiC、(Si+Al)含浸SiC、金属複合SiC、再結晶SiC、Si3N4、及びSiC等を採用することができる。これらの中でも、Si含浸SiC、(Si+Al)含浸SiCが好ましい。その理由は、Siを含浸するSiCは、高い熱伝導率および耐熱性を有することに加え、多孔質体であっても気孔率が低く緻密に形成されているため、Siを含浸しないSiCに比して相対的に高い強度を実現できるからである。
ここで、熱交換ハニカム構造体20では、図5に示すように三角形のセル20dが、セル20dの貫通方向に垂直な面内で、決まった長さの周期で周期的に配列した構成が採用されている。後述するように、熱の伝達先である熱・音波変換部品1においても同様の構成が採用されており、熱交換ハニカム構造体20におけるセル20dのこの周期は、熱・音波変換部品1におけるセル14の周期の10以上の整数倍となっている。このように、熱交換ハニカム構造体20のセル20dの形状として、熱の伝達先である熱・音波変換部品1のセル14の形状と同一の形状を採用し、熱交換ハニカム構造体20のセル20dの周期として、熱・音波変換部品1のセル14の周期の整数倍のものを採用することで、熱交換ハニカム構造体20のセル20dの内部、および、熱・音波変換部品1のセル14の内部を満たしている作動流体の動きがスムーズになるよう工夫されている。なお、熱交換ハニカム構造体20のセルの周期が、熱・音波変換部品1のセルの周期よりも大きい理由は、熱・音波変換部品1のセル14は、上述した自励振動を起こすためにきわめて細い貫通孔であることが要求されるためである。熱交換ハニカム構造体20のセル20dには、そうした要請はなく、熱交換ハニカム構造体20は熱交換の役割を果たせば十分であるため、熱・音波変換部品1のセル14の周期に比べ、1桁(10倍)以上の大きさのものとなっている。
また、図3に示すように、熱交換ハニカム構造体20では、熱・音波変換部品1との接触面20sは、熱交換ハニカム構造体20が高温の加熱流体と直接に接触して熱を受ける受熱領域21cよりも、熱・音波変換部品1側(図の上方向)にずれた位置にあり、受熱領域21cと重ならないようになっている。仮に、接触面20sが受熱領域21cと重なってしまうと、接触面20sのうち、受熱領域21cに近い縁の周辺と、受熱領域21cから遠い中央付近とでは、温度差が大きく異なる状態が生じることがある。この場合、熱・音波変換部品1の、熱交換ハニカム構造体20側の端部(図3の下端部)が均一に加熱されないために、熱・音波変換部品1の各セルの自励振動が各セルに応じてムラが出るという問題が生じ得る。図3の熱交換ハニカム構造体20では、接触面20sが熱領域21cと重ならないようになっていることで、こうした問題を回避している。
また、図5に示すように、熱交換ハニカム構造体20では、外周壁20bの一部が欠けてセル20dの貫通方向に沿って延びるスリット20cが形成されている。図5では、例として、熱交換ハニカム構造体20の外周面の4か所にスリット20cが形成された例が示されている。こうしたスリット20cが存在することで、高温の加熱流体が直接に外周壁20bに接触したときに、外周壁20bに生じる熱応力を緩和することができ、この結果、外周壁20bや隔壁20aの割れや剥離を抑えることができる。
また、図5に示すように、高温側環状管21には、スリット20cが延在する方向に沿って、各スリット20cによる空隙を塞ぎつつ延在する4つの耐熱性金属板21dが設けられている。これら4つの耐熱性金属板21dにより、4つのスリット20cから作動流体が高温側環状管21内に漏れ出すことが防がれる。ここで、熱交換ハニカム構造体20は、高温側環状管21の環状の中央部で、これら4つの耐熱性金属板21dに嵌め込まれることで支持される。また、4つの耐熱性金属板21dにおいて、図5の熱交換ハニカム構造体20の中心からみて外向き方向(動径方向)に突出した金属製あるいはSiC(炭化珪素)を主成分とするセラミックス製のフィン21e(図3も合わせて参照)が備えられている。
次に、図3に示す熱・音波変換部品1について詳しく説明する。
図11Aは、図3に示す熱・音波変換部品1のセル14の貫通方向に垂直な面内における熱・音波変換部品1の断面図である。
図11Aに示すように、熱・音波変換部品1は、それぞれが細い管状の貫通孔である複数のセル14が、隔壁11によって区画形成され(この点については図3も合わせて参照)、さらにそれら隔壁11の全体の外周を外周壁13で取り囲むことで形成されている。ここで、外周壁13の構成材料としては、隔壁11の構成材料と同じものを採用できる。
上述したように、自励振動により音波を発生させる上でセル14の水力直径HDが1つの重要な要素であり、熱・音波変換部品1における複数のセル14の平均的な水力直径HDは0.4mm以下のきわめて小さい値となっている。このように平均的な水力直径HDがきわめて小さいセルが形成されていることで、熱・音波変換部品1では、十分な熱音響効果を得ることができる。逆に、複数のセル14の平均的な水力直径HDが0.4mmより大きい場合、きわめて小さい熱音響効果しか得られず、たとえば、図1の電力発生システム1000や図2の冷熱発生システム2000で十分な量の電力や冷熱を得ることは難しくなる。
ここで、より大きな熱音響効果を発揮するには、上述の水力直径HDが小さいセルを、できるだけ数多く形成するのが有利である。言い換えれば、熱・音波変換部品1の端面における開口率が大きい方が有利である。熱・音波変換部品1は、各端面において60%以上の高い開口率を有しており、これにより大きな熱音響効果を発揮することができる。逆に60%未満の開口率では、熱音響効果に寄与するセルが少なすぎてあまり大きな熱音響効果は得られない。
ただし、開口率が高すぎると、熱・音波変換部品1の空洞部分が多すぎることとなり、熱・音波変換部品1全体の耐久性や強度が低下する。そこで、熱・音波変換部品1では開口率は93%以下に抑えられている。実際、開口率が93%を超えると、発生した音波による衝撃や熱・音波変換部品1の両端の温度差に起因する熱的な歪みやねじれ(熱応力)により生じる熱・音波変換部品1の損傷が無視できなくなる。
まとめると、熱・音波変換部品1では、熱・音波変換部品1の端面における開口率が60%以上93%以下となることで、十分な熱音響効果の発揮と十分な耐久性・強度との適度なバランスが実現している。なお、60%以上93%以下の開口率の中でも、80%以上93%以下の開口率が好ましい。
なお、上記開口率は、貫通方向に垂直な断面を顕微鏡で撮影し、このときの断面の撮影画像から、材料部分面積S1と空隙部分面積S2を求め、S1とS2を用いてS2/(S1+S2)として求められる。
また、熱・音波変換部品1では、複数のセル14の間に、セル14の貫通方向に垂直な平面内における各セルの水力直径HDについて各セルに応じた相違が存在しており、複数のセル14の水力直径HDの分布は、2%以上30%以下の相対標準偏差を有している。ここで、相対標準偏差とは、それぞれが1つの数値を有する複数個のデータ値からなる母集団において、これら複数個のデータ値の標準偏差値を、これら複数個のデータ値の算術平均で割ったものを指す。この定義からも明らかなようにこの相対標準偏差は無次元の値である。この相対標準偏差は変動係数とも呼ばれ、複数個のデータ値の間における数値のばらつきの程度を表す量である。以下、このように複数のセル14の間で水力直径HDの分布にばらつきを持たせる意義について簡単に説明する。
一般に、熱音響効果により音波が発生するのは、より厳密に言えば、熱・音波変換部品として機能するハニカム構造体のセル内の少なくとも一部における作動流体の一時的な流れ(動き)がきっかけとなって、隔壁との間の熱の授受による作動流体の圧縮膨張が生じて作動流体の振動が発生する(この圧縮膨張による振動の発生については図1で上述した説明参照)ことによると考えられる。たとえば、ハニカム構造体の高温側の端部のセル内に、何かの拍子にハニカム構造体の外部から作動流体が流れ込むような事態が生じれば、その流れが作動流体の振動を誘発し熱音波変換が開始される。
実際、特開2005−253240では、熱・音波変換部品に熱音波変換を開始させるにあたり、熱・音波変換部品による音波発生を誘発するためのスタータ用の音波を熱・音波変換部品に与えることが提案されている。ただし、スタータ用の音波を与える機構を別途設けるのは、電力発生システムの構成を複雑化することにつながるため、熱音響効果を利用する多くの電力発生システムでは、こうした機構をあえて設けることなく、熱・音波変換部品の両端部に温度差を与えるだけで熱音波変換が開始できるようにしている。
ここで、ハニカム構造体を収容する管内(たとえば図1のようなループ管内)では、微視的には様々な方向に作動流体が動いており、その移動方向はランダムであるため平均的には作動流体の流れ(動き)が存在しない状態となっている。こうした作動流体のランダムな動きは、通常、外乱と呼ばれており、この外乱のうち、ハニカム構造体の高温側の端部のセル内に流れ込む作動流体の流れ(動き)が、熱音波変換開始のきっかけになると考えられる。ただし、ハニカム構造体の高温側の端部のセル内に流れ込む作動流体の動きがあったとしても、熱・音波変換部品の両端部の温度差に伴う熱・音波変換部品の温度勾配(温度差をハニカム構造体の長さで割ったもの)が不十分な場合には作動流体が十分に振動しないために音波が発生しない。このとき、温度勾配を徐々に大きくしていくと、ある閾値以上のときに音波が発生するようになる(たとえば、特許文献3参照)。特に、特許文献3の段落[0038]では、ハニカム構造体の貫通孔の大きさが小さいほど、この閾値が低くなることが示唆されている。
このため、複数のセルを有するハニカム構造体では、平均的なセルの大きさ(典型的には水力直径HD)が小さい方が熱音波変換の始動性に関して有利であるといえる。しかしながら、複数のセルの水力直径HDの平均値がほぼ同一の様々な水力直径HDの分布のうち、どのような分布が始動性に関して有利かは、特許文献3の結果を踏まえても、きわめて非自明である。
一見すると、水力直径HDが均一の水力直径HDの分布の方が複数のセル全体でみると熱音波変換が起こりやすい(言い換えれば低い温度勾配で熱音波変換が開始する)ようにもみえる。しかしながら、実際に実験してみると(後述の実施例参照)、水力直径HDがほぼ均一の水力直径HDの分布よりは、水力直径HDに、ある程度のばらつきがあった方が熱音波変換が起こりやすいことが判明した。ただし、ばらつきが大きくなりすぎると今度は熱音波変換が起こりにくくなることも判明した。より具体的にいえば、セルの貫通方向に垂直な平面内において、複数のセルの水力直径HDの分布が2%以上30%以下の相対標準偏差を有している場合に熱音波変換の始動性が高いということが判明した(後述の実施例参照)。
その明確な理由は不明であるが、定性的には、たとえば以下のような理由が考えられる。まず、上記の数値範囲の下限の存在については、以下の理由が考えられる。外乱における作動流体の速度の大きさには、ある程度の分布があると考えられるところ、セルの水力直径HDに応じて、熱音波変換の開始に適当な作動流体の速度の大きさも多少異なっている可能性がある。このため、セルの水力直径HDに、ある程度のばらつきを持たせた方が、少なくともいずれかのセルにおいて熱音波変換が開始される確率が高くなる(言い換えれば外乱を拾いやすい)ということが、数値範囲の下限の存在の原因としてあるかもしれない。一方、上記の数値範囲の上限の存在については、水力直径HDの分布にばらつきが大きすぎると、水力直径HDの小さいほんの一部のセルでのみ音波が発生するにとどまり、複数のセル全体でみると音波がほとんど発生していない状態となるということが原因としてあるかもしれない。
このような事情を考慮して、図11Aの熱・音波変換部品1では、複数のセル14の水力直径HDの分布に2%以上30%以下の相対標準偏差を有するようになっており、これにより、熱・音波変換部品1では、熱音波変換の始動性の向上が図られている。
ここで、複数のセル14の間で水力直径HDについてばらつきが存在することを模式的に示すために、図11Aでは、熱・音波変換部品1の断面内における、それぞれ6個の三角形のセル14を含む正六角形領域Aおよび正六角形領域Bの拡大図が示されている。正六角形領域Aおよび正六角形領域Bはいずれも、同一の面積及び形状を有する正六角形状の区画であり、熱・音波変換部品1の断面は、このような正六角形領域の集合により構成されている(このため、以下に説明するように、正六角形領域Aの内部と正六角形領域Bの内部とを対比するときを除き、正六角形領域Aや正六角形領域Bを含め、こうした正六角形領域を正六角形領域15と呼ぶことがある)。ただし、厳密にいえば、外周壁に接する周縁部では、正六角形領域は完全な正六角形状とならずに正六角形状の一部が欠けた状態となっている。
各正六角形領域では、各正六角形領域の中心を取り囲むように6個のセル14が配置されている。ここで、正六角形領域Aに含まれる6個のセル14は互いに同じ大きさの断面積・形状を有し、正六角形領域Bに含まれる6個のセル14も互いに同じ大きさの断面積・形状を有する。しかし、正六角形領域Aに含まれる6個のセル14は、正六角形領域Bに含まれる6個のセル14よりも断面積が大きく、従って水力直径HDは正六角形領域A内のセル14の方が大きい。
以上では、正六角形領域Aおよび正六角形領域Bの2つの正六角形領域を例にとって説明したが、この例からもわかるように、熱・音波変換部品1の断面内では、各正六角形領域内のセル14の水力直径HDは各正六角形領域に応じた1つの値に決められており、熱・音波変換部品1の断面内には、セル14の水力直径HDが互いに異なる複数種類の正六角形領域が混在している。これにより、熱・音波変換部品1の断面全体において、熱・音波変換部品1の複数のセル14の間で水力直径HDについてばらつきが存在する状態が実現している。
ここで、図11Aの正六角形領域Aにおける隔壁11の厚さTおよび正六角形領域Bにおける隔壁11の厚さT’のように、熱・音波変換部品1の断面では、各正六角形領域内における隣接セル14間の隔壁11の厚さは、各正六角形領域に応じた1つの値に決められており、種類(上述したように水力直径HDで決まる種類)が異なる正六角形領域同士では、正六角形領域内の隔壁11の厚さも互いに異なっている。また、隣接する2つの正六角形領域にそれぞれ属し互いに隣接する2つのセル14の間の隔壁11の厚さも、その隣接する2つの正六角形領域の種類(水力直径HDで決まる種類)の組み合わせに応じた1つの値に決められており、種類の組み合わせに応じて隔壁11の厚さが異なるものとなっている。この結果、熱・音波変換部品1では、熱・音波変換部品1のすべての隣接セルの組の間には、隣接セル間の隔壁11の厚さについて、ばらつきが存在する状態が実現している。このときの隣接セル間の隔壁11の厚さのばらつきとして、隔壁の厚さの分布が、3%以上22%以下の相対標準偏差を有することが、熱音波変換の始動性の向上の上で好ましい。
図11Bは、単位区画による熱・音波変換部品の断面の分割を示す概念図である。
図11Bには、図11Aに示す熱・音波変換部品1の断面を、単位区画16で複数個の単位区画に分割したときの様子が示されており、この単位区画16は、横方向(左右方向)の辺の長さS1が1mmであって縦方向(上下方向)の辺の長さS2が1mmの矩形の領域である。
熱・音波変換部品1の断面を複数個の単位区画に分割したときには、図11Bから明らかなように、複数個の単位区画のいくつかは、外周壁13の断面を含んでいる。複数の単位区画から、こうした外周壁13の断面を含む単位区画を取り除いた残りの単位区画を、以下では内側単位区画と呼ぶ。たとえば、図11B中において符号「16」が付されている単位区画は、外周壁16を全く含んでおらず内側単位区画の1つである。以下では、図11Bにおける内側単位区画のそれぞれを内側単位区画16と呼ぶことがある。
熱・音波変換部品1では、複数のセル14の間で水力直径HDについてばらつきが存在することに対応して、全内側単位区画16の間には、各内側単位区画における開口率についてばらつきが存在する状態が実現している。このとき内側単位区画16における開口率のばらつきとして、内側単位区画16における開口率の分布が、7%以上40%以下の相対標準偏差を有することが、熱音波変換の始動性の向上の上で好ましい。
なお、ばらつきを有する水力直径HDや隔壁11の厚さや内側単位区画16における開口率については、貫通方向に垂直な断面を顕微鏡で撮影し、このときの断面の撮影画像において、セル14の面積や大きさや隔壁11の厚さ等を測定することにより得ることができる。
以上は、熱・音波変換部品1の複数のセル14や隔壁11や内側単位区画16に関する特性量のばらつきについて説明であり、以下では、特性量のばらつき以外の熱・音波変換部品1の特徴について説明する。
熱・音波変換部品1では、その両端面の間の長さをLとしたときにこの長さLに対する上述の水力直径HDの比HD/Lが0.005以上0.02未満となっている。仮に、HD/Lが0.005未満であると、水力直径HDに比して熱・音波変換部品1が長すぎて、熱・音波変換部品1の各セル内の作動流体が熱・音波変換部品両端の温度差の影響を受けにくくなる。この場合、各セル内の作動流体と隔壁11との間における熱の授受が不十分で十分な熱音響効果が得られない。一方、仮に、HD/Lが0.02以上であると、今度は、水力直径HDに比して熱・音波変換部品1が短すぎて、各セル内の作動流体と隔壁11との間で熱の授受が不十分なまま熱・音波変換部品1において高温側熱交換器2側から低温側熱交換器3側に隔壁11を熱が伝導していくことになる。この結果、やはり十分な熱音響効果が得られない。そこで、熱・音波変換部品1では、比HD/Lが0.005以上0.02未満となるよう工夫されており、このため、各セル内の作動流体と隔壁11との間における熱の授受が十分に行われる。この結果、熱・音波変換部品1では、十分な熱音響効果が得ることができる。
また、本発明の熱・音波変換部品では、セルの貫通方向に垂直な面内でのセルの形状としては、三角形、四角形、五角形、六角形等の様々な多角形、および、楕円形(真円の形状含む)を採用できるが、三角形、四角形、六角形、およびこれらの組み合わせが好ましく、図11Aのように、三角形のセル14がこの垂直な面内で周期的に配列した構成が特に好ましい。
三角形のセル14が特に好ましいのは、様々な多角形および楕円形のセル形状のうち、三角形のセル形状が、隔壁の厚さをできるだけ薄くして数多くのセルを配列させるのに最も適しているからである。ここで、自動車の排ガスから微粒子を取り除く排気浄化触媒担持用のハニカム構造体では、セルの角部が鋭角であると、微粒子が角部に堆積しやすいといった問題があるため、三角形のセル形状は、(原理的には採用可能であっても)実際上、採用されないことが多い。しかし、熱音響効果を発揮するハニカム構造体としては、自励振動を起こす作動流体(希ガス等の気体)に関して、このような問題は存在しないため、数多くのセルを配列させるのに最も適した三角形のセル形状を積極的に活用できる。
ここで、図11Aでは、ばらつきの説明の簡単化のため、セル14の正三角形状の角部は鋭角として図示されているが、実際には、セル14の形状としては、角部が弯曲した三角形の形状となっており、この角部の曲率半径が0.02mm以上0.1mm以下となっている。曲率半径が0.02mm以上であることでその緩やかに弯曲した形状により、セル14を押しつぶすように働く衝撃に対し十分に対抗できる。これは、トンネル等の穴の形状としては、丸みを帯びた形状の方が角ばった形状よりも、周囲からの外力に対抗しやすいのと同様の理由に基づくものである。ただし、弯曲部分が大きすぎると、今度は、各セルの角部付近で隔壁11が分厚くなり、その分、熱音響効果に寄与するセル14の貫通孔が減ることになる。そこで、曲率半径が0.1mm以下となっていることで、同時に高い熱音響効果も維持されている。
なお、セル14の角部における曲率半径については、セル14の貫通方向に垂直な断面の拡大写真をとり、そのセル14の断面形状に基づき測定することができる。
また、熱・音波変換部品1では、熱・音波変換部品1での構成材料の熱伝導率が、5W/mK以下の低い熱伝導率となっていることが好ましい。仮に熱伝導率が5W/mKより大きい場合には、各セル内の作動流体と隔壁11との間で熱の授受が不十分なまま高温側熱交換器2側から低温側熱交換器3側に隔壁11を熱が伝導していくことになり、十分な熱音響効果が得られないことがある。これに対し、熱伝導率が5W/mK以下の低い熱伝導率となることで、各セル内の作動流体と隔壁11との間で熱の授受が十分に行われ、十分な熱音響効果が得られる。なお、5W/mK以下の熱伝導率の中でも、1.5W/mK以下の熱伝導率であることが特に好ましい。ただし、熱伝導率が小さすぎると、今度は、熱・音波変換部品1の高温側熱交換器2側の端面のみが局所的に高温となってセル内壁面に熱が伝わらず熱音響効果が起きにくくなるので、少なくとも0.01W/mK以上の熱伝導率であることが好ましい。
ここで、熱伝導率は、温度傾斜法(定常法)で求められる。具体的には、以下のようにして求められる。まず、熱伝導率の測定対象から板状のテストサンプルを切り出し、その板状のテストサンプルを熱伝導率が既知のスペーサ(たとえば銅やステンレス等の金属)で挟む。次に、その片面を30℃〜200℃に加熱し、反対面を20〜25℃に冷却することにより、テストサンプルの厚さ方向に一定の温度差を設ける。そして、伝播する熱流量をスペーサ内の温度勾配により求め、この熱流量を温度差で割り算して熱伝導率を算出する。
以下、図11Aに示す一体型の熱・音波変換部品1の製造方法について説明する。以下では、熱・音波変換部品1がセラミックス材料で構成されている場合を例にとって説明する。
まず、セラミック原料にバインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して成形原料とする。セラミック原料としては、コージェライト化原料、炭化珪素−コージェライト系複合材料、アルミニウムチタネート、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、アルミナ、ムライト、スピネル、リチウムアルミニウムシリケート、および、鉄−クロム−アルミニウム系合金のうちの1つ、あるいは、2つ以上の組み合わせであることが好ましい。これらの中でも、コージェライト化原料が好ましい。なお、コージェライト化原料とは、シリカが42〜56質量%、アルミナが30〜45質量%、マグネシアが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミック原料であって、焼成されてコージェライトになるものである。なお、セラミック原料の含有量は、成形原料全体に対して40〜90質量%であることが好ましい。
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、成形原料全体に対して2〜20質量%であることが好ましい。
水の含有量は、成形原料全体に対して7〜45質量%であることが好ましい。
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、単独で使用してもよいし、2つ以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、成形原料全体に対して5質量%以下であることが好ましい。
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂およびシリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、成形原料全体に対して15質量%以下であることが好ましい。
次に、成形原料を混練して坏土を形成する。成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
次に、坏土を押出成形することで、複数のセルを区画形成する隔壁を備えたハニカム成形体を形成する。押出成形に際しては、上述した、各セルの水力直径HD、開口率、熱・音波変換部品1の形状、セル形状、各セルの周期、に対応した形状の口金を用いることが好ましい。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。なお、ハニカム成形体における各セルの水力直径HD、開口率、等の値については、後述の乾燥処理および焼成の処理で生じる収縮をも考慮して決定することが好ましい。
ここで、大きな熱音響効果を発揮するための、上述したような、各セルの水力直径HDがきわめて小さく開口率が高い(セル密度が高い)図11Aの熱・音波変換部品1を作製する際には、以下の2つの問題により、こうした制約がない従来の排気浄化触媒担持用のハニカム構造体で用いられている押出成形法をそのまま単純に流用する(口金を、高密度の細孔形成用の口金に取り換えただけで同様の製造方法をそのまま実行する)ことはできない。
第1の問題は、押出成形の際に、高温で押し出された坏土が成形用口金の孔内に密着して目詰まりが起こりやすいことである。なお、この問題については、たとえば、特許文献3の段落[0021]でも言及されている。
第2の問題は、図11Aの熱・音波変換部品1のような各セルの水力直径HDがきわめて小さく開口率が高い(セル密度が高い)ハニカム構造体に対応する口金には、必然的にきわめて細い微細部分(典型的には0.3mm程度の太さの部分)が存在することとなり、この微細部分が、坏土押出しの際の粘性摩擦により損傷(たとえば引きちぎれる等)を受けやすいことである。
そこで、熱・音波変換部品1の製造方法においては、これら2つの問題を解消するために、以下の工夫が凝らされている。
第1の問題に関しては、各セルの水力直径が0.4mm以下であって開口率が60%以上93%以下の、水力直径がきわめて小さく開口率が高い(セル密度が高い)熱・音波変換部品1に対応した口金(以下、正規口金と呼ぶ)による押出成形の実行前に、リブの厚さが0.04mm以上0.09mm以下というリブの厚さがきわめて小さい口金(以下、ダミー口金と呼ぶ)での坏土の押出処理が行われる。なお、ここでいう「リブの厚さ」とは、成型体ハニカムの隔壁厚さのことで、口金におけるスリット幅を指しており、各スリットは、坏土の排出孔であって作製対象のハニカム構造体の各隔壁部分の形状を決定するものである。以下、「リブの厚さ」を、スリット幅を意味するものとして用いる。このダミー口金を用いた押出処理により、目詰まりの原因となりやすい坏土成分をあらかじめ取り除くことができる。この押出処理後の坏土を用いて正規口金による押出成形を実行することにより、上記の目詰まりの発生を抑えることが可能となる。
第2の問題に関しては、押出成形による熱・音波変換部品1の成形体の保形性を維持できる(つまり、成形体の形が崩れない)範囲内で、押出成形に用いる坏土の粘性を、従来の排気浄化触媒担持用のハニカム構造体の製造で用いられる坏土の粘性に比べ大幅に低減して粘性摩擦を小さくすることで対処している。ここで、このように保形性維持の条件を満たしつつ坏土の粘性を低減するにあたっては、坏土中の水の比率を、従来の排気浄化触媒担持用のハニカム構造体の製造時に比べ、より厳格に制御する(すなわち、水の比率の制御目標値と実際の水の比率の値との間の誤差をきわめて狭い範囲内に抑える)ことも必要となる。より具体的には、従来の排気浄化触媒担持用のハニカム構造体の製造で用いられる坏土中の水の比率が、坏土固形成分100質量部に対し25〜35質量部であるのに対し、熱・音波変換部品1の製造で用いられる坏土中の水の比率は、坏土固形成分100質量部に対し40〜42質量部となっている。なお、坏土中の水の比率を増加した場合には、坏土の粘性が低減して熱・音波変換部品1の成形体の形状に適度なばらつきが生じるようになり、音波の自励振動が起こりやすくなるという効果も生じる。
ここで、本実施形態におけるハニカム成形体の作製(すなわち押出成形)に用いられる口金について説明する。なお、以下では、説明の簡単化のために、主に、セル形状が四角形の場合について説明する。
図12は、本実施形態におけるハニカム成形体の作製に用いられる口金の外観斜視図であり、図13は、図12に示す口金の、図12とは反対側から見たときの外観斜視図であり、図14は、図12に示す口金の表面の一部を示す拡大平面図であり、図15は、図14に示す口金のA−A’断面を示す模式図である。
図12〜図15に示されるように、口金301は、第2の板状部303と、炭化タングステン基超硬合金製の第1の板状部307とを備えている。ここで、第2の板状部303は、鉄、鋼材、アルミ合金、銅合金、チタン合金およびニッケル合金からなる群から選択される少なくとも一種により構成されたものであり、この第2の板状部303には、ハニカム成形体の成形原料を導入するための裏孔305が形成されている。第1の板状部307には、裏孔305に連通する穴部311が形成されているとともに、穴部311に連通しセルブロック313を区画するスリット309が形成されている。この第1の板状部307は、第2の板状部303側に配設された第1の層307aと、第1の層307aに配設された第2の層307bとから構成されている。ここで、穴部311は、第1の層307aの両面に開口しており、スリット309は、第2の層307bの両面に開口している。図15には、第1の接合面310における穴部311の開口部311aが、第2の接合面における裏孔305の開口部305aと一致するように配置されている状態が示されている。以上の口金301の構成は、後述するように、口金の長寿命化を図るためのものである。
ここで、口金301の厚さは4〜10mmであることが好ましい。4mmより薄いと、成形時に口金が破壊されることがある。10mmより厚いと、ハニカム構造体を成形する際に、圧力損失が高く、成形し難いことがある。
第2の板状部303は、鉄、鋼材、アルミ合金、銅合金、チタン合金およびニッケル合金からなる群から選択される少なくとも一種により構成された板状部材から構成される。ここで、鋼材とは、ステンレス鋼、ダイス鋼およびハイス鋼からなる群から選択される少なくとも一種のことである。第2の板状部303の材質としては、これらの中でも、鋼材が好ましく、ステンレス鋼が更に好ましい。
なお、本願においては、「鉄、鋼材、アルミ合金、銅合金、チタン合金およびニッケル合金からなる群から選択される少なくとも一種」のことを「快削材」と称することがある。快削材は、炭化タングステン基超硬合金と比較して、容易に研削加工することができる材質(材料)である。第2の板状部303は、スリット309が形成されていないため、第1の板状部307に比べて、摩耗の問題が少ない。第2の板状部303は、快削材により形成されたものであるため、炭化タングステン基超硬合金に比べて加工性に優れている。また、炭化タングステン基超硬合金より、快削材のほうが安価であるため、製造コストを低下させることが可能である。
第2の板状部303の材質の一種であるステンレス鋼としては、公知のステンレス鋼を用いることができる。たとえば、SUS304、SUS303等を挙げることができる。また、第2の板状部303の大きさは、特に限定されず、用途に合わせて、所望の大きさにすることができる。ただし、第2の板状部303が円板状である場合、円板の直径(一方の面および他方の面の直径)は20〜40mmであることが好ましい。また、第2の板状部303の厚さについては2〜8mmが好ましい。2mmより薄いと成型抵抗による応力による変形、破損を生じ、8mmより厚いと成型抵抗が過大になり成型体の押し出しが困難となる。
上述したように、第2の板状部303には、成形原料を導入するための裏孔305が形成されており、裏孔305は、成形原料を導入するための貫通孔(第2の板状部303の両面に開口する孔)である。この口金301を用いてハニカム構造体を成形するときには、裏孔305からハニカム構造体の成形原料が導入される。裏孔305の形状については、導入された成形原料を、穴部311およびスリット309に導くことができるような形状であれば特に制限はないが、裏孔305を成形原料が流れる方向(第2の板状部の厚さ方向)に直交する断面における形状が、円形であることが好ましい。また、裏孔305の開口部の直径は0.15〜0.45mmであることが好ましく、0.25〜0.40mmであることが更に好ましい。このような裏孔305は、例えば、電解加工(ECM加工)、放電加工(EDM加工)、レーザ加工、ドリル等の機械加工等の方法によって形成することができる。これらの方法の中でも、効率的に、精度良く裏孔305を形成することが可能であることより、電解加工(ECM加工)が好ましい。裏孔の空間は円柱形状であることが好ましい。この場合、裏孔を成形原料が流れる方向(第2の板状部の厚さ方向)に直交する断面における直径(裏孔の直径)が一定の値となる。そして、この場合、裏孔の直径は、第2の接合面における裏孔の開口部の直径と同じ値になる。また、裏孔の個数は、特に限定されず、作製しようとするハニカム構造体の形状等に合わせて適宜決定することができるが、セル形状が三角形の場合には、ハニカム隔壁交差部に対応する全ての位置に裏孔を配置することが好ましく、セル形状が 四角セルの場合には、ハニカム隔壁交差部一つおきに千鳥状に裏孔を配置することが好ましい。
第1の板状部307は、炭化タングステン基超硬合金製の板状部材から構成されている。そして、裏孔305の直径に比べて、スリット309の幅は、非常に狭く形成されている。このため、成形原料を押出成形する際に、裏孔305内の圧力が高くなって、スリット309に応力が集中し、摩耗したり変形したりする等の不具合が生じやすい。そのため、第1の板状部307は、耐摩耗性の高い材料である炭化タングステン基超硬合金によって形成されている。ここで、「炭化タングステン基超硬合金(超硬合金)」とは、炭化タングステンと結合材とが焼結した合金のことである。結合材は、コバルト(Co)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、およびクロム(Cr)からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であることが好ましい。このような炭化タングステン基超硬合金は、耐摩耗性や機械的強度に特に優れている。
第1の板状部307の大きさは特に限定されず、用途に合わせて、所望の大きさにすることができる。ただし、第1の板状部307が円板状である場合、円板の直径は、20〜40mmが好ましい。第1の板状部307および第2の板状部303が円板状である場合、第1の板状部307の直径は、第2の板状部材303の直径の90〜100%が好ましい。なお、第1の板状部307の厚さは、0.3〜1.2mmであることが好ましく、0.5〜0.9mmであることが更に好ましい。また、第1の板状部307の厚さは、第2の板状部303の厚さの0.05〜2倍であることが好ましい。
上述したように、第1の板状部307は、第2の板状部303側に配設された第1の層307aと、第1の層307aに配設された第2の層307bとから構成されている。口金301は、このように第1の板状部が、第1の層307aおよび第2の層307bの2層から構成されているため、押出成形時の応力を緩和することができ、破損を防止することができる。第1の層307aと第2の層307bの材質は、同じ種類であってもよいが、異なる種類であってもよい。
このように第1の層307aは、第1の板状部307を構成する一つの層であって第2の板状部303側に配置される層である。ここで、第1の層307aには穴部311が形成されている。第1の層307aは、ビッカース硬度が2000〜3000HVであり、ヤング率が600〜800GPaである超硬合金製の層であることが好ましい。第1の層307aは、上記のようなビッカース硬度とヤング率を有する場合、穴部311にかかる応力に耐え得る硬度と、靭性とを備えた層となる。そのため、裏孔305から穴部311に流入した成形原料の応力によって、第1の板状部307が割れるなどの不具合を防止でき、口金の寿命を長くすることができる。穴部311は、第1の層307aの両面に開口するように形成されている。
第1の層307aのビッカース硬度は、2000〜3000HVであることが好ましく、2000〜2200HVであることが更に好ましい。上記所定のビッカース硬度を有することにより、第1の層307aは、裏孔305から穴部311に流入したセラミック原料の応力に耐え得る硬度を備えることができる。そのため、穴部311が磨耗することを防ぐことができる。第1の層307aのビッカース硬度が2000HV未満である場合には、強度不足で磨耗が生じることがある。また、第1の層307aのビッカース硬度が3000HV超である場合には、硬すぎることにより、第1の層307aが割れ易くなることがある。また、第1の層307aのヤング率は、600〜800GPaであることが好ましく、600〜700GPaであることが更に好ましい。これにより、第1の層307aの破損を防止することができる。第1の層307aのヤング率が、600GPa未満である場合には、靭性が小さすぎることにより、割れてしまうなどの不具合が生じることがある。また、ヤング率が800GPaを超える場合には、靭性が大きすぎて穴部311が変形してしまうおそれがある。穴部311が変形した口金を使用してハニカム構造体を成形すると、ハニカム構造体に歪みが生じ成形性が低下する。
上述したように、第2の層307bは、第1の板状部307を構成する1つの層であり、第1の層307aに配設されている。第2の層307bには、スリット309が形成され、スリット309は、第2の層307bの両面に開口するように形成されている。ここで、「第2の層307bの両面」とは、第2の層307bの、第1の層307aに接する(接合している)面と、この第1の層307aに接する面に対して反対側(裏側)の面との両方の面を意味する。図15では、スリット309の成形原料の吐出口は、スリット309の開口部309aとして示されている。第2の層307bは、ビッカース硬度が500〜3000HVであり、ヤング率が400〜700GPaであることが好ましい。第2の層307bがこのようなビッカース硬度とヤング率とを有する場合、スリット309にかかる応力に耐え得る十分な靭性および硬度を備えた層となる。このため、スリット309の変形や磨耗を防ぐことができる。
第2の層307bは、ビッカース硬度が500〜3000HVであることが好ましく、ビッカース硬度が2000〜3000HVであることが更に好ましい。このようなビッカース硬度を有することにより、第2の層307bの磨耗を抑制することができる。第2の層307bのビッカース硬度が500HV未満である場合には、硬度不足で簡単に磨耗が生じることがある。また、ビッカース硬度が3000HV超である場合には、第2の層307bが割れやすくなることがある。
第2の層307bは、ヤング率が400〜700GPaであることが好ましく、ヤング率が500〜700GPaであることが更に好ましい。第2の層307bがこのようなヤング率を有することで、割れにくくなる。第2の層307bのヤング率が400GPa未満である場合には、靭性が小さすぎることにより割れなどの不具合が生じやすい。また、ヤング率が700GPa超であると、今度は靭性が大きすぎることにより、第2の層307bが変形しやすい。
さらに、口金301は、第2の層307bのビッカース硬度とヤング率が、第1の層307aのビッカース硬度とヤング率よりも大きいものであることが好ましい。すなわち、第2の層307bのビッカース硬度が、第1の層307aのビッカース硬度よりも大きく、第2の層307bのヤング率が、第1の層307aのヤング率よりも大きいことが好ましい。このような関係により、スリット309が形成された第2の層307bは、摩耗しにくく、穴部311が形成された第1の層307aは割れにくくなる。そして、磨耗を抑制する第2の層307bと、割れを抑制する第1の層307aとにより、口金の更なる長寿命化が図られる。
口金301においては、第2の層307bのビッカース硬度が第1の層307aのビッカース硬度よりも、1000〜2500HV大きく、第2の層307bのヤング率が、第1の層307aのヤング率よりも50〜300GPa大きいことが好ましい。これにより、耐摩耗性を備えた第2の層307bと、高い靭性を備えた第1の層307aを確実に第1の板状部307に形成することができ、口金の寿命を長くすることができる。
また、第1の層307aの厚さが0.1〜5mmであることが好ましく、第1の層307aの厚さが0.2〜5mmであることが更に好ましい。第1の層307aが上記範囲内の厚さに形成されることにより、第2の板状部の摩耗を効果的に抑制することができる。第1の層307aの厚さが0.1mm未満であると、第2の板状部が摩耗し易くなることがある。また、第1の層307aの厚さが5mmを超えると、口金の厚さが厚いために押出成形時の圧力が高くなりすぎることがある。
また、第2の層307bの厚さが0.3〜4mmであることが好ましく、1〜4mmであることが更に好ましい。第2の層307bが上記範囲内の厚さに形成されることにより、押出成形されたハニカム構造体の変形を抑制することが可能となる。第2の層307bの厚さが0.3mm未満であると、押出成形されたハニカム構造体の形状が変形することがあり、第2の層307bの磨耗や変形が生じる可能性がある。また、第2の層307bの厚さが4mmを超えると第2の層307bが厚くなってスリットの深さ(成形原料を押し出す方向におけるスリットの長さ)が大きすぎることで、押出成形時の圧力が高くなりすぎることがある。また、スリットに囲まれる部位が極端に細長くなり、坏土との摩擦により断裂してしまうこともある。これらの事態を防ぐ観点からスリットの深さは大きくはできない。一方、スリットの深さを適度に浅くすると、複数のスリットの間でスリットの深さについての相対的なばらつきが大きくなる。この結果、押出成形されたハニカム構造体の形状に適度のばらつきが生じるようになり、音波の自励振動が起こりやすくなる。
上述したように、第1の板状部307には、穴部311に連通し、成形原料を成形するためのスリット309が形成されている。スリット309は、第1の板状部307に形成された隙間(切れ込み)である。裏孔305から導入された成形原料が、口金内でスリット309に入り、さらに、スリット309の開口部309aから成形原料が押し出されて、ハニカム形状の成形体が形成される。
上述したように、スリット309は、第2の層307bの両面に開口している。スリット309は、第2の層307bのみに形成されていてもよいが、第1の層307aにも形成されていることが好ましい。第1の層307aに形成されるときには、第2の層307bに形成されたスリット309が第1の層側に延長されるようにして第1の層307aに形成されていることが好ましい。この場合、第1の層307aに形成されるスリット309は、第1の層307aの、第2の層307bに接する面に形成されることになる。また、この場合、スリット309の深さが、第2の層307bの厚さよりも深く形成されていることになる。スリット309の深さは0.3〜1.0mmであることが好ましく、0.4〜0.8mmであることが更に好ましい。スリット309の、第1の層側に延長された部分の深さは0.1〜0.5mmであることが好ましく、0.2〜0.5mmであることが更に好ましい。これにより、良好なハニカム形状の成形体を形成することができる。また、スリット309の幅が0.03〜0.05mmであることが好ましく、0.04〜0.05mmであることが更に好ましい。
上述したように、第1の板状部307の第1の層307aには穴部311が形成されており、この穴部311は、第2の板状部303に形成される裏孔305、および、第1の板状部307に形成されるスリット309に連通するように形成される。また、この穴部311は、第1の板状部307の第1の層307aに形成された貫通孔でもある。すなわち、穴部311は、第2の層307bの第2の板状部303に接する側の面(第1の板状部307の第1の接合面310)に開口するとともに、第2の層307bの第1の層307aに接する側の面(第2の層の一方の面307ba)」に開口する貫通孔でもある。第1の接合面310は、図15に示されるように、第1の板状部307の、第2の板状部303に接合されている(接している)面である。このような穴部311が形成されることにより、第2の板状部303に形成された裏孔305から導入された成形原料が、この穴部311を通過してスリット309に入る。そして、スリット309の開口部309aから成形原料が押し出され、ハニカム形状の成形体(ハニカム構造体)が形成される。穴部311は、深さh(図15参照)が0.1〜4mmであることが好ましく、0.2〜3mmであることが更に好ましい。このように、穴部311の深さhが上記範囲であることにより、第2の板状部303の摩耗を効果的に抑制することができる。穴部の深さhが、0.1mm未満であると、成形原料を押出成形する際に第1の板状部307の強度が低下し易くなる。穴部の深さhが4mmを超えると、口金作製の際に、第1の板状部材を加工して穴部を形成することが困難となりやすい。ここで、穴部311の深さhは、図15に示されるように、第1の板状部307の第1の接合面310から、第2の層307bの一方の面307baまでの距離である。なお、この穴部311の深さは、第1の層307aの厚さと一致する。穴部311の開口部311aの直径は0.15〜0.4mmであることが好ましく、0.2〜0.4mmであることが更に好ましい。穴部311は、例えば、電解加工(ECM加工)、放電加工(EDM加工)、レーザ加工、ドリル等の機械加工等の方法によって形成することができる。これらの中でも、効率的に、精度良く穴部311を形成することが可能であることより、電解加工(ECM加工)が好ましい。穴部311の空間は、円柱形状であることが好ましい。この場合、穴部311の成形原料が流れる方向(第1の板状部の厚さ方向)に直交する断面における直径(穴部311の直径)が一定の値となる。このとき、穴部311の直径は、第1の接合面310における穴部の開口部311aの直径と同じ値になる。また、穴部311の個数は、裏孔の個数と同じであることが好ましい。
図15に示されるように、口金301は、第1の接合面310における穴部311の開口部311a(円形)の直径d1が、第2の接合面306における裏孔の開口部305a(円形)の直径D1と同じ大きさに形成されている。ここで、第2の接合面306は、図15に示されるように、第2の板状部303の、第1の板状部307に接合されている(接している)面である。第1の接合面310における穴部311の開口部311aは、第1の接合面310に開口する、貫通孔の入口部分(成形原料の流入部分)である。また、第2の接合面306における裏孔305の開口部305aは、裏孔305の第2の接合面306に開口する、第2の接合面306側の出口部分(成形原料の出口部分)である。成形原料は、この出口部分を通過すると同時に、穴部311に供給される。
ここで、押出成形を行うにあたっては、口金を固定する押さえ板構造が備えられていることが好ましい。
図16は、押さえ板構造の一例を表した図である。
図16に示す押さえ板構造では、図16の下向き矢印の向きに成形原料は押し出される。このとき、裏押さえ部403により、流入する坏土の量を調整することができる。口金401は、押さえ部402によって固定されており、口金401と押さえ部402との間隙405より押し出される成形原料は傾斜面406および対向面407とでハニカム成形体404の外周部分を調整形成する。
図17は、図16とは別の押さえ板構造の一例を表した図である。
図17に示す押さえ板構造では、図17の下向き矢印の向きに成形原料は押し出される。この押さえ板構造には、成形原料を供給する裏孔553と、成形原料を押し出すスリット552を有する口金554と、その口金554の下流側に設けた押さえ板555とが備えられている。口金554は内側部571と外周部572とからなる。内側部571は下流側(図17中の下方)に突出して外周部572との間に段差部575を形成しており、この内側部571には、ハニカム構造を成形するスリット573が備わっている。一方、外周部572には、スリット573より短いスリット574が備わっている。口金554と押さえ板555との間には、ハニカム構造の外壁を成形する隙間部557が形成されている。なお、押さえ治具558および裏押さえ板559は、口金554と押さえ板555とをセットするためのホルダーである。
図17に示す押さえ板構造を用いた押出成形においては、成形原料は、口金554の上流側(図17中の上方)から押出機(図示しない)によって口金554を通じて下流側に向かって押し出される。下流側が開放された口金554の内側部571に備えられているスリット573から押し出された成形原料は、多数のセルからなるハニカム構造に成形される。一方、口金554の外周部572に備わるスリット574から押出された成形原料は、隙間部557の作用によって、ハニカム形状が潰されるとともに、押し出し方向から段差部575方向へと進行方向を変え、押さえ板555が開口したところで、再び押出方向へと進行方向を変え、セルを取り囲む外壁を形成する。
図18は、さらに別の押さえ板構造の一例を表した図である。図19は、図18とはさらに別の押さえ板構造の一例を表した図である。
図18(a)に示す押さえ板構造は、図18(b)に示すように正三角形の周期的な配列を形成するスリット602を有する口金604を有している。この口金604は、正三角形のセル形状を有するハニカム構造体を成形するためのものであり、押さえ板605により固定されている。ここで、スリット602は、裏孔603に連通している。この押さえ板構造では、スリット602の長さL1、スリット602の長さL1から段差部615の段差の長さを引いた長さL2、スリット602の幅W、および、押さえ板605と段差部615との間の距離dにより、成形されるハニカム成形体の形状(寸法)が決定される。
図19は、図18とはさらに別の押さえ板構造の一例を表した図である。
図19(a)に示す押さえ板構造は、図19(b)に示すように正方形の周期的な配列を形成するスリット702を有する口金704を有している。この口金704は、正方形のセル形状を有するハニカム構造体を成形するためのものであり、押さえ板705により固定されている。ここで、スリット702は、裏孔703に連通している。この押さえ板構造も、スリット702の長さL1、スリット702の長さL1から段差部715の段差の長さを引いた差の長さL2、スリット702の幅W、および、押さえ板705と段差部715との間の距離dにより、成形されるハニカム成形体の形状(寸法)が決定される。
図18および図19の押さえ板構造のいずれにおいても、スリット702の長さL1は、0.3〜1.0mmであることが好ましく、0.4〜0.8mmであることがさらに好ましい。また、差の長さL2は0.1〜0.5mmであることが好ましい。
以下、押出成形によって得られたハニカム成形体のその後の処理について説明を続ける。
得られたハニカム成形体について、焼成前に乾燥を行う。乾燥の方法は特に限定されず、例えば、マイクロ波加熱乾燥および高周波誘電加熱乾燥等の電磁波加熱方式と、熱風乾燥および過熱水蒸気乾燥等の外部加熱方式とを挙げることができる。また、電磁波加熱方式で一定量の水分を乾燥させた後、残りの水分を外部加熱方式により乾燥させることも可能である。この場合、電磁波加熱方式にて、乾燥前の水分量に対して、30〜90質量%の水分を除いた後、外部加熱方式にて、3質量%以下の水分にすることが好ましい。電磁波加熱方式としては誘電加熱乾燥が好ましく、外部加熱方式としては熱風乾燥が好ましい。
各セルの貫通方向に沿ったハニカム成形体の長さが所望の長さではない場合は、両端面(両端部)を切断して所望の長さとすることが好ましい。切断方法は特に限定されないが、丸鋸切断機等を用いる方法を挙げることができる。
次に、このハニカム成形体を焼成する。ここで、焼成の前には、バインダ等を除去するため、仮焼成を行うことが好ましい。また、仮焼成は大気雰囲気において、400〜500℃で0.5〜20時間行うことが好ましい。仮焼成及び焼成の方法は特に限定されず、電気炉およびガス炉等を用いて焼成することができる。焼成条件は、たとえば、珪素−炭化珪素系複合材料を用いた場合には、窒素およびアルゴン等の不活性雰囲気において、1300〜1500℃で、1〜20時間加熱することが好ましい。一方、酸化物系材料を用いた場合には、酸素雰囲気で、1300〜1500℃で1〜20時間加熱することが好ましい。
最後に、所望の熱・音波変換部品1の断面形状(たとえば、図11Aのような円形)が実現するのに必要であれば、焼成後のハニカム成形体の外周部分を、適宜、切削加工して形状を整える。さらに、切削加工後のハニカム成形体の外周面に外周コート材を塗布して乾燥させ外周壁13を形成する。ここで、外周コート材としては、無機粒子とコロイド状酸化物を含む原料に、有機バインダ、発泡樹脂、分散剤等の添加材を加えたものに水を加えて混練したスラリー等を挙げることができる。ここで、無機粒子としては、たとえば、コージェライト、アルミナ、アルミニウムチタネート、炭化珪素、窒化珪素、ムライト、ジルコニア、燐酸ジルコニウム、および、チタニア、のうちの1つ、あるいは、2つ以上の組み合わせからなるセラミックス材料の粒子や、Fe−Cr−Al系金属、ニッケル系金属、珪素(金属珪素)−炭化珪素系複合材料の粒子を挙げることができる。一方、コロイド状酸化物としては、シリカゾル、アルミナゾル等が挙げられる。また、外周コート材を塗布する方法は特に限定されず、切削加工後のハニカム成形体をろくろ上で回転させながらゴムベラ等でコーティングする方法等を挙げることができる。
以上の工程を経て、最終的に図11Aの熱・音波変換部品1が完成する。
次に、図3の高温側熱交換器2の製造方法について説明する。
図3の高温側熱交換器2における熱交換ハニカム構造体20については、上記の図11Aの一体型の熱・音波変換部品1の製造方法において、セラミック原料としてSiC粉末に炭素粉末(黒鉛粉末等)を加えたものを用い、押出成形の際の口金として相対的にセルの水力直径HDの大きいハニカム成形体の作製に適した口金を用いることを別にすれば、上記の図11Aの熱・音波変換部品1の製造方法と同様の製造方法で作製することができる。
この熱交換ハニカム構造体20の作製においては、たとえば、Si含浸SiC複合材料を主成分とする熱交換ハニカム構造体20を製造する場合には、SiC粉末および炭素粉末を混合・混練して調整された坏土を成形してハニカム成形体を作製した後、乾燥処理および焼結処理を行った後に、溶融した珪素(Si)をこのハニカム成形体に含浸させる処理を行うことが好ましい。この処理を行うことで、焼結処理後に、SiC粒子の表面を金属Si(金属珪素)の凝固物が取り囲むとともに、金属Siを介してSiC粒子同士が接合した構造が形成される。この構造により、気孔率が小さく緻密な構造であって高い熱耐久性および熱伝導性が実現する。
なお、溶融した珪素(Si)だけでなく、Al、Ni、Cu、Ag、Be、Mg、Ti等といったその他の金属に含浸させてもよい。この場合、焼結処理後に、SiC粒子の表面を金属Si(金属珪素)、および含浸に用いたその他の金属の凝固物が取り囲むとともに、金属Si、および含浸に用いたその他の金属を介してSiC粒子同士が結合した構造が形成される。この構造によっても、気孔率が小さく緻密な構造であって高い熱耐久性および熱伝導性が実現する。
なお、熱交換ハニカム構造体20の外周コート材においても、上記と同様の理由で、外周コート材の材料(熱・音波変換部品1の接合材の材料)となる無機粒子の候補として上述した材料の粒子のうち、珪素(金属珪素)−炭化珪素系複合材料の粒子を用いることが好ましい。
また、外周コート材の塗布により形成された外周壁に対して、セルの貫通方向に沿ってスリットを形成するスリット形成処理を行うことが好ましい。なお、スリット形成処理を行う場合には、以下に説明する高温側環状管21の作製において、耐熱性金属板21dやフィン21eを形成する。
図3の高温側熱交換器2における高温側環状管21については、耐熱性の高い材料を環状に成形する(ただし、熱交換ハニカム構造体20との結合時に熱交換ハニカム構造体20の外周壁の一部が高温側環状管内で露出するような、中央側の壁面の一部が欠落した環状に成形する)ことで作製できる。耐熱性の高い材料については特に限定されないが、具体的には、たとえば、高耐熱性ステンレスや銅等の金属、さらには、セラミックス材料(たとえば、図11Aの熱・音波変換部品1や熱交換ハニカム構造体20の材料として挙げたもの)を採用できる。
図3の高温側熱交換器2は、基本的には、高温側環状管21の環状における、穴となっている中央部に熱交換ハニカム構造体20を組み込むことによって完成する。
次に、図3の低温側熱交換器3の製造方法について説明する。従来から知られている熱交換器を低温側熱交換器3として用いる場合には、従来から知られている熱交換器の製造方法を流用することができる。また、上述の高温側熱交換器2と同じ構成のものを低温側熱交換器3として用いる場合には、上述の高温側熱交換器2の製造方法と同じ製造方法を用いることができる。
図3の熱・音波変換ユニット100を構成するその他の部材、たとえば、金属部材32やハウジング100aや干渉材1aについては、従来から知られているものを採用でき、その製造方法についても従来から知られているものを流用することができる。
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1においては、まず、セラミック原料としてコージェライト化原料を用い、コージェライト化原料100質量部に対して、分散媒を35質量部、有機バインダを6質量部、分散剤を0.5質量部、それぞれ添加し、混合、混練して坏土を調製した。コージェライト化原料としては、平均粒子径が3μmのタルクを38.9質量部、平均粒子径が1μmのカオリンを40.7質量部、平均粒子径が0.3μmのアルミナを5.9質量部、及び平均粒子径が0.5μmのベーマイトを11.5質量部、用いた。ここで、平均粒子径とは、各原料の粒子の分布におけるメジアン径(d50)のことである。
分散媒としては、水を用いた。有機バインダとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いた。分散剤としては、エチレングリコールを用いた。
次に、得られた坏土を、口金を用いて押出成形し、セル形状が三角形で、全体形状が六角形のハニカム成形体を複数個作製した。なお、このときの押出成形においては、上述したように、実施例1の熱・音波変換部品に対応した正規口金による押出成形の実行前に、リブの厚さが0.07mm程度のダミー口金での坏土の押出処理が行われた。そして、このダミー口金を用いた押出処理後の坏土を用いて正規口金による押出成形が実行された。さらに、このとき、正規口金による押出成形に用いる坏土における水の比率が、坏土固形成分100質量部に対し41質量部(誤差は±1質量部の範囲内)となるように坏土成分を厳格に制御した。
なお、このときの口金の押さえ板構造としては、図18に示す押さえ板構造を用いた。
この押さえ板構造では、スリットの長さL1(図18参照)が0.5mmであり、スリットの長さL1から段差部の段差の長さを引いた差の長さL2(図18参照)は0.2mmである。また、スリットの幅W(図18参照)が0.05mmであり、押さえ板と段差部との間の距離d(図18参照)は0.5mmである。
そして、このハニカム成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させた後、ハニカム成形体の両端面を切断し、セルの貫通方向に沿ったハニカム成形体の長さを調整した。そのハニカム成形体を熱風乾燥機で乾燥し、更に、1445℃で、5時間、焼成した。
最後に、焼成後のハニカム成形体の外周部分を、適宜切削加工して円形状に整えた。さらに、切削加工後のハニカム成形体の外周面に外周コート材を塗布して乾燥させ外周壁13を形成した。ここで、外周コート材としては、コージェライトの粒子とシリカゾルを含む原料に、有機バインダ、発泡樹脂、分散剤を加えたものに水を加えて混練したスラリーを用いた。また、外周コート材を塗布する方法としては、切削加工後のハニカム成形体をろくろ上で回転させながらゴムベラ等でコーティングする方法を用いた。
以上の工程を経て、最終的に実施例1の熱・音波変換部品が完成した。
完成した実施例1の熱・音波変換部品について、セルの貫通方向に垂直な平面(垂直面)内の断面における、セルの水力直径HD、端面における開口率、隣接セル間の隔壁の厚さを測定した。さらに、この断面を、縦1mm×横1mmの矩形の領域を単位区画として複数個の単位区画に分割し、これら複数個の単位区画から、前記外周壁の断面を含む単位区画を取り除いた残りの単位区画からなる内側単位区画について開口率を測定した。
なお、セルの水力直径HDについては、上記垂直面内における熱・音波変換部品の断面の拡大写真を撮り、この断面の拡大写真中において、任意に100個のセルを選択し、これら100個のセルでそれぞれのセルについて水力直径HDを定義式(セルの断面の面積をS、該断面の周長をCとしたときにHD=4×S/C)に従って計算することで算出した。また、隣接セル間の隔壁の厚さについては、この断面の拡大写真中において、任意に100個の隣接セルの組を選択し、それぞれの組について隣接セル間の隔壁の厚さを測定した。また、内側単位区画の開口率については、この断面の拡大写真中において、任意に100個の内側単位区画を選択し、これら100個の内側単位区画それぞれについて開口率を測定した。
ここで、この測定では、選択した100個のセル、選択した100個の隣接セルの組、および、選択した100個の内側単位区画、により、この断面中の、全セル、全隣接セルの組、および、全内側単位区画を代表させている。
なお、開口率は、上記垂直面における断面を顕微鏡で撮影し、このときの断面の撮影画像から、材料部分面積S1と空隙部分面積S2を求め、S1とS2を用いてS2/(S1+S2)として求めた。この点は、断面全体における開口率の算出と各内側単位区画における開口率の算出とで共通である。なお、断面全体における開口率は、端面における開口率と等価であるとして、断面全体における開口率を端面における開口率とみなしている。
以上の測定によって得られた測定値から、以下の5種類のパラメータの値を得た。なお、以下の5種類のパラメータの中には、互いに独立ではなく連動して変化するものも含まれているが、都合上、それらも含めて記載している。
(1)セルの貫通方向に垂直な平面(垂直面)内での、熱・音波交換部品の100個のセルについてのセルの水力直径HDの平均値
(2)上記垂直面における熱・音波交換部品の断面全体の開口率(端面の開口率と同じ)
(3)熱・音波変換部品の上記100個のセルの間の、水力直径HDの分布における相対標準偏差(分布の標準偏差値を算術平均値で割ったもの)
(4)熱・音波変換部品の100組の隣接セルの間の、隣接セル間の隔壁の厚さの分布における相対標準偏差(定義は(3)と同じ)
(5)熱・音波変換部品の100個の内側単位区画の間の、内側単位区画の開口率の分布における相対標準偏差(定義は(3)と同じ)
この実施例1の熱・音波変換部品を用いて以下の実験を行った。
この実験の内容は以下のとおりである。まず、図1の電力発生システム1000において、熱・音波変換部品1の代わりに実施例1の熱・音波変換部品を組み込んだ。そして、低温側熱交換器3に対しては60℃の水を流入させ、熱・音波変換部品の低温側熱交換器3側の端部の温度を60℃に保った。この状態で、高温側熱交換器2に対し自動車の排気ガスを流入させた。そして、流入させる自動車の排気ガスの温度を、60℃程度から少しずつ上昇させていった。このとき、図1の電力発生システム1000のエネルギー変換器としてマイクロフォン等を用い、エネルギー変換器で発生した電力量を監視することで、音波が発生するようになった温度(熱音波変換の開始温度(℃))を求めた。そして、低温側熱交換器3側の端部の絶対温度(単位はK)すなわち333K(60℃+273℃)に対する、熱音波変換が開始された絶対温度(熱音波変換の開始温度(℃)+273℃)の比を算出した。
(実施例2および比較例1)
上述の実施例1の製造方法とは、押出成形の際に用いる口金が異なる点を除き同じ製造方法を用いて、上述の5種類のパラメータのうちセルの水力直径HDの平均値の値のみが実施例1とは異なる実施例2および比較例1の熱・音波変換部品を作製した。これら実施例2および比較例1では、セルの水力直径HDの平均値の値は互いに異なるが、セルの水力直径HDの分布における水力直径HDのばらつきの程度は実施例1と同じである。すなわち、水力直径HDの値が全データについて全体的に変化していることになる。
(実施例3,4および比較例2,3)
上述の実施例1の製造方法とは、押出成形の際に用いる口金が異なる点を除き同じ製造方法を用いて、上述の5種類のパラメータのうち熱・音波交換部品の断面全体の開口率の値のみが実施例1とは異なる実施例3,4および比較例2,3の熱・音波変換部品を作製した。
そして、これらの実施例3,4および比較例2,3について、実施例1と同様の実験を行った。
(実施例5,6および比較例4,5)
上述の実施例1の製造方法とは、押出成形の際に用いる口金が異なる点を除き同じ製造方法を用いて、上述の5種類のパラメータのうち、水力直径HDの分布における相対標準偏差の値、隔壁の厚さの分布における相対標準偏差、内側単位区画の開口率の分布における相対標準偏差、のみが実施例1とは異なる実施例5,6および比較例4,5の熱・音波変換部品を作製した。これら実施例5,6および比較例4,5は、水力直径HDの分布における相対標準偏差の値のみが実施例1とは異なるが、セルの水力直径HDの平均値の値や、熱・音波交換部品の断面全体の開口率の値は実施例1と同じである。すなわち、これら実施例5,6および比較例4,5では、水力直径HDの平均値や、熱・音波交換部品の断面全体の開口率を保ったまま、水力直径HDの分布や内側単位区画の開口率の分布については異なるものとなっている。
以上説明した実施例1〜6および比較例1〜5の実験結果を、各パラメータの値とともに下記の表1に示す。なお、下記の表1には、参考のために、100組の隣接セルの間の、隣接セル間の隔壁の厚さの平均値についても記載しており、この隔壁の厚さの平均値は、いずれの実施例および比較例においても0.05mmであった。
表1において、水力直径HDの平均値の値が互いに異なる実施例1,2および比較例1を比較すればわかるように、実施例1,2は比較例1に比べ、熱音波変換の開始温度の比が小さい。このことより、水力直径HDの平均値の値が0.4mm以下であることが、熱音波変換の始動性の向上を図る上で望ましいことがわかる。
また、表1において、熱・音波交換部品の断面全体の開口率の値が互いに異なる実施例3,4および比較例2,3を比較すればわかるように、実施例3,4は、比較例2に比べ、熱音波変換の開始温度の比が小さい。なお、比較例3では、実験の途中で損傷が発生して実験を中止したため、音波変換の開始温度の比についての最終的な結果は得られてなかった。これは、開口率が高すぎて強度や耐久性が不足したためだと思われる。これらのことより熱・音波変換部品の断面全体の開口率の値(端面における開口率の値)が60%以上93%以下であることが、十分な強度を維持しつつ熱音波変換の始動性の向上を図る上で望ましいことがわかる。
また、表1において、水力直径HDの分布における相対標準偏差の値(および、隣接セル間の隔壁の厚さの分布における相対標準偏差、または、内側単位区画ごとの開口率の分布における相対標準偏差)の値が互いに異なる実施例5,6および比較例4,5を比較すればわかるように、実施例5,6は、比較例4,5に比べ、熱音波変換の開始温度の比が小さい。このことより水力直径HDの分布における相対標準偏差の値が2%以上30%以下であることが、熱音波変換の始動性の向上を図る上で望ましいことがわかる。
また、このときの実施例5,6および比較例4,5の比較から、隣接セル間の前記隔壁の厚さの分布が3%以上22%以下の相対標準偏差を有することが、熱音波変換の始動性の向上を図る上で望ましいことがわかる。また、内側単位区画におけるセルの開口率の分布が7%以上40%以下の相対標準偏差を有することが、熱音波変換の始動性の向上を図る上で望ましいことがわかる。
以上では、熱音波変換の始動性の実験結果の説明であるが、さらに、上述した押出成形時の2つの工夫の効果を確認するための参考実験として、以下の押出成形の実験を行った。
(1)リブの厚さが0.09mmのダミー口金を用いた以外は、実施例1と同じ方法で熱・音波変換部品の押出成形を試みた。
(2)リブの厚さが0.10mmのダミー口金を用いた以外は、実施例1と同じ方法で熱・音波変換部品の押出成形を試みた。
(3)リブの厚さが0.04mmのダミー口金を用いた以外は、実施例1と同じ方法で熱・音波変換部品の押出成形を試みた。
(4)リブの厚さが0.03mmのダミー口金を用いた以外は、実施例1と同じ方法で熱・音波変換部品の押出成形を試みた。
(5)坏土中の水の比率が、坏土固形成分100質量部に対し43質量部程度(誤差1質量部以内)となる坏土用いた以外は、実施例1と同じ方法で熱・音波変換部品の押出成形を試みた。
(6)坏土中の水の比率が、坏土固形成分100質量部に対し39質量部程度(誤差1質量部以内)となる坏土用いた以外は、実施例1と同じ方法で熱・音波変換部品の押出成形を試みた。
結果としては、(1)および(3)では、問題なく成形できたが、(2)および(6)では、坏土が成形用口金の孔内に目詰まりを起こしてできなかった。(4)では、ダミー口金による押出成形時に多大な圧力が必要となり、口金の損傷の可能性が生じたので実験を中止した。(5)では、押出成形で得られた成形体が自重で容易に変形してしまい、所望の形状のものが得られなかった。
これらの結果と実施例1での押出成形が成功していることとを加味すると、リブの厚さが0.04mm以上0.09mm以下のダミー口金を用いて事前の押出処理を行い、坏土中の水の比率が、坏土固形成分100質量部に対し40〜42質量部のものを用いるのが、好ましいことがわかる。