JP2016060184A - 延伸装置、フィルム製造設備及び方法 - Google Patents

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【課題】延伸での条件の設定条件が広くても、フィルムに均一な光学性能を発現させることができる延伸装置、フィルム製造設備及び方法を提供する。【解決手段】テンタは、フィルムの長手方向Z1の上流側から順に、予熱区間45,延伸区間46、緩和区間47、冷却区間48を有する。テンタは、送風機33からの空気で、予熱区間45,延伸区間46、緩和区間47を通過するフィルム12の乾燥をすすめるとともに全幅域を加熱する。テンタの加熱部61〜68は、幅方向Z2で移動する。これらの加熱部61〜68のうち、加熱部62,64,65は、製品領域12pの側部12psを加熱する。【選択図】図4

Description

本発明は、延伸装置、フィルム製造設備及び方法に関する。
位相差フィルム等の光学用途のフィルムに対して求められる品質は多様化してきていることから、フィルムの品種は増加している。フィルムの品種としては、例えば、ポリマーや添加剤といった成分が異なるものや、長尺のフィルムについていえばその幅が異なるものなどがある。品種毎に製造条件は異なるのが通常であるから、品種毎に製造設備があることが望ましいものの、多数の製造設備を設置するための場所の確保は難しく、また、製造コストを低く抑えるためにも既存の製造設備で多品種を製造して個々の製造設備の稼働率を上げる方が現実的である。
ポリマーや添加剤の種類、製品幅が異なると、各品種に求められる諸性能を発現させるために製造条件も個々に設定する必要がある。中でも、長尺のフィルムを幅方向での延伸を経て製造する場合には、目的とする光学性能に応じて延伸条件を設定している。例えば、幅方向での延伸においてフィルムの幅方向での端部を中央部よりも1℃〜30℃高い温度に加熱する位相差フィルムの製造方法がある(特許文献1参照)。また、目的とする配向度になるように、幅方向での延伸においてフィルムの端部の温度を上げる光学フィルムの製造方法(特許文献2参照)や、幅方向での延伸後の緩和工程を経たフィルムの遅相軸のずれ量に応じて、以降の緩和工程の際に、フィルムの側部をより高い温度に加熱する光学フィルムの製造方法(特許文献3参照)がある。
特開2002−296422号公報 特開2012−135882号公報 特開2011−115985号公報
幅方向での延伸を行う既存の製造設備で例えば多品種を切り替えて製造する場合には、延伸条件の変化に対して敏感な光学性能を種々の品種において目的通りに発現させるために、延伸に際して制御する温度や延伸倍率等の条件の設定範囲が広くなってしまう。特許文献1〜3の方法は、特定の品種において光学性能を目的通りに発現させるには一定の効果はあるものの、上記のように延伸での条件の設定範囲が広くなると対応することができない場合がある。
また、液晶ディスプレイ等の表示装置を用途とする光学フィルムに対しては薄膜化の要請があり、従来品よりも薄くしても従来品と同等の表示性能を保証すること、すなわち厚みに関わらず光学性能は同等であることが必要にある。ところが、光学性能の中には厚みと一定の相関性があるものがあり、例えば位相差は厚みに比例する。このため,従来品と同等の位相差を発現させた場合には、その薄膜化によって単位厚みあたりの位相差は大きくなる。したがって、従来品よりも薄い光学フィルムは、製品内における厚みのばらつきの程度(厚みの差)が従来品と同等であっても、位相差のばらつきの程度が従来品に比べて大きくなってしまう。そこで、薄膜化する場合には、製品内における厚みのばらつきをより小さくすることと、これ以外の方法で位相差を均一化する必要が生じる。このように、光学性能の中には、薄膜化するほどより均一にしなければならないものがあり、製造する光学フィルムの厚みに応じて光学性能の調整の程度を変える必要がある。したがって、厚みが異なる品種を製造するとなると、延伸に際して制御する温度や延伸倍率等の条件の設定範囲はますます広くなる。
そこで、本発明は、延伸での条件の設定条件が広くても、フィルムに均一な光学性能を発現させる延伸装置、フィルムの製造設備及び方法を提供することを目的とする。
本発明の延伸装置は、送風部と、一対の加熱部と、移動機構と備え、長尺のフィルムの側部を保持する複数の保持部材の移動によりフィルムを長手方向に搬送しながら幅方向に延伸する。送風部は、保持部材の移動により搬送されるフィルムの搬送路に対向して設けられ、温度が調節された気体をフィルムの全幅域に供給してフィルムを加熱する。一対の加熱部は、送風部と搬送路との間に配され、フィルムの幅方向で保持部材と独立して移動可能に設けられてフィルムの製品とされる製品領域の両側部を加熱する。移動機構は、加熱部をフィルムの幅方向で移動させる。
保持部材がフィルムの長手方向に移動しながら幅方向に移動することにより、気体で加熱されているフィルムを幅方向に延伸する延伸区間と、延伸区間の上流に形成され、延伸区間へ向かうフィルムを気体で加熱して昇温させる予熱区間とを備え、一対の加熱部は、予熱区間と延伸区間との少なくともいずれか一方に配されることが好ましい。または、保持部材がフィルムの長手方向に移動しながらフィルムの幅方向に移動することにより、気体で加熱されているフィルムを幅方向に延伸する延伸区間と、延伸区間の下流に形成され、延伸されたフィルムの応力を緩和する緩和区間とを備え、一対の加熱部は、緩和区間に配されることが好ましい。
加熱部は、フィルムの幅方向に並んだ複数のヒータを有し、複数のヒータは独立して温度調節されることが好ましい。
送風部は、フィルムの幅方向に延びた送風口を複数有し、複数の送風口がフィルムの長手方向に並んで形成されており、加熱部は、フィルムの長手方向では隣り合う送風口と送風口との間に配されていることが好ましい。
本発明のフィルム製造設備は、流延ダイと、流延支持体と、上記の延伸装置と、切除装置とを備え、ポリマーが溶媒に溶解したドープから長尺のフィルムを形成し、フィルムの側部を保持する複数の保持部材の移動によりフィルムを長手方向に搬送しながら幅方向に延伸する。流延ダイは、ドープを連続的に流出する。流延支持体は、走行するものであり、流延ダイから流出したドープが流延されて流延膜が形成される。延伸装置は、流延支持体から流延膜を剥がして形成されたフィルムの側部を前述の保持部材が保持する。切除装置は、複数の保持部材よりも下流に設けられ、フィルムから両側部を切除して製品領域にする。
製品領域にされたフィルムをロール状に巻き取る巻取装置と、複数の保持部材と巻取装置との間に設けられ、製品領域の面内レタデーションと厚み方向レタデーションと遅相軸の方向と厚みとの少なくともいずれかひとつを検出する検出器とを備え、複数のヒータの各々の温度は、検出器の検出結果に基づいて調節されることが好ましい。
本発明のフィルム製造方法は、走行する流延支持体に、ポリマーが溶媒に溶解したドープを流延ダイから流出して流延膜を形成し、流延支持体から流延膜を剥がして形成された長尺のフィルムを、上記の延伸装置を用いて幅方向に延伸することが好ましい。
本発明によれば、延伸での条件の設定条件が広くても、フィルムに均一な光学性能を発現させることができる。
フィルム製造設備の概略図である。 テンタの概略図である。 テンタの断面概略を示す側面図である。 テンタの加熱部の概略図である。 加熱部の概略図である。
図1のフィルム製造設備10は、ドープ11から例えば光学用途のフィルム12を製造する溶液製膜設備である。ドープ11はポリマーが溶媒に溶解したものである。本実施形態ではポリマーとしてセルロースジアセテート(DAC)を用いており、溶媒としてジクロロメタンとメタノールとの混合液を用いている。しかし、ポリマーと溶媒とはこれらに限定されない。用いることができるポリマーと溶媒とについては後述する。ドープ11には、可塑剤、紫外線吸収剤、レタデーション制御剤等の各種添加剤や、フィルム同士の貼り付きを防止するためのマット剤が含まれていてもよい。
フィルム製造設備10は、流延装置15と、テンタ16と、切除装置17と、ローラ乾燥装置18と、巻取装置19とを、上流側から順に備える。流延装置15は、ドープ11から溶媒を含んだ状態の長尺のフィルム12を形成するためのものである。環状に形成されたベルト21と、ベルト21を周面で支持して長手方向へ走行させる一対のローラ22と、流延ダイ24と、剥取ローラ25とを備える。一対のローラ22の少なくとも一方は周方向に回転し、この回転により、巻き掛けられたベルト21は長手方向へ連続走行する。流延ダイ24は、この例では一対のローラ22の一方の上方に配しているが、一対のローラ22の一方と他方との間のベルト21の上方に配してもよい。
流延ダイ24は、供給されてきたドープ11を、ベルト21に対向する流出口24aから連続的に流出する。走行中のベルト21にドープ11を連続的に流出することにより、ドープ11はベルト21上で流延され、ベルト21上に流延膜26が形成される。図1においては、ドープ11がベルト21に接触して流延膜26が形成され始める位置(以下、流延位置と称する)に、符号PCを付す。
本実施形態では、ドープ11が流延されて流延膜26を支持する流延支持体として、ベルト21を用いているが、これに限定されない。ベルト21と一対のローラ22とに代えて、ドラム(図示無し)を流延支持体として用いてもよい。
一対のローラ22は、周面温度を調節する温度コントローラ(図示せず)を備える。周面温度を調節したローラ22により、ベルト21を介して流延膜26は温度を調整される。流延膜26を加熱して乾燥を促進することにより固める(ゲル化する)いわゆる乾燥ゲル化方式の場合には、ローラ22の周面温度は、例えば8℃以上20℃以下の範囲内にするとよい。また、流延膜26を冷却して固めるいわゆる冷却ゲル化方式の場合には、ローラ22の周面温度を−10℃以上8℃以下の範囲内にするとよい。こうしたゲル化により流延膜26は搬送可能な固さになる。なお、本実施形態では、乾燥ゲル化方式を用いている。
流延ダイ24からベルト21に至るドープ11、いわゆるビードに関して、ベルト21の走行方向における上流には、減圧チャンバ(図示無し)が設けられてもよい。この減圧チャンバは、流出したドープ11の上流側エリアの雰囲気を吸引してこのエリアを減圧する。また、ベルト21に対向して、流延膜26の乾燥を促進するための送風機(図示無し)を設けてもよい。
流延膜26を、テンタ16への搬送が可能な程度にまでベルト21上で固めてから、溶媒を含む状態でベルト21から剥がす。剥取ローラ25は、流延膜26をベルト21から連続的に剥ぎ取るためのものである。剥取ローラ25は、ベルト21から剥ぎ取ることで形成されたフィルム12を例えば下方から支持し、流延膜26がベルト21から剥がれる剥取位置PPを一定に保持する。剥ぎ取る手法は、フィルム12を下流側へ引っ張る手法や、剥取ローラ25を周方向に回転させる手法等のいずれでもよい。
ベルト21からの剥ぎ取りは、乾燥ゲル化方式の場合には、例えば、流延膜26の溶媒含有率が10質量%以上40質量%以下の範囲にある間に行われ、冷却ゲル化方式の場合には、例えば、流延膜26の溶媒含有率が200質量%以上300質量%以下の範囲にある間に行う。なお、本明細書においては、溶媒含有率(単位;%)は乾量基準の値であり、具体的には、溶媒含有率を求めるべき測定対象のフィルム12の質量をX、このフィルム12を完全に乾燥した後の質量をYとするときに、{(X−Y)/Y}×100で求める百分率である。なお、「完全に乾燥」とは溶媒の残留量が厳格に「0」である必要はなく、例えば本実施形態では、測定対象のフィルム12に対して、120℃以上、相対湿度10%以下の恒温槽内で3時間以上の乾燥処理を行った後の質量をYとしている。
以上のように流延装置15は、ドープ11から溶媒を含んだ状態のフィルム12を長尺に形成する。ベルト21は流延位置PCと剥取位置PPとを循環して走行することで、ドープ11の流延と流延膜26の剥ぎ取りとが繰り返し行われる。流延装置15とテンタ16との間の搬送路には、フィルム12の乾燥をすすめるための送風機(図示無し)を配してもよい。剥ぎ取られて形成されたフィルム12は、テンタ16に案内される。
テンタ16は、フィルム12の側部をクリップ29(図2参照)で把持してフィルム12を長手方向Z1へ搬送しながら幅方向に延伸するための延伸装置である。また、テンタ16はフィルム12を乾燥する第1の乾燥装置としても機能する。テンタ16の構成の詳細は、別の図面を用いて後述する。切除装置17は、フィルム12のクリップ29で把持された把持跡を含む側部を切除するためのものである。切除装置17は、前述の把持跡を切除するとともに、目的とする製品のフィルム幅(以下、製品幅と称する)となるように側部を切除している。すなわち、この切除装置17は、フィルム12から両側部を切除して製品領域12p(図2参照)にする。しかし、この態様に限られず、例えばこの切除装置17と巻取装置19との間に、切除装置17と同様の構成の切除装置(図示無し)を配し、この切除装置によってフィルム12から両側部をさらに切除して製品領域にしてもよい。このように、切除装置により目的とする製品幅になるように両側部を切除されて残る領域が製品領域である。
ローラ乾燥装置18は、フィルム12を乾燥する第2の乾燥装置であり、複数のローラ30と空調機(図示無し)とを備える。各ローラ30はフィルム12を周面で支持する。フィルム12はローラ30に巻き掛けられて搬送される。空調機は、ローラ乾燥装置18の内部の温度や湿度などを調節する。巻取装置19は、フィルム12を巻芯31に巻き取ってロール状にするためのものである。なお、ローラ乾燥装置18と巻取装置19との間に、フィルム12を冷却するための冷却機(図示無し)を設けてもよい。
フィルム製造設備10は、さらに、光学性能と厚みとの少なくともいずれか一方を検出するための検出器を備えることが好ましい。本実施形態では、この検出器として、図1に示すように光学性能と厚みとの両方を検出するための検出器20を配しており、光学性能としては面内レタデーションReと厚み方向レタデーションRthと遅相軸の方向とを検出している。本実施形態では検出器20としてKOBRA21ADH(王子計測機器(株)製)を用いている。これにより、幅方向Z2の全域(全幅域)で、フィルム12のReとRthと遅相軸の方向とを光学性能として検出し、厚みも検出している。ただし、光学性能として検出するものは、ReとRthと遅相軸の方向との少なくともいずれかひとつでよい。すなわち、設ける検出器は、厚みとReとRthと遅相軸の方向との少なくともいずれかひとつを検出するものであることが好ましい。また、検出器20で検出する範囲は、フィルム12の全幅域でなくてもよく、幅方向Z2における製品領域12p(図2参照)であればよい。検出器20による検出は、連続して行ってもよいし、間欠的に行ってもよい。
本実施形態では、検出器20はローラ乾燥装置18と巻取装置19との間に配しているが、検出器20の位置はこれに限られず、テンタ16と巻取装置19との間であればよい。
図2に示すように、テンタ16は、上述のクリップ29、エア供給部32(図3参照)、送風部33と、レール41,42と、チャンバ(図示無し)とを有する。チャンバ内では、搬送路は、上流側から順番に、予熱工程のための予熱区間45、延伸工程のための延伸区間46、緩和工程のための緩和区間47、冷却工程のための冷却区間48に区分されている。予熱区間45、延伸区間46、緩和区間47、冷却区間48は、送風部33から送り出される気体の温度と、レール41,42の設置態様とによってそれぞれ形成されており、仕切り等による区分によって形成されたものではない。また、クリップ29によりフィルム12の側部の把持を開始する把持開始位置は予熱区間45よりも上流に、把持を解除する把持解除位置を冷却区間48よりも下流側にそれぞれ設定してある。なお、テンタ16は、加熱部61〜68(図3,図4参照)を備えるが、図2では図示を略している。
レール41,42は、フィルム12の搬送路の両側に配されている。レール41,42には、それぞれ複数のクリップ29が設けられている。各クリップ29は、対応するレール41,42に沿って移動自在であり、その移動方向はレール41,42によって規定される。各レール41,42は、クリップ29を把持開始位置から把持解除位置に移動する往路部と、把持解除位置にまで移動したクリップ29を把持開始位置に戻す復路部とを有した環状に設けられている。クリップ29は、一定の間隔で各レール41,42の全周にあるが、図2では一部のクリップ29のみを描いてある。なお、本実施形態ではフィルム12の側部を保持する保持部材としてクリップ29を用いているが、保持部材はこれに限定されない。例えば、フィルムの側部に複数のピンを突き刺すことでフィルム12を保持するピンプレートを、クリップ29に代えて用いてもよい。
レール41,42には、それぞれ複数のクリップ29を所定の間隔で取り付けた環状のチェーン(図示無し)がレール41,42に沿って移動自在に設けられている。チェーンは、把持開始位置よりも上流側に配されるターンホイール51と、把持解除位置よりも下流側に配されるスプロケット52とに掛けられている。スプロケット52が駆動部(図示無し)によって回転することにより、チェーンがレール41,42に沿って循環移動する。このチェーンの移動により各クリップ29がレール41,42に沿って一定の速度で移動する。なお、以下では、往路部、復路部を特に明示しない場合は、レール41,42として往路部について説明する。
把持開始位置には、クリップ29にフィルム12の側部の把持を開始させる把持開始部材(図示無し)が設けられている。また、把持解除位置には、クリップ29にフィルム12の側部の把持を解除させる把持解除部材(図示無し)が設けられている。これにより、フィルム12は、各側部が把持開始位置でクリップ29に把持され、クリップ29の移動により長手方向Z1に搬送されて、予熱区間45、延伸区間46、緩和区間47、冷却区間48を順次通過する。予熱区間45、延伸区間46、緩和区間47、冷却区間48を通過する間にフィルム12は区間ごとの処理が施され、把持解除位置でクリップ29の把持が解除される。
送風部33は、クリップ29の移動により搬送されるフィルム12の搬送路を覆うように搬送路に対向して設けられ、本実施形態ではフィルム12の搬送路の上方に配されている。ただし、フィルム12の搬送路の上方に代えて、または加えて、搬送路の下方に配される場合がある。送風部33には、温度が調節された気体としての空気を送り出す複数の送風口53a〜53gがフィルム12の長手方向Z1に並べて形成されている。送風口53a〜53gの各々はフィルム12の幅方向Z2に延びたスリット状とされている。幅方向Z2における各送風口53a〜53gの長さは、フィルム12の幅よりも大きくされており、これによりフィルム12の全幅域に気体を供給する。この気体の供給により、予熱区間45、延伸区間46、緩和区間47、冷却区間48においてフィルム12の全幅域の加熱や冷却を行っている。
把持開始位置から延伸区間46に至るまで、すなわち把持開始位置と予熱区間では、レール41,42は、長手方向Z1に沿って配され、互いの間隔(以下、レール間隔という)を一定にしてある。これにより、対向したレール41上のクリップ29とレール42上のクリップ29との対向クリップ間隔を一定にした状態で、クリップ29を長手方向Z1に移動する。
予熱区間45では、延伸区間46に向かうフィルム12の全幅域を加熱(以下、予熱という)して昇温するための区間である。この昇温は、延伸区間46での延伸開始における温度にフィルム12の温度が近くなるように行う。予熱は、送風口53a,53bからの加熱された空気により行う。ただし、予熱のための空気を送り出す送風口の数は、本実施形態のような2つに限定されず、1つ、あるいはさらに多くの送風口を送風部33に設けるなどして増減してもよい。
延伸区間46では、レール41,42は直線に配されているが、長手方向Z1との間で延伸角度θをなすように外向きに角度を付けて配してあり、下流に向かってレール間隔が次第に広くなる。これにより、クリップ29の移動方向を長手方向Z1に対して延伸角度θだけ外側に向け、クリップ29の長手方向Z1の移動にともなって対向クリップ間隔を漸増しフィルム12を幅方向Z2に延伸する。この延伸区間46では、延伸前の幅W1のフィルム12を幅W2にまで拡げる。なお、予熱区間45では長手方向Z1に対してレール41,42が平行であるから、延伸角度θは、予熱区間45に対する延伸区間46におけるクリップ29の移動方向の増分の角度である。延伸倍率αは、α=(W2/W1)×100%によって求められ、例えば目標とする光学性能に基づいて設定される。
延伸区間46では、送風口53c〜53eからの加熱された空気によりフィルム12の全幅域を加熱する。ただし、予熱のための空気を送り出す送風口の数は、本実施形態のような3つに限定されず、1,2,4以上等に増減してもよい。延伸区間46におけるフィルム12の温度は、例えば目標とする光学性能に基づいて設定される。
本実施形態では、緩和区間47,冷却区間48は、予熱区間45と同様に、レール41,42が長手方向Z1に沿って配されておりレール間隔を一定にしてある。したがって、これらの緩和区間47,冷却区間48では、対向クリップ間隔を一定にした状態でクリップ29が移動し、フィルム12は幅W2を維持して搬送される。緩和区間47ではフィルム12の全幅域を加熱し、冷却区間48ではフィルム12の全幅域を冷却する。なお、緩和区間47は設けなくてもよい。緩和区間47におけるフィルム12の温度は、送風口53fからの加熱された空気により調整する。冷却区間48におけるフィルム12の温度は、送風口53gからの空気により調整しており、その空気はフィルム12を降温させる温度に調節され、例えば、室温(概ね20℃以上40℃以下の範囲内)の空気、冷却された空気、案内されてくるフィルム12よりも低い所定の温度に加熱された空気のいずれでもよい。
予熱区間45、緩和区間47、冷却区間48におけるレール間隔に関する上記「一定」とは、厳密である必要はない。つまり、目的とする光学性能を発現させるために、予熱区間45、緩和区間47、冷却区間48のそれぞれにおいて、上流から下流にかけてそれぞれ略一定と言える程度にレール間隔を若干変化させる態様でもよい。
フィルム12は、前述のように、テンタ16の下流の切断装置17により連続的に切断され、側部12gを切除されて製品領域12pが残る。切除装置17で切断するラインを、以下、カットラインと称し、符号CLを付す。
図3に示すように、送風部33の内部は仕切り部材60で仕切られており、エア供給部32は、仕切り部材60で仕切られて形成された第1室33a〜第4室33dの各々に、所定の温度に調節した空気を供給する。具体的には、予熱区間45に送る空気は第1室33aに、延伸区間46に送る空気は第2室33bに、緩和区間47に送る空気は第3室33cに、冷却区間48に送る空気は第4室33dに供給される。
前述の加熱部61〜68は、フィルム12の製品領域12pの側部を加熱するためのものであり、加熱部61〜68は、搬送路の両側に一対ずつ配されている。加熱部61〜68は、例えば赤外線等を射出するヒータ61a〜68aをそれぞれ有しており、フィルム12の搬送路と送風部33との間に設けられている。加熱部61,62は予熱区間45に、加熱部63は予熱区間45と延伸区間46とにかけて、加熱部64,65は延伸区間46に、加熱部66は延伸区間46と緩和区間47とにかけて、加熱部67は緩和区間47と冷却区間48とにかけて、加熱部68は冷却区間48に配されている。しかし、長手方向Z1における各加熱部61〜68の位置は、これに限定されない。
予熱区間45に配されている加熱部61は、図3に示すように、フィルム12の長手方向Z1では、隣り合う送風口53aと送風口53bとの間に配されることが好ましい。加熱部62〜68も同様に、フィルム12の長手方向Z1では、互いに隣り合う送風口53b〜53gの各間に配されることが好ましい。すなわち好ましくは、加熱部61〜68は、互いに隣り合う送風口53a〜53gの各間と、搬送路との間に配されることである。
この例では、8対の加熱部61〜68を用いているが、加熱部の数はテンタ16内の搬送路の長さや加熱部61〜68の大きさ等に応じて増減してもよく、予熱区間45の上流端から冷却区間48の下流端に至る範囲に少なくとも1対設けてあればよい。この例では、加熱部63,66,67は、隣り合う2区間である予熱区間45と延伸区間46、延伸区間46と緩和区間47、緩和区間47と冷却区間48に渡って配してあるが、いずれか一方の区間の内部となるように配してもよい。一対の加熱部61〜68のすべてを、予熱区間45,延伸区間46,緩和区間47,冷却区間48の各区間の内部に配してもよい。好ましくは、予熱区間45,延伸区間46,緩和区間47,冷却区間48のすべての区間に少なくとも一対を配することである。
図4に示すように、一対の加熱部61はフィルム12の搬送路の両側に配されており、後述のように、幅方向Z2におけるそれぞれの位置は適宜変えることができる。例えば本実施形態では、後述のように特定される製品領域12pの側部12psが通過する通過領域上に加熱部61〜68が配されるように移動させてある。
図5を参照しながら加熱部61〜68について説明する。加熱部61〜68の構成は、同じであるので、ここでは加熱部61と加熱部62とを例に詳細を説明して、加熱部63〜68についての詳細は略す。加熱部61,62は、幅方向Z2に並んだ7つのヒータ61a〜61g、62a〜62gを有しており、ヒータの符号は、フィルム12の搬送路の幅方向Z2における中央から外側にむかって、61a,61b,61c,・・・,61g、62a,62b,62c,・・・,62gを付す。ただし、加熱部61,62が有するヒータの数は各7つに限定されない。
フィルム製造設備10には、本実施形態のように幅設定部71と移動機構73とが設けられていることが好ましい。幅設定部71には、製造するフィルム12の種類が入力される。また、この幅設定部71は、製品の種類ごとに製品幅が予め書き込まれたメモリ(図示無し)を有している。幅設定部71は、フィルム12の種類が入力されると、フィルム12の種類に対応した製品幅をメモリから読み出して、この読み出した製品幅を移動機構73と後述の演算部74とに設定する。なお、フィルム12の種類を入力する代わりに、製品幅をキーボードなどで入力し、入力した製品幅を移動機構73と演算部74とに設定してもよい。
移動機構73は、各加熱部61,62を幅方向Z2に移動させるための例えばガイドレール(図示無し)やモータ(図示無し)などで構成されており、加熱部61,62をクリップ29と独立して移動させる。加熱部61,62は、送風部33に前述のガイドレール(図示)を取り付けて、このガイドレール上に配してもよい。加熱部61,62は、フィルム12の幅方向Z2での中央から送風部33の幅方向Z2における外側側縁までの範囲で移動可能とされている。この移動機構73は、設定された製品幅に基づいた位置に各加熱部61,62をそれぞれ幅方向Z2で移動する。これにより、本実施形態では、加熱部61,62を、幅方向Z2における最も外側から3番目のヒータ61e,62eがカットラインCLの上方に配された状態にする。
加熱部61,62とカットラインCLとの位置関係は、製品領域12pのうち加熱対象とする側部12psの幅方向Z2における長さに応じて決定すればよい。カットラインCLは、延伸が進むにしたがって幅方向Z2における位置が外側に移動するので、この移動方向にあわせて加熱部61,62の位置は決められる。加熱部61,62は幅方向Z2において移動可能であるので、製造する製品の種類毎に設定されるカットラインCLの位置に応じて、側部12ps上に配すことができる。なお、延伸前及び延伸中のカットラインCLの位置は、予め調べてある。加熱部61,62の移動手法は、上記のものに限られない。例えば、手動で加熱部61,62を移動させてもよい。なお、移動機構73は、加熱部63〜68についても加熱部61,62と同様に、設定された製品幅に基づいた位置にそれぞれ幅方向Z2で移動する。
フィルム製造設備10には、本実施形態のようにコントローラ72と演算部74とが設けられていることが好ましい。演算部74は、加熱部61,62の各ヒータ61a〜61g、62a〜62gの温度の変化量と、フィルム12の厚み及び光学特性の各変化量との関係と、製品の種類ごとに製品の厚み及び光学性能とが予め書き込まれたメモリ(図示無し)を有している。厚みと光学性能とはこれらの少なくともいずれか一方でもよい。本実施形態においてメモリに書き込まれている光学性能は、面内レタデーションと厚み方向レタデーションと遅相軸の方向とであるが、検出器20で検出されるものと同じパラメータが予め書き込まれていればよい。
演算部74のメモリに書き込む各ヒータ61a〜61g、62a〜62gの温度の変化量と、フィルム12の厚み及び光学特性の各変化量との関係は、例えば、以下のように求めることができる。まず、ヒータ61a〜61g、62a〜62gのそれぞれについて温度の変化量、すなわち変化後の温度Thaから変化前の温度Thbを減じた差ΔThと、これらの各々で加熱した場合のフィルム12の温度の変化量、すなわち変化後のフィルム12の温度Tfaから変化前の温度Tfbを減じた差ΔTfとの関係(以下、第1の関係と称する)を求める。また、製品の品種毎に、フィルム12の温度の変化量ΔTfと厚みの変化量との関係、変化量ΔTfとReの変化量との関係、変化量ΔTfとRthの変化量との関係、変化量ΔTfと遅相軸の方向の変化量との関係(以下、これらをまとめて第2の関係と称する)を、それぞれ求める。上記の第1の関係と第2の関係とから、差ΔThと厚みの変化量との関係、差ΔThとReの変化量との関係、差ΔThとRthの変化量との関係、差ΔThと遅相軸の方向の変化量との関係とがそれぞれ求められる。
演算部74は、設定された製品幅と、検出器20での検出結果とが入力されると、製品の種類に対応した厚み、光学性能を読み出し、検出器20からの検出結果と比較して差を求める。幅方向Z2において、厚みと光学性能との少なくともいずれかに差が出た領域を、加熱対象の側部12psとして特定する。また、求めた厚みの差と光学性能の差とについて、これらに対応するヒータ61a〜61g,62a〜62gの温度の変化量を演算部74はメモリから読み出す。演算部74は、読み出したヒータ61a〜61g,62a〜62gの温度の変化量を加熱部61,62の温度条件としてコントローラ72に出力する。なお、検出器20での検出結果である厚み、光学性能としての例えばRe、Rth、遅相軸の方向の中で、演算部74のメモリに書き込まれている製品の種類におけるものとの差に違いがある場合がある。このような場合には、厚み、Re、Rth、遅相軸の方向の中で、製品の種類におけるものとの差を小さくする重み付け、すなわち優先順位を定めて、この優先順位の高いものを基準に、ヒータ61a〜61g,62a〜62gの温度の変化量を演算部74が読み出す手法を用いてもよい。例えば本実施形態では、優先順位を高いものから順にRe、Rth、遅相軸の方向、厚みとしている。
コントローラ72は、演算部74からの加熱部61,62の温度条件に基づいて、各加熱部61,62を制御する。このコントローラ72は、加熱部61のヒータ61a〜61gについてオン、オフと、オンにする場合の温度とを、個別に制御する。同様に、コントローラ72は、加熱部62のヒータ62a〜62gについてオン、オフと、オンにする場合の温度とを、個別に制御する。例えば、コントローラ72は、加熱部61のヒータ61a〜61gをオフに制御し、加熱部62の製品領域12pの側部12ps上に配されたヒータ61d,62eをオンに制御する。コントローラ72は、切除装置17で切除される側部12g上に配されたヒータ62f,62gについては両方をオフに制御する場合もあるし、これらのいずれか一方のみをオフに制御する場合もある。
なお、演算部74のメモリには、加熱部63〜68(図4参照)の各ヒータの温度の変化量と、フィルム12の厚み及び光学特性の各変化量との関係についても予め書き込まれており、加熱部61,62と同様に、加熱部63〜68の温度条件をコントローラ72に出力する。コントローラ72は、加熱部63〜68についても、加熱部61,62と同様に、各ヒータのオン、オフと、オンにする場合の温度とを、個別に制御する。
この例では、製品領域12pの側部12ps上に、すべての加熱部61〜68が位置するようにこれらを移動させており、加熱が不要な側部12ps上の加熱部についてはそのヒータをすべてオフにしている。しかし、例えば演算部74により側部12psの加熱が不要であることがわかっている加熱部については、側部12psよりも幅方向Z2における外側へ移動させてもよい。このように、検出器20の検出結果に応じて、側部12ps上に配するものを加熱部61〜68の中から適宜選択してもよい。
上記構成の作用を説明する。ドープ11は流延ダイ24から、長手方向に走行するベルト21に向けて連続的に流出され、これにより、ベルト21上に流延膜26が形成される。流延膜26は、剥取位置PPで溶媒を含んだ状態でベルト21から剥がされ、これにより、フィルム12が形成される。ベルト21は、剥取位置PPから流延位置PCに戻り、ドープ11が再び流延される。
フィルム12は、テンタ16へ案内されて、クリップ29により側部を把持され、把持された状態で、予熱区間45,延伸区間46,緩和区間47,冷却区間48を通過する。予熱区間45ではフィルム12は、幅方向Z2には延伸しない状態で、予熱される。延伸区間46では、クリップ29は、長手方向Z1に移動しながら幅方向Z2で外向きに移動するから、送風口53c〜53eからの空気で加熱されているフィルム12は長手方向Z1に搬送されながら幅方向Z2に延伸される。緩和区間47では、フィルム12は、幅方向Z2に延伸しない状態で送風口53fからの空気で加熱されながら長手方向Z1に搬送されるから、延伸区間46での延伸による内部応力が緩和される。冷却区間48では、フィルム12は、幅方向Z2には延伸されない状態で、温度が下げられる。
フィルム12は、送風部33からの空気により、予熱区間45、延伸区間46、緩和区間47では全幅域が加熱され、冷却区間48では全幅域が冷却される。また、空気の吹き付けによりフィルム12の乾燥がすすむ。加熱部61〜68の各々は送風口53a〜53gの各間に配されているから、これら送風口53a〜53gからの空気はフィルム12の全幅域へ確実に供給される。
全幅域での加熱、冷却に加え、加熱部61〜68の各対から選択される少なくともいずれか一対により製品領域12pの側部12psが加熱される。加熱部61〜68は幅方向Z2で移動するから、加熱する対象領域に自由度が増し、製品領域12pは幅方向Z2で光学性能が均一になる。また、加熱部61〜68は、フィルム12の中央から送風部33の幅方向Z2における外側側縁までの範囲で移動可能とされている。このため、延伸倍率αが非常に大きい場合や、製品領域12pの幅が小さい場合であっても、延伸倍率αや製品幅に依存せずに側部12psは確実に加熱される。したがって、製品の種類毎に、幅方向Z2において光学性能が均一になる。
この例では、検出器20の検出結果に基づいて、演算部74により加熱部61〜68の各対から少なくともいずれか一対が選択されて、製品領域12pの側部12psが加熱される。また、製品の種類毎に設定された幅、厚み、Re、Rth、遅相軸の方向に対して差が小さくなるように、選択された加熱部61〜68の各ヒータはオン・オフとオンにする場合の温度とが独立して制御される。このように検出器20の検出結果が加熱器61〜68へフィードバックされるので、環境の変化や品種の切り替え等があっても、光学性能は均一になる。
また、検出器20による検出を連続的、もしくは間欠的に行い、検出器20による検出と演算部74へ出力と、演算部74による加熱部61〜68の制御との一連の処理を繰り返してもよい。このように繰り返し処理は、検出器20による検出結果が、設定された製品の厚みや光学性能になるまで、少なくとも設定された製品の厚みや光学性能との差が許容範囲内になるまで行うとよい。設定された製品の厚みや光学性能に対する差の許容範囲は、製品毎に設定してよく、本実施形態では設定された値の−4%以上+4%以下の範囲内としている。例えば、Reについて設定された値が50nmである場合には、許容範囲は48nm以上52nm以下の範囲内としている。このように検出器20の検出結果が加熱器61〜68へ繰り返しフィードバックされるので、環境の変化や品種の切り替え等があっても、製品領域12pは光学性能が均一になる。
フィルム12はテンタ16から切除装置17へ案内されて、切除装置17により側部が切除される。この切除により、フィルム12は、クリップ29による把持跡がある部分が切り離されるとともに目的とする製品幅とされる。切除処理を経ることで製品領域12pはフィルム12としてローラ乾燥装置18へ送られてさらに乾燥をすすめられ、検出器20によってReとRthと遅相軸の方向と厚みとの少なくともいずれかひとつを検出されて、その検出結果が演算部74へ送られ、設定された製品の厚みと光学性能とに対する差が許容範囲内にある場合には巻取装置19によりロール状に巻かれて製品とされる。なお設定範囲外にある場合には、例えば廃棄用の巻芯(図示無し)に巻かれて廃棄する。
テンタ16における側部12psの上記の加熱は、溶液製膜方法により製造されて一旦巻き取られたフィルムや、溶融製膜方法で製造されたフィルムに対して実施しても、光学性能の幅方向Z2における均一化という同様の効果がある。また、複数のテンタ16を直列に配して予熱、延伸、緩和、冷却の一連の処理を複数回実施してもよい。
製造されたフィルム12は、偏光板に用いられ光源からの光を光学的に補償する位相差フィルムとして、特に好ましく用いることができる。中でもVA(Vertical Alignment)用位相差フィルムやIPS(In Plane Switching)用位相差フィルムを製造する場合に、特に有効である。また、フィルム12のガラス転移点をTg(℃)とするときに、延伸区間46でフィルム12の温度Tを−20℃<T−Tg<15℃を満たすように延伸する場合と、延伸区間46での延伸を5質量%以下の溶媒含有率で行う場合とで効果が大きい。Re(450nm)/Re(550nm)で求める波長分散が0.7より大きく0.97未満のフィルム12を、105%以上140%以下の延伸倍率αで製造する場合に効果が大きい。Re(450nm)/Re(550nm)で求める波長分散が0.97より大きく1.30未満のフィルム12を、150%以上250%以下の延伸倍率αで製造する場合にも効果が大きい。なお、Re(450nm)、Re(550nm)は、それぞれ450nm、550nmの光でのReである。Reはフィルム12の面内の光学異方性である。nxをフィルム12の長手方向Z1の屈折率、nyをフィルム12の幅方向Z2の屈折率、dをフィルム12の厚みとしたときに、Re=(ny−nx)×dで求める値である。また、前述のRthは、nzをフィルム12の厚み方向の屈折率としたときに、Rth={(nx+ny)/2−nz}×dで求める値である。
(ポリマー)
ドープ11のポリマー成分、つまり、フィルムのポリマー成分は、DACに限定されず、熱可塑性の透明なポリマーであればよい。熱可塑性ポリマーとして、セルロースアシレート、ノルボルネン樹脂、シクロオレフィン系樹脂を用いる場合に、特に効果が大きい。
ポリマーがセルロースアシレートである場合には、中でも、セルロースの水酸基へのアシル基の置換度が下記式(1)〜(3)を満たすようなセルローストリアセテート(TAC)を用いる場合に、本発明は特に有効である。式(1)〜(3)において、A及びBは、セルロースの水酸基中の水素原子に対するアシル基の置換度を表し、Aはアセチル基の置換度、Bは炭素原子数が3〜22のアシル基の置換度である。なお、セルロースアシレートの総アシル基置換度Zは、A+Bで求める値である。
(1) 2.7≦A+B≦3.0
(2) 0≦A≦3.0
(3) 0≦B≦2.9
また、TACに代えて、または加えて、セルロースの水酸基へのアシル基の置換度が下記式(4)を満たすようなDACを用いる場合にも、本発明は特に有効である。
(4)2.0≦A+B<2.7
レタデーションの波長分散性の観点から、式(4)を満たしながらも、DACのアセチル基の置換度A、及び炭素数3以上22以下のアシル基の置換度の合計Bは、下記式(5)および(6)を満たすことが、好ましい。
(5) 1.0<A<2.7
(6) 0≦B<1.5
ポリマーとしてTACを用いる場合には、フィルム12はTACからなる単層構造であることが好ましい。これに対し、ポリマーとしてDACを用いる場合には、フィルム12は複層構造であることが好ましい。好ましい複層構造は、DACからなる層の一方の面にTACからなる層が設けられている構造である。より好ましい複層構造は、DACからなる層の一方の面及び他方の面にそれぞれTACからなる層が設けられている構造である。このようなDACからなる層をもつ複層構造の光学フィルムは、溶液製膜方法でつくることが好ましく、同時共流延もしくは逐次流延でつくることが好ましい。
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基(ヒドロキシル基)を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位及び6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化の場合を置換度1とする)を意味する。
10 フィルム製造設備
12 フィルム
12p 製品領域
12ps 製品領域の側部
16 テンタ
17 切除装置
45 予熱区間
46 延伸区間
47 緩和区間
29 クリップ
33 送風部
61〜68 加熱部

Claims (8)

  1. 長尺のフィルムの側部を保持する複数の保持部材の移動により前記フィルムを長手方向に搬送しながら幅方向に延伸する延伸装置において、
    前記保持部材の移動により搬送される前記フィルムの搬送路に対向して設けられ、温度が調節された気体を前記フィルムの全幅域に供給して前記フィルムを加熱する送風部と、
    前記送風部と前記搬送路との間に配され、前記フィルムの幅方向で前記保持部材と独立して移動可能に設けられて前記フィルムの製品とされる製品領域の両側部を加熱する一対の加熱部と、
    前記加熱部を前記幅方向で移動させる移動機構と、
    を備えることを特徴とする延伸装置。
  2. 前記保持部材が前記長手方向に移動しながら前記幅方向に移動することにより、前記気体で加熱されている前記フィルムを幅方向に延伸する延伸区間と、
    前記延伸区間の上流に形成され、前記延伸区間へ向かう前記フィルムを前記気体で加熱して昇温させる予熱区間とを備え、
    前記一対の加熱部は前記予熱区間と前記延伸区間との少なくともいずれか一方に配されている請求項1に記載の延伸装置。
  3. 前記保持部材が前記長手方向に移動しながら前記幅方向に移動することにより、前記気体で加熱されている前記フィルムを幅方向に延伸する延伸区間と、
    前記延伸区間の下流に形成され、延伸された前記フィルムの応力を緩和する緩和区間とを備え、
    前記一対の加熱部は前記緩和区間に配されている請求項1に記載の延伸装置。
  4. 前記加熱部は、前記フィルムの幅方向に並んだ複数のヒータを有し、
    前記複数のヒータは独立して温度調節される請求項1ないし3のいずれか1項に記載の延伸装置。
  5. 前記送風部は、前記フィルムの幅方向に延びた送風口を複数有し、複数の前記送風口が前記長手方向に並んで形成されており、
    前記加熱部は、前記長手方向では隣り合う前記送風口と前記送風口との間に配されている請求項1ないし4のいずれか1項に記載の延伸装置。
  6. ポリマーが溶媒に溶解したドープから長尺のフィルムを形成し、前記フィルムの側部を保持する複数の保持部材の移動により前記フィルムを長手方向に搬送しながら幅方向に延伸するフィルム製造設備において、
    前記ドープを連続的に流出する流延ダイと、
    前記流延ダイから流出した前記ドープが流延されて流延膜が形成される、走行する流延支持体と、
    前記流延支持体から前記流延膜を剥がして形成された前記フィルムの側部を前記保持部材が保持する請求項1ないし5のいずれか1項に記載される延伸装置と、
    前記複数の保持部材よりも下流に設けられ、前記フィルムから両側部を切除して前記製品領域にする切除装置とを備えることを特徴とするフィルム製造設備。
  7. 前記製品領域にされた前記フィルムをロール状に巻き取る巻取装置と、
    前記複数の保持部材と前記巻取装置との間に設けられ、前記製品領域の面内レタデーションと厚み方向レタデーションと遅相軸の方向と厚みとの少なくともいずれかひとつを検出する検出器とを備え、
    前記複数のヒータの各々の温度は、前記検出器の検出結果に基づいて調節される請求項6に記載のフィルム製造設備。
  8. 走行する流延支持体に、ポリマーが溶媒に溶解したドープを流延ダイから流出して流延膜を形成し、
    前記流延支持体から前記流延膜を剥がして形成された長尺のフィルムを、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の延伸装置を用いて幅方向に延伸するフィルム製造方法。
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