JP2016055722A - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】耐摩耗性を維持しながら、操縦安定性が改善された空気入りタイヤを提供する。【解決手段】トレッド部1はタイヤ周方向に延びる少なくとも3本の主溝11〜14を有し、トレッド部1は陸部21〜25のエッジ位置及びトレッド部1の接地端位置に基づいて特定されるタイヤ幅方向のプロファイルラインTLを有すると共に、車両に対する装着方向が指定された空気入りタイヤにおいて、センター陸部22〜24をトレッド部1のプロファイルラインTLよりも突出させ、センター陸部22〜24のプロファイルラインTLからの突出量T22〜T24をより車両内側に位置するセンター陸部に向かって順次大きくすると共に、タイヤセンターラインCL上に位置するセンター陸部23を除く各センター陸部22,24の最大突出位置Pmaxを該センター陸部22,24の幅方向中心位置Pcよりもタイヤ幅方向内側に配置する。【選択図】図3
Description
本発明は、トレッド部にタイヤ周方向に延びる少なくとも3本の主溝と該主溝により区画された少なくとも4列の陸部を有する空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、良好な耐摩耗性を維持しながら、操縦安定性を効果的に改善することを可能にした空気入りタイヤに関する。
空気入りタイヤにおいて、トレッド部にタイヤ周方向に延びる複数本の主溝を設け、これら主溝によりリブ基調を有する複数列の陸部を区画したものがある。このような空気入りタイヤにおいては、各陸部のエッジ部における接地圧が相対的に高くなり、接地圧が陸部内で不均一になる傾向がある。そして、各陸部のエッジ部での接地圧が相対的に高い状態で走行すると、各陸部の中央部での接地長が減少し、これが操縦安定性を低下させる要因となる。また、各陸部のエッジ部での接地圧が相対的に高い状態で走行すると、そのエッジ部での摩擦エネルギーが大きくなるため、耐摩耗性が悪くなるという欠点もある。
これに対して、トレッド部において主溝により区画された陸部の踏面をタイヤ径方向外側に向かって膨出させることにより、各陸部の接地状態を適正化することが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。しかしながら、単に陸部の踏面をタイヤ径方向外側に向かって膨出させただけでは、操縦安定性と耐摩耗性を必ずしも十分に改善することができないのが現状である。
本発明の目的は、良好な耐摩耗性を維持しながら、操縦安定性を効果的に改善することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、前記トレッド部はタイヤ周方向に延びる少なくとも3本の主溝と該主溝により区画された少なくとも4列の陸部を有し、前記トレッド部は前記陸部のエッジ位置及び前記トレッド部の接地端位置に基づいて特定されるタイヤ幅方向のプロファイルラインを有すると共に、車両に対する装着方向が指定された空気入りタイヤにおいて、
前記陸部がタイヤ幅方向の最外側に位置する一対のショルダー陸部と該一対のショルダー陸部の相互間に位置する複数のセンター陸部を含み、前記センター陸部を前記トレッド部のプロファイルラインよりも突出させ、前記センター陸部の前記プロファイルラインからの突出量をより車両内側に位置するセンター陸部に向かって順次大きくすると共に、タイヤセンターライン上に位置するセンター陸部を除く各センター陸部の最大突出位置を該センター陸部の幅方向中心位置よりもタイヤ幅方向内側に配置したことを特徴とするものである。
前記陸部がタイヤ幅方向の最外側に位置する一対のショルダー陸部と該一対のショルダー陸部の相互間に位置する複数のセンター陸部を含み、前記センター陸部を前記トレッド部のプロファイルラインよりも突出させ、前記センター陸部の前記プロファイルラインからの突出量をより車両内側に位置するセンター陸部に向かって順次大きくすると共に、タイヤセンターライン上に位置するセンター陸部を除く各センター陸部の最大突出位置を該センター陸部の幅方向中心位置よりもタイヤ幅方向内側に配置したことを特徴とするものである。
本発明では、車両に対する装着方向が指定された空気入りタイヤにおいて、センター陸部をトレッド部のプロファイルラインよりも突出させることにより、センター陸部の接地圧の均一化を図り、センター陸部の接地長を確保して操縦安定性を改善すると共に、センター陸部のエッジ部の摩擦エネルギーを低減して耐摩耗性を改善することができる。その際、センター陸部の突出量をより車両内側に位置するセンター陸部に向かって順次大きくすることにより、センター陸部の接地長を延長させる効果が車両内側ほど強くなるため、特に直進時の操縦安定性を効果的に改善することができる。また、タイヤセンターライン上に位置するセンター陸部を除く各センター陸部の最大突出位置を該センター陸部の幅方向中心位置よりもタイヤ幅方向内側に配置することにより、これらセンター陸部のタイヤ幅方向内側の部位の接地長が増大するため、直進時の操縦安定性を効果的に改善することができる。その結果、本発明によれば、良好な耐摩耗性を維持しながら、操縦安定性を効果的に改善することができる。
本発明において、センター陸部と同様に、ショルダー陸部をトレッド部のプロファイルラインよりも突出させ、各ショルダー陸部の最大突出位置を該ショルダー陸部の接地領域内での幅方向中心位置よりもタイヤ幅方向内側に配置することが好ましい。これにより、操縦安定性と耐摩耗性の改善効果を更に高めることができる。この場合、ショルダー陸部の突出量はそれと隣り合うセンター陸部の突出量よりも小さくするのが良い。
センター陸部の突出量は0.05mm〜2.0mmとすることが好ましい。同様に、ショルダー陸部の突出量は0.05mm〜2.0mmとすることが好ましい。これにより、操縦安定性と耐摩耗性をより効果的に改善することができる。
また、タイヤ幅方向に隣り合うセンター陸部の突出量の差は0.1mm〜0.8mmとすることが好ましい。これにより、操縦安定性と耐摩耗性をより効果的に改善することができる。
タイヤセンターライン上に位置するセンター陸部を除く各センター陸部において、該センター陸部のタイヤ幅方向外側の端部位置から最大突出位置までのタイヤ幅方向の距離は該センター陸部の幅の55%〜95%とすることが好ましい。同様に、各ショルダー陸部において、該ショルダー陸部の接地領域内でのタイヤ幅方向外側の端部位置から最大突出位置までのタイヤ幅方向の距離は該ショルダー陸部の接地領域内での幅の55%〜95%とすることが好ましい。これにより、直進時の操縦安定性をより効果的に改善することができる。
本発明において、トレッド部の接地領域は、タイヤを正規リムにリム組みして正規内圧を充填した状態で平面上に垂直に置いて正規荷重を加えたときに測定されるタイヤ軸方向の接地幅に基づいて特定される。接地端は、接地領域のタイヤ軸方向の最外側位置である。「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMAであれば標準リム、TRAであれば“Design Rim”、或いはETRTOであれば“Measuring Rim”とする。「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表“TIRE ROAD LIMITS AT VARIOUSIOLD INFLATION PRESOURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESOURE”であるが、タイヤが乗用車である場合には180kPaとする。「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表“TIRE ROAD LIMITS AT VARIOUSIOLD INFLATION PRESOURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“LOAD CAPACITY”であるが、タイヤが乗用車である場合には前記荷重の88%に相当する荷重とする。
また、トレッド部のプロファイルラインは陸部のエッジ位置及びトレッド部の接地端位置に基づいて特定される。例えば、センター陸部におけるプロファイルラインは、タイヤ子午線断面において、該センター陸部の両側のエッジ位置と、該センター陸部に隣り合う他のセンター陸部の近い側のエッジ位置を通りタイヤ径方向内側に中心を持つ円弧にて描写される。また、ショルダー陸部におけるプロファイルラインは、タイヤ子午線断面において、該ショルダー陸部の接地端位置と、該ショルダー陸部の主溝に面するエッジ位置と、該ショルダー陸部に隣り合うセンター陸部の近い側のエッジ位置を通りタイヤ径方向内側に中心を持つ円弧にて描写される。
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1〜図2は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示すものである。この空気入りタイヤは、車両装着時におけるタイヤ表裏の装着方向が指定されたタイヤである。図1〜図2において、INは車両装着時の車両内側であり、OUTは車両装着時の車両外側である。車両に対する装着方向はタイヤ表面の任意の位置に表示される。また、CLはタイヤセンターラインである。
図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、該トレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2,2と、これらサイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3,3とを備えている。
一対のビード部3,3間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側へ折り返されている。ビードコア5の外周上には断面三角形状のゴム組成物からなるビードフィラー6が配置されている。
一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層のベルト層7が埋設されている。これらベルト層7はタイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。ベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°〜40°の範囲に設定されている。ベルト層7の補強コードとしては、スチールコードが好ましく使用される。ベルト層7の外周側には、高速耐久性の向上を目的として、補強コードをタイヤ周方向に対して例えば5°以下の角度で配列してなる少なくとも1層のベルトカバー層8が配置されている。ベルトカバー層8の補強コードとしては、ナイロンやアラミド等の有機繊維コードが好ましく使用される。
なお、上述したタイヤ内部構造は空気入りタイヤにおける代表的な例を示すものであるが、これに限定されるものではない。
図2に示すように、トレッド部1には、タイヤ周方向に延びる4本の主溝11,12,13,14が車両内側から車両外側に向かって順次形成されている。これら主溝11〜14により5列の陸部21,22,23,24,25が区画されている。より具体的には、トレッド部1には、タイヤ幅方向の最外側に位置する一対のショルダー陸部21,25と、これら一対のショルダー陸部21,25の相互間に位置するセンター陸部22,23,24が設けられている。図2において、Ein及びEoutはそれぞれ車両内側及び車両外側の接地端を示し、トレッド部1は接地幅TCWを有する接地領域を形成する。
車両内側のショルダー陸部21には、タイヤ幅方向に延長する複数本のラグ溝31がタイヤ周方向に間隔をおいて配置されている。各ラグ溝31は一端が接地端Einよりもタイヤ幅方向外側まで延在し、他端が主溝11に対して非連通となるように形成されている。
ショルダー陸部21よりも車両外側に位置するセンター陸部22には、タイヤ幅方向に延長する複数本の閉止溝32がタイヤ周方向に間隔をおいて配置されている。各閉止溝32は一端がセンター陸部22の車両内側に位置する主溝11に連通し、他端がセンター陸部22内で閉止している。また、センター陸部22の主溝11に隣接する部位には面取り部42が形成されている。面取り部42はタイヤ周方向に隣り合う一対の閉止溝32,32の間でタイヤ周方向の一方側に向かって面取り幅が漸減している。
センター陸部22よりも車両外側に位置するセンター陸部23には、タイヤ幅方向に延長する複数本の閉止溝33がタイヤ周方向に間隔をおいて配置されている。各閉止溝33は一端がセンター陸部23の車両内側に位置する主溝12に連通し、他端がセンター陸部23内で閉止している。また、センター陸部23の主溝12に隣接する部位には面取り部43が形成されている。面取り部43はタイヤ周方向に隣り合う一対の閉止溝33,33の間でタイヤ周方向の一方側に向かって面取り幅が漸減している。
センター陸部23よりも車両外側に位置するセンター陸部24には、タイヤ幅方向に延長する複数本の閉止溝34がタイヤ周方向に間隔をおいて配置されている。各閉止溝34は一端がセンター陸部24の車両内側に位置する主溝13に連通し、他端がセンター陸部24内で閉止している。また、センター陸部24の主溝13に隣接する部位には面取り部44が形成されている。面取り部44はタイヤ周方向に隣り合う一対の閉止溝34,34の間でタイヤ周方向の一方側に向かって面取り幅が漸減している。
車両外側のショルダー陸部25には、タイヤ幅方向に延長する複数本のラグ溝35がタイヤ周方向に間隔をおいて配置されている。各ラグ溝35は一端が接地端Eoutよりもタイヤ幅方向外側まで延在し、他端が主溝14に対して連通するように形成されている。また、ショルダー陸部25の主溝14に隣接する部位には面取り部45が形成されている。面取り部45はタイヤ周方向に隣り合う一対のラグ溝35,35の間でタイヤ周方向の一方側に向かって面取り幅が漸減している。
図3及び図4は本発明の空気入りタイヤにおけるトレッド部1の輪郭形状を示すものである。なお、図3及び図4はトレッド部1の特徴を理解し易くするために、その輪郭形状を誇張して描写したものであって、実際の輪郭形状とは必ずしも一致するものではない。図3及び図4において、トレッド部1のプロファイルラインTLは曲率半径Rcからなるセンター側の円弧と曲率半径Rshからなる両ショルダー側の円弧とから構成されている。このようなトレッド部1のプロファイルラインTLは陸部21〜25のエッジ位置及びトレッド部1の接地端位置に基づいて特定される。
より具体的には、ショルダー陸部21におけるプロファイルラインTLは、該ショルダー陸部21の接地端位置P1と、該ショルダー陸部21の主溝11に面するエッジ位置P2と、該ショルダー陸部21に隣り合うセンター陸部22の近い側のエッジ位置P3を通りタイヤ径方向内側に中心を持つ円弧にて描写される。センター陸部22におけるプロファイルラインTLは、該センター陸部22の両側のエッジ位置P3,P4と、該センター陸部22に隣り合う他のセンター陸部23の近い側のエッジ位置P5を通りタイヤ径方向内側に中心を持つ円弧にて描写される。センター陸部23におけるプロファイルラインTLは、該センター陸部23の両側のエッジ位置P5,P6と、該センター陸部23に隣り合う他のセンター陸部21又は24の近い側のエッジ位置P4又はP7を通りタイヤ径方向内側に中心を持つ円弧にて描写される。センター陸部24におけるプロファイルラインTLは、該センター陸部24の両側のエッジ位置P7,P8と、該センター陸部24に隣り合う他のセンター陸部23の近い側のエッジ位置P6を通りタイヤ径方向内側に中心を持つ円弧にて描写される。また、ショルダー陸部25におけるプロファイルラインTLは、該ショルダー陸部25の接地端位置P10と、該ショルダー陸部25の主溝14に面するエッジ位置P9と、該ショルダー陸部25に隣り合うセンター陸部24の近い側のエッジ位置P8を通りタイヤ径方向内側に中心を持つ円弧にて描写される。
図5は面取り部を有する陸部の輪郭形状を示すものである。図5に示すように、例えば、陸部23に面取り部43が形成されている場合、面取り部43のタイヤ径方向最外側に位置する端点をエッジ位置P5とし、このエッジ位置P5をプロファイルラインTLの基準位置とする。このような基準位置は他の陸部についても適用される。
上記空気入りタイヤにおいて、センター陸部22〜24はトレッド部1のプロファイルラインTLよりも突出している。より具体的には、センター陸部22〜24の各々は、プロファイルラインTLからの突出量が最大値となる最大突出位置Pmaxを有し、その最大突出位置Pmaxからタイヤ幅方向両側に向かって突出量が徐々に小さくなるような断面形状を有している。
ここで、図3に示すように、センター陸部22〜24のプロファイルラインTLからの突出量T22〜T24は車両内側に向かって順次大きくなるように設定され、T22>T23>T24の関係を満足している。また、タイヤセンターラインCL上に位置するセンター陸部23を除くセンター陸部22,24において、最大突出位置Pmaxは各センター陸部22,24の幅方向中心位置Pcよりもタイヤ幅方向内側に配置されている。なお、タイヤセンターラインCL上に位置するセンター陸部23は、その幅方向中心位置PcがタイヤセンターラインCLと一致しているため、最大突出位置Pmaxをタイヤ幅方向内側へ変位させる必要はないが、その幅方向中心位置PcがタイヤセンターラインCLと一致していない場合は、最大突出位置Pmaxをタイヤ幅方向内側へ変位させるようにしても良い。
上述のように車両に対する装着方向が指定された空気入りタイヤにおいて、センター陸部22〜24をトレッド部1のプロファイルラインTLよりも突出させることにより、センター陸部22〜24の接地圧の均一化を図り、センター陸部22〜24の接地長を確保して操縦安定性を改善すると共に、センター陸部22〜24のエッジ部の摩擦エネルギーを低減して耐摩耗性を改善することができる。その際、センター陸部22〜24の突出量T22〜T24を車両内側に向かって順次大きくすることにより、センター陸部22〜24の接地長を延長させる効果が車両内側ほど強くなるため、特に直進時の操縦安定性を効果的に改善することができる。つまり、直進時には車両内側の接地状態が操縦安定性に大きく寄与するため、車両内側での接地長を確保することが重要である。また、タイヤセンターラインCL上に位置するセンター陸部23を除く各センター陸部22,24の最大突出位置Pmaxを該センター陸部22,24の幅方向中心位置Pcよりもタイヤ幅方向内側に配置することにより、これらセンター陸部22,24のタイヤ幅方向内側の部位の接地長が増大するため、直進時の操縦安定性を効果的に改善することができる。つまり、センター陸部22〜24の接地長がタイヤセンターラインCLに向かって徐々に増加するような接地形状を形成することにより、直進時の操縦安定性の改善効果を高めることができる。
上記空気入りタイヤにおいて、センター陸部22〜24と同様に、ショルダー陸部21,25はトレッド部1のプロファイルラインTLよりも突出している。より具体的には、ショルダー陸部21,25の各々は、プロファイルラインTLからの突出量が最大値となる最大突出位置Pmaxを有し、その最大突出位置Pmaxからタイヤ幅方向両側に向かって突出量が徐々に小さくなるような断面形状を有している。また、ショルダー陸部21,25において、最大突出位置Pmaxは各ショルダー陸部21,25の接地領域内での幅方向中心位置Pcよりもタイヤ幅方向内側に配置されている。
このようにショルダー陸部21,25をトレッド部1のプロファイルラインTLよりも突出させ、各ショルダー陸部21,25の最大突出位置Pmaxを該ショルダー陸部21,25の接地領域内での幅方向中心位置Pcよりもタイヤ幅方向内側に配置することにより、操縦安定性と耐摩耗性の改善効果を更に高めることができる。この場合、車両内側のショルダー陸部21の突出量T21はそれと隣り合うセンター陸部22の突出量T22よりも小さくし、車両外側のショルダー陸部25の突出量T25はそれと隣り合うセンター陸部24の突出量T24よりも小さくするのが良い。これにより、トレッド部1の全体としての接地状態を良好に維持することができる。
センター陸部22〜24の突出量T22〜T24及びショルダー陸部21,25の突出量T21,T25は0.05mm〜2.0mmとするのが良い。これにより、操縦安定性と耐摩耗性をより効果的に改善することができる。突出量T21〜T25が上記範囲から外れると、操縦安定性と耐摩耗性の改善効果が低下する。特に、センター陸部22〜24の突出量T22〜T24は0.2mm〜0.6mmとし、ショルダー陸部21,25の突出量T21,T25は0.1mm〜0.5mmとすることが好ましい。
また、タイヤ幅方向に隣り合うセンター陸部22〜24の突出量T22〜T24の差(例えば、T22−T23又はT23−T24)は0.1mm〜0.8mmとするのが良い。これにより、操縦安定性と耐摩耗性をより効果的に改善することができる。突出量T22〜T24の差が上記範囲から外れると、操縦安定性と耐摩耗性の改善効果が低下する。
図4に示すように、タイヤセンターラインCL上に位置するセンター陸部23を除く各センター陸部22,24において、該センター陸部22,24のタイヤ幅方向外側の端部位置から最大突出位置Pmaxまでのタイヤ幅方向の距離D22,D24は該センター陸部22,24の幅W22,W24の55%〜95%とするのが良い。つまり、0.55≦D22/W22≦0.95、0.55≦D24/W24≦0.95の関係を満足することが好ましい。同様に、各ショルダー陸部21,25において、該ショルダー陸部21,25の接地領域内でのタイヤ幅方向外側の端部位置から最大突出位置Pmaxまでのタイヤ幅方向の距離D21,D25は該ショルダー陸部の接地領域内での幅W21,W25の55%〜95%とするのが良い。つまり、0.55≦D21/W21≦0.95、0.55≦D25/W25≦0.95の関係を満足することが好ましい。これにより、直進時の操縦安定性をより効果的に改善することができる。上記比率が55%より小さいと直進時の操縦安定性の改善効果が低下し、逆に95%を超えると接地形状が悪化し、操縦安定性及び耐摩耗性の改善効果が損なわれる恐れがある。特に、上記比率は60%〜80%の範囲とすることが望ましい。なお、タイヤセンターラインCL上に位置するセンター陸部23のタイヤ幅方向外側の端部位置から最大突出位置Pmaxまでのタイヤ幅方向の距離D23は該センター陸部23の幅W23に対して特に規定されるものではない。
図6は従来の空気入りタイヤのフットプリントの一例を示し、図7は本発明の空気入りタイヤのフットプリントの一例を示すものである。従来の空気入りタイヤはトレッド部の各陸部を該トレッド部のプロファイルラインから突出させていないものである。図6に示すように、従来の空気入りタイヤのフットプリントX1では、センター陸部の接地長が短くなっており(A部参照)、ショルダー陸部の接地面積が不十分になっている(B部参照)。これに対して、図7に示すように、本発明の空気入りタイヤのフットプリントX2では、上記A部及びB部に対応する部分の接地状態が改善されていることが判る。
上述した実施形態では、トレッド部に4本の主溝を設け、これら4本の主溝により5列の陸部を区画した場合について説明したが、本発明は、トレッド部に少なくとも3本の主溝を設け、これら少なくとも3本の主溝により少なくとも4列の陸部を区画したトレッドパターンに適用することができる。このようなトレッドパターンに上記構造を適用することにより、操縦安定性と耐摩耗性の改善効果を得ることができる。
タイヤサイズ185/65R15で、トレッド部と一対のサイドウォール部と一対のビード部とを備え、トレッド部はタイヤ周方向に延びる4本の主溝と該主溝により区画された5列の陸部を有すると共に、車両に対する装着方向が指定された空気入りタイヤにおいて、トレッド部のプロファイルラインからの各陸部の突出量、及び、各陸部における最大突出位置を表1のように設定した比較例1〜3及び実施例1〜6のタイヤを製作した。
表1において、5列の陸部を車両内側から車両外側に向かって順次L1,L2,L3,L4,L5と表記した。また、各陸部における最大突出位置は、各陸部の幅に対する各陸部のタイヤ幅方向外側の端部位置から最大突出位置までのタイヤ幅方向の距離の比にて表した。
これら試験タイヤについて、下記試験方法により、耐摩耗性、操縦安定性を評価し、その結果を表1に併せて示した。
耐摩耗性:
各試験タイヤをリムサイズ15×5.5Jのホイールに組み付けてセダンタイプの前輪駆動車に装着し、空気圧200kPaの条件にてモニター走行を実施し、トレッド部が全摩耗するまでの走行距離を測定した。評価結果は、比較例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど耐摩耗性が優れていることを意味する。
各試験タイヤをリムサイズ15×5.5Jのホイールに組み付けてセダンタイプの前輪駆動車に装着し、空気圧200kPaの条件にてモニター走行を実施し、トレッド部が全摩耗するまでの走行距離を測定した。評価結果は、比較例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど耐摩耗性が優れていることを意味する。
操縦安定性:
各試験タイヤをリムサイズ15×5.5Jのホイールに組み付けてセダンタイプの前輪駆動車に装着し、空気圧200kPaの条件にて、アスファルト路面からなるテストコースにおいて100km/h以下の速度レンジでの官能評価を行った。操縦安定性は直進時と旋回時とに分けて評価した。直進時の操縦安定性は、車両を直進走行する際のハンドルの手ごたえと操舵時の車両の応答性についての評価である。旋回時の操縦安定性は、半径30mの円旋回を行う際の車両の操縦性と安定性についての評価である。評価結果は、比較例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど操縦安定性が優れていることを意味する。
各試験タイヤをリムサイズ15×5.5Jのホイールに組み付けてセダンタイプの前輪駆動車に装着し、空気圧200kPaの条件にて、アスファルト路面からなるテストコースにおいて100km/h以下の速度レンジでの官能評価を行った。操縦安定性は直進時と旋回時とに分けて評価した。直進時の操縦安定性は、車両を直進走行する際のハンドルの手ごたえと操舵時の車両の応答性についての評価である。旋回時の操縦安定性は、半径30mの円旋回を行う際の車両の操縦性と安定性についての評価である。評価結果は、比較例1を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど操縦安定性が優れていることを意味する。
この表1から判るように、実施例1〜6のタイヤは、比較例1との対比において、良好な耐摩耗性を維持しながら、操縦安定性が効果的に改善されており、特に、直進時の操縦安定性が良好であった。一方、比較例2のタイヤは、各陸部における最大突出位置が各陸部の幅方向中心位置と一致しているため、操縦安定性の改善効果が不十分であった。また、比較例3のタイヤは、センター陸部の突出量が一定であるため、操縦安定性の改善効果が不十分であった。
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
11,12,13,14 主溝
21,25 ショルダー陸部
22,23,24 センター陸部
TL プロファイルライン
2 サイドウォール部
3 ビード部
11,12,13,14 主溝
21,25 ショルダー陸部
22,23,24 センター陸部
TL プロファイルライン
Claims (8)
- タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、前記トレッド部はタイヤ周方向に延びる少なくとも3本の主溝と該主溝により区画された少なくとも4列の陸部を有し、前記トレッド部は前記陸部のエッジ位置及び前記トレッド部の接地端位置に基づいて特定されるタイヤ幅方向のプロファイルラインを有すると共に、車両に対する装着方向が指定された空気入りタイヤにおいて、
前記陸部がタイヤ幅方向の最外側に位置する一対のショルダー陸部と該一対のショルダー陸部の相互間に位置する複数のセンター陸部を含み、前記センター陸部を前記トレッド部のプロファイルラインよりも突出させ、前記センター陸部の前記プロファイルラインからの突出量をより車両内側に位置するセンター陸部に向かって順次大きくすると共に、タイヤセンターライン上に位置するセンター陸部を除く各センター陸部の最大突出位置を該センター陸部の幅方向中心位置よりもタイヤ幅方向内側に配置したことを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記センター陸部の突出量を0.05mm〜2.0mmとしたことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- タイヤ幅方向に隣り合うセンター陸部の突出量の差を0.1mm〜0.8mmとしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
- タイヤセンターライン上に位置するセンター陸部を除く各センター陸部において、該センター陸部のタイヤ幅方向外側の端部位置から最大突出位置までのタイヤ幅方向の距離を該センター陸部の幅の55%〜95%としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記ショルダー陸部を前記トレッド部のプロファイルラインよりも突出させ、各ショルダー陸部の最大突出位置を該ショルダー陸部の接地領域内での幅方向中心位置よりもタイヤ幅方向内側に配置したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記ショルダー陸部の突出量をそれと隣り合うセンター陸部の突出量よりも小さくしたことを特徴とする請求項5に記載の空気入りタイヤ。
- 前記ショルダー陸部の突出量を0.05mm〜2.0mmとしたことを特徴とする請求項5又は6に記載の空気入りタイヤ。
- 各ショルダー陸部において、該ショルダー陸部の接地領域内でのタイヤ幅方向外側の端部位置から最大突出位置までのタイヤ幅方向の距離を該ショルダー陸部の接地領域内での幅の55%〜95%としたことを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
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