JP2016052666A - 接合構造体およびその製造方法、ならびに冷却器 - Google Patents

接合構造体およびその製造方法、ならびに冷却器 Download PDF

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卓矢 池田
Takuya Ikeda
卓矢 池田
武士 物種
Takeshi Monotane
武士 物種
石井 隆一
Ryuichi Ishii
隆一 石井
繁信 栃山
Shigenobu Tochiyama
繁信 栃山
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Abstract

【課題】被接合部材を接合する装置を複雑または大型にすることなく、接合時に発生するスパッタまたはバリの発生、成長および飛散による不具合を抑制する接合構造体およびその製造方法、ならびに当該接合構造体を含む冷却器を提供する。
【解決手段】第1の主表面1sを有する第1の被接合部材1と、第2の主表面2sを有する第2の被接合部材2とを備えている。第1の被接合部材1と第2の被接合部材2とは接合部3において互いに接合されている。第1または第2の被接合部材1,2の少なくともいずれかが、接合部3において薄肉部5を含んでいる。薄肉部5における第1または第2の主表面1s,2sに交差する方向に関する厚みは、薄肉部5以外の厚肉部における厚みよりも薄い。
【選択図】図4

Description

本発明は接合構造体およびその製造方法、ならびに冷却器に関し、特に冷却器に用いられる接合構造体およびその製造方法に関するものである。
複数の構造体を接合することにより接合構造体を形成する場合、その接合の際に、スパッタまたはバリなどが発生する場合がある。たとえば、消耗式アーク溶接およびレーザ溶接においてはスパッタが発生し、摩擦攪拌接合においてはバリが発生する。
接合時にスパッタまたはバリが発生した場合、形成される接合構造体の加工性、使用性、審美性などに意図せぬ影響を及ぼす可能性がある。たとえば半導体部品が搭載された被接合部材を他の被接合部材と接合する場合、接合時に発生するスパッタまたはバリが半導体部品に接触することにより、半導体部品が損傷を受ける可能性がある。このため、上記の接合の際には、スパッタまたはバリが製品に影響を与えないように、スパッタまたはバリの発生、成長および飛散を抑制する必要がある。
たとえば特許文献1においては、摩擦攪拌接合時に発生するバリの成長を制限することが可能な部材が、摩擦攪拌接合用のツールの外側に設置された摩擦攪拌接合装置が開示されている。これにより、ショルダーの端部から発生するバリを摩擦攪拌接合のヘッド内に収めることができるため、たとえば半導体部品が搭載された被接合部材においても、摩擦攪拌接合を適用することができる。
特開2009−190040号公報
特許文献1のバリの成長を抑制する方法においては、当該摩擦攪拌接合装置に設置される、バリの成長を制限する部材が大型でありかつその構造が複雑である。このため当該摩擦攪拌接合装置の全体が大型となりかつその構造が複雑となる。これに伴い当該摩擦攪拌接合装置のコストが増大する可能性がある。
また特許文献1のバリの成長を抑制する方法は、被接合部材の形状によっては適用できない場合がある。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、被接合部材を接合する装置を複雑または大型にすることなく、接合時に発生するスパッタまたはバリの発生、成長および飛散により不具合を蒙る可能性が低減された構成の接合構造体およびその製造方法、ならびに当該接合構造体を含む冷却器を提供することである。
一実施の形態に係る接合構造体は、第1の主表面を有する第1の被接合部材と、第2の主表面を有する第2の被接合部材とを備えている。第1の被接合部材と第2の被接合部材とは接合部において互いに接合されている。第1または第2の被接合部材の少なくともいずれかが、接合部において薄肉部を含んでいる。薄肉部における第1または第2の主表面に交差する方向に関する厚みは、薄肉部以外の厚肉部における厚みよりも薄い。
一実施の形態に係る接合構造体の製造方法は、まず第1の主表面を有する第1の被接合部材と、第2の主表面を有する第2の被接合部材とが準備される。第1または第2の被接合部材の少なくともいずれかに薄肉部が形成される。第1の被接合部材と第2の被接合部材とが互いに接合される。薄肉部における第1または第2の主表面に交差する方向に関する厚みが、薄肉部以外の厚肉部における厚みよりも薄く形成される。第1または第2の被接合部材の少なくともいずれかの薄肉部が接着されることにより接合部が形成される。
本発明によれば、複雑で大型の摩擦攪拌接合装置などを用いることなく、スパッタまたはバリの発生、成長および飛散による半導体部品などの損傷を抑制することが可能な接合構造体およびその製造方法、ならびに当該接合構造体を含む冷却器を提供することができる。
一実施の形態における冷却器の構成を示す概略図である。 実施の形態1における接合構造体の一の実施例を示す概略平面図である。 図2のIII−III線に沿う部分の概略断面図である。 実施の形態1における接合構造体のうち特に段差部における接合状態を示す概略断面図である。 実施の形態1における接合構造体のうち特に止り穴部における接合状態を示す概略断面図である。 実施の形態1における接合構造体の製造方法の第1工程を示す概略断面図である。 実施の形態1における接合構造体の製造方法の第2工程を示す概略断面図である。 実施の形態1における接合構造体の製造方法の第3工程を示す概略断面図である。 実施の形態1における接合構造体の製造方法の第4工程であり、摩擦攪拌接合による段差部の接合工程を示す概略断面図である。 実施の形態1における接合構造体の製造方法に用いられるツールの構成を示す概略断面図である。 実施の形態1における接合構造体の製造方法の第4工程であり、摩擦攪拌接合による止り穴部の接合工程を示す概略断面図である。 図9の第1の変形例であり、アーク溶接による接合工程を示す概略断面図である。 図9の第2の変形例であり、抵抗溶接による接合工程を示す概略断面図である。 図9の第3の変形例であり、ろう付けによる接合工程を示す概略断面図である。 図9の第4の変形例であり、電子ビーム溶接による接合工程を示す概略断面図である。 図9の第5の変形例であり、2つの被接合部材の双方に薄肉部が形成された場合の接合工程を示す概略断面図である。 実施の形態2における接合構造体のうち特に段差部における接合状態を示す概略断面図である。 実施の形態2における接合構造体の製造方法の一工程であり、摩擦攪拌接合による段差部の接合工程を示す概略断面図である。 図18の第1の変形例であり、アーク溶接による接合工程を示す概略断面図である。 図18の第2の変形例であり、電子ビーム溶接による接合工程を示す概略断面図である。 図18の第3の変形例であり、ろう付けによる接合工程を示す概略断面図である。 実施の形態3における接合構造体のうち特に段差部における接合状態を示す概略断面図である。 実施の形態4における接合構造体のうち特に段差部における接合状態を示す概略断面図である。 実施の形態5における接合構造体のうち特に段差部における接合状態を示す概略断面図である。 実施の形態5における接合構造体の製造方法に用いられるツールの構成の第1の変形例を示す概略断面図である。 実施の形態5における接合構造体の製造方法に用いられるツールの構成の第2の変形例を示す概略断面図である。 実施の形態5における接合構造体の製造方法の、図25のツールを用いた一工程を示す概略断面図である。 実施の形態5における接合構造体の製造方法の、図26のツールを用いた一工程を示す概略断面図である。 実施の形態6における接合構造体のうち特に段差部における接合状態を示す概略断面図である。 実施の形態7における接合構造体のうち特に段差部における接合状態を示す概略断面図である。
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
(実施の形態1)
まず一実施の形態の冷却器の構成について図1を用いて説明する。図1を参照して、一実施の形態の冷却器100は、後述する金属または合金材料からなる被接合部材1(第1の被接合部材)と被接合部材2(第2の被接合部材)とを有しこれらが接合された構成を有する接合構造体を有している。被接合部材1と被接合部材2とは接合部3において互いに接合されている。また冷却器100は、その構成部材として、冷媒流通部材101を有している。冷媒流通部材101は、上記接合構造体および、冷却器100の内部または外部に載置された対象物を冷却するための冷媒が流通する部材である。ここでは冷媒流通部材101は、被接合部材1または被接合部材2の少なくともいずれかの内部を通るように形成されており、被接合部材1,2の内部に冷媒を流すことが可能な構成となっている。
なお図1における被接合部材1,2などは実物の形状を表しておらず、あくまで被接合部材1と被接合部材2とが互いに接合された接合構造体を有する旨の説明のために、形状等を考慮せず簡略化して示している。
次に図2〜図5を用いて、本実施の形態の接合構造体の構成について説明する。
図2および図3を参照して、本実施の形態の接合構造体の一の実施例においては、たとえば矩形状を有する被接合部材1が矩形状を有する被接合部材2の上に重なるように接合されている。ただし被接合部材1,2の平面形状は矩形状でなくてもよい。
より具体的には、被接合部材1の1対の主表面1s(第1の主表面)のうち一方(図3の下方)の主表面1sと、被接合部材2の1対の主表面2s(第2の主表面)のうち一方(図3の上方)の主表面2sとが互いに重畳するように接着するように配置されている。これにより、被接合部材1と被接合部材2との間には接合部3が形成され、この接合部3において被接合部材1と被接合部材2とは両者が一体となるように接合されている。
被接合部材1の上側の主表面1sには、たとえばMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタなどの半導体素子を含む半導体部品4が搭載されている。被接合部材1は、薄肉部と厚肉部とを有している。薄肉部は、被接合部材1のうち、図3の上下方向すなわち被接合部材1の1対の主表面1sの延在する方向に交差する方向(たとえば直交する方向)に関する厚みが、薄肉部以外の領域である厚肉部における上記厚みよりも薄くなった領域である。逆に言えば、厚肉部における被接合部材1の上記厚みは、薄肉部における被接合部材1の上記厚みよりも厚くなっている。半導体部品4は、被接合部材1の厚肉部の上に載置されている。
図2および図3においては被接合部材2には薄肉部が形成されていないが、被接合部材2にもその一部に薄肉部が形成されていてもよい。また被接合部材2の上側の主表面2sの一部には窪み部DPが形成されていてもよい。窪み部DPは上記の薄肉部とは別の概念で形成された相対的に肉厚の薄い領域であり、被接合部材2の主表面2sが被接合部材1の主表面1sと嵌合することにより主表面1sと主表面2sとの接合を容易にするために凹形状に加工された領域である。
なおここでは主表面1s,2sは、被接合部材1,2のそれぞれの厚肉部を構成する表面を意味するものとし、被接合部材1,2のそれぞれの薄肉部を含まないものとする。
被接合部材1には薄肉部として、段差部5と、止り穴部6とを有している。このうち段差部5は、図3に示すように平面視における被接合部材1の端部EDGに形成された薄肉部であり、図2に示すように被接合部材1の平面視における外周に沿って、その外周1周分にわたって形成された外周段差部である。なお段差部5は、被接合部材1の平面視における外周の一部のみに形成されていてもよい。なお被接合部材1の端部EDGとは、ここでは被接合部材1の平面視における最外縁に相当する端面1eおよびそれに近い外周の領域を意味する。端面1eは主表面1sに交差する方向に延びる、被接合部材1の厚みの方向に延びる面である。
段差部5とは、ここでは特に薄肉部のうち、その側壁である段差部側壁5bの一部が、当該段差部側壁5bの他の一部と対向することなく、平面視における被接合部材1の外側を向くように露出するように形成されたものをいうこととする。
一方、止り穴部6は、被接合部材1のうち端部EDG以外の中央側の領域である中央部CENに形成された薄肉部であり、図2に示すように被接合部材1の平面視における中央部に1つ以上(図2においては3つ)、たとえば円形状を有するように形成された凹部である。ただし止り穴部6の平面形状は円形状に限らず、たとえば楕円形状であってもよい。また図2の例においては図の左右方向に関する中央に止り穴部6の中心が乗るように止り穴部6が形成されているが、止り穴部6はたとえば被接合部材1の中央から図2の左側または右側に偏った位置に配置されてもよい。複数(ここでは3つ)の止り穴部6が形成される場合、これらのそれぞれは互いに被接合部材1の主表面1sに沿う方向に関して間隔をあけて配置されている。
止り穴部6とは、ここでは特に薄肉部のうち、その側壁である凹部側壁6bの一部が、当該凹部側壁6bの他の一部と対向するように形成され、平面視における被接合部材1の外側を向くように露出するように形成されてはいないものをいうこととする。
図2および図3の接合構造体は、被接合部材1に1つの段差部5と3つの止り穴部6とを有しているが、被接合部材1に形成される段差部5および止り穴部6の数は任意である。たとえば段差部5は、被接合部材1の端部の一部に、互いに間隔をあけて複数形成されてもよい。
特に図3を参照して、接合部3は、被接合部材1の薄肉部である段差部5および止り穴部6が、被接合部材2と接合された領域として形成されている。図4を参照して、たとえば端部EDGにおいて被接合部材1の厚みが薄くなった段差部5は、段差部底壁5aと、段差部側壁5bとを有するように形成されている。段差部底壁5aは被接合部材1の主表面1sに沿う方向(たとえば平行な方向)に延びる平面であり、段差部側壁5bは被接合部材1の主表面1sに交差する方向(たとえば垂直な方向)に延びる平面である。したがって本実施の形態においては、段差部側壁5bは段差部底壁5aにほぼ直交するように交差している。
たとえば後述する摩擦攪拌接合により被接合部材1と被接合部材2とが接合される場合、被接合部材1と被接合部材2とが接触された状態で、被接合部材1を構成する金属材料と被接合部材2を構成する金属材料とが塑性流動を起こす。これにより被接合部材1の構成材料と被接合部材2の構成材料とが互いに攪拌された領域が接合部3として形成され、被接合部材1と被接合部材2とが互いに接着固定される。
図5を参照して、同様に、たとえば中央部CENにおいて被接合部材1の厚みが薄くなった止り穴部6は、凹部底壁6aと、凹部側壁6bとを有するように形成されている。凹部底壁6aは被接合部材1の主表面1sに沿う方向に延びる平面であり、凹部側壁6bは被接合部材1の主表面1sに交差する方向に延びる平面である。したがって本実施の形態においては、凹部側壁6bは凹部底壁6aにほぼ直交するように交差している。
たとえば摩擦攪拌接合により接合された止り穴部6についても上記の段差部5と同様に、被接合部材1を構成する金属材料と被接合部材2を構成する金属材料との塑性流動により、被接合部材1の構成材料と被接合部材2の構成材料とが互いに攪拌された領域が接合部3として形成される。
薄肉部である段差部5および止り穴部6は、その厚肉部との厚みの差(図4および図5の上下方向に示す段差の高さ)が0.5mm以上であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましい。
なお図4および図5はイメージを容易にするために、被接合部材1および被接合部材2の形状を図3の当該部分よりも簡略化して図示している。このため図3と図4および図5とは態様が一部整合しない場合がある。
次に図6〜図16を用いて、本実施の形態における接合構造体の、特に図4および図5に示す部分の製造方法について説明する。
図6を参照して、まず被接合部材1と被接合部材2とが準備される。被接合部材1,2はたとえば一般公知の金属材料または合金材料により形成されることが好ましく、たとえばアルミニウム合金などにより形成されることが好ましい。一例として、図6のように矩形の断面形状(および平面形状)を有する被接合部材1,2が準備されるが、被接合部材1,2の形状はこれに限られない。被接合部材1は1対の主表面1sを、被接合部材2は1対の主表面2sを、それぞれ有している。
図7を参照して、被接合部材1の端部EDGに、薄肉部としての段差部5が形成される。すなわち被接合部材1の端面1eの一部および一方(図7における上側)の主表面1sの一部が除去される加工がなされることにより、当該除去された領域の表面が段差部底壁5aおよび段差部側壁5bとして露出するように、他の領域よりも厚みが薄くなった段差部5が形成される。段差部5は、被接合部材1の主表面1sの一部に対してマシニング加工またはフライス加工がなされることにより形成される。
図8を参照して、被接合部材1の中央部CENに、薄肉部としての止り穴部6が形成される。すなわち被接合部材1の中央部CENにおける主表面1sの一部を除去するように被接合部材1の一部が除去される加工がなされることにより、当該除去された領域の表面が凹部底壁6aおよび凹部側壁6bとして露出するように、他の領域よりも厚みが薄くなった止り穴部6が形成される。止り穴部6は、被接合部材1の主表面1sの一部に対してマシニング加工またはフライス加工がなされることにより形成される。
図9を参照して、被接合部材1と被接合部材2とが互いに接合される。ここでは被接合部材1の段差部5が被接合部材2の上に重畳するようにセットされた状態で、被接合部材1の段差部5の真下の主表面1sと被接合部材2の上側の主表面2sとが互いに接着される。これにより被接合部材1の段差部5が被接合部材2と互いに接合される。
被接合部材1と被接合部材2との接合方法としては、たとえば図10に示すようなツール7を用いた摩擦攪拌接合が用いられる。具体的には、図10を参照して、ツール7はたとえば円筒形状を有しており平面視における面積(直径)が比較的大きいショルダー部7aと、ショルダー部7aの下端面7bに接するように取り付けられ、ショルダー部7aよりも平面視における面積(直径)が小さいプローブ部7cとを有している。
接合の際は、図9に示すように、接合しようとする領域すなわち段差部5と被接合部材2とが重畳する領域の真上にツール7がセットされる。ツール7は、その下側の領域(プローブ部7cまたは下端面7b)が段差部5の段差部底壁5aに接した状態で、または下側の領域が被接合部材1の内部に挿入された状態で、回転方向Rに回転しながら移動方向Mに移動する。この移動方向Mは図2中に点線の矢印で示す移動方向Mに相当する。
このプローブ部7cが段差部底壁5aに接触しながら回転することによる摩擦熱により段差部底壁5aを含む被接合部材1、および被接合部材2の一部が加熱されて軟化する。さらにこの軟化された材料がツール7の回転により攪拌され塑性流動を起こすことにより被接合部材1と被接合部材2とが接合される。
同様に、止り穴部6についても摩擦攪拌接合がなされる。図11を参照して、ここでは接合しようとする領域すなわち止り穴部6と被接合部材2とが重畳する領域の真上にツール7がセットされる。ツール7は、その下側の領域が止り穴部6の凹部底壁6aに接した状態で、または下側の領域が被接合部材1の内部に挿入された状態で、回転方向Rに回転する。この回転方向Rは図2中に点線の矢印で示す回転方向Rに相当する。このときの摩擦熱により上記の段差部5と同様に攪拌され塑性流動を起こすことにより、被接合部材1と被接合部材2とが接合される。
ところで摩擦攪拌接合用のツール7は、被接合部材1,2よりも融点が高く、高温下での機械的強度が高い材料により形成されることが必要である。たとえば被接合部材1,2がアルミニウム合金である場合、ツール7の特にプローブ部7cはいわゆるSKD61などの工具鋼により形成されることが好ましい。また被接合部材1,2が軟鋼またはステンレス鋼である場合に摩擦攪拌接合を用いる場合には、ツール7の特にプローブ部7cはコバルト合金または超硬合金により形成されることが好ましい。
摩擦攪拌接合は、接合時にショルダー部7aの下端面7bなどと被接合部材1,2との接触面からバリ8(図9参照)などの副産物が発生する。バリは最終的に形成される製品の加工性、使用性、審美性などに意図せぬ影響を与えるため、摩擦攪拌接合の工程を行なった後にはバリを除去する工程を行なうことが好ましい。
なお被接合部材1,2の接合工程は、上記の摩擦攪拌接合以外に以下の各方法によりなされてもよい。図12を参照して、たとえばアーク溶接を用いる場合には、接合しようとする領域の真上にアークトーチ9が、被接合部材1の段差部底壁5aなどと互いに間隔をあけて設置され、アークトーチ9と段差部底壁5aなどとの間にアーク10と呼ばれる放電現象を発生させる。この放電現象により発生するアーク熱により被接合部材1,2を溶融させ両者が溶接される。
アーク溶接を行なった場合、溶接時にスパッタ11と呼ばれる副産物が発生する。特に消耗電極式アーク溶接を行なった場合にはスパッタ11が多く発生する。
その他、図13を参照して、いわゆる抵抗溶接により接合を行なってもよい。抵抗溶接は電極17と呼ばれる棒状の銅合金を被接合部材1,2に押し付け、電流を流した際に発生する抵抗発熱を利用して被接合部材1と被接合部材2とを接合する方法である。図13においては互いに接触されている段差部5の真下における下側の主表面1sと上側の主表面2sとの各表面の近くの領域のみが加熱され接合される。
図14を参照して、ろう付けにより被接合部材1,2が接合されてもよい。この場合は接合しようとする主表面1sと主表面2sとの間にろう材12がセットされた状態でたとえば加熱がなされる。なおろう付けの場合は溶接時にスパッタ11が発生する場合がある。
図15を参照して、電子ビーム溶接により当該接合がなされてもよい。この場合は接合しようとする領域に照射線14としての電子ビームが照射されることにより加熱、接合される。この照射線14は電子ビームの代わりにレーザであってもよく、その場合はレーザ溶接により当該接合がなされる。
図12〜図15においては段差部5の接合を示しているが、止り穴部6についても同様に図12〜図15の各方法により接合がなされてもよい。
図16を参照して、以上においては被接合部材1のみに薄肉部である段差部5が形成されているが、上記のように被接合部材2にも薄肉部である段差部5、および/または図示されない止り穴部が形成されてもよい。また図示されないが、(特にたとえば被接合部材2に半導体部品4などが搭載される場合、)被接合部材2のみに薄肉部が形成されてもよい。
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
たとえばアーク溶接による被接合部材1と被接合部材2との接合は、安価で被接合部材1,2の溶接が可能であり、多くの金属材料に対して適用可能である。このためアーク溶接は被接合部材1と被接合部材2との接合方法として最もよく使われる。
しかしアーク溶接の際に発生する副産物であるスパッタ11(図12参照)と呼ばれる溶融された金属粒などが、たとえば被接合部材1に搭載された半導体部品4に向けて飛散すれば、半導体部品4が損傷を受けたり、接合構造体の外観の態様を損ねたりする可能性がある。アーク溶接に用いる電流としてパルス電流を用いるいわゆるパルスアーク溶接を用いることにより、スパッタ11の発生量を低減させることはできるが、スパッタ11の発生を完全になくすことは困難である。
一方、摩擦攪拌接合においては固相状態で被接合部材1と被接合部材2とが接合されるので、接合時の被接合部材1,2の最高到達温度が融点以下になる。そのため摩擦攪拌接合は溶接に比べ接合部における強度を高くすることができ、かつ接合部における変形量を小さくすることができる。
しかし摩擦攪拌接合においても接合時に、ツール7が被接合部材1と接触しながらこれを部分的に削ることにより、副産物であるバリ8(図9参照)が発生し、これがスパッタ11と同様に半導体部品4などに影響を及ぼす可能性がある。そこでバリ8の発生を抑制するために、摩擦攪拌接合の条件を制御することが要求される。特にツール7の下側の領域が被接合部材1,2の表面から内部に挿入される深さがバリ8の発生量に顕著に影響を与え、たとえば当該深さをわずか0.1mm深くすることのみにより、バリ8の発生量が非常に増加する。すなわち摩擦攪拌接合の条件を制御することのみによりバリ8の発生量を高精度に低減することは困難である。
またツール7が被接合部材1,2を接合する方向に対するツール7の相対的な回転方向によってバリ8の発生する方向が制御できる。しかし特に被接合部材1,2の接合を開始した位置の近くにおいては四方にバリ8が多量に発生し、半導体部品4に接触可能なほどにそのバリ8の寸法が長くなる場合があるため、ツール7の回転方向を制御する方法によっても半導体部品4はバリ8から完全に逃れることはできない。さらに被接合部材1,2の接合を開始する位置を半導体部品4の配置される位置から離れた位置にすれば、被接合部材1,2が大きくなるためこの方法も万全とはいえない。
そこで本実施の形態においては、被接合部材1,2の少なくともいずれか(図3においては被接合部材1)が接合部3において薄肉部としての段差部5および(または)止り穴部6を備えている。たとえば摩擦攪拌接合を用いる場合、当該接合構造体は図6〜図10に示す製造方法により形成される。
このようにすれば、当該薄肉部が存在しない場合に比べて、少なくとも当該薄肉部の厚みの分だけ、接合部3から半導体部品4などまでの距離を長くすることができる。このため、バリ8が形成されるツール7の下側の領域(プローブ部7cの先端部または下端面7b)と被接合部材1,2との接触部から発生するバリ8が半導体部品4を損傷させる可能性を低減することができる。
また、薄肉部を設けることにより段差部側壁5bおよび凹部側壁6bが形成されるため、接合部3から発生するバリ8は段差部側壁5bまたは凹部側壁6bに衝突して屈曲する。これによりバリ8がそこからさらに外側へ延び、半導体部品4などに損傷を与える可能性が低減される。またバリ8が段差部側壁5bまたは凹部側壁6bに接触すれば、それ以上バリ8が長く伸びることが抑制される。このことから本実施の形態によれば、被接合部材1,2に搭載された半導体部品4などが、接合部3から発生するバリ8の接触などにより損傷を受ける可能性を抑制することができる。
また、薄肉部における接合を行なう場合には、接合部3の体積が小さくなるため、接合部3に加える熱量を小さくすることができる。このためプローブ部7cなど被接合部材1,2の内部に挿入される部材の挿入量を小さくすることができる。挿入量を小さくすることにより、プローブ部7cまたは下端面7bなどから発生するバリ8の絶対量を少なくすることができる。
本実施のように接合部3が、被接合部材1の主表面1sと被接合部材2の主表面2sとの重畳により形成される場合には、被接合部材2の上に被接合部材1を載置するだけで両者の主表面1s,2sを接触させることができる。被接合部材2の上に被接合部材1を載置するだけであるため被接合部材1と被接合部材2との重ね合わせられる方向(上下方向)に関する位置ずれを考慮する必要がないことから、被接合部材1と被接合部材2との位置合わせが容易になる。
また本実施の形態においては、重畳された被接合部材1の上からツール7により下方向に加圧しながら接合することができる。このため接合部3に生じる隙間に起因する欠陥の発生を抑制することができる。接合部3に欠陥が発生しなくなるため、接合構造体を冷却器100に適用してその内部に冷媒を流したときに接合部3から冷媒が漏れるなどの不具合を抑制することができる。
以上により、本実施の形態のように接合構造体を構成する被接合部材1,2の形状を工夫すれば、たとえばバリアの成長を制限する部材を含む大型で複雑の摩擦攪拌接合装置などを用いることなく、一般的な摩擦攪拌接合用のツール7を用いてバリ8の成長および半導体部品4への損傷などを抑制することができる。このため接合構造体のコストの増大を抑制することができ、かつ本実施の形態を様々な形状の被接合部材(を含む接合構造体)に適用することができる。
さらに、図2および図3の一の実施例に示すように、平面視における被接合部材1の中央部CENに止り穴部6を設けて被接合部材2と接合することにより、両者の接合部3の周辺において被接合部材1と被接合部材2との間で互いに及ぼしあう拘束力を高めることができる。仮にこの拘束力が弱ければ接合部3の接合状態が劣化し不良を招く可能性があるが、拘束力を高めることにより、接合部3の接合力を高めることができる。上記の拘束力および接合力を高める観点からは、止り穴部6は一方向に長く延在する溝形状にするよりも本実施の形態のように円形状または楕円形状とすることが好ましい。
以上は本実施の形態において摩擦攪拌接合を用いた場合について説明しているが、アーク溶接による被接合部材1,2の接合を行なった場合においても上記と同様に、発生するスパッタ11の半導体部品4側などへの飛散による半導体部品4の損傷を抑制することができる。
さらに本実施の形態で述べた他の接合方法、すなわちレーザ溶接、電子ビーム溶接、抵抗溶接、ろう付けなどを用いた場合においても、それぞれの接合方法により発生するスパッタ、チリ、溶湯(溶融した金属)およびバリの発生、成長および飛散などによる半導体部品などの損傷を抑制することができる。
以上は特に被接合部材1に薄肉部を設けた場合の作用効果について説明しているが、被接合部材2に薄肉部を設けた場合においても、たとえば接合時における被接合部材2に搭載された半導体部品のバリなどによる損傷を抑制する効果を有する。またたとえば図16のように被接合部材2に半導体部品などが搭載されない場合においても、特に被接合部材1,2の重畳により接合部3を形成する場合において被接合部材1と被接合部材2との厚みの和をより小さくすることができる。このため、加えるべき熱量を減少させることができ、ツール7の挿入量およびバリ8などの発生量の低減につなげることができる。
(実施の形態2)
図17を参照して、本実施の形態の接合構造体を構成する被接合部材1,2の形状および態様は実施の形態1の被接合部材1,2の形状と同様であるとする。ただし本実施の形態においては、被接合部材1の平面視における最外縁である端面1e(第1の端面)のうち特に段差部5が形成された端部の端面1eと、被接合部材2の平面視における最外縁である端面2e(第2の端面)とが接着することにより、接合部3が形成されている。言い換えれば被接合部材1の端面1eと被接合部材2の端面2eとが互いに突き合わせるように接合されることにより、接合部3が形成されている。
ここでは被接合部材1の端部に形成された薄肉部としての段差部5の段差部底壁5aと、被接合部材2の主表面2sとが互いに連続した同一の面となるように(ツライチとなるように)、端面1eおよび端面2eにおいて接合される。具体的には、本実施の形態においては主表面1sと段差部底壁5aとが互いにほぼ同一の方向に延びており、主表面1sと端面1eとが互いに交差する方向(直交する方向)に延びている。また本実施の形態においては主表面2sと端面2eとが互いに交差する方向に延びている。これにより、上記の接合の態様となっている。
なお、これ以外の本実施の形態の構成は、実施の形態1の構成とほぼ同じであるため同一の要素については同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
次に図18〜図21を用いて、本実施の形態における接合構造体の製造方法について説明する。
図18を参照して、本実施の形態においても図6〜図8と同様に準備された被接合部材1と被接合部材2とが、ツール7を用いた摩擦攪拌接合により互いに接合される。ここでは被接合部材1の段差部5が形成されその厚みが薄くなった端面1eと、被接合部材2の一の方向の端面2eとが突き合せられるように互いに接触した状態で、当該接触部の上に搭載されるようにツール7がセットされる。この状態で実施の形態1と同様に、ツール7の下側の領域(プローブ部7cの先端部または下端面7b)が段差部5の段差部底壁5aに接した状態で、または下側の領域が被接合部材1の内部に挿入された状態で、ツール7は回転方向Rに回転しかつ移動方向Mに移動する。このときの摩擦熱により端面1eと端面2eとが接着することにより、被接合部材1と被接合部材2とが互いに接合される。
図19を参照して、本実施の形態においても、段差部5が形成された端面1eと被接合部材2の一の方向の端面2eとが突き合せられるように互いに接触した部分の上にアークトーチ9がセットされアーク10を発生させる方法により、端面1eと端面2eとが溶接されてもよい。
図20を参照して、本実施の形態においても、段差部5が形成された端面1eと被接合部材2の一の方向の端面2eとが突き合せられた部分に対して電子ビーム溶接またはレーザ溶接がなされることにより、端面1eと端面2eとが溶接されてもよい。
図21を参照して、本実施の形態においても、段差部5が形成された端面1eと被接合部材2の一の方向の端面2eとが突き合せられた部分に対してろう付けがなされることにより、端面1eと端面2eとが溶接されてもよいし、図示されないが本実施の形態においても抵抗溶接がなされてもよい。
いずれの接合方法を用いるにせよ、実施の形態1においては被接合部材1の段差部5と被接合部材2とを結ぶ方向(たとえば図9の上下方向)に接合部3が進行する(広がる)ように形成されるのに対し、本実施の形態においては被接合部材1の段差部5と被接合部材2とを結ぶ方向(たとえば図18の左右方向)に交差する方向に接合部3が進行する(広がる)ように形成される。本実施の形態においては、端面1eと端面2eとが接触する部分の全体が接着されるように(図18における段差部5の段差部底壁5aと交差する端面1eから段差部底壁5aに対向する図の下側の主表面1sと交差する端面1eまでの全体が接着されるように)被接合部材1と被接合部材2とが接合されることが好ましい。
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
実施の形態1のように2つの被接合部材1,2が重畳しその主表面1sと主表面2sとが接合する場合に限らず、本実施の形態のように2つの被接合部材1,2の主表面1sと主表面2sとがたとえば水平方向に沿って横に並ぶように端面1e,2e同士が接合される場合においても、実施の形態1と同様に接合時のバリおよびスパッタなどの副産物による半導体部品などの損傷を抑制することができる。すなわち、実施の形態1の図2および図3の実施例においては、2つの被接合部材1,2が重畳された重ね継手に本実施の形態が適用されているが、実施例においても(図示されないが)2つの被接合部材1,2のそれぞれの端面同士を突き合わせた形態の継手としてもよい。
本実施の形態のように2つの被接合部材1,2が横に並ぶように接合する場合には、実施の形態1のように両者を重ね合わせて接合する場合に比べて、接合部に加える熱の量を少なくすることができる。これは接合部を構成する部分の厚みが、2つの被接合部材1,2が重ね合わせられる実施の形態1に比べて薄くなるためである。
また特に摩擦攪拌接合を行なう場合、ツール7の回転方向に対する被接合部材1と被接合部材2との材質間の攪拌力が強いため、両者が横に並べられた場合に特に両者間の接合力を高めることができ、接合部3における欠陥の発生を抑制することができる。このため本実施の形態においては、被接合部材1の互いに対向する1対の主表面1sのうちの一方(上側)の主表面1sから他方(下側)の主表面1sに達するまでの全体が接着されてもよいが、その一部のみが(たとえば上側の主表面1sから、下側の主表面1sよりやや上側の部分まで)接着されてもよく、この場合においても十分な接合強度を確保することができる。
(実施の形態3)
図22を参照して、本実施の形態の接合構造体を構成する被接合部材1,2の形状および態様は、基本的に実施の形態1の被接合部材1,2の形状と同様であるとする。ただし本実施の形態においては、たとえば被接合部材1における段差部5の薄肉部とそれ以外の厚肉部との厚みの差が、両者を接合する工程において接合部3に発生するスパッタまたはバリ8などの副産物の最大寸法よりも大きくなるように形成される。言い換えれば、図22の被接合部材1において半導体部品4が搭載される主表面1sと、段差部5の段差部底壁5aとの、主表面1sに直交する方向に関する位置の差tは、バリ8などの最大寸法よりも大きくなるように形成される。
ここでバリ8の最大寸法とは、形成されたバリ8に対して測定し得る最大の長さ(寸法)を意味する。ここでは多数回形成されたバリ8のそれぞれの最大寸法のうちの最大値が、接合部3を形成する工程において接合部3に発生し得るバリ8の最大寸法であるものと定義する。具体的には、バリ8の最大寸法は5mm程度であるため、図22に示す段差tは5mmより大きいことが好ましく、10mm以上であることがより好ましい。
なお本実施の形態においては図22に示すように完成された製品である接合構造体にバリ8が残存していてもよいがこれが除去されてもよい。すなわち図22に示す構成からバリ8を除いた部分が、本実施の形態により形成される接合構造体の構成であると考えてもよい。このことは以下の各実施の形態においても同様である。また図示されないが、本実施の形態においては止り穴部6についても段差部5と同様に、その形成される部分における凹部底壁6aと、その上のたとえば主表面1sとの、主表面1sに直交する方向に関する位置の差tは、止り穴部6の接合部3において発生し得る副産物の最大寸法よりも大きくなるように形成されることが好ましい。
これ以外の本実施の形態の構成は、実施の形態1の構成とほぼ同じであるため同一の要素については同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
アーク溶接時のスパッタ11は、その発生、飛散する方向が何らかの原因で変化する場合がある。また摩擦拡散接合時などのバリ8は、その発生する方向が何らかの原因で変化したり、引き剥がれて半導体部品4の方に飛散することにより半導体部品4が損傷する可能性がある。
そこで本実施の形態においては上記のように段差部5などの段差tを、バリ8などの最大寸法よりも大きくすることにより、たとえば引き剥がされていないバリ8が段差部5の上側に配置される半導体部品4の表面に接触する可能性を低減することができる。またバリ8またはスパッタ11などが半導体部品4の方に飛散する場合においても、本実施の形態においては(詳述されていないがたとえば実施の形態1に比べて)段差部5などの段差tが大きく形成されるため、飛散したバリ8などが段差部側壁5bなどに衝突して弾かれ半導体部品4の方に向けて飛散されなくなる。このため飛散したバリ8などが半導体部品4に到達してこれを損傷する可能性を低減することができる。
以上により、本実施の形態においては、様々な外乱によりバリ8などの副産物の発生機構が通常と異なる機構に変化した場合においても、半導体部品4などの損傷を抑制することができる。また上記の作用効果は、段差部5のみならず止り穴部6についても同様である。
(実施の形態4)
図23を参照して、本実施の形態の接合構造体を構成する被接合部材1,2の形状および態様は、基本的に実施の形態1の被接合部材1,2の形状と同様であるとする。ただし本実施の形態においては、薄肉部であるたとえば段差部5の、第1または第2の主表面に沿う方向に関する幅w(段差部底壁5aの主表面1sに沿う方向に関する幅w)が、段差部5の薄肉部とそれ以外の厚肉部との厚みの差tよりも小さくなっている。言い換えれば、図23の被接合部材1において半導体部品4が搭載される主表面1sと、段差部5の段差部底壁5aとの、主表面1sに直交する方向に関する位置の差tは、段差部底壁5aの主表面1sに沿う方向の長さwよりも長くなっている。
さらに本実施の形態においては、たとえば上記の寸法wは、両者を接合する工程において接合部3に発生するスパッタまたはバリ8などの副産物の最大寸法よりも小さくなるように形成されることが好ましい。
また図示されないが、本実施の形態においては止り穴部6についても段差部5と同様に、その形成される部分における凹部底壁6aの主表面1sに沿う寸法wが、凹部底壁6aとその上のたとえば主表面1sとの主表面1sに直交する方向に関する位置の差tよりも小さくなるように形成されることが好ましい。
これ以外の本実施の形態の構成は、実施の形態1の構成とほぼ同じであるため同一の要素については同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
たとえば摩擦攪拌接合時に形成されるバリ8を除去せずに接合後の製品をハンドリングすれば、その使用者は負傷する可能性がある。そのため通常はアーク溶接および摩擦攪拌接合などによる処理後には発生した副産物であるスパッタまたはバリが除去されることが好ましい。しかしスパッタまたはバリを除去する工程により製造コストが増大するため、バリの除去が不要な製造方法が求められている。
そこで本実施の形態のように上記の寸法wを短く調整すれば、アーク溶接時に発生するスパッタまたは摩擦攪拌接合時に発生するバリは容易に段差部側壁5bに届く。このため当該スパッタまたはバリを段差部側壁5bに押しつけることができる。すなわち図23に示すように、たとえば形成されたバリ8が段差部側壁5bから力を受けることにより折れ曲がってそれ以降は最初に延びた方向に沿う方向に向かって延びながら内側に丸く巻かれた態様にすることができる。あるいは成長するバリ8が段差部側壁5bの表面に強く付着して張り付く態様となってもよい。
このようにすれば、接合部3から突出するバリ8によるエッジと呼ばれる鋭い部分が発生しなくなるため、たとえ接合後にスパッタまたはバリを除去する処理がなされないまま当該製品がハンドリングされても、バリ8などが飛散して負傷するなどの不具合の発生を抑制することができる。またたとえバリ8などが除去されずに完成された製品に残存していたとしても、最終的に形成される接合構造体の外観の審美性を向上させることができる。また上記の作用効果は、段差部5のみならず止り穴部6についても同様である。
(実施の形態5)
図24を参照して、本実施の形態の接合構造体を構成する被接合部材1,2の形状および態様は、基本的に実施の形態1の被接合部材1,2の形状と同様であるとする。ただし本実施の形態においては、たとえば段差部5を構成する薄肉部とそれ以外の厚肉部との境界部である薄肉部側壁としての段差部側壁5bが、主表面1sに交差(ほぼ直交)する方向に延びておらず、当該直交する方向から大きく傾いた方向に延びている。
具体的には、段差部側壁5bが段差部底壁5a(薄肉部底壁)から被接合部材1の厚みの方向に離れるにつれて(図24における上方向に向かうにつれて)、段差部5(の左側)に隣り合う厚肉部の主表面1sに沿う方向に関する寸法が大きくなるように延びるように、段差部側壁5bが段差部底壁5a(主表面1s)に直交する方向から大きく傾いている。すなわち主表面1sと段差部側壁5bとのなす角αが90°よりも大幅に小さい鋭角となるように、段差部側壁5bが段差部底壁5aと互いに交差している。
本実施の形態の構成についても、段差部5のみならず図示されない止り穴部6においても同様に成り立つ。これ以外の本実施の形態の構成は、実施の形態1の構成とほぼ同じであるため同一の要素については同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
実施の形態4の図23に示すように幅wを短く調整する方法のみでは、たとえバリ8を段差部側壁5bに押しつけても、バリ8が所望の方向以外の方向に跳ね返り、これがエッジを形成しないように丸く巻きつけさせることができない場合がある。これは実施の形態4においては段差部側壁5bが主表面1sおよび段差部底壁5aとのなす角度が大きく(ほぼ直交しており)、段差部側壁5bがバリ8などを押しつけてその進行方向を曲げさせる力が弱くなる可能性があるためである。
そこで本実施の形態においては、段差部側壁5bが主表面1sおよび段差部底壁5aとなす角度を実施の形態4よりも小さいαとし、段差部側壁5bが主表面1sから段差部底壁5aに向かって逆テーパ形状をなすように、段差部5が形成される。このようにすれば、接合時に発生するバリ8などを段差部側壁5bに押しつけることにより、当該バリ8などの跳ね返りを実施の形態4よりも確実に抑制し、バリ8などをより確実に丸く内側に巻きつけさせ、エッジが発生しないようにすることができる。
被接合部材1,2の接合時に発生するバリ8の成長する方向は不規則であり、このこともバリ8によるエッジが発生する原因となる。しかし摩擦攪拌接合時に発生するバリ8の発生角度は、ツール7の端部、特にショルダー部7aの下端面7bの形状を変更することにより制御することができる。
具体的には、図25を参照して、下端面7bの縁部に下端テーパ面7dが形成された構成としてもよいし、図26を参照して、下端面7bの縁部に外側から見て凹形状となるたとえば球面状の下端曲面7eが形成された構成としてもよい。これらにより、図27および図28を参照して、バリ8の発生する角度がこれらの面7d,7eに沿う方向を向くように制御することができる。より具体的には、図27においては下端テーパ面7dに沿ってバリ8が延びるため、バリ8は、下端テーパ面7dがツール7の外側に向いて向く角度とほぼ等しい角度(段差部底壁5aに対して鋭角)を向くように延びる。図28においても基本的に図27と同様である。
これによりバリ8が、段差部底壁5aから上方に大きな角度で向かうように延びることなく、段差部側壁5bに達するように延びさせることが可能となる。このためバリ8が主表面1s上の半導体部品4の表面に接触してこれを損傷させる不具合の発生を抑制することができる。
本実施の形態においては、上記形状のツール7を用いることにより、バリ8の延びる方向を制御する効果をいっそう高めることができる。また上記の作用効果は、段差部5のみならず止り穴部6についても同様である。
(実施の形態6)
図29を参照して、本実施の形態の接合構造体を構成する被接合部材1,2の形状および態様は、基本的に実施の形態1の被接合部材1,2の形状と同様であるとする。ただし本実施の形態においては、段差部5が段差部底壁5aおよび段差部側壁5bのみならず、さらに突起部形成平面5cおよび突起部形成側面5dを有するように形成されている。
具体的には、段差部底壁5aは他の実施の形態と同様に形成されている。段差部側壁5bは実施の形態1〜4の段差部側壁5bと同様に段差部底壁5a(主表面1s)にほぼ直交するように形成されるが、本実施の形態の段差部側壁5bは(実施の形態1〜4と異なり)主表面1sには到達せず、その途中で再度ほぼ直角に折れ曲がり、主表面1sなどに沿う突起部形成平面5cを形成している。突起部形成平面5cからさらにほぼ直角に折れ曲がり、主表面1sなどに交差(直交)する突起部形成側面5dを経て、主表面1sに到達する態様となっている。
すなわち段差部5は、段差部底壁5aおよび段差部側壁5bからなる下段と、その上の突起部形成平面5cおよび突起部形成側面5dからなる上段との2段が階段形状を有するように形成されている。厚肉部側から見れば、上段である突起部形成平面5cおよび突起部形成側面5dに囲まれるようになる被接合部材1の厚肉部の主表面1sに沿う図の左右方向に関する寸法は、下段である段差部底壁5aおよび段差部側壁5bからなる被接合部材1の厚肉部の主表面1sに沿う図の左右方向に関する寸法よりも大きい。このため厚肉部はその上方にて突起部形成平面5cおよび突起部形成側面5dにより図の右方(段差部5側)に突起しているといえる。
これを段差部5側から見れば、薄肉部側壁にあたる段差部側壁5bおよび突起部形成側面5dは、薄肉部底壁にあたる段差部底壁5aから厚みの方向(上下方向)に離れるにつれて(図29における上方向に向かうにつれて)、厚肉部の段差部5(の左側)に隣り合う厚肉部の主表面1sに沿う方向に関する寸法が段階的に大きくなるよう階段形状を有している。すなわち段差部5の全体を巨視的に見れば、実施の形態5の段差部5と同様にあたかも逆テーパ形状を有するような、図の上側において下側よりも厚肉部の幅が大きくなる形状を有している。
本実施の形態の構成についても、段差部5のみならず図示されない止り穴部6においても同様に成り立つ。これ以外の本実施の形態の構成は、実施の形態1の構成とほぼ同じであるため同一の要素については同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
実施の形態4,5の接合構造体の構成をもっても、スパッタおよびバリの形成される条件によってはこれらによる半導体部品4などに対する不具合を完全に抑制することは困難である可能性がある。
そこで本実施の形態のように、被接合部材1,2の接合部3の薄肉部である段差部5が、段差部底壁5a、段差部側壁5bおよび突起部形成平面5cにより形成される溝状(段差部5側から見て凹形状)を有するように形成されることが好ましい。このようにすれば、発生したスパッタまたはバリがどの方向に進行しても、段差部5を構成する各平面により、進行するスパッタまたはバリを発生した方向に折り返させることができる。このためスパッタまたはバリ8を段差部5である凹部の中に抑え込むことができる。したがってどのような角度でバリ8などが発生しても、確実に当該バリ8などが半導体部品4の方へ進行してこれに損傷を与える可能性を排除することができる。
(実施の形態7)
図30を参照して、本実施の形態の接合構造体を構成する被接合部材1,2の形状および態様は、基本的に実施の形態1の被接合部材1,2の形状と同様であるとする。ただし本実施の形態においては、被接合部材1,2を接合する工程の後に、接合部3から発生するバリ8などの副産物が何らかの封止材料21により封止される工程がさらに行なわれる。これにより、完成された製品においてはバリ8が封止材料21に封止されている。
図30においては封止材料21は、被接合部材1の段差部5の段差部底壁5aおよび段差部側壁5b、並ぶにこれと接合される被接合部材2の上側の主表面2sを覆うように形成されるが、封止材料21の形成される態様はこれに限られない。
封止材料21としては、成形性がよく、充填しやすい樹脂材料を用いることが好ましい。
本実施の形態の構成についても、段差部5のみならず図示されない止り穴部6においても同様に成り立つ。これ以外の本実施の形態の構成は、実施の形態1の構成とほぼ同じであるため同一の要素については同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
本実施の形態においては、たとえ接合時に発生するバリ8などの副産物を除去せず製品中に残存させたとしても、バリ8の飛散などによる負傷の可能性が完全に排除される。また封止材料21に封止されることにより、接合部3を含む接合構造体の外観の審美性を高めることができる。また上記の作用効果は、段差部5のみならず止り穴部6についても同様である。
なお以上に述べた各実施の形態の構成および特徴は、技術上可能な範囲で適宜組み合わせることができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1,2 被接合部材、1e,2e 端面、1s,2s 主表面、3 接合部、4 半導体部品、5 段差部、5a 段差部底壁、5b 段差部側壁、5c 突起部形成平面、5d 突起部形成側面、6 止り穴部、6a 凹部底壁、6b 凹部側壁、7 ツール、7a ショルダー部、7b 下端面、7c プローブ部、7d 下端テーパ面、7e 下端曲面、8 バリ、9 アークトーチ、10 アーク、11 スパッタ、12 ろう材、14 照射線、17 電極、21 封止材料、100 冷却器、101 冷媒流通部材、CEN 中央部、DP 窪み部、EDG 端部。

Claims (18)

  1. 第1の主表面を有する第1の被接合部材と、
    第2の主表面を有する第2の被接合部材とを備える接合構造体であって、
    前記第1の被接合部材と前記第2の被接合部材とは接合部において互いに接合されており、
    前記第1または第2の被接合部材の少なくともいずれかが、前記接合部において薄肉部を含んでおり、
    前記薄肉部における前記第1または第2の主表面に交差する方向に関する厚みは、前記薄肉部以外の厚肉部における前記厚みよりも薄い、接合構造体。
  2. 前記薄肉部の、前記第1または第2の主表面に沿う方向に関する幅は、前記薄肉部の前記厚肉部と前記厚みの差よりも小さい、請求項1に記載の接合構造体。
  3. 前記薄肉部と前記厚肉部との境界部である薄肉部側壁は、前記薄肉部における前記第1または第2の主表面に沿う薄肉部底壁から前記厚みの方向に離れるにつれて前記厚肉部の前記第1または第2の主表面に沿う方向に関する寸法が大きくなるように延びる、請求項1または請求項2に記載の接合構造体。
  4. 前記薄肉部と前記厚肉部との境界部である薄肉部側壁は、前記薄肉部における前記第1または第2の主表面に沿う薄肉部底壁から前記厚みの方向に離れるにつれて前記厚肉部の前記第1または第2の主表面に沿う方向の関する寸法が段階的に大きくなるよう階段形状を有している、請求項1または請求項2に記載の接合構造体。
  5. 前記接合部は、前記第1の主表面と前記第2の主表面とが重畳するように接着することにより形成される、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の接合構造体。
  6. 前記接合部は、前記第1の主表面に交差する第1の端面と前記第2の主表面に交差する第2の端面とが接着することにより形成される、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の接合構造体。
  7. 前記薄肉部は前記第1または第2の被接合部材の端部に形成された外周段差部を含み、
    前記外周段差部は、前記第1または第2の主表面に沿う段差部底壁と、前記段差部底壁に交差する段差部側壁とを有する、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の接合構造体。
  8. 前記薄肉部は前記第1または第2の被接合部材の端部以外の中央部に形成された凹部を含み、
    前記凹部は、前記第1または第2の主表面に沿う凹部底壁と、前記凹部底壁に交差する凹部側壁とを有する、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の接合構造体。
  9. 請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の接合構造体と、
    前記接合構造体を冷却するための冷媒流通部材とを備える、冷却器。
  10. 第1の主表面を有する第1の被接合部材を準備する工程と、
    第2の主表面を有する第2の被接合部材を準備する工程と、
    前記第1または第2の被接合部材の少なくともいずれかに薄肉部を形成する工程と、
    前記第1の被接合部材と前記第2の被接合部材とを互いに接合する工程とを備え、
    前記薄肉部を形成する工程においては、前記薄肉部における前記第1または第2の主表面に交差する方向に関する厚みが、前記薄肉部以外の厚肉部における前記厚みよりも薄くなり、
    前記互いに接合する工程においては、前記第1または第2の被接合部材の少なくともいずれかの前記薄肉部が接着されることにより接合部が形成される、接合構造体の製造方法。
  11. 前記互いに接合する工程の後、前記接合部から発生する副産物を封止する工程をさらに備える、請求項10に記載の接合構造体の製造方法。
  12. 前記薄肉部を形成する工程において、前記薄肉部の、前記厚肉部との前記厚みの差は、前記互いに接合する工程において前記接合部に発生し得る副産物の最大寸法よりも大きくなるように形成される、請求項10に記載の接合構造体の製造方法。
  13. 前記互いに接合する工程において、摩擦攪拌接合により前記第1および第2の被接合部材が接合される、請求項10〜請求項12のいずれか1項に記載の接合構造体の製造方法。
  14. 前記互いに接合する工程において、アーク溶接により前記第1および第2の被接合部材が接合される、請求項10〜請求項12のいずれか1項に記載の接合構造体の製造方法。
  15. 前記互いに接合する工程において、レーザ溶接により前記第1および第2の被接合部材が接合される、請求項10〜請求項12のいずれか1項に記載の接合構造体の製造方法。
  16. 前記互いに接合する工程において、電子ビーム溶接により前記第1および第2の被接合部材が接合される、請求項10〜請求項12のいずれか1項に記載の接合構造体の製造方法。
  17. 前記互いに接合する工程において、抵抗溶接により前記第1および第2の被接合部材が接合される、請求項10〜請求項12のいずれか1項に記載の接合構造体の製造方法。
  18. 前記互いに接合する工程において、ろう付けにより前記第1および第2の被接合部材が接合される、請求項10〜請求項12のいずれか1項に記載の接合構造体の製造方法。
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