JP2016050406A - 砂浜浸食防止構造体 - Google Patents
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Abstract
Description
現在、温暖化に伴う海面上昇、海岸に供給される土砂の減少、海岸部での土砂収支の不均衡等の様々な要因により、砂浜の浸食が進行し、日本では毎年160haもの国土が流失している。
このような現状を踏まえ、国土交通省『海岸保全基本方針』では、「この問題(砂浜浸食)に抜本的に対応していくため、海岸地形のモニタリングを行いつつ、海岸部において、沿岸漂砂による土砂の収支が適切となるよう構造物の工夫等を含む取組を進めるとともに、海岸部への適切な土砂供給が図られるよう河川流域における総合的な土砂管理対策とも連携する等、関係機関との連携の下に広域的・総合的な対策を推進する」とされている。
当該発明によれば、波打ち際周辺の地下水が排水管に集水される結果、地下水位が下がり地表面側の砂層部分に不飽和層が形成され、不飽和層に打ち寄せられた海水が直ちに砂中に浸透することから、波とともに運ばれた砂が砂浜の表面に徐々に堆積して、汀線を海側に移動させることができるとする。
<1>排水管内の海水を強制排水するために、常に真空ポンプを稼働しなければならない。また、海岸地域では電源を確保するのが難しい。
<2>回収される砂は砂浜の表面に堆積してゆくだけなので、波に再びさらわれ易く、砂を捕捉する効果が弱い。
<3>真空ポンプや電源が、海水の塩分や砂等によって損傷しやすい。
<4>排水管の流入孔は、砂等によって目詰まりしやすい。一旦目詰まりを起こした排水管を清掃・交換するには、排水管全体を掘り起こさねばならず、多大な手間と費用が掛かる。また、真空ポンプや電源の保守や更新にも手間と費用が掛かる。
<1>外部動力を用いることなく、砂浜の浸食防止と、砂の捕捉を両立できること。
<2>砂の捕捉効果が高いこと。
<3>構造が簡単で安定して稼働すること。
<4>排水管の内部に砂が詰まりにくくメンテナンスの手間が少ないこと。
<1>自然排水方式なので、外部動力を用いることなく、砂浜の浸食防止と、砂の捕捉とを同時に達成できる。
<2>捕捉体に設けられた空隙で砂を積極的に捕捉するため、砂が引き波に流されにくく、砂の捕捉効果が非常に高い。
<3>外部動力を使わないため、構造が簡単で、安定して稼働する。
<4>排水トラップ状の集水ユニットを介して、海水を集水・排出するため、海水に砂等が混ざりにくく、集水ユニットや排水路が詰まりにくい。
なお、本例では、海岸の砂浜へ適用する場合について説明するが、湖沼等の砂浜にも適用できる。
<1>全体の構成(図1)。
砂浜浸食防止構造体1は、波によって運ばれた砂を捕捉し、海水を下部に浸透させて外部に排出することで、引き波による砂浜Sの砂の流失を防ぎ、海岸の浸食を防止する。
砂浜浸食防止構造体1は、砂浜Sの汀線付近に、汀線方向に沿って延設する構造体であって、集水溝10と、捕捉体20と、集水ユニット30と、排水路40と、を含む。
砂浜Sに掘った集水溝10の底面に集水ユニット30を設置し、集水ユニット30の底部から排水路40を砂浜Sの外部に延出し、集水ユニット30の上部を捕捉体20で埋め戻してなる。
集水溝10は、砂浜Sの汀線付近を、汀線と平行な方向に掘削して形成する。
集水溝10の掘削面は、仕切り壁11で区画する。
仕切り壁11は、捕捉体20で集水した海水を集水ユニット30へ誘導するためのブロック体、又はシート状物であり、集水ユニット30へ効率よく海水を流すため、難水性、または遮水性を有する公知の素材からなる。
捕捉体20は、海水に含まれる砂を海水から分離して捕捉し、海水を下部の集水ユニット30まで浸透させる、透水性の高い構造体である。
捕捉体20は、粗粒体21の集合体からなる。
粗粒体21は、捕捉体20を構成する、砂より粒径が大きい粒体である。
本例では、粗粒体21として、粒径を調整した砕石を採用する。ただしこれに限られず、たとえばコンクリートガラ等であってもよい。
粗粒体21の粒径を砂より大きくしたのは、捕捉体20の透水性を高めつつ、粗粒体21間の空隙に砂を効率よく捕捉する為である。
集水ユニット30は、捕捉体20を浸透した海水を集水するための部材である。
集水ユニット30は、樋状の集水路31と、集水路31の上部を被覆するアーチ部材32と、を少なくとも有する。
集水ユニット30は、集水溝10の底部に、汀線方向に沿って連続して設置する。
集水路31は、海水を集水するための部材である。
集水路31は、上部を開放した樋状の部材である。本例では、断面コの字形状のコンクリート体を採用するが、これに限られない。
集水路31の溝底には、底面へ貫通する排出孔34を設ける。排出孔34は排水路40に通じる。排出孔34は、一定間隔ごとに複数設ける。
アーチ部材32は、集水路31の上部を被覆して、集水路31内に砂等の海水以外の異物が侵入することを防ぐ部材である。
アーチ部材32は、集水路31より幅広のアーチ状の部材である。本例では、難透性のコンクリート体を採用する。
アーチ部材32は、アーチ形状を呈し、水を通しにくいため、アーチ部材32の上部に達した海水はアーチ部材32の表面を流れ、効率よく集水溝10の底部に集まる。
アーチ部材32の下部には、一定の間隔で、海水を内部に通すスリット33を設ける。スリット33の上部は、集水路31の天端より低くする。
集水路31の側壁と、スリット33との間を排水トラップ状の構造としたのは、集水路31内に砂等の異物が流入するのを防止しつつ、海水のみを取水するためである(図2)。
排水路40は、集水ユニット30の集水路31に集めた海水を外部に排水する部材である。
排水路40の一端は、集水路31の排出孔34に接続し、他端の排水口41は、砂浜Sの汀線側から沖合方向に延出する。
排水路40は、排水口41が排出孔34側より低い傾斜構造とする。
排水口41は、少なくとも干潮時水位L2より上方に設置する。本例では、海水の平均水位L1よりも低く、干潮時水位L2よりも高いレベルに設ける。
引き続き、図面を参照しながら本発明の、砂浜浸食防止構造体1の機能について説明する。
寄せ波が集水溝10の上を流れると、砂を含んだ海水が捕捉体20の内部に流れ込み、粗粒体21の間を通って下方へ流れる。
寄せ波が捕捉体20内に吸収されることによって、集積溝10の汀線側の砂浜Sを通過する引き波の水量が減少する。
そのため、砂浜Sには、寄せ波によって砂が堆積する一方、引き波による砂の流失が減り、砂が堆積してゆく。
海水が捕捉体20の内部を浸透してゆくに従って、海水中の砂が、海水と分離して粗粒体21間の空隙に捕捉される。一方、砂と分離した海水は、捕捉体20内を集水溝10の底部に向かって浸透してゆく。
捕捉体20を浸透した海水は、集水溝10の底部に集まる。また、浸透の途中で仕切り壁11の表面やアーチ部材32の上部に到達した海水も、それぞれの傾斜面に沿って同じく集水溝10の底部に集まる。
集水溝10の底部に集まった海水は、アーチ部材32の下部のスリット33からアーチ部材32の内側に入り、集水路31の側壁を乗り越えて、集水路31の内部に流れ込む。
集水ユニット30は、スリット33の上部が集水路31の天端高よりも低い、排水トラップ状の構造に設計されている。
そのため、次の作用により、捕捉体20内に捕捉しきれなかった砂を、海水から分離・回収することができる。
捕捉体20を浸透して集水溝10の底部に集まった海水は、スリット33の下を潜るようにしてアーチ部材32の内部に流れ込む。この過程で、海水内に残存した砂はアーチ部材32外部の底に溜まる。
アーチ部材32内に入った海水は、砂を含まない水面付近の部分から、集水路31の淵を超えて集水路31の内部に流れ込む。
集水路31内の海水は、排出孔34を通って排水路40へ流れ出る。海水中の砂等は捕捉体20や集水ユニット30を通過する過程で分離・捕捉されるため、排水路40内を流れる海水は砂等をほとんど含まない。よって、排水路40が詰まりにくい。
本例では排水路40の傾斜を利用した自然排水によって、集水ユニット30内の海水を外部に排出する。なお、公知の排水ポンプを使用して排水することもできる。
海水内に含まれる砂は、捕捉体20への浸透、集水ユニット30への集水の過程で、海水から分離され、砂浜浸食防止構造体1の内部に捕捉される。
本願の砂浜浸食防止構造体1は、海水中の砂を表面に堆積させるのではなく、捕捉体20の内部に積極的に捕捉するため、一度捕捉した砂が引き波によって流されにくい。したがって、砂の捕捉効果が非常に高い。
本願の砂浜浸食防止構造体1は、外部動力を使用せずに、海水と砂とを分離して砂のみを捕捉することができる。その理由は、次のとおりである。
排水路40の排出口41は、海水の平均水位L1よりも低く、干潮時水位L2よりも高いレベルに設置されるため、海面水位が平均水位L1以下になる時間帯には自然排水で海へ流出する構造となっている。
海面水位が平均水位L1よりも高く、満潮時水位までの間は、集水溝10および集水ユニット30の内部に浸透した海水は構造体内に貯留されるため、当該構造体の機能は有効に機能する。本願の砂浜浸食防止構造体1は、干満差を活用した外部動力を使用しない構造である。
捕捉体20を、粗粒体21と多孔性シート22との組合せとする他の実施例について説明する(図3)。
多孔性シート22には、海水を通すための通過孔を設けた、繊維シートや樹脂シート等を採用する。空隙の大きい浸透膜を採用してもよい。
本例では、多孔性シート22で、粗粒体21の表面を被覆するか、粗粒体21の間に層状に介装する。または、両方を併用してもよい。
本例の場合、実施例1の効果に加え、粗粒体21の表面を多孔性シート22で被覆することで、集水溝10から粗粒体21が飛散、流出することを防ぐことができる。
また、粗粒体21の間に多孔性シート22で層を作ることで、捕捉体20の構造を強化できる。
さらに、粗粒体21間の空隙の幅と、多孔性シート22の通過孔の径を変えることで、捕捉体20の砂の捕捉機能を段階的に変化させることができる。
10 集水溝
11 仕切り壁
20 捕捉体
21 粗粒体
22 多孔性シート
30 集水ユニット
31 集水路
32 アーチ部材
33 スリット
34 排出孔
40 排水路
41 排水口
L1 平均水位
L2 干潮時水位
S 砂浜
Claims (5)
- 砂浜の浸食を防止しつつ、砂を捕捉する、砂浜浸食防止構造体であって、
砂浜の汀線に略平行して延設し、難透性の仕切り壁で画成した、集水溝と、
前記集水溝の底部に設置され、底付近に取水口を有する、集水ユニットと、
前記集水溝に充填した、透水性を有する、捕捉体と、
前記集水ユニットの下部から沖合へ向けて延びる、排水路と、を有し、
前記捕捉体を透過させた流水を前記集水ユニット及び前記排水路を通じて自然排水しつつ、流水に含まれる砂を前記捕捉体で捕捉することを特徴とする、
砂浜浸食防止構造体。 - 前記捕捉体は、砂より粒径の大きい粗粒体からなることを特徴とする、請求項1に記載の砂浜浸食防止構造体。
- 前記捕捉体に、多孔性シートを組合せることを特徴とする、請求項2に記載の砂浜浸食防止構造体。
- 前記集水ユニットは、樋状の集水路と、前記集水路の上部を被覆するアーチ部材と、からなり、前記取水口は、前記アーチ部材の下部に設けたスリットであることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の砂浜浸食防止構造体。
- 前記集水路の天端が、前記スリットの上部より高い位置にあることを特徴とする、請求項4に記載の砂浜浸食防止構造体。
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JPH0988034A (ja) * | 1995-09-22 | 1997-03-31 | Doboku Kenkyu Center | 砂浜増殖方法 |
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