JP2016049074A - γ−Glu−Abu及び/又はγ−Glu−Abu−Glyを高含有する酵母 - Google Patents

γ−Glu−Abu及び/又はγ−Glu−Abu−Glyを高含有する酵母 Download PDF

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Abstract

【課題】γ-Glu-Abu及び/又はγ-Glu-Abu-Glyを高含有する酵母および酵母エキスを提供する。【解決手段】Abu関連化合物排出タンパク質の活性が低下するように、且つ/又は、Abu関連化合物取り込みタンパク質の活性が増大するように酵母を改変することにより、γ-Glu-Abu及び/又はγ-Glu-Abu-Glyを高含有する酵母を得る。そのようにして得られた酵母を原料として用いて酵母エキスを調製する。【選択図】なし

Description

本発明は、γ-Glu-Abu及び/又はγ-Glu-Abu-Glyを高含有する酵母および酵母エキスに関わるものである。当該酵母及び酵母エキスは、調味料や健康食品等の食品分野にて有用である。
出芽酵母においては、ADP1遺伝子にコードされるATP依存パーミアーゼの高発現が菌体外のグルタチオンの濃度を上昇させること(非特許文献1)、及びGEX1遺伝子にコードされるプロトン:グルタチオンアンチポーターの高発現が菌体外のグルタチオンの濃度を上昇させること(非特許文献2)が報告されている。しかしながら、ATP依存パーミアーゼまたはプロトン:グルタチオンアンチポーターの活性と、酵母菌体内のγ-Glu-Abu及び/又はγ-Glu-Abu-Glyの蓄積量との関係は知られていない。
また、出芽酵母においては、OPT1遺伝子にコードされるプロトン共役オリゴペプチドトランスポーターの欠損により、グルタチオンの菌体内への取り込みを完全に抑制できることが報告されている(非特許文献3)。しかしながら、プロトン共役オリゴペプチドトランスポーターの活性と、酵母菌体内のγ-Glu-Abu及び/又はγ-Glu-Abu-Glyの蓄積量との関係は知られていない。
また、GSH2遺伝子にコードされるグルタチオン合成酵素Gsh2は、基質特異性解析の結果から、γ-Glu-Abuおよびglyからγ-Glu-Abu-Glyを生成する活性があることが明らかになっている(特許文献1)。しかしながら、グルタチオン合成酵素が酵母菌体内においてγ-Glu-Abu-Glyの生成に寄与するかは知られておらず、また、グルタチオン合成酵素活性の増強が酵母菌体内におけるγ-Glu-Abu-Gly等の蓄積量の向上に有効であるかも知られていない。
WO2012/046731
Kiriyama et al(2012); Appl Microbiol Biotechnol. 96:1021-1027 Dhaoui et al(2011); Mol Biol Cell 22:2054-2067 Bourbouloux et al(2000); J Biol Chem 275:13259-13265
本発明は、γ-Glu-Abu及び/又はγ-Glu-Abu-Glyを高含有する酵母および酵母エキスを提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、既知のグルタチオンの排出系および取り込み系がそれぞれγ-Glu-Abu及びγ-Glu-Abu-Glyの排出活性および取り込み活性を有し、グルタチオン排出系の活性を低下させることによって、または、グルタチオン取り込み系の活性を増大させることによって、酵母細胞内のγ-Glu-Abu及びγ-Glu-Abu-Glyの蓄積量が増大することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の通り例示できる。
[1]
Abu関連化合物を高含有する酵母であって、
下記(A)及び/又は(B)の性質を有し:
(A)Abu関連化合物排出タンパク質の活性が低下するように改変されている;
(B)Abu関連化合物取り込みタンパク質の活性が増大するように改変されている、
前記Abu関連化合物が、γ-Glu-Abu-Gly及び/又はγ-Glu-Abuである、酵母。
[2]
前記Abu関連化合物排出タンパク質の活性が、Abu関連化合物排出タンパク質をコードする遺伝子の発現が弱化されることにより、及び/又は、該遺伝子を欠失することにより、低下した、[1]に記載の酵母。
[3]
前記Abu関連化合物排出タンパク質をコードする遺伝子が、ADP1遺伝子、GEX1遺伝子、及びGEX2遺伝子からなる群より選択される1またはそれ以上の遺伝子である、[2]に記載の酵母。
[4]
前記ADP1遺伝子が、下記(A)〜(D)からなる群より選択されるDNAである、[3]に記載の酵母:
(A)配列番号30に示すアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA;
(B)配列番号30に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含むアミノ酸配列を含み、且つ、Abu関連化合物排出活性を有するタンパク質をコードするDNA;
(C)配列番号29に示す塩基配列を含むDNA;
(D)配列番号29に示す塩基配列に相補的な塩基配列又は該相補配列から調製され得るプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ、Abu関連化合物排出活性を有するタンパク質をコードするDNA。
[5]
前記GEX1遺伝子が、下記(A)〜(D)からなる群より選択されるDNAである、[3]に記載の酵母:
(A)配列番号32に示すアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA;
(B)配列番号32に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含むアミノ酸配列を含み、且つ、Abu関連化合物排出活性を有するタンパク質をコードするDNA;
(C)配列番号31に示す塩基配列を含むDNA;
(D)配列番号31に示す塩基配列に相補的な塩基配列又は該相補配列から調製され得るプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ、Abu関連化合物排出活性を有するタンパク質をコードするDNA。
[6]
前記GEX2遺伝子が、下記(A)〜(D)からなる群より選択されるDNAである、[3]に記載の酵母:
(A)配列番号34に示すアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA;
(B)配列番号34に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含むアミノ酸配列を含み、且つ、Abu関連化合物排出活性を有するタンパク質をコードするDNA;
(C)配列番号33に示す塩基配列を含むDNA;
(D)配列番号33に示す塩基配列に相補的な塩基配列又は該相補配列から調製され得るプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ、Abu関連化合物排出活性を有するタンパク質をコードするDNA。
[7]
前記Abu関連化合物取り込みタンパク質の活性が、Abu関連化合物取り込みタンパク質をコードする遺伝子の発現を上昇させることにより、増大した、[1]に記載の酵母。
[8]
前記Abu関連化合物取り込みタンパク質をコードする遺伝子の発現が、該遺伝子のコピー数を高めることにより、及び/又は、該遺伝子の発現調節配列を改変することにより、上昇した、[7]に記載の酵母。
[9]
前記Abu関連化合物取り込みタンパク質をコードする遺伝子が、OPT1遺伝子である、[7]または[8]に記載の酵母。
[10]
前記OPT1遺伝子が、下記(A)〜(D)からなる群より選択されるDNAである、[9]に記載の酵母:
(A)配列番号36に示すアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA;
(B)配列番号36に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含むアミノ酸配列を含み、且つ、Abu関連化合物取り込み活性を有するタンパク質をコードするDNA;
(C)配列番号35に示す塩基配列を含むDNA;
(D)配列番号35に示す塩基配列に相補的な塩基配列又は該相補配列から調製され得るプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ、Abu関連化合物取り込み活性を有するタンパク質をコードするDNA。
[11]
さらに、α−ケト酪酸合成酵素、アミノ基転移酵素、γ−グルタミルシステイン合成酵素、及びグルタチオン合成酵素からなる群より選択される1またはそれ以上の酵素の活性が増大するように改変されている、[1]〜[10]のいずれかに記載の酵母。
[12]
前記α−ケト酪酸合成酵素が、CHA1遺伝子及びILV1遺伝子からなる群より選択される1またはそれ以上の遺伝子によってコードされるタンパク質である、[11]に記載の酵母。
[13]
前記アミノ基転移酵素が、BAT1遺伝子によってコードされるタンパク質である、[11]に記載の酵母。
[14]
さらに、アセト乳酸シンターゼ活性が低下するように改変されている、[1]〜[13]のいずれかに記載の酵母。
[15]
さらに、ペプチド分解酵素の活性が低下するように改変されている、[1]〜[13]のいずれかに記載の酵母。
[16]
前記ペプチド分解酵素が、DUG1遺伝子、DUG2遺伝子、DUG3遺伝子、及びECM38遺伝子からなる群より選択される1またはそれ以上の遺伝子によってコードされるタンパク質である、[15]に記載の酵母。
[17]
サッカロミセス属酵母である、[1]〜[16]のいずれかに記載の酵母。
[18]
サッカロミセス・セレビシエである、[17]に記載の酵母。
[19]
[1]〜[18]のいずれかに記載の酵母を原料として用いて酵母エキスを調製することを含む、酵母エキスの製造方法。
[20]
[1]〜[18]のいずれかに記載の酵母を培地で培養すること、および培養物からAb
u関連化合物を回収することを含む、Abu関連化合物の製造方法。
本発明により、γ-Glu-Abu及び/又はγ-Glu-Abu-Glyを高含有する酵母および酵母エキスが提供される。
以下、本発明を詳細に説明する。
<1>本発明の酵母
<1−1>本発明の酵母
本発明の酵母は、下記(A)及び/又は(B)の性質を有する、α−アミノ酪酸(Abu)関連化合物を高含有する酵母である:
(A)Abu関連化合物排出タンパク質の活性が低下するように改変されている;
(B)Abu関連化合物取り込みタンパク質の活性が増大するように改変されている。
本発明において、「Abu関連化合物」とは、γ-Glu-Abu及び/又はγ-Glu-Abu-Glyをいう。なお、本発明において、AbuおよびGluはL体である。
「Abu関連化合物を高含有する」とは、本発明の酵母を培地中で培養したときに、Abu関連化合物を、検出できる程度に細胞内に生成および蓄積することをいう。本発明の酵母は、非改変株よりも多い量のAbu関連化合物を細胞内に蓄積することができる酵母であってよい。非改変株としては、野生株や親株が挙げられる。また、本発明の酵母は、0.4μmol/g-DCW以上、1μmol/g-DCW以上、2μmol/g-DCW以上、3μmol/g-DCW以上、5μmol/g-DCW以上、または10μmol/g-DCW以上の量でAbu関連化合物を細胞内に蓄積することができる酵母であってよい。本発明においては、γ-Glu-Abu及びγ-Glu-Abu-Glyのいずれか片方が生成蓄積されてもよく、γ-Glu-Abu及びγ-Glu-Abu-Glyの両方が生成蓄積されてもよい。本発明においては、例えば、γ-Glu-Abu-Glyが生成蓄積されるのが好ましい。
本発明の酵母は、酵母の適当な菌株、例えば後述する菌株、を改変することで取得することができる。
本発明の酵母は、出芽酵母であってもよく、分裂酵母であってもよい。出芽酵母としては、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等のサッカロミセス属、キャンディダ・ユティリス(Candida utilis)等のキャンディダ属、ピヒア・パストリス(Pichia pastoris)等のピヒア属、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)等のハンゼヌラ属等に属する酵母を例示することができる。分裂酵母としては、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等のシゾサッカロミセス属等に属する酵母を例示することができる。中でも、酵母エキスの生産によく用いられているサッカロミセス・セレビシエやキャンディダ・ユティリスが好ましい。本発明の酵母は、1倍体でもよいし、2倍性またはそれ以上の倍数性を有するものであってもよい。
サッカロミセス・セレビシエとしては、例えば、サッカロミセス・セレビシエY006株(FERM BP-11299)が挙げられる。Y006株は、2010年8月18日に、産業技術総合研究所特許生物寄託センター(現、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター、郵便番号:292-0818、住所:千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)に国際寄託され、受託番号FERM BP-11299が付与されている。
また、サッカロミセス・セレビシエとしては、例えば、サッカロミセス・セレビシエBY4743株(ATCC 201390)やサッカロミセス・セレビシエS288C株(ATCC 26108)も挙げられ
る。また、キャンディダ・ユティリスとしては、例えば、キャンディダ・ユティリスATCC
22023株を用いることができる。これらの菌株は、例えば、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(住所 12301 Parklawn Drive, Rockville, Maryland 20852 P.O. Box 1549, Manassas, VA 20108, United States of America)より入手できる。すなわち、各菌株に対応する登録番号を利用して分譲を受けることができる(http://www.atcc.org/参照)。各菌株に対応する登録番号は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションのカタログに記載されている。
<1−2>Abu関連化合物排出タンパク質の活性低下およびAbu関連化合物取り込みタンパク質の活性増強
本発明の酵母は、Abu関連化合物排出タンパク質の活性が低下するように、且つ/又は、Abu関連化合物取り込みタンパク質の活性が増大するように、改変されている。当該改変によって、酵母細胞内のAbu関連化合物の蓄積量を増大させることができる。
本発明において、「Abu関連化合物排出タンパク質」とは、Abu関連化合物を細胞内から細胞外に排出する活性を有するタンパク質をいう。同活性を「Abu関連化合物排出タンパク質の活性」または「Abu関連化合物排出活性」ともいう。Abu関連化合物排出タンパク質の活性は、例えば、Abu関連化合物排出タンパク質をコードする遺伝子を破壊することにより、低下させることができる。Abu関連化合物排出タンパク質をコードする遺伝子を「Abu関連化合物排出遺伝子」ともいう。タンパク質の活性を低下させる詳細な手法は後述する。
Abu関連化合物排出遺伝子としては、ADP1遺伝子(別名:GXA1遺伝子)、GEX1遺伝子、およびGEX2遺伝子が挙げられる。ADP1遺伝子にコードされるAdp1タンパク質は、ATP依存性パーミアーゼ(ATP-dependent permease)である。GEX1遺伝子およびGEX2遺伝子にそれぞれコードされるGex1タンパク質およびGex2タンパク質は、いずれも、プロトン:グルタチオンアンチポーター(proton:glutahione antiporter)である。Adp1タンパク質、Gex1タンパク質、およびGex2タンパク質は、いずれも、グルタチオンの排出系として知られている。
本発明において、「Abu関連化合物取り込みタンパク質」とは、Abu関連化合物を細胞外から細胞内に取り込む活性を有するタンパク質をいう。同活性を「Abu関連化合物取り込みタンパク質の活性」または「Abu関連化合物取り込み活性」ともいう。Abu関連化合物取り込みタンパク質の活性は、例えば、Abu関連化合物取り込みタンパク質をコードする遺伝子の発現を上昇させることにより、増大させることができる。Abu関連化合物取り込みタンパク質をコードする遺伝子を「Abu関連化合物取り込み遺伝子」ともいう。タンパク質の活性を増大させる詳細な手法は後述する。
Abu関連化合物取り込み遺伝子としては、OPT1遺伝子(別名:HGT1遺伝子)が挙げられる。OPT1遺伝子にコードされるOpt1タンパク質は、プロトン共役オリゴペプチドトランスポーターである。Opt1タンパク質は、グルタチオンの取り込み系として知られている。
サッカロミセス・セレビシエのADP1遺伝子、GEX1遺伝子、GEX2遺伝子、およびOPT1遺伝子の塩基配列は、Saccharomyces Genome Database(http://www.yeastgenome.org/)に開示されている。
サッカロミセス・セレビシエS288C株(ATCC 26108)のADP1遺伝子は、NCBIデータベースにGenBank accession NC_001135として登録されている染色体IIIの配列中、133724〜136873位の配列の相補配列に相当する。また、サッカロミセス・セレビシエS288C株(ATCC 26108)のAdp1タンパク質は、GenBank accession NP_009937として登録されている。サッ
カロミセス・セレビシエS288C株(ATCC 26108)のADP1遺伝子の塩基配列、および同遺伝子がコードするAdp1タンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号29および30に示す。
サッカロミセス・セレビシエS288C株(ATCC 26108)のGEX1遺伝子は、NCBIデータベースにGenBank accession NC_001135として登録されている染色体IIIの配列中、6479〜8326位の配列の相補配列に相当する。また、サッカロミセス・セレビシエS288C株(ATCC 26108)のGex1タンパク質は、GenBank accession NP_009863として登録されている。サッカロミセス・セレビシエS288C株(ATCC 26108)のGEX1遺伝子の塩基配列、および同遺伝子がコードするGex1タンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号31および32に示す。
サッカロミセス・セレビシエS288C株(ATCC 26108)のGEX2遺伝子は、NCBIデータベースにGenBank accession NC_001143として登録されている染色体XIの配列中、661442〜663289位の配列に相当する。また、サッカロミセス・セレビシエS288C株(ATCC 26108)のGex2タンパク質は、GenBank accession NP_013032として登録されている。サッカロミセス・セレビシエS288C株(ATCC 26108)のGEX2遺伝子の塩基配列、および同遺伝子がコードするGex2タンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号33および34に示す。
サッカロミセス・セレビシエS288C株(ATCC 26108)のOPT1遺伝子は、NCBIデータベースにGenBank accession NC_001142として登録されている染色体Xの配列中、33850〜36249位の配列の相補配列に相当する。また、サッカロミセス・セレビシエS288C株(ATCC 26108)のOpt1タンパク質は、GenBank accession NP_012323として登録されている。サッカロミセス・セレビシエS288C株(ATCC 26108)のOPT1遺伝子の塩基配列、および同遺伝子がコードするOpt1タンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号35および36に示す。
Abu関連化合物排出タンパク質は、元の機能が維持されている限り、上記例示したAbu関連化合物排出タンパク質、例えば上記例示したAdp1タンパク質、Gex1タンパク質、およびGex2タンパク質、のバリアントであってもよい。同様に、Abu関連化合物排出遺伝子は、元の機能が維持されている限り、上記例示したAbu関連化合物排出遺伝子、例えば上記例示したADP1遺伝子、GEX1遺伝子、およびGEX2遺伝子、のバリアントであってもよい。また、Abu関連化合物取り込みタンパク質は、元の機能が維持されている限り、上記例示したAbu関連化合物取り込みタンパク質、例えば上記例示したOpt1タンパク質、のバリアントであってもよい。同様に、Abu関連化合物取り込み遺伝子は、元の機能が維持されている限り、上記例示したAbu関連化合物取り込み遺伝子、例えば上記例示したOPT1遺伝子、のバリアントであってもよい。このような元の機能が維持されたバリアントを「保存的バリアント」という場合がある。すなわち、「Adp1タンパク質」、「Gex1タンパク質」、「Gex2タンパク質」、および「Opt1タンパク質」という用語は、それぞれ、上記例示したAdp1タンパク質、Gex1タンパク質、Gex2タンパク質、およびOpt1タンパク質に加えて、それらの保存的バリアントを包含するものとする。同様に、「ADP1遺伝子」、「GEX1遺伝子」、「GEX2遺伝子」、「OPT1遺伝子」という用語は、それぞれ、上記例示したADP1遺伝子、GEX1遺伝子、GEX2遺伝子、およびOPT1遺伝子に加えて、それらの保存的バリアントを包含するものとする。保存的バリアントとしては、例えば、上記例示したAbu関連化合物排出タンパク質およびAbu関連化合物取り込みタンパク質、並びにそれらをコードする遺伝子の、ホモログや人為的な改変体が挙げられる。
「元の機能が維持されている」とは、遺伝子またはタンパク質のバリアントが、元の遺伝子またはタンパク質の機能(活性や性質)に対応する機能(活性や性質)を有することをいう。すなわち、「元の機能が維持されている」とは、Abu関連化合物排出タンパク質にあっては、タンパク質のバリアントがAbu関連化合物排出活性を有することをいう。また、「元の機能が維持されている」とは、Abu関連化合物排出遺伝子にあっては、遺伝子
のバリアントが元の機能が維持されたタンパク質、具体的にはAbu関連化合物排出活性を有するタンパク質、をコードすることをいう。なお、上記の通り、Adp1タンパク質、Gex1タンパク質、およびGex2タンパク質はいずれもグルタチオンの排出系として知られていたが、それらのバリアントは、いずれも、グルタチオンの排出活性を有していてもよく、有していなくてもよい。また、「元の機能が維持されている」とは、Abu関連化合物取り込みタンパク質にあっては、タンパク質のバリアントがAbu関連化合物取り込み活性を有することをいう。また、「元の機能が維持されている」とは、Abu関連化合物取り込み遺伝子にあっては、遺伝子のバリアントが元の機能が維持されたタンパク質、具体的にはAbu関連化合物取り込み活性を有するタンパク質、をコードすることをいう。なお、上記の通り、Opt1タンパク質はグルタチオンの取り込み系として知られていたが、そのバリアントは、グルタチオンの取り込み活性を有していてもよく、有していなくてもよい。
タンパク質のバリアントがAbu関連化合物排出活性を有するか否かは、例えば、同バリアントをコードする遺伝子を酵母に導入し、Abu関連化合物排出活性が向上するか否かを確認することにより、確認できる。「Abu関連化合物排出活性が向上する」とは、例えば、ADP1、GEX1、またはGEX2遺伝子等のAbu関連化合物排出遺伝子の発現が増大するように改変された酵母を培養したときに、Abu関連化合物の細胞外への排出量が、対応する非改変株(親株や野生株等のAbu関連化合物排出遺伝子の発現が増強されていない株)に比べて増加することをいう。Abu関連化合物の細胞外への排出量の増加は、培地中に蓄積するAbu関連化合物濃度の増加として観察され得る。この場合、培地中に蓄積するAbu関連化合物濃度は、非改変株と比較して、例えば、10%以上、30%以上、または50%以上増加してもよい。また、Abu関連化合物の細胞外への排出量の増加は、細胞内のAbu関連化合物濃度の低下としても観察され得る。菌体内のAbu関連化合物濃度は、例えば、実施例2に記載の通り、酵母菌体を70℃で10分間加熱することによって得られる菌体内に含まれるエキス分を用いて測定できる。また、改変株と非改変株のAbu関連化合物排出活性を測定し、比較してもよい。Abu関連化合物排出活性は、例えば、酵母細胞から単離した反転原形質膜小胞を利用して、当該反転原形質膜小胞へのAbu関連化合物の取り込み活性を測定することによって測定できる。反転原形質膜小胞は、デキストランとポリエチレングリコールを含む二相系で分配することによって酵母細胞から回収できる(Ewa Maciaszczyk-Dziubinska
et al, Biochim Biophys Acta.(2011) 1808(7):1855-1859)。Abu関連化合物排出活性は、具体的には、例えば酵母細胞から単離した反転原形質膜小胞にATPあるいはその他駆動力となる基質、およびRIラベルしたAbu関連化合物を添加し、当該反転原形質膜小胞へのRIラベルしたAbu関連化合物の取り込み活性を測定することによって測定できる。また、Abu関連化合物排出活性は、例えば、生菌を使用して、ラベル化Abu関連化合物と非ラベル化Abu関連化合物の交換反応の速度を測定することによっても測定できる。また、タンパク質のバリアントがAbu関連化合物排出活性を有するか否かは、例えば、同バリアントをコードする遺伝子を酵母において破壊し、Abu関連化合物排出活性が低下するか否かを確認することによっても、確認できる。Abu関連化合物排出活性の低下は、例えば、細胞内のAbu関連化合物濃度の増加および/または培地中に蓄積するAbu関連化合物濃度の低下として観察され得る。この場合、培地中に蓄積するAbu関連化合物濃度は、非改変株と比較して、例えば、10%以上、30%以上、または50%以上減少してもよい。
タンパク質のバリアントがAbu関連化合物取り込み活性を有するか否かは、例えば、同バリアントをコードする遺伝子を酵母に導入し、Abu関連化合物取り込み活性が向上するか否かを確認することにより、確認できる。「Abu関連化合物取り込み活性が向上する」とは、例えば、OPT1遺伝子等のAbu関連化合物取り込み遺伝子の発現が増大するように改変された酵母を培養したときに、Abu関連化合物の細胞内への取り込み量が、対応する非改変株(親株や野生株等のAbu関連化合物取り込み遺伝子の発現が増強されていない株)に比べて増加することをいう。Abu関連化合物の細胞内への取り込み量の増加は、細胞内のAbu関連化合物濃度の増加として観察され得る。菌体内のAbu関連化合物濃度は、例えば
、実施例2に記載の通り、酵母菌体を70℃で10分間加熱することによって得られる菌体内に含まれるエキス分を用いて測定できる。また、Abu関連化合物の細胞内への取り込み量の増加は、培地中に蓄積するAbu関連化合物濃度の低下としても観察され得る。この場合、培地中に蓄積するAbu関連化合物濃度は、非改変株と比較して、例えば、10%以上、30%以上、または50%以上減少してもよい。また、改変株と非改変株のAbu関連化合物取り込み活性を測定し、比較してもよい。Abu関連化合物取り込み活性は、例えば、生菌を使用して、ラベル化Abu関連化合物と非ラベル化Abu関連化合物の交換反応の速度を測定することによって測定できる。また、タンパク質のバリアントがAbu関連化合物取り込み活性を有するか否かは、例えば、同バリアントをコードする遺伝子を酵母において破壊し、Abu関連化合物取り込み活性が低下するか否かを確認することによっても、確認できる。Abu関連化合物取り込み活性の低下は、例えば、細胞内のAbu関連化合物濃度の低下および/または培地中に蓄積するAbu関連化合物濃度の増加として観察され得る。この場合、培地中に蓄積するAbu関連化合物濃度は、非改変株と比較して、例えば、10%以上、30%以上、または50%以上増加してもよい。
以下、保存的バリアントについて例示する。
Abu関連化合物排出遺伝子およびAbu関連化合物取り込み遺伝子のホモログは、それぞれ、例えば、上記例示したAbu関連化合物排出遺伝子およびAbu関連化合物取り込み遺伝子の塩基配列を問い合わせ配列として用いたBLAST検索やFASTA検索によって公開データベースから容易に取得することができる。また、Abu関連化合物排出遺伝子およびAbu関連化合物取り込み遺伝子のホモログは、それぞれ、例えば、酵母の染色体を鋳型にして、これら公知のAbu関連化合物排出遺伝子およびAbu関連化合物取り込み遺伝子の塩基配列に基づいて作製したオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いたPCRにより取得することができる。
Abu関連化合物排出遺伝子およびAbu関連化合物取り込み遺伝子は、いずれも、上記アミノ酸配列(例えば、Abu関連化合物排出タンパク質について配列番号30、32、または34に示すアミノ酸配列、Abu関連化合物取り込みタンパク質について配列番号36に示すアミノ酸配列)において、1若しくは数個の位置での1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、又は付加されたアミノ酸配列を有し、且つ、元の機能が維持されたタンパク質をコードする遺伝子であってもよい。この場合、コードされるタンパク質の機能(すなわち、Abu関連化合物排出タンパク質についてAbu関連化合物排出活性、Abu関連化合物取り込みタンパク質についてAbu関連化合物取り込み活性)は、1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、又は付加される前のタンパク質に対して、通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上が維持され得る。なお上記「1又は数個」とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造における位置やアミノ酸残基の種類によっても異なるが、具体的には、1〜50個、1〜40個、1〜30個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個を意味する。
上記の1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、または付加は、タンパク質の機能が正常に維持される保存的変異である。保存的変異の代表的なものは、保存的置換である。保存的置換とは、置換部位が芳香族アミノ酸である場合には、Phe、Trp、Tyr間で、置換部位が疎水性アミノ酸である場合には、Leu、Ile、Val間で、極性アミノ酸である場合には、Gln、Asn間で、塩基性アミノ酸である場合には、Lys、Arg、His間で、酸性アミノ酸である場合には、Asp、Glu間で、ヒドロキシル基を持つアミノ酸である場合には、Ser、Thr間でお互いに置換する変異である。保存的置換とみなされる置換としては、具体的には、AlaからSer又はThrへの置換、ArgからGln、His又はLysへの置換、AsnからGlu、Gln、Lys、His又はAspへの置換、AspからAsn、Glu又はGlnへの置換、CysからSer又はAlaへの置換、GlnからAsn、Glu、Lys、His、Asp又はArgへの置換、GluからGly、Asn、Gln、Lys又
はAspへの置換、GlyからProへの置換、HisからAsn、Lys、Gln、Arg又はTyrへの置換、IleからLeu、Met、Val又はPheへの置換、LeuからIle、Met、Val又はPheへの置換、LysからAsn、Glu、Gln、His又はArgへの置換、MetからIle、Leu、Val又はPheへの置換、PheからTrp、Tyr、Met、Ile又はLeuへの置換、SerからThr又はAlaへの置換、ThrからSer又はAlaへの置換、TrpからPhe又はTyrへの置換、TyrからHis、Phe又はTrpへの置換、及び、ValからMet、Ile又はLeuへの置換が挙げられる。また、上記のようなアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、または逆位等には、遺伝子が由来する生物の個体差、種の違いに基づく場合などの天然に生じる変異(mutant又はvariant)によって生じるものも含まれる。
また、Abu関連化合物排出遺伝子およびAbu関連化合物取り込み遺伝子は、いずれも、上記アミノ酸配列全体に対して、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有し、且つ、元の機能が維持されたタンパク質をコードする遺伝子であってもよい。尚、本明細書において、「相同性」(homology)は、「同一性」(identity)を指すことがある。
また、Abu関連化合物排出遺伝子およびAbu関連化合物取り込み遺伝子は、いずれも、上記塩基配列(例えば、Abu関連化合物排出遺伝子について配列番号29、31、または33に示す塩基配列、Abu関連化合物取り込み遺伝子について配列番号35に示す塩基配列)から調製され得るプローブ、例えば上記塩基配列の全体または一部に対する相補配列、とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ、元の機能が維持されたタンパク質をコードするDNAであってもよい。「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。一例を示せば、相同性が高いDNA同士、例えば80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC、0.1% SDS、好ましくは60℃、0.1×SSC、0.1% SDS、より好ましくは、68℃、0.1×SSC、0.1% SDSに相当する塩濃度および温度で、1回、好ましくは2〜3回洗浄する条件を挙げることができる。
上述の通り、上記ハイブリダイゼーションに用いるプローブは、遺伝子の相補配列の一部であってもよい。そのようなプローブは、公知の遺伝子配列に基づいて作製したオリゴヌクレオチドをプライマーとし、これらの塩基配列を含むDNA断片を鋳型とするPCRによって作製することができる。例えば、プローブとしては、300 bp程度の長さのDNA断片を用いることができる。プローブとして300 bp程度の長さのDNA断片を用いる場合には、ハイブリダイゼーションの洗いの条件としては、50℃、2×SSC、0.1% SDSが挙げられる。
また、Abu関連化合物排出遺伝子およびAbu関連化合物取り込み遺伝子は、いずれも、任意のコドンがそれと等価のコドンに置換されたものであってもよい。
なお、上記の遺伝子やタンパク質の保存的バリアントに関する記載は、他の任意のタンパク質、およびそれらをコードする遺伝子にも準用できる。
<1−3>その他の改変
本発明の酵母は、さらに、他の改変を有していてもよい。「他の改変」は、適宜選択することができる。「他の改変」としては、1種の改変を用いてもよく、2種またはそれ以上の改変を組み合わせて用いてもよい。本発明において、本発明の酵母を構築するための改変は、任意の順番で行うことができる。
例えば、本発明の酵母は、Abu関連化合物の生合成能が増強されるよう、改変されてい
てよい。そのような改変により、細胞内のAbu関連化合物の含有量が高まると期待される。Abu関連化合物の生合成能は、Abu関連化合物の生合成に関与する酵素の活性を増大させることにより、増強できる。Abu関連化合物の生合成に関与する酵素としては、α−ケト酪酸合成酵素、アミノ基転移酵素(aminotransferase)、γ−グルタミルシステイン合成酵素(gamma glutamylcysteine synthetase)、グルタチオン合成酵素(glutathione synthase)が挙げられる。本発明においては、Abu関連化合物の生合成に関与する1種の酵素の活性を増大させてもよく、Abu関連化合物の生合成に関与する2種またはそれ以上の酵素の活性を増大させてもよい。酵素の活性は、例えば、酵素をコードする遺伝子の発現を増強することより、増大させることができる。酵素(タンパク質)の活性を増大させる詳細な手法は後述する。
「α−ケト酪酸合成酵素」とは、L−スレオニンからα−ケト酪酸を生成する反応を触媒する活性を有するタンパク質をいう。また、同活性を「α−ケト酪酸合成酵素活性」ともいう。α−ケト酪酸合成酵素としては、例えば、セリン/スレオニンデアミナーゼ(serine/threonine deaminase)やスレオニンデアミナーゼ(threonine deaminase)が挙げられる。セリン/スレオニンデアミナーゼをコードする遺伝子としては、CHA1遺伝子が挙げられる。スレオニンデアミナーゼをコードする遺伝子としては、ILV1遺伝子が挙げられる。これらの中では、例えば、CHA1遺伝子にコードされるセリン/スレオニンデアミナーゼの活性を増大させるのが好ましい。本発明においては、1種のα−ケト酪酸合成酵素の活性を増大させてもよく、2種またはそれ以上のα−ケト酪酸合成酵素の活性を増大させてもよい。
サッカロマイセス・セレビシエのCHA1遺伝子(システマティックネーム:YCL064C)およびILV1遺伝子(システマティックネーム:YER086W)の塩基配列は、Saccharomyces Genome Database(http://www.yeastgenome.org/)に開示されている。サッカロミセス・セレビシエS288C株(ATCC 26108)のCHA1遺伝子の塩基配列、および同遺伝子がコードするCha1タンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号37および38に示す。サッカロミセス・セレビシエS288C株(ATCC 26108)のILV1遺伝子の塩基配列、および同遺伝子がコードするIlv1タンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号39および40に示す。
「アミノ基転移酵素」とは、アミノ基転移反応により、α−ケト酪酸からAbuを生成する反応を触媒する活性を有するタンパク質をいう。また、同活性を「アミノ基転移酵素活性」ともいう。アミノ基転移酵素としては、例えば、アラニン:グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ(alanine:glyoxylate aminotransferase)、分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼ(branched-chain amino acid transaminase)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(aspartate amino transferase)、γ−アミノ酪酸トランスアミナーゼ(gamma-aminobutyrate transaminase)が挙げられる。アラニン:グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼをコードする遺伝子としては、AGX1遺伝子が挙げられる。分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼをコードする遺伝子としては、BAT1およびBAT2遺伝子が挙げられる。アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼをコードする遺伝子としては、AAT1およびAAT2遺伝子が挙げられる。γ−アミノ酪酸トランスアミナーゼをコードする遺伝子としては、UGA1遺伝子が挙げられる。これらの中では、例えば、BAT1にコードされる分岐鎖アミノ酸トランスアミナーゼの活性を増大させるのが好ましい。本発明においては、1種のアミノ基転移酵素の活性を増大させてもよく、2種またはそれ以上のアミノ基転移酵素の活性を増大させてもよい。
サッカロマイセス・セレビシエのAGX1遺伝子(システマティックネーム:YFL030W)、BAT1遺伝子(システマティックネーム:YHR208W)、BAT2遺伝子(システマティックネーム:YJR148W)、AAT1遺伝子(システマティックネーム:YKL106W)、AAT2遺伝子(システマティックネーム:YLR027C)、およびUGA1遺伝子(システマティックネーム:YGR019W)の
塩基配列は、Saccharomyces Genome Database(http://www.yeastgenome.org/)に開示されている。サッカロミセス・セレビシエS288C株(ATCC 26108)のBAT1遺伝子の塩基配列、および同遺伝子がコードするBat1タンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号41および42に示す。
γ−グルタミルシステイン合成酵素は、一般に、正反応として、L-GluおよびL-Cysからγ−グルタミルシステイン(γ-Glu-Cys)を生成する反応を触媒し、且つ、副反応として、L-Gluおよび各種L-アミノ酸から各種γ−グルタミルジペプチドを生成する反応を触媒し得る酵素として知られている。本発明において、「γ−グルタミルシステイン合成酵素」とは、L-GluおよびAbuからγ-Glu-Abuを生成する反応を触媒する活性を有するタンパク質であってよい。また、同活性を「γ−グルタミルシステイン合成酵素活性」ともいう。本発明において、γ−グルタミルシステイン合成酵素は、L-GluおよびL-Cysからγ-Glu-Cysを生成する反応を触媒する活性を有していてもよく、有していなくてもよい。γ−グルタミルシステイン合成酵素をコードする遺伝子としては、GSH1遺伝子が挙げられる。γ−グルタミルシステイン合成酵素の活性の増強については、例えば、米国特許第7553638号、大竹康之ら(バイオサイエンスとインダストリー、第50巻第10号、第989〜994頁、1992年)等に開示されている。
グルタチオン合成酵素は、一般に、正反応として、γ-Glu-CysおよびGlyからグルタチオン(γ-Glu-Cys-Gly)を生成する反応を触媒し、且つ、副反応として、各種γ−グルタミルジペプチドおよびGlyから各種γ−グルタミルトリペプチドを生成する反応を触媒し得る酵素として知られている。本発明において、「グルタチオン合成酵素」とは、γ-Glu-AbuおよびGlyからγ-Glu-Abu-Glyを生成する反応を触媒する活性を有するタンパク質であってよい。また、同活性を「グルタチオン合成酵素活性」ともいう。本発明において、グルタチオン合成酵素は、γ-Glu-CysおよびGlyからγ-Glu-Cys-Glyを生成する反応を触媒する活性を有していてもよく、有していなくてもよい。グルタチオン合成酵素をコードする遺伝子としては、GSH2遺伝子が挙げられる。
サッカロミセス・セレビシエのGSH1遺伝子およびGSH2遺伝子の塩基配列は、Saccharomyces Genome Database(http://www.yeastgenome.org/)に開示されている。また、キャンディダ・ユティリスのGSH1遺伝子およびGSH2遺伝子の塩基配列は、米国特許第7553638号に開示されている。サッカロミセス・セレビシエS288C株(ATCC 26108)のGSH1遺伝子の塩基配列、および同遺伝子がコードするGsh1タンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号43および44に示す。サッカロミセス・セレビシエS288C株(ATCC 26108)のGSH2遺伝子の塩基配列、および同遺伝子がコードするGsh2タンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号45および46に示す。
また、本発明の酵母は、細胞内のアセト乳酸シンターゼの活性が低下するよう、改変されていてよい。アセト乳酸シンターゼは、一般に、2分子のピルビン酸からアセト乳酸およびCOを生成する反応、および、ピルビン酸およびα−ケト酪酸(α-KB)からα−アセトヒドロキシ酪酸およびCOを生成する反応を触媒する酵素として知られている(EC 2.2.1.6)。本発明において、「アセト乳酸シンターゼ」とは、ピルビン酸およびα−ケト酪酸(α-KB)からα−アセトヒドロキシ酪酸およびCOを生成する反応を触媒する活性を有するタンパク質であってよい。また、同活性を「アセト乳酸シンターゼ活性」ともいう。本発明において、アセト乳酸シンターゼは、2分子のピルビン酸からアセト乳酸およびCOを生成する反応を触媒する活性を有していてもよく、有していなくてもよい。アセト乳酸シンターゼ活性は、例えば、アセト乳酸シンターゼをコードする遺伝子を破壊することにより、低下させることができる。酵素(タンパク質)の活性を低下させる詳細な手法は後述する。アセト乳酸シンターゼをコードする遺伝子としては、アセト乳酸シンターゼの活性サブユニットをコードするILV2遺伝子が挙げられる。
サッカロミセス・セレビシエのILV2遺伝子の塩基配列は、Saccharomyces Genome Database(http://www.yeastgenome.org/)に開示されている。サッカロミセス・セレビシエS288C株(ATCC 26108)のILV2遺伝子の塩基配列、および同遺伝子がコードするIlv2タンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号47および48に示す。なお、例えば、サッカロミセス・セレビシエY006株(FERM BP-11299)は、2コピーのILV2遺伝子を有する。
アセト乳酸シンターゼ活性が低下したことは、例えば、改変前の酵母と改変後の酵母よりそれぞれ粗酵素液を調製し、そのアセト乳酸シンターゼ活性を比較することにより、確認できる。アセト乳酸シンターゼ活性は、例えば、公知の方法(F.C. Stormer and H.E. Umbarger, Biochem. Biophys. Res. Commun., 17, 5, 587-592(1964))により測定できる。
また、本発明の酵母は、細胞内のペプチド分解酵素の活性が低下するよう、改変されていてよい。ここでいう「ペプチド分解酵素」とは、Abu関連化合物を加水分解する反応を触媒する活性を有するタンパク質であってよい。また、同活性を「ペプチド分解酵素の活性」または「ペプチド分解活性」ともいう。ペプチド分解酵素の活性は、例えば、ペプチド分解酵素をコードする遺伝子を破壊することにより、低下させることができる。酵素(タンパク質)の活性を低下させる詳細な手法は後述する。ペプチド分解酵素をコードする遺伝子としては、DUG1遺伝子、DUG2遺伝子、DUG3遺伝子、およびECM38遺伝子が挙げられる(特開2012-213376)。なお、DUG1遺伝子、DUG2遺伝子、およびDUG3遺伝子にそれぞれコードされるDug1タンパク質(Dug1p)、Dug2タンパク質(Dug2p)、およびDug3タンパク質(Dug3p)は、DUG複合体を形成して機能する。DUG複合体によるグルタチオンの分解には、Dug1p、Dug2p、およびDug3pの全てが必要であることが知られている(Ganguli D. et
al., Genetics. 2007 Mar; 175(3): 1137-51)。よって、Dug1p、Dug2p、およびDug3pから選択される1またはそれ以上のタンパク質の活性を低下させることでDUG複合体の活性を低下させることができる。これらの内、少なくともDug2pの活性を低下させるのが好ましい。本発明においては、1種のペプチド分解酵素の活性を低下させてもよく、2種またはそれ以上のペプチド分解酵素の活性を低下させてもよい。
サッカロミセス・セレビシエのDUG1遺伝子、DUG2遺伝子、DUG3遺伝子、およびECM38遺伝子の塩基配列は、Saccharomyces Genome Database(http://www.yeastgenome.org/)に開示されている。サッカロミセス・セレビシエS288C株(ATCC 26108)のDUG1遺伝子の塩基配列、および同遺伝子がコードするDug1タンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号49および50に示す。サッカロミセス・セレビシエS288C株(ATCC 26108)のDUG2遺伝子の塩基配列、および同遺伝子がコードするDug2タンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号51および52に示す。サッカロミセス・セレビシエS288C株(ATCC 26108)のDUG3遺伝子の塩基配列、および同遺伝子がコードするDug3タンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号53および54に示す。サッカロミセス・セレビシエS288C株(ATCC 26108)のECM38遺伝子の塩基配列、および同遺伝子がコードするEcm38タンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号55および56に示す。
なお、これら「他の改変」に使用される遺伝子は、いずれも、上記例示した遺伝子や公知の塩基配列を有する遺伝子に限られず、その保存的バリアントであってもよい。遺伝子やタンパク質の保存的バリアントについては、上述したAbu関連化合物排出タンパク質およびAbu関連化合物取り込みタンパク質、並びにそれらをコードする遺伝子の保存的バリアントに関する記載を準用できる。なお、タンパク質が複数のサブユニットからなる複合体として機能する場合は、各サブユニットについての「元の機能が維持されている」とは、各サブユニットが残りのサブユニットと複合体を形成し、当該複合体が対応する活性を有することであってよい。すなわち、例えば、DUG複合体の各サブユニットについての「
元の機能が維持されている」とは、各サブユニットが残りのサブユニットと複合体を形成し、当該複合体がペプチド分解活性を有することであってよい。
上述したような各種改変は、突然変異処理や遺伝子工学により実施できる。サッカロマイセス・セレビシエの遺伝子工学の具体的手法は、多くの書籍に記されている。また、キャンディダ・ユティリスについても、近年各種の方法が報告されており、それらを用いてよい。例えば、ケミカルエンジニアリング1999年6月号(23p-28p、三沢典彦)、FEMS Microbiology Letters(Luis Rodriguez et al., 165 (1998) 335-340)、WO98/07873、特開平8-173170、WO95/32289、Journal of Bacteriology(KEIJI KONDO et al., Vol.177 No.24 (1995) 7171-7177)、WO98/14600、特開2006-75122、特開2006-75123、特開2007-089441、特開2006-101867などの先行文献にその具体的な手法が記されているので適宜参考にすることができる。
<1−4>タンパク質の活性を増大させる手法
以下に、Abu関連化合物取り込みタンパク質等のタンパク質の活性を増大させる手法について説明する。
「タンパク質の活性が増大する」とは、同タンパク質の細胞当たりの活性が野生株や親株等の非改変株に対して増大していることを意味する。なお、「タンパク質の活性が増大する」ことを、「タンパク質の活性が増強される」ともいう。「タンパク質の活性が増大する」とは、具体的には、非改変株と比較して、同タンパク質の細胞当たりの分子数が増加していること、および/または、同タンパク質の分子当たりの機能が増大していることをいう。すなわち、「タンパク質の活性が増大する」という場合の「活性」とは、タンパク質の触媒活性に限られず、タンパク質をコードする遺伝子の転写量(mRNA量)または翻訳量(タンパク質の量)を意味してもよい。また、「タンパク質の活性が増大する」とは、もともと標的のタンパク質の活性を有する菌株において同タンパク質の活性を増大させることだけでなく、もともと標的のタンパク質の活性が存在しない菌株に同タンパク質の活性を付与することを含む。また、結果としてタンパク質の活性が増大する限り、酵母が本来有する標的のタンパク質の活性を低下または消失させた上で、好適な標的のタンパク質の活性を付与してもよい。
タンパク質の活性は、非改変株と比較して増大していれば特に制限されないが、例えば、非改変株と比較して、1.5倍以上、2倍以上、または3倍以上に上昇してよい。また、非改変株が標的のタンパク質の活性を有していない場合は、同タンパク質をコードする遺伝子を導入することにより同タンパク質が生成されていればよいが、例えば、同タンパク質はその酵素活性が測定できる程度に生産されていてよい。
タンパク質の活性が増大するような改変は、例えば、同タンパク質をコードする遺伝子の発現を上昇させることによって達成される。なお、「遺伝子の発現が上昇する」ことを、「遺伝子の発現が増強される」ともいう。遺伝子の発現は、例えば、非改変株と比較して、1.5倍以上、2倍以上、または3倍以上に上昇してよい。また、「遺伝子の発現が上昇する」とは、もともと標的の遺伝子が発現している菌株において同遺伝子の発現量を上昇させることだけでなく、もともと標的の遺伝子が発現していない菌株において、同遺伝子を発現させることを含む。すなわち、「遺伝子の発現が上昇する」とは、例えば、標的の遺伝子を保持しない菌株に同遺伝子を導入し、同遺伝子を発現させることを含む。
遺伝子の発現の上昇は、例えば、遺伝子のコピー数を増加させることにより達成できる。
遺伝子のコピー数の増加は、宿主微生物の染色体へ同遺伝子を導入することにより達成
できる。染色体への遺伝子の導入は、例えば、相同組み換えを利用して行うことができる(MillerI, J. H. Experiments in Molecular Genetics, 1972, Cold Spring Harbor Laboratory)。遺伝子は、1コピーのみ導入されてもよく、2コピーまたはそれ以上導入されてもよい。例えば、染色体上に多数のコピーが存在する配列を標的として相同組み換えを行うことで、染色体へ遺伝子の多数のコピーを導入することができる。染色体中に多数のコピーが存在する配列としては、特有の短い繰り返し配列からなる自律複製配列(ARS)や、約150コピー存在するrDNA配列が挙げられる。ARSを含むプラスミドを用いて酵母の形質転換を行った例が、国際公開95/32289号パンフレットに記載されている。また、トランスポゾンに遺伝子を組み込み、それを染色体へ遺伝子の多数のコピーを導入するよう転移させてもよい。
染色体上に標的遺伝子が導入されたことの確認は、同遺伝子の全部又は一部と相補的な配列を持つプローブを用いたサザンハイブリダイゼーション、又は同遺伝子の配列に基づいて作成したプライマーを用いたPCR等によって確認できる。
また、遺伝子のコピー数の増加は、同遺伝子を含むベクターを宿主微生物に導入することによっても達成できる。例えば、標的遺伝子を含むDNA断片を、宿主微生物で機能するベクターと連結して同遺伝子の発現ベクターを構築し、当該発現ベクターで宿主微生物を形質転換することにより、同遺伝子のコピー数を増加させることができる。標的遺伝子を含むDNA断片は、例えば、標的遺伝子を有する微生物のゲノムDNAを鋳型とするPCRにより取得できる。ベクターとしては、宿主微生物の細胞内において自律複製可能なベクターを用いることができる。ベクターは、マルチコピーベクターであるのが好ましい。ベクターは、挿入された遺伝子を発現するためのプロモーターやターミネーターを備えていてもよい。酵母細胞内で機能するベクターとしては、例えば、CEN4の複製開始点を持つプラスミドや2μm DNAの複製開始点を持つマルチコピー型プラスミドが挙げられる。酵母細胞内で機能するベクターとして、具体的には、例えば、pAUR123(タカラバイオ社製)やpYES2(インビトロジェン社)が挙げられる。
遺伝子を導入する場合、遺伝子は、発現可能に本発明の酵母に保持されていればよい。具体的には、遺伝子は、本発明の酵母で機能するプロモーター配列による制御を受けて発現するように導入されていればよい。プロモーターは、宿主由来のプロモーターであってもよく、異種由来のプロモーターであってもよい。プロモーターは、導入する遺伝子の固有のプロモーターであってもよく、他の遺伝子のプロモーターであってもよい。プロモーターは、利用するベクターにもともと搭載されているプロモーターであってもよい。プロモーターとしては、例えば、後述するような、より強力なプロモーターを利用してもよい。
遺伝子の下流には、転写終結用のターミネーターを配置することができる。ターミネーターは、本発明の酵母において機能するものであれば特に制限されない。ターミネーターは、宿主由来のターミネーターであってもよく、異種由来のターミネーターであってもよい。ターミネーターは、導入する遺伝子の固有のターミネーターであってもよく、他の遺伝子のターミネーターであってもよい。ターミネーターは、利用するベクターにもともと搭載されているターミネーターであってもよい。ターミネーターとして、具体的には、例えば、ADH1ターミネーターが挙げられる。
各種微生物において利用可能なベクター、プロモーター、ターミネーターに関しては、例えば「微生物学基礎講座8 遺伝子工学、共立出版、1987年」に詳細に記載されており、それらを利用することが可能である。
また、2またはそれ以上の遺伝子を導入する場合、各遺伝子が、発現可能に本発明の酵
母に保持されていればよい。例えば、各遺伝子は、全てが単一の発現ベクター上に保持されていてもよく、全てが染色体上に保持されていてもよい。また、各遺伝子は、複数の発現ベクター上に別々に保持されていてもよく、単一または複数の発現ベクター上と染色体上とに別々に保持されていてもよい。また、2またはそれ以上の遺伝子でオペロンを構成して導入してもよい。「2またはそれ以上の遺伝子を導入する場合」としては、例えば、2またはそれ以上の酵素をそれぞれコードする遺伝子を導入する場合、単一の酵素を構成する2またはそれ以上のサブユニットをそれぞれコードする遺伝子を導入する場合、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
導入される遺伝子は、宿主で機能するタンパク質をコードするものであれば特に制限されない。導入される遺伝子は、宿主由来の遺伝子であってもよく、異種由来の遺伝子であってもよい。導入される遺伝子は、例えば、同遺伝子の塩基配列に基づいて設計したプライマーを用い、同遺伝子を有する生物のゲノムDNAや同遺伝子を搭載するプラスミド等を鋳型として、PCRにより取得することができる。また、導入される遺伝子は、例えば、同遺伝子の塩基配列に基づいて全合成してもよい(Gene, 60(1), 115-127 (1987))。
なお、タンパク質が複数のサブユニットからなる複合体として機能する場合、結果としてタンパク質の活性が増大する限り、それら複数のサブユニットの全てを改変してもよく、一部のみを改変してもよい。すなわち、例えば、遺伝子の発現を上昇させることによりタンパク質の活性を増大させる場合、それらのサブユニットをコードする複数の遺伝子の全ての発現を増強してもよく、一部の発現のみを増強してもよい。通常は、それらのサブユニットをコードする複数の遺伝子の全ての発現を増強するのが好ましい。また、複合体を構成する各サブユニットは、複合体が目的のタンパク質の機能を有する限り、1種の生物由来であってもよく、2種またはそれ以上の異なる生物由来であってもよい。すなわち、例えば、複数のサブユニットをコードする、同一の生物由来の遺伝子を宿主に導入してもよく、それぞれ異なる生物由来の遺伝子を宿主に導入してもよい。
また、遺伝子の発現の上昇は、遺伝子の転写効率を向上させることにより達成できる。遺伝子の転写効率の向上は、例えば、染色体上の遺伝子のプロモーターをより強力なプロモーターに置換することにより達成できる。「より強力なプロモーター」とは、遺伝子の転写が、もともと存在している野生型のプロモーターよりも向上するプロモーターを意味する。より強力なプロモーターとしては、例えば、公知の高発現プロモーターである、PGK1、PDC1、TDH3、TEF1、HXT7、ADH1等の遺伝子のプロモーターが挙げられる。また、より強力なプロモーターとしては、各種レポーター遺伝子を用いることにより、在来のプロモーターの高活性型のものを取得してもよい。
また、遺伝子の発現の上昇は、遺伝子の翻訳効率を向上させることにより達成できる。遺伝子の翻訳効率の向上は、例えば、コドンの改変によって達成できる。すなわち、遺伝子の異種発現を行う場合等には、遺伝子中に存在するレアコドンを、より高頻度で利用される同義コドンに置き換えることにより、遺伝子の翻訳効率を向上させることができる。コドンの置換は、例えば、DNAの目的の部位に目的の変異を導入する部位特異的変異法により行うことができる。部位特異的変異法としては、PCRを用いる方法(Higuchi, R., 61, in PCR technology, Erlich, H. A. Eds., Stockton press (1989);Carter, P., Meth. in Enzymol., 154, 382 (1987))が挙げられる。また、コドンが置換された遺伝子断片を全合成してもよい。種々の生物におけるコドンの使用頻度は、「コドン使用データベース」(http://www.kazusa.or.jp/codon; Nakamura, Y. et al, Nucl. Acids Res., 28,
292 (2000))に開示されている。
また、遺伝子の発現の上昇は、遺伝子の発現を上昇させるようなレギュレーターを増幅すること、または、遺伝子の発現を低下させるようなレギュレーターを欠失または弱化さ
せることによっても達成できる。
上記のような遺伝子の発現を上昇させる手法は、単独で用いてもよく、任意の組み合わせで用いてもよい。
また、タンパク質の活性が増大するような改変は、例えば、タンパク質の比活性を増強することによっても達成できる。比活性の増強には、フィードバック阻害の低減および解除も含まれる。比活性が増強されたタンパク質は、例えば、種々の生物を探索し取得することができる。また、在来のタンパク質に変異を導入することで高活性型のものを取得してもよい。導入される変異は、例えば、タンパク質の1若しくは数個の位置での1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、又は付加されるものであってよい。変異の導入は、例えば、上述したような部位特異的変異法により行うことができる。また、変異の導入は、例えば、突然変異処理により行ってもよい。突然変異処理としては、X線の照射、紫外線の照射、ならびにN−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(MNNG)、エチルメタンスルフォネート(EMS)、およびメチルメタンスルフォネート(MMS)等の変異剤による処理が挙げられる。また、in vitroでDNAを直接ヒドロキシルアミンで処理し、ランダム変異を誘発してもよい。比活性の増強は、単独で用いてもよく、上記のような遺伝子の発現を増強させる手法と任意に組み合わせて用いてもよい。
本発明の酵母が2倍体以上の倍数性を有する場合であって、染色体の改変によりタンパク質の活性を増大させる場合には、本発明の酵母は、結果としてタンパク質の活性が増大する限り、タンパク質の活性が増大するように改変された染色体と野生型染色体とをヘテロで有していてもよく、タンパク質の活性が増大するように改変された染色体をホモで有していてもよい。
酵母の形質転換法としては、プロトプラスト法、KU法(H.Ito et al., J. Bateriol., 153-163 (1983))、KUR法(発酵と工業 vol.43, p.630-637 (1985))、エレクトロポレーション法(Luis et al., FEMS Micro biology Letters 165 (1998) 335-340)、キャリアDNAを用いる方法(Gietz R.D. and Schiestl R.H., Methods Mol.Cell. Biol. 5:255-269 (1995))等、通常酵母の形質転換に用いられる方法を採用することができる。また、酵母の胞子形成、1倍体酵母の分離、等の操作については、「化学と生物 実験ライン31 酵母の実験技術」、初版、廣川書店;「バイオマニュアルシリーズ10 酵母による遺伝子実験法」初版、羊土社等に記載されている。
タンパク質の活性が増大したことは、同タンパク質の活性を測定することで確認できる。具体的には、Abu関連化合物取り込み活性は、例えば、上述した手法により測定することにより確認できる。また、Abu関連化合物取り込み活性の増大は、例えば、細胞内のAbu関連化合物濃度の増加および/または培地中に蓄積するAbu関連化合物濃度の低下として観察され得る。例えば、培地中に蓄積するAbu関連化合物濃度は、非改変株と比較して、10%以上、30%以上、または50%以上減少してもよい。
タンパク質の活性が増大したことは、同タンパク質をコードする遺伝子の発現が上昇したことを確認することによっても、確認できる。遺伝子の発現が上昇したことは、同遺伝子の転写量が上昇したことを確認することや、同遺伝子から発現するタンパク質の量が上昇したことを確認することにより確認できる。
遺伝子の転写量が上昇したことの確認は、同遺伝子から転写されるmRNAの量を野生株または親株等の非改変株と比較することによって行うことができる。mRNAの量を評価する方法としてはノーザンハイブリダイゼーション、RT-PCR等が挙げられる(Sambrook, J., et al., Molecular Cloning A Laboratory Manual/Third Edition, Cold spring Harbor Lab
oratory Press, Cold spring Harbor (USA), 2001)。mRNAの量は、非改変株と比較して、例えば、1.5倍以上、2倍以上、または3倍以上に上昇してよい。
タンパク質の量が上昇したことの確認は、抗体を用いてウェスタンブロットによって行うことができる(Molecular cloning(Cold spring Harbor Laboratory Press, Cold spring Harbor (USA), 2001))。タンパク質の量は、非改変株と比較して、例えば、1.5倍以上、2倍以上、または3倍以上に上昇してよい。
上記したタンパク質の活性を増大させる手法は、Abu関連化合物取り込みタンパク質の活性増強に加えて、任意のタンパク質、例えばアミノ基転移酵素、の活性増強や、任意の遺伝子、例えばそれら任意のタンパク質をコードする遺伝子、の発現増強に利用できる。
<1−5>タンパク質の活性を低下させる手法
以下に、Abu関連化合物排出タンパク質等のタンパク質の活性を低下させる手法について説明する。
「タンパク質の活性が低下する」とは、同タンパク質の細胞当たりの活性が野性株や親株等の非改変株と比較して減少していることを意味し、活性が完全に消失している場合を含む。「タンパク質の活性が低下する」とは、具体的には、非改変株と比較して、同タンパク質の細胞当たりの分子数が低下していること、および/または、同タンパク質の分子当たりの機能が低下していることをいう。すなわち、「タンパク質の活性が低下する」という場合の「活性」とは、タンパク質の触媒活性に限られず、タンパク質をコードする遺伝子の転写量(mRNA量)または翻訳量(タンパク質の量)を意味してもよい。なお、「タンパク質の細胞当たりの分子数が低下している」ことには、同タンパク質が全く存在していない場合が含まれる。また、「タンパク質の分子当たりの機能が低下している」ことには、同タンパク質の分子当たりの機能が完全に消失している場合が含まれる。タンパク質の活性は、非改変株と比較して低下していれば特に制限されないが、例えば、非改変株と比較して、50%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または0%に低下してよい。
タンパク質の活性が低下するような改変は、例えば、同タンパク質をコードする遺伝子の発現を低下させることにより達成される。「遺伝子の発現が低下する」ことには、同遺伝子が全く発現していない場合が含まれる。なお、「遺伝子の発現が低下する」ことを、「遺伝子の発現が弱化される」ともいう。遺伝子の発現は、例えば、非改変株と比較して、50%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または0%に低下してよい。
遺伝子の発現の低下は、例えば、転写効率の低下によるものであってもよく、翻訳効率の低下によるものであってもよく、それらの組み合わせによるものであってもよい。遺伝子の発現の低下は、例えば、遺伝子のプロモーター等の発現調節配列を改変することにより達成できる。発現調節配列を改変する場合には、発現調節配列は、好ましくは1塩基以上、より好ましくは2塩基以上、特に好ましくは3塩基以上が改変される。また、染色体上の遺伝子のプロモーターをより弱いプロモーターに置換してもよい。「より弱いプロモーター」とは、遺伝子の転写が、もともと存在している野生型のプロモーターよりも弱化するプロモーターを意味する。より弱いプロモーターとしては、例えば、各種誘導型のプロモーターを利用することができる。すなわち、誘導型のプロモーターは、誘導物質の非存在下で、より弱いプロモーターとして機能し得る。誘導型のプロモーターとしては、例えば、ガラクトース誘導性のガラクトキナーゼ遺伝子(GAL1)のプロモーターが挙げられる。また、発現調節配列の一部または全部を欠失させてもよい。また、遺伝子の発現の低下は、例えば、発現制御に関わる因子を操作することによっても達成できる。発現制御に関わる因子としては、転写や翻訳制御に関わる低分子(誘導物質、阻害物質など)、タン
パク質(転写因子など)、核酸(siRNAなど)等が挙げられる。
また、タンパク質の活性が低下するような改変は、例えば、同タンパク質をコードする遺伝子を破壊することにより達成できる。遺伝子の破壊は、例えば、染色体上の遺伝子のコード領域の一部又は全部を欠損させることにより達成できる。さらには、染色体上の遺伝子の前後の配列を含めて、遺伝子全体を欠失させてもよい。タンパク質の活性の低下が達成できる限り、欠失させる領域は、N末端領域、内部領域、C末端領域等のいずれの領域であってもよい。通常、欠失させる領域は長い方が確実に遺伝子を不活化することができる。また、欠失させる領域の前後の配列は、リーディングフレームが一致しないことが好ましい。
また、遺伝子の破壊は、例えば、染色体上の遺伝子のコード領域にアミノ酸置換(ミスセンス変異)を導入すること、終止コドンを導入すること(ナンセンス変異)、あるいは1〜2塩基を付加または欠失するフレームシフト変異を導入すること等によっても達成できる(Journal of Biological Chemistry 272:8611-8617(1997), Proceedings of the National Academy of Sciences, USA 95 5511-5515(1998), Journal of Biological Chemistry 26 116, 20833-20839(1991))。
また、遺伝子の破壊は、例えば、染色体上の遺伝子のコード領域に他の配列を挿入することによっても達成できる。挿入部位は遺伝子のいずれの領域であってもよいが、挿入する配列は長い方が確実に遺伝子を不活化することができる。また、挿入部位の前後の配列は、リーディングフレームが一致しないことが好ましい。他の配列としては、コードされるタンパク質の活性を低下又は消失させるものであれば特に制限されないが、例えば、抗生物質耐性遺伝子等のマーカー遺伝子や目的物質の生産に有用な遺伝子が挙げられる。
染色体上の遺伝子を上記のように改変することは、例えば、遺伝子の部分配列を欠失し、正常に機能するタンパク質を産生しないように改変した欠失型遺伝子を作製し、該欠失型遺伝子を含む組換えDNAで微生物を形質転換して、欠失型遺伝子と染色体上の野生型遺伝子とで相同組換えを起こさせることにより、染色体上の野生型遺伝子を欠失型遺伝子に置換することによって達成できる。その際、組換えDNAには、宿主の栄養要求性等の形質にしたがって、マーカー遺伝子を含ませておくと操作がしやすい。欠失型遺伝子によってコードされるタンパク質は、生成したとしても、野生型タンパク質とは異なる立体構造を有し、機能が低下又は消失する。
用いる組換えDNAの構造によっては、相同組換えの結果として、野生型遺伝子と欠失型遺伝子とが組換えDNAの他の部分(例えば、ベクター部分及びマーカー遺伝子)を挟んだ状態で染色体に挿入される場合がある。この状態では野生型遺伝子が機能するため、当該2個の遺伝子間で再度相同組換えを起こさせ、1コピーの遺伝子を、ベクター部分及びマーカー遺伝子とともに染色体DNAから脱落させ、欠失型遺伝子が残ったものを選抜する必要がある。
また、例えば、任意の配列を含む線状DNAであって、当該任意の配列の両端に染色体上の置換対象部位の上流および下流の配列を備える線状DNAで酵母を形質転換して、置換対象部位の上流および下流でそれぞれ相同組換えを起こさせることにより、1ステップで置換対象部位を当該任意の配列に置換することができる。当該任意の配列としては、例えば、マーカー遺伝子を含む配列を用いることができる。マーカー遺伝子は、その後、必要により除去してもよい。マーカー遺伝子を除去する場合には、マーカー遺伝子を効率的に除去できるよう、相同組み換え用の配列をマーカー遺伝子の両端に付加しておいてもよい。
また、タンパク質の活性が低下するような改変は、例えば、突然変異処理により行ってもよい。突然変異処理としては、X線の照射、紫外線の照射、ならびにN−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(MNNG)、エチルメタンスルフォネート(EMS)、およびメチルメタンスルフォネート(MMS)等の変異剤による処理が挙げられる。
なお、タンパク質が複数のサブユニットからなる複合体として機能する場合、結果としてタンパク質の活性が低下する限り、それら複数のサブユニットの全てを改変してもよく、一部のみを改変してもよい。すなわち、例えば、それらのサブユニットをコードする複数の遺伝子の全てを破壊等してもよく、一部のみを破壊等してもよい。具体的には、例えば、ペプチド分解酵素であるDUG複合体の活性を低下させる場合、DUG複合体を構成するDug1p、Dug2p、およびDug3pをコードする遺伝子の全てを破壊等してもよく、一部のみを破壊等してもよい。また、タンパク質に複数のアイソザイムが存在する場合、結果としてタンパク質の活性が低下する限り、複数のアイソザイムの全ての活性を低下させてもよく、一部のみの活性を低下させてもよい。すなわち、例えば、それらのアイソザイムをコードする複数の遺伝子の全てを破壊等してもよく、一部のみを破壊等してもよい。また、例えば、それらのアイソザイムをコードする複数の遺伝子の内、一部を破壊し、残りの発現を低下させてもよい。具体的には、例えば、2コピーのILV2遺伝子を有する株においてIlv2タンパク質の活性を低下させる場合、一方のILV2遺伝子を破壊し、他方のILV2遺伝子の発現を低下させてもよい。
本発明の酵母が2倍体以上の倍数性を有する場合には、本発明の酵母は、結果としてタンパク質の活性が低下する限り、タンパク質の活性が低下するように改変された染色体と野生型染色体とをヘテロで有していてもよく、タンパク質の活性が低下するように改変された染色体をホモで有していてもよい。通常は、本発明の酵母は、タンパク質の活性が低下するように改変された遺伝子をホモで有しているのが好ましい。
タンパク質の活性が低下したことは、同タンパク質の活性を測定することで確認できる。具体的には、Abu関連化合物排出活性は、例えば、上述した手法により測定することにより確認できる。また、Abu関連化合物排出活性の低下は、例えば、細胞内のAbu関連化合物濃度の増加および/または培地中に蓄積するAbu関連化合物濃度の低下として観察され得る。例えば、培地中に蓄積するAbu関連化合物濃度は、非改変株と比較して、10%以上、30%以上、または50%以上減少してもよい。
タンパク質の活性が低下したことは、同タンパク質をコードする遺伝子の発現が低下したことを確認することによっても、確認できる。遺伝子の発現が低下したことは、同遺伝子の転写量が低下したことを確認することや、同遺伝子から発現するタンパク質の量が低下したことを確認することにより確認できる。
遺伝子の転写量が低下したことの確認は、同遺伝子から転写されるmRNAの量を非改変株と比較することによって行うことが出来る。mRNAの量を評価する方法としては、ノーザンハイブリダイゼーション、RT−PCR等が挙げられる(Molecular cloning(Cold spring Harbor Laboratory Press, Cold spring Harbor (USA), 2001))。mRNAの量は、非改変株と比較して、例えば、50%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または0%に低下してよい。
タンパク質の量が低下したことの確認は、抗体を用いてウェスタンブロットによって行うことが出来る(Molecular cloning(Cold spring Harbor Laboratory Press, Cold spring Harbor (USA), 2001))。タンパク質の量は、非改変株と比較して、例えば、50%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または0%に低下してよい。
遺伝子が破壊されたことは、破壊に用いた手段に応じて、同遺伝子の一部または全部の塩基配列、制限酵素地図、または全長等を決定することで確認できる。
上記したタンパク質の活性を低下させる手法は、Abu関連化合物排出タンパク質の活性低下に加えて、任意のタンパク質、例えばアセト乳酸シンターゼ、の活性低下や、任意の遺伝子、例えばそれら任意のタンパク質をコードする遺伝子、の発現低下に利用できる。
<2>酵母エキスの製造法
本発明の酵母は、酵母エキスを製造するための原料として利用できる。すなわち、本発明は、本発明の酵母を原料として用いて酵母エキスを調製することを含む、酵母エキスの製造方法を提供する。本発明の酵母を原料として製造される酵母エキスを、「本発明の酵母エキス」ともいう。本発明の酵母エキスは、本発明の酵母を原料として用いる以外は、通常の酵母エキスと同様に製造することができる。以下、本発明の酵母エキスを製造する方法を説明する。
まず、本発明の酵母を培地で培養する。使用する培地は、本発明の酵母が増殖でき、Abu関連化合物が生成蓄積される限り、特に制限されない。培地としては、例えば、酵母の培養に用いられる通常の培地を用いることができる。培地として、具体的には、例えば、SD培地、SG培地、SDTE培地が挙げられるが、これらに限定されない。培地としては、例えば、炭素源、窒素源、リン酸源、硫黄源、その他の各種有機成分や無機成分から選択される成分を必要に応じて含有する培地を用いることができる。培地成分の種類や濃度は、使用する酵母の種類や生成蓄積するAbu関連化合物の種類等の諸条件に応じて適宜設定してよい。
炭素源は、本発明の酵母が資化してAbu関連化合物を生成し得るものであれば、特に限定されない。炭素源として、具体的には、例えば、グルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース、ガラクトース、キシロース、アラビノース、廃糖蜜、澱粉加水分解物、バイオマスの加水分解物等の糖類、酢酸、フマル酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸等の有機酸類、グリセロール、粗グリセロール、エタノール等のアルコール類、脂肪酸類が挙げられる。炭素源としては、1種の炭素源を用いてもよく、2種またはそれ以上の炭素源を組み合わせて用いてもよい。
窒素源として、具体的には、例えば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等のアンモニウム塩、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、大豆タンパク質分解物等の有機窒素源、アンモニア、ウレアが挙げられる。窒素源としては、1種の窒素源を用いてもよく、2種またはそれ以上の窒素源を組み合わせて用いてもよい。
リン酸源として、具体的には、例えば、リン酸2水素カリウム、リン酸水素2カリウム等のリン酸塩、ピロリン酸等のリン酸ポリマーが挙げられる。リン酸源としては、1種のリン酸源を用いてもよく、2種またはそれ以上のリン酸源を組み合わせて用いてもよい。
硫黄源として、具体的には、例えば、硫酸塩、チオ硫酸塩、亜硫酸塩等の無機硫黄化合物、システイン、シスチン、グルタチオン等の含硫アミノ酸が挙げられる。硫黄源としては、1種の硫黄源を用いてもよく、2種またはそれ以上の硫黄源を組み合わせて用いてもよい。
その他の各種有機成分や無機成分として、具体的には、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の無機塩類;鉄、マンガン、マグネシウム、カルシウム等の微量金属類;ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ビタミンB12等のビタミン類;アミノ酸類;核酸類;これらを含有するペプトン、カザミノ酸、酵母エキス、
大豆タンパク質分解物等の有機成分が挙げられる。その他の各種有機成分や無機成分としては、1種の成分を用いてもよく、2種またはそれ以上の成分を組み合わせて用いてもよい。
また、生育にアミノ酸などを要求する栄養要求性変異株を使用する場合には、培地に要求される栄養素を補添することが好ましい。例えば、アセト乳酸シンターゼ活性が低下した株の培養には、イソロイシンやバリンを補填した培地を用いるのが好ましい。
また、本発明の酵母は、Abu関連化合物が補填されていない培地で培養した場合でも、菌体内にAbu関連化合物を生成蓄積できるが、培地にAbu関連化合物を補添してもよい。培地に補填されるAbu関連化合物は、1種であってもよく、2種またはそれ以上であってもよい。
培養条件は、本発明の酵母が増殖でき、Abu関連化合物が生成蓄積される限り、特に制限されない。培養は、例えば、酵母の培養に用いられる通常の条件で行うことができる。培養条件は、使用する酵母の種類や生成蓄積するAbu関連化合物の種類等の諸条件に応じて適宜設定してよい。
培養は、例えば、液体培地を用いて、通気培養または振盪培養により、好気的に行うことができる。培養温度は、例えば、25〜35℃、より好ましくは27〜33℃、さらに好ましくは28〜32℃であってよい。培養期間は、例えば、5時間以上、10時間以上、または15時間以上であってよく、120時間以下、72時間以下、または48時間以下であってよい。培養は、回分培養(batch culture)、流加培養(Fed-batch culture)、連続培養(continuous
culture)、またはそれらの組み合わせにより実施することができる。
上記のようにして本発明の酵母を培養することにより、酵母の細胞内にAbu関連化合物が蓄積し、Abu関連化合物を高含有する酵母が得られる。
得られた酵母からの酵母エキスの調製は、通常の酵母エキスの調製と同様にして行えばよい。酵母エキスは、酵母菌体を熱水抽出したものを処理したものでもよいし、酵母菌体を消化したものを処理したものでもよい。また、必要に応じて得られた酵母エキスを濃縮してもよいし、乾燥し粉末の形態にしてもよい。
上記のようにして、Abu関連化合物を高含有する酵母エキス(本発明の酵母エキス)が得られる。本発明の酵母エキスは、酵母エキス中の固形分全量に対し、Abu関連化合物を乾燥重量として一定量含む。本発明の酵母エキスは、例えばγ-Glu-Abuを、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1.0重量%以上、さらに好ましくは2.0重量%以上、特に好ましくは20重量%以上含有してよい。また、本発明の酵母エキスは、例えばγ-Glu-Abu-Glyを、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1.0重量%以上、特に好ましくは2重量%以上含有してよい。
<3>Abu関連化合物の製造法
また、本発明の酵母の培養物からAbu関連化合物を回収することもできる。すなわち、本発明は、本発明の酵母を培地で培養すること、および培養物からAbu関連化合物を回収することを含む、Abu関連化合物の製造方法を提供する。培養方法は上述した通りである。本発明においては、例えば、菌体内に蓄積したAbu関連化合物を回収することができる。また、Abu関連化合物が培地にも蓄積する場合は、培地に蓄積したAbu関連化合物を回収してもよい。
Abu関連化合物の回収は、化合物の分離精製に用いられる公知の手法により行うことが
できる。そのような手法としては、例えば、イオン交換樹脂法、膜処理法、沈殿法、および晶析法が挙げられる。これらの手法は適宜組み合わせて用いることができる。なお、菌体内に蓄積したAbu関連化合物を回収する場合は、例えば、菌体を超音波などにより破砕し、遠心分離によって菌体を除去し、得られた上清からイオン交換樹脂法等によりAbu関連化合物を回収することができる。回収されるAbu関連化合物は、フリー体、その塩、またはそれらの混合物であってよい。すなわち、「Abu関連化合物」という用語は、特記しない限り、フリー体のAbu関連化合物、Abu関連化合物の塩、またはそれらの混合物を意味する。
塩は、経口摂取可能なものであれば特に制限されない。例えば、カルボキシル基等の酸性基に対する塩としては、具体的には、アンモニウム塩、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、トリエチルアミン、エタノールアミン、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、ジシクロへキシルアミン等の有機アミンとの塩、アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸との塩が挙げられる。また、例えば、アミノ基等の塩基性基に対する塩としては、具体的には、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、臭化水素酸等の無機酸との塩、酢酸、クエン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、タンニン酸、酪酸、ヒベンズ酸、パモ酸、エナント酸、デカン酸、テオクル酸、サリチル酸、乳酸、シュウ酸、マンデル酸、リンゴ酸、メチルマロン酸等の有機カルボン酸との塩、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸との塩が挙げられる。なお、塩としては、1種の塩を用いてもよく、2種またはそれ以上の塩を組み合わせて用いてもよい。
尚、回収されるAbu関連化合物は、Abu関連化合物以外に、例えば、酵母菌体、培地成分、水分、及び酵母の代謝副産物等の成分を含んでいてもよい。回収されたAbu関連化合物の純度は、例えば、30%(w/w)以上、50%(w/w)以上、70%(w/w)以上、80%(w/w)以上、90%(w/w)以上、または95%(w/w)以上であってよい。
<4>本発明の飲食品
上記のようにして得られるAbu関連化合物および/または酵母エキスは、飲食品の製造に用いることができる。すなわち、本発明は、上記方法により得られるAbu関連化合物および/または酵母エキスを飲食品またはその原料に添加することを含む、飲食品の製造方法を提供する。このようにして製造される飲食品を、「本発明の飲食品」ともいう。また、一態様においては、Abu関連化合物および/または酵母エキスの添加により、飲食品に「コク味」を付与することができる。飲食品としては、例えば、アルコール飲料、パン食品、発酵食品調味料が挙げられる。
本発明の飲食品は、Abu関連化合物および/または酵母エキスを添加すること以外は、通常の飲食品と同様の原料を用い、同様の方法によって製造することができる。このような原料としては、例えば、アルコール飲料では米、大麦、コーンスターチ等が、パン食品では小麦粉、砂糖、食塩、バター、発酵用酵母菌等が、発酵食品調味料では大豆、小麦等が挙げられる。Abu関連化合物および/または酵母エキスの添加は、飲食品の製造工程のいずれの段階で行われてもよい。すなわち、Abu関連化合物および/または酵母エキスは、飲食品の原料に添加されてもよく、製造途中の飲食品に添加されてもよく、完成した飲食品に添加されてもよい。また、酵母エキスもしくはその濃縮物、またはそれらを乾燥したものは、それ自体で発酵食品調味料として用いることもできる。
Abu関連化合物および/または酵母エキスの添加量は特に制限されず、飲食品の種類や飲食品の摂取態様等の諸条件に応じて適宜設定することができる。Abu関連化合物および/または酵母エキスは、飲食品またはその原料に対して、Abu関連化合物量に換算して、
例えば、1 ppm(w/w)以上、100 ppm(w/w)以上、または1%(w/w)以上添加してよい。また、Abu関連化合物および/または酵母エキスは、飲食品またはその原料に対して、Abu関連化合物量に換算して、例えば、100%(w/w)以下、10%(w/w)以下、または1%(w/w)以下添加してよい。
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。
<実施例1>γ−グルタミルシステイン合成酵素及びグルタチオン合成酵素の活性が増強され、且つ、グルタチオン排出系の活性が低下した酵母株の作製
(1)γ−グルタミルシステイン合成酵素及びグルタチオン合成酵素の活性が増強された酵母株の作製
Saccharomyces cerevisiaeのGSH1遺伝子にコードされるγ−グルタミルシステイン合成酵素Gsh1は、WO2012/046731の実施例8の基質特異性解析の結果から、AbuおよびGluからγ-Glu-Abuを生成する活性があることが明らかになっている。さらに、Saccharomyces cerevisiaeのGSH2遺伝子にコードされるグルタチオン合成酵素Gsh2は、WO2012/046731の実施例11の基質特異性解析の結果から、γ-Glu-AbuおよびGlyからγ-Glu-Abu-Glyを生成する活性があることが明らかになっている。このことから、酵母のγ-Glu-Abu及び/又はγ-Glu-Abu-Glyの生合成能を強化するためには、γ−グルタミルシステイン合成酵素及び/又はグルタチオン合成酵素の活性の増強が有効であると考えられた。そこで、γ−グルタミルシステイン合成酵素及びグルタチオン合成酵素の活性増強を目的に、γ−グルタミルシステイン合成酵素をコードするGSH1遺伝子及びグルタチオン合成酵素をコードするGSH2遺伝子の発現が増強された株を作製する。手順を以下に示す。
親株として、Saccharomyces cerevisiae AG1 ura3-株(特開2012-213376に記載)を用いる。AG1 ura3-株は、Saccharomyces cerevisiae Y006株(FERM BP-11299)のγ−グルタミルシステイン合成酵素遺伝子(GSH1)の発現増強株である。AG1 ura3-株は、URA3遺伝子を欠損しており、ウラシル要求性を示す。
Sofyanovichらの方法(Olga A. Sofyanovich et al: A New Method for Repeated “Self-Cloning” Promoter Replacement in Saccharomyces cerevisiae. Mol. Biotechnol.,
48, 218-227 (2011))に基づき、AG1 ura3-株のグルタチオン合成酵素をコードする遺伝子(GSH2)のプロモーターを構成発現プロモーターであるPGK1プロモーター領域(以下、pPGK1ともいう)に置換した株を作製する。手順を以下に示す。
5'端にGSH2の上流配列を有する配列番号1のプライマー(5’- AGAAAGTGTCATTTCCATCAGTACGCTTTTTTGGCCGGGTTAGCTAGTGCTGACAAATAGTTGAACCTTCTTGAATTATCTCTTAACCCAACTGCACAGA -3’)、及びGSH2遺伝子の開始コドンから始まる一部のORF内配列を有する配列番号2のプライマー(5’- AATCCATTAGTGATAGCCCATTGGTTAACTTCCTGGATCAATTCATTCAATTGATCCTTGGAAGGTGGATAGTGTGCCATTGTTTTATATTTGTTGTAAA -3’)を用い、pUC19-pPGK1-URA3-pPGK1プラスミド(特開2012-213376に記載)を鋳型にPCRを行い、PGK1プロモーターに挟まれたURA3を有するDNA断片を得る。PCRの条件は、熱変性(94℃、10 sec)、アニーリング(60℃、10 sec)、伸張(72℃、4 min)、25 cycleとする。このDNA断片でAG1 ura3-株を形質転換し、ウラシルを含有しないSD平板培地に塗布する。生育した形質転換体からGSH2プロモーターがpPGK1-URA3-pPGK1に置換された株を取得する。以下にSD培地の調製方法を示す。SD平板培地はSD培地にBacto-agarを2%となるよう加えて作製する。
[SD培地組成]
D(+)-グルコース 20 g
10 x YNB 100 mL
MilliQ水 up to 1 L
1 L
SD培地は、オートクレーブ滅菌したグルコースとフィルター滅菌したYNBを上記組成になるように混合し、オートクレーブ滅菌したMilliQ水でメスアップして調製する。
10 x YNBは次のようにして調製する。MilliQ水1 Lに対し17 gのDifco Yeast Nitrogen Base w/o Amino Acids and Ammonium Sulfate及び50 gの硫酸アンモニウムを溶解させ、pH5.2になるように調整し、フィルター滅菌する。ビタミンの分解を防ぐため冷暗所に保管する。
URA3遺伝子が欠損した株は5−フルオロオロト酸(5-FOA)耐性を示すため、5-FOAを含有する培地を利用してURA3選択マーカーが除去された株を選抜できる。そこで、GSH2プロモーターがpPGK1-URA3-pPGK1に置換された株を、ウラシル添加SD培地で一晩培養し、適量を5-FOA平板培地に塗布する。生育したコロニーから、導入された2つのPGK1プロモーター間の相同組換えにより、URA3が除去され、GSH2プロモーターがPGK1プロモーターに置換された株(AG1 pPGK1-GSH2 ura3- 株)を取得する。なお、以下に5-FOA平板培地の調製方法を示す。
[5-FOA平板培地組成]
酵母生育培地パウチ SD/-Ura Broth 2 pouches
Uracil 50 mg
5-FOA 1 g
10 x YNB 100 mL
Bacto-agar 20 g
MilliQ水 up to 1 L
1 L
酵母生育培地パウチSD/-Ura Broth(クロンテック社)、Uracil、5-FOA、及び10 x YNBを混合し、MilliQ水で500 mLにメスアップしてフィルター滅菌したものと、Bacto-agarをMilliQ水で500 mLにメスアップしオートクレーブ滅菌したものとを混合して、5-FOA平板培地を作製する。
さらに、常法(特開2012-213376)によりAG1 pPGK1-GSH2 ura3- 株にURA3遺伝子を相補した菌株を取得し、得られる菌株をAGPG株と称する。
(2)ATP依存パーミアーゼをコードするADP1遺伝子を欠損した酵母株、およびプロトン:グルタチオンアンチポーターをコードするGEX2遺伝子を欠損した酵母株の作製
次に、グルタチオン排出系の活性低下を目的に、上記で作製したAGPG株の、ATP依存パーミアーゼをコードするADP1遺伝子を破壊した株、及びプロトン:グルタチオンアンチポーターをコードするGEX2遺伝子を破壊した株を作製する。手順を以下に示す。
(2−1)ADP1遺伝子の欠損株の作成
まず、配列番号3(5’- TGCTTGTTACAAAACCTGTG -3’)および配列番号4(5’- CTGTTGTATTGTTATTGCTA -3’)に示すプライマーを用い、YEAST KNOCK OUT STRAIN COLLECTION(フナコシ、YCS1056)のADP1遺伝子破壊株のゲノムを鋳型に、カナマイシン耐性遺伝子カセットKanMXに置換されたADP1遺伝子を含む領域を増幅する。PCRの条件は、熱変性(94℃, 10 sec)、アニーリング(50℃, 10 sec)、伸張(72℃, 3 min)、30 cycleとする。次に、エタノール沈殿によってDNA断片を精製した後、AGPG株を形質転換し、G418を添加したYPD平板培地に菌体を塗布する。生育した形質転換体からADP1遺伝子がKanMXに置換された株(ADP1::KanMX株)を取得する。以下、本菌株をAGPGA株と称する。以下にYPD培地の調製方法を示す。YPD平板培地はYPD培地にBacto-agarを2%となるよう加えて作製する。
[YPD培地組成]
D(+)-グルコース 20 g
Yeast extract 10 g
Polypeptone 20 g
MilliQ水 up to 1 L
1 L
G418二硫酸塩(シグマ社)を200 mg/Lとなるように添加して使用する。
(2−2)GEX2遺伝子の欠損株の作成
まず、配列番号5(5’- GTGCTCATATCCTGTCGACA -3’)および配列番号6(5’- ATCGCATGTTGCACTCACAC -3’)に示すプライマーを用い、YEAST KNOCK OUT STRAIN COLLECTION(フナコシ、YCS1056)のGEX2遺伝子破壊株のゲノムを鋳型に、カナマイシン耐性遺伝子カセットKanMXに置換されたGEX2遺伝子を含む領域を増幅する。PCRの条件は、熱変性(94℃, 10 sec)、アニーリング(50℃, 10 sec)、伸張(72℃, 3 min)、30 cycleとする。次に、エタノール沈殿によってDNA断片を精製した後、AGPG株を形質転換し、G418を添加したYPD平板培地に菌体を塗布する。生育した形質転換体からGEX2遺伝子がKanMXに置換された株(GEX2::KanMX株)を取得する。以下、本菌株をAGPGG株と称する。
<実施例2>γ−グルタミルシステイン合成酵素及びグルタチオン合成酵素の活性が増強され、且つ、グルタチオン排出系の活性が低下した酵母株におけるγ-Glu-Abu及びγ-Glu-Abu-Glyの蓄積量の解析
実施例1で構築したAGPGA株、AGPGG株、及びAGPG株(親株)を、各々、500 mL容坂口フラスコに50 mL張り込んだSD培地に1エーゼ分植菌し、30℃、120 rpmで24時間振とう培養する。得られた培養液の吸光度を測定し、初発OD600が0.01になるように、500 mL容坂口フラスコに70 mL張り込んだ、γ-Glu-Abu及びγ-Glu-Abu-Glyの前駆物質であるα−アミノ酪酸(Abu)を100 ppmとなるよう添加したSD培地に植菌し、30℃、120 rpmで培養する。なお、吸光度は、BECKMAN COULTER社のDU640 SPECTROPHTOMETERを用いて測定する。OD600が2.5になるタイミングで培養液をサンプリングする。
得られた培養液から、40 ODunits(OD600が1である培養液1 mLに含まれる菌体を1 ODunitと定義する)分の菌体を遠心分離により採取する。上清は可能な限り取り除き、残った菌体を45 mLのmilliQ水に懸濁する。再度遠心分離により菌体を集菌し、45 mLのmilliQ水に再懸濁する。この操作を累計3回繰り返すことにより、菌体から培地分を完全に除去する。得られた洗浄菌体は、約1.5 mLのmilliQ水に懸濁し、70℃で10分間加熱する。この工程にて菌体内に含まれるエキス分を抽出する。次に、遠心操作によりエキス分を含む画分と菌体残渣を分離する。エキス分を含む画分から10kDaの遠心濾過膜(MILLIPORE社:Amicon Ultra - 0.5 mL 10K(カタログ番号UFC501096))を用いて細胞デブリを除去し、得られた画分を解析サンプルとする。
サンプル中のγ-Glu-Abu及びγ-Glu-Abu-Glyの含量は、公知の方法(特開2013-212063の実施例2)に従い、サンプル中の当該化合物をAQC試薬にて誘導体化し、LC-MS/MSにより測定する。
その結果、AGPGA株及びAGPGG株の菌体内のγ-Glu-Abu及びγ-Glu-Abu-Glyの含量は、AGPG株(親株)と比較して上昇する。さらに、AGPGA株及びAGPGG株の培養上清中のγ-Glu-Abu及びγ-Glu-Abu-Glyの濃度は、AGPG株(親株)と比較して低下する。
すなわち、ADP1遺伝子にコードされるATP依存パーミアーゼ、およびGEX2遺伝子にコードされるプロトン:グルタチオンアンチポーターは、いずれも、γ-Glu-Abu及びγ-Glu-A
bu-Glyの排出活性を有していることが明らかになる。なお、GEX2遺伝子のパラログであるGEX1遺伝子も、GEX2遺伝子と同様の機能を持つことが推察される。
<実施例3>γ−グルタミルシステイン合成酵素及びグルタチオン合成酵素の活性が増強され、且つ、グルタチオン取り込み系の活性が増強された酵母株の作製
(1)プロトン共役オリゴペプチドトランスポーターをコードするOPT1遺伝子の高発現プラスミドの構築
まず、酵母-大腸菌シャトルベクターであるプラスミドpYES2(インビトロジェン社)に酵母の構成発現プロモーターであるADH1pを導入したpYES2-ADH1pを公知の方法(WO 2012/046731の実施例14)により構築する。次に、このpYES2-ADH1pにOPT1遺伝子のORF領域を挿入する。具体的には、Saccharomyces cerevisiae野生株より調製したゲノムを鋳型として、配列番号7(5’- GGATCCATGAGTACCATTTATAGGGA -3’)及び配列番号8(5’- TCTAGATTACCACCATTTATCATAAC -3’)のプライマーを用いて、OPT1遺伝子のORF領域をPCRにより増幅する。得られたOPT1遺伝子のORF領域の増幅産物を制限酵素BamHI及びXbaIで消化し、pYES2-ADH1pのBamHI及びXbaI部位に導入する。このようにして、OPT1遺伝子の高発現プラスミドpYES2-ADH1p-OPT1を調製する。
(2)OPT1遺伝子の高発現プラスミドの導入
OPT1遺伝子の高発現プラスミドpYES2-ADH1p-OPT1でAGPG株を形質転換し、ウラシル要求性の相補を指標に形質転換体を選択する。手順を以下に示す。
まず、Frozen EZ Yeast Transformation IIキット(Zymo Research社)を用いて、実施例1で作製したAG1 pPGK1-GSH2 ura3-株のコンピテントセルを作製し、pYES2-ADH1p-OPT1を形質転換する。AG1 pPGK1-GSH2 ura3-株のウラシル要求性が相補されてSD平板培地にて生育可能となった株を取得し、得られる株をAGPG/pOPT1株とする。
<実施例4>γ−グルタミルシステイン合成酵素及びグルタチオン合成酵素の活性が増強され、且つ、グルタチオン取り込み系の活性が増強された酵母株におけるγ-Glu-Abu及びγ-Glu-Abu-Glyの蓄積量の解析
実施例2と同様の方法で、AGPG/pOPT1株及びAGPG株(親株)を培養し、菌体内及び培養上清中のγ-Glu-Abu及びγ-Glu-Abu-Glyの濃度を分析する。
その結果、AGPG/pOPT1株の菌体内のγ-Glu-Abu及びγ-Glu-Abu-Glyの含量は、AGPG株と比較して上昇する。さらに、AGPG/pOPT1株の培養上清中のγ-Glu-Abu及びγ-Glu-Abu-Glyの濃度は、AGPG株と比較して低下する。
すなわち、OPT1遺伝子にコードされるプロトン共役オリゴペプチドトランスポーターは、γ-Glu-Abu及びγ-Glu-Abu-Glyの取り込み活性を有していることが明らかとなる。
<実施例5>アセト乳酸シンターゼ活性が低下し、α−ケト酪酸合成酵素、アミノ基転移酵素、γ−グルタミルシステイン合成酵素、およびグルタチオン合成酵素の活性が増強された酵母株の作製
上記の通り、グルタチオン合成酵素はin vitroの実験にてγ-Glu-AbuおよびGlyからγ-Glu-Abu-Glyを生成する活性があることが知られていたが(WO2012/046731)、グルタチオン合成酵素が酵母菌体内においてγ-Glu-Abu-Glyの生成に寄与するかは知られておらず、また、グルタチオン合成酵素活性の増強が酵母菌体内におけるγ-Glu-Abu-Gly等の蓄積量の向上に有効であるかも知られていなかった。そこで、本実施例では、グルタチオン合成酵素活性の増強が酵母菌体内におけるγ-Glu-Abu-Gly等の蓄積量に与える影響を評価するための酵母株を構築した。
(1)アセト乳酸シンターゼ活性が低下し、α−ケト酪酸合成酵素、アミノ基転移酵素、及びγ−グルタミルシステイン合成酵素の活性が増強された酵母株の作製
γ-Glu-Abu及び/又はγ-Glu-Abu-Glyの生合成能の強化を目的に、アセト乳酸シンターゼをコードする2コピーのILV2遺伝子の一方の発現を弱化し、且つ他方を破壊し、α-ケト酪酸合成酵素をコードするCHA1及びILV1遺伝子、並びにアミノ基転移酵素をコードするBAT1遺伝子の発現を強化した酵母株を作製した。手順を以下に示す。
親株として、Saccharomyces cerevisiae AG1 ura3-株(特開2012-213376)を用いた。AG1 ura3-株は、Saccharomyces cerevisiae Y006株(FERM BP-11299)のγ−グルタミルシステイン合成酵素遺伝子(GSH1)の発現増強株である。AG1 ura3-株は、URA3遺伝子を欠損しており、ウラシル要求性を示す。
Sofyanovichらの方法(Olga A. Sofyanovich et al: A New Method for Repeated “Self-Cloning” Promoter Replacement in Saccharomyces cerevisiae. Mol. Biotechnol.,
48, 218-227 (2011))に基づき、AG1 ura3-株の分岐鎖アミノ酸アミノ基転移酵素遺伝子(BAT1)のプロモーターを構成発現プロモーターであるグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素遺伝子(TDH3)のプロモーター領域(以下、pTDH3ともいう)に置換した株を作製した。手順を以下に示す。5'端にBAT1の上流配列を有する配列番号9のプライマー(5’- GCCAGGCGGTTGATACTTTGTGCAGATTTCATACCGGCTGTCGCTATTATTACTGATGAATTGGCTCTCTTTTTGTTTAATCTTAACCCAACTGCACAGA -3’)、及びBAT1遺伝子の開始コドンから始まる一部のORF内配列を有する配列番号10のプライマー(5’- TTGGATGCATCTAATGGGGCACCAGTAGCGAGTGTTCTGATGGAGAATTTCCCCAACTTCAAGGAATGTCTCTGCAACATTTGTTTATGTGTGTTTATTC -3’)を用い、pUC19-URA3-pTDH3-URA3プラスミド(前述のSofyanovichらの報告に記載)を鋳型にPCRを行い、TDH3プロモーターに挟まれたURA3を有するDNA断片を得た。PCRの条件は、熱変性(94℃、10 sec)、アニーリング(60℃、10 sec)、伸張(72℃、4 min)、25 cycleとした。このDNA断片でAG1 ura3-株を形質転換し、ウラシルを含有しないSD平板培地に塗布した。生育した形質転換体から、BAT1プロモーターがpTDH3-URA3-pTDH3に置換された株を取得した。
URA3遺伝子が欠損した株は5−フルオロオロト酸(5-FOA)耐性を示すため、5-FOAを含有する培地を利用してURA3選択マーカーが除去された株を選抜できる。そこで、BAT1プロモーターがpTDH3-URA3-pTDH3に置換された株を、ウラシル添加SD培地で一晩培養し、適量を5-FOA平板培地に塗布した。生育したコロニーから、導入された2つのTDH3プロモーター間の相同組換えにより、URA3が除去され、BAT1プロモーターがTDH3プロモーターに置換された株(AG1 pTDH3-BAT1 ura3- 株)を取得した。同株は、URA3遺伝子を欠損しており、ウラシル要求性を示す。
次に、同じくSofyanovichらの方法に基づき、上記の方法で得られたAG1 pTDH1-BAT1 ura3-株のセリン脱アミノ化酵素遺伝子(CHA1)のプロモーターを構成発現プロモーターであるpTDH3に置換した株を作製した。手順を以下に示す。5'端にCHA1の上流配列を有する配列番号11のプライマー(5’- GAGTACTAATCACCGCGAACGGAAACTAATGAGTCCTCTGCGCGGAGACATGATTCCGCATGGGCGGCTCCTGTTAAGCCTCTTAACCCAACTGCACAGA -3’)、及びCHA1遺伝子の開始コドンから始まる一部のORF内配列を有する配列番号12のプライマー(5’- TATTTCAAGAAAAATTGTGCAGAAGCCTTTCCGGGGAAGAATTGACGTAATAATGGTGTTTTATTGTAGACTATCGACATTTGTTTATGTGTGTTTATTC -3’)を用い、pUC19-URA3-pTDH3-URA3プラスミドを鋳型にPCRを行い、TDH3プロモーターに挟まれたURA3を有するDNA断片を得た。PCRの条件は、熱変性(94℃、10 sec)、アニーリング(60℃、10 sec)、伸張(72℃、4 min)、25 cycleとした。このDNA断片でAG1 pTDH1-BAT1 ura3-株を形質転換し、ウラシルを含有しないSD平板培地に塗布した。生育した形質転換体から、CHA1プロモーターがpTDH3-URA3-pTDH3に置換された株を取得した。更に、CHA1プロモーターがpTDH3-URA3-pTDH3に置換された株を、ウラシル添加SD培地で一晩培養し、適量を5-FOA平板培地に塗布した。生育したコロニーから、導入された2
つのTDH3プロモーター間の相同組換えにより、URA3が除去され、CHA1プロモーターがTDH3プロモーターに置換された株(AG1 pTDH3-BAT1 pTDH3-CHA1 ura3- 株)を取得した。同株は、URA3遺伝子を欠損しており、ウラシル要求性を示す。
次に、同じくSofyanovichらの方法に基づき、上記の方法で得られたAG1 pTDH3-BAT1 pTDH3-CHA1 ura3-株のスレオニン脱アミノ化酵素遺伝子(ILV1)のプロモーターを構成発現プロモーターであるpTDH3に置換した株を作製した。手順を以下に示す。5'端にILV1の上流配列を有する配列番号13のプライマー(5’- CTCTTTATTGCATATTATCTCTGCTATTTTGTGACGTTCAATTTTAATTGACGCGAAAAAGAAAAAATAAGAAGGGCAAATCTTAACCCAACTGCACAGA -3’)、及びILV1遺伝子の開始コドンから始まる一部のORF内配列を有する配列番号14のプライマー(5’- AGGTTCAATCCAGACACTTTGGACTGTTTACCTTGCCGAACAACCGTACATAATGGTTGCTTTAGTAGAGTAGCTGACATTTGTTTATGTGTGTTTATTC -3’)を用い、pUC19-URA3-pTDH3-URA3プラスミドを鋳型にPCRを行い、TDH3プロモーターに挟まれたURA3を有するDNA断片を得た。PCRの条件は、熱変性(94℃、10 sec)、アニーリング(60℃、10 sec)、伸張(72℃、4 min)、25 cycleとした。このDNA断片でAG1 pTDH3-BAT1 pTDH3-CHA1 ura3-株を形質転換し、ウラシルを含有しないSD平板培地に塗布した。生育した形質転換体から、ILV1プロモーターがpTDH3-URA3-pTDH3に置換された株を取得した。更に、ILV1プロモーターがpTDH3-URA3-pTDH3に置換された株を、ウラシル添加SD培地で一晩培養し、適量を5-FOA平板培地に塗布した。生育したコロニーから、導入された2つのTDH3プロモーター間の相同組換えにより、URA3が除去され、ILV1プロモーターがTDH3プロモーターに置換された株(AG1 pTDH3-BAT1 pTDH3-CHA1 pTDH3-ILV1 ura3- 株)を取得した。同株は、URA3遺伝子を欠損しており、ウラシル要求性を示す。
次に、同じくSofyanovichらの方法に基づき、上記の方法で得られたAG1 pTDH3-BAT1 pTDH3-CHA1 pTDH3-ILV1 ura3- 株のアセト乳酸シンターゼ遺伝子(ILV2)のプロモーターをガラクトース誘導性のガラクトキナーゼ遺伝子(GAL1)のプロモーター(以下、pGAL1ともいう)に置換した株を作製した。手順を以下に示す。5'端にILV2の上流配列を有する配列番号15のプライマー(5’- TATCTGGTTGATATATATGCTATCATTTATTTTCTTATCAAGTTTCCAAATTTCTAATCCTTTCTCCACCATCCCTAATTCTTAACCCAACTGCACAGA -3’)、及びILV2遺伝子の開始コドンから始まる一部のORF内配列を有する配列番号16のプライマー(5’- GGTGTGTTGCGGTATGCTATATGTTGAAAGCAACGCTTAATAGCGAAGTTTTTTAGCGTAGATTGTCTGATCATGTTTTTTCTCCTTGACGTTAAAGTA -3’)を用い、pUC19-URA3-pGAL1-URA3プラスミド(前述のSofyanovichらの報告に記載)を鋳型にPCRを行い、GAL1プロモーターに挟まれたURA3を有するDNA断片を得た。PCRの条件は、熱変性(94℃、10 sec)、アニーリング(60℃、10 sec)、伸張(72℃、4 min)、25 cycleとした。このDNA断片でAG1 pTDH3-BAT1 pTDH3-CHA1 pTDH3-ILV1 ura3-株を形質転換し、ウラシルを含有しないSG平板培地に塗布した。生育した形質転換体から、ILV2プロモーターがpGAL1-URA3-pGAL1に置換された株を取得した。以下にSG培地の調整方法を示す。SG平板培地はSG培地にBacto-agarを2%となるよう加えて作製した。
[SG培地組成]
D(+)-ガラクトース 20 g
10 x YNB 100 mL
MilliQ水 up to 1 L
1 L
SG培地は、オートクレーブ滅菌したグルコースとフィルター滅菌したYNBを上記組成になるように混合し、オートクレーブ滅菌したMilliQ水でメスアップして調製した。
次に、ILV2プロモーターがpGAL1-URA3-pGAL1に置換された株を、ウラシル添加SG培地で一晩培養し、適量を5-FOA平板培地に塗布した。生育したコロニーから、導入された2つのGAL1プロモーター間の相同組換えにより、URA3が除去された株を取得した。このように
して、ILV2プロモーターがGAL1プロモーターに置換され、アセト乳酸シンターゼをコードするILV2遺伝子の発現量が弱化された(AG1 pTDH3-BAT1 pTDH3-CHA1 pTDH3-ILV1 pGAL1-ILV2 ura3- 株)を取得した。
なお、本菌株の親株であるサッカロミセス・セレビシエY006株(FERM BP-11299)は、2コピーのILV2遺伝子を有する。そこで、以下の手順により、AG1 pTDH3-BAT1 pTDH3-CHA1 pTDH3-ILV1 pGAL1-ILV2 ura3-株を親株にもう1コピーのILV2遺伝子を破壊し、アセト乳酸シンターゼ活性がさらに低下した株を作製した。手順を以下に示す。まず、配列番号17(5’- AAAGGTGACAAACGCCTAGC -3’)および配列番号18(5’- TCTTCGAGGAATCAAAAGTA -3’)に示すプライマーを用い、YEAST KNOCK OUT STRAIN COLLECTION(フナコシ、YCS1056)のILV2遺伝子破壊株のゲノムを鋳型に、カナマイシン耐性遺伝子カセットKanMXに置換されたILV2遺伝子を含む領域を増幅した。PCRの条件は、熱変性(94℃, 10 sec)、アニーリング(50℃, 10 sec)、伸張(72℃, 3 min)、30 cycleとした。次に、エタノール沈殿によってDNA断片を精製した後、AG1 pTDH3-BAT1 pTDH3-CHA1 pTDH3-ILV1 pGAL1-ILV2
ura3-株を形質転換し、G418を添加したYPD平板培地に菌体を塗布した。生育した形質転換体からILV2遺伝子がKanMXに置換された株(ILV2::KanMX株)を取得した。以下、本菌株をM014Y-ura3Δ株と称する。さらに、常法(特開2012-213376)によりM014Y-ura3Δ0株にURA3遺伝子を相補した菌株を取得し、得られた菌株をM014Y株と称する。
(2)グルタチオン合成酵素をコードするGSH2遺伝子の高発現プラスミドの構築
(2−1)酵母用1コピープラスミドの作製
まず、遺伝子高発現に用いる酵母用1コピープラスミドを作製した。酵母用1コピープラスミドは、具体的には、pUC19(invitrogen)をバックボーンに、酵母細胞内での自律複製が可能となるよう、出芽酵母の複製起点およびセントロメアをクローン化し、且つ、形質転換株を選択可能となるよう、選択マーカーとしてURA3遺伝子をクローン化して作製した。手順を以下に示す。
まず、URA3遺伝子を導入した。AatII制限酵素認識配列を有する配列番号19(5’- ATAGAATTCGTTCATCATCTCATGGATCT -3’)で示されるプライマーおよび、EcoRI制限酵素認識配列を有する配列番号20(5’- GTGCAATCGTAGGACGTCAT -3’)で示されるプライマーを用い、野生型Saccharomyces cerevisiae Y006株(FERM BP-11299)のゲノムを鋳型にPCRし、URA3遺伝子を有するDNA断片を得た。PCR条件は、変性(94℃、10 sec)、アニーリング(50℃、10 sec)、伸張(72℃、4 min)、25 cycleとした。このDNA断片をpUC19のAatII-EcoRI部位にクローン化し、プラスミドpUC19-URA3を得た。参考のため、Saccharomyces cerevisiae S288CのURA3遺伝子の塩基配列を配列番号57に示す。
次に、複製起点(ARS)を導入した。KpnI制限酵素認識配列を有する配列番号21(5’- ATAGGTACCCCATAGTGGAGATTGTCGTTC -3’)で示されるプライマーおよび、EcoRI制限酵素認識配列を有する配列番号22(5’- ATAGAATTCTAGCTAATTCTAAGAAAACGGTAAC -3’)で示されるプライマーを用い、野生型Saccharomyces cerevisiae Y006株(FERM BP-11299)のゲノムを鋳型にPCRし、ARSを有するDNA断片を得た。PCR条件は、変性(94℃、10 sec)、アニーリング(60℃、10 sec)、伸張(72℃、4 min)、25 cycleとした。このDNA断片をpUC19-URA3のKpnI-EcoRI部位にクローン化し、プラスミドpUC19-URA3-ARSを得た。参考のため、Saccharomyces cerevisiae S288CのARSの塩基配列を配列番号58に示す。
次に、セントロメア(CEN)を導入した。KpnI制限酵素認識配列を有する配列番号23(5’- ATAGGTACCAACTTGTATCCTAGGTTATC -3’)および配列番号24(5’- TACTCCAGGTACAGTCCTCT -3’)で示されるプライマーを用い、野生型Saccharomyces cerevisiaeを鋳型にPCRし、CENを有するDNA断片を得た。PCR条件は、変性(94℃、10 sec)、アニーリング(60℃、10 sec)、伸張(72℃、4 min)、25 cycleとした。このDNA断片をpUC19-URA3-ARSの
KpnI-KpnI部位にクローン化し、1コピープラスミド、pUC19-URA3-ARS-CEN(以下、YCpともいう)を得た。参考のため、Saccharomyces cerevisiae S288CのARSの塩基配列を配列番号59に示す。
(2−2)GSH2遺伝子の高発現プラスミドの作製
GSH2遺伝子高発現プラスミドは、YCpプラスミドに構成高発現プロモーターであるPGK1プロモーターをクローン化し、さらにそのプロモーター下流にGSH2遺伝子をクローン化して作製した。手順を以下に示す。
まず、PGK1プロモーターを導入した。SmaI制限酵素認識配列を有する配列番号25(5’-
ATACCCGGGTGAGTAAGGAAAGAGTGAG -3’)で示されるプライマーおよびBamHI制限酵素認識配列を有する配列番号26(5’- ATAGGATCCTGTTTTATATTTGTTGTAAAAAGTAGATAA -3’)で示されるプライマーを用い、野生型Saccharomyces cerevisiae Y006株(FERM BP-11299)のゲノムを鋳型にPCRし、PGK1プロモーターを有するDNA断片を得た。PCR条件は、変性(94℃、10 sec)、アニーリング(60℃、10 sec)、伸張(72℃、4 min)、25 cycleとした。このDNA断片をYCpのSmaI-BamHI部位にクローン化し、プラスミドYCp-PGK1pを得た。
次に、GSH2遺伝子をクローニングした。BamHI制限酵素認識配列を有する配列番号27(5’- ATAGGATCCATGGCACACTATCCACCTTCCA -3’)で示されるプライマーおよびSphI制限酵素認識配列を有する配列番号28(5’- ATAGCATGCCTAGTAAAGAATAATACTGTCCA -3’)で示されるプライマーを用い、野生型Saccharomyces cerevisiae Y006株(FERM BP-11299)のゲノムを鋳型にPCRし、GSH2遺伝子を有するDNA断片を得た。PCR条件は、変性(94℃、10 sec)、アニーリング(60℃、10 sec)、伸張(72℃、4 min)、25 cycleとした。このDNA断片をYCp-PGK1pのBamHI-SphI部位にクローン化し、GSH2遺伝子の高発現プラスミドYCp-PGK1p-GSH2を得た。
(3)GSH2遺伝子の高発現プラスミドの導入
GSH2遺伝子の高発現プラスミドpYES2-PGK1p-GSH2でM014Y株を形質転換し、ウラシル要求性の相補を指標に形質転換体を選択した。手順を以下に示す。
まず、Frozen EZ Yeast Transformation IIキット(Zymo Research社)を用いて、M014Y株のコンピテントセルを作製し、pYES2-PGK1p-GSH2を形質転換した。M014Y株のウラシル要求性が相補されてイソロイシン30 mg/Lとバリン150 mg/Lを添加したSD平板培地にて生育可能となった株を取得し、得られた株をM014Y/pGSH2株とした。
<実施例6>アセト乳酸シンターゼ活性が低下し、α−ケト酪酸合成酵素、アミノ基転移酵素、γ−グルタミルシステイン合成酵素、およびグルタチオン合成酵素の活性が増強された酵母株におけるγ-Glu-Abu及びγ-Glu-Abu-Glyの蓄積量の解析
SD培地にイソロイシン30 mg/Lとバリン150 mg/Lを添加した培地にて、実施例5で構築したM014Y/pGSH2株及びM014Y株(親株)を実施例2と同様の方法で培養評価し、菌体内及び上清中のγ-Glu-Abu及びγ-Glu-Abu-Gly濃度を分析した。
その結果、表1に示す通り、M014Y/pGSH2株の菌体内のγ-Glu-Abu-Gly含量は、M014Y株(親株)と比較して上昇した。表中、「菌体内含量(%)」とは、乾燥菌体重量(Dry Cell Weight:DCW)当たりの重量(単位%)を示す。
上記の通り、アセト乳酸シンターゼ活性が低下し、α−ケト酪酸合成酵素、アミノ基転移酵素、及びγ-グルタミルシステイン合成酵素の活性を増強した酵母株において、さらに、グルタチオン合成酵素の活性を増強することにより、特に、酵母菌体内のγ-Glu-Abu-Glyの蓄積量が向上することがわかった。すなわち、酵母菌体内において、グルタチオン合成酵素の働きにより、γ-Glu-AbuおよびGlyからγ-Glu-Abu-Glyが生成されると考えられる。
<配列表の説明>
配列番号1〜28:プライマー
配列番号29:Saccharomyces cerevisiae S288CのADP1遺伝子の塩基配列
配列番号30:Saccharomyces cerevisiae S288CのAdp1タンパク質のアミノ酸配列
配列番号31:Saccharomyces cerevisiae S288CのGEX1遺伝子の塩基配列
配列番号32:Saccharomyces cerevisiae S288CのGex1タンパク質のアミノ酸配列
配列番号33:Saccharomyces cerevisiae S288CのGEX2遺伝子の塩基配列
配列番号34:Saccharomyces cerevisiae S288CのGex2タンパク質のアミノ酸配列
配列番号35:Saccharomyces cerevisiae S288CのOPT1遺伝子の塩基配列
配列番号36:Saccharomyces cerevisiae S288CのOpt1タンパク質のアミノ酸配列
配列番号37:Saccharomyces cerevisiae S288CのCHA1遺伝子の塩基配列
配列番号38:Saccharomyces cerevisiae S288CのCha1タンパク質のアミノ酸配列
配列番号39:Saccharomyces cerevisiae S288CのILV1遺伝子の塩基配列
配列番号40:Saccharomyces cerevisiae S288CのIlv1タンパク質のアミノ酸配列
配列番号41:Saccharomyces cerevisiae S288CのBAT1遺伝子の塩基配列
配列番号42:Saccharomyces cerevisiae S288CのBat1タンパク質のアミノ酸配列
配列番号43:Saccharomyces cerevisiae S288CのGSH1遺伝子の塩基配列
配列番号44:Saccharomyces cerevisiae S288CのGsh1タンパク質のアミノ酸配列
配列番号45:Saccharomyces cerevisiae S288CのGSH2遺伝子の塩基配列
配列番号46:Saccharomyces cerevisiae S288CのGsh2タンパク質のアミノ酸配列
配列番号47:Saccharomyces cerevisiae S288CのILV2遺伝子の塩基配列
配列番号48:Saccharomyces cerevisiae S288CのIlv2タンパク質のアミノ酸配列
配列番号49:Saccharomyces cerevisiae S288CのDUG1遺伝子の塩基配列
配列番号50:Saccharomyces cerevisiae S288CのDug1タンパク質のアミノ酸配列
配列番号51:Saccharomyces cerevisiae S288CのDUG2遺伝子の塩基配列
配列番号52:Saccharomyces cerevisiae S288CのDug2タンパク質のアミノ酸配列
配列番号53:Saccharomyces cerevisiae S288CのDUG3遺伝子の塩基配列
配列番号54:Saccharomyces cerevisiae S288CのDug3タンパク質のアミノ酸配列
配列番号55:Saccharomyces cerevisiae S288CのECM38遺伝子の塩基配列
配列番号56:Saccharomyces cerevisiae S288CのEcm38タンパク質のアミノ酸配列
配列番号57:Saccharomyces cerevisiae S288CのURA3遺伝子の塩基配列
配列番号58:Saccharomyces cerevisiae S288Cの複製起点(ARS)の塩基配列
配列番号59:Saccharomyces cerevisiae S288Cのセントロメア(CEN)の塩基配列

Claims (20)

  1. Abu関連化合物を高含有する酵母であって、
    下記(A)及び/又は(B)の性質を有し:
    (A)Abu関連化合物排出タンパク質の活性が低下するように改変されている;
    (B)Abu関連化合物取り込みタンパク質の活性が増大するように改変されている、
    前記Abu関連化合物が、γ-Glu-Abu-Gly及び/又はγ-Glu-Abuである、酵母。
  2. 前記Abu関連化合物排出タンパク質の活性が、Abu関連化合物排出タンパク質をコードする遺伝子の発現が弱化されることにより、及び/又は、該遺伝子を欠失することにより、低下した、請求項1に記載の酵母。
  3. 前記Abu関連化合物排出タンパク質をコードする遺伝子が、ADP1遺伝子、GEX1遺伝子、及びGEX2遺伝子からなる群より選択される1またはそれ以上の遺伝子である、請求項2に記載の酵母。
  4. 前記ADP1遺伝子が、下記(A)〜(D)からなる群より選択されるDNAである、請求項3に記載の酵母:
    (A)配列番号30に示すアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA;
    (B)配列番号30に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含むアミノ酸配列を含み、且つ、Abu関連化合物排出活性を有するタンパク質をコードするDNA;
    (C)配列番号29に示す塩基配列を含むDNA;
    (D)配列番号29に示す塩基配列に相補的な塩基配列又は該相補配列から調製され得るプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ、Abu関連化合物排出活性を有するタンパク質をコードするDNA。
  5. 前記GEX1遺伝子が、下記(A)〜(D)からなる群より選択されるDNAである、請求項3に記載の酵母:
    (A)配列番号32に示すアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA;
    (B)配列番号32に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含むアミノ酸配列を含み、且つ、Abu関連化合物排出活性を有するタンパク質をコードするDNA;
    (C)配列番号31に示す塩基配列を含むDNA;
    (D)配列番号31に示す塩基配列に相補的な塩基配列又は該相補配列から調製され得るプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ、Abu関連化合物排出活性を有するタンパク質をコードするDNA。
  6. 前記GEX2遺伝子が、下記(A)〜(D)からなる群より選択されるDNAである、請求項3に記載の酵母:
    (A)配列番号34に示すアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA;
    (B)配列番号34に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含むアミノ酸配列を含み、且つ、Abu関連化合物排出活性を有するタンパク質をコードするDNA;
    (C)配列番号33に示す塩基配列を含むDNA;
    (D)配列番号33に示す塩基配列に相補的な塩基配列又は該相補配列から調製され得るプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ、Abu関連化合物排出活性を有するタンパク質をコードするDNA。
  7. 前記Abu関連化合物取り込みタンパク質の活性が、Abu関連化合物取り込みタンパク質を
    コードする遺伝子の発現を上昇させることにより、増大した、請求項1に記載の酵母。
  8. 前記Abu関連化合物取り込みタンパク質をコードする遺伝子の発現が、該遺伝子のコピー数を高めることにより、及び/又は、該遺伝子の発現調節配列を改変することにより、上昇した、請求項7に記載の酵母。
  9. 前記Abu関連化合物取り込みタンパク質をコードする遺伝子が、OPT1遺伝子である、請求項7または8に記載の酵母。
  10. 前記OPT1遺伝子が、下記(A)〜(D)からなる群より選択されるDNAである、請求項9に記載の酵母:
    (A)配列番号36に示すアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA;
    (B)配列番号36に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含むアミノ酸配列を含み、且つ、Abu関連化合物取り込み活性を有するタンパク質をコードするDNA;
    (C)配列番号35に示す塩基配列を含むDNA;
    (D)配列番号35に示す塩基配列に相補的な塩基配列又は該相補配列から調製され得るプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ、Abu関連化合物取り込み活性を有するタンパク質をコードするDNA。
  11. さらに、α−ケト酪酸合成酵素、アミノ基転移酵素、γ−グルタミルシステイン合成酵素、及びグルタチオン合成酵素からなる群より選択される1またはそれ以上の酵素の活性が増大するように改変されている、請求項1〜10のいずれか1項に記載の酵母。
  12. 前記α−ケト酪酸合成酵素が、CHA1遺伝子及びILV1遺伝子からなる群より選択される1またはそれ以上の遺伝子によってコードされるタンパク質である、請求項11に記載の酵母。
  13. 前記アミノ基転移酵素が、BAT1遺伝子によってコードされるタンパク質である、請求項11に記載の酵母。
  14. さらに、アセト乳酸シンターゼ活性が低下するように改変されている、請求項1〜13のいずれか1項に記載の酵母。
  15. さらに、ペプチド分解酵素の活性が低下するように改変されている、請求項1〜13のいずれか1項に記載の酵母。
  16. 前記ペプチド分解酵素が、DUG1遺伝子、DUG2遺伝子、DUG3遺伝子、及びECM38遺伝子からなる群より選択される1またはそれ以上の遺伝子によってコードされるタンパク質である、請求項15に記載の酵母。
  17. サッカロミセス属酵母である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の酵母。
  18. サッカロミセス・セレビシエである、請求項17に記載の酵母。
  19. 請求項1〜18のいずれか1項に記載の酵母を原料として用いて酵母エキスを調製することを含む、酵母エキスの製造方法。
  20. 請求項1〜18のいずれか1項に記載の酵母を培地で培養すること、および培養物からAbu関連化合物を回収することを含む、Abu関連化合物の製造方法。
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