JP2016047955A - 炭素含有鋼の精錬方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】溶鋼中の炭素含有量の分析精度を向上させ、溶鋼中の炭素含有量を所望の狭い範囲内に精度良く調整できる、炭素含有鋼の製造方法を提供する。【解決手段】精錬中の溶鋼から採取した赤熱状態の分析用試料を水冷したのち、固体発光分光分析法で炭素含有量を分析し、得られた炭素分析値に基づき、溶鋼中の炭素含有量を調整および/または精錬の終了判定を行う。この際、水冷の前に、分析用試料の水冷開始温度を調整する。水冷開始温度を、T(℃)=900−250?C−40?Mn(ここで、C、Mn:各元素の含有量(質量%))で定義される温度T(℃)を基準として?100℃の範囲内の温度とする。これにより、固体発光分光分析法を用いて、高精度のC分析を行うことが可能となり、迅速にかつ精度高く溶鋼の精錬を行うことができ、生産性の向上、歩留の向上、合金元素量の削減など、が可能となる。【選択図】図3

Description

本発明は、炭素含有鋼の精錬方法に係り、とくに鋼の精錬工程において行う、溶鋼炭素含有量の分析精度の向上に関する。
鋼材の製造においては、従来から、所望の特性を有する鋼材を製造すべく、とくに転炉、脱ガス炉等の精錬工程では、精錬途中の各段階で適宜、溶鋼からサンプルを採取し、各種分析装置により溶鋼中の元素分析を行い、得られた分析値をもとに、成分調整等の各処置が行われている。
なお、精練工程では、精錬を迅速に行う必要があることから、溶鋼から採取した試料の分析は、極力速やかに行うことが要求される。そのため、精練中の分析は、迅速で簡便な固体発光分光分析法で行うことが通例となっている。得られた分析結果は、直ちに、精錬工程を行う現場にフィードバックされ、精練における各種処置に反映される。
固体発光分光分析法は、JIS G 1253にも規定され、鋼材中の様々な元素の重要な分析法として利用されている。固体発光分光分析法では、例えばC、Si、Mn、P、S、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Ti、B、Nb、Al、Co、Ca、N等、多くの元素を同時に分析することが可能である。
しかし、このような分析方法を用いても、用いた分析試料により、例えば、試料の持つ熱履歴等に影響されて、得られた分析結果(分析値)に大きなバラツキが生じるという問題があった。このような問題に対し、例えば、特許文献1には、金属成分についてではあるが、定量分析用試料の改質方法が記載されている。特許文献1に記載された技術は、精錬工程における分析に限定されてはいないが、分析用試料を加熱により、半溶融状態あるいは溶融状態にしたのち、これを急冷し再凝固させる分析試料の改質方法である。これにより、蛍光X線分析法または固体発光分析法等による分析結果の信頼性が向上するようになったとしている。
また、特許文献2には、分析用赤熱試料の冷却制御方法が記載されている。特許文献2に記載された技術では、鉄鋼製造プロセスから採取した分析用赤熱試料を試料調製温度まで冷却するに際し、鉄鋼製造プロセスでの精錬制御過程で測定あるいは推定されている赤熱試料採取時の概略成分濃度値に基づいて冷却速度を制御する、分析用赤熱試料の冷却制御方法である。特許文献2に記載された技術では、試料分析部の金属組織を標準試料と同様にでき、試料冷却割れもなく、最短時間での試料調整を可能とし分析精度も向上するとしている。しかしながら、特許文献2に記載された技術では、分析用試料の調整のため複雑な冷却パターンを施す必要があり、そのために設備の設置を必要とする問題がある。しかも、それほど分析精度の向上が期待できないという問題もある。
さらに、固体発光分光分析法は、C、N、S、Oなどの鋼中ガス成分元素の分析においては、感度・精度がともに不十分で、分析範囲や精度に制約が有り、鋼種によってはガス成分元素だけは、別の分析手法によって求める場合が少なくない。より高精度な炭素分析法として、JIS G 1211にも規定される燃焼赤外吸収法があり、高精度の炭素分析値が要求される場合には、固体発光分光分析法に代えて、燃焼赤外吸収法が適用される場合がある。
精錬技術の格段の進歩により、最近では、機能性鋼材を、添加元素量の厳密な制御により製造することが可能となっている。このような場合にはとくに、添加元素量を高精度に分析することが要求されるようになっている。
例えば、自動車用高強度鋼材においては、例えば、析出強化や変態強化に大きく寄与する炭素Cを、所望の高強度を確保できる含有量範囲に厳格に制御し、C含有範囲を狭く調整した、C狭幅材(C狭幅鋼材)とすることが要求されることがある。このようなC狭幅材の製造においては、精練工程におけるC量をより狭い範囲内に、例えば、質量%で、0.1%C系では±0.005%の範囲内に、調整することが要求されている。このため、C分析の高精度化、例えば標準偏差σ:0.001%以下、となるようなC分析の高精度化が必要不可欠となっている。
特開平07−43276号公報 特開平07−43274号公報
上記したような要求に対し、高精度のC分析を行うために、より高精度なC分析法である燃焼赤外吸収法を適用すると、C以外の他の合金元素を分析するための固体発光分光分析用試料とは別に、燃焼赤外吸収法用の分析用試料を準備する必要がある。さらにまた、燃焼赤外吸収法では、分析用試料の採取に手間が掛かるうえ、分析時間も長く、迅速性に乏しいという問題がある。
このようなことから、例えば、C狭幅材のような高精度なC分析が求められる鋼種についても、燃焼赤外吸収法を適用せずに、迅速かつ簡便な固体発光分光分析法を適用することが強く求められている。
このような要求に鑑み、本発明は、迅速な固体発光分光分析法を用いた溶鋼中の炭素含有量を所望の狭い範囲内に精度良く調整できる、炭素含有鋼の精錬方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記した目的を達成するため、溶鋼の精錬工程でのC分析において、固体発光分光分析法によるCの分析精度に影響する各種要因について鋭意検討した。その結果、精練中の溶鋼から採取した分析試料の水冷開始温度が、固体発光分光分析法を用いたC分析の分析精度に大きな影響を及ぼすことを見出した。
通常、精錬中の溶鋼から採取し、赤熱状態となっている試料(ボンブ試料)は、その場(試料採取箇所)で水冷されたのち分析室まで搬送されるか、あるいは赤熱状態のまま分析室まで搬送され分析室で水冷されたのち、せん断、研磨等の試料調製を行い、C分析に供される。
なお、溶鋼からの分析試料採取は、各チャージ毎、溶鋼鍋の一定の箇所から溶鋼をサンプリングするために、通常、例えばサンプラーの自動昇降機で行っている。しかし、自動昇降機からのサンプラーの取り外し、サンプラーからの試料の取り出しは、手動で行うことが多い。そのため、サンプラーの取り外しから試料を水冷するまでの時間は、一定でなく、作業者によって変化しているのが実情である。このため、複数の分析試料の間で、分析試料の水冷開始温度にバラツキが生じることになる。
そこで、本発明者らは、固体発光分析法によるC分析精度に及ぼす、溶鋼から採取した赤熱状態の分析試料の水冷開始温度の影響について検討した。
質量%で、C:0.05〜0.20%、Mn:0.5〜3.0%の範囲で含有する組成を有する5種の溶鋼(炭素含有鋼)を、100キロラボ溶解炉を用いて溶製した。そして、溶製された各溶鋼からサンプルを汲み出し、赤熱状態のボンブ試料(分析試料)とした。ついで、放射温度計を用いて、得られた赤熱状態のボンブ試料の温度を測定し、600〜1200℃の範囲の、予め定めた所定温度に到達した時点で水冷した。なお、同一水準で2個の分析試料を採取した。
ついで、水冷された試料から分析用試片を切り出し、各試料について同一面内6点で固体発光分光分析法でC含有量を測定した。得られたC含有量(測定値)に基づき、測定値のバラツキ(標準偏差)(%)を求めた。その結果を図1に示す。
そして、図1から、つぎのような知見を得た。
水冷開始温度が600℃の場合には、分析値のバラツキが大きく、分析精度がとくに低下している。水冷開始温度が600℃と低い場合には、組織が(フェライト+パーライト)組織となり、C量の少ないフェライトと、セメンタイト(Fe3C)を含むパーライトとで、各相におけるC濃度の差が大きくなるうえ、炭化物への選択放電等の影響を受けやすくなったことが分析精度低下の要因と考えられる。
一方、水冷開始温度が700〜900℃の場合に、分析値のバラツキが小さく、優れた分析精度が得られている。これらの温度域で、C分析における優れた分析精度が得られるのは、Cが均一に分布したマルテンサイト相が得られるためと、本発明者らは考えている。また、水冷開始温度が1000℃以上の場合においても、分析値のバラツキは比較的大きく、分析精度が低下している。
水冷開始温度が1000℃以上の場合には、γ域からの急冷のため、700〜900℃での水冷試料と同様、組織はマルテンサイト組織が得られ、分析精度は良いことが予想されたが、実際には分析精度が若干低下している。その理由として、一般的に、焼入れ温度が高いほど残留オーステナイトが生じやすくなることから、1000℃以上から水冷された試料では、マルテンサイト組織に加え、一部、残留オーステナイトが生成したためと考えられる。このような組織の場合には、(フェライト+パーライト)組織のように、組織間のC濃度の差は大きくないが、残留オーステナイトは、マルテンサイトとは異なる結晶構造であり、しかも外力によって常に安定な状態に変化しようとする極めて不安定な組織であるため、固体発光分光分析の放電時に、マルテンサイト単相組織とは、異なる蒸発・気化過程が起こるなどの理由により、分析精度が若干低下したものと考えている。
このようなことから、C分析の分析精度を高め、分析値のバラツキを少なくするために、赤熱状態のボンブ試料(分析試料)は、水冷の前に、水冷開始温度を適正な温度に調整する必要があることを知見した。
さらに、これらの結果から、最も優れた分析精度が得られる水冷開始温度は、炭素含有鋼の主たる成分であるC、Mn含有量に関係していることに思い至り、更なる検討を行った。その結果、次(1)式
T(℃) = 900−250×C−40×Mn ‥‥(1)
(ここで、C、Mn:各元素の含有量(質量%))
で定義される温度T(℃)を基準として、赤熱状態の分析試料の水冷開始温度を決定すれば、優れた分析精度でC分析を行うことができることを見出した。
図1に示す各溶鋼についての、最も優れた分析精度が得られる水冷開始温度Ta(℃)と、上記した(1)式で定義されるT(℃)との関係を図2に示す。図2から、T(℃)とTa(℃)とがほぼ1対1に対応しており、(1)式で定義されるT(℃)を基準として水冷開始温度Taを決定すれば、優れた分析精度でC分析を行うことができることがわかる。なお、この(1)式は、C、Mn含有量が、質量%で、C:0.05〜0.20%、Mn:0.5〜3.0%の範囲内である炭素含有鋼であれば、信頼性高く適用できることの知見も得ている。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨はつぎの通りである。
(1)溶鋼に精錬工程を施して、所望の炭素量を含有する炭素含有溶鋼とするに当たり、前記精錬工程が、溶鋼から分析用試料を採取し、該採取した赤熱状態の分析用試料を水冷したのち、固体発光分光分析法で炭素含有量を分析し、得られた炭素分析値に基づき、前記溶鋼中の炭素含有量を調整および/または前記精錬工程の終了判定を行う工程であり、前記水冷の前に、前記分析用試料の水冷開始温度を調整することを特徴とする炭素含有鋼の精錬方法。
(2)(1)において、前記水冷開始温度が、次(1)式
T(℃) = 900−250×C−40×Mn ‥‥(1)
(ここで、C、Mn:各元素の含有量(質量%))
で定義される温度T(℃)を基準として±100℃の範囲内の温度であることを特徴とする炭素含有鋼の精錬方法。
(3)(1)または(2)において、前記溶鋼が、質量%で、C:0.05〜0.20%、Mn:0.05〜3.0%を含有する組成の炭素含有溶鋼であることを特徴とする炭素含有鋼の精錬方法。
本発明によれば、精錬途中の溶鋼について、固体発光分光分析法を用いて、高分析精度のC分析を行うことが可能となり、溶鋼の精錬工程において、迅速にかつ精度高く精錬を行うことができ、生産性の向上、歩留の向上、合金元素量の削減など、産業上格段の効果を奏する。また、本発明によれば、鋼材中の炭素含有量を所望の狭い範囲内に精度良く調整でき、炭素含有量範囲の狭い高強度鋼(C狭幅材等)についても、迅速な分析が可能な固体発光分析法を適用できるなど、の効果もある。
炭素分析の分析精度に及ぼす水冷開始温度の影響を示すグラフである。 最も優れた分析精度が得られる水冷開始温度Taと、(1)式で定義される温度Tとの関係を示すグラフである。 実施例で得られた目標C量と実績C量との差を示すグラフである。
本発明は、溶鋼に精錬工程を施して、所望の炭素量を含有する溶鋼とする炭素含有鋼の精錬方法である。なお、ここでいう「炭素含有鋼」とは、主として質量%で、0.05〜0.20%までのCと、さらに0.5〜3.0%までのMnを含み、C、Mn以外は、必要に応じて、Si、Ti等を合計で3%まで含むことができ、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼(炭素鋼)をいうものとする。
精錬工程には、通常、転炉、電気炉、真空溶解炉等による一次精錬と、さらに一次精錬を終了した溶鋼に施す、脱ガス炉等による二次精錬と、が含まれるが、本発明では、とくに限定する必要はなく、一次精錬、二次精錬のいずれにおいても適用できる。なお、精度よく炭素含有量の調整を必要とする二次精錬でとくに有効となる。
精錬工程では、所望の特性を有する鋼材を製造すべく、精錬途中の各段階で必要に応じ、溶鋼からボンブ試料(分析用試料)を採取し、分析装置により炭素等の元素分析を行い、得られた分析値に基づき、溶鋼の成分調整や精錬終了の判定を行う。なお、ボンブ試料(分析用試料)は逆円錐台型で大きさは、例えば直径25〜40mm、高さ50〜80mmである。
本発明では、分析装置は、固体発光分光分析法を利用した装置を用いるものとする。固体発光分光分析法により、溶鋼から採取した分析用試料の炭素含有量を分析し、得られた分析値に基づき、溶鋼中の炭素含有量を調整および/または精錬工程の終了判定を行う。なお、溶鋼から採取したボンブ試料(分析用試料)は、赤熱状態であり、水冷したのち、分析に供する。
通常、溶鋼から採取した赤熱状態のボンブ試料(分析用試料)は、試料採取箇所で水冷した後、分析室まで搬送し、あるいは赤熱まま状態で分析室まで搬送した後に水冷し、せん断、研磨等の試料調製を行った後、固体発光分光分析法で分析する。この分析は、さらなる迅速化や省力化のため、連続的あるいは部分的に自動化されていることが多い。そして得られた分析結果は、直ちに現場(精錬工場)に伝送される。これにより、精練工程を短時間で完了できることになる。
本発明では、水冷の前に、分析用試料の水冷開始温度を調整する。そのために、放射温度計等で分析用試料の温度(表面温度)を測定する。そして、分析用試料の温度(表面温度)Ta(℃)が、所定の温度(水冷開始温度)Tc(℃)に到達したのを確認して水冷する。水冷の前に、分析用試料の温度(水冷開始温度)Ta(℃)が変動すると、炭素分析の分析精度が低下する。
固体発光分光分析法では、分析用試料の組織が異なると、分析値の誤差を生じやすい。とくに、分析用試料の組織が(フェライト+パーライト)組織となると、フェライトとパーライトとで炭素量の違いが大きいうえ、炭化物への選択放電等に起因して分析値の誤差を生じやすく、分析精度の低下を招く。このため、本発明では、分析用試料の水冷開始温度Taを、水冷後の組織が、炭素の濃度分布が均一な、例えば、マルテンサイト相が得られるような、所定の水冷開始温度Tc(℃)とすることが好ましい。水冷後の組織が、炭素の濃度分布が均一な、例えば、マルテンサイト相が得られるような、所定の水冷開始温度Tc(℃)は、溶鋼の組成に関連する温度T(℃)を基準として、±100℃の範囲内の温度とすることが好ましい。
ここで、溶鋼の組成に関連する温度T(℃)は、次(1)式
T(℃) = 900−250×C−40×Mn ‥‥(1)
(ここで、C、Mn:各元素の含有量(質量%))
で定義される温度とする。
なお、赤熱状態のボンブ試料の水冷開始温度は、放射温度計等で測定するため、赤熱状態のボンブ試料最表層の温度を計測していることになる。したがって、得られた温度は、赤熱状態のボンブ試料の内部温度とは、差があることになる。別に行った実験結果から、その温度差は、100℃程度の幅があると考えられる。このことは、(1)式から計算された温度T(℃)より低い温度から水冷した場合でも、比較的分析精度に優れる場合が認められた実験事実からも推察できる。この場合、表面でT(℃)より低い温度であっても、内部ではT(℃)より高いγ域の温度であったものと推測している。
このようなことから、本発明では、赤熱状態のボンブ試料の水冷開始温度Taは、上記した(1)式で定義されるT(℃)を基準として、T±100℃の範囲内の温度に調整することが好ましい。これにより分析用試料の組織が、安定して、C分布が均一な、マルテンサイト相とすることができ、固体発光分光分析法におけるCの分析精度が向上する。
なお、実操業において、上記した(1)式で定義される温度Tは、予め製造する鋼種の成分の狙い値を用いて算出してもよい。また、実際に溶鋼を採取して求めた値を用いて、算出することもできる。(1)式は、質量%で、C:0.05〜0.20%、Mn:0.5〜3.0%の範囲内の組織であれば、適用可能である。なお、C:0.20%を超える高炭素鋼の場合には、分析試料の温度によっては、水冷時に試料に亀裂が生じることがある、またC:0.05%未満の低炭素鋼の場合には、水冷後の組織がほぼα鉄であり、水冷開始温度が分析精度に影響を与えない。
また、水冷の方法は、水冷後の試料全面がマルテンサイト相となる臨界冷却速度が確保できればよく、とくに限定されない。たとえば、必要十分な容量で、常温以下程度の水を供給できるような冷却槽で、排水口を閉じて冷却槽をオーバーフローさせながら給水、もしくは排水口を開け、排水しながら給水するなどの方法とすることが好ましい。
以下、実施例に基づき、さらに本発明について具体的に説明する。
転炉による一次精錬と、それに続く真空脱ガス炉を用いた二次精錬とからなる精錬工程を施し、目標C量(狙い値)が、質量%で、C:0.12%(鋼種A)およびC:0.15%(鋼種B)の2種の中低炭素含有溶鋼を、溶製した。なお、C:0.12%の場合には、C以外の合金元素は、Mn(目標):1.0%、Si(目標):0.2%であった。また、C:0.15%の場合には、C以外の合金元素は、Mn(目標):0.5%、Si(目標):0.1%であった。
転炉でC:0.08±0.008%まで脱炭精錬を行った鋼種Aの溶鋼19チャージ、鋼種Bの溶鋼15チャージ、計34チャージについてさらに、真空脱ガス炉で二次精錬を行った。二次精錬の精錬途中の溶鋼から、ボンブ試料(分析用試料)を採取し、赤熱状態のボンブ試料(分析用試料)に水冷を施し、切断し、研磨して分析試料とした。
なお、一部では、赤熱状態のボンブ試料の水冷に際して、放射温度計で表面温度を測定し、水冷開始温度Ta(℃)を調整し、本発明例とした。一方、残りは、水冷開始温度Ta(℃)を調整することなく、水冷し、比較例とした。
本発明例における水冷開始温度Ta(℃)の調整は、各鋼種の目標C量、目標Mn量を用いて次(1)式
T(℃) = 900−250×C−40×Mn ‥‥(1)
(ここで、C、Mn:各元素の含有量(質量%))
で定義される所定の温度T(℃)を算出し、この所定の温度Tを基準として±100℃の範囲内の温度となるように行った。
得られた分析試料を用いて、固体発光分光分析装置によりC等、各成分含有量を分析した。得られた分析値と、真空脱ガス炉の操業実績に基づき、二次精錬終了後に目標通りのC量を有する溶鋼が得られるように、加炭材添加量や処理時間などの処理条件を決定し、真空脱ガス炉による二次精練を行った。
二次精錬終了後に、鋳造前のタンディッシュから、ボンブ試料(分析試料)を採取し、精錬工程と同じように、赤熱状態のボンブ試料の表面温度を測定し、(1)式で定義される所定の温度T(℃)を基準として±100℃の範囲内の温度を水冷開始温度として水冷した。水冷後、固体発光分光分析装置によりC量を分析し、精錬工程終了後の溶鋼のC量(実績値)とした。
得られた結果を表1に示す。
Figure 2016047955
また、表1から、各溶鋼について、Cの実績値と目標値の差の絶対値、|C目標−C実績 |(ppm)、を算出し、鋼種ごとに、水冷開始温度を調整した場合(本発明例:●、▲)と、水冷開始温度を調整しなかった場合(比較例:○、△)に分けて、図3に示す。
本発明例では、いずれの鋼種においても、Cの実績値と目標値の差は50ppm以内に抑制されているのに対し、比較例におけるCの実績値と目標値の差は、100ppm程度までバラツいており、実績値は、目標値に対して乖離が大きくなっている。これは、本発明によれば、分析面内のC量の偏りが少ない状態のボンブ試料を確保でき、固体発光分光分析法を用いても精度の高いC分析が行える状態となり、C分析の精度が向上し、容易に処理条件の最適化が図れ、適正な精錬を行えるようになったためと考えられる。

Claims (3)

  1. 溶鋼に精錬工程を施して、所望の炭素量を含有する炭素含有溶鋼とするに当たり、
    前記精錬工程が、溶鋼から分析用試料を採取し、該採取した赤熱状態の分析用試料を水冷したのち、固体発光分光分析法で炭素含有量を分析し、得られた炭素分析値に基づき、前記溶鋼中の炭素含有量を調整および/または前記精錬工程の終了判定を行う工程であり、
    前記水冷の前に、前記分析用試料の水冷開始温度を調整すること
    を特徴とする炭素含有鋼の精錬方法。
  2. 前記水冷開始温度が、下記(1)式で定義される温度T(℃)を基準として±100℃の範囲内の温度であることを特徴とする請求項1に記載の炭素含有鋼の精錬方法。

    T(℃) = 900−250×C−40×Mn ‥‥(1)
    ここで、C、Mn:各元素の含有量(質量%)
  3. 前記溶鋼が、質量%で、C:0.05〜0.20%、Mn:0.05〜3.0%を含有する組成の炭素含有溶鋼であることを特徴とする請求項1または2に記載の炭素含有鋼の精錬方法。
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