以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態に係る蓄電池システム管理装置は、電力単価の変動等の経済的側面を示す情報と、出力および容量の技術的側面を示す情報とに基づいて、蓄電池の交換について評価する。電力単価とは、蓄電池システムを利用する際の電力単価であり、蓄電池システムの利用料金と呼び変えることもできる。ユーザは、蓄電池システム管理装置の評価結果を利用することで、蓄電池システムの投資回収計画を安定化させるべく、蓄電池を交換する。
図1〜図8を用いて第1実施例を説明する。図1は、複数の蓄電池システム5(1)、5(2)が接続された電力網2の構成と、蓄電池システム5(1)、5(2)の上位コントローラである蓄電池システム管理装置1の機能構成とを示す。
「電力系統」としての電力網2では、複数の発電装置3と変電装置4とがツリー状または網目状に接続されている。発電装置3は、例えば、太陽光発電発電装置、風力発電装置などの再生可能エネルギを利用して発電する装置である。発電装置3として、例えばガスタービン式発電装置や燃料電池などが含まれてもよい。
図1に示す例では、電力網2の含む各拠点のうち、一方の拠点の変電装置4には一方の蓄電池システム5(1)が接続されており、他方の拠点の変電装置4には他方の蓄電池システム5(2)が接続されている。蓄電池システム5(1)、5(2)は、電力網2に対して有効電力または無効電力を充放電することによって、電力網2の一部分または全体の電圧および周波数を維持する役割を果たしている。
蓄電池システム5(1)、5(2)を特に区別しない場合は、蓄電池システム5と呼ぶことがある。蓄電池システム5の詳細な構成例は図2で後述する。各蓄電池システム5は、例えばインターネットなどの広域情報通信網CNに接続されており、通信網CNを介してシステム管理装置1と双方向通信する。
蓄電池システム管理装置1は、各蓄電池システム5を管理するためのコンピュータ装置である。蓄電池システム管理装置1は、通信網CNを介して各蓄電池システム5に双方向通信可能に接続されている。以下の説明では、蓄電池システム管理装置1をシステム管理装置1と略記する場合がある。
システム管理装置1は、例えば、評価部10、蓄電池データ管理部11、運用関連データ管理部12、ユーザインターフェース部13を備える。評価部10は、蓄電池データおよび運用関連データに基づいて、管理対象の各蓄電池の中から選択された蓄電池の組合せについて、交換した場合の状況を評価する。これらの機能10〜13は、コンピュータ装置の有するマイクロプロセッサ、メモリ、補助記憶装置、入出力回路などのハードウェアと、オペレーティングシステムやアプリケーションプログラムなどのコンピュータプログラムとにより、実現される。詳しくは、マイクロプロセッサがメモリなどから所定のコンピュータプログラムを読み込んで実行し、適宜入出力回路などを制御することで、前記各機能10〜13が実現される。
評価部10は、例えば、交換対象の蓄電池を選択する交換対象選択部101と、交換した場合の蓄電池性能を確認する性能確認部102と、交換した場合の運用性を計算する運用性計算部103を備える。後述する他の実施例では、評価部10は、管理対象の各蓄電池の最適な配置についてシミュレーション演算するための最適配置シミュレーション部104を備えることができる。
蓄電池データ管理部11で管理する「所定の蓄電池データ」としての蓄電池データと、運用関連データ管理部12で管理する「所定の運用関連データ」としての運用関連データの詳細は、図4で後述する。評価部10による評価方法は、図5〜図8で後述する。
システム管理装置1は、通信網CNを介して他のコンピュータ6に接続されており、他のコンピュータ6から必要な情報を取得できるようになっている。他のコンピュータ6から取得する情報の例は、図4で後述する。
図2は、蓄電池システム5の構成例を示す。本実施例の蓄電池システム5は、複数のコンテナ型蓄電ユニット51a、51b、51cを備える。コンテナ型蓄電ユニット51a〜51cを特に区別しない場合、コンテナ型蓄電ユニット51または蓄電ユニット51と呼ぶことがある。図2では、一つの蓄電池システム5が3つのコンテナ型蓄電ユニット51を有する場合を示すが、これに限らず少なくとも一つのコンテナ型蓄電ユニット51を有していればよい。
蓄電ユニット51をいわゆるコンテナ状の容器に収容する構成とすれば、蓄電ユニット単位で、蓄電池システム5の能力を変化させることができる。蓄電ユニット51をコンテナ型として構成すれば、運搬が容易であり、設置工数も少なくできる。従って、蓄電ユニット51を拠点に搬入して蓄電池システム5に接続するだけで、蓄電池システム5の性能を容易に拡張することができる。
なお、蓄電池システム5の有する全ての蓄電ユニットがコンテナ型蓄電ユニット51である必要はない。少なくとも一部の蓄電ユニットは、コンテナ型よりは可搬性に乏しい構成であってもよい。
コンテナ型蓄電ユニット51は、それぞれの交流出力端子が電力網2に対して、接続点CPで並列接続されている。各蓄電ユニット51は、電力網2に対し電力を充放電可能である。並列接続点CP1と蓄電ユニット51a、51b、51cとの間には、変圧器52a、52b、52cを備えてもよい。変圧器52a、52b、52cは、蓄電ユニット51a、51b、51cの出力電圧と電力網2の系統電圧とが異なる場合、蓄電ユニットの出力電圧と系統電圧とを変換する。
並列接続点CPと電力網2との間には、蓄電池システム5と電力網2とを接続する電線50上の電力状態を監視する遠隔監視用メータ54が設けられている。システムコントローラ53は、各蓄電ユニット51および遠隔監視用メータ54に接続されており、各蓄電ユニット51および遠隔監視用メータ54との間で制御情報を授受可能である。さらに、システムコントローラ53は、広域通信網CNを介してシステム管理装置1に接続されており、システム管理装置1との間で情報を送受する。
蓄電ユニット51の内部構成を説明する。蓄電ユニット51は、例えば、パワーコンディショナ(以下、PCS)510、蓄電池ブロック511、電池制御部512、全体制御部513、および空調機514を備えている。例えば、PCS510および蓄電池ブロック511は、複数設けることができる。
電力網2に接続する蓄電ユニット51の交流出力端子は、PCS510の交流端子に接続されている。一方、PCS510の直流端子は、蓄電池ブロック511の正極および負極に接続されている。
「電力変換装置」の例であるPCS510は、直流電力を交流電力に変換したり、交流電力を直流電力に逆変換したりする装置である。即ち、PCS510は、蓄電池ブロック511の直流電力と電力網2に対応する周波数の交流電力とを変換または逆変換することで、蓄電池ブロック511を充放電させる。
蓄電池ブロック511には、例えば蓄電池電圧センサ515、蓄電池電流センサ516、蓄電池温度センサ517、蓄電池冷却ファン518などが接続されている。電池制御部512は、センサ515〜517の出力を監視したり、冷却ファン518の作動を制御したりする。さらに、電池制御部512は、蓄電池ブロック511の充電率(State of charge、SOC)を演算する機能を備えている。
空調機514は、蓄電ユニット51から発する熱をコンテナの外部に排出し、蓄電ユニット51の温度を一定範囲に保つための冷却装置である。空冷方式に限らず、水冷方式、油冷方式の冷却装置を用いてもよい。蓄電ユニット51内の発熱源としては、例えば、PCS510や蓄電池ブロック511がある。全体制御部513は、電池制御部512からの情報を監視しながら、PCS510および空調機514を制御する。
図3は、蓄電池ブロック511の構成例を示す。蓄電池ブロック511の内部には、複数の蓄電池モジュールVM1〜VM9が設置されている。以下、蓄電池モジュールVM1〜VM9を特に区別しない場合、蓄電池モジュールVMと略記する場合がある。なお、図3では、9個の蓄電池モジュールVMを示すが、蓄電池モジュールVMの数は9個に限らない。
蓄電池モジュールVMを直列または並列に接続することにより、所望の直列電圧または並列容量を得ることができる。図示のように、ラック状の筐体に蓄電池ブロック511を配置し、筐体の上部に蓄電池冷却ファン518を設置する。これにより、蓄電池モジュールVMで生じた廃熱を筐体上部に自然対流で導きながら、適宜蓄電池冷却ファン518を稼動することで、蓄電池モジュールVMの温度を調節することができる。なお、蓄電池モジュールVMの冷却方法は、空冷式のファン518に限らない。水冷式、油冷式、電子冷却式などの他の形態の冷却装置を用いてもよい。
図4は、システム管理装置1が他の装置との間で送受する情報の例を示す。図4には、「他のコンピュータ6」の例として、系統運用機関6(1)と、その他の機関6(2)とが示されている。
システム管理装置1は、広域通信網CNを介して、系統運用機関6(1)に接続されており、系統運用機関6(1)から例えば充放電指令値と電力単価および市場情報などを入手する。システム管理装置1は、電力単価および市場情報を、所定の運用関連データの一部として運用関連データ管理部12へ格納する。システム管理装置1は、系統運用機関6(1)に対し、電力売買市場への入札情報を送信する。
システム管理装置1は、広域通信網CNを介して、その他の機関6(2)とも接続されており、蓄電池システム5が設置された各拠点に関する情報などを入手する。各拠点に関する情報としては、例えば、各拠点の周辺の地図情報、各拠点の気象情報、各拠点の周辺の燃料相場の情報などである。システム管理装置1は、各拠点に関する情報を所定の運用関連データの一部として、運用関連データ管理部12へ格納する。運用関連データ管理部12は、運用関連データの履歴を管理することもできる。
システム管理装置1と各蓄電池システム5との間の情報の送受を説明する。システム管理装置1は、各蓄電池システム5に対し、目標値となる充放電指令値を送信する。各蓄電池システム5は、システム管理装置1から受信した充放電指令値に基づいて、蓄電ユニット51に蓄積した電力を電力網2へ放電したり、電力網2からの電力を蓄電ユニット51へ充電したりする。
システム管理装置1は、監視のために、蓄電池システム5から、各蓄電池モジュールVMについての所定の監視情報を所定のタイミングで受信する。所定の監視情報には、例えば、各蓄電池モジュールVMの、電圧VS、電流CS、温度TS、充電率SOC、劣化情報SOH(State of Health)、残寿命Lifeなどがある。システム管理装置1は、これらの監視情報を充放電指令値とともに、蓄電池データ管理部11へ格納する。蓄電池データ管理部11は、蓄電池システム5に関する所定の蓄電池データ(上述の所定の監視情報および充放電指令値などを含む)を管理する。蓄電池データ管理部11は、所定の蓄電池データの履歴も管理している。
さらに、システム管理装置1は、交換対象の蓄電ユニット51または蓄電池モジュールVMを有する蓄電池システム5に対して、交換相手の蓄電池システム5(移動先の蓄電池システム5)に関する情報を通知することもできる。
上述のように、システム管理装置1は、ユーザ(本システムのオペレータなど)と情報をやり取りするためのユーザインターフェース部13と、評価部10とを備える。
評価部10は、操作画面110から入力される情報と、蓄電池データ管理部11および運用関連データ管理部12に格納された所定の情報(データとも呼ぶ)とに基づいて、各蓄電池システム5の中から選択された交換対象の組合せについて、評価する。交換可能な単位は、蓄電池システム5の構成単位である。構成単位としては、蓄電ユニット51、蓄電池ブロック511、蓄電池モジュールVMがある。
例えば、交換の組合せとして、一方の蓄電池システム5(1)と他方の蓄電池システム5(2)とが選択された場合を説明する。交換可能な単位は、上述のように、コンテナ型蓄電ユニット51、蓄電池ブロック511、蓄電池モジュールVMである。交換対象の組合せは、基本的に同一単位の中から選択される。すなわち、蓄電ユニット51同士、蓄電池ブロック同士、蓄電池モジュール同士が交換対象の組合せとして選択される。
本実施例では、ユーザが交換対象の組合せを手動で選択する。後述する他の実施例では、評価部10の最適配置シミュレーション部104が最適な交換対象の組合せを自動的に算出する。
評価部10の評価演算の少なくとも一部は、交換対象の組合せとなる装置を有する各蓄電池システム5へそれぞれ通知することができる。例えば、システム管理装置1は、交換対象に係る各蓄電池システム5に対して、所定の交換情報を送信する。所定の交換情報には、例えば、交換相手の蓄電池システム5の識別番号や位置などを特定する情報と、交換対象の装置(蓄電ユニット51、蓄電池ブロック511、蓄電池モジュールVM)を特定する情報と、交換対象の装置の仕様を示す情報と、交換時期に関する情報等を含めることができる。
図5は、システム管理装置1のユーザインターフェース部13が提供する操作画面の例を示す。ユーザは、例えば、マウスなどのポインティングデバイス、キーボード、タッチパネルなどの情報入力手段を用いて、操作画面110へ指示を与える。なお、音声認識装置などを用いて、システム管理装置1を操作する構成でもよい。
操作画面110は、大きくは、蓄電池選択部111、交換対象蓄電池組合せ部112、交換後性能確認部113、交換後運用収益推定部114、および表示部115から構成されている。
蓄電池選択部111は、交換対象の蓄電池(蓄電ユニット51、蓄電ブロック511、蓄電モジュールVM)を選択するための操作領域である。蓄電池選択部111は、例えば、拠点別(蓄電池システム5別)に、タブで表示を切り替えることができる。
蓄電池選択部111は、例えば、地域管理情報表示部111Aと、システム構成表示部111Bと、選択用表示リスト111Cとを含む。地域管理情報表示部111Aは、対象の蓄電池システム5の設置された地域(拠点)についての管理情報を表示する。この管理情報としては、例えば、国名、県名、緯度、経度などがある。
システム構成表示部111Bは、対象の蓄電池システム5の構成を図形で表示する。図5の例では、或る蓄電池システムの持つ3個の蓄電ユニットA1〜A3と、その出力および容量を表示する。システム構成表示部111Bには、選択用表示リスト111Cでの選択結果が反映される。すなわち、選択用表示リスト111Cで或る蓄電池モジュールVMが選択されると、システム構成表示部111Bにおいて、その蓄電池モジュールVMが設けられている蓄電ユニットの表示が変化する。これにより、ユーザは、交換対象を含む蓄電ユニットを視覚を通じてただちに把握することができる。
なお、システム構成表示部111Bに交換対象の上位構成を選択する機能を持たせてもよい。この場合、ユーザは、システム構成表示部111Bに表示された上位構成(ここでは蓄電ユニット)の中から、いずれかの上位構成を選択する。選択用表示リスト111Cには、ユーザにより選択された上位構成に含まれる下位構成(ここでは蓄電池モジュール)が表示される。
選択用表示リスト111Cは、図5に示す例では、システム構成表示部111Bで選択された蓄電ユニットA1の有する蓄電池モジュールVMがリスト表示されている。そのリストは、例えば、蓄電池モジュールVMを選択するためのチェック欄、蓄電池モジュールVMを識別するためのモジュール番号(モジュール識別子)、蓄電池の劣化状態を示す情報(SOH)、モデル名(製造年)、充放電容量の累積値などを対応付けて表示することができる。
充放電容量の累積値は、蓄電池モジュールの残り寿命を推測するために使用することができる。充放電容量の累積値やSOH、モデル名(製造年)などの情報は、蓄電池モジュールVMの寿命に関連する寿命関連情報であるため、交換対象の蓄電池モジュールVMを選択するに際して役に立つ。
交換対象蓄電池組合せ部112は、交換対象となる蓄電池の組合せを決定し、表示するための操作領域である。交換対象蓄電池組合せ部112は、例えば、選択可能な蓄電池を表示する選択可能蓄電池リスト部112Aと、交換対象となる蓄電池の組合せを決定する組合せ決定表示部112Bを備えている。
選択可能蓄電池リスト部112Aは、蓄電池選択部111で選択された蓄電池のみが表示される。ユーザは、選択可能蓄電池リスト部112Aに表示された蓄電池(ここでは蓄電池モジュール)の中から、交換対象の蓄電池を一対選択する。
組合せ決定表示部112Bは、例えば、2列*N行の枡として表示されている。同一の行において、第1列目の蓄電池と第2列目の蓄電池とが一対を成す。ユーザが、リスト部112Aから交換対象の蓄電池を選択すると、選択された蓄電池の情報が組合せ決定表示部112Bのうち、空いている行の枡に格納される。組合せ決定表示部112Bに表示された蓄電池は、選択可能蓄電池リスト部112Aにおいて選択不能に設定される。同一の蓄電池が重複して選択されるのを防止するためである。
交換後性能確認部113は、交換対象の蓄電池を交換した場合の性能を確認するための処理を起動するボタンである。交換後の性能を確認する処理は、選択された一対の蓄電池を交換した場合における性能について予測し、判定する。性能には、例えば蓄電池の出力および容量が含まれる。より具体的には、例えば、交換後の性能を確認する処理では、交換された蓄電池が所定の性能条件を満たすかを確認する。所定の性能条件とは、交換対象の蓄電池が交換先で期待されている性能(出力および容量)を満たすこと、である。
交換後運用収益推定部114は、交換対象の蓄電池を交換した場合の運用収益を推定するための処理を起動するボタンである。交換後の運用収益を推定する処理は、交換先(移動先)での電力単価や交換対象の蓄電池の残寿命などに基づいて、交換対象の蓄電池が交換先で獲得し得る経済的利益を算出する。
表示部115は、各ボタン113、114をユーザが操作した場合の、処理結果(演算結果)を表示する。即ち、ユーザが交換後性能確認部113を押した場合、表示部115には、蓄電池を交換した場合の性能についての演算結果が表示される。性能についての演算結果の表示例は、図8で後述する。ユーザが運用収益推定部114を押した場合、表示部115には、蓄電池を交換した場合の運用収益についての演算結果が表示される。運用収益についての演算結果の表示例は、図7で後述する。
図6は、交換対象の蓄電池を抽出して提案する処理のフローチャートである。本処理は、システム管理装置1の評価部10により実行される。
最初に、評価部10は、操作画面110上の蓄電池選択部111へのユーザ指示に基づいて、交換対象となる蓄電池(ここでは蓄電ユニット51、蓄電池ブロック511、蓄電池モジュールVMのいずれか)を選択する(S10)。評価部10は、操作画面110上の交換対象蓄電池組合せ部112へのユーザ指示に基づいて、交換する蓄電池の組合せを特定する(S11)。
評価部10は、ユーザが交換後性能確認部113を操作したことを検知すると、交換対象の一対の蓄電池がそれぞれの交換先において、それぞれの性能条件を満たすかを確認する(S12)。
例えば、第1拠点の第1蓄電池と第2拠点の第2蓄電池とが一対の交換対象の組として選択された場合を説明する。ここで、第1蓄電池と第2蓄電池の性能および残寿命は、それぞれ異なる。さらに、第1拠点と第2拠点とでは、電力系統に対する電力需給特性も相違する。電力需給特性とは、例えば、どの時間帯にどの程度の電力需要が生じるか、どれだけの電力が発電装置から電力系統に供給されるか、などの電力の需要および供給についての特徴である。電力需給特性が異なるため、第1拠点および第2拠点では、蓄電池に期待する性能もそれぞれ異なる。
もしも、例えば第2拠点で要求される性能を第1蓄電池が有していない場合、第1蓄電池と第2蓄電池との交換作業は無駄になる。逆に、第1拠点で要求される性能を第2蓄電池が有していない場合も、それら蓄電池の交換作業は無駄になる。そこで、評価部10は、第1蓄電池と第2蓄電池とを実際に交換する前に、一方の交換対象である第1蓄電池が交換先の第2拠点で要求される性能を満たしており、かつ、他方の交換対象である第2蓄電池が交換先の第1拠点で要求される性能を満たしているかを、確認する。
評価部10による交換後の性能の確認結果は、操作画面110の表示部115に表示される(S13)。
評価部10は、ユーザが交換後運用収益推定部114を操作したことを検知すると、交換対象の一対の蓄電池がそれぞれの交換先において、どれだけの運用収益を期待できるか推定する(S14)。蓄電池の運用収益は、簡単には、蓄電池の稼働期間中に獲得が見込まれる経済的利益であり、蓄電池の充放電能力を利用する者(機関)から得られる。蓄電池の充放電能力を利用する者としては、系統運用機関6(1)、再生可能エネルギを利用した発電装置3の運用者、蓄電池の電力を利用する電力需要者などがある。
例えば、系統運用機関6(1)は、蓄電池システム5の助力により、電力網2の電力品質を一定範囲に維持できる。従って、系統運用機関6(1)は、蓄電池システム5の運用者に対し、電力品質維持への貢献度合に応じた金額を支払う。また例えば、再生可能エネルギを利用する発電装置3の運用者は、電力需要の少ない時間帯に発電装置3で発電した電力を蓄電池システム5に蓄積することができる。これにより、発電装置3の運用者は、発電装置3の発電能力を活かすことができ、さらにピーク需要にも対応できる。従って、発電装置3の運用者は、蓄電池システム5の運用者に対し、発電装置3への貢献度合に応じた金額を支払う。また例えば、電力を消費する電力需要者は、蓄電池システム5から電力網2へ放電される電力(逆潮流)を利用して電気的負荷を作動させる。従って、電力需要者は、蓄電池システム5に対し、電力購入代金を支払うことができる。発電装置3の運用者が用いるコンピュータや電力需要者の用いるコンピュータは、図1に示す他のコンピュータ6の一例に含めることができる。システム管理装置1は、発電装置3の運用者が用いるコンピュータや電力需要者の使用するコンピュータから、蓄電池システム5の利用に関する情報(購入代金など)を取得することができる。
運用収益を推定する処理(S14)は、ステップS12での確認結果が肯定的である場合のみ実行できるように構成してもよい。性能を満たさない蓄電池の交換は基本的に許容できないので、運用収益の推定を行っても無駄になるためである。但し、参考値として知りたいという市場要求に備えて、交換後の性能確認処理と交換後の運用収益の推定処理とを別々に実行できるように構成してもよい。
評価部10は、ステップS14で算出した運用収益を、操作画面110の表示部115に表示する(S15)。ステップS14で運用収益の金額を算出し、算出した金額をステップS15で表示してもよい。あるいは、ステップS14では運用収益に関する情報のみ計算して、運用収益の金額は算出せず、ステップS15では運用収益に関する情報のみを表示してもよい。運用収益に関する情報としては、例えば、蓄電池の残寿命、蓄電池の設置された拠点での平均電力単価などがある。
将来の運用収益を金額で示す場合、例えば、図7で後述するように、電力単価と残寿命を乗算することで算出することができる(将来の運用収益=電力単価*残寿命)。なお、蓄電池の交換には、輸送費や人件費などの交換に要する経費が発生する。従って、将来の運用収益は、電力単価と残寿命を乗算した値から交換に要する経費を差し引いた値として計算してもよい(将来の運用収益=電力単価*残寿命−交換に要する経費)。蓄電池を交換した場合の運用収益を金額として示すことで、ユーザは、客観的に交換の妥当性を判断することができる。
図7は、蓄電池システム5の設置された各拠点において、電力単価の変動傾向が異なる可能性があることを示す説明図である。図7の上側に示す電力単価の変動特性グラフでは、第1蓄電池システム5(1)をES1と、第2蓄電池システム5(2)をES2と表示している。ここでは、開放された市場において送配電系統が運営されている場合を例に説明する。
図7に示す例では、第1蓄電池システム5(1)の設けられている第1拠点では、電力単価が低下する傾向にある。これとは逆に、第2蓄電池システム5(2)の設けられている第2拠点では、電力単価が上昇する傾向にある。
例えば、第1拠点において、蓄電池システム5の設置数が増加する傾向にあると、市場原理により、電力単価は押し下げられると考えられる。蓄電池システム5により、夜間電力や昼間の太陽光発電などを有効に利用できるため、結果的に電力料金は低下していくであろう。
例えば、第2拠点において、再生可能エネルギを利用する発電装置3の導入量が増加する傾向にあると、電力品質の維持のために、蓄電池システム5への充放電の要求が増大すると考えられる。この結果、蓄電池システム5に対する需要が逼迫して、電力単価(蓄電池システムの電力を利用するための単位電力あたりの料金)が増加するであろう。上述の理由は例にすぎない。図7は、電力単価は一定ではなく、時間の経過につれて上昇または低下することがある点を示しており、電力単価が変動する理由は問わない。
電力単価の変化が予測された場合は、蓄電池システム5を構成する蓄電池(蓄電ユニット51、蓄電池ブロック511、蓄電池モジュールVM)のうち、残寿命の多い蓄電池を、電力単価の高い拠点に配置された他の蓄電池システム5へ移動させる。これにより、システム管理装置1の管理下にある各蓄電池システム5の全体としての運用収益を最大化することができる。
図7の例で説明する。交換の可否を判定する時刻をt1とする。時刻t1において、第1拠点の電力単価Pr1は第2拠点の電力単価Pr2よりも高い。しかし、第1拠点の電力単価は低下傾向にあり、第2拠点の電力単価は上昇傾向にある。従って、未来のいずれかの時点t2で、第2拠点の電力単価の方が第1拠点の電力単価よりも高くなる。
第1蓄電池システム5(1)の蓄電池a1、b1、c1の残寿命と、第2蓄電池システム5(2)の蓄電池a2、b2、c2の残寿命とを比較すると、第1蓄電池a1よりも第2蓄電池a2の方が残寿命は長く、第1蓄電池b1、c1よりも第2蓄電池b2、c2の方が残寿命は短い。今現在はともかく将来は、第1拠点よりも第2拠点の方が電力単価は上昇すると見込まれる。従って、残寿命の長い蓄電池を電力単価の高くなる第2拠点に移した方が、システム全体としての運用収益は改善する。ここでの「システム全体として」とは、システム管理装置1の管理下にある全ての蓄電池システム5の全体として、という意味である。
そこで、第1拠点の第1蓄電池システム5(1)から残寿命の長い第1蓄電池b1を取り外し、その第1蓄電池b1を第2拠点に運び込んで、第2蓄電池システム5(2)へ取り付ける。これと同時に、第2拠点の第2蓄電池システム5(2)から残寿命の少ない第2蓄電池b2を取り外し、その第2蓄電池b2を第1拠点に搬入して第1蓄電池システム5(1)へ取り付ける。同様に、第1拠点の残寿命の長い他の第1蓄電池c1を第2拠点に移動し、第2拠点の残寿命の短い他の第2蓄電池c2を第1拠点に移動する。
図8は、交換対象の蓄電池の性能が交換先の性能条件を満たすか確認するためのテーブルの例である。図8の上側には、交換前の状態を示すテーブルT10が表示されており、図8の下側には交換後の状態を推定したテーブルT11が表示されている。各テーブルT10、T11は同一構造であり、蓄電池システムごとに、各蓄電池a、b、cの出力および容量と、合計出力および合計容量と、性能条件(出力と容量についての条件)と、判定結果とが対応付けられている。図8では、性能条件を「要件」と表記している。なお、ここでは、各蓄電池システム5(1)、5(2)において、各蓄電池a、b、cは並列接続されているものとする。
図8では、図7で述べたように、第1蓄電池システム5(1)の蓄電池b1、c1と第2蓄電池システム5(2)の蓄電池b2、c2とを交換対象とする。交換対象の蓄電池が分かりやすいように、図8では点線で囲んでいる。
交換前において、第1蓄電池システム5(1)の有する各蓄電池a、b、cの合計出力は280[W]であり、合計容量は800[Wh]である。第1蓄電池システム5(1)に要求される性能条件は、合計出力が250[W]以上、合計容量が600[Wh]以上である。従って、交換前の蓄電池a、b、cは、第1蓄電池システム5(1)の性能条件を満たしている。
同様に、交換前において、第2蓄電池システム5(2)の有する各蓄電池a、b、cの合計出力は260[W]であり、合計容量は600[Wh]である。第2蓄電池システム5(2)に要求される性能条件は、合計出力が250[W]以上、合計容量が600[Wh]以上である。従って、交換前の蓄電池a、b、cは、第2蓄電池システム5(2)の性能条件を満たしている。
図7で述べたように蓄電池b、cを交換したとすると、第1蓄電池システム5(1)の合計出力は240[W]、合計容量は500[Wh]となる。しかし、これらの値は、第1蓄電池システム5(1)の性能条件である、合計出力250[W]以上であること、および合計容量600[Wh]以上であることを、いずれも満たさない。従って、評価部10は、性能条件を満たさないと判定する。図8では、性能条件を満たさない場合に「NG」と表示し、満たす場合に「OK」と表示する。
このように構成される本実施例によれば、蓄電池データと運用関連データに基づいて、移動対象の蓄電池を所定の場所に移動させた場合の状況を評価できる。従って、本実施例では、ユーザは、評価結果を利用して、技術的側面および経済的側面の両面から蓄電池の最適配置を検討できる。
本実施例の蓄電池システム5は、少なくとも一つのコンテナ型蓄電ユニット51を有するため、蓄電ユニット51の移動や据え付けなどの交換作業が容易であり、蓄電池交換の作業性を向上することができる。
本実施例では、交換対象の蓄電池を交換先の拠点に移動した場合に、交換先の性能条件を満たすかを事前に確認する。従って、無駄な交換作業が行われることを防止、作業性を向上できる。
本実施例では、蓄電池を交換した場合における将来の運用収益を算出するため、システム全体の運用収益の最大化を図ることができる。従って、蓄電池システム5を運用するユーザに適切な収益機会を確保でき、蓄電池システムの普及に寄与することができる。