JP2016044242A - プロトン伝導性材料、電解質膜及び固体高分子形燃料電池 - Google Patents

プロトン伝導性材料、電解質膜及び固体高分子形燃料電池 Download PDF

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伸治 安藤
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Abstract

【課題】耐膨潤性が高く、イオン交換基を高密度に集積したプロトン伝導度の高いプロトン伝導性材料を提供する。
【解決手段】親水性の繰り返し単位を有する親水部と、疎水性の繰り返し単位を有する疎水部とを有し、親水部及び/又は疎水部は、電気陰性度の高い元素と低い元素を有する環式化合物を含む繰り返し単位を有する
【選択図】なし

Description

本発明は、プロトン伝導性材料、電解質膜及び固体高分子形燃料電池に関する。
固体高分子形燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell:PEFC)は、高効率で低環境負荷のエネルギーデバイスである。固体高分子形燃料電池では、アノードで発生したプロトン(H)をカソードへ伝導するための、プロトン伝導性材料を有する電解質膜が用いられる。PEFC用電解質膜としては、Nafion(登録商標)等の、一般的に高プロトン伝導性を示すパーフルオロカーボンスルホン酸膜が用いられている(例えば、特許文献1)。
しかしながら、これらの電解質膜は、熱的安定性の低さや、低湿度下でプロトン伝導性が大幅に低下することが知られている。
高いプロトン伝導性を実現させるためには、高イオン交換容量を有するプロトン伝導性材料(電解質)が必要である。一方で、高イオン交換容量を有するプロトン伝導性材料(電解質)は、高い含水率を有するために固体高分子形燃料電池等の電解質膜に用いられた場合に膜の膨潤変化が大きい。そのため、高イオン交換容量を有するプロトン伝導性材料(電解質)は、膜の膨潤により膜形状を維持できない場合や、イオン交換容量が低下する場合があり、高いプロトン伝導性と高い耐膨潤性の両方を満たすプロトン伝導性材料の作製は困難である。
そのため、PEFCの高効率化に向けて、高いプロトン伝導性と高い耐膨潤性の両方を満たす新規なPEFC用電解質膜(プロトン伝導性材料)の開発が求められている。
特開2001−35510号公報
本発明は、かかる問題点に鑑み、耐膨潤性が高く、イオン交換基を高密度に集積したプロトン伝導度の高いプロトン伝導性材料、電解質膜及び固体高分子形燃料電池を提供することを目的とする。
本発明のプロトン伝導性材料は、親水性の繰り返し単位を有する親水部と、疎水性の繰り返し単位を有する疎水部とを有し、親水部及び/又は疎水部は、電気陰性度の高い元素と低い元素を有する環式化合物を含む繰り返し単位を有することを特徴とする。
また、環式化合物としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選ばれる1種以上の元素を含み、極性を有するヘテロ環であることが好ましい。
また、環式化合物は、平面構造を有し、他の環式化合物と原子間相互作用することが好ましい。
また、環式化合物は、チアゾロチアゾール(TT)環又はベンゾチアジアゾール(BT)環であることが好ましい。
また、親水性の繰り返し単位は、1以上のスルホン酸基を有することが好ましい。
また、プロトン伝導性材料は、疎水性の繰り返し単位、親水性の繰り返し単位、及び環式化合物を含む繰り返し単位により構成されるマルチブロックポリマーを含有することが好ましい。
または、プロトン伝導性材料は、化学式(1)で表される疎水性の繰り返し単位と、化学式(2)で表される親水性の繰り返し単位と、化学式(3)で表される環式化合物を含む繰り返し単位を有することが好ましい。
(R=H又はSOHであり、少なくとも1つはSOHであり、残りはHである。)
(R´=H又はSOHであり、各R´は各々異なっていてもよい。)
本発明のプロトン伝導性材料、電解質膜及び固体高分子形燃料電池は、耐膨潤性が高く、イオン交換基を高密度に集積した構造を持ち、高いプロトン伝導度を有する。
プロトン伝導性材料の構成を模式的に表した図である。 (A)は、BT骨格を有する疎水性モノマーのH−NMRスペクトル図であり、(B)は、BT骨格を有する親水性モノマーのH−NMRスペクトル図である。 (A)は、TT骨格を有する疎水性モノマーのH−NMRスペクトル図であり、(B)は、TT骨格を有する親水性モノマーのH−NMRスペクトル図である。 BT骨格又はTT骨格を有する親水性モノマーの各種溶媒への溶解度を示す図である。 (A)は、BT骨格を有する疎水性オリゴマーの合成で得られた生成物の薄層クロマトグラフィー(TLC)の結果である。(B)は、BT骨格を有する疎水性オリゴマーの合成で得られた生成物のH−NMRスペクトル図である。 (A)は、BT骨格を有する疎水性オリゴマーの合成で得られた生成物のMALDI−TOF−MSスペクトル図である。(B)乃至(D)は、(A)の一部を拡大したMALDI−TOF−MSスペクトル図である。 BT骨格を有する親水性オリゴマーの合成で得られた生成物のH−NMRスペクトル図である。 BT骨格を有する親水性オリゴマーの合成で得られた生成物のH−NMRスペクトル図である。 (A)は、BT骨格を有する疎水性オリゴマーのH−NMRスペクトル図であり、(B)は、SPESのH−NMRスペクトル図であり、(C)は、BT骨格を有する疎水性マルチブロックポリマーのH−NMRスペクトル図である。 (A)は、TT骨格を有する疎水性オリゴマーのH−NMRスペクトル図であり、(B)は、SPESのH−NMRスペクトル図であり、(C)は、TT骨格を有する疎水性マルチブロックポリマーのH−NMRスペクトル図である。 実施例8に係るBT骨格を有するマルチブロックポリマーのプロトン伝導度の温度依存性を示す図である。 実施例8に係るBT骨格を有するマルチブロックポリマーのArrhenius plotを示す図である。 BT骨格又はTT骨格を有するマルチブロックポリマーの熱重量分析(TGA)の測定結果を示す図である。 (A)は、PES骨格を有するオリゴマーをDMF(dimethylformamide)に溶かした時の溶液の色の変化を示す図であり、(B)は、BT骨格を有する疎水性オリゴマーをDMF(dimethylformamide)に溶かした時の溶液の色の変化を示す図である。 BT骨格を有する疎水性オリゴマーのDMSO−d中でのH−NMRスペクトル図である。 BT骨格を有する疎水性オリゴマーのDMF−d中でのH−NMRスペクトル図である。
以下に、本発明を適用したプロトン伝導性材料、電解質膜及び固体高分子形燃料電池について以下の順序に沿って詳細に説明する。なお、本発明は、特に限定がない限り、以下の詳細な説明に限定されるものではない。
1.プロトン伝導性材料
(1)プロトン伝導度
(2)膨潤抑制機能
2.プロトン伝導性材料の合成
3.固体高分子形燃料電池・電解質膜
[1.プロトン伝導性材料]
本実施の形態に係るプロトン伝導性材料は、図1に示すように、親水性の繰り返し単位を有する親水部と、疎水性の繰り返し単位を有する疎水部とを有する。プロトン導電性材料は、例えば、−(親水部)−(疎水部)−(親水部)−(疎水部)−・・・のように、親水部と疎水部が交互に複数回繰り返されるような構造となっていてもよい。
親水部は、プロトン酸基を有する繰り返し単位で構成される。親水性の繰り返し単位を有する親水部は、プロトン酸基を有することでプロトン伝導性を有する。プロトン伝導性は、導入されるプロトン酸基の量が多いほど高くなる。プロトン酸基としては、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基などが挙げられるが、スルホン酸基であることが好ましい。このように、親水部は、プロトン酸基を複数導入することで高いイオン交換容量を実現することができる。
疎水部は、プロトン酸基を有さない繰り返し単位で構成される。疎水部を構成する繰り返し単位の構造は、プロトン酸基を除いた親水部を構成する繰り返し単位の構造と同じであっても異なっていてもよい。疎水部は、疎水性相互作用によって、近接する親水部の含水を抑制することができる。これにより、疎水部は、親水部が水を含むことによるプロトン伝導性材料の膨潤を抑制することができる。
さらに、本実施の形態に係るプロトン伝導性材料は、親水部及び/又は疎水部に、電気陰性度の高い元素と低い元素を有する環式化合物を含む繰り返し単位を有する。環式化合物は、電気陰性度の異なる元素を有することで、異なる元素(ヘテロ原子)間で相互作用が生じる。プロトン伝導性材料は、疎水性相互作用に加えて、環式化合物(ヘテロ環)によるヘテロ原子間相互作用を有することにより、プロトン伝導性材料の膨潤をより抑制することができる。
電気陰性度の高い元素と低い元素とは、相対的なものであり、環式化合物の環状構造の中に含まれ得るものであって、これにより極性が生じるものであればどのようなものでもよい。環式化合物は、平面構造を有し、他の分子内にある同様の環式化合物と原子間相互作用する元素を有することが好ましい。「(電気陰性度の高い元素)−(電気陰性度の低い元素)」の組み合わせとして、例えば、N−C、S−C、N−S、O−C、O−N、C−Se、N−Seなどが挙げられる。さらに、環式化合物としては、窒素原子(N)、酸素原子(O)、硫黄原子(S)から選ばれる1種以上の元素を含み、極性を有することが好ましい。プロトン伝導性材料は、例えば、S−S相互作用やS−N相互作用といった、硫黄原子間や硫黄−窒素原子間での強いヘテロ原子間相互作用に基づき、分子間のπ−πスタッキング構造を促進することができる。
このような環式化合物としては、例えば、ベンゾチアジアゾール、ベンゾオキサジアゾール、ベンゾセレナジアゾール、チアゾロチアゾール、オキサゾロオキサゾール、セレナゾロセレナゾール、ベンゾビスチアゾール、ベンゾビスオキサゾール、ベンゾビスセレナゾール等が挙げられる。このような環式化合物(ヘテロ環)の中で、チアゾロチアゾール環又は、ベンゾチアジアゾール環のように、窒素原子(N)や硫黄原子(S)を含む環式化合物が好ましい。
また、本実施の形態に係るプロトン伝導性材料は、図1に示すように、親水部と疎水部が明確に相分離されたマルチブロックポリマーを形成することが好ましい。プロトン伝導性材料の親水部と疎水部が明確に相分離されることで、親水部は、複数のプロトン酸基を有することで高いイオン交換容量を実現し、疎水部及び環式化合物(ヘテロ環)は、疎水部の分子間相互作用と環式化合物(ヘテロ環)の原子間相互作用によって、近接する親水部に対して効果的に膨潤を抑制することができる。このように、プロトン伝導性材料は、高いイオン交換容量と高い膨潤抑制機能の両方に適した構造とすることができる。
親水性の繰り返し単位、疎水性の繰り返し単位、及び環式化合物を有する繰り返し単位としては、芳香族構造を含む基本骨格を有するものが挙げられる。例えば、親水部では、スルホン化ポリエーテルスルホン(SPES)、スルホン化ポリエーテルケトン(SPEK)、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(SPEEK)、又はこれらのエーテル結合部位をチオエーテル結合に置き換えたものや、芳香族同士がビアリール結合で直接結合した構造でスルホン化されているものが挙げられる。また、疎水部では、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、又はこれらのエーテル結合部位をチオエーテル結合に置き換えたものや、芳香族同士がビアリール結合で直接結合した構造が挙げられる。
具体例として、例えば、プロトン伝導性材料は、下記化学式(1)で表される疎水性の繰り返し単位と、下記化学式(2)で表される親水性の繰り返し単位と、下記化学式(3)で表される環式化合物を含む繰り返し単位とから構成される。
(R=H又はSOHであり、少なくとも1つはSOHであり、残りはHである。)
(R´=H又はSOHであり、各R´は各々異なっていてもよい。)
上記化学式(3)において、環式化合物を含む繰り返し単位が疎水部内にある場合には、R´は全てHであり、環式化合物を含む繰り返し単位が親水部内にある場合には、少なくとも1つのR´がSOHである。
また、このような各繰り返し単位を有するプロトン伝導性材料としては、例えば、下記化学式(4)で表される構造を含むものが挙げられる。
(R、R´=H又はSOHである。Aが疎水部で、Bが親水部の場合には、Rは全てHで、R´の少なくとも1つはSOHで、残りがHである。Aが親水部で、Bが疎水部の場合には、Rの少なくとも1つはSOHで残りがHであり、R´は全てHである。また、X+Y:Z=1:9〜9:1、X:Y=0.1:9.9〜10:0である。)
極性を有する環式化合物を含む繰り返し単位は、疎水部及び/又は親水部に含まれる。環式化合物は、疎水部及び/又は親水部を構成する繰り返し単位の一部に含まれていてもよいし、全てが環式化合物を含む繰り返し単位であってもよい。例えば、疎水部が10個の繰り返し単位で構成されている場合、1〜9個の繰り返し単位に環式化合物を含み、残りの9〜1個の繰り返し単位は環式化合物を含まない繰り返し単位となっていてもよいし、10個の繰り返し単位のすべてが環式化合物を含むものであってもよい。環式化合物(ヘテロ環)を含む繰り返し単位と環式化合物(ヘテロ環)を含まない繰り返し単位の割合は、0.1:9.9〜10:0とすることが好ましい。また、親水部と疎水部の割合は、1:9〜9:1とすることが好ましい。
また、プロトン伝導性材料は、さらに、スルホフェニルホスホン酸ジルコニウム(ZrSPP)、及び、硫酸ジルコニウム(Zr(SO)や硫酸ジルコニア(SZrO)等の硫酸ジルコニウム化合物等の無機系材料を用いて有機無機複合材料とすることができる。プロトン伝導性材料は、この他にも、必要に応じて各種の添加剤を含有していてもよい。
このように、プロトン伝導性材料は、プロトン酸基の導入と、電気陰性度の高い元素と低い元素を有する環式化合物を含むことで、(1)高いプロトン伝導度と、(2)高い膨潤抑制機能を併せ持っている。
(1)プロトン伝導度
プロトン伝導性材料は、プロトン酸基を複数導入することにより、高いイオン交換容量を実現することができる。プロトン伝導性材料は、概ね1.5〜5.0meq/gのイオン交換容量を有する。イオン交換容量は、導入するプロトン酸基の数等によって調整される。
一方で、プロトン伝導性材料は、導入されるプロトン酸基の量が多いほど同時にポリマーの吸水率が高くなり、含水・膨潤する傾向がある。そして、このようなプロトン伝導性材料から作製された電解質膜は、燃料電池に用いた場合、電池使用中に生成する水によって大きな寸法変化を生じ強度が低下する。本実施の形態に係るプロトン伝導性材料では、以下で述べるように、親水部及び/又は疎水部に、電気陰性度の高い元素と低い元素を有する環式化合物を含む構造を有することにより、その分子間相互作用によって親水部の膨潤を抑えることができる。このため、プロトン伝導性材料は高いプロトン伝導度を維持することができる。
(2)膨潤抑制機能
プロトン伝導性材料は、疎水部の疎水性相互作用に加え、極性を有する環式化合物を有することにより高い膨潤抑制機能を有する。プロトン伝導性材料は、極性を有する環式化合物を有することで、極性を有する元素(ヘテロ原子)間でのヘテロ原子間相互作用を有する。例えば、環式化合物に硫黄原子や窒素原子を含む場合、S−S相互作用やS−N相互作用といった強いヘテロ原子間相互作用に基づき、分子間のπ−πスタッキング構造を促進することができる。プロトン導電性材料に導入した環式化合物(ヘテロ環)は、原子半径の大きな硫黄原子と電気陰性度の大きな窒素原子との間で誘起される巨大な分極構造に基づき、分子間において強力な静電的S−SおよびS−N相互作用が発現し、主鎖構造間の集合化(ネットワーク化)を促進させる。また、ヘテロ環は、非常に平面性が高いため、親水部及び疎水部の立体構造の違いにより選択的集合化を誘起させることができる。このようなヘテロ環としては、例えば、チアゾロチアゾール環又はベンゾチアジアゾール環が好ましい。
プロトン伝導性材料は、例えば、プロトン伝導性材料がマルチブロックポリマーを形成する場合、疎水部に上記環式化合物(ヘテロ環)を含む構造とすることで、親水部に近接する疎水部が環式化合物(ヘテロ環)による分子間相互作用により親水部の膨潤を効果的に抑制することができる。
親水部及び/又は疎水部中の極性を有する環式化合物を含む繰り返し単位の割合は、マルチブロックポリマー合成時の原料となる各モノマー又はオリゴマーの割合を調節することにより、調整することができる。プロトン伝導性材料は、親水部及び/又は疎水部中の繰り返し単位における、極性を有する環式化合物を含む繰り返し単位と極性を有する環式化合物を含まない繰り返し単位との割合を、0.1:9.9〜10:0とするのが好ましい。
このように、本実施の形態に係るプロトン伝導性材料は、分子の立体構造と分子間相互作用(疎水性相互作用・へテロ原子間相互作用)を協奏的に利用した設計に基づき、親水部及び疎水部の集積構造形態を制御した、膨潤抑制と高プロトン伝導性を実現する新規なプロトン伝導性材料である。
[2.プロトン伝導性材料の合成]
次に、プロトン伝導性材料の合成について説明する。プロトン伝導性材料の合成は、親水性の繰り返し単位、疎水性の繰り返し単位、及び環式化合物を有する繰り返し単位を構成するそれぞれのモノマー又はオリゴマーを化学結合させて高分子量化させることで行う。高分子量化させる方法に特に制限は無く、重合させるモノマーやオリゴマーの種類によって適宜定める事ができる。
プロトン伝導性材料は、マルチブロックポリマーとして合成する場合には、ヘテロ環を含むモノマーを合成した後、そのモノマーからなるオリゴマーを合成し、その後、合成したオリゴマーを用いてブロック共重合体を合成することが好ましい。
上述した通り、プロトン伝導性材料の親水部には、プロトン酸基が導入される。プロトン酸基としてスルホン酸基をプロトン伝導性材料の主骨格に導入するためには、スルホン化剤を使用する。このスルホン化剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、濃硫酸、発煙硫酸、クロロ硫酸、無水硫酸錯体等を好適に使用することができる。プロトン酸基の導入は、モノマーの段階で行うことが好ましい。プロトン伝導性材料は、モノマーの段階でプロトン酸基を導入することにより、オリゴマー鎖中にプロトン酸基を均一に導入することができる。
プロトン伝導性材料は、(1)プロトン酸基を有するモノマー又はオリゴマー(親水部)と、(2)プロトン酸基を含まないモノマー又はオリゴマー(疎水部)と、(3)環式化合物(ヘテロ環)を含むモノマー又はオリゴマー(親水部及び/又は疎水部)とを共重合させることにより得ることができる。
このようにして得られたプロトン伝導性材料は、スルホン酸基を複数導入しているためイオン交換基を高密度に集積した構造を持ち、高いプロトン伝導度を有すると共に、疎水部の疎水性相互作用や環式化合物(ヘテロ環)のヘテロ原子間相互作用により高い膨潤抑制機能をも有する。
[3.固体高分子形燃料電池・電解質膜]
固体高分子形燃料電池(PEFC)は、少なくとも、アノード(燃料極)と、カソード(空気極)と、イオン伝導性を有する電解質膜を備えたものである。
具体的には、例えば、電解質膜の各面上に触媒層を付着させ、さらにガス拡散層を設けた膜−電極接合体の各面にアノード極及びカソード極の2つの極板を配置又は挟持して積層体を得る。得られた積層体の一方の面には、常圧又は加圧された水素ガスを保持できる燃料室を配置する。積層体の他方の面には、常圧又は加圧された酸素或いは空気を保持できるガス室を配置することにより固体高分子形燃料電池が作製される。
アノード(燃料極)では水素などの燃料が供給され、プロトンと電子に分解され、この電子により電気が発生する。一方で、プロトンは、アノードから電解質膜によりカソードへと伝導され、カソード(空気極)で酸素と反応し、水が生成される。
本実施の形態に係る電解質膜は、上述したプロトン伝導性材料を膜形状に加工したものである。プロトン伝導性材料から必要な厚さ及び大きさの電解質膜を形成できる加工方法であれば、その加工方法は特に限定されない。
電解質膜は、親水性の繰り返し単位を有する親水部と、疎水性の繰り返し単位を有する疎水部とを有し、親水部及び/又は疎水部は、電気陰性度の高い元素と低い元素を有する環式化合物を含む繰り返し単位を有する。
電解質膜は、このような構成を有することにより、親水部で高いイオン交換容量を実現させるとともに、疎水部による疎水性相互作用及び環状化合物(ヘテロ環)によるヘテロ原子間相互作用により高い膨潤抑制機能も同時に実現することができる。したがって、このような電解質膜を備える固体高分子形燃料電池は優れた電池特性を有する。
以下、本発明を適用した具体的な実施例について説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
[BT骨格を有する疎水性モノマーの合成]
下記反応式(1)の左辺に記載の原料をそれぞれ4.54g及び4.31gと、KPOを21.2g、Pd(OAc)を0.66g、SPhos(2-Dicyclohexylphosphino-2’,6’-dimethoxybiphenyl)を1.27g、をそれぞれ量りとり、ナスフラスコに入れた。Pdの被毒を防ぐために、ナスフラスコ内を空気からArに置換した。THF(tetrahydrofuran)173mlと水42mlをそれぞれ量りとり、ナスフラスコに加えて、一晩還流させた状態で反応させ、その後室温まで冷却した。反応溶液中に純水を加えてろ過を行い、KPOを除去し、加熱したクロロホルムを回収したろ物と混合し、生成物をクロロホルム中に溶かしてろ過を行った。ろ過した際のろ液をエバポレータにかけ、クロロホルム等の溶媒を蒸発させ、フラスコ内に残留した固体を80℃で真空乾燥した。回収した固体をアルミホイルの上にのせて、電気炉で真空状態にて昇華分離した。合成スキームを下記反応式(1)に示す。
図2(A)に、H−NMRにより目的物の同定を行った結果を示す。目的の化合物に各ピークを帰属することができた。また、回収した固体は、ヘテロ環特有の蛍光発色(青色)を示したことから、得られた化合物はBT骨格を有するモノマーであると判断した。
[BT骨格を有する親水性モノマーの合成]
合成したBT骨格を有する疎水性モノマー1.50gを電子天秤で量りとりナスフラスコに入れ、メスシリンダーで秤量した発煙硫酸100mlを加えた。これをオイルバスを用いて24時間還流し、反応終了後、室温まで冷却した。氷水の入ったビーカーにナスフラスコ内の溶液を移し、塩析、吸引濾過を経て生成物を回収した。この生成物を純水に溶解させ、溶液のpHが塩基性になるまでNaOH(s)を加え、再び塩析、吸引濾過を経て粗生成物を回収した。さらに、加熱しながら真空乾燥を行い、脱水した粗生成物をアルミホイルにのせ、電気炉にて真空状態で昇華を行った。合成スキームを下記反応式(2)に示す。
図2(B)に、H−NMRにより目的物の同定を行った結果を示す。H−NMRの結果、プロトンに関するスペクトルが3つ検出された。各スペクトルをChem DrawのNMR予想スペクトルを参考に帰属を行い、1分子中に4つのスルホン酸基が置換されているモノマーであることがわかった。生成物は蛍光発色(黄緑色)を示したことから、得られた化合物はBT骨格を有する親水性モノマーであると判断した。
(実施例2)
[TT骨格を有する疎水性モノマーの合成]
下記反応式(3)の左辺に記載の原料をそれぞれ3.64g及び15.0g、電子天秤で量りとりフラスコに入れ、DMF(dimethylformamide)330mlを加えた。これを、オイルバスを用いて3時間還流しながら反応させ、反応終了後、室温まで冷却した。これに純水を加え、DMF中に溶解している生成物を沈殿させ、沈殿物をろ過により回収し、回収した沈殿物は80℃で真空乾燥を行った。乾燥させた個体をアルミホイルの上に乗せ、真空状態で昇華精製し、昇華によって生成した個体を回収した。合成スキームを下記反応式(3)に示す。
図3(A)に、H−NMRにより目的物の同定を行った結果を示す。目的の化合物に各ピークを帰属することができ、またヘテロ環特有の蛍光発色(青色)を示したことから、得られた化合物はTT骨格を有するモノマーであると判断した。
[TT骨格を有する親水性モノマーの合成]
合成したTT骨格を有する疎水性モノマー3.00gを電子天秤で量りとりフラスコに入れ、メスシリンダーで秤量した発煙硫酸200mlを加えた。これをオイルバスを用いて24時間反応させ、反応終了後、室温まで冷却した。氷水の入ったビーカーにフラスコ内の溶液を移し、塩析、吸引濾過を経て生成物を回収した。この生成物を純水に溶解させ、溶液のpHが塩基性になるまでNaOH(s)を加え、再び塩析、吸引濾過を経て粗生成物を回収した。さらに、加熱しながら真空乾燥を行い、脱水した粗生成物をアルミホイルにのせ、電気炉にて真空状態で昇華を行った。合成スキームを下記反応式(4)に示す。
図3(B)に、H−NMRにより目的物の同定を行った結果を示す。H−NMRの結果、プロトンに関するスペクトルが3つ検出された。各スペクトルをChem DrawのNMR予想スペクトルを参考に帰属を行い、1分子中に2つのスルホン酸基が置換されていることがわかった。生成物は蛍光発色(青色)を示したことから、得られた化合物はTT骨格を有する親水性モノマーであると判断した。
(実施例3)
[BT骨格およびTT骨格の導入に伴う疎水性の変化]
ヘテロ環の導入に伴う分子の疎水性の変化を調べるため、実施例1で合成したBT骨格を有する親水性モノマーと、実施例2で合成したTT骨格を有する親水性モノマーの極性溶媒に対する溶解度を調べた。比較例として、スルホン化ポリエーテルスルホン(SPES)の親水部に用いる3,3’-disulfonated-4,4’-dichlorodiphenylsulfone(DSDCDPS)の溶解度を調べて比較を行った。
各試料を電子天秤で0.12g量りとり、試験管に加えた。マイクロピペットで溶媒を徐々に加えていき、撹拌後に試料が溶媒にすべて溶けた時の溶媒量を求めた。溶媒の種類としては、N,N-Dimethylformamide(DMF)、Dimethyl sulfoxide(DMSO)、水について調べた。
図4に、それぞれのモノマーの各種溶媒に対する溶解度を示す。図4より、ヘテロ環を導入したモノマーの溶解度は導入していないものに比べ、約1/10程度まで低下し、非常に高い疎水性を示すことがわかった。
(実施例4)
[BT骨格を有する疎水性オリゴマーの合成]
実施例1で合成したBT骨格を有する疎水性モノマー0.70gと、4,4’-Biphenildiolを0.47gと、炭酸カリウム0.29gを量りとりフラスコにセットした。フラスコ内を窒素雰囲気下にしたあと、DMAc(Dimethylacetamide)30mlを加え、110℃で2時間撹拌し、原料をDMAcに溶解させた。これにトルエン(超脱水)を加え、温度を155℃にセットし、共沸によってフラスコ内の水を取り除いた。トルエンの留出が終わったのを確認した後、温度を185℃に変更して24時間反応させた。反応終了後、室温に戻して精製を行い、薄層クロマトグラフィー(TLC)、H−NMR、MALDI−TOF−MSによる分析を行った。合成スキームを下記反応式(5)に示す。
図5(A)に、生成物の薄層クロマトグラフィー(TLC)の結果を、図5(B)に、生成物のH−NMRスペクトル図を示す。図5(A)の薄層クロマトグラフィー(TLC)の結果より、反応終了後、生成物からは原料が検出されなかった。また、図5(B)のH−NMRスペクトルについて帰属を行った結果、リピーティングユニットの部分については図5(B)の下段にあるスペクトル図のように帰属することができた。
また、図6(A)〜(D)に、生成物のMALDI−TOF−MSスペクトル図を示す。図6(B)、(C)より、n=4までの分子量のピークを明確に検出できた。図6(D)より、n=5、6のピークについては、n=4以下のピークに比べてはっきりと検出できなかった。この理由として、反応が進行すると物質が溶媒に溶けにくくなり、n=6まで反応が進まなかったことが挙げられる。また、測定はレーザーの照射によって物質をイオン化しているため、低分子量のほうが高分子量よりも相対的に多くなる傾向によるものであると考えられる。薄層クロマトグラフィー(TLC)で原料が検出されなかった結果を踏まえると、反応によって生成した疎水性オリゴマーの分子量はn=4まで疎水性オリゴマーが合成されたと推測される。
[BT骨格を有する親水性オリゴマーの合成]
実施例1で合成したBT骨格を有する親水性モノマー0.73gと、ヒドロキノンスルホン酸0.18g、及び炭酸カリウム0.28gを量りとりフラスコにセットした。フラスコ内を窒素雰囲気下にした後、DMSO(Dimethylsulfoxide)54mlを加え、135℃で2時間撹拌し、原料をDMSOに溶解させた。これにトルエン(超脱水)を加え、温度を155℃にセットし、共沸によってフラスコ内の水を取り除いた。トルエンの留出が終わったのを確認した後、温度を180℃に変更して24時間以上反応させた。反応の終了はHPLCのピークの移動で判断した。反応終了後、室温まで冷却して精製(透析、再沈殿等)を行い、H−NMRによる分析を行った。合成スキームを下記反応式(6)に示す。
図7に、生成物のH−NMRスペクトル図を示す。精製方法について比較を行った結果、塩析で得られた化合物については図7内の四角で囲った低磁場側においてピークが検出されなかった。一方、減圧蒸留によって得られた化合物については低磁場側でピークが検出された。この違いから考えられることは反応で得られる化合物の水への溶解性についてである。塩析で生成物を析出させる場合、通常溶液中に溶けている溶質は塩化ナトリウムよりも溶解度が小さいものであるため、ろ過を行った後残渣に目的の化合物が含まれているはずである。しかし、今回はその残渣のH−NMRスペクトルから重水以外のピークが検出されなかったことから、生成物はろ過後残渣ではなくろ液に存在していると考えられる。したがって、生成物は塩析では析出しない程度に水との親和性をもつものと考えられる。
図8に、生成物のH−NMRスペクトル図を示す。図8の積分強度に関して、(a):(b):(c)=1:0.46:0.56になった。一方、理論値はピークを大きく3つに分類して考えると(a):(b):(c)=2:1:1.2になると予想され、測定値と同程度の値となることがわかった。したがって、今回の合成では事前に予測した構造と近い構造をもつ化合物が生成していると考えられる。
(実施例5)
[BT骨格を有する疎水性マルチブロックポリマーの合成]
下記反応式(7)〜(9)に記載の原料(反応式(7)については、左の化合物から0.65g、3.73g、5.74g、及び炭酸カリウム4.15g、反応式(8)については、左の化合物から9.83g、4.10g、及び炭酸カリウム3.61g、反応式(9)については、上の化合物から0.65g、0.94g、及び炭酸カリウム0.06g)を量りとりフラスコに入れ、フラスコ内を窒素雰囲気下にしたあと、NMP(N-methylpyrrolidone)(反応式(7)は60ml、反応式(8)は90ml、反応式(9)は12ml)を加え、135℃で2時間撹拌し、原料をNMPに溶解させた。これにトルエン(超脱水)(反応式(7)は5.0ml、反応式(8)は50ml、反応式(9)は5.0ml)を加え、温度を155℃に設定し、共沸によってフラスコ内の水を取り除いた。トルエンの留出が終わったのを確認した後、温度を195℃に設定して24時間以上反応させた。反応の終了はHPLCのピークの移動で判断した。反応終了後、室温まで冷却し、精製(透析、再沈殿等)し、各種分析を行った。合成スキームを下記反応式(7)〜(9)に示す。
図9(A)〜(C)に、H−NMRにより目的物の同定を行った結果を示す。H−NMRの結果、得られたスペクトルはSPESのスペクトルに帰属することができた。また生成物について蛍光発色(青色)が確認されたことから、目的の化合物が生成していると判断した。
(実施例6)
[TT骨格を有する疎水性マルチブロックポリマーの合成]
下記反応式(10)〜(12)に記載の原料(反応式(10)については、左の化合物から0.66g、3.72g、5.74g、及び炭酸カリウム4.08g、反応式(11)については、左の化合物から9.83g、4.10g、及び炭酸カリウム3.61g、反応式(12)については、上の化合物から0.66g、0.94g、及び炭酸カリウム0.05g)を量りとりフラスコに入れ、フラスコ内を窒素雰囲気下にしたあと、NMP(N-methylpyrrolidone)(反応式(10)は70ml、反応式(11)は90ml、反応式(12)は12ml)を加え、135℃で2時間撹拌し、原料をNMPに溶解させた。これにトルエン(超脱水)(反応式(10)は5.0ml、反応式(11)は5.0ml、反応式(12)は5.0ml)を加え、温度を155℃に設定し、共沸によってフラスコ内の水を取り除いた。トルエンの留出が終わったのを確認した後、温度を195℃に設定して24時間以上反応させた。反応の終了はHPLCのピークの移動で判断した。反応終了後、室温まで冷却し、精製(透析、再沈殿等)し、各種分析を行った。合成スキームを下記反応式(10)〜(12)に示す。
図10(A)〜(C)に、H−NMRにより目的物の同定を行った結果を示す。H−NMRの結果、得られたスペクトルはSPESのものと似た傾向を示し、目的の生成物のピークの帰属することができた。また生成物について蛍光発色の有無を調べたところ、薄い青色の発色が確認された。SPESに近いH−NMRの結果とヘテロ環特有の蛍光発色を示したことから、得られた化合物はSPESを基本形として一部にヘテロ環を有する構造をもつ物質であると判断し、目的の化合物であると判断した。
また実施例5、6で得られた生成物はいずれも分取ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により1本のピークのみであることを確認したため、得られた生成物は単一の分子量をもつ化合物であると判断した。下の表1には高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で得られたピークについて分子量の分布をまとめた。
(実施例7)
[BT骨格を有するマルチブロックポリマーの製膜化とプロトン伝導度の測定]
プロトン伝導度を測定したBT骨格を有する疎水性マルチブロックポリマーと、SPESマルチブロックポリマー(比較例)のイオン交換容量 (IEC)を逆滴定により求めたものを表2に示す。
表2より、BT骨格を有する疎水性マルチブロックポリマーは、比較例のSPESマルチブロックポリマーに比べて、約1.35倍のイオン交換容量を有することが分かった。
(実施例8)
[BT骨格を有するマルチブロックポリマーの製膜化とプロトン伝導度の測定]
BT骨格を有するマルチブロックポリマーの粉末を0.5Mの硫酸水溶液中で2時間プロトン化を行い、RO水中で2時間洗浄し、80℃で24時間乾燥させた。その後、NMP(N-methylpyrrolidone)を用いて、10wt%のポリマー溶液を調製し、ポリマー溶液をガラス板に滴下し、ホットプレートで40℃、12時間加熱した後、80℃で2時間真空乾燥を行って溶媒を除去した。
作製したBT骨格を有する膜について、膜に電極をのせ、ガラスプレートで挟み、クリップで固定した。膜の幅は7mmで、長さは20mm程度の均一な厚さの膜を作製することができた。この膜についてプロトン伝導度の温度依存性を調べた。恒温槽の温度と相対湿度を設定し、交流インピーダンス法で測定した。比較のため、Nafion117とSPESのランダムポリマーについても同様にプロトン伝導度を測定した。さらに、これらの3種のポリマーについての測定結果からArrhenius plotを作製し、プロトン伝導の活性化エネルギーを求めた。
図11にプロトン伝導度の温度依存性についての結果を示す。図11から、BT骨格を含むマルチブロックポリマーのプロトン伝導度はNafion117と同等以上の性能を有することが示された。
また、図12には、Arrhenius plotの結果を示す。図12から、BT骨格を含むマルチブロックポリマーの活性化エネルギーEaはNafion117に比べ、約3.7kJ/mol低下していることがわかった。プロトン伝導性材料は、膜内のスルホン酸基の高密度化につれて、活性化エネルギーが低下する傾向が知られている。したがって、BT骨格はスルホン酸基の高密度集積化を促し、高いプロトン伝導性を有する構造の発現に有効な骨格である可能性が考えられる。
(実施例9)
[BT骨格又はTT骨格を有するマルチブロックポリマーの熱的安定性]
下記化学式(5)〜(7)で表されるBT骨格を有するマルチブロックポリマー、TT骨格を有するマルチブロックポリマー、及び比較例としてSPESのマルチブロックポリマーについて80℃、24時間真空乾燥した粉末試料を用いた。測定範囲を50〜800℃、昇温速度は10℃/minに設定し、温度に対する質量変化を測定した。
BT骨格を有するマルチブロックポリマー
TT骨格を有するマルチブロックポリマー
SPESのマルチブロックポリマー
図13にTT骨格とBT骨格を含む疎水性オリゴマーのTGAの測定結果を示す。図13から、温度に対する質量変化はヘテロ環の有無により大きく変化しないことがわかった。したがって、ヘテロ環の含有率が5%の場合、ヘテロ環の導入によって、分子の熱的安定性は変わらないことがわかった。
(実施例10)
[BT骨格を有する疎水性オリゴマーの溶液の色の変化]
BT骨格の有無による溶液の状態を比較した。BT骨格を含む疎水性オリゴマーとPES骨格の疎水性オリゴマーを極性溶媒のDMF(dimethylformamide)に溶かして、濃度[mol/l]による溶液の色の違いを調べた。
その結果を図14に示す。BT骨格を含まないPES骨格の溶液の色は濃度が変化しても色はほとんど変化しなかった(図14A)。一方、BT骨格を含む溶液は、濃度が濃くなると、溶液の色が黄色から黒へと劇的に変化することがわかった(図14B)。溶液の色の変化は、BT骨格により強い分子間相互作用が導入され、光の吸収波長領域が変わったことによるものと考えられる。以上の結果から、BT骨格では含有率が5%の場合、熱的安定性は変化しないものの、疎水性相互作用とは別の強い分子間相互作用は導入されていることが示唆された。
(実施例11)
[BT骨格を有する疎水性オリゴマーのH−NMRスペクトルの濃度依存性]
実施例10において、BT骨格を有する疎水性オリゴマーは濃度によって、溶液の色が劇的に変化することを確認したが、BT骨格を有する疎水性オリゴマーについて、濃度の異なる溶液についてH−NMRで分析を行い、検出されるピークのシフトの大きさを比較し、溶液中の分子状態の変化について調べた。
BT骨格を10%含む疎水性オリゴマーと、比較例としてBT骨格を含まない疎水性オリゴマーを用いた。溶液の濃度は2.0mMのものと10mMのものを調製した。溶媒には重溶媒のDMSO−dとDMF−dを用いた。各サンプルについてH−NMR測定を行った。
図15に、DMSO−d中でのH−NMRスペクトル図を示す。図15より、濃度が10mMのピークは2.0mMのピークよりも約0.05ppm高磁場側にシフトしていることが分かった。高磁場側へのシフトした理由として、溶液の高濃度化に伴い、電子的な遮蔽が強まったことが考えられ、これは溶液の色が比較例では2.0mM、10mMともに透明のまま変化しなかったのに対してBT骨格を10%含む疎水性オリゴマーでは、2.0mMの黄色から10mMの黒へと変化したことから推測される結果である。
また、図16に、DMF−d中でのH−NMRスペクトル図を示す。図16より、BT骨格の有無に関わらず、試料の高濃度化に伴い、ピークが高磁場側へシフトしていることが分かった。さらに、BT骨格を有するものは溶媒にDMSO−dを用いた時より、シフト幅が大きくなり、約0.1ppm高磁場側へシフトしていることが分かった。また、溶液の色は比較例では2.0mM、10mMともに透明のまま変化しなかったのに対してBT骨格を10%含む疎水性オリゴマーでは、2.0mMの黄色から10mMの黒へと変化した。これはBT骨格の導入によってプロトン周囲の遮蔽効果が導入前に比べ大きくなったことによるものが考えられる。S−S相互作用を示す物質が溶けた溶液濃度が2.0mMと10mMで約5倍異なると、検出されるピークは、約0.1ppm程度高磁場側へシフトすることが知られており、したがって、今回の確認されたピークシフトは、BT骨格によるS−N相互作用によって、溶液中の分子状態が変化したことによる可能性が考えられる。
(実施例12)
[BT骨格の導入に伴うマルチブロックポリマーの含水率の評価]
BT骨格を導入したマルチブロックポリマーと、比較例として導入していないSPESのマルチブロックポリマーの含水率を調べた。各試料を電子天秤で量りとり、80℃の熱水で24時間撹拌した。撹拌後、濾過により試料を回収し、直後に試料の重量を測定した。次に、10分後、再度重量を測定し、その後、48時間真空乾燥を行い、試料中の水を除去した後、再度重量を測定し、含水率を求めた。表3に、測定した各試料の重量とそれから求めた含水率の値を示す。
表3より、BT骨格を導入したマルチブロックポリマーの含水率はSPESのマルチブロックポリマーに比べて15%前後低いことがわかった。これはBT骨格由来のヘテロ原子間相互作用に基づいて、膜を構成する高分子鎖同士の結びつきが強くなり、膜内に水が浸潤しにくくなったことによるものと考えられる。

Claims (9)

  1. 親水性の繰り返し単位を有する親水部と、疎水性の繰り返し単位を有する疎水部とを有し、
    前記親水部及び/又は前記疎水部は、電気陰性度の高い元素と低い元素を有する環式化合物を含む繰り返し単位を有するプロトン伝導性材料。
  2. 前記環式化合物は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選ばれる1種以上の元素を含み、極性を有するヘテロ環である請求項1記載のプロトン伝導性材料。
  3. 前記環式化合物は、平面構造を有し、他の前記環式化合物と原子間相互作用する元素を有する請求項1又は2記載のプロトン伝導性材料。
  4. 前記環式化合物は、チアゾロチアゾール環又はベンゾチアジアゾール環である請求項1乃至3の何れか1項に記載のプロトン伝導性材料。
  5. 前記親水性の繰り返し単位は、1以上のスルホン酸基を有する請求項1乃至4の何れか1項に記載のプロトン伝導性材料。
  6. 前記親水性の繰り返し単位、前記疎水性の繰り返し単位、及び前記環式化合物を含む繰り返し単位により構成されるマルチブロックポリマーを含有する請求項1乃至5の何れか1項に記載のプロトン伝導性材料。
  7. 化学式(1)で表される前記疎水性の繰り返し単位と、化学式(2)で表される前記親水性の繰り返し単位と、化学式(3)で表される前記環式化合物を含む繰り返し単位を有する請求項1乃至6の何れか1項に記載のプロトン伝導性材料。
    (R=H又はSOHであり、少なくとも1つはSOHであり、残りはHである。)
    (R´=H又はSOHであり、各R´は各々異なっていてもよい。)
  8. 親水性の繰り返し単位を有する親水部と、疎水性の繰り返し単位を有する疎水部とを有し、
    前記親水部及び/又は前記疎水部は、電気陰性度の高い元素と低い元素を有する環式化合物を含む繰り返し単位を有する電解質膜。
  9. 少なくとも、アノードと、カソードと、電解質膜とを備え、
    前記電解質膜は、親水性の繰り返し単位を有する親水部と、疎水性の繰り返し単位を有する疎水部とを有し、
    前記親水部及び/又は前記疎水部は、電気陰性度の高い元素と低い元素を有する環式化合物を含む繰り返し単位を有する固体高分子形燃料電池。
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