以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
《第1実施形態》
図1は、本発明の実施形態に係る非接触給電システムの概要図である。非接触給電システムは、地上に設けられた非接触給電装置と、移動体である車両との間で、非接触で電力を供給するシステムである。非接触給電システムは、地上に設けられる送電側のユニットと、車両に設けられる受電側のユニットにより構成されている。
送電側のユニットは、系統電源1、高周波電源部2、共振回路3、送電コイル10、及び中継コイル20を備えている。なお、図1では、中継コイル20は図示されていない。
系統電源1は家庭用の交流電源である。高周波電源部2は、系統電源1から出力される交流電力を高周波の交流電力に変換する装置である。高周波電源部2は、コンバータ2a、整流回路2b、及びインバータ2cを有している。コンバータ2aは、系統電源1から出力された交流を直流に変換し、変換された直流電圧を昇圧する。整流回路2bは、コンバータ2aから出力された電圧を整流しつつ、整流された電圧をインバータ2cに出力する。インバータ2cは、整流回路2bにより整流された直流の電力を、高周波の交流電力に変換して、共振回路3に出力する。これにより、高周波電源部2は、数10k〜数100kHzの交流電力を発生し、当該交流電力を共振回路3に出力する。
共振回路3は、送電コイル10の電流を増幅させるために、送電コイル10と共に、電流を共振させる回路を形成する。共振回路3は、例えば、一対の電源ラインの間に接続されたコンデンサと、送電コイル10により、LC共振回路を形成する。なお、共振回路3の回路構成は、LC回路に限らず他の共振回路でもよい。
送電コイル10は、共振回路3を介して交流電源に接続されている。当該交流電源は、系統電源1及び高周波電源部2に相当する。送電コイル10は、コイル面が車両の駐車スペースの地面と平行になるように、駐車スペースに設けられている。また、送電コイル10は、受電コイル30との磁気的な作用により、受電コイル30に対して非接触で電力を供給するためのコイルである。本実施形態では、磁気的な作用として、コイル間の磁気的な共鳴(コイル間の共振現象)を利用して、非接触で電力を供給する。また後述するように、送電コイル10は、中継コイル20を介して受電コイル30に対して電力を非接触で送る。中継コイル20の具体的構成は後述する。
次に、受電側のユニットを説明する。受電側のユニットは、受電コイル30、共振回路4、整流コンバータ5、平滑コンデンサ6、スイッチ7、及びバッテリ8を備えている。
受電コイル30は、送電コイル10から送られる電力を受電するためのコイルである。受電コイル30は、コイル面が車両のシャシに沿うように、車両のシャシの下部に設けられている。
共振回路4は、受電コイル30と共に共振させる回路である。共振回路4は、例えば、一対の電源ラインの間に接続されたコンデンサと、受電コイル30により、LC共振回路を形成する。なお、共振回路4の回路構成は、LC回路に限らず他の共振回路でもよい。
整流コンバータ5は、共振回路4から出力される交流電力を直流電力に整流するための回路である。整流コンバータ5は、複数のダイオードをブリッジ状に接続された回路である。平滑コンデンサ6は、整流コンバータ5から出力された電圧を平滑する素子である。スイッチ7は、平滑コンデンサ6とバッテリ8との間に接続されている。
バッテリ8は、非接触給電システムにおける負荷である。図1の例では、非接触給電システムを、車載バッテリの充電システムとして用いているため、負荷としてバッテリ8が接続されている。なお、負荷はバッテリ8に限らず、例えば走行中の車両に対して電力を供給する場合には、負荷はモータであってもよい。
共振回路3の共振周波数は、共振回路4の共振周波数と一致又は近傍になるように、設計されている。また高周波電源部2の駆動周波数は、共振回路3、4の共振周波数と一致又は近傍になるように設計されている。送電コイル10及び受電コイル30の相互インダクタンスは、コイルの共振現象により電力を送電できるように、設計されている。
次に、送電コイル10、中継コイル20、及び受電コイル30の構成を、図2及び図3を用いて説明する。図2は、送電コイル10、中継コイル20、及び受電コイル30の斜視図を示し、図3(a)は送電コイル10、中継コイル20、及び受電コイル30の正面図を示し、図3(b)は送電コイル10、中継コイル20、及び受電コイル30の側面図を示し、図3(c)は送電コイル10及び中継コイル20の平面図を示す。
送電コイル10は、コイル面が矩形状になるように形成されている。送電コイル10は、単一のループ上のコイルである。送電コイル10を形成する辺のうち、X方向に沿う辺の長さは、Y方向に沿う辺よりも長く、X方向が送電コイル10の長手方向となる。また、XY平面は、駐車スペースの地表面と平行な面である。
中継コイル20は、複数のコイル21〜26を有している。複数のコイル21〜26は、それぞれ単一のループ上のコイルであって、それぞれ独立したコイルである。また複数のコイル21〜26は、それぞれのコイル面が矩形状になるように形成されている。コイル21を形成する辺のうち、Y方向に沿う辺の長さは、X方向に沿う辺の長さより長く、コイル21のY方向に沿う辺の長さは送電コイル10のY方向に沿う辺の長さと等しい。複数のコイル22〜26の形状は、コイル21と同様である。コイル21のY方向に沿う一辺は、送電コイル10のY方向に沿う一辺の上に配置されている。複数のコイル21〜26は、互いに一定の間隔(D)を空けつつ、送電コイル10上で、X方向に沿って並べられている。
複数のコイル21〜26は、送電コイル10と絶縁された状態で、送電コイル10のコイル面に沿うように配置されている。送電コイル10は、共振回路3等を介して系統電源1に接続されている。中継コイル20は共振回路3に接続されておらず、系統電源1にも接続されていない。これにより、送電コイル10と中継コイル20との間は、直流的に絶縁されている。なお、中継コイル20を構成するコイルの数は、6個に限らず、2〜5個でもよく、7個以上であってもよい。
コイル21〜26の自己インダクタンスはそれぞれ等しくなるように設計されている。
また送電コイル10と複数のコイル21〜26との間のそれぞれのインダクタンスは一定である。送電コイル10とコイル21〜26との間の相互インダクタンス(M)は、M=κ×√(Lp×Lj)で表される。なお、κは送電コイル10と複数のコイル21〜26との間の結合係数を示し、Lpは送電コイル10の自己インダクタンス、Ljは複数のコイル21〜26のそれぞれの自己インダクタンスを示す。そして、送電コイル10とコイル21〜26との間のそれぞれの相互インダクタンス(M1〜M6)がそれぞれ一定値で等しくなるように、各コイルの配置、コイルの大きさ、及びコイルの形状等が、設計段階で調整されている。なお、M1は送電コイル10とコイル21との間の相互インダクタンスを表し、M2〜M6は、コイル22からコイル26と、送電コイル10との間のそれぞれの相互インダクタンスを表している。
受電コイル30は、コイル面が矩形状になるように形成されている。受電コイル30は、単一のループ上のコイルである。受電コイル30を形成する辺のうち、Y方向に沿う辺の長さは、送電コイル10及び中継コイル20のY方向に沿う辺の長さと等しい。また、受電コイル30のX方向に沿う辺の長さは、送電コイル10のX方向に沿う辺の長さより短く、コイル21のX方向に沿う辺の長さより長い。
また、コイル21〜26のX方向の長さLjとし、受電コイル30のX方向の長さをLsとした場合に、各長さ(Lj、Ls)と複数のコイル21〜26の間隔(D)との間には、下記式(1)を満たす。
送電コイル10、中継コイル20、及び受電コイル30は上記の式(1)を満たすように設計されている。
送電コイル10と受電コイル30との間のZ方向には、隙間(GAP:高さ方向の間隔)が空けられている。なお、以下では送電コイル10と受電コイル30との間の隙間をGとも称している。送電側ユニットが設けられている地上の高さと、受電側ユニットが設けられているシャシの高さの違いにより、隙間(G)が生じる。
図4に、送電コイル10、中継コイル20、及び受電コイル30のサイズを示す。図4において「X」はX方向に沿う辺の長さを示し、「Y」はY方向に沿う辺の長さを示す。「GAP」は送電コイル10と受電コイル30との間の隙間(G)の長さを示す。図4に示す「中継コイル」は、コイル21の大きさを示しており、「間隔」はコイル21とコイル22との間の間隔(D)である。コイル22〜26のサイズは、コイル21のサイズと同じであり、コイル22〜26のそれぞれの間隔は、コイル21とコイル22との間の間隔(D)と同じである。なお、各コイルのサイズは、図4に限らず他のサイズでもよい。
次に、送電コイル10から受電コイル30への電力供給について、図5を用いて説明する。図5に、本実施形態に係る非接触給電システムの等価回路を示す。送電部100は、非接触給電システムの1次側の構成(送電側のユニット)に対応し、受電部200は、非接触給電システムの2次側の構成(受電側のユニット)に対応する。なお、図5において、系統電源1、共振回路3、整流コンバータ5、平滑コンデンサ6、及びスイッチ7の図示を省略している。また図5において、共振回路4は、受電コイル30に対してコンデンサを直列に接続しているが、共振回路4は、受電コイル30のインダクタンスと共振させることができれば、受電コイル30に対してコンデンサを並列に接続してもよい。
上記のとおり、複数のコイル21〜26のコイル面は、送電コイル10のコイル面と重なっており、送電コイル10と複数のコイル21〜26との間の相互インピーダンスは一定である。高周波電源部2から高周波の交流が送電コイル10に流れると、送電コイル10と中継コイル20との間は磁気結合が生じ、送電コイル10からコイル21〜26に印加される電圧は一定になる。このような状態で、受電コイル30が、複数のコイル21〜26のうち一部のコイル21〜26と対向すると、対向するコイル21〜26と受電コイル30との間が磁気的に結合する。中継コイル20と受電コイル30と間の結合係数は、受電コイル30と対向するコイル21〜26の部分で大きくなり、受電コイル30と対向しないコイル21〜26の部分で小さくなる。中継コイル20から2次側をみたときに、受電コイル30と対向するコイル21〜26のインピーダンスは、受電コイル30と対向しないコイル21〜26のインピーダンスよりも低くなる。そのため、送電コイル10の電流は、受電コイル30と対向するコイル21〜26に流れる。そして、当該対向するコイル21〜26と受電コイル30との間の磁気結合により、電力が当該対向するコイル21〜26から受電コイル30に供給される。これにより、送電コイル10は中継コイル20を介して、受電コイル30に対して非接触で電力を送る。
次に、上記の式(1)で示される各コイルのX方向の長さについて、図6〜図9を用いて説明する。受電コイル30のX方向の長さは500(mm)とし、中継コイル20及び受電コイル30のY方向の各長さは等しいとする。図6〜図9において、中継コイル20に含まれる各コイルのX方向の長さが変わっており、(a)は中継コイル20及び受電コイル30の側面図を示し、(b)は結合係数の推移を示している。結合係数は、中継コイル20と受電コイル30との間の結合係数である。また結合係数の推移は、受電コイル30がX方向に移動したときの推移を示している。なお、図6(b)〜図9(b)の横軸に示す「コイル位置」について、「コイル位置(0)」は、X方向に移動する受電コイル30がコイル21と対向する直前の状態を示しており、各図6(a)〜図9(a)に示す状態を示す。そして、受電コイル30が、図6(a)〜図9(a)に示す状態からX方向に移動すると、コイル位置の値が大きくなる。また、図6(b)〜図9(b)に示す結合係数の推移は、説明を容易にするために、コイル21〜26の間隔(D)は考慮していない。
図6の例では、コイル21及びコイル22のX方向の長さは、受電コイル30のX方向の長さと等しい。図6(b)に示すコイル1のグラフは、コイル21と受電コイル30との間の結合係数を示し、コイル2のグラフはコイル22と受電コイル30との間の結合係数を示す。
図6に示すように、受電コイル30がコイル21と対向する直前の状態から、受電コイル30がX方向に移動すると、コイル21と受電コイル30との間の結合係数が上昇する。受電コイル30が、図6(a)に示す位置から500mm移動すると、X方向へのコイル間の位置ずれがない状態で、受電コイル30はコイル21と対向する。このとき、受電コイル30とコイル21との間の結合係数は最大値となる。さらに、受電コイル30がX方向へ移動すると、受電コイル30とコイル21との間の結合係数は下がる。
すなわち、コイル21、22のX方向の長さと受電コイル30が等しい場合には、受電コイル30とコイル21、22との間の結合係数が、各コイル21、22に対してコイル位置の一点で最大値をとる。そのため、受電コイル30のX方向への移動に対して、中継コイル20の反応区間が狭くなってしまう。中継コイル20の反応区間は、中継コイル20が受電コイル30と磁気的に結合し、中継コイル20が受電コイル30に十分な電力を供給できる区間である。
図7の例では、コイル21〜23のX方向の長さは、受電コイル30のX方向の長さの80%としている。図7のコイル1〜3のグラフは、コイル21〜23と受電コイル30との間のそれぞれの結合係数を示す。
図7の例では、受電コイル30が図7(a)に示す位置からX方向に移動し、受電コイル30とコイル21との間の結合係数は最大値となる。さらに、受電コイル30がX方向に移動した場合に、受電コイル30とコイル21との間の結合係数は最大値を維持する。
すなわち、コイル21〜23のX方向の長さが受電コイル30のX方向の長さよりも短くすることで、中継コイル20の反応区間が、図6の場合と比較して長くなる。そのため、本実施形態では、式(1)に示すように、中継コイル20の長さは受電コイル30の長さ以下としている。
図8の例では、コイル21〜25のX方向の長さは、受電コイル30のX方向の長さの50%としている。図8のコイル1〜5のグラフは、コイル21〜25と受電コイル30との間のそれぞれの結合係数を示す。
図8の例では、受電コイル30が図8(a)に示す位置からX方向に移動し、受電コイル30とコイル21との間の結合係数は最大値となる。受電コイル30がX方向にさらに移動すると、受電コイル30とコイル21との間の結合係数は最大値で維持する。受電コイル30がX方向にさらに移動し、受電コイル30とコイル21との間の結合係数が下がり始めたときに、受電コイル30とコイル22との間の結合係数が最大値となる。受電コイル30がX方向にさらに移動すると、受電コイル30とコイル22との間の結合係数は最大値で維持する。
そのため、受電コイル30と結合するコイル21〜25が、受電コイル30のX方向への移動に対して、スムーズに切り替わる。また、中継コイル20の反応区間が、受電コイル30のX方向への移動に対して、連続した状態となる(図8(b)を参照)。
図9の例では、コイル21〜27のX方向の長さは、受電コイル30のX方向の長さの50%未満としている。図9のコイル1〜7のグラフは、コイル21〜27と受電コイル30との間のそれぞれの結合係数を示す。なお、本実施形態において、中継コイル20は6個のコイル21〜26で構成されているが、図9の例では説明の関係で、中継コイル20は7個のコイル21〜27で構成されていると仮定する。
図9の例では、受電コイル30が図9(a)に示す位置からX方向に移動し、まず、受電コイル30とコイル21との間の結合係数は最大値となる。受電コイル30がX方向にさらに移動すると、受電コイル30とコイル21との間の結合係数が最大値から下がる前に、受電コイル30とコイル22との間の結合係数が最大値となる。受電コイル30がX方向にさらに移動すると、受電コイル30とコイル21、22との間の各結合係数が最大値から下がる前に、受電コイル30とコイル23との間の結合係数も最大値となる。
すなわち、中継コイル20の反応区間が、隣り合うコイル21〜27間で重複するため、受電コイル30と結合するコイル21〜27が、受電コイル30のX方向への移動に対して、スムーズに切り替わらない。ゆえに、中継コイル20の長さは受電コイル30の長さの半分以上にすることで、受電コイル30のX方向への移動に対して、中継コイル20を構成するコイル21〜26がスムーズに切り替わる。
さらに、図8、9では、複数のコイル21〜26間の間隔(D)を省略したが、間隔(D)を含めると、中継コイル20の長さ(Lj)の適した範囲は、(Ls−D)/2≦Ljとなる。ゆえに、本実施形態では、式(1)に示すように、中継コイル20の長さ(Lj)は、長さ[(Ls−D)/2]以上としている。
次に、図4の表のように、送電コイル10、中継コイル20、及び受電コイル30を設計した場合において、受電コイル30の位置と結合係数との関係を説明する。図10(a)〜(c)は送電コイル10、中継コイル20、及び受電コイル30の側面図を示す。図10(a)の例では、受電コイル30がコイル23、24と対向し、コイル21、22、25、26と対向しない。このときのコイル位置を0mmとする。図10(b)では、受電コイル30は、コイル24と対向し、コイル25の一部と対向し、コイル23と対向しない。また図10(b)では、受電コイル30が、図10(a)のコイル位置に対して、X方向に50mmずれている。図10(c)では、受電コイル30は、コイル24、25と対向し、コイル23と対向しない。また図10(c)では、受電コイル30が、図10(a)のコイル位置に対して、X方向に75mmずれている。
図11〜図13は、図10(a)〜(c)の各状態における結合係数と自己インダクタンスを示している。図11〜図13において、No.Pは送電コイル10を表し、No.1〜No.6はコイル21〜26を表し、No.Sは受電コイル30を表す。
また、図11〜13の表の見方を説明する。No.PとNo.Pに対応する枠内の数字(μHの単位を付した数字)は送電コイル10の自己インダクタンスを示しており、No.1とNo.1に対応する枠内の数字はコイル21の自己インダクタンスを示す。No.2〜6及びNo.Sについても同様である。また、No.PとNo.1に対応する枠内の数字(単位が付されていない数字)は送電コイル10とコイル21との間の結合係数を示す。例えば、図11において、No.2とNo.3に対応する枠内の数字は0.034となっており、コイル22とコイル23との間の結合係数が0.034であることを示す。他のNo.についても同様である。
コイル21〜26と受電コイル30との結合に着目すると、図11に示すように、受電コイル30がコイル23、24と対向する場合には、No.3とNo.Sに対応する枠内の数字、及び、No.4とNo.Sに対応する枠内の数字が0.169となっており、最も高い。
また図12に示すように、受電コイル30がコイル24と対向し、受電コイル30がコイル25の一部と対向する場合には、No.4とNo.Sに対応する枠内の数字が0.176となっており最も高い。また、No.5とNo.Sに対応する枠内の数字も、他のコイル21〜23、26の結合と比較して高くなっている。
また図13に示すように、受電コイル30がコイル25、26と対向する場合には、No.4とNo.Sに対応する枠内の数字、及び、No.5とNo.Sに対応する枠内の数字が0.169となっており、最も高い。
さらに、図10(a)〜(c)に示す各コイルの位置関係に対して、駆動周波数と電流ゲインとの関係を図14に示す。駆動周波数は、高周波電源部2の駆動周波数である。電流ゲインは中継コイル20に流れる電流のゲインを示している。なお、電流ゲインは、中継コイル20から2次側をみたときのアドミッタンスで表している。また、図14(a)のグラフは、図10(a)に示す各コイルの位置関係におけるゲイン特性を示し、図14(b)、(c)のグラフは、図10(b)、(c)に示す各コイルの位置関係におけるゲイン特性を示している。
各コイルの位置関係が図10(a)に示す状態のときに、駆動周波数が20kHzに設定された場合には、図14(a)に示すように、全てのコイル21〜26の電流ゲインが低くなっている。一方、駆動周波数が21kHzに設定された場合には、コイル23、24の電流ゲインは、他のコイル21、22、25、26の電流ゲインと比較して高くなっている。すなわち、中継コイル20のうち、コイル23、24の電流ゲインが他のコイルの電流ゲインよりも高くなるように、駆動周波数を設定する。そして、高周波電源部2が設定された駆動周波数で駆動することで、受電コイル30と対向するコイル23、24から、強い磁界が発生する。
各コイルの位置関係が図10(b)及び図10(c)に示す状態のときも同様に、中継コイル20のうち、受電コイル20と対向するコイルの電流ゲインが、他のコイルの電流ゲインよりも高くなるように、駆動周波数を設定する。高周波電源部2は、設定された駆動周波数で駆動する。
本実施形態では、受電コイル30が中継コイル20上を移動する際に、受電コイル30と対向するコイル21〜26の電流ゲインが高くなるように、駆動周波数を一定の周波数で設定する。例えば、図14の例では、駆動周波数が21kHzの近傍の値に設定されれば、受電コイル30の位置に対して、受電コイル30と対向するコイル21〜26の電流ゲインが高くなる。
図4に示す表のように、送電コイル10、中継コイル20、及び受電コイル30を設計した場合に、受電コイル30の位置に対する各コイルの電流値の特性を図15に示す。図15の横軸に示されるNo.S、No.P、No.1〜6は、図11〜13と同様である。また縦軸の電流は各コイルに流れる電流である。図15のグラフ「0mm位置」は、受電コイル30の位置ズレが0mmであり、図10(a)に相当する。またグラフ「50mm位置」、「75mm位置」は、受電コイル30の位置ズレが50mm及び75mmであり、図10(b)及び図10(c)にそれぞれ相当する。なお、高周波電源部2の駆動周波数は一定の周波数であり、高周波電源部2の出力電圧は一定とする。
図15に示すように、受電コイル30の位置が、送電コイル10上でX方向にずれたとしても、受電コイル30の位置に合うように、電流を流すコイル21〜26が切り替わる。そのため、受電コイル30を流れる電流はほぼ一定に保たれる。すなわち、本実施形態では、スイッチ等を用いて送電側の複数のコイルを切り替えるような制御を行うことなく、受電コイル30の位置に合わせて磁界を発生させるコイル21〜26を切り替えることができる。
上記のように、本実施形態では、送電コイル10と複数のコイル21〜26との間のそれぞれ相互インダクタンスを一定にし、かつ、送電コイル10と絶縁された状態で、送電コイル10のコイル面に沿うように複数のコイル21〜26を配置する。そして、コイル21〜26を介して、送電コイル10から受電コイル30に非接触で電力を供給する。これにより、受電コイル30の位置に応じて、磁束を発生させるコイル21〜26を切り替える切替制御を実行できる。また、受電コイル30の位置検出用のセンサ、又は、送電側のコイルを切り替えるためのスイッチを設けることなく、当該切替制御を実行できる。その結果として、コストを抑制することができる。
図16及び図17を用いて、本実施形態に係る非接触給電システムの車両への適用例を示す。非接触給電システムは、走行中の車両にも、駐車中の車両にも適用可能である。図16は非接触給電システムを走行中の車両に適用した場合の概念図を示し、図17は非接触給電システムを駐車中の車両に適用した場合の概念図を示す。
図16において、AC電源500は、送電部100のうち、コイル以外の構成を含んでいる。車両300のシャシの中央部分には、受電コイル30が設けられている。なお、受電コイル30の図示は省略している。
車両300は、送電コイル10の長手方向を進行方向にして走行する。そして、図16に示す状態では、受電コイル30がコイル23に対向するため、コイル23で強い磁界が発生する。
図17(a)及び図17(b)は、非接触給電装置を備えた駐車スペースに、車両が駐車している状態を示している。図17(a)の例では、車両300は所定の駐車スペースの中央部分に駐車している。一方、図17(b)の例では、車両300は、所定の駐車スペースにおいて、中央部分よりもX方向にずれて駐車している。
送電コイル10の長手方向はX方向となり、車両300の進行方向はY方向となる。すなわち、送電コイル10の長手方向と車両300の進行方向は直交している。図17(a)に示す状態では、受電コイル30はコイル23、24に対向するため、コイル23、34で強い磁界が発生する。一方、図17(b)では、受電コイル30の位置がX方向にずれることで、受電コイル30はコイル24、25に対向するため、コイル25、36で強い磁界が発生する。これにより、本実施形態では、車両300の駐車位置がX方向にずれたとしても、磁界を発生させるコイル21〜26を切り替えることができる。
上記の中継コイル20及びコイル21〜26が本発明の「中継コイル」に相当する。
《第2実施形態》
本発明の他の実施形態に係る非接触給電システムを説明する。本実施形態では、上述した第1実施形態に対して、中継コイルの形状及び送電側の制御の一部が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、その記載を援用する。
図18は、送電コイル10、中継コイル20、及び受電コイル30の斜視図を示し、図19(a)は送電コイル10、中継コイル20、及び受電コイル30の正面図を示し、図19(b)は送電コイル10、中継コイル20、及び受電コイル30の側面図を示し、図19(c)は送電コイル10及び中継コイル20の平面図を示す。
送電コイル10及び受電コイル30の形状は、第1実施形態と同様である。中継コイル20は、複数のコイル21〜23を有している。コイル21〜23のX方向の長さが、第1実施形態に係るコイル21〜26の長さよりも長くなっている。コイル21〜23のX方向の長さは、第1実施形態に係るコイル21〜26の長さと同じである。またコイル21〜コイル23のX方向の長さは、Y方向の長さと同じである。各コイル21〜23の間隔(D)は、第1実施形態に係る各コイル21〜26の間隔よりも広くなっている。
図20に、送電コイル10、中継コイル20、及び受電コイル30のサイズを示す。なお、図20の「X」等の表記は、図4の表記と同様である。なお、各コイルのサイズは、図20に示すサイズに限らず他のサイズでもよい。
次に、送電部100の制御について、図21を用いて説明する。図21は本実施形態に係る非接触給電システムの等価回路を示す。受電部200の構成は、第1実施形態と同様である。送電部100は、高周波電源部2等に加えて、電流センサ9及びコントローラ400を備えている。なお、図21と同様に、系統電源1等の構成の図示は省略している。
電流センサ9は送電コイル10に流れる電流を測定するためのセンサである。電流センサ9は測定して電流測定値をコントローラ400に出力する。
コントローラ400は、高周波電源部2から送電コイル10に出力される電力を制御するためのコントローラである。コントローラ400は、送電コイル10に流れる電流が電流指令値と一致するように、高周波電源部2の出力電圧を制御している。コントローラ400は比較器401と電圧指令値402とを有している。比較器401は、電流測定値と電流指令値とを比較する。電流指令値は、送電コイル10に対して所定の電流値を流すための指令値であって、例えば受電側のバッテリ8に要求される電力に応じて決まる値である。本実施形態では、電流指令値を一定値とする。比較器401は、電流測定値と電流指令値との差分を電圧演算器402に出力する。
電圧演算器402は、差分に基づいて、送電コイル10の電流が電圧指令値と一致するように電圧指令値を演算する。電圧指令値は、高周波電源部2の出力電圧の指令値である。そして、電圧演算器402は電圧指令値を高周波電源部2に出力する。高周波電源部2は、出力電圧が電圧指令値と一致するように駆動する。
次に、図20に示す表のように、送電コイル10、中継コイル20、及び受電コイル30を設計した場合において、受電コイル30の位置と結合係数との関係を説明する。図22(a)〜(c)は送電コイル10、中継コイル20、及び受電コイル30の側面図を示す。図22(a)の例では、受電コイル30はコイル23、に対向し、コイル21、23と対向しない。このときのコイル位置を0mmとする。図22(b)では、受電コイル30は、コイル22の位置及びコイル23の一部と対向し、コイル21と対向しない。また図22(b)では、受電コイル30が、図22(a)のコイル位置に対してX方向に90mmずれている。図22(c)では、受電コイル30は、コイル23と対向し、コイル21、22と対向しない。また図22(c)では、受電コイル30が、図22(a)のコイル位置に対してX方向に185mmずれている。
図23〜図25は、図22(a)〜(c)の各状態における結合係数と自己インダクタンス示している。図23〜図25において、No.Pは送電コイル10を表し、No.1〜No.3はコイル21〜23を表し、No.Sは受電コイル30を表す。なお、図23〜図25の表の見方は、図11〜13の表の見方と同様である。
コイル21〜23と受電コイル30との結合に着目すると、図23に示すように、受電コイル30がコイル22と対向する場合には、No.2とNo.Sに対応する枠内の数字(結合係数)が0.169となっており、最も高い。また図25に示すように、受電コイル30がコイル23と対向する場合には、No.3とNo.Sに対応する枠内の数字(結合係数)が0.169となっており、最も高い。
図24に示すように、受電コイル30がコイル22の一部及びコイル23の一部と対向する場合には、No.2とNo.Sに対応する枠内の数字(結合係数)とNo.3とNo.Sに対応する枠内の数字(結合係数)が少し高くなっているが、図23及び図25に示した最大の結合係数と比較すると、結合係数は低い。
さらに、図22(a)に示すコイルの位置関係に対して、駆動周波数と電流ゲインとの関係を図26に示す。駆動周波数は、高周波電源部2の駆動周波数である。電流ゲインは中継コイル20に流れる電流のゲインを示している。電流ゲインは、図14と同様にアドミッタンスで表している。
図26に示すように、駆動周波数が所定の周波数帯域内に設定されることで、コイル22の電流ゲインが他のコイル21、23の電流ゲインよりも高くなる。そのため、本実施形態は、受電コイル30がコイル23と対向した状態で、コイル22の電流ゲインが他のコイル21、23の電流ゲインよりも高くなるように、駆動周波数を設定する。図26の例では、駆動周波数は21.8kHzに設定される。
そして、コントローラ400は、設定した駆動周波数で高周波電源部2を駆動させた状態で、受電側からの要求電力が受電コイル30で発生するように、給電コイルの電流を設定する。また、コントローラ400は、受電コイル30の位置によらず、給電コイルの電流が設定値で保たれるように、電流指令値を一定にした状態で、高周波電源部2の出力電圧を制御する。
次に、図20に示す表のように、送電コイル10、中継コイル20、及び受電コイル30を設計した場合に、受電コイル30の位置に対する各コイルの電流値の特性を図27に示す。図27の「No.P」等の表記は、図23〜25と同様である。また、図27のグラフ「0mm位置」は、受電コイル30のコイル位置が0mmであり、図22(a)に相当する。またグラフ「90mm位置」、「185mm位置」は、受電コイル30のコイル位置が90mm及び185mmであり、図22(b)及び図22(c)にそれぞれ相当する。
図27(a)では、上記のコントローラ400のような制御を行わず、高周波電源部2の出力電圧が一定になるように制御した場合の特性である。一方、図27(b)では、上記のコントローラ400のような制御を行った場合の特性である。
受電コイルのコイル位置が90mmのときは、中継コイル20と受電コイル30との結合が悪く、図24に示すように、コイル22、23と受電コイル30との間の結合係数が少し高くなる程度である。そして、出力電圧が一定に保たれると、図27(a)に示すように、各コイル21〜23の電流が大きくなる。そして、各コイル21〜23の電流増加は損失の増加となる。
一方、本実施形態では、受電コイル30の位置ズレが0mmから90mmになり、中継コイル20と受電コイル30との結合が悪くなると、送電コイル10から中継コイル20に送られる電力が減る分、送電コイル10の電流が大きくなる。送電コイル10の電流が大きくなると、コントローラ400は、コイル10の電流を電流指令値と一致させるように、高周波電源部2の出力電圧を下げる。そして、結果的には、送電コイル10の電流は一定値で推移する。そのため、本実施形態では、受電コイル30の位置がずれた場合でも、各コイル21〜23の電流が大きくならない。
本実施形態では、給電コイルに流れる電流を一定にするように、高周波電源部2から送電コイル10に出力される電圧を制御している。これにより、受電コイル30の位置ずれによらず、中継コイル20の電流増加を抑制することができる。その結果として、損失を低減することが可能となる。
上記のコントローラ400が本発明の「制御部」に相当する。
《第3実施形態》
本発明の他の実施形態に係る非接触給電システムを説明する。本実施形態では、上述した第2実施形態に対して、送電コイルの形状が異なる。これ以外の構成は上述した第2実施形態と同じであり、第1実施形態及び第2実施形態の記載を適宜、援用する。
図28は、送電コイル10、中継コイル20、及び受電コイル30の斜視図を示し、図29(a)は送電コイル10、中継コイル20、及び受電コイル30の正面図を示し、図29(b)は送電コイル10、中継コイル20、及び受電コイル30の側面図を示し、図29(c)は送電コイル10及び中継コイル20の平面図を示す。
中継コイル20及び受電コイル30の形状は、第2実施形態と同様である。送電コイル10は、コイル部11、13、15と、交差部12、14を有している。コイル部11、13、15は、矩形状のコイル面を形成するためのコイル線であって、矩形を形成する4辺のうち、2辺又は3辺の部分を形成している。コイル部11、15は、3辺に相当する位置からコイル面を囲っている。コイル部13は、平行な2辺に相当する位置からコイル面を囲っている。
交差部12は、コイル線を交差させつつ、コイル部11とコイル部13との間を接続している。交差部14は、コイル線を交差させつつ、コイル部13とコイル部15との間を接続している。そして、送電コイル10の3つコイル面のうち、1つ目のコイル面はコイル部11と交差部12により囲まれており、2つ目のコイル面はコイル部13と交差部12、14により囲まれており、3つ目のコイル面はコイル部15と交差部14により囲まれている。そして、3つのコイル面の大きさは、コイル21〜23の大きさと等しい。なお、交差部12、14を形成する分、送電コイル10の各コイル面の大きさは、交差部12、14を形成する分、コイル21〜23の大きさより大きくなってもよい。
図30及び図31を用いて、送電コイル10と中継コイル20との間の鎖交磁束を説明する。図30(a)は第2実施形態に係る送電コイル10と中継コイル20の斜視図を示す。図30(b)は本実施形態に係る送電コイル10と中継コイル20の斜視図を示す。図30において、矢印は鎖交磁束を表している。
図31は、受電コイル30の位置に対する各コイルの電流値の特性を示す。図31(a)は図30(a)に示すコイルの電流特性を示し、図31(b)は図30(b)に示すコイルの電流特性を示す。なお、図30の「No.P」等の表記は、図27と同様である。また、グラフの「0mm位置」、「185mm位置」は、図22の(a)(c)に相当する。
受電コイル30の位置が、「0mm位置」から「185mm位置」にずれた場合に、受電コイル30に流れる電流の変化量(ΔI1、ΔI2)をみると、本実施形態における変化量(ΔI2)は、第2実施形態における(ΔI1)よりも小さくなっている。すなわち、送電コイル10を図30(a)に示すような形状にすることで、受電コイル30の位置に対して、受電コイル30の電流の変動を抑制できる。
《第4実施形態》
本発明の他の実施形態に係る非接触給電システムを説明する。本実施形態では、上述した第1実施形態に対して、中継コイル20の形状と中継コイル20に磁性体を設けている点が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、第1〜3実施形態の記載を適宜、援用する。
図32は、送電コイル10、中継コイル20、及び受電コイル30の斜視図を示す。送電コイル10及び受電コイル30の形状は、第1実施形態と同様である。中継コイル20は、複数のコイル21〜27を有する。コイル21、22及びコイル24〜27には、磁性体41、42、44〜47がそれぞれ設けられている。
磁性体41、42、44〜47は、各コイル21、22、24〜27と送電コイル10との間の相互インダクタンスを一定にしつつ、各相互インダクタンスを等しくするための部材である。磁性体41、42、44〜47は、フェライト等により形成される。また磁性体41、42、44〜47は、各コイル21、22、24〜27のコイル面に沿うように形成されている。
これにより、本実施形態では、相互インダクタンスを設定する際に、中継コイル20のサイズ及び形状の設計自由度を増すことができる。その結果として、受電コイル30の位置ズレに対する許容範囲を広げることができる。なお、相互インダクタンスを設定する際には、コイル21〜27のターン数を調整してもよい。