JP2016039219A - 中空構造の形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】エッチング処理に用いるガスの使用効率を改善する技術を提供する。【解決手段】中空構造の形成方法において、基板に形成された犠牲層を除去することによって基板に中空構造を形成する方法であって、エッチング装置の反応チャンバ内に基板を設置する設置工程と、犠牲層をエッチングするためのエッチング用のガスを反応チャンバに供給しながら、反応チャンバ内のガスの排出を行う第1の工程と、反応チャンバにエッチング用のガスを供給せずに、反応チャンバ内のガスの排出を行う第2の工程と、基板を反応チャンバから取り出す取り出し工程と、を含み、設置工程と取り出し工程との間に、第1の工程と第2の工程とを含むサイクルを少なくとも2回繰り返すことによってエッチングする。【選択図】図2
Description
本発明は中空構造の形成方法に関する。
マイクロエレクトロメカニカル構造(MEMS)の製造において、犠牲層のエッチング処理を行い所望の構造を形成する方法として、フロー式と封入式の2つの方法が知られている。フロー式のエッチング処理は、常にエッチング用のガスを反応チャンバ内へ供給しながら、生成される反応生成物を反応チャンバの外へ排出するガス交換を行う。一方、封入式のエッチング処理は、処理ガスを反応チャンバ内に封入しエッチング処理を行う。特許文献1には、犠牲層のシリコンのエッチング処理において、まず反応チャンバ内にXeF2を含む処理ガスを封入し、処理ガスに基板を所定時間曝した後、真空ポンプを用いて真空引きし反応生成物を排出する方法が記載されている。以上によって1サイクルのエッチング処理が完了し、このサイクルを繰り返すエッチング処理の方法が記載されている。
シリコンの犠牲層のエッチング処理は、非常に高価なXeF2を用いる。フロー式のエッチング処理では、エッチング処理の間、XeF2の一部を未反応のまま排出し続けるためXeF2の消費量が多くなる。また封入式のエッチング処理では、反応生成物の滞留による選択比の悪化やエッチングレートの低下といった問題を有する。特許文献1の方法では、封入式のエッチング処理と反応生成物の排出とを交互に繰り返すことによって、エッチングレートが向上するが、まだ十分でない。また、この方法では反応生成物の滞留による選択比の悪化の起きる可能性がある。エッチング用のガスがXeF2である場合に限られず、他の種類のガスであっても、エッチング用のガスの使用効率を向上することはエッチング処理のコストの低減に寄与する。本発明は、エッチング処理に用いるガスの使用効率を改善する技術を提供することを目的とする。
上記課題に鑑みて、本発明の一部の実施形態に係る中空構造の形成方法は、基板に形成された犠牲層を除去することによって基板に中空構造を形成する方法であって、エッチング装置の反応チャンバ内に基板を設置する設置工程と、犠牲層をエッチングするためのエッチング用のガスを反応チャンバに供給しながら、反応チャンバ内のガスの排出を行う第1の工程と、反応チャンバにエッチング用のガスを供給せずに、反応チャンバ内のガスの排出を行う第2の工程と、基板を反応チャンバから取り出す取り出し工程と、を含み、設置工程と取り出し工程との間に、第1の工程と第2の工程とを含むサイクルを少なくとも2回繰り返すことによってエッチングすることを特徴とする。また、本発明の他の実施形態に係る中空構造の形成方法は、反応チャンバと、反応チャンバ内にエッチング用のガスを供給する第1のバルブと、反応チャンバ内のガスを排出する第2のバルブと、を含む装置を用いて、基板に形成された犠牲層を除去することによって基板に中空構造を形成する方法であって、エッチング装置の反応チャンバ内に基板を設置する設置工程と、エッチング用のガスを反応チャンバに供給するために第1のバルブを開く開き工程と、反応チャンバへのエッチング用のガスの供給を停止するために第1のバルブを閉じる閉じ工程と、基板を反応チャンバから取り出す取り出し工程と、を含み、設置工程と取り出し工程との間に、第2のバルブを開いた状態で、開き工程と閉じ工程との組み合わせを少なくとも2回繰り返すことによってエッチングすることを特徴とする。
上記手段により、エッチング処理に用いるガスの使用効率を改善する技術が提供される。
図1を参照して本発明の実施形態で用いるエッチング装置(例えば、memsstar社製Sentry SVR−XeF2)について説明する。図1は、エッチング装置100の概略図である。エッチング装置100は、基板を設置するステージ102を反応チャンバ101に有し、エッチング用のガスを含む処理ガスを反応チャンバ101へ供給することによって基板のエッチング処理を行う。エッチング装置100は、ステージ102の温度を制御することで、エッチング処理を行う際の基板の温度を所望の値に保持することができる。反応チャンバ101には窒素流量を制御できるマスフローコントローラ103及び窒素パージ用のバルブ104を介して窒素供給部105が接続されている。また、エッチング装置100は、マスフローコントローラ103と反応チャンバ101との間に、窒素パージ用のバルブ104を含むガス供給ラインとは別に、インレットバルブ106とアウトレットバルブ107との2つのバルブを含むガス供給ラインを有する。インレットバルブ106とアウトレットバルブ107との間に、二フッ化キセノン(以下、XeF2と示す)供給部108が接続されている。インレットバルブ106は窒素供給部105とXeF2供給部108とを接続する。またアウトレットバルブ107はXeF2供給部108と反応チャンバ101とを接続する。エッチング装置100は、アウトレットバルブ107を開閉することによって、反応チャンバ101への処理ガスの供給を制御する。反応チャンバ101は、真空バルブ110を介して真空ポンプ109に接続される。本実施形態において真空バルブ110は、開度を自動的に調整の可能なAPC(Automatic Pressure Controller)バルブである。この真空バルブ110は、反応チャンバ101の全圧が所定の圧力に保持されるように開度を自動的に調整する。
次にエッチング処理について説明する。XeF2は常温で固体であるが、キャリアガスとして窒素を流すことでXeF2の一部が昇華し、窒素とともに反応チャンバ101内に供給される。ここで窒素はエッチングに寄与しない。本実施形態において窒素を50sccm流したとき、約20sccmのXeF2が反応チャンバ101内に流入する。XeF2とシリコンとの反応は、
Si+2XeF2→SiF4+2Xe・・・(1)
と表され、この反応式(1)に従ってシリコンがエッチングされる。本実施形態で処理ガスは、キャリアガスである窒素とエッチング用のガスであるXeF2との混合ガスである。
Si+2XeF2→SiF4+2Xe・・・(1)
と表され、この反応式(1)に従ってシリコンがエッチングされる。本実施形態で処理ガスは、キャリアガスである窒素とエッチング用のガスであるXeF2との混合ガスである。
従来のフロー式のエッチング処理において、XeF2を含む処理ガスが常時供給されるとともに、真空ポンプ109によって常時排気される。常時排気することによって反応生成物であるXeやSiF4が反応チャンバ101内から排出され、また新しいXeF2を含む処理ガスが反応チャンバ101内に供給される。これによって封入式のエッチング処理よりも大きなエッチングレートと選択比とが得られる。
次に図2を参照して本発明の実施形態における犠牲層を除去するエッチング処理の工程について説明する。図2(a)に比較例としてフロー式におけるエッチング処理のアウトレットバルブ107及び真空バルブ110の開閉のタイミングチャートを示す。図2(b)に本実施形態におけるエッチング処理のアウトレットバルブ107及び真空バルブ110の開閉のタイミングチャートを示す。エッチング装置100は、図2のタイミングチャートに従いXeF2を含む処理ガスを流すことによって、犠牲層のシリコンをエッチングする。
図2(a)のタイミングチャートに示される犠牲層のエッチング処理は、反応チャンバ101内にエッチング用のガスを含む処理ガスを供給しながら、反応チャンバ101内の反応生成物の排出を行う第1の工程を含む。最初に基板を反応チャンバ101のステージ102に設置する。その後、時刻T0で、窒素パージ用のバルブ104、インレットバルブ106及びアウトレットバルブ107を閉じ、真空バルブ110を開くことで、時刻T1まで反応チャンバ内を減圧排気する。
次に、時刻T1で、窒素パージ用のバルブ104を閉じ、インレットバルブ106とアウトレットバルブ107とを開き、XeF2供給部108にキャリアガスとして窒素を流す。これによってエッチング用のガスとしてXeF2を含む処理ガスが反応チャンバ101に供給され、基板の犠牲層のシリコンのエッチング処理が行われる。
エッチング処理の終了後、時刻T3で、再度、窒素パージ用のバルブ104、インレットバルブ106及びアウトレットバルブ107を閉じ、真空バルブ110を開くことで、時刻T4まで反応チャンバ101内を減圧排気する。これによって、反応チャンバ101内の処理ガス及び反応生成物を取り除く。最後に基板を取り出す際に窒素パージ用のバルブ104を開き、インレットバルブ106とアウトレットバルブ107とを閉じて、また真空バルブ110を閉じる(不図示)ことで反応チャンバ101を窒素で満たし大気圧に戻す。
次に図2(b)のタイミングチャートについて説明する。図2(b)のタイミングチャートに示される犠牲層のエッチング処理は、上述の第1の工程と、反応チャンバ101内にエッチング用のガスを含む処理ガスを供給せずに反応生成物を反応チャンバ101内から排出する第2の工程とを含む。最初に基板を反応チャンバ101のステージ102に設置し、時刻T0〜T1にかけて減圧排気を行った後、時刻T1〜T2にかけて第1の工程のエッチング処理を行う。その後、窒素パージ用のバルブ104、インレットバルブ106及びアウトレットバルブ107を閉じて、真空バルブ110を開くことで反応チャンバ101内を減圧排気する第2の工程を行う。この第1の工程と第2の工程とを含むサイクルを繰り返すことによって、基板の犠牲層のシリコンのエッチング処理が行われる。このサイクルを少なくとも2回繰り返したエッチング処理の終了後は、上述したフロー式のエッチング処理のときと同様に反応チャンバ101から基板を取り出す。基板を反応チャンバ101に設置してから、このサイクルを繰り返すことによってエッチング処理を行い、再び基板を反応チャンバ101から取り出すまでの間、基板は反応チャンバ101内に設置されたままとなる。
上述の実施形態の具体的な実施例を以下に説明する。まず、図3を参照して、各実施例でエッチング処理に用いる基板について説明する。図3(a)に、犠牲層のエッチングを行う前の基板300の模式的な断面図を示す。以下の図3(a)及び図3(b)の説明において、部材の長さ・厚さ・幅とはそれぞれ、図面の左右方向・上下方向・奥行き方向について部材を測定した値のことである。基板300はシリコンウェーハ301の上に、酸化膜302、犠牲層であるアモルファスシリコン膜303及びフォトレジスト膜304が積層した構造を有する。このアモルファスシリコン膜303をエッチングすることによって、基板300に中空構造が形成される。本実施例において、酸化膜302は例えば1000℃の熱酸化法によって酸素と水素とを2対3の割合で用いて300nmの厚さ成膜することによって形成される。または、例えば400℃のプラズマCVD法によってシランと窒素と亜酸化窒素とを1対15対30の割合で用いて酸化膜302を成膜してもよい。アモルファスシリコン膜303は例えば400℃のプラズマCVD法によってシランと水素とを1対1の割合で用いて100nmの厚さ成膜することによって形成される。成膜されたアモルファスシリコン膜303は、幅10μm及び長さ400μmに成形される。フォトレジスト膜304は例えばスピンコート法を用いて約1900nmの厚さ形成することによって形成される。フォトレジスト膜304は、アモルファスシリコン膜303の長さ方向の一端の上に幅10μm及び長さ10μmの正方形の開口部305を有している。
エッチング処理において、処理ガスに含まれるXeF2は、フォトレジスト膜304の開口部305を通りアモルファスシリコン膜303に到達する。この到達したXeF2によってアモルファスシリコン膜303がエッチングされる。このエッチング処理が進行すると、図3(b)に示すように基板300に高さ100nmの中空構造が形成される。ここでエッチングにより得られた中空部の長さを中空部の高さで除した値をアスペクト比と定義する。
比較対象の実施例
比較対象の実施例では、基板300に対して図2(a)に示すタイミングチャートに従い、エッチング処理を行う。本実施例における第1の工程のエッチング処理の条件は、反応チャンバ101内の圧力1267Pa(9.5Torr)、窒素(キャリアガス)流量50sccm、XeF2流量20sccm及び基板温度15℃である。このエッチング条件は、使用するエッチング装置100でXeF2の分圧が最大となり、結果としてエッチングレートが大きい条件であるにすぎず、反応チャンバ101内の圧力や窒素流量、基板温度をこれに限定するものではない。
比較対象の実施例では、基板300に対して図2(a)に示すタイミングチャートに従い、エッチング処理を行う。本実施例における第1の工程のエッチング処理の条件は、反応チャンバ101内の圧力1267Pa(9.5Torr)、窒素(キャリアガス)流量50sccm、XeF2流量20sccm及び基板温度15℃である。このエッチング条件は、使用するエッチング装置100でXeF2の分圧が最大となり、結果としてエッチングレートが大きい条件であるにすぎず、反応チャンバ101内の圧力や窒素流量、基板温度をこれに限定するものではない。
基板300を反応チャンバ101のステージ102に設置し、時刻T0〜T1にかけて反応チャンバ101内を減圧排気する。本実施例において減圧排気の時間は数分程度であり、6.67Pa(0.05Torr)以下まで減圧する。次に、XeF2を含む処理ガスを反応チャンバ101に供給し、基板300のアモルファスシリコン膜303のエッチング処理を行う。本実施例では、図2(a)に示すように例えば時刻T1〜T3にかけて、連続的に60分間、このエッチング処理を行う。
本実施例において、エッチング処理の間、反応チャンバ101の全圧が1267Pa(9.5Torr)に保たれるように、真空バルブ110の開度は1%から10%に自動で制御されており全閉(0%)にならない。排気側の真空バルブ110の開度を変えることによって反応チャンバ101内の圧力を調整するかわりに、例えば真空バルブ110をガス供給側に設置しガスの供給量を調整することによって圧力を調整してもよい。
第1の実施例
次に、本発明の実施形態の第1の実施例では、基板300に対して図2(b)に示すタイミングチャートに従い、エッチング処理を行う。基板300を反応チャンバ101のステージ102に設置し、時刻T0〜T1にかけて減圧排気を行った後、時刻T1〜T2にかけて第1の工程のエッチング処理を30分間行う。その後、時刻T2で、窒素パージ用のバルブ104、インレットバルブ106及びアウトレットバルブ107を全閉にする。また真空バルブ110の開度を第1の工程のときの開度よりも大きい開度(例えば、全開(100%))に設定し、反応チャンバ101内を減圧排気する。本実施例では、第1の工程と第2の工程とで構成されたサイクルを6回繰り返す。最初のサイクルの第1の工程を30分間行い、2サイクル目以降の各第1の工程を315秒間行う。第2の工程の継続時間は、例えば45秒間、160秒間、340秒間及び640秒間の何れかの値とする。本実施例において、第2の工程の時間が長くなると、犠牲層のエッチングに要する時間、時刻T1〜T3が長くなる。基板300を反応チャンバ101に設置し、上述のエッチング処理を行った後、反応チャンバ101から取り出すまでの間、基板300は反応チャンバ101内に設置されたままである。
次に、本発明の実施形態の第1の実施例では、基板300に対して図2(b)に示すタイミングチャートに従い、エッチング処理を行う。基板300を反応チャンバ101のステージ102に設置し、時刻T0〜T1にかけて減圧排気を行った後、時刻T1〜T2にかけて第1の工程のエッチング処理を30分間行う。その後、時刻T2で、窒素パージ用のバルブ104、インレットバルブ106及びアウトレットバルブ107を全閉にする。また真空バルブ110の開度を第1の工程のときの開度よりも大きい開度(例えば、全開(100%))に設定し、反応チャンバ101内を減圧排気する。本実施例では、第1の工程と第2の工程とで構成されたサイクルを6回繰り返す。最初のサイクルの第1の工程を30分間行い、2サイクル目以降の各第1の工程を315秒間行う。第2の工程の継続時間は、例えば45秒間、160秒間、340秒間及び640秒間の何れかの値とする。本実施例において、第2の工程の時間が長くなると、犠牲層のエッチングに要する時間、時刻T1〜T3が長くなる。基板300を反応チャンバ101に設置し、上述のエッチング処理を行った後、反応チャンバ101から取り出すまでの間、基板300は反応チャンバ101内に設置されたままである。
エッチング処理後の基板300の断面図を図2(b)に示す。最初の30分間の第1の工程によって163.5μmの長さの中空部(A)351が形成される。その後、第1の工程と第2の工程とを含むサイクルを5回繰り返すことによって中空部(B)352が形成される。
図4に、上述の比較対象の実施例及び第1の実施例に従って基板300をエッチングした実験結果を示す。図4の表の各項目について説明する。「条件番号」は、実験を行った条件ごとに付した番号を示す。それぞれの実験で、図3(a)の基板300のエッチングを行った。「真空引き時間」は、各サイクルにおける第2の工程の継続時間を示す。条件番号1の実験では、第2の工程の継続時間が0である。すなわち、条件番号1の実験では第2の工程を行わない比較対象の実施例に対応する。条件番号2〜5はそれぞれ、第1の実施例に対応する。「XeF2供給時間」は、2回目以降の各サイクルにおける第1の工程の継続時間を示す。1回目のサイクルにおける第1の工程の継続時間は上述のように30分間である。「サイクル合計時間」は、1回のサイクルを実行するのに要する時間を示す。この時間は、第1の工程の継続時間と第2の工程の継続時間との和に等しい。「エッチング長」は、サイクルを5回繰り返すことによって得られた中空部(B)352の長さを示す。「XeF2消費量」は、サイクルを5回繰り返す間に反応チャンバ101に供給されたXeF2の量を示す。条件番号2乃至5は、第2の工程である真空引きの時間を変えたのみでXeF2を反応チャンバ101に供給する時間は変えていないため、消費したXeF2の量は同じである。「XeF2使用効率」は、「エッチング長」を「XeF2消費量」で除した値を示す。
上記の実験では、中空部(B)352の長さの測長を以下のようにして行った。まずエッチング処理の終了後の基板300を上面から光学顕微鏡で観察し、エッチングされたアモルファスシリコン膜303の長さを測長した。この値から最初の30分間の第1の工程によって形成された中空部(A)351の163.5μmの長さを減算した。
図4からXeF2の消費量が同一であっても、第2の工程の時間によってエッチング長が異なることが分かる。第2の工程の時間を長くしたとき、アモルファスシリコン膜303のエッチング長が増大する。図5に、図4の「真空引き時間」を横軸にとり、「エッチング長」を縦軸にとって各実験結果をプロットしたグラフを示す。このグラフから、1回の第2の工程の時間が340秒以上になった場合、エッチング長の増大する率は減少し、エッチング長は約64μmで概ね飽和する傾向がみられる。
図4から、第1の工程と第2の工程とを含むサイクルを繰り返した条件番号2乃至5の方が、第1の工程のみの条件番号1よりも少ないXeF2消費量にも関わらず、エッチング長が長く、XeF2の使用効率が高いことがわかる。更にXeF2の使用効率は、第2の工程の時間が長いほど向上することが分かる。
エッチング長が第2の工程の時間に影響される原因として、反応チャンバ101内に供給されるXeF2量と開口部305を経由してアモルファスシリコン膜303の露出する端面に到達しエッチング処理に寄与するXeF2の量とが異なることが考えられる。つまり、基板300のアモルファスシリコン膜303の露出する端面はエッチング処理の進行とともに開口部305から離れる。このためエッチング処理が進むにつれ、狭小な中空となった部分へのXeF2の供給やエッチング後の反応生成物の排出というガス置換がエッチング処理の初期の段階に比べて難しくなる。このためエッチングレートが低下する。こうしたエッチングレートの低下はアスペクト比100以上で発生する。またアスペクト比50以上でも発生する可能性がある。これに対して、第2の工程をフロー式のエッチング処理の途中に挿入した場合、反応チャンバ101内の全圧が一旦、低下する。これによって狭小となった中空部から反応生成物が排出される。次に第1の工程となりXeF2が、速やかに基板300のアモルファスシリコン膜303の露出した端部に供給される。この結果、狭小な中空部でのガス置換が促進され、エッチング長が増大するものと考えられる。
またエッチングレートがエッチング処理の進行とともに低下する状態においても、フロー式の第1の工程ではXeF2を含む処理ガスは反応チャンバ101に供給され、同時に排出される。結果として、エッチング反応に寄与するXeF2よりも未反応のまま反応チャンバ101内から排出されるXeF2の割合が増大することになり、XeF2の使用効率が悪化する。この使用効率も、狭小な中空部でのガスの置換が促進される第2の工程を設け、XeF2ガスの供給を中断することで改善する。
エッチング長が飽和することから明らかなように、第2の工程の時間は、ガスの置換が十分に行われる範囲で最小限の時間とすることでXeF2の十分な使用効率が得られる。高価なXeF2の使用効率が上がることで、経済的なエッチング処理を行うことが可能となる。このとき基板の反応チャンバ101内の滞留時間が短くなるため、生産性も向上する。また基板の反応チャンバ101内の滞留時間の短縮を優先する場合、例えばXeF2の使用効率が最大ではない第2の工程の時間を選択してもよい。これらは、エッチング処理の工程の目的に応じて適宜選択すればよい。
また本実施例で用いた基板300では、1回の第2の工程の時間が340秒程度でエッチング長が飽和する。アモルファスシリコン膜303が基板300よりも薄い場合や、アモルファスシリコン膜303の露出する端面がエッチング処理の進行でさらに後退した場合、中空部がより狭小かつ長大となるため、この飽和に達するまでに必要な最小限の時間が長くなる。つまりアスペクト比が高くなるほど、中空部の奥までXeF2が届き難く、また生成された反応生成物の排出が困難となる。そこで、形成すべき中空部のアスペクト比に応じて、エッチング処理を進行させるために、例えば第2の工程の時間を延ばし、第1の工程の時間よりも長くしてもよい。更に本実施例において、2回目以降の各サイクルの第1の工程の時間と第2の工程の時間とをそれぞれ一定としているが、例えばnを1以上の整数として、n回目のサイクルよりも(n+1)回目のサイクルにおいて、第2の工程の時間を長くしてもよい。また第2の工程における真空バルブ110の開度は上述では全開(100%)としたが、100%未満でもよい。この場合、反応チャンバ101の排気速度が低下し、エッチング長が飽和するまでに必要な最小限の時間が長くなる。
またアスペクト比が低い構造体を形成する場合、第2の工程の時間が短くても、反応生成物が十分に排出される。この場合XeF2を供給する時間の長い方がよい。よって例えば2回目以降の各サイクルの第1の工程の時間を第2の工程の時間よりも長くしてもよい。また高いアスペクト比の構造体を形成する場合においても、エッチング処理の初期の段階では、その構造はアスペクト比の低い状態を経由する。したがって、第1の工程の時間と第2の工程の時間とを変化させながらエッチング処理を行うことによってエッチングレートを向上させ、結果として生産性を向上させることが可能となる。
例えば、第1の工程と第2の工程とを含むサイクルをm回繰り返すとする。この場合に、
n回目のサイクルの第1工程の時間≧(n+1)回目のサイクルの第1工程の時間、
n回目のサイクルの第2工程の時間≦(n+1)回目のサイクルの第2工程の時間、
が1以上(m−1)以下の任意の整数nについて成り立つように各サイクルのエッチング処理を行ってもよい。
n回目のサイクルの第1工程の時間≧(n+1)回目のサイクルの第1工程の時間、
n回目のサイクルの第2工程の時間≦(n+1)回目のサイクルの第2工程の時間、
が1以上(m−1)以下の任意の整数nについて成り立つように各サイクルのエッチング処理を行ってもよい。
または、各サイクルにおいて第1の工程の時間が占める比率がエッチング処理の進行とともに減少するようにエッチング処理を行ってもよい。すなわち、
n回目のサイクルの第1工程の時間/n回目のサイクルの第2工程の時間
≦(n+1)回目のサイクルの第1工程の時間/(n+1)回目のサイクルの第2工程の時間
が1以上(m−1)以下の任意の整数nについて成り立つように各サイクルのエッチング処理を行ってもよい。
n回目のサイクルの第1工程の時間/n回目のサイクルの第2工程の時間
≦(n+1)回目のサイクルの第1工程の時間/(n+1)回目のサイクルの第2工程の時間
が1以上(m−1)以下の任意の整数nについて成り立つように各サイクルのエッチング処理を行ってもよい。
以上述べたように、本実施例はフロー式の第1の工程のエッチング処理に減圧排気を行う第2の工程を挿入することによって、エッチング用のガスであるXeF2の使用効率を改善する効果を有する。エッチング長の飽和に必要な減圧排気を行う最小限の時間はエッチング対象となる基板の構造や、エッチング処理に用いる装置の構成、例えば反応チャンバの構造や真空ポンプによって決まる真空度などによって異なるため、適宜、決定すればよい。
第2の実施例
第1の実施例において、基板の反応チャンバ101への設置から取り出しまでの、反応チャンバ101内の滞留の時間を考慮せず、第2の工程の時間を十分にとることによってXeF2の使用効率の改善が可能であることが分かる。一方、実際には生産上のタクトタイムの観点から反応チャンバ101内の滞留時間に制限がある場合が多い。XeF2を用いたシリコンのエッチング処理について、第1の工程と第2の工程との合計時間を統一し、それぞれの時間の比率のみを変化させる。つまりシークエンス全体の合計時間、換言すれば基板の反応チャンバ101内の滞留時間を変化させない場合のXeF2使用効率を示す。本実施例において、第1の工程と第2の工程との時間以外の実施例は第1の実施例と同様の図2(b)のタイミングチャートにおけるバルブ操作であるため、ここでは実験方法の詳細な説明を省略する。
第1の実施例において、基板の反応チャンバ101への設置から取り出しまでの、反応チャンバ101内の滞留の時間を考慮せず、第2の工程の時間を十分にとることによってXeF2の使用効率の改善が可能であることが分かる。一方、実際には生産上のタクトタイムの観点から反応チャンバ101内の滞留時間に制限がある場合が多い。XeF2を用いたシリコンのエッチング処理について、第1の工程と第2の工程との合計時間を統一し、それぞれの時間の比率のみを変化させる。つまりシークエンス全体の合計時間、換言すれば基板の反応チャンバ101内の滞留時間を変化させない場合のXeF2使用効率を示す。本実施例において、第1の工程と第2の工程との時間以外の実施例は第1の実施例と同様の図2(b)のタイミングチャートにおけるバルブ操作であるため、ここでは実験方法の詳細な説明を省略する。
図6に上述の比較対象の実施例及び第2の実施例に従って第1の工程と第2の工程との合計時間を同じとし、それぞれの時間の比率を変化させたときの実験結果を示す。図6の表の各項目のうち、「平均エッチングレート」は、反応チャンバ101へXeF2が供給された時間でなく、サイクルの合計時間によってエッチング長を除した値である。また図4と同じ項目については、重複する説明をここでは省略する。条件番号1の実験では第2の工程を行わない比較対象の実施例に対応する。条件番号2〜5の実験はそれぞれ、第2の実施例に対応する。本実施例において第1の工程と第2の工程とを含むサイクルの1回の時間を360秒とし、このサイクルを5回繰り返す。第1及び第2の工程の継続時間は、例えば315秒間及び45秒間、300秒間及び60秒間、200秒間及び160秒間又は140秒間及び220秒間の何れかの値とする。第2の工程の時間を長くした場合、第1の工程の時間は短くなり、反応チャンバ101へXeF2を供給する時間が減少する。その結果、XeF2の消費量は減少する。
図6から、平均エッチングレートは第2の工程を挿入しない条件番号1で1.3μm/minであるが、第2の工程の時間が45秒間及び60秒間の条件で1.7μm/minと向上し改善の効果が得られる。しかし、第2の工程の時間が160秒間以上では減少に転じ、160秒間では1.3μm/minと第2の工程を挿入しない場合と同等になり、さらに220秒間では1.0μm/minまで減少する。これは1サイクルの合計時間が一定のため、第2の工程の時間を増やしガスの置換が効率的に行われる効果と、第1の工程の時間が短くなり供給されるXeF2によるエッチング反応の起こる時間が短くなる効果とのトレードオフに起因するものと考えられる。またXeF2の使用効率の指標である「XeF2使用効率」は、比較対象の実施例である条件番号1よりも第2の工程を挿入した本実施例の条件番号2乃至5の方が大きく、更に第2の工程の時間が長いほど改善される効果が得られた。
このため、XeF2の使用効率と平均エッチングレートを最適化するならば、第2の工程の時間が60秒間、第1の工程の時間が300秒間の組み合わせの実施例を選択するのがよい。しかし、第2の工程の時間を長くする条件では、平均エッチングレートは犠牲になるが、XeF2の使用効率の改善には特に効果が高い。
以上、本発明に係る実施例を2形態示した。第1の工程の時間を一定としたとき、トータルのプロセス時間を犠牲にして第2の工程の時間を長くすることによってXeF2の使用効率を改善できることが示される。また、全体のプロセス時間を犠牲にすることなく、第1の工程と第2の工程との時間の比率を変更することによって、平均エッチングレートおよびXeF2の使用効率を改善できることが示される。本発明のエッチング処理によって従来のフロー式のエッチング処理と比較して、XeF2の使用効率が改善され、エッチングレートの高い犠牲層のエッチング処理が可能となる。また封入式のエッチング処理と反応生成物の排出とを繰り返す特許文献1の方法と比較して、フロー式のエッチング処理と反応生成物の排出とを繰り返す本発明は、高いエッチングレートを得ることが可能となる。また、第1の工程と第2の工程との時間を適宜選択することにより、特許文献1の方法と比較してXeF2の使用効率の改善も可能となる。
また本発明は上述したこれらの実施例に限定されるものではない。第2の工程において、例えばマスフローコントローラ103の窒素流量を0sccmに設定しキャリアガスの供給を停止することによってXeF2の供給を止めてもよい。また例えばインレットバルブ106とアウトレットバルブ107とを全閉にし、窒素パージ用のバルブ104を全開にすることによってXeF2の供給を止めてもよい。このとき反応チャンバ101にはエッチング用のガス以外のガス、窒素が流れ、反応生成物とともに真空バルブ110から排出される。
以上の実施形態では、エッチング用のガスとしてXeF2を用いる場合を説明した。しかし、エッチング用のガスとして、XeF2以外を用いる場合であっても、上記の実施形態によってエッチング用のガスの使用効率を向上できる。
101 反応チャンバ、107 アウトレットバルブ、110 真空バルブ、300 基板
Claims (19)
- 基板に形成された犠牲層を除去することによって前記基板に中空構造を形成する方法であって、
エッチング装置の反応チャンバ内に前記基板を設置する設置工程と、
前記犠牲層をエッチングするためのエッチング用のガスを前記反応チャンバに供給しながら、前記反応チャンバ内のガスの排出を行う第1の工程と、
前記反応チャンバに前記エッチング用のガスを供給せずに、前記反応チャンバ内のガスの排出を行う第2の工程と、
前記基板を前記反応チャンバから取り出す取り出し工程と、を含み、
前記設置工程と前記取り出し工程との間に、前記第1の工程と前記第2の工程とを含むサイクルを少なくとも2回繰り返すことによってエッチングすることを特徴とする方法。 - 前記第1の工程の時間が、前記サイクルを繰り返す間に変化することを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 前記サイクルを繰り返すにつれて、前記第1の工程の時間が短くなることを特徴とする請求項2に記載の方法。
- 前記第2の工程の時間が、前記サイクルを繰り返す間に変化することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記サイクルを繰り返すにつれて、前記第2の工程の時間が長くなることを特徴とする請求項4に記載の方法。
- 前記サイクルにおいて前記第1の工程の時間が占める比率が、前記サイクルを繰り返す間に変化することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
- 前記サイクルを繰り返すにつれて、前記比率が小さくなることを特徴とする請求項6に記載の方法。
- 前記第1の工程において、前記エッチング用のガスの供給部と前記反応チャンバとを接続する第1のバルブを開くことによって、前記反応チャンバに前記エッチング用のガスを供給し、
前記第2の工程において、前記第1のバルブを閉じることによって、前記エッチング用のガスの供給を停止することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。 - 前記第1の工程において、前記反応チャンバ内のガスを排出する第2のバルブの開度を調整することによって、前記反応チャンバ内の圧力を一定に保つことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
- 前記第1の工程において、前記第2のバルブは異なる2つの開度の間で切り替わることを特徴とする請求項9に記載の方法。
- 前記第2のバルブは、前記第2の工程における開度が前記第1の工程における開度よりも大きくなるように制御されることを特徴とする請求項9又は10に記載の方法。
- 前記第2の工程において、前記第2のバルブは全開であることを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項に記載の方法。
- 前記犠牲層がシリコンであることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の方法。
- 前記エッチング用のガスが二フッ化キセノンを含むことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の方法。
- 前記中空構造のアスペクト比が50以上であることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の方法。
- 前記中空構造のアスペクト比が100以上であることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の方法。
- 前記第2の工程において、前記エッチング用のガス以外のガスを前記反応チャンバに供給することを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載の方法。
- 前記エッチング用のガス以外のガスが窒素を含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
- 反応チャンバと、前記反応チャンバ内にエッチング用のガスを供給する第1のバルブと、前記反応チャンバ内のガスを排出する第2のバルブと、を含む装置を用いて、基板に形成された犠牲層を除去することによって前記基板に中空構造を形成する方法であって、
エッチング装置の反応チャンバ内に前記基板を設置する設置工程と、
前記エッチング用のガスを前記反応チャンバに供給するために前記第1のバルブを開く開き工程と、
前記反応チャンバへの前記エッチング用のガスの供給を停止するために前記第1のバルブを閉じる閉じ工程と、
前記基板を前記反応チャンバから取り出す取り出し工程と、を含み、
前記設置工程と前記取り出し工程との間に、前記第2のバルブを開いた状態で、前記開き工程と前記閉じ工程との組み合わせを少なくとも2回繰り返すことによってエッチングすることを特徴とする方法。
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JP2014160801A JP2016039219A (ja) | 2014-08-06 | 2014-08-06 | 中空構造の形成方法 |
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