JP2016034930A - 血糖値低減剤 - Google Patents

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冷牟田 修一
Shuichi Hiyamuta
修一 冷牟田
武田 茂樹
Shigeki Takeda
茂樹 武田
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Idemitsu Kosan Co Ltd
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Abstract

【課題】医薬、食品の成分として有用なトリペプチド化合物を提供することを課題とする。【解決手段】下記(1)〜(5)のいずれかの式で表されるトリペプチド化合物またはそれらの塩を提供する。それらトリペプチド化合物またはそれらの塩は、インスリン分泌促進作用、GLP-1分泌促進作用及び血糖値低減作用を有し、糖尿病予防剤または治療剤等の医薬または食品として使用可能である。Ace-Gly-Gln-Pro-COOR・・・(1)Ace-Gln-Pro-Gly-COOR・・・(2)Ace-Pro-Gly-Gln-COOR・・・(3)Ace-Gly-Pro-Gln-COOR・・・(4)Ace-Gln-Gly-Pro-COOR・・・(5)【選択図】図3

Description

本発明は、Ace-Gly-Gln-Pro-COOR、Ace-Gln-Pro-Gly-COOR、Ace-Pro-Gly-Gln-COOR、Ace-Gly-Pro-Gln-COOR、またはAce-Gln-Gly-Pro-COORで表されるトリペプチド化合物またはそれらの塩に関する。また、本発明は、上記トリペプチド化合物またはそれらの塩を含む、インスリン分泌促進剤、グルカゴン様ペプチド−1(GLP-1)分泌促進剤、血糖値低減
剤、糖尿病予防剤若しくは糖尿病治療剤等の医薬、または食品に関する。
糖尿病は、その予備軍まで含めた患者数が約2000万人といわれており、国が医療対策において特に重点をおいている5大疾病の一つである。糖尿病は、口渇や多飲等の高血糖自体による症状をおこすこともあるが、真に恐ろしいのは様々な合併症である。合併症としては、糖尿病神経障害、糖尿病網膜症、および糖尿病腎症が知られており、糖尿病治療の主な目的は、それら合併症を防ぐことにあるともいえる。
合併症の中で早期に出現するのは糖尿病神経障害であり、手足の先に痛みやしびれの症状が現れる。神経障害が進行すると、感覚が鈍くなるため、傷ややけどを負っても気付かず、そのまま感染症を伴う細胞壊死となり、手足を切断しなければならない事態を招きかねない。糖尿病網膜症は、緑内障と並ぶ成人の失明の主要な原因である。その初期症状はあまりないことが多いため、自覚症状を感じたときには網膜症がかなり進んでいることが多い。糖尿病性腎症は、高血糖により腎の糸球体が硬化して、老廃物を濾過する腎臓としての機能が損なわれることにより起こり、人工透析になる原因の第1位である。人工透析を受けるためには長時間病院に拘束されることになるため、日常生活に著しい負担となる。以上のように、糖尿病合併症は多岐に亘り、患者のクオリティオブライフを著しく損なうものである。よって、合併症を併発しないように糖尿病の治療を早期に行うこともさることながら、糖尿病にならないよう予防する必要性は依然として高い。
糖尿病の治療法としてはインスリン注射が知られているが、これは侵襲性が高く患者の負担が大きい。そのため、服用の負担が少ない様々な経口の糖尿病治療薬が開発されてきた。これまでに、スルホニル尿素(SU)剤、ジペプチジルペプチダーゼ-IV(DPP-IV)阻
害薬、ペルオキシゾーム増殖剤応答性受容体γ(PPARγ)アゴニスト等が使用されているが、インスリン過剰分泌による低血糖等が問題となっており、そのような問題を解決する医薬の開発が望まれていた。
一方、アミノ酸3個からなるトリペプチドは、構成するアミノ酸の種類によって、血管弛緩作用、骨疾患治療作用、又はコラーゲン若しくはエラスチン産生促進作用等を有することが知られているほか、糖尿病治療作用を有するものも知られている。
特許文献1には、グリシン及びロイシンを含むトリペプチドは糖尿病治療作用を有する旨が記載されている。また、特許文献2には、ヒスチジン及びフェニルアラニンを含むジペプチド又はトリペプチドが血管弛緩作用を有し、高血圧及びそれに伴う心肥大若しくは動脈硬化、又は虚血性心疾患若しくはインスリン抵抗性糖尿病に適用可能である旨が、記載されている。しかし、グリシン、グルタミン及びプロリンからなるトリペプチドがインスリン分泌促進作用を有することは知られていない。
特表2014−506579号公報 特開2007−126401号公報
本発明は、医薬または食品としての用途において有用なトリペプチド化合物またはそれらの塩を提供することを課題とする。また、当該トリペプチド化合物またはそれらの塩を含む、インスリン分泌促進剤、GLP-1分泌促進剤、血糖値低減剤、糖尿病予防剤または糖
尿病治療剤等の医薬を提供することを課題とする。さらに、本発明は、当該トリペプチド化合物またはそれらの塩を含む食品を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、Ace-Gly-Gln-Pro-COOR、Ace-Gln-Pro-Gly-COOR、Ace-Pro-Gly-Gln-COOR、Ace-Gly-Pro-Gln-COOR、またはAce-Gln-Gly-Pro-COORで表されるトリペプチドが、インスリン分泌促進作用、GLP-1分泌促進作用
及び血糖値低減作用を有することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]下記(1)〜(5)のいずれかの式で表されるトリペプチド化合物またはそれらの塩。
Ace-Gly-Gln-Pro-COOR・・・(1)
Ace-Gln-Pro-Gly-COOR・・・(2)
Ace-Pro-Gly-Gln-COOR・・・(3)
Ace-Gly-Pro-Gln-COOR・・・(4)
Ace-Gln-Gly-Pro-COOR・・・(5)
上記式中のRは、水素、または炭素数1〜5のアルキル基を表し、Aceはアセチル基を表す。上記ペプチドのカルボキシル基及び/又はアミド基は、イオン化していてもよい。また、上記ペプチドを構成する各アミノ酸はD体またはL体である。
[2]上記(3)または(4)の式で表される、[1]に記載のトリペプチド化合物またはそれらの塩。
[3][1]または[2]に記載のトリペプチド化合物またはそれらの塩を含む、医薬。[4][1]または[2]に記載のトリペプチド化合物またはそれらの塩を含む、インスリン分泌促進剤。
[5][1]または[2]に記載のトリペプチド化合物またはそれらの塩を含む、グルカゴン様ペプチド−1分泌促進剤。
[6][1]または[2]に記載のトリペプチド化合物またはそれらの塩を含む、血糖値低減剤。
[7][1]または[2]に記載のトリペプチド化合物またはそれらの塩を含む、糖尿病予防剤または治療剤。
[8][1]または[2]に記載のトリペプチド化合物またはそれらの塩を含む、食品。
本発明のAce-Gly-Gln-Pro-COOR、Ace-Gln-Pro-Gly-COOR、Ace-Pro-Gly-Gln-COOR、Ace-Gly-Pro-Gln-COOR、またはAce-Gln-Gly-Pro-COORで表されるトリペプチドは、インスリン分泌促進作用、GLP-1分泌促進作用及び血糖値低減作用を有する。従って、本発明のトリ
ペプチドまたはそれらの塩は、インスリン分泌促進剤、GLP-1分泌促進剤、血糖値低減剤
、糖尿病予防剤または治療剤等の医薬の有効成分として好適である。さらに、本発明のトリペプチド化合物またはそれらの塩は、インスリン分泌促進、GLP-1分泌促進、血糖値低
減、糖尿病予防または糖尿病治療のための食品の成分として好適である。
特に、本発明のトリペプチド化合物またはそれらの塩は、摂食時などの高血糖条件下のみでインスリン分泌促進作用を発揮し、血糖値の上昇を抑える。当該作用は、本発明のトリペプチド化合物またはそれらの塩の単回投与または長期投与のどちらの場合によっても
、得ることができる。従って、本発明の医薬、食品は、空腹時などの比較的低血糖条件下で、過度な低血糖を引き起こす危険性が小さく、安全性が高い。
マウス膵β細胞由来培養細胞MIN6を用いた、5つのトリペプチド化合物が有するインスリン分泌促進作用を示す図。 マウス膵β細胞由来培養細胞MIN6を用いた、Ace-Pro-Gly-Gln-COOHまたはAce-Gly-Pro-Gln-COOHが有するインスリン分泌促進作用を示す図。 マウス膵β細胞由来培養細胞MIN6を用いた、高血糖時または低血糖時における5つのトリペプチド化合物が有するインスリン分泌促進作用を示す図。 ラット下部消化管GLP-1産生細胞を用いた、Ace-Pro-Gly-Gln-COOHまたはAce-Gly-Pro-Gln-COOHが有するGLP-1分泌促進作用を示す図。 SDT/Jcl2型糖尿病モデルラットを用いた、Ace-Pro-Gly-Gln-COOHの血糖値抑制作用を示す図(糖負荷あり)。 SDT/Jcl2型糖尿病モデルラットを用いた、Ace-Pro-Gly-Gln-COOHの血糖値抑制作用を示す図(糖負荷なし)。 KK-Ay/Tajcl2型糖尿病モデルマウスを用いた、Ace-Pro-Gly-Gln-COOHの長期(7週間)投与後における血糖値抑制作用を示す図(糖負荷あり)。
本発明のトリペプチド化合物は、下記(1)〜(5)のいずれかの式で表される化合物またはそれらの塩である。
Ace-Gly-Gln-Pro-COOR・・・(1)
Ace-Gln-Pro-Gly-COOR・・・(2)
Ace-Pro-Gly-Gln-COOR・・・(3)
Ace-Gly-Pro-Gln-COOR・・・(4)
Ace-Gln-Gly-Pro-COOR・・・(5)
上記式中のRは、水素、または炭素数1〜5のアルキル基を表し、Aceはアセチル基を表す。上記ペプチドのカルボキシル基及び/又はアミド基は、イオン化していてもよい。すなわち、カルボキシル基のRが電離してCOO-になっていてもよく、アミド基はNH3 +になっ
ていてもよい。また、上記各々のペプチドを構成する各アミノ酸は、D体、L体のどちらであってもよい。本発明におけるトリペプチド化合物の塩は薬理学的に許容される塩であれば特に制限されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、硫酸塩、燐酸塩、マロン酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、酢酸塩、トシル酸塩、カンシル酸塩、リンゴ酸塩または塩酸塩などの生理的条件下で存在し得る塩が含まれる。
本発明のトリペプチドは、アミノ酸3個からなり、アミノ酸はそれぞれプロリン(Pro
、Pとも記載することがある。)、グリシン(Gly、Gと記載することがある。)、グルタ
ミン(Gln、Qと記載することがある。)を含む。
本発明のトリペプチド化合物またはそれらの塩の製造方法は、当技術分野において周知の方法、たとえば、Boc-アミノ酸を用いる固相合成方法、あるいは、Fmoc-アミノ酸を用
いる固相合成方法や、これらを自動化したペプチド合成機によっても所望のペプチドを合成することができるが、その方法は限定されない。合成されたペプチドが所望のものであるかどうかは、アミノ酸分析器やアミノ酸シーケンサー等を用いて確認することができる。
本発明のトリペプチド化合物またはそれらの塩は、インスリン分泌促進作用、GLP-1分
泌促進作用、血糖値低減作用を有する。従って、本発明のトリペプチド化合物またはそれらの塩は、インスリン分泌不足、GLP-1分泌不足または高血糖と関連する種々の疾患に対
する医薬として用いることができる。当該疾患としては、たとえば、糖尿病、肥満、高血圧、高脂血症等が挙げられる。糖尿病は、例えば、国立国際医療研究センター病院発行の
糖尿病標準診療マニュアルにおいて定義される糖尿病診断基準等により診断することができる。本発明のトリペプチド化合物またはそれらの塩は、低血糖条件下で過度な低血糖を引き起こす危険性が小さく安全性が高いため、糖尿病と診断された患者だけでなく、糖尿病の疑いのある患者にも、予防の意味で投与することが可能である。
本発明の医薬の剤形は特に限定されず、治療目的に応じて適宜選択できる。具体的には、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、坐剤、注射剤、貼付剤等が挙げられる。
本発明の医薬は、上記(1)〜(5)のいずれかの式で表されるトリペプチド化合物またはそれらの塩以外の有効成分を含有していてもよい。たとえば、SU剤等のインスリン分泌促進剤、DPP-IV阻害剤、糖吸収遅延剤、またはインスリン抵抗性改善剤等を、トリペプチド化合物またはそれらの塩と共に1つの剤に含めてもよいし、両者を別々の剤に配合したものを1つのキットとしてもよい。
また、本発明の医薬の製剤化の際、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、保存剤、矯味矯臭剤、希釈剤等の製剤化に必要な添加剤を加えてもよい。
本発明の医薬の投与方法は、経口的投与、非経口投与の何れであってもよい。また、本発明の医薬の投与量は、患者の症状、体重、年齢、性別等に応じて決定されるが、一般的には、有効成分量として成人一日あたり10μg/kgから1000mg/kg程度の範囲
であり、好ましくは100μg/kgから100mg/kg程度の範囲である。
本発明の(1)〜(5)のいずれかの式で表されるトリペプチド化合物またはそれらの塩は、通常用いられる食品原料とともに加工することにより、インスリン分泌の低下、GLP-1の分泌低下、血糖値の上昇が引き起こす、糖尿病等の疾病の予防・改善のための食品
(以下「本発明の食品」ともいう。)として用いることができる。
本発明において、「食品」には、人間が摂取する食品の他、人間以外の動物が摂取する飼料も含まれる。
本発明の食品における前記トリペプチド化合物またはそれらの塩の含有量は、食品の用途、食品の形態等に応じて決定される。例えば、前記トリペプチド化合物またはそれらの塩の含有量が食品全体に対し、好ましくは0.01〜10質量%、さらに好ましくは0.1〜1質量%となるような含有量とすることができる。
本発明の食品の形態は特に限定されない。例えば、健康補助食品、サプリメント、飲料、菓子、病院食などが挙げられる。
また、本発明の食品は、前記トリペプチド化合物またはそれらの塩以外の健康増進成分を含有していてもよく、その成分の種類に制限はない。
本発明の食品の摂取量は、食品の用途、食品の形態等に応じて決定されるが、例えば、前記トリペプチド化合物またはそれらの塩の摂取量が、成人一日あたり10μg/kgか
ら1000mg/kg程度の範囲であり、好ましくは100μg/kgから100mg/kg程度の範囲となるような摂取量を目安とすることができる。本発明の食品は、当技術分野における公知の方法にて、前記トリペプチド化合物またはそれらの塩を食品原料とともに加工することにより、製造することができる。
以下に、実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明が、これら実施例にのみ、限定を受けないことは言うまでもない。
<マウス膵β細胞由来培養細胞MIN6を用いたin vitroインスリン分泌促進作用>
被検化合物がin vitroでインスリンの分泌を促進するか否かを、MIN6(マウス膵β細胞由来培養細胞:大阪大学より分譲を受けた)を用いて検証した。
シグマアルドリッチ社のカスタム合成サービスにて、N末端にアセチル基を導入したトリペプチドを化学合成した。合成したトリペプチド(被検化合物)は、以下の5種類である。
(1)Ace-Gly-Gln-Pro-COOH
(2)Ace-Gln-Pro-Gly-COOH
(3)Ace-Pro-Gly-Gln-COOH
(4)Ace-Gly-Pro-Gln-COOH
(5)Ace-Gln-Gly-Pro-COOH
対照化合物としては、Repaglinide(SU剤:フナコシ 商品コードR144500)
、オレオイルエタノールアミン(OEA、PPARαアゴニスト:フナコシ 商品コードSL−
231)、Carbachol(インスリン分泌刺激剤:和光純薬 商品コードASB-00003150-100
)を使用した。
アッセイ2日前にマウス膵β細胞由来培養細胞MIN6を96ウェルプレートに3×104細胞/200μL培地/ウェルで播種した。
アッセイ当日に、以下の手順にて、被検化合物である5つのトリペプチドと対照化合物をMIN6に添加した。
96ウェルプレートの培地をアスピレータで除去した後、Krebs Ringer Buffer (Krebs Ringer Buffer (125mMNaCl 5mMNaCO3 5.9mMKCl 1.28mM CaCl2・2H2O 25mM HEPES(pH7.4)1.2mM MgSO4・7H2O BSA(ROCKLAND社 800-656-7625) 1w/v%)を200μL/ウェルで加えて2回washした。2.8mMグルコース(in KRB)を200μL/ウェルに添加後、低血糖状態再現の
ために、37℃で30分間、CO2インキュベーターで静置した。その後、KRBを200μL/ウェル
で加えて2回washした。18.7mMグルコース(in KRB)に溶解させた被検化合物及び対照化
合物を200μL/ウェルで添加して、37℃で2時間、CO2インキュベーターで静置し、高血糖
状態における薬剤の効果を検証した。
静置後の細胞培養上清をレビス インスリン−マウス(Hタイプ)(株式会社シバヤギ 商品コードAKRIN-011H)を用いて、MIN6のインスリン分泌量を測定することで、被検化合物のインスリン分泌活性について検証した。
MIN6のインスリン分泌量測定結果を、図1、2に示す。図1が示すとおり、被検化合物である5つのトリペプチドは、いずれも良好なインスリン分泌促進作用を示した。また、Ace-Pro-Gly-Gln-COOHとAce-Gly-Pro-Gln-COOHは、対照化合物であるRepaglinideやOEAと同等かそれ以上の促進作用を示した(図2)。
次に、2.8mMグルコースに溶解させた被検化合物及び対照化合物を測定するステップを
、上記の方法に追加して測定し、高血糖時と低血糖時におけるインスリン分泌促進作用を比較した。結果を図3に示す。図3から、Ace-Gly-Gln-Pro-COOHとAce-Gln-Pro-Gly-COOHは、高血糖時にのみインスリン分泌促進作用を示し、低血糖時には当該作用を示さないことが分かった。
<ラット下部消化管グルカゴン様ペプチド−1(GLP-1)産生細胞を用いたin vitro GLP-1分泌促進作用>
被検化合物がin vitroで、インスリン分泌を促進するGLP-1の分泌を促進するか否かを
、ラット下部消化管GLP-1細胞キットRCPCC008(リプロセル社)を用いて検証した。
被検化合物は、上記と同様の方法により得られたAce-Pro-Gly-Gln-COOHとAce-Gly-Pro-Gln-COOHを使用した。対照化合物としては、リトコール酸(LCA:上記キットに包含)を
用いた。リトコール酸は二次胆汁酸であり、L細胞の受容体に結合してGLP-1分泌を促進す
る作用を有する。
アッセイ前日にラット下部消化管GLP-1産生細胞の培養を開始した(75 cm2 T-Flask 又
は 100mm dish)。
アッセイ当日、GLP-1産生細胞を96ウェルプレートに均一に播種した。5.6mMグルコース(in Medium B:上記キットに包含)に溶解した被検化合物及び対照化合物を、100μL/ウェルで添加し、37℃で40分間、CO2インキュベーターで静置した。同様に、44.8mMグルコース(in Medium B)を100μL/ウェルで添加し、37℃で40分間、CO2インキュベーターで
静置した。
静置後の細胞培養上清において、Rat GLP-1 ELISA Kit Wako(和光純薬 商品コード291−59201)を用いてGLP-1分泌量を測定することで、被検化合物のGLP-1分泌活性について検証した。
GLP-1分泌活性測定結果を、図4に示す。図4から、Ace-Pro-Gly-Gln-COOHまたはAce-Gly-Pro-Gln-COOHトリペプチドは、LCAと同等かまたはそれ以上のGLP-1分泌促進作用を有
することが分かった。よって、上記トリペプチド化合物は、GLP-1分泌を促進することに
より、インスリン分泌を促進する作用を有すると考えられる。
<SDT/Jcl2型糖尿病モデルラットを用いた血糖値抑制作用>
被検化合物がin vivoで血糖値を抑制するか否かを、SDT/Jcl2型糖尿病モデルラットを用いて検証した。
SDT/Jcl2型糖尿病モデルラット(オス、11週齢)は、(日本クレア)より購入した

試験群は、以下の4群であり、それぞれn=2である。
試験群1:ネガティブコントロール(蒸留水投与)群。蒸留水は、1ml/回/匹にて経口
投与。
試験群2:Ace-Pro-Gly-Gln-COOH投与群。5mg/ml濃度で、1ml/回/匹にて経口投与。
試験群3:Repaglinide投与群。5mg/ml濃度で、1ml/回/匹にて経口投与。
試験群4:Linagliptin(フナコシ 商品コード2240-250)投与群。5mg/ml濃度で、1ml/回/匹にて経口投与。
17時間絶食後、2.0g/kgのブドウ糖(大塚糖液50%:大塚製薬)を腹腔内投与(IP)してグルコース負荷を行った。投与化合物は血糖値測定開始の30分前に経口投与した

絶食開始時、糖負荷時、糖負荷15分後、30分後、60分後及び120分後にラットの尾静脈から採血し、血清中の血糖値をアキュチェックアビバ(ロシュダイアグノスティックス)を用いて測定した。
血糖値測定結果を、図5に示す。図5の結果から、Ace-Pro-Gly-Gln-COOHトリペプチドとLinagliptinに同様の血糖値低減作用があることが分かった。
次に、糖負荷を行わない以外は上記と同様の方法で、SDT/Jcl2型糖尿病モデルラット
における血糖値抑制作用を検討した。被検化合物または対照化合物を投与した0分後、30分後、45分後、60分後、90分後、及び150分後における血糖値を測定した。
血糖値測定結果を、図6に示す。図6から、RepaglinideとLinagliptinについては血糖値の低減作用が認められたが、Ace-Pro-Gly-Gln-COOHトリペプチドには血糖値の低減作用が見られなかった。よって、Ace-Pro-Gly-Gln-COOHトリペプチドは、糖負荷のない状態では血糖値の低減作用を示さないが、糖負荷された状態では血糖値の低減作用を示すため、過度の低血糖になることのない安全な血糖値低減剤として使用できることが分かった。
<KK-Ay/Tajcl2型糖尿病モデルマウスを用いた血糖値抑制作用>
被検化合物を長期(7週間)投与後、in vivoで血糖値を抑制するか否かを、KK-Ay/Tajcl2型糖尿病モデルマウスを用いて検証した。
KK-Ay/Tajcl2型糖尿病モデルマウス(オス、9週齢)は、日本CLEAより購入した。
試験群は、以下の3群であり、それぞれn=6である。
試験群1:ネガティブコントロール(NC:蒸留水投与)群。蒸留水は、ゾンデで0.25ml/匹/日にて経口投与。
試験群2:Ace-Pro-Gly-Gln-COOH(GPQ)投与群。2mg/ml濃度で、ゾンデで0.25ml/匹/日にて経口投与。
試験群3:リナグリプチン(フナコシ 商品コード2240-250)投与群。2mg/ml濃度で、
ゾンデで0.25ml/匹/日にて経口投与。
上記試料を7週間(土日を除く)投与した。最終投与後、17時間絶食させた。絶食後、1.0g/kgのブドウ糖(大塚糖液50%:大塚製薬)を経口投与して、グルコース負荷を行った。
絶食開始時、糖負荷開始時、糖負荷30分後、60分後及び120分後にマウスから採血し、血清中の血糖値をアキュチェックアビバ(ロシュダイアグノスティックス)を用いて測定した。
血糖値測定結果を、図7に示す。図7の結果から、Ace-Pro-Gly-Gln-COOHトリペプチドは、7週間という長期投与によっても血糖値低減作用を奏することが示された。また、当該血糖値低減作用は、リナグリプチン(DPPIV阻害薬)と同等かそれ以上であることが分か
った。
本発明のトリペプチド化合物またはそれらの塩は、インスリン分泌促進作用、GLP-1分
泌促進作用および血糖値低減作用を有し、糖尿病予防剤若しくは治療剤等の医薬、又は食品の成分として使用可能である。本発明のトリペプチド化合物またはそれらの塩は、摂食時などの高血糖条件下のみでインスリン分泌促進作用を発揮し、血糖値の上昇を抑えるため、本発明の医薬および食品は、空腹時などの比較的低血糖条件下で、過度な低血糖を引き起こす危険性が小さく、安全性が高い。

Claims (8)

  1. 下記(1)〜(5)のいずれかの式で表されるトリペプチド化合物またはそれらの塩。Ace-Gly-Gln-Pro-COOR・・・(1)
    Ace-Gln-Pro-Gly-COOR・・・(2)
    Ace-Pro-Gly-Gln-COOR・・・(3)
    Ace-Gly-Pro-Gln-COOR・・・(4)
    Ace-Gln-Gly-Pro-COOR・・・(5)
    上記式中のRは、水素、または炭素数1〜5のアルキル基を表し、Aceはアセチル基を表す。上記ペプチドのカルボキシル基及び/又はアミド基は、イオン化していてもよい。また、上記ペプチドを構成する各アミノ酸はD体またはL体である。
  2. 上記(3)または(4)の式で表される、請求項1に記載のトリペプチド化合物またはそれらの塩。
  3. 請求項1または2に記載のトリペプチド化合物またはそれらの塩を含む、医薬。
  4. 請求項1または2に記載のトリペプチド化合物またはそれらの塩を含む、インスリン分泌促進剤。
  5. 請求項1または2に記載のトリペプチド化合物またはそれらの塩を含む、グルカゴン様ペプチド−1分泌促進剤。
  6. 請求項1または2に記載のトリペプチド化合物またはそれらの塩を含む、血糖値低減剤。
  7. 請求項1または2に記載のトリペプチド化合物またはそれらの塩を含む、糖尿病予防剤または治療剤。
  8. 請求項1または2に記載のトリペプチド化合物またはそれらの塩を含む、食品。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017214334A (ja) * 2016-06-01 2017-12-07 株式会社ニッピ Dpp−4阻害剤および血糖値上昇抑制剤
JP2021036963A (ja) * 2019-08-30 2021-03-11 株式会社Welloop 杖及び杖用の足部

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