JP2016032044A - 窒化鉄粉末およびその製造方法 - Google Patents

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【課題】原料粒子同士の焼結を防止し、被覆層を実質的に含まない、磁性材料としての分散性に優れたα”−Fe16N2を主相とする単一粒子で構成される窒化鉄粉末を製造することを目的とする。【解決手段】酸化鉄粒子を焼結防止剤で被覆した後、還元熱処理および窒化熱処理を行い、次いで、焼結防止剤を除去することを特徴とする。【選択図】図4

Description

本発明は、窒化鉄粉末およびその製造方法に関し、より詳細には、原料粒子同士の焼結を防止し、被覆層を実質的に含まない、磁性材料としての分散性に優れたα”−Fe16を主相とした単一粒子で構成される窒化鉄粉末の製造方法に関するものである。
α”−Fe16は、飽和磁化が非常に大きいことから、従来より注目されている磁性材料である。α”−Fe16粒子は、酸化鉄などの原料粒子を水素中で還元してα−鉄とした後、アンモニア気流中で窒化処理を行うなどの方法で作製されている(特許文献1)。しかし、原料粒子に還元、窒化の熱処理を施して窒化鉄を合成すると、原料粒子同士の焼結が起こるため、磁性材料として適用するために求められる分散性に優れた窒化鉄粒子を得ることは困難である。そのため、還元、窒化の熱処理の際の原料粒子の焼結をいかに抑えるかが、窒化鉄粒子の製造において重要な関心事項のひとつであった。
この問題を解決するために、これまでにも、SiやAlなどの酸化物を原料粒子に被覆させて外層を形成することにより原料粒子同士の焼結を防止して窒化鉄粒子を合成する試みが行われている(特許文献2、3)。しかし、焼結防止のためにSi酸化物やAl酸化物などを被覆させた窒化鉄粒子においては、被覆層が存在する分粒子全体に占める窒化鉄粒子の体積分率が小さくなるために、飽和磁化等の磁気特性が期待されるほど十分に得られないという問題が生じる。特に、ナノサイズの窒化鉄粒子の場合には、原料粒子のサイズが小さいことで製造工程において焼結がより生じやすくなるため、原料粒子をより確実に被覆するために焼結防止剤の量を相対的に増加させる必要があり、得られる窒化鉄粒子の磁気特性への影響が大きいことが懸念されていた。
特開2000−277311号公報 特開2008−103510号公報 特開2010−123607号公報
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、原料粒子同士の焼結を防止し、焼結防止剤等の被覆層を実質的に含まない、磁性材料としての分散性に優れたα”−Fe16を主相とする単一粒子で構成される窒化鉄粉末の製造方法、およびそれにより得られるα”−Fe16を主相とする単一粒子で構成される窒化鉄粉末を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、以下の技術的手段により構成される。
(1)酸化鉄粒子を焼結防止剤で被覆した後、還元熱処理および窒化熱処理を行い、次いで、焼結防止剤を除去する窒化鉄粉末の製造方法。
(2)焼結防止剤がリン酸カルシウムである(1)に記載の窒化鉄粉末の製造方法。
(3)焼結防止剤を溶解させて除去すること(1)又は(2)に記載の窒化鉄粉末の製造方法。
(4)焼結防止剤の構成成分とキレートを形成するキレート剤を用いて焼結防止剤を溶解させて除去する(3)に記載の窒化鉄粉末の製造方法。
本発明の窒化鉄粉末の製造方法によれば、原料粒子同士の焼結を防止し、焼結防止剤等の被覆層を実質的に含まない、磁性材料としての分散性に優れたα”−Fe16を主相とした単一粒子で構成される窒化鉄粉末を得ることができる。
リン酸カルシウム被覆酸化鉄粒子の赤外分光スペクトルである。 (a)リン酸カルシウム被覆窒化鉄粒子のX線回折(XRD)パターンである。(b)リン酸カルシウム除去後の窒化鉄粒子のX線回折(XRD)パターンである。 リン酸カルシウム除去後の窒化鉄粒子の赤外分光スペクトルである。 リン酸カルシウム除去後の窒化鉄粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。 シリカ被覆窒化鉄粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明のα”−Fe16を主相とした単一粒子で構成される窒化鉄粉末は、原料粒子を焼結防止材で被覆した後に還元および窒化の熱処理を行うことで原料粒子同士の焼結を防止し、その後、焼結防止剤の被覆層を除去することによって得ることができる。
本発明で用いる原料粒子としては、Fe、Fe、FeOなどの酸化鉄粒子を用いることができる。酸化鉄粒子を用いる場合には、酸化鉄粒子の平均粒径は、5〜100nmが好ましい。5nm未満では、粒子が凝集しやすく焼結防止剤が均一に被覆されないおそれがあり、100nmを超えると窒化工程において窒化が十分に進行しないおそれがある。また、最終的に窒化鉄粉末粒子の粒径をそろえるため、粒径分布幅の狭い酸化鉄粒子を用いることが好ましい。また、酸化鉄粒子が分散した状態で被覆層を形成させるために、酸化鉄粒子は水などの分散媒に高分散可能なものを用いることが好ましい。具体的には、水熱法で合成するなどして得た酸化鉄粒子を用いることができる。
酸化鉄粒子は、一般に公知の方法に従って合成することができ、例えば、以下の手順により合成される。まず、塩化鉄、硫酸鉄などの鉄系原料を水に溶解させた後、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ物質を加えて水酸化物の析出物を得る。必要に応じて、粒径を制御するため、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリドなどの表面修飾剤を添加することができる。その後、水熱反応を行う。具体的には、上記の析出物をオートクレーブなどに入れて反応させることで酸化鉄粒子を得ることができる。反応を行う溶液の温度は、例えば、30〜220℃で、反応中撹拌を施しても良いし、静止させた状態で反応させても良い。反応溶液中での析出物の分散が十分でない場合には、表面修飾剤などにより分散性を改善してもよい。また、攪拌しながら水熱反応させることが、粒径のそろった粒子を得るために好ましい。
このようにして、酸化鉄粒子が分散した懸濁液を得る。
焼結防止剤、すなわち焼結防止層として原料粒子を被覆する材料としては、原料粒子および最終的に得られる窒化鉄粒子の変質を防ぐため、比較的穏和な条件で合成および溶解除去が可能な材料を用いることが好ましい。具体的には、水溶液中で室温で合成可能であり、温和な酸あるいはアルカリ条件で溶解可能である化合物、例えば、リン酸カルシウム系材料を用いることができる。リン酸カルシウムとしては、水酸アパタイト、リン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸二水素カルシウムなどが挙げられる。
原料粒子として酸化鉄粒子を用いる場合には、酸化鉄粒子が分散した懸濁液中で焼結防止剤と接触させる。酸化鉄粒子と焼結防止剤を接触させる操作は、上記の酸化鉄粒子の合成の際に得られた懸濁液を用いて接触させてもよく、一旦懸濁液から酸化鉄粒子を分離したのち水に再度分散させた懸濁液を用いて接触させてもよい。焼結防止剤は、懸濁液中で調製してもよく、あるいはあらかじめ調製したものを酸化鉄粒子が分散した懸濁液に添加してもよい。例えば、焼結防止剤としてリン酸カルシウムを懸濁液中で調製する場合には、pHを調整した条件下でカルシウム源とリン源を所定の比で加えて撹拌、反応させることで、リン酸カルシウムを形成させることができる。
カルシウム源とリン源の比は特に限定されないが、製造効率の観点から、形成するリン酸カルシウムの組成比から大きくかけ離れないほうが好ましい。好ましくは、カルシウムとリンのモル比でCa:Pが1:2〜3:1である。
焼結防止剤を懸濁液中で調製する場合の溶媒としては、水あるいは水/エタノール混合溶媒を用いることが好ましい。撹拌は攪拌機、超音波など任意の方法で行うことができ、pH調整にはアンモニア水や水酸化ナトリウムなどを用いることができる。
pHの調整範囲は6〜12が好ましい。この範囲を外れると、リン酸カルシウムの溶解度が大きくなり、リン酸カルシウムの生成量が少なくなる場合がある。より好ましくは、pHの調整範囲は7〜11である。
焼結防止剤としてリン酸カルシウムを合成する際の原料としては、カルシウム源として、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、水酸化カルシウムなど、リン源としてはリン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムなどが挙げられる。
酸化鉄粒子に対する焼結防止剤の使用量は、焼結防止が可能となる量を適宜選択すればよい。焼結防止剤としてリン酸カルシウムを使用する場合、酸化鉄粒子に対するリン酸カルシウムの使用量は、質量比で0.1〜5である。0.1未満では酸化鉄粒子が凝集するおそれがあり、5を超えると還元および窒化反応が十分進行しないおそれがある。好ましくは、酸化鉄粒子に対するリン酸カルシウムの使用量は、質量比で0.2〜3である。
このようにして、焼結防止剤で被覆された原料粒子(以下「焼結防止剤被覆原料粒子」ともいう。)を得る。
次に、焼結防止剤被覆原料粒子を、還元熱処理および窒化熱処理を行うことで、焼結防止剤で被覆された窒化鉄粒子(以下「焼結防止剤被覆窒化鉄粒子」ともいう。)で構成される窒化鉄粉末を得る。具体的には、例えば、リン酸カルシウムで被覆した酸化鉄粒子を水素気流中で還元熱処理することによりα−Feとし、その後アンモニア気流中で窒化熱処理を行うことで、リン酸カルシウムで被覆されたα”−Fe16を主相とする粒子で構成される窒化鉄粉末を形成することができる。
還元熱処理の条件は、300℃〜500℃の温度が好ましい。300℃よりも温度が低い場合には還元が十分に進行しない場合がある。また、500℃よりも温度が高すぎる場合には、原料粒子同士の焼結が生じる場合がある。
窒化熱処理の条件は、100℃〜200℃の温度が好ましい。100℃よりも温度が低い場合には窒化が十分に進行しない場合がある。また、200℃よりも温度が高すぎる場合には、窒素量の多い窒化鉄相が生成し、目的とするα”−Fe16が生成しにくくなる場合がある。
次に、焼結防止剤被覆窒化鉄粒子から焼結防止剤を除去することによって、本発明の窒化鉄粉末を得る。具体的には、例えば、リン酸カルシウムなどの焼結防止剤で被覆された窒化鉄粒子からリン酸カルシウムなどの焼結防止剤を除去することによって、α”−Fe16を主相とした単一粒子で構成される窒化鉄粉末を得る。
焼結防止剤被覆窒化鉄粒子から焼結防止剤を除去する方法としては、例えば、焼結防止剤を溶解させて除去する方法が挙げられる。例えば、焼結防止剤としてリン酸カルシウムを用いる場合には、リン酸カルシウムの溶解除去のための処理液として、水酸化ナトリウムにより弱アルカリ性に調整したエチレンジアミン四酢酸水溶液を用いることができる。エチレンジアミン四酢酸はカルシウムイオンをキレートするキレート剤である。すなわち、焼結防止剤の構成成分とキレートを形成するキレート剤を用いて、焼結防止剤を溶解させて除去することができる。リン酸カルシウムを溶解除去するためのキレート剤としては、上記のエチレンジアミン四酢酸に限定されず、カルシウムイオンのキレート能が高いものであれば、ほかのキレート剤を用いてもよい。キレート剤を含む上記の処理液にリン酸カルシウムで被覆された窒化鉄粒子を入れ、超音波、撹拌機などにより分散させながらリン酸カルシウムを溶解させる。その後、遠心分離などにより窒化鉄粒子を回収し、エタノールなどの有機溶媒を用いて洗浄を行うことで、α”−Fe16を主相とする単一粒子で構成される窒化鉄粉末が得られる。
上記の溶解と遠心分離、洗浄の各操作は、意図しない理由により窒化鉄粒子表面に残留しているリン酸カルシウムを完全に除去するために、複数回行うことができる。洗浄後、遠心分離や乾燥を行うこともできる。乾燥は、例えば、窒素などの不活性雰囲気下、室温〜100℃、0.5〜24時間行うことができる。
このようにして、α”−Fe16を主相とした単一粒子で構成される窒化鉄粉末を得る。
なお、必要に応じて、窒化鉄粒子表面を徐酸化して保護酸化被膜を形成したり、チオール類などの有機保護基により表面を修飾してもよい。
本明細書において、「α”−Fe16を主相とする」とは、α”−Fe16を主相とするが、α”−Fe16以外に、本発明の所望の目的、効果を阻害しない範囲で、α−Fe、Fe、FeO、FeNなどが含まれることが許容されることを意味する。
本明細書において、「単一粒子」とは、焼結した粒子を実質的に含まず、かつ被覆層を実質的に含まない粒子を意味する。
本明細書において、「実質的に含まない」および「実質的に有していない」とは、本発明の所望の目的、効果を阻害しない範囲で、不純物の存在が許容されることを意味する。
このようなα”−Fe16を主相とした単一粒子で構成される本発明の窒化鉄粉末は、窒化鉄粒子の粒径分布幅が狭くすなわち粒径がそろっているため、磁性材料としての分散性に優れている。また、窒化鉄粉末の粒子表面には、粒子成分以外の成分、例えば、焼結防止剤の被覆層に由来する成分を実質的に有していない。そのため、被覆層を含むことに起因する磁気特性への影響が抑制されるとともに、焼結防止剤の除去後に意図しない理由により窒化鉄粒子表面に残留している成分による磁気特性への影響も実質的に受けない。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
(酸化鉄粒子の合成)
酸化鉄粒子の合成は以下のように行った。まず、塩化鉄(III)六水和物3.244gと酢酸カリウム3.532gとを蒸留水40mlに溶解させた。また、これとは別に、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド1.048gを蒸留水20mlに溶解させた。これらをテフロン容器に入れ、蒸留水を加えて全量を80mlにした溶液を混合し、この容器に撹拌子を入れて30分間撹拌し、水酸化物の析出物を得た。さらにこのテフロン容器をステンレス製容器内に入れて密封した後、300rpmで撹拌しながら、150℃で8時間水熱反応を行った。
水熱反応後の懸濁液から遠心分離により粒子成分を回収した。回収物を蒸留水で洗浄後、遠心分離により粒子成分を回収して酸化鉄粒子を得た。合成した酸化鉄粒子は外観が球状の粒子であり、水系媒体に良分散するものであった。
粒子径測定装置(マルバーン社製、ゼータサイザーナノZS)を用いて、光子相関法により測定した酸化鉄粒子の平均粒径は90nmであった。以下、平均粒径は、光子相関法により測定した値をいう。
(リン酸カルシウムによる被覆)
次に、合成した酸化鉄ナノ粒子を蒸留水中で分散させて懸濁液とした。この懸濁液と硝酸カルシウム水溶液を混合し撹拌を行った。十分な撹拌を行った後、アンモニア水を用いてpHを塩基性に調整した。ここにリン酸水素二アンモニウム水溶液をゆっくりと滴下することにより、リン酸カルシウムを形成させた。この反応の間、アンモニア水によりpHを約9に調整した。また、カルシウムとリンのモル比はCa:P=1.67:1とし、酸化鉄粒子に対するリン酸カルシウムの使用量は、質量比で2となるように調整した。この懸濁液を20時間撹拌して十分反応を進行させてリン酸カルシウムを形成させ、リン酸カルシウム被覆酸化鉄粒子の懸濁液を得た。この懸濁液から遠心分離により粒子成分を回収し、蒸留水により洗浄の操作を2回繰り返した後、エタノールによる洗浄の操作を行い、乾燥させてリン酸カルシウム被覆酸化鉄粒子を得た。
得られたリン酸カルシウム被覆酸化鉄粒子をフーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR、株式会社島津製作所製、FTIR-8400S)により測定を行った結果を図1に示す。600cm−1、1100cm−1付近にリン−酸素の結合に由来するスペクトルが得られ、リン酸カルシウムが形成されていることが確認された。
(還元熱処理および窒化熱処理)
上記のリン酸カルシウム被覆酸化鉄粒子を、雰囲気炉中で還元熱処理および窒化熱処理を行った。還元熱処理は水素気流中、400〜450℃で、4時間行い、窒化熱処理はアンモニア気流中、130〜150℃で、18〜24時間行った。
還元熱処理および窒化熱処理を行って得られたリン酸カルシウム被覆窒化鉄粒子について粉末X線回折装置(XRD、株式会社リガク製、RINT2550)により測定を行った結果を図2(a)に示す。XRDの回折パターンから、リン酸カルシウムのピークとα”−Fe16のピークが確認された。
(有機保護基による修飾)
エタノール100mlにヘキサデカンチオール0.2mlを溶解し、そこにリン酸カルシウム被覆窒化鉄粒子を約2g加えて超音波により分散させた。その後、20時間静置することにより窒化鉄粒子表面にヘキサデカンチオールを修飾した。次に、エタノールを用いたリン酸カルシウム被覆窒化鉄粒子の洗浄と、遠心分離によるリン酸カルシウム被覆窒化鉄粒子の回収操作を行った。
(リン酸カルシウムの除去)
蒸留水200mlにエチレンジアミン四酢酸2gを溶解し、水酸化ナトリウム水溶液を加えることによりpHを9に調整して処理液とした。この処理液に、リン酸カルシウム被覆窒化鉄粒子を入れ、超音波により粒子を分散させながらリン酸カルシウムの溶解を行った。その後、遠心分離によって窒化鉄粒子を回収した。回収した窒化鉄粒子を、再度処理液を用いて上記と同じ操作を2回繰り返した。次に、エタノールを用いた窒化鉄粒子の洗浄と、遠心分離による窒化鉄粒子の回収操作を2回繰り返した後、グローブボックス中で乾燥を行った。乾燥は、窒素雰囲気下の室温で、20時間行った。
得られた窒化鉄粒子のFT-IR測定を行った結果を図3に示す。図1のスペクトルとの比較から理解されるように、図1において600cm−1、1100cm−1付近にみられるリン−酸素の結合に由来するスペクトルが図3のスペクトルでは消失しており、リン酸カルシウムが除去されていることが確認された。
また、得られた窒化鉄粒子のSEM観察を行った結果を図4に示す。図4のSEM写真から、粒径100nm以下で平均粒径50nmの単一粒子である窒化鉄粒子が得られていることが確認された。また、この窒化鉄粒子は、図2(b)に示すように、XRDの回折パターンからα”−Fe16であることが確認された。
リン酸カルシウム被覆酸化鉄粒子に、450℃、4時間の還元熱処理、130℃、24時間の窒化熱処理を施した後に、リン酸カルシウムを除去して得られたα”−Fe16を主相とした単一粒子で構成される窒化鉄粉末について、物理特性測定装置(カンタムデザイン社製、PPMS DYNACOOL)を用いて、最大印加磁場30kOeで磁気特性の測定を行った。室温での飽和磁化は170emu/g、保磁力は2450Oeであった。
<比較例>
実施例と同様の方法で合成した酸化鉄粒子を、焼結防止剤としてシリカを用いて被覆させた。シリカによる被覆は、酸化鉄粒子を分散させたエタノール水溶液中でテトラエトキシシラン(TEOS)の加水分解により行った。SEM観察の結果より、シリカの被覆膜厚は20nmであった。このシリカ被覆酸化鉄粒子を、実施例と同様に雰囲気炉を用いて還元熱処理および窒化熱処理を行った。
得られた窒化鉄粒子のXRD回折パターンからα”−Fe16が得られていることが確認された。この窒化鉄粉末について、PPMSにより実施例と同様の条件で磁気特性の測定を行った結果、室温での飽和磁化は75.2emu/g、保磁力は1715Oeであった。
比較例のシリカ被覆の場合と比較して、実施例の窒化鉄粒子は、室温での飽和磁化、保磁力ともに有意に優れていた。また、図4および図5のSEM写真の観察結果より、比較例のシリカ被覆窒化鉄粒子は、シリカ自体が凝集性を有しているためか、粒子同士が凝集する傾向が見られたが、実施例の窒化鉄粒子では、そのような凝集傾向は確認されず、比較例のシリカ被覆窒化鉄粒子よりも分散性に優れていた。
本発明の窒化鉄粒子は、磁気記録媒体などの磁性材料や磁石の原料として好適に利用することができる。

Claims (4)

  1. 酸化鉄粒子を焼結防止剤で被覆した後、還元熱処理および窒化熱処理を行い、次いで、焼結防止剤を除去することを特徴とする窒化鉄粉末の製造方法。
  2. 前記焼結防止剤がリン酸カルシウムであることを特徴とする請求項1に記載の窒化鉄粉末の製造方法。
  3. 前記焼結防止剤を溶解させて除去することを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化鉄粉末の製造方法。
  4. 前記焼結防止剤の構成成分とキレートを形成するキレート剤を用いて前記焼結防止剤を溶解させて除去することを特徴とする請求項3に記載の窒化鉄粉末の製造方法。
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